説明

シートベルト誘導装置

【課題】外観上の見栄えが良好で、簡単に取り付けができて、安価なシートベルト誘導装置の提供。
【解決手段】シートバックフレーム10にベルトガイド支持部7を固定し、鍔部13下面に接着剤を塗布したベルトガイド8の中空部8A内に脚部7B、7B、水平部7Cを挿入し、ベルトガイド8とベルトガイド支持部7とを嵌合する。このベルトガイド8の下降動作により、水平部7Cが係止体8Dの係止部17の傾斜面17Aに当接して案内されながら上昇し、中空部8A内に突出していた係止部17の突出部分が中空部8A外に移動するようにベルトガイド8の係止体8Dは前方へ揺動する。更なる下降動作によって、水平部7Cと傾斜面17Aとの当接が解除されると、係止体8Dは後方へ揺動して前記突出部分が中空部8A内に移動して、鍔部13の下面に水平部7Cが当接し抜け止め部17Bによりベルトガイド支持部7にベルトガイド8が取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバック上部の乗員の肩部の近傍位置に配置され、シート後方から導出されたシートベルトを案内するシートベルト誘導装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のシートベルト誘導装置は、例えば特許文献1に開示されているように、シートバックの上端部(ヘッドレストを除く部分の上端部)の車幅方向における車両外方側の部位であって乗員の肩部の近傍の部位に設けられており、このシートベルト誘導装置を構成するベルトガイドの基部が後方に突出しており、ベルトガイドの基部の穴を介してベルトガイド支持部のボルト穴に螺合させた2本のボルトと座金により、ベルトガイド支持部に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−298091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ベルトガイド支持部にベルトガイドをボルトにより取付けるという作業が必要であり、ボルトの頭部が見えて外観の見栄えが悪く好ましくないので、キャップで外部から見えないようにするとコスト高ともなる。また、取付け穴を設ける必要があるため、ベルトガイド支持部が大きくなるという問題もある。
【0005】
そこで本発明は、外観上の見栄えが良好で、簡単に取り付けができて、安価なシートベルト誘導装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため第1の発明は、シートバック上部の乗員の肩部の近傍位置に配置され、シート後方から導出されたシートベルトを案内するシートベルト誘導装置において、
前記シートバックの骨格を形成するシートバックフレームに固定される固定部とロック部とを備えるベルトガイド支持部と、
このベルトガイド支持部に取付けられて中空筒部と抜け止め部とシートベルトが挿入されるガイド部とを備えて前記シートベルトを案内するベルトガイドとを備え、
前記ベルトガイド支持部のロック部が前記ベルトガイドの前記中空筒部内に挿入されるようにこのベルトガイドをベルトガイド支持部に取付けると、前記ロック部が前記中空筒部内から抜けないように前記抜け止め部によりロックされることを特徴とする。
【0007】
また第2の発明は、シートバック上部の乗員の肩部の近傍位置に配置され、シート後方から導出されたシートベルトを案内するシートベルト誘導装置において、
前記シートバックの骨格を形成するシートバックフレームに固定される固定部とロック部とを備えるベルトガイド支持部と、
このベルトガイド支持部に取付けられて中空筒部と抜け止め部とシートベルトが挿入されるガイド部とを備えて前記シートベルトを案内するベルトガイドとを備え、
前記ベルトガイドに前記中空筒部を形成する側壁に揺動可能であって揺動していない状態では前記中空筒部内に係止部が入り込む係止体を形成し、
前記ベルトガイドをベルトガイド支持部に取付ける際に、前記ベルトガイド支持部のロック部が前記ベルトガイドの前記中空筒部内に挿入するように前記ベルトガイドを下降させると、前記ロック部が前記係止部に当接して前記係止体を外方へ揺動させ、更なる前記ベルトガイドを下降させると前記ロック部と前記係止部との当接が解除されて前記係止体が内方へ揺動して前記係止部が前記中空筒部内に入り込むことにより、前記ロック部が前記中空筒部内から抜けないように前記抜け止め部によりロックされることを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記ベルトガイドの中空筒部とガイド部との間に水平方向に延びる鍔部を形成し、前記ベルトガイド支持部に前記ベルトガイドに取付けた状態で、前記シートベルトとバックの表層に前記鍔部を固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外観上の見栄えが良好で、簡単に取り付けができて、安価なシートベルト誘導装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】自動車の後部シートの斜視図とこの斜視図の丸A部分の拡大図である。
【図2】図1の丸A部分の拡大図におけるB−B断面図である。
【図3】ベルトガイド支持部にベルトガイドを取付ける前の状態を示すシートベルト誘導装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図3に基づいて説明する。先ず、自動車の後部シート1は、シートクッション2とシートバック3とを備えている。そして、シートバック3の後方には、車体パネルの表面を覆うトリム部材(図示せず)が設けられ、このトリム部材の内側の下部にはシートベルト5を巻取ったり繰り出したりするシートベルトリトラクターが設けられている。そして、トリム部材の上端部の車両外方側には開口部が設けられて、この開口部を介してシートベルト5をトリム部材外部へ導出している。
【0012】
前記シートバック3の上端部(ヘッドレスト3aを除く部分の上端部)の車幅方向における車両外方側の部位であって、乗員の肩部の近傍部位には前記開口部を介してトリム部材外部へ導出されたシートベルト5を前記シートクッション2に着座した乗員に装着するために案内するシートベルト誘導装置6が設けられている。
【0013】
前記シートベルト誘導装置6は、大きく分けてベルトガイド支持部7と、このベルトガイド支持部7に取付けられるベルトガイド8とから構成される。ベルトガイド支持部7は金属材料(例えば、鋼)製の適宜な太さの線材を折り曲げて概ね門形形状を呈して、シートバック3の内部に設けられてこのシートバック3の骨格を形成する中空のシートバックフレーム10に溶接により固定される水平な固定部7A、7Aと、この固定部7A、7Aをそれぞれ鉛直方向に折り曲げた2つの脚部7B、7Bと、この両脚部7B、7Bの上端同士を連結する水平な係止部(ロック部)7Cとを形成する。
【0014】
前記ベルトガイド8は硬質の合成樹脂材料で一体成形で作製され、図3に示すように、シートバック3内に埋設される概ね中空角筒状の埋設部(中空筒部)9と、シートバック3内に前記埋設部9が埋設された状態で前記シートバック3の表皮3A表面にその裏面が固定される鍔部13と、導入口14を介して導入されたシートベルト5を移動可能に案内する案内口15が形成されたガイド部16とを備えている。従って、前記ベルトガイド8の埋設部9とガイド部16との間に、水平方向に延びる鍔部13が形成されている。なお、3Bは前記シートバック3の内装材である。
【0015】
前記埋設部9は、下方を開口して前後方向の空間の寸法が前記ベルトガイド支持部7の太さより少し大きくてベルトガイド支持部7の脚部7B、7B及び水平部7Cがその内部を移動可能な中空部8Aを備えると共に、この中空部8Aを形成する前壁8Bに両側方と上方に開口部8B1、8B2が形成されて係止体8Dが形成される。
【0016】
前記シートバック3に開設された開口12を介してこのシートバック3内に前記埋設部9が埋設された状態で、前記鍔部13はその裏面が前記シートバック3の表皮3A表面に接着剤を介して接着固定される。なお、この場合、接着剤の代わりに溶着により固定してもよい。
【0017】
前記鍔部13上部に設けられてシートベルト5を導入するために、前記ガイド部16にはシートベルト5の厚さより少し大きな間隔を存して上部に縦方向に延びた導入口14が形成されると共に、この導入口14に連通して縦方向の開口寸法がシートベルト5の厚さより少し長く且つ横方向の開口寸法がシートベルト5の幅より少し長い案内口15が形成される。
【0018】
そして、前記ベルトガイド8の係止体8Dの上部には前記中空部8A内に突出する係止部17が形成され、この係止部17は中空部8A内に突出しない部分の厚さから上方に向けて徐々に厚さを増して突出するような傾斜部17Aと、その上端部の抜け止め部17Bとが形成されている。
【0019】
以上のような構成にして、シートバック3の骨格を形成するシートバックフレーム10に水平な固定部7A、7Aを溶接することによりベルトガイド支持部7を固定し、図3に示す状態から図1に示すように、次いで鍔部13の下面に接着剤を塗布した状態のベルトガイド8の中空部8A内に前記脚部7B、7B及び水平部7Cを挿入するようにして、前記シートバック3に開設された開口12を介してベルトガイド8とベルトガイド支持部7とを作業者が嵌め合わせる。
【0020】
この嵌め込みの際のベルトガイド8の下降動作によって、ベルトガイド支持部7の水平部7Cがベルトガイド8の中空部8A内を上昇することとなるが、この水平部7Cがベルトガイド8の係止体8Dの係止部17の傾斜面17Aに当接して案内されながら上昇するので、中空部8A内に突出していた係止部17の突出部分が中空部8A外に移動するようにベルトガイド8の係止体8Dは下端部を支点として前方(外方)へ揺動することとなる。
【0021】
そして、更なるベルトガイド8の下降動作によって、やがて水平部7Cと傾斜面17Aとの当接が解除されると、ベルトガイド8の係止体8Dは下端部を支点として後方へ揺動して、係止部17の突出部分が中空部8A内に移動することとなり、中空部8Aの上終端となる前記鍔部13の下面に水平部7Cが当接することとなり、係止部17の上端部の抜け止め部17Bによりベルトガイド支持部7にベルトガイド8が取付け固定されることとなる。
【0022】
即ち、ベルトガイド8の係止体8Dが後方へ揺動することにより、係止部17の突出部分が中空部8A内に入り込むように内方へ移動することとなり、図2に示すように、前記ベルトガイド支持部7の水平部7Cの下方位置に前記抜け止め部17Bが位置することにより、水平部7Cは前記鍔部13と係止部17との間に位置して、前記ベルトガイド支持部7の水平部7Cが前記ベルトガイド8の中空部8A内から抜けないように、前記抜け止め部17Bによりロックされる。
【0023】
また、このベルトガイド支持部7へのベルトガイド8の取付けにより、同時に前記シートバック3の表皮(表層)3A表面にベルトガイド8の鍔部13下面が接着剤を介して接着される。
【0024】
従って、従来はベルトガイド支持部にベルトガイドをボルトにより取付けるという作業が必要であり、ボルトの頭部が見えて外観の見栄えが悪く好ましくないので、キャップで外部から見えないようにするとコスト高ともなり、取付け穴を設ける必要があるためにベルトガイド支持部が大きくなるという問題もあったが、本発明によれば外観上の見栄えが良好で、作業工数も減少して簡単に取り付けができて、安価なシートベルト誘導装置を提供することができる。
【0025】
以上本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0026】
1 後部シート
3 シートバック
6 シートベルト誘導装置
7 ベルトガイド支持部
7B 脚部
7C 水平部
8 ベルトガイド
8A 中空部
8B 前壁
8D 係止体
9 埋設部
10 シートバックフレーム
13 鍔部
17 係止部
17A 傾斜面
17B 抜け止め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバック上部の乗員の肩部の近傍位置に配置され、シート後方から導出されたシートベルトを案内するシートベルト誘導装置において、
前記シートバックの骨格を形成するシートバックフレームに固定される固定部とロック部とを備えるベルトガイド支持部と、
このベルトガイド支持部に取付けられて中空筒部と抜け止め部とシートベルトが挿入されるガイド部とを備えて前記シートベルトを案内するベルトガイドとを備え、
前記ベルトガイド支持部のロック部が前記ベルトガイドの前記中空筒部内に挿入されるようにこのベルトガイドをベルトガイド支持部に取付けると、前記ロック部が前記中空筒部内から抜けないように前記抜け止め部によりロックされることを特徴とするシートベルト誘導装置。
【請求項2】
シートバック上部の乗員の肩部の近傍位置に配置され、シート後方から導出されたシートベルトを案内するシートベルト誘導装置において、
前記シートバックの骨格を形成するシートバックフレームに固定される固定部とロック部とを備えるベルトガイド支持部と、
このベルトガイド支持部に取付けられて中空筒部と抜け止め部とシートベルトが挿入されるガイド部とを備えて前記シートベルトを案内するベルトガイドとを備え、
前記ベルトガイドに前記中空筒部を形成する側壁に揺動可能であって揺動していない状態では前記中空筒部内に係止部が入り込む係止体を形成し、
前記ベルトガイドをベルトガイド支持部に取付ける際に、前記ベルトガイド支持部のロック部が前記ベルトガイドの前記中空筒部内に挿入するように前記ベルトガイドを下降させると、前記ロック部が前記係止部に当接して前記係止体を外方へ揺動させ、更なる前記ベルトガイドを下降させると前記ロック部と前記係止部との当接が解除されて前記係止体が内方へ揺動して前記係止部が前記中空筒部内に入り込むことにより、前記ロック部が前記中空筒部内から抜けないように前記抜け止め部によりロックされることを特徴とするシートベルト誘導装置。
【請求項3】
前記ベルトガイドの中空筒部とガイド部との間に水平方向に延びる鍔部を形成し、前記ベルトガイド支持部に前記ベルトガイドに取付けた状態で、前記シートベルトとバックの表層に前記鍔部を固定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシートベルト誘導装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−6479(P2012−6479A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143950(P2010−143950)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】