説明

シートモールディングコンパウンドで使うポリマー/WUCSマット

強化繊維の束と結合材料とで形成されたモールディングマット(295)の製造方法を提供する。強化繊維は、好ましくはウェットユースのチョップドストランドガラス繊維(WUCS)である。結合材料は、強化繊維より低い融点を有するいずれの熱硬化性材料でもよい。ウェットユースのチョップドストランドガラス繊維を部分的に広げ、かつ結合繊維をフィラメント化し、強化繊維と結合繊維をブレンドし、強化繊維と結合繊維をシートに形成し、かつシートを結合することによって、モールディングマットを形成することができる。結合工程の際、結合繊維の融点より高いが、ガラス繊維の融点より低い温度にシートを加熱する。このようにして形成されたモールディングマットをシートモールディングコンパウンド中の強化材料として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野及び産業上の利用可能性〕
本発明は、一般的に強化複合製品に関し、さらに詳しくは、結合材料と、強化繊維の束とで形成され、かつシートモールディングコンパウンド中の強化材料として使用可能なモールディングマットに関する。
【0002】
〔発明の背景〕
ガラス繊維は種々の技術で有用である。例えば、ガラス繊維をポリマー材料中の強化材として用いて、ガラス繊維強化プラスチック又は複合物を形成する。連続又はチョップドフィラメント、ストランド、ロービング、織布、不織布、メッシュ、及びスクリムの形態でガラス繊維を用いてポリマーを強化している。ガラス繊維は大気条件の変化に応じて収縮又は伸張しないことから寸法安定性を提供するので、一般的にガラス繊維強化プラスチック又は複合物を形成するためにポリマー材料中の強化材として使用される。さらに、ガラス繊維は、高い引張り強さ、耐熱性、防湿性、及び高い熱伝導性を有する。
典型的に、ブッシュ又はオリフィスからの溶融ガラス繊維のストリームを細くすることによってガラス繊維を形成する。繊維をブッシュから引き出した後、典型的に、フィルム形成ポリマー、カップリング剤、及び潤滑剤を含有する水性サイジング組成物を繊維に施して、次の処理中の該繊維の破損を防止し、かつ該繊維の、強化する予定のマトリックス樹脂との適合性を高める。サイジング組成物を施した後、該サイズド繊維を別個のストランド中に集めて、ガラス繊維パッケージを製造する。次にガラス繊維パッケージを加熱して水を除去し、ガラス繊維の表面を軽く被覆する残留物として該サイズを置くことができる。結果の乾燥したガラス繊維パッケージの多数が強固になって、ロービングドフ(doff)又はパッケージと呼ばれるスプール上に巻き付けられる。
シートモールディングコンパウンド(SMC)法で強化ロービングを使用し得る。典型的な従来のSMC製造法では、不飽和ポリエステル樹脂又はビニルエステル樹脂プレミックス等の第1樹脂ペーストの層を、非接着面を有するプラスチックキャリヤーシート上に計り取る。次に、樹脂ペーストの第1層上にチョップドガラス繊維ロービング束を置く。樹脂ペーストの第2層もプラスチックキャリヤーシート上に計り取ってからチョップドガラス/第1樹脂ペーストのトップ上に置いてサンドイッチ材料を形成する。樹脂ペーストの第1及び第2層は、典型的に、樹脂と添加剤、例えば充填材、顔料、UV安定剤、触媒、開始剤、阻害剤、離型剤、及び/又は増粘剤などとの混合物を含む。次に、このサンドイッチ状の材料を圧縮して、結果として生じるSMC材料全体にポリマー樹脂マトリックスとガラス繊維束を分布させてから巻き、成形プロセスで後で使用するために箱内に置く。
【0003】
SMC化合物の製造では、チョップドガラス繊維束がポリマーマトリックス材料と接触することが望ましい。この接触の1つの尺度は濡れと呼ばれ、ガラス束がどれほどよくマトリックスMCS樹脂材料で包み込まれているかの尺度である。ガラス繊維束が完全に濡れ、乾燥繊維がないことが望ましい。この初期処理中の不完全な濡れは、SMC化合物のその後の処理に有害な作用を与えかねないばかりでなく、最終複合製品の表面特性に影響を及ぼし得る。例えば、不十分な濡れの結果、シートモールディングコンパウンドの不十分なモールディング特性となり、最終複合部品の低い複合強度と表面の欠陥をもたらす。SMC製造法の処理能力、例えばライン速度や生産性は、ロービングチョップドガラス束をいかに良く、かついかに速く完全に濡らせるかによって制限される。
SMC複合製品の製造で直面する別の問題は、チョップドガラスロービングを樹脂ペースト上に一様に分布させることである。ガラス繊維の均一な分布が提供されないと、最終複合製品は、望ましくない特性を有し得る。チョップドガラスロービングを使用する従来のSMC法の別の問題は、製造中のチョップドガラスの添加工程は遅く、かつ費用がかかることである。さらに、ルーズなガラスは該繊維がSMC化合物を製造する労働者と接触すると、皮膚を刺激する可能性があることである。
従って、当該技術では、濡れ性、ひいてはSMC生産率と複合製品の物理的性質を改善し、改良された構造特性と熱特性を有し、かつ製造費用の安価な、SMC複合製品で強化材料として使うための不織マットが技術的に要望されている。
【0004】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、強化繊維の束と結合繊維を含むモールディングマットの製造方法を提供することである。モールディングマットの製造では、ウェット強化繊維のベイル(bale)を部分的に広げ(open)、かつ該強化繊維から水を除去することによって少なくとも部分的に脱水し、脱水した強化繊維束を形成する。この強化繊維束を結合繊維と混合し、強化繊維束と結合繊維との実質的に均質な混合物を形成する。少なくとも1つの典型的な実施態様では、脱水した強化繊維の束と混合する前に、結合繊維をオープニング装置でフィラメント化する。次に、強化繊維束と結合繊維の混合物をシート形成機に通すこと等によって、該混合物をシートに形成する。任意に、シートをニードリングプロセスに供して、強化繊維束と結合繊維を機械的に結合してもよい。次に、シートを結合繊維の融点より高いが、強化繊維束の融点より低い温度に加熱して結合繊維と強化繊維束とを結合することができる。バインダー樹脂をシートに添加すると、強化繊維束と結合繊維の結合を補助することができる。結果として生じるモールディングマットは、シートモールディングコンパウンド中の強化材として使用することができる。
【0005】
本発明の別の目的は、シートモールディングコンパウンド中の強化材として使用し得るモールディングマットを提供することである。このモールディングマットは、脱水したウェット強化繊維の束と少なくとも1種の結合繊維の実質的に均一な分布で形成される。ウェット強化繊維は、良い構造特性及び熱特性を与える有機、無機、又は天然繊維でよい。好ましくは、ウェット強化繊維はウェットユースのチョップドストランドガラス繊維である。該結合材料は、強化繊維より低い融点を有する。好適な結合材料として、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ、ポリアミド及びスチレンが挙げられる。モールディングマットは、約400〜約2000g/m2の重量分布を有する。
【0006】
本発明のさらに別の目的は、シートモールディングコンパウンド材料の製造方法を提供することである。第1熱硬化性樹脂ペーストを第1キャリヤーフィルムの上に分配装置によって置く。本発明に従って形成されたモールディングマットを第1樹脂ペーストの上に置く。少なくとも1つの典型的な実施態様では、第2熱硬化性樹脂ペーストを第2キャリヤーフィルムの上に置き、かつ第2熱硬化性樹脂ペーストがモールディングマット層の上に位置づけられるように、第2熱硬化性樹脂ペーストをモールディングマット層の上に位置づける。このようにして形成されたサンドイッチ状の材料は、第1キャリヤーフィルム、第1熱硬化性樹脂ペースト、モールディングマット、第2熱硬化性樹脂ペースト、及び第2キャリヤーフィルムで構成される。本発明の代替実施態様では、第2熱硬化性樹脂ペーストをモールディングマット層の上に置き、第2キャリヤーフィルムを第2熱硬化性樹脂ペーストの上に位置づける。サンドイッチ状の材料を一連のベルトに通して第1及び第2熱硬化性樹脂ペーストと強化繊維束をモールディングマット内で分散させ、分散した熱硬化性樹脂ペーストとガラス繊維束の混合物で構成されるコア層を形成する。次に、ベルトから現れるシートモールディングコンパウンド(SMC)材料は巻取ロール上に巻かれ、或いは、後で使用するため箱内に置かれる。
【0007】
本発明の利点は、モールディングマットが強化繊維束と結合繊維の均一又は実質的に均一な分布を有し、改良された強度、剛性、耐衝撃性、及び表面品質を与えることである。
また、本発明のモールディングマットが従来のチョップドストランドガラスマットに比べて均一な重量一貫性と均一な特性を有することも本発明の利点である。
本発明の別の利点は、ウェットユースのチョップドストランドガラス繊維を強化繊維として使用すると、該ガラス繊維中に存在する湿分のためほとんど静電気を生じずにガラス繊維を容易に広げ得ることである。さらに、ウェットユースのチョップドストランドガラス繊維はドライチョップド繊維より安価に製造される。ドライ繊維は、典型的に、チョップする前に別個の工程で乾燥させて包装されるからである。従って、モールディングマットの製造でウェットユースのチョップドストランドガラス繊維を使用すると、SMC複合製品を低コストで製造することができる。
本発明の上記及び他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明を考慮することでさらに完全に明らかになるだろう。しかし、図面は説明の目的のためであり、かつ本発明の限界を定義するものと解釈すべきでないことを明白に理解すべきである。
本発明の以下の詳細な説明を考慮すると、特に添付図面と共に考慮すると、この発明の利点が明白になるだろう。
【0008】
〔発明の詳細な説明及び好ましい実施態様〕
特に定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本発明の実施又は試験では、本明細書で述べるものと同様又は均等ないずれの方法及び材料も使用できるが、本明細書では好ましい方法と材料について述べる。
図面中、線、層、及び領域の厚さは明瞭さのため拡大されていることがある。図面全体を通じて同様の符号は同様の要素を示すことに注意すべきである。用語“トップ”、“ボトム”、“サイド”等は、本明細書では説明目的のためだけに使用される。層、領域、又は他の材料等の要素が別の要素の“上”であると表されている場合、該要素は、直接別の要素の上にあってもよく、或いは介在要素が存在し得ることが分かるだろう。要素若しくは層が別の要素若しくは層“に隣接して”又は“と向かい合って”いると記述されている場合、当該要素若しくは層が別の要素若しくは層に直接隣接し、又は別の要素若しくは層と直接向かい合っていてもよく、或いは介在要素が存在し得ることを理解すべきである。要素又は層が別の要素の“上方”にあると表されている場合、該要素は、直接別の要素の上方にあってもよく、或いは介在要素が存在し得ることも分かるだろう。さらに、用語“強化繊維(reinforcing fiber)”及び“強化繊維(reinforcement fiber)”は本明細書では相互交換可能に使用される。
【0009】
本発明は、シートモールディングコンパウンド中の強化材として使用可能な、強化繊維と結合繊維とで形成されるモールディングマットに関する。強化繊維は、良い構造品質及び良い熱的特性を与えるために適したいずれのタイプの繊維でもよい。強化繊維は、いずれのタイプの有機、無機、又は天然繊維でもよい。強化繊維の好適例として、ガラス繊維、ウールガラス繊維、天然繊維、金属繊維、セラミック繊維、鉱物繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、及びポリマーベース熱可塑性材料、例えば、限定するものではないが、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、ポリ塩化ビニル(PVC)繊維、及びエチレン酢酸ビニル/塩化ビニル(EVA/VC)繊維、及びその混合物が挙げられる。モールディングマットは、全体的に1種の強化繊維(例えば、天然繊維又はガラス繊維)で形成され、或いは、モールディングマットの形成で1種より多くの強化繊維を使用してもよい。本発明と共に使用される場合、用語“天然繊維”は植物のいずれの部分から抽出される植物繊維をも指し、植物の部分としては、限定するものではないが、幹、種、葉、根、又は靭皮が挙げられる。好ましくは、強化繊維はガラス繊維である。
強化繊維は、個々の長さが約11〜約75mmの長さ、好ましくは約12〜約30mmの長さを有するチョップド繊維でよい。さらに、強化繊維は、約8〜約35ミクロンの直径、好ましくは約12〜約23ミクロンの直径を有し得る。さらに、強化繊維はモールディングマット内で相互に変化する長さ(アスペクト比)と直径を有し得る。強化繊維は、全繊維の質量の約80〜約98質量%の量でモールディングマット中に存在し、好ましくは約85〜約95質量%の量でモールディングマット中に存在し得る。
【0010】
結合繊維は、前記強化繊維より低い融点を有するいずれの熱可塑性又は熱硬化性材料でもよい。モールディングマットで使うのに適した熱可塑性及び熱硬化性材料の非限定例として、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンスルフィド(PPS)繊維、ポリ塩化ビニル(PVC)繊維、エチレン酢酸ビニル/塩化ビニル(EVA/VC)繊維、低級アルキルアクリレートポリマー繊維、アクリロニトリルポリマー繊維、部分加水分解ポリ酢酸ビニル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリビニルピロリドン繊維、スチレンアクリレート繊維、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリスルフィド、ポリカーボネート、レーヨン、ナイロン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、並びにスチレン/ブタジエンゴム(SBR)及びブタジエン/アクリロニトリルゴム(NBR)等のブタジエンコポリマーが挙げられる。1種以上の熱硬化性材料を用いてモールディングマットを形成することが望ましい。
さらに、例えば、マレイン酸又はアクリル酸等の酸でカルボキシル化することによって、結合繊維を酸性基で官能化してもよく、或いはアンヒドリド基又は酢酸ビニルを加えて結合繊維を官能化してもよい。該結合材料は、ポリマー繊維の形態ではなく、フレーク、顆粒、又は粉末の形態でもよい。
【0011】
結合材料は、多成分繊維の形態、例えば、二成分繊維、三成分繊維、又は熱硬化性樹脂被覆ガラス繊維のようなプラスチック被覆鉱物繊維の形態でもよい。二成分繊維は、鞘-核(sheath-core)、サイドバイサイド(side-by-side)、アイランドインザシー(islands-in-the-sea)、又はセグメント化パイ(segmented-pie)配列で配置されていてよい。好ましくは、二成分繊維は鞘-核配列で形成され、鞘が第1ポリマー繊維で形成され、この第1ポリマー繊維が、第2ポリマー繊維で形成された核を実質的に取り囲んでいる。鞘繊維が全体的に核繊維を取り囲んでいる必要はない。第1ポリマー繊維は第2ポリマー繊維の融点より低い融点を有するので、該二成分繊維を第1ポリマー繊維(鞘繊維)の融点より高く、かつ第2ポリマー繊維(核繊維)の融点より低い温度に加熱すると、第1ポリマー繊維は軟化又は融解するが、第2ポリマー繊維は元のままである。この第1ポリマー繊維(鞘繊維)の軟化が第1ポリマー繊維を粘着性にして第1ポリマー繊維をそれ自体及び密接している他の繊維に結合させるだろう。
二成分ポリマー繊維を調製するため、多くの材料の組合せ、例えば、限定するものではないが、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスルフィド、ポリオレフィン、及びポリエチレン繊維を用いた組合せを使用することができる。二成分繊維のための特定ポリマーの組合せとして、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、及びポリプロピレン/ポリエチレンが挙げられる。他の非限定的な二成分繊維の例として、コポリエステルポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート(coPET/PET)、ポリ-1,4-シクロヘキサンジメチルテレフタレート/ポリプロピレン(PCT/PP)、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート(HDPE/PET)、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン(HDPE/PP)、線状低密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート(LLDPE/PET)、ナイロン6/ナイロン6,6(PA6/PA6,6)、及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート(6PETg/PET)が挙げられる。
二成分ポリマー繊維は、約1〜約18デニールのデニール及び約2〜約4mmの長さを有し得る。第1ポリマー繊維(鞘繊維)は約66〜約200℃(約150〜約400°F)の範囲の融点を有することが好ましく、さらに好ましくは約77〜約150℃(約170〜約300°F)の範囲である。第2ポリマー繊維(核繊維)は、より高い融点を有し、好ましくは約177℃(約350°F)より高い。
該結合材料は、全繊維の質量の約2〜約20質量%、好ましくは約2〜約10質量%の量でモールディングマット中に存在し得る。
【0012】
モールディングマットは、ドライレイド(dry-laid)法、例えば2003年10月17日提出の米国特許出願10/688,013号、Enamul Haqueの表題“ドライレイド法でウェットユースのチョップドストランドガラスを用いた熱可塑性複合物の開発(Development Of Thermoplastic Composites Using Wet Use Chopped Strand Glass In A Dry Laid Process)”(該文献は参考としてその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているドライレイド法によって形成される。好ましい実施態様では、モールディングマットを形成するために使用する強化繊維はウェット強化繊維であり、最も好ましくはウェットユースのチョップドストランドガラス繊維である。強化繊維として使うウェットユースのチョップドストランドガラス繊維は、技術上周知の常法で形成される。該ウェットユースのチョップドストランドガラス繊維は、約5〜約30%の含水率、さらに好ましくは約5〜約15%の含水率を有することが望ましい。
ウェットユースのチョップドストランドガラス繊維の使用は、従来のドライレイドガラス法を超える費用上の利点がある。例えば、ウェットユースのチョップドストランドガラス繊維は、ドライユースのチョップドストランドガラス繊維(DUCS)等のドライチョップド繊維より製造費用が安い。ドライ繊維は典型的にチョップするまえに個別工程で乾燥かつ包装されるからである。結果として、ウェットユースのチョップドストランドガラス繊維の使用により、低コストでモールディングマットを製造することができる。
【0013】
モールディングマットの典型的な製造方法は図1に一般的に示され、強化繊維と結合繊維を部分的に広げる工程(工程100)、強化繊維と結合繊維をブレンドする工程(110)、強化繊維と結合繊維をシートに形成する工程(工程120)、任意に、前記シートをニードリングする工程(工程130)、及び強化繊維と結合繊維を結合する工程(工程140)を含む。
強化繊維と、結合材料を形成する繊維は、典型的に、個々の繊維のベイルの形態で集塊している。ガラス繊維は、典型的に個々の繊維の“ボックス”の形態で集塊している。ウェット強化繊維(例えば、ウェットユースのチョップドストランドガラス繊維(WUCS)のボックス)は、該ガラス繊維中に存在する湿分のためほとんど静電気を生じずに容易に広げられる。モールディングマットの形成では、強化繊維及び結合繊維のベイルを、該業界で共通のベイルオープニングシステム等のオープニングシステムで部分的に広げる。オープニングシステムが働いて、クラスター化繊維の結合を減らし、繊維毎の接触を増強する。
さて、図2に戻ると、ウェット強化繊維と結合繊維のオープニングが最も良く分かる。ウェット強化繊維200を第1オープニングシステム220に供給し、結合繊維210を第2オープニングシステム230に供給して、ウェット強化繊維ベイルと結合繊維ベイルをそれぞれ少なくとも部分的に広げる。第1オープニングシステム220は、ウェット強化繊維200のベイルを部分的には広げるが、フィラメント化しないことが望ましい。図1及び2に示される典型的な方法は結合繊維210を第2オープニングシステム230で広げる工程を示しているが、結合繊維210がフィラメント形態で存在又は得られ(図示せず)、ベイルの形態で存在又は得られない場合、結合繊維210を繊維移動システム250に直接供給してよいことに留意すべきである。このような実施態様は本発明の範囲内であると考えられる。
第1及び第2オープニングシステム220、230は、好ましくはベイルオープナーであるが、結合繊維210及びウェット強化繊維200のベイルを広げるのに適したいずれのタイプのオープナーでもよい。オープナーのデザインは、広げる繊維のタイプと物理的性質によって決まる。本発明で使うのに適したオープナーには、秤量デバイスがあるか又は無い通常の標準的ないずれのタイプのベイルオープナーも含まれる。秤量デバイスが働いて、部分的に広げられた繊維が該ベイルオープナーを通過するとき、該部分的に広げられた繊維を連続的に秤量して、次の処理工程に進む繊維の量をモニターする。ベイルオープナーは種々の微細オープナー、1種以上のリッカイン(licker-in)ドラム又は鋸歯状ドラム、フィーディング(feeding)ローラー、及び/又はフィーディングローラーとノーズバー(nose bar)の組合せを備え得る。
【0014】
これとは別の、結合材料がフレーク、顆粒、又は粉末であって(図示せず)、結合繊維でない場合の実施態様では、第2オープニングシステム230を強化繊維200と混合するための繊維移動システム250に該粉末状、フレーク状、又は顆粒の結合材料を配給するのに適した装置と置き換えることができる。当業者は、好適な装置を容易に特定するだろう。結合繊維210に加え、フレーク、顆粒、又は粉末状態の樹脂を使用する実施態様(図示せず)では、フレーク、顆粒、又は粉末を配給するための装置は、典型的には第2オープニングシステム230の代わりをしない。該フレーク、顆粒、又は粉末を、強化繊維束と結合材料を混合するための繊維移動システム250に直接供給してよい。
次に、部分的に広げられたウェット強化繊維200のベイル(強化繊維束)を第1オープニングシステム220から凝縮ユニット240に供給して該ウェット繊維から水を除去し得る。典型的な実施態様では、約70%を超えるフリーな水(強化繊維の外部にある水)が除去される。しかし、好ましくは、実質的にすべての水が凝縮ユニット240で除去される。ここで使用する用語“実質的にすべての水”とは、フリーな水のすべて又はほとんどすべてが除去される意であることに留意すべきである。凝縮ユニット240は技術上周知のいずれの乾燥デバイス又は水除去デバイスでもよく、限定するものではないが、エアドライヤー、オーブン、ローラー、吸引ポンプ、加熱ドラムドライヤー、赤外線加熱源、ホットエアブロワー、又はマイクロ波放出源が挙げられる。
【0015】
強化繊維200の束と結合繊維210を一緒に繊維移動システム250でブレンドする。好ましい実施態様では、高速空気流内で繊維をブレンドする。繊維移動システム250は、結合繊維210と強化繊維200の束をシート形成機270に輸送する導管として働くと共に、空気流内で繊維を実質的に均一に混合するために働く。強化繊維200と結合繊維210をできる限り均一に分布させることが望ましい。第1及び第2オープニングシステム220、230について上述した秤量デバイスによって、或いは繊維が第1及び第2オープニングシステム220、230を通過するときの量及び/又は速度によって、繊維移動システム250内の気流に入る強化繊維200と結合繊維210の比を制御することができる。好ましい実施態様では、空気流中に存在する強化繊維200の結合繊維210に対する比は90:10である。
【0016】
繊維移動システム250内の空気流によって、強化繊維200と結合繊維210の混合物をシート形成機270に移動することができ、シート形成機270で繊維がシートに形成される。整形マットの形成で、1又は2以上のシート形成機を利用し得る。本発明のいくつかの実施態様では、シート形成機270に入る前に、ブレンドされた繊維を繊維移動システム250で装填ボックスタワー260に輸送し、そこで強化繊維200の束と結合繊維210を、例えばコンピューター監視電子秤量装置によって容積測定してシート形成機270に供給する。シート形成機270の内部に装填ボックスタワー260を配置してもよく或いはシート形成機270の外部に装填ボックスタワー260を配置してもよい。装填ボックスタワー260は、シート形成機270に入る前に強化繊維束200と結合繊維210をさらにブレンド及び混合するための整流装置を含んでもよい。いくつかの実施態様では、凝縮器と分配コンベヤーを有するシート形成機270を用いて、装填ボックスタワー260への繊維の供給を高め、かつ装填ボックスタワー260を通る空気の量を増やすことができる。広げられた繊維の交差分布を高めるため、シートの方向に対して横断的に分配コンベヤーを動かしてもよい。結果として、結合繊維210と強化繊維200の束がほとんど又は全く圧力なしで最小限の繊維破損で装填ボックスタワー260に移動し得る。
シート形成機270で形成されたシートは、強化繊維の束200と結合繊維210の所望の比と重量分布の均一又は実質的に均一な分布を含む。シート形成機270で形成されたシートは、約80〜約2000g/m2の重量分布、好ましくは約400〜約1000g/m2の重量分布を有し得る。
本発明の1又は2以上の実施態様では、シート形成機270を出るシートをニードルフェルティング(needle felting)装置280におけるニードリング(needling)プロセスに供して、有刺針又はフォーク状針を下向き及び/又は上向きの動きでシートの繊維に通して押し出して、強化繊維200と結合繊維210をもつれさせ又は絡み合わせて、マットに機械的な強度と統合性を与える。ニードルフェルティング装置280は、ウェブ供給機構と、ニードルボード、機械の幅1メートル当たり約500〜約7,500個の範囲の有刺フェルティングニードルを有するニードルビームと、ストリッパープレートと、ベッドプレートと、巻取機構とを含み得る。有刺フェルティングニードルをシートの中と外に繰り返し通すことによって、強化繊維200と結合繊維210の機械的インターロッキングを達成する。当業者は、本発明の方法で使うために選ばれた個々の強化繊維とポリマー繊維で使うための最適なニードル選択を容易に特定するだろう。
結合繊維210を用いて強化繊維200を相互に結合するが、熱結合システム290にシートを進める前に、結合剤としてバインダー樹脂285を添加し得る。バインダー樹脂285は樹脂の粉末、フレーク、顆粒、フォーム、又は液体スプレーの形態でよい。例えば、フラッド及び抽出法のようないずれの適切な方法によってもバインダー樹脂285を添加することができ、或いはシート上にバインダー樹脂285を噴霧することによってバインダー樹脂285を添加してもよい。シートに添加するバインダー樹脂285の量は、モールディングマットの所望特性によって変化し得る。塩化アンモニウム、p-トルエン、スルホン酸、硫酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、又は硝酸亜鉛などの触媒を用いて、硬化速度及び硬化したバインダー樹脂285の品質を高めることができる。
強化繊維200をさらに結合するために利用し得る単独の、又は本明細書で述べる他の結合法に加えて行う別の方法は、ラテックス結合法である。ラテックス結合法では、エチレン(Tg -125℃)、ブタジエン(Tg -78℃)、アクリル酸ブチル(Tg -52℃)、アクリル酸エチル(Tg -22℃)、酢酸ビニル(Tg 30℃)、塩化ビニル(Tg 80℃)、メタクリル酸メチル(Tg 105℃)、スチレン(Tg 105℃)、及びアクリロニトリル(Tg 130℃)等のモノマーから形成されたポリマーを結合剤として使用する。ガラス転移温度(Tg)が低いほど軟らかいポリマーをもたらす。シートが熱結合システム290に入る前に、ラテックスポリマーをスプレーとして添加することができる。シートが熱結合システム290に入ると、ラテックスポリマーが融けて強化繊維200を互いに結合する。
単独で、又は本明細書で述べる他の結合法と組み合わせて使用し得るさらなる任意の結合法は化学結合法である。液体ベース結合剤、粉末接着剤、フォーム、及びいくつかの例では、有機溶剤を化学結合剤として使用できる。化学結合剤の好適な例として、限定するものではないが、アクリレートポリマー及びコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、酢酸ビニルエチレンコポリマー、及びその組合せが挙げられる。例えば、ポリ酢酸ビニル(PVA)、エチレン酢酸ビニル/塩化ビニル(EVA/VC)、低級アルキルアクリレートポリマー、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリルポリマー、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、及び塩化ビニリデンと他のモノマーのコポリマー、部分加水分解ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、及びスチレンアクリレートを化学結合剤として使用し得る。化学結合剤を含浸させ、コーティングし、又は噴霧することによって、化学結合剤をシートに均一に施すことができる。
シートがシート形成機270を出た後、又はシートの任意的なニードリングの後、シートを熱結合システム290に進めて強化繊維200と結合繊維210を結合してモールディングマット295を形成し得る。しかし、ニードルフェルティング装置280内でシートがニードリングされて、強化繊維200と結合繊維210が機械的に結合している場合、モールディングマット295を形成するためにシートを熱結合システム290を通過させる必要がないことを理解すべきである。
熱結合システム290では、結合繊維210の融点より高いが、強化繊維200の融点より低い温度にシートを加熱する。結合繊維210として二成分繊維を使用する場合、熱結合システム290内の温度は、鞘繊維の融点より高いが、強化繊維200の融点より低い温度に上げられる。結合繊維210をその融点、又は結合繊維210が二成分繊維の場合は鞘繊維の融点より高い温度に加熱すると、結合繊維210が接着性になって、結合繊維210をそれ自体及び隣接する強化繊維200に結合させる。融解した結合繊維210が接着剤として作用して、分散したガラス繊維を束状態で保持する。結合繊維210が完全に融解すると、融解した繊維は、強化繊維200を包み込むことができる。熱結合システム290内の温度が強化繊維及び/又は核繊維の融点ほどには上昇しない限り、これら繊維は、熱結合システム290及びモールディングマット295内で繊維状態のままだろう。
熱結合システム290は、技術上周知のいずれの加熱及び/又は結合法をも包含し得る。例えば、オーブン結合法、強制空気を用いるオーブン結合法、赤外線加熱法、熱カレンダー法、ベルトカレンダー法、超音波結合法、マイクロ波加熱法、及び加熱ドラムが挙げられる。任意に、これら結合法の2種以上を併用して強化繊維200と結合繊維210を結合することができる。熱結合システム290の温度は、使用する個々の結合繊維210、バインダー樹脂、及び/又はラテックスポリマー、並びにシート内に二成分繊維が存在するか否かによって変化する。熱結合システム290から出現するモールディングマット295は、束状態で分散した結合繊維と強化繊維を含む。ウェットユースのチョップドストランドガラスをウェット強化繊維200として使用する場合、熱結合システム290から出現するモールディングマット295は、束状態で均一又はほとんど均一に分散した結合繊維210とガラスフィラメントを含む。モールディングマット295内の強化繊維束200と結合繊維210との均一又は実質的に均一な分布は、最終的な複合製品に、改良された強度、改良された熱的特性、改良された剛性、及び改良された耐衝撃性を与える。さらに、モールディングマット295は、従来のチョップドストランドガラスマットに比し、より均一な重量一貫性を有する。本発明のモールディングマットの均一な重量一貫性は、最終製品の曲げ強さ及び衝撃強さ等の均一な特性をもたらす。本発明のモールディングマットでは、ガラス含量の可変性が約±1.5%であり、重量一貫性が約±5%である。さらに、本発明のモールディングマットの均一な特性は、伝統的なチョップドストランドガラスマットより低重量の強化材の使用を許容する。
モールディングマット295は、該モールディングマットで用いる強化繊維及び/又は結合繊維の重量、長さ、及び/又は直径を変えることによって、特有の用途で必要な物理的性質(例えば、剛性又は強度)を最適化する、又はあつらえる能力を提供する。さらに、個々のタイプの結合繊維の特性とマッチングするように、強化繊維のサイジング化学を容易に適合させることができる。結果として、多種のモールディングマット及びモールディングマット製の複合製品、例えばシートモールディングコンパウンドから形成される製品を作ることができる。
代替実施態様では(図示せず)、ウェットレイド(wet-laid)法でモールディングマットを形成する。例えば、バインダーのみならず、分散剤、粘度変性剤、消泡剤、及び/又は他の化学薬剤を含む水溶液に強化繊維と結合繊維を分散させ、かつ撹拌してスラリーを形成する。次に、スラリー中にある結合繊維と強化繊維を移動スクリーン上に置いて水を除去する。任意に、マットをオーブンで乾燥させてよい。次に、マットをバインダー組成物に浸して該マットにバインダー組成物を含浸させ得る。次に、マットを硬化オーブンに通して如何なる残存水をも除去し、バインダーを硬化させ、かつ結合繊維の少なくとも一部を融かして、強化繊維と結合繊維を互いに結合する。結果として生じるモールディングマットは、束状態で分散した結合繊維とガラスフィラメントの集合である。
【0017】
本発明の少なくとも1つの典型的な実施態様では、モールディングマット295をシートモールディングコンパウンド(SMC)法で利用する。本発明のモールディングマットを取り込んだシートモールディングコンパウンド法の一例を図3に示す。第1キャリヤーフィルム310を第1キャリヤーロール320から移動コンベヤーベルト300上に供給する。第1熱硬化性樹脂ペースト315を第1キャリヤーフィルム310に分配装置325によって施す。次に、本発明に従って形成されたモールディングマット295をロール330から第1キャリヤーフィルム310の上の第1熱硬化性ペースト315の上に供給する。第2熱硬化性樹脂ペースト335を、第2キャリヤーロール345から供給された第2キャリヤーフィルム340の上に位置づけ、かつ、第2キャリヤーフィルム上の第2熱硬化性樹脂ペースト335がモールディングマット層と接触して、第1キャリヤーフィルム310、第1熱硬化性樹脂ペースト315、モールディングマット295、第2熱硬化性樹脂ペースト335、及び第2キャリヤーフィルム340を含むサンドイッチ状の材料を形成するようにモールディングマット層350の上に位置づける。代替実施態様では(図示せず)、第2熱硬化性樹脂ペースト335をモールディングマット層350の上に位置づけ、第2キャリヤーフィルム340を第2熱硬化性樹脂ペースト335の上に位置づけてもよい。
1又は2種以上の適切な熱硬化性材料、例えばポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ、ポリイミド、及び/又はスチレンと、充填材、顔料、UV安定剤、触媒、開始剤、阻害剤、離型剤、増粘剤などのいずれかの所望の添加剤とを混合することによって、第1及び第2熱硬化性樹脂ペースト315、335を形成することができる。熱硬化性樹脂ペースト315、335の形成では、充填材を熱硬化性材料と混合することが望ましい。充填材の好適な例として、炭酸カルシウム、アルミナ三水和物、マイカ、タルク、ガラスバブル、及びウールアストナイト(woolastonite)が挙げられる。しかし、第1及び第2熱硬化性樹脂ペースト315、335と共に充填材を分配装置325に添加することも本発明の範囲内であると考えられる。第1及び第2熱硬化性樹脂ペースト315、335を混合タンク内で同時に調製できる。熱硬化性樹脂ペースト315、335が酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、及び/又は酸化カルシウム等の増粘剤を含むことも好ましい。熱硬化性樹脂ペースト315、335を分配装置に輸送する直前、又はほぼ直前に熱硬化性樹脂ペーストに増粘剤(又は増粘剤ペースト)を添加する。同じ樹脂を用いて第1及び第2熱硬化性樹脂ペースト315、335をコンパウンドしてもよい。第1及び第2キャリヤーフィルム310、340に使う材料の非限定例として、ポリエチレンやナイロン等のポリマーフィルムが挙げられる。
【0018】
次に、サンドイッチ状の材料を一連のベルト360、370に通し、サンドイッチ状の材料を圧縮してモールディングマット295内で第1及び第2熱硬化性樹脂ペースト315、335と強化繊維束を分散させ、モールディングマット295中に分散した熱硬化性樹脂ペースト315、335の混合物で形成された中間体層を形成する。ベルトは、第1及び第2樹脂ペースト315、335による強化繊維からの濡れを高めるため、好ましくはワイヤーメッシュベルトである。モールディングマット295中の強化繊維はフィラメント化されず、繊維の束として存在するので、強化繊維はサンドイッチ状の材料中の熱硬化性樹脂ペースト及び充填材で濡れる能力を有する。強化繊維がシートモールディングコンパウンドの結合成分を濡らさない場合、最終製品の機械的性能が不十分になり、及び/又は複合製品の多孔度が低減し得る。ベルト360、370から出現する、結果として生じるシートモールディングコンパウンド(SMC)材料380を、図3に示されるような巻取ロール390上に巻き取ってよく、或いは後で使用するため箱内に置いてもよい(図示せず)。
次に、実質的に一定温度で2〜5日間SMC材料を貯蔵して熟成させる。この熟成時間中に、SMC材料290は粘度が約1500万〜4000万センチポイズに上昇する。粘度が上昇するにつれて、中間層内のモールディングマット中の第1及び第2樹脂ペーストとガラス繊維束が完全な複合層を形成する。図4に熟成したSMC材料の概略図を示す。特に、熟成したSMC材料400は、第1キャリヤーフィルム310と第2キャリヤーフィルム340の間にサンドイッチされた完全な複合層405を含む。
引き続く成形プロセスで、熟成したSMC材料400を成形して最終的な複合製品を形成することができる。例えば、熟成したSMC材料400をマッチドダイ成形法(matched die molding process)で使用できる(図示せず)。この成形法では、熟成したSMC材料400から第1及び第2キャリヤーフィルム310、340を除去し、熟成したSMC材料400を所定の大きさを有する断片に切断する(チャージ)。熟成したSMC材料400の断片を雌型ハーフと雄型ハーフを有する型に入れ、型のハーフを閉じ、熱と圧力を加えてチャージを圧縮し、熱硬化性樹脂を硬化させ、熟成したSMC材料400を所定形状に形成する。
成形サイクルが完了したら、型を開き、複合製品を取り出す。型内の圧力は1.4×106〜〜1.0×107Pa(200〜1500psi)、好ましくは1.4×106〜8.3×106Pa(200〜1200psi)の範囲で、型内の温度は100〜170℃、好ましくは140〜160℃の範囲でよい。SMC材料のための成形サイクルは0.5〜3.0分でよく、使用する特有の熱硬化性樹脂及び最終複合部品の厚さによって決まる。マッチドメタルダイ成形法(圧縮成形法)に加え、熟成したSMC材料400をバキュームバッギング及びプレスバッギング、コールドプレス成形法、射出成形法、及び遠心キャスティングで用いて複合製品を形成することもできる。シートモールディング材料の製造法とそれを成形して複合製品にする上記方法を好ましい実施態様と考えられることで示したが、当業者にとって同一視し得る方法に対する他の変形及び代替物も本発明の範囲内であると考えられることを理解すべきである。
【0019】
モールディングマット295は、型の形状に、SMC材料380の改良された流れと順応性を与える。また、本発明のモールディングマットは、延伸比を高めることによって、改良された成形能力を提供するので、型の形状を順応させることができ、複合製品に均一の特性を与える。
SMC材料380を用いて、例えば、ドアパネル、トリムパネル、外側本体パネル、荷重フロアー、バンパー、フロントエンド、下面シールド、ランニングボード、日除け、機器パネル構造、ドアインナー等の形成といった自動車用途などの多くの用途の種々の複合製品を形成することができる。シートモールディングコンパウンド材料380は、特にスチール製部品と比較したとき、形成される複合部品の重量を低減し、形成される部品に耐食性を与え、ちょっとした衝撃に対する抵抗性を与え、部品を強化し、かつ表面品質を改良することから、SMC材料380は特に自動車用途で有利である。本発明のモールディングマット295はポリマー繊維を含むので、該SMC材料380は、複合部品の改良された伸び特性及び低減されたマイクロクラッキングという利点を有する。ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維のような高い伸び特性を有するポリマー繊維の使用は、SMC材料380から形成される複合部品におけるマイクロクラックの生成をさらに低減する。SMC材料380のさらなる利点として、製品を形成するための短いツーリングリードタイム(tooling lead time)と安価なツーリングが挙げられる。SMC材料380の他の用途として、家具用途(イス、テーブルトップ等)、家事用途(洗濯機のドア、冷蔵庫のハウジング等)、ビジネス機械(コンピューターハウジング)、ジェットスキー本体、オフィスのスクリーンと仕切り、天井用タイル、建築用パネル、サテライトディッシュ、電気ボックス、及びマンホールカバーが挙げられる。
【0020】
この出願の発明を一般的及び特定実施態様に関して上述した。本発明を好ましい実施態様と考えられることで示したが、一般的な開示内で、当業者に周知の種々多様な代替物を選択することができる。本発明は、添付の特許請求の範囲の記述を除き、その他の点では制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の少なくとも1つの局面のドライレイド法でウェット強化繊維を使用するための工程を示す流れ図である。
【図2】本発明の少なくとも1つの典型的な実施態様のモールディングマットを形成するためのウェット強化繊維を用いるエアレイド(air-laid)法の概略図である。
【図3】本発明の少なくとも1つの典型的な実施態様に従ってウェットユースのチョップドストランドガラス繊維から形成されたモールディングマットを利用するシートモールディングコンパウンド法の概略図である。
【図4】本発明の少なくとも1つの典型的な実施態様の熟成したシートモールディングコンパウンド材料の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、シートモールディングコンパウンド中の強化材として使うためのモールディングマットの製造方法:
ウェット強化繊維のベイル(200)を少なくとも部分的に広げる工程;
前記ウェット強化繊維の少なくとも部分的に広げられたベイルから水を除去して、脱水した強化繊維束を形成する工程;
前記脱水した強化繊維束を結合繊維(210)と混合して、前記脱水した強化繊維束と前記結合繊維の実質的に均一な混合物を形成する工程;
前記脱水した強化繊維束と前記結合繊維の前記混合物をシートに形成する工程;及び
前記脱水した強化繊維束と前記結合繊維を結合してモールディングマット(295)を形成する工程。
【請求項2】
前記ウェット強化繊維がウェットユースのチョップドストランドガラス繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結合工程の前に、結合剤を前記シートに添加する工程をさらに含み、前記結合剤が、樹脂粉末、樹脂フレーク、ラテックスポリマー、樹脂顆粒、接着剤フォーム及び有機溶剤から成る群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記結合工程の前に、前記シートをニードリング(280)して、前記脱水した強化繊維束と前記結合繊維を前記結合工程の前に機械的に結合する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記形成工程の前に、前記脱水した強化繊維束と前記結合繊維の前記混合物を装填ボックスタワー(260)に輸送する工程をさらに含み、前記装填ボックスタワーは、前記シート形成機に前記混合物を容積測定して供給する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記結合工程が、前記結合繊維の融点より高く、かつ前記脱水した強化繊維束の融点より低い温度に前記シートを加熱して、前記結合繊維を少なくとも部分的に融かし、かつ前記脱水した強化繊維束と前記結合繊維の少なくとも一部を結合する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
以下の工程を含む、シートモールディングコンパウンド材料の製造方法:
第1熱硬化性樹脂ペースト(315)を第1キャリヤーフィルム(310)の上に置く工程;
前記第1熱硬化性樹脂ペーストの上に、脱水した強化繊維の束と、前記脱水した強化繊維束の融点より低い融点を有する結合繊維とを含むモールディングマット(295)を配置する工程;
第2熱硬化性樹脂ペースト(335)を第2キャリヤーフィルム(340)の上に置く工程;
前記第2熱硬化性樹脂ペーストを含有する前記第2キャリヤーフィルムを、前記第2熱硬化性樹脂ペーストが前記モールディングマットの上に位置づけられるように位置づけてサンドイッチ状の材料を形成する工程;及び
前記サンドイッチ状の材料を圧縮して前記シートモールディングコンパウンド材料(380)を形成する工程。
【請求項8】
前記圧縮工程が、前記サンドイッチ状の材料を一連のベルト(360、370)に通して、前記第1及び第2熱硬化性樹脂ペーストと前記脱水した強化繊維束を分散させる工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記配置工程の前に、前記モールディングマットを形成する工程をさらに含み、この形成工程が以下の工程を含む方法:
ウェット強化繊維のベイルを少なくとも部分的に広げる工程;
前記ウェット強化繊維の少なくとも部分的に広げられたベイルから水を除去して、前記脱水した強化繊維束を形成する工程;
前記脱水した強化繊維束を前記結合繊維と混合して、前記脱水した強化繊維束と前記結合繊維の実質的に均一な混合物を形成する工程;
前記脱水した強化繊維束と前記結合繊維の前記混合物をシートに形成する工程;及び
前記脱水した強化繊維束と前記結合繊維を結合して前記モールディングマットを形成する工程。
【請求項10】
前記ウェット強化繊維がウェットユースのチョップドストランドガラス繊維である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1熱硬化性樹脂ペーストを前記第1キャリヤーフィルムの上に置く工程の前に、第1熱硬化性材料、充填材、及び添加剤を混合して前記第1熱硬化性樹脂ペーストを形成する工程と、前記第1熱硬化性樹脂ペーストを分配装置に輸送する工程とをさらに含み、前記添加剤が、顔料、UV安定剤、触媒、開始剤、阻害剤、離型剤、増粘剤及びこれらの組合せから成る群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記第2熱硬化性樹脂ペーストを前記第2キャリヤーフィルムの上に置く工程の前に、第2熱硬化性材料、充填材、及び添加剤を混合して前記第2熱硬化性樹脂ペーストを形成する工程と、前記第2熱硬化性樹脂ペーストを第2分配装置に輸送する工程とをさらに含み、前記添加剤が、顔料、UV安定剤、触媒、開始剤、阻害剤、増粘剤及びこれらの組合せから成る群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法で製造されたモールディングマット。
【請求項14】
以下の工程を含む、成形されたシートモールディング複合製品の製造方法:
第1熱硬化性樹脂ペースト(315)を第1キャリヤーフィルム(310)の上に置く工程;
前記第1熱硬化性樹脂ペーストの上に、脱水した強化繊維の束と、前記脱水した強化繊維束の融点より低い融点を有する結合繊維とを含むモールディングマット(295)を配置する工程;
第2熱硬化性樹脂ペースト(335)を第2キャリヤーフィルム(340)の上に置く工程;
前記第2熱硬化性樹脂ペーストを含有する前記第2キャリヤーフィルムを、前記第2熱硬化性樹脂ペーストが前記モールディングマットの上に位置づけられるように位置づけてサンドイッチ状の材料を形成する工程;
前記サンドイッチ状の材料を圧縮して、シートモールディングコンパウンド材料(380)を形成する工程;
前記シートモールディングコンパウンド材料を貯蔵して、熟成したシートモールディングコンパウンド(400)を形成する工程;及び
前記熟成したシートモールディングコンパウンドを成形して、成形されたシートモールディング複合製品を形成する工程。
【請求項15】
前記モールディングマットを形成する工程をさらに含み、この形成工程が以下の工程を含む方法:
ウェット強化繊維のベイルを少なくとも部分的に広げる工程;
前記ウェット強化繊維の少なくとも部分的に広げられたベイルから水を除去して、脱水した強化繊維束を形成する工程;
前記脱水した強化繊維束を前記結合繊維と混合して、前記脱水した強化繊維束と前記結合繊維の実質的に均一な混合物を形成する工程;
前記脱水した強化繊維束と前記結合繊維の前記混合物をシートに形成する工程;及び
前記脱水した強化繊維束と前記結合繊維を結合して前記モールディングマットを形成する工程。
【請求項16】
前記ウェット強化繊維がウェットユースのチョップドストランドガラス繊維である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記結合工程が、前記結合繊維の融点より高く、かつ前記脱水した強化繊維束の融点より低い温度に前記シートを加熱して、前記結合繊維を少なくとも部分的に融かし、かつ前記脱水した強化繊維束と前記結合繊維の少なくとも一部を結合する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記成形工程の前に前記第1及び第2キャリヤーフィルムを除去する工程;及び前記熟成したシートモールディングコンパウンドを所定の大きさを有する断片に切断する工程;をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記第1熱硬化性樹脂ペーストを前記第1キャリヤーフィルムの上に置く工程の前に、第1熱硬化性材料、充填材、及び添加剤を混合して前記第1熱硬化性樹脂ペーストを形成する工程と、前記第1熱硬化性樹脂ペーストを分配装置に輸送する工程とをさらに含み、前記添加剤が、顔料、UV安定剤、触媒、開始剤、阻害剤、離型剤、増粘剤及びこれらの組合せから成る群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記第2熱硬化性樹脂ペーストを前記第2キャリヤーフィルムの上に置く工程の前に、第2熱硬化性材料、充填材、及び添加剤を混合して前記第2熱硬化性樹脂ペーストを形成する工程と、前記第2熱硬化性樹脂ペーストを第2分配装置に輸送する工程とをさらに含み、前記添加剤が、顔料、UV安定剤、触媒、開始剤、阻害剤、増粘剤及びこれらの組合せから成る群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記圧縮工程が、前記サンドイッチ状の材料を一連のベルト(360、370)に通して、前記第1及び第2熱硬化性樹脂ペーストと前記脱水した強化繊維束を分散させる工程を含む、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−525241(P2008−525241A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549393(P2007−549393)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/043829
【国際公開番号】WO2006/071458
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507130004)オウェンス コーニング ファイバーグラス テクノロジー ザ セカンド リミテッド ライアビリティ カンパニー (9)
【Fターム(参考)】