説明

シート乾燥制御装置及び乾燥制御方法並びにシート乾燥装置

【課題】シートを乾燥する乾燥装置本体におけるシートの乾燥品質を向上する。
【解決手段】シート2を搬送させながら該シート2に含まれる溶剤を揮発させてシート2を乾燥する乾燥ブロックを有する乾燥装置本体3の乾燥動作を制御するシート乾燥制御装置1において、前記シート2から揮発するガスの揮発ガス成分濃度を、赤外域の波長のレーザー光により計測する計測手段と、前記計測手段により計測する前記揮発ガス成分濃度に基づき、前記乾燥装置本体3におけるシート2を乾燥させる作用の強度を調整して前記乾燥動作を制御する制御手段とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを乾燥する乾燥装置本体の乾燥動作を制御するシート乾燥制御装置に関し、特に、乾燥装置本体におけるシートの乾燥品質を向上する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シートは、紙、フィルムや金属板等様々な基材のものがあり、一般的にウェブと呼ばれる連続的に巻き取られた状態のもの(例えば、巻き取り紙)や、連続していない枚葉状のものがある。そして、シートは、例えば、インクを混合した揮発性の有機溶剤を塗布(印刷工程)等され、その後、乾燥装置本体によって乾燥される。シートの乾燥装置本体は、シートを乾燥させる作用(以下、「乾燥作用」という)を、例えば、加熱された熱風等により与え、この熱風の温度等により、乾燥作用の強度を調節して制御される。
【0003】
ここで、最適な強度の乾燥作用がシートに作用するように、乾燥装置本体を運転すると、シートの乾燥品質(例えば、しわ、にじみの有無やその程度等)は最適となる。しかし、シートの乾燥作用の最適な強度は、例えば、シート基材の種類、乾燥させるシートの厚み及びインク塗布量等(以下、「印刷条件」という)や、乾燥装置本体の設置環境(例えば、周囲の温度、気圧など)等の条件によって異なる。したがって、印刷条件等が変わると、乾燥作用の最適な強度も変わるため、印刷条件等の変更に応じて乾燥作用の強度を調節して乾燥装置本体を運転しないと、乾燥度合いの過不足が生じる場合がある。例えば、乾燥作用の強度が過度な場合は、シートの乾燥度合いは高まり、シート表面に変色やひび割れが生じ、乾燥作用の強度が不足している場合は、シートの乾燥度合いは低くなり、有機溶剤が、シート(例えば被印刷物)に残留して臭いがしたり、シートににじみやしわや波うちが生じたりし、シートの乾燥品質は一般的に低下する。そこで、印刷条件等の変更にかかわらず、良好にシートを乾燥することが可能なシート乾燥制御技術が求められている。
【0004】
従来、シートを乾燥する乾燥装置としては、例えば、特許文献1等に記載されたものがある。特許文献1に記載された乾燥装置は、溶剤塗布後の印刷物を熱風にて加熱乾燥する加熱装置を第一ゾーンと第二ゾーンに分割し、各ゾーンの出口での印刷物の表面温度を測定し、その温度が所定の値になるように、各ゾーンの熱風温度を制御する乾燥制御装置を備えて構成されている。これにより、印刷条件の変更にかかわらず、各ゾーンの出口での印刷物の表面温度がそれぞれ所定の温度になるように乾燥させて、印刷物の品質低下を抑制させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2729802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、シートの乾燥は、例えば溶剤等をシートから揮発させる行為である。従って、シートの乾燥工程においては、シートから揮発する溶剤等の揮発状態を測定して乾燥作用(例えば、加熱乾燥における熱風作用、真空乾燥における真空作用等)の結果、言い換えれば乾燥度合いを定量的に直接管理したほうが、乾燥品質の管理としては望ましい。
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された従来の乾燥装置本体の制御装置は、乾燥工程の管理項目として印刷物の表面温度に着目し、その温度が所定の値になるように、熱風温度を制御する構成である。印刷物の表面温度は、乾燥作用の効果を示す間接的なパラメーターにすぎず、上記従来の制御装置は、所定の強度で乾燥作用を与えることによって実際現れる乾燥作用の結果(乾燥度合い)を定量的に直接管理していない。したがって、シートの乾燥工程における乾燥品質についての管理精度が劣るという問題がある。
【0008】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、シートの乾燥装置本体による乾燥作用の結果を定量的に直接管理することにより、シートの乾燥工程における乾燥品質についての管理精度を高め、シートの乾燥品質を向上するシート乾燥制御装置及び乾燥制御方法並びにシート乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明によるシート乾燥制御装置は、シートを搬送させながら該シートに含まれる溶剤を揮発させてシートを乾燥する乾燥ブロックを有する乾燥装置本体の乾燥動作を制御するシート乾燥制御装置において、前記シートから揮発するガスの揮発ガス成分濃度を、赤外域の波長のレーザー光により計測する計測手段と、前記計測手段により計測する前記揮発ガス成分濃度に基づき、前記乾燥装置本体におけるシートを乾燥させる作用の強度を調整して前記乾燥動作を制御する制御手段と、を備えて構成することを特徴とする。
【0010】
このような構成により、計測手段によって、シートから揮発するガスの揮発ガス成分濃度を、赤外域の波長のレーザー光により計測し、制御手段によって、計測手段により計測する揮発ガス成分濃度に基づき、乾燥装置本体におけるシートを乾燥させる作用の強度を調整して乾燥動作を制御する。これにより、シートから揮発するガスの揮発ガス成分濃度を測定してガスの揮発状態を把握することにより乾燥装置本体によるシートを乾燥させる作用の結果(乾燥度合い)を定量的に直接管理する。
【0011】
また、請求項2のように、前記計測手段は、前記乾燥ブロック内のシートから揮発するガスの揮発領域に赤外域の波長のレーザー光を投光する投光部及び前記ガスの揮発領域を透過するレーザー光を受光する受光部を有し、該受光部の受光強度に基づき前記ガスの揮発領域におけるシートから揮発するガスの揮発ガス成分濃度を計測する構成にするとよい。
【0012】
さらに、請求項3のように、前記制御手段は、前記計測手段により計測する揮発ガス成分濃度が、予め設定する揮発ガス成分濃度の目標値に近づく様に、前記乾燥装置本体における前記シートを乾燥させる作用の強度を調整して前記乾燥動作を制御する構成にしてもよい。
【0013】
さらにまた、請求項4のように、前記乾燥ブロックは、前記乾燥装置本体内のシート搬送方向に沿って複数設けられ、前記計測手段は、該乾燥ブロック毎に配置する構成とし、前記制御手段は、前記揮発ガス成分濃度の目標値を前記乾燥ブロック毎に予め設定し、前記乾燥装置本体における前記シートを乾燥させる作用の強度を調整して前記乾燥動作を前記乾燥ブロック毎に制御する構成にするとよい。これにより、計測手段によって、受光部の受光強度に基づきガスの揮発領域におけるシートから揮発するガスの揮発ガス成分濃度を計測し、制御手段によって、乾燥装置本体内のシート搬送方向に沿って複数設けられた乾燥ブロック毎に配置する各計測手段により計測する揮発ガス成分濃度に基づき、乾燥装置本体におけるシートを乾燥させる作用の強度を乾燥ブロック毎に調整して乾燥動作を制御する。
【0014】
また、請求項5のように、前記計測手段は、前記乾燥ブロックにおけるシート搬送方向の終端部側の前記揮発ガス成分濃度を測定可能に配置する構成にしてもよい。
【0015】
さらに、請求項6のように、前記計測手段は、前記レーザー光を前記乾燥ブロック内で光走査可能な構成にしてもよい。
【0016】
さらにまた、請求項7のように、前記計測手段の測定対象のガスは、揮発性有機化合物を主成分とするとよい。
【0017】
また、請求項8のように、前記計測手段の測定対象のガスは、水を主成分としてもよい。
【0018】
さらに、請求項9のように、前記投光部と前記受光部は、前記揮発領域を挟んで対向して配置する構成にしてもよい。
【0019】
さらにまた、請求項10のように、前記計測手段は、前記揮発領域を透過するレーザー光を反射する反射鏡を備え、前記投光部及び前記受光部を、該反射鏡と対向して前記揮発領域を挟んで配置する構成にしてもよい。
【0020】
また、請求項11のように、前記反射鏡は、反射するレーザー光の光軸を調整して、前記受光部におけるレーザー光の受光強度を調整可能な構成にしてもよい。
【0021】
さらに、請求項12のように、前記反射鏡は、再帰反射体としてもよい。
【0022】
また、請求項13のように、前記投光部から投光するレーザー光の波長は、中間赤外域の波長にするとよい。
【0023】
さらに、前述の目的を達成するために、本発明による乾燥制御方法は、請求項14のように、シートを搬送させながら該シートに含まれる溶剤を揮発させてシートを乾燥する乾燥ブロックを有する乾燥装置本体の乾燥動作を制御する乾燥制御方法であって、前記乾燥ブロック内のシートから揮発するガスの揮発ガス成分濃度を、赤外域の波長のレーザー光により計測し、計測する前記揮発ガス成分濃度に基づき、前記乾燥装置本体における前記シートを乾燥させる作用の強度を調整して前記乾燥動作を制御することを特徴とする。
【0024】
また、請求項15のように、赤外域の波長のレーザー光を乾燥ブロック内のシートから揮発するガスの揮発領域に投光し、ガスの揮発領域を透過するレーザー光を受光し、該受光したレーザー光の受光強度に基づきガスの揮発領域におけるシートから揮発するガスの揮発ガス成分濃度を計測する構成にするとよい。
【0025】
さらに、請求項16のように、計測する揮発ガス成分濃度が、予め設定する揮発ガス成分濃度の目標値に近づく様に、乾燥装置本体におけるシートを乾燥させる作用の強度を調整して乾燥動作を制御する構成にしてもよい。
【0026】
さらにまた、請求項17のように、乾燥ブロックを乾燥装置本体内のシート搬送方向に沿って複数設け、該乾燥ブロック毎にガスの揮発ガス成分濃度を計測し、揮発ガス成分濃度の目標値を乾燥ブロック毎に予め設定し、乾燥装置本体におけるシートを乾燥させる作用の強度を調整して乾燥動作を乾燥ブロック毎に制御する構成にするとよい。
【0027】
また、請求項18のように、揮発ガス成分濃度の計測は、乾燥ブロックにおけるシート搬送方向の終端部側の揮発ガス成分濃度を測定して行う構成にしてもよい。
【0028】
さらに、請求項19のように、揮発ガス成分濃度の計測は、レーザー光を乾燥ブロック内で光走査して行う構成にしてもよい。
【0029】
また、前述の目的を達成するために、本発明によるシート乾燥装置は、請求項20のように、前記請求項1〜13のいずれか1つに記載のシート乾燥制御装置と、シートを搬送させながら該シートに含まれる溶剤を揮発させてシートを乾燥する乾燥ブロックを有する乾燥装置本体と、を備え、前記シート乾燥制御装置により前記乾燥装置本体の乾燥動作を制御し、シートを乾燥することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明のシート乾燥制御装置又は乾燥制御方法によれば、シートから揮発するガスの揮発ガス成分濃度を、赤外域の波長のレーザー光により計測し、計測手段により計測する揮発ガス成分濃度に基づき、乾燥装置本体におけるシートを乾燥させる作用の強度を調整して乾燥動作を制御することができる。これにより、シートから揮発するガスの揮発ガス成分濃度を測定しガスの揮発状態を把握することによって乾燥装置本体によるシートを乾燥させる作用の結果、言い換えれば乾燥度合いを定量的に直接管理することができ、シートの乾燥工程における品質管理の精度を向上させることができる。このようにして、シートの乾燥品質を向上するシート乾燥制御装置及び乾燥制御方法を提供することができる。また、このように構成されたシート乾燥制御装置を備えたシート乾燥装置によれば、乾燥作用の結果を定量的に直接管理し、シートの乾燥工程における乾燥品質についての管理精度を高めて、シートの乾燥品質を向上させてシートを乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るシート乾燥制御装置の第1実施形態を示す概略構成図である。
【図2】上記第1実施形態のシート乾燥制御装置についての概略上面図である。
【図3】投光部及び受光部への揮発性有機溶剤の付着を抑制する構造例を示す概略部分上面図である。
【図4】モル吸光係数と波長の関係、並びにカラム濃度別の透過率の違いの一例を表す説明図である。
【図5】上記第1実施形態のシート乾燥制御装置の制御動作を示すフロー図である。
【図6】本発明に係るシート乾燥制御装置の第2実施形態を示す概略上面図である。
【図7】本発明に係るシート乾燥制御装置の第3実施形態を示す概略上面図である。
【図8】上記第3実施形態における計測手段の具体的な構成例を示す概略構成図である。
【図9】上記第3実施形態におけるレーザー光の光走査方向を説明する説明図である。
【図10】本発明に係るシート乾燥制御装置の第4実施形態を示す概略上面図である。
【図11】シートの搬送距離とシートに残留する溶剤の濃度の低下状態を説明する説明図である。
【図12】上記第4実施形態のシート乾燥制御装置の制御動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るシート乾燥制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、上記シート乾燥制御装置の第1実施形態を示す概略構成図であり、図2は、本実施形態のシート乾燥制御装置についての概略上面図である。
図1,2において、本実施形態のシート乾燥制御装置1は、シート2を乾燥する乾燥装置本体3の乾燥動作を制御するもので、投光制御部4と、受光部5と、乾燥制御部6とを備える。
【0033】
前記シート2は、例えば、紙やフィルム等を基材としたものであり、一般的にウェブと呼ばれる連続的に巻き取られた状態のもの(例えば、巻き取り紙)や、連続していない枚葉状のものである。シート2は、例えば、インクを混合した揮発性の有機溶剤を塗布(印刷工程)等され、その後、図2に示すように、乾燥装置本体3内に搬送されて乾燥し、次工程に搬送される。また、シート2は、例えば、図2に示すように、シート搬送方向と直交する方向にW1の幅で形成されている。
【0034】
前記乾燥装置本体3は、シート2を搬送させながらシート2に含まれる溶剤を揮発させてシート2を乾燥するものであり、図1に示すように、例えば、シート2を搬送する搬送部7と、シート2を乾燥させるための熱源となる発熱部8と、発熱部8によって加熱した空気等をシート2に送風する送風部9と、筐体10と、を備えて構成され、例えば、以下に示す一般的なものである。
【0035】
乾燥装置本体3は、図2に示すように、例えば印刷工程等の前工程(図面左側)から搬入されるシート2を、後工程(図面右側)へ搬出するものでもあるため、筐体10には、図示しないが、シート2が搬入、搬出可能な適度な大きさのスリットが設けられている。また、筐体10は、図3に示すように、後述する投光制御部4の投光部13から投光するレーザー光が通過できる様に、例えば、開口部が側面に設けられ、この開口部を閉止するカバーと共に筐体10の外側から後述する受光部5及び投光部13を取り付ける。さらに、筐体10は、図示しないが、シート2から揮発するガス等を排気する手段を備える。この排気手段は、ガス等の滞留を防止するものであって、ガス計測に支障がないように、例えば、受光部5や投光部13によるレーザーの受光や投光を妨げない箇所に形成されている。そして、筐体10により、シート2を乾燥するエリアである乾燥ブロックを形成している。そして、シート2は、この乾燥ブロック内で、例えば、熱風を与えられ、搬送中に徐々に乾燥し、乾燥ブロックにおけるシート搬送方向の終端部側(図2右側)において計測される、後述する揮発ガス成分濃度が、例えば、許容値(以下において、「揮発ガス成分許容濃度」という)になるように乾燥される。なお、この揮発ガス成分許容濃度は、例えばシート2の種類によって許容される値は異なる。
【0036】
そして、乾燥装置本体3は、例えば、搬送部7のシート搬送速度、発熱部8の温度、送風部9の送風量等を調節可能に構成され、シート2を乾燥させる乾燥作用の強度(例えば、発熱部の温度、送風量、搬送速度、乾燥時間)が調整できる。ここで、乾燥作用の強度は、印刷条件(例えば、シート基材の種類、乾燥させるシートの厚み及びインク塗布量等)や、乾燥の目的(例えば、省エネルギー運転を目的とする場合)や、乾燥装置本体3の設置環境(例えば、周囲の温度、気圧など)等によって、その最適値は一般的に異なる。
【0037】
投光制御部4は、シート2から揮発するガスの揮発ガス成分濃度をガスによる赤外吸収現象を用いて計測するための制御部であり、図1に示すように、計測機器制御部11と、該計測機器制御部11からの指令を受けて乾燥ブロック内のシート2から揮発するガスの揮発領域12に赤外域の波長のレーザー光を投光する投光部13と、指令送信部14と、を備えて構成される。
【0038】
前記計測機器制御部11は、図1に示すように、後述する投光部13から投光するレーザー光の波長や出力を設定し、後述するレーザー光発振部16に指令する。このレーザー光発振部16は後述するように、例えば、レーザーダイオードにより構成される。そして、レーザー光の波長や出力の設定は、例えば、このレーザーダイオードの温度を調整したり、レーザーダイオードに入力する電流を調整したり、また変調させて行うことができる。また、後述する受光部5の受光強度に基づき、揮発領域12におけるシート2から揮発するガスの揮発ガス成分濃度を計測する。従って、計測機器制御部11は、揮発ガス成分濃度を演算する機能をも備える。なお、図2に2点鎖線で概略の範囲を示すレーザー光の投光領域15(レーザービーム断面積とレーザー光の光路長の積で表す計測エリア体積)は、揮発領域12内の実際の計測エリアである。そして、計測機器制御部11により演算する揮発ガス成分濃度は、乾燥装置本体3による乾燥作用の結果(乾燥度合い)を、定量的に表す指標とすることができる。なお、この揮発ガス成分濃度は、シート2に残留する溶剤の濃度(以下、「溶剤残留濃度」という)を示しているのではなく、計測時にシート2から揮発しているガスの濃度である。
【0039】
前記投光部13は、計測機器制御部11から指令を受けて乾燥装置本体3内のシート2から揮発するガスの揮発領域12に赤外域の波長のレーザー光を投光するもので、図1に示すように、レーザー光発振部16と、投光光学系17とを備えて構成する。
【0040】
投光部13及び後述する受光部5は、図3(A)に示すように、例えば、筐体10に設けられた開口部を閉止する閉止カバーと共に筐体10の外側に取り付ける。そして、例えば、加圧した気流が、開口部から筐体10の内側に向かって流れるようにファンを設けて、揮発した溶剤が投光部13及び後述する受光部5に付着するのを抑制する。これにより、投光部13及び後述する受光部5と計測対象ガスが接することなく、遠隔で非接触な計測をすることができると共に、投光部13及び後述する受光部5への溶剤付着を抑制する。また、別の方法としては、図3(B)のように、計測に使用するレーザー波長の透過率が高いガラス材(例えばフッ化カルシウムなど)を窓材31として具備することにより、受光部5および投光部13が筐体10の内部の計測対象ガスと隔たり、溶剤付着を抑制できる。なお、本実施形態において、投光部13及び後述する受光部5は、図2に示すように、乾燥ブロックにおけるシート搬送方向の終端部側(図面右側)の揮発ガス成分濃度を測定可能に配置されている。
【0041】
前記レーザー光発振部16は、計測機器制御部11から指令を受け、所定の波長及び出力のレーザー光を発生するものであり、本実施形態においては、中間赤外域の波長のレーザー光を発生可能な構成である。これにより、後述する様に、例えば、油性印刷に用いる揮発性有機溶剤の揮発ガス成分濃度を効率的に計測することができる。
【0042】
前記投光光学系17は、揮発領域12に向けてレーザー光を投光するものであり、例えば、レンズにより構成される。なお、レーザー光がシート2の表面近傍に投光されるほど計測精度が良好であるため、例えば、レーザー光をシート2の表面から10mm以内に投光するとよい。
【0043】
前記指令送信部14は、図1に示すように、後述する乾燥制御部6に計測機器制御部11の制御信号を出力するものである。
【0044】
前記受光部5は、ガスの揮発領域12を透過するレーザー光を受光するもので、図1に示すように、受光光学系18と、受光素子19とを備えて構成される。
【0045】
前記受光光学系18は、ガスの揮発領域12を透過するレーザー光を受光素子19に入力するもので、例えば、レンズによって構成されている。
【0046】
前記受光素子19は、例えば、赤外域の波長のレーザー光に対して感度良好な素子であり、受光光学系18を介して揮発領域12を透過するレーザー光を受光してその受光強度に応じた出力を発生して、計測機器制御部11に入力する。
【0047】
ここで、本実施形態においては、投光部13と受光部5は、図1,2に示すように、揮発領域12を挟んで対向して配置する構成であるため、受光部5における受光強度が最大となる位置に投光部13と受光部5の光軸を調整することができ、高いS/N(信号とノイズ成分の比を表し、ノイズ成分の相対的少なさを示す)の信号を得ることができる。また、信号(S)のノイズ成分(N)は、例えば、レーザー光の光路長が長いほど多くなる。本実施形態においては、レーザー光の光路長が、例えば、乾燥装置本体3の幅W2(図2参照)に相当するため、後述する第2実施形態の様にレーザーの光路長が、例えば、乾燥装置本体3の幅W2の2倍となる場合と比べて、ノイズ成分を小さくすることができる。
【0048】
前記乾燥制御部6は、乾燥装置本体3における乾燥動作を指令送信部14の指令に基づいて制御をするものであり、図1に示すように、指令受信部20と、乾燥機器制御部21と、を備えて構成される。
【0049】
前記指令受信部20は、図1に示すように、指令送信部14から制御信号を受信し、乾燥機器制御部21に出力するものである。
【0050】
前記乾燥機器制御部21は、図1に示すように、指令受信部20からの制御信号に基づく、乾燥作用の強度で乾燥装置本体3の乾燥動作を制御するものである。
【0051】
本実施形態において、計測機器制御部11は、例えば、前述した揮発ガス成分許容濃度を、終端部側において計測される揮発ガス成分濃度の目標値として予め設定し、受光素子19からの受光出力に基づいて計測した揮発ガス成分濃度と予め設定する揮発ガス成分濃度の目標値とを比較し、計測値が目標値に近づく様に、乾燥装置本体3における乾燥作用の強度を調整して、乾燥装置本体3の乾燥動作を、乾燥制御部6を介して制御する様に構成されている。なお、乾燥作用の強度を調整するにあたって、例えば、搬送部7、発熱部8、送風部9の少なくともいずれか1つの乾燥作用の強度を調整するように構成されている。また、例えば、印刷条件等に応じた所定の強度の乾燥作用をシート2に作用する様に、乾燥装置本体3に指令しても、その時の乾燥装置本体3自体の状態や、前述の印刷条件や、乾燥装置本体3の設置環境等の予期せぬ変化により、予定していた乾燥作用の結果(乾燥度合い)を得られないことがある。本実施形態における計測機器制御部11は、上記のような予期せぬ変化が生じた場合、例えば、その変化を、揮発ガス成分濃度の測定結果と目標値とを比較することによりモニタリングすることができる。そして、例えば計測値が目標値(許容値)より高い場合は、終端部側においてシート2に溶剤が予想以上に残留している状態と判定し、計測値が目標値より低い場合は、終端部側においてシート2は予想以上に乾燥している状態と判定し、計測値が目標値に近づく様に制御信号を出力するように構成されている。
【0052】
また、本実施形態においては、上記揮発ガス成分濃度の目標値を、計測機器制御部11に予め設定でき、例えば、様々な印刷条件等に対応する各乾燥作用の強度及び揮発ガス成分濃度の各目標値のデータを書き換え可能に保存できる様になっている。そして、同じ印刷条件等で乾燥装置本体3の乾燥動作を制御する場合には、例えば、印刷条件等を選択して、その条件に対応する乾燥作用の強度及び揮発ガス成分濃度の目標値を読み出して選択することができる様になっている。
【0053】
なお、本実施形態において、計測手段は、計測機器制御部11と、投光部13と、受光部5とを備えて構成され、制御手段は、計測機器制御部11と、指令送信部14と、乾燥制御部6とを備えて構成されている。上記のように、計測機器制御部11は、計測手段の構成要素であると共に、制御手段の構成要素でもある。
【0054】
ここで、計測機器制御部11と、投光部13と、受光部5とを備えて構成される計測手段は、ガスによる赤外吸収現象を用いて揮発ガス成分濃度を計測するものである。本実施形態における揮発ガス成分濃度の計測原理を以下に説明する。
【0055】
ガスの揮発領域12を透過したレーザー光のエネルギーは、揮発領域12のガス媒質によるエネルギー吸収を受け減衰する。そのガス媒質による光の透過率T(λ)は、下記の(1)式で定義される。
T(λ)=I1(λ)/I0(λ) (1)
ここで、λは光の波長、I1(λ)はガス媒質を透過した光の強度、I0(λ)はガス媒質に入射する光の強度である。そして、光の透過率T(λ)は、濃度と光の減衰の関係を表すランバート・ベール(Beer-Lambert)の法則により、下記の(2)式で表せる。
lnT(λ)=−ε(λ)CL (2)
ここで、ε(λ)はガス媒質のモル吸光係数であり、光をガス媒質に入射したときにそのガス媒質がどれくらいの光を吸収するかを示す波長毎の係数である。Cはガス媒質のモル濃度であり、Lは光が透過するガス媒質の厚さである。また、ガス媒質の濃度を、カラム濃度CL(モル濃度Cとガス媒質の厚さLとの積)で評価することもある。
【0056】
透過率T(λ)は、受光部5により検知する受光強度と、投光部13から投光するレーザー光の投光強度の比により求めることができる。したがって、モル吸光係数ε(λ)と光が透過するガス媒質の厚さLが既知であれば、上記(2)式によりレーザー光の投光領域14のガス媒質のモル濃度C若しくはカラム濃度CLを演算し、このモル濃度C若しくはカラム濃度CLを揮発ガス成分濃度として計測することができる。
【0057】
図4は、インクの溶剤としてよく利用される酢酸エチルのモル吸光係数ε(λ)と波長の関係、並びにカラム濃度CL別の透過率の違いを表す説明図である。例えば、ガス媒質の厚さが1mで、波長が3.35μmのレーザーを投光した場合、酢酸エチルの揮発ガス成分濃度が100ppm・mの場合、透過率T(λ)は約95%、1,000ppm・mの場合は約70%,10,000ppm・mの場合は約3%を示し、濃度の大小に応じて透過率T(λ)が変化している様子が分かる。また、図4に示すように、モル吸光係数ε(λ)は波長λに応じて変化し、酢酸エチルについては、3.34〜3.35付近にピーク(以下、「光吸収波長帯」という)がある。そして、この光吸収波長帯付近で透過率T(λ)は大きく変化している。したがって、光吸収波長帯付近の波長λのレーザー光を投光部13から投光すると、測定感度が良くなる。
【0058】
ここで、揮発ガス成分濃度を計測する別の方法として知られる、例えば、FT−IR(フーリエ変換型赤外分光)やフィルタ分光等を用いた計測方法では、1回の計測に数秒から数分かかる。しかし、本実施形態における構成では、所定の波長のレーザー光を揮発領域12に投光し、上記に説明した原理に基づき、高速で計測することができる。また、たとえ後述する様にレーザー光を揮発ガス領域12内でスキャンさせる例えば半導体製造技術を利用したプレーナー型の光走査手段を備えた構成であっても、スキャンはサブミリ秒単位ですることができ、さらに、スキャニングにより得られる測定結果を計測機器制御部11で平均化処理するとしても、数ミリ秒単位の間隔で制御信号を乾燥制御部6に出力することができる。したがって、乾燥装置本体3の乾燥動作の制御をリアルタイムに行うことができ、また、シート搬送速度が速い乾燥装置本体3であっても高精度な計測が可能である。
【0059】
次に、本実施形態に係るシート乾燥制御装置1の制御動作について、図1,5に基づいて説明する。以下の説明において、例えば、シート2の種類に応じて定められる揮発ガス成分許容濃度を目標値とし、目標値が終端部側で計測される様な乾燥作用の強度(例えば、発熱部の温度、送風量、搬送速度等)は、シート2の種類毎に実験や過去のデータ等により予め求められているものとする。そして、様々なシート2に対応する各乾燥作用の強度及び各揮発ガス成分許容濃度並びにその許容範囲、レーザー光の波長や出力、波長毎のモル吸光係数、シートの幅W1等のデータ(以下、「初期データ」という)は、書き換え可能に、例えば、計測機器制御部10内のメモリに既に保存され、初期データの作成(ステップS1)が完了しているものとして説明する。
【0060】
まず、シート乾燥制御装置1を操作するオペレーター等により選択されるシート2の種類に対応する初期データを計測機器制御部11内のメモリから読み出す。これにより目標値を設定する。そして、その初期データに基づいて計測機器制御部11は、乾燥作用の強度を指令送信部14及び指令受信部20を介して乾燥機器制御部21に指令し、乾燥機器制御部21から、例えば、搬送部7、発熱部8、送風部9に制御信号を出力し、所定の乾燥作用の強度で乾燥装置本体3の乾燥動作を開始させると共に、投光部13から投光するレーザー光の波長や出力を設定し、レーザー光発振部16に指令する(ステップS2)。次に、レーザー光発振部16は、計測機器制御部11から指令を受け、所定の出力で、例えば、中間赤外域の波長のレーザー光を発生する。そして、投光光学系17は、揮発領域12に向けてレーザー光を投光する。揮発領域12を透過して減衰したレーザー光は、受光光学系18を介して受光素子19に入光する。そして、受光素子19は、レーザー光を受光して受光強度に応じた出力を発生して、計測機器制御部11に入力する。計測機器制御部11は、この受光強度と、投光部13から投光されたレーザー光の投光強度の比により、透過率T(λ)を演算する。そして、設定されたレーザー光の波長によりモル吸光係数ε(λ)を定め、光が透過するガス媒質の厚さLを例えばシートの幅W1として定め、モル濃度Cを演算し、このモル濃度Cを揮発ガス成分濃度の計測結果とする(ステップS3)。さらに、計測機器制御部11は、計測した揮発ガス成分濃度が、目標値の許容範囲内であるかを判定する。そして、許容範囲内の場合は、計測機器制御部11は予定していた乾燥状態であると判定し、同じ乾燥作用の強度で乾燥装置本体3を駆動させる指令を乾燥制御部6に出力すると共に、ステップS3に戻り再び計測する(ステップS4)。また、計測した揮発ガス成分濃度が、許容範囲外の場合は、次のステップS5に進む。最後に、ステップS5として、計測機器制御部11は、計測された揮発ガス成分濃度が許容範囲の下限値より低い場合は、終端部側においてシート2は予想以上に乾燥している状態と判定し、揮発ガス成分濃度が目標値に近づく様に、例えば、搬送部7、発熱部8、送風部9の少なくともいずれか1つの乾燥作用の強度を予め設定する所定量減少させる制御信号を乾燥制御部6に出力する。また、計測された揮発ガス成分濃度が許容範囲の上限値より高い場合は、計測機器制御部11は終端部側においてシート2に溶剤が予想以上に残留している状態と判定し、揮発ガス成分濃度が目標値に近づく様に、例えば、搬送部7、発熱部8、送風部9の少なくともいずれか1つの乾燥作用の強度を予め設定する所定量増加させる制御信号を乾燥制御部6に出力する。(ステップS5)。そして、所定の揮発ガス成分濃度に達するまで上記ステップ3〜5までの乾燥動作を行う。このように、計測機器制御部11の判定結果に基づく制御信号を乾燥制御部6に出力して、乾燥装置本体3の乾燥動作を制御する。
【0061】
なお、上記制御動作の説明において、初期データの保存や選択、測定結果と目標値の比較、乾燥状態の判定等の演算は、計測機器制御部11によって行う場合で説明したが、これに限らず、乾燥機器制御部21で行う構成にしてもよい。この場合、乾燥機器制御部21は、投光制御部4から揮発ガス成分濃度の測定結果を受け、その測定結果に基づき上記各演算等を行い、乾燥装置本体3に駆動指令を出力する。なお、この場合、計測手段は、投光制御部4と受光部5とで構成され、制御手段は、乾燥制御部6で構成される。
【0062】
このような構成により、本実施形態に係るシート乾燥制御装置1は、シート2からのガスの揮発ガス成分濃度を測定しガスの揮発状態を把握し判定することによって乾燥装置本体3による乾燥作用の結果、すなわち乾燥度合いを定量的に直接管理することができ、シート2の乾燥工程における品質管理の精度を向上させて、乾燥装置本体3の乾燥動作を制御することができる。このようにして、シートの乾燥品質を向上するシート乾燥制御装置1を提供することができる。また、選択した条件(例えばシート2の種類等)に応じて乾燥装置本体3の乾燥動作を容易に制御することができる。そして、例えば、乾燥装置本体3の設置環境や印刷条件等の予期せぬ変化が生じても一定の乾燥作用の結果が得られるように、計測される揮発ガス成分濃度が目標値に近づく様に、乾燥作用の強度を制御することによりシートの乾燥度合いを管理できるため、乾燥品質は安定し乾燥品質は向上する。また、例えば、シート2が予想以上に乾燥している状態と判定される場合は、乾燥作用の強度を下げる制御をすることができるため、余分な電力を消費させることがなく、乾燥装置本体3の省電力化を図ることもできる。
【0063】
なお、本実施形態において、受光部5及び投光部13は、図2に示すように乾燥ブロックの終端部側(図面右側)の揮発ガス成分濃度を測定可能に配置する場合で説明したが、終端部側に配置する場合に限らず、乾燥ブロックにおけるシート搬送方向の始端部(図面左側)の揮発ガス成分濃度を測定可能に配置する構成でもよい。この場合、計測機器制御部11は、計測する揮発ガス成分濃度の目標値を、例えば、終端部で計測する場合の目標値より高い値に設定し、計測値が目標値より高い場合は、乾燥しやすい状態と判定し、乾燥作用の強度を予め設定する所定量減少させる制御信号を乾燥制御部6に出力し、計測値が目標値より低い場合は、乾燥しにくい状態と判定し、乾燥作用の強度を予め設定する所定量増加させる制御信号を乾燥制御部6に出力する構成にするとよい。
【0064】
ここで、揮発ガス成分濃度を計測する別の方法としては、例えば、化学反応式の検知管、誘電式や半導体式の電子センサ、FT−IRやフィルタ分光やNDIR(非分散型赤外分光)の赤外線センサ等を用いた計測方法が知られている。しかし、いずれも一般的にバッチ計測であり、試料採取や計測のための人手が掛かる。一方、本実施形態に係るシート乾燥制御装置1は、計測のために試料を採取することも、試料採取のため乾燥装置本体3を止めることもなく乾燥運転中に自動計測することができ、省労力化を図ることができる。また、本実施形態に係るシート乾燥制御装置1は、前述した様に投光部13及び受光部5への揮発溶剤の付着を抑制する構成になっているため、揮発溶剤による投光部13及び受光部5の汚れが抑制され、維持管理の手間やコストを低減することができる。さらに、FT−IRにおいては広範囲の波長域にエネルギーが分布する光源を使用するが、波長毎の出力は低くなるため、得られる信号のS/Nは一般的に低い。一方、本実施形態に係るシート乾燥制御装置1は、所定の波長のレーザー光を揮発領域12に投光し、揮発ガス成分濃度を計測するものである。したがって、狭い波長範囲に出力が集中するため、FT−IRよりも高いS/Nの信号を得ることができる。
【0065】
ところで、例えば、印刷工程において使用されるインクを分類すると油性インクと水性インクがあり、それぞれを使用することで、印刷は油性印刷と水性印刷に分類される。油性インクは、トルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メタノール等の揮発性有機溶剤に、例えばインク顔料を混合し、調合される。また、水性インクは、水やアルコールを溶剤として使用して調合される。ここで、レーザー光発振部15から発生するレーザー光の波長は、前述した様に光吸収波長帯域の波長が望ましい。例えば、2.5〜16μm領域には主として有機物の光吸収波長が存在し、1200〜2400nm領域には主として無機物の光吸収波長が存在することが知られている。また、油性インク内の揮発性有機化合物(VOC)を主成分とする溶剤の揮発ガス成分濃度を計測する場合には、−CH結合や−OH結合による光吸収波長を有する中間赤外域の波長(3〜5μm)のレーザー光を使用するとよい。例えば、油性インクの溶剤としてよく使用される酢酸エチル、メチルエチルケトン等の光吸収波長帯は3.3〜3.5μm領域に存しており、特にこの波長領域のレーザー光を使用すると良い。また、水性インク内の水蒸気(HO)の揮発ガス成分濃度を計測する場合には、1350〜1450nm領域や1850〜1950nm領域のレーザー光を使用すると良い。
【0066】
本実施形態におけるレーザー光発振部16は、前述したように中間赤外域の波長のレーザー光を発生することが可能な構成である。これにより、測定対象のガスを、揮発性有機化合物を主成分とする、例えば油性インクから揮発するガスの揮発ガス成分濃度を効率的に計測することができる。なお、本実施形態におけるレーザー光発振部16は、中間赤外域の波長(3〜5μm)に限らず、2.5〜16μm領域の波長のレーザー光を発生して、他の種類の揮発性有機化合物を主成分とするガスを計測対象とする構成でもよい。さらに、本実施形態におけるレーザー光発振部16は、例えば、1350〜1450nm領域や1850〜1950nm領域の波長のレーザー光を発生して、水性印刷向けの揮発性無機物を主成分とするガスを計測対象とする構成でもよい。
【0067】
図6は、本発明に係るシート乾燥制御装置1の第2実施形態を示す概略上面図である。なお、図2の第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0068】
本実施形態においては、投光部13及び受光部5を内部に備えた投光制御部4を、図6に示すように、反射鏡22と対向して揮発領域12を挟んで配置する構成である。ここで、本実施形態における計測手段は、計測機器制御部11と、投光部13と、受光部5と、揮発領域12を透過するレーザー光を反射する反射鏡22とを備えて構成されている。
【0069】
反射鏡22は、例えば、平面鏡であり、投光部13から投光するレーザー光を受光部5に反射するものである。このように構成することにより、前述の第1実施形態における構成では投光部13と受光部5が別体型であったが、本実施形態における構成では、投光部13と受光部5を一体型とすることができる。
【0070】
また、本実施形態における反射鏡22は、反射するレーザー光の光軸を調整して、受光部5におけるレーザー光の受光強度を調整(以下、「光学調整」という。)可能な構成にしてもよい。これにより、一体型であっても高いS/Nの信号を得ることができる。さらに、反射鏡22を、例えば、コーナーキューブや再帰反射シートなどの再帰反射体23とする構成にしてもよい。この場合、光学調整作業をすることなくレーザー光を受光部5に反射させることができるため、光学調整作業が必要な第1実施形態における投光部13と受光部5が別体型の場合に比べて初期セットアップを容易にすることができる。
【0071】
また、一般的にレーザー光の光路長が長い方が、低濃度のガスを検出する場合に有利である。本実施形態に係るシート乾燥制御装置1の光路長は、例えば、乾燥装置本体3の幅W2(図6参照)の2倍にすることができ、第1実施形態と比べて長くすることができる。したがって、第1実施形態と比較するとより低濃度のガスを検出でき、検出下限値を低くすることができる。
【0072】
図7は、本発明に係るシート乾燥制御装置1の第3実施形態を示す概略上面図である。また、図8は、本実施形態における投光制御部4の具体的な構成例を示す概略構成図であり、図9は、上記第3実施形態におけるレーザー光の走査方向を説明する説明図である。なお、図6の第2実施形態と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0073】
本実施形態において、投光制御部4は、図7に示すように、投光部13から投光するレーザー光をガスの揮発領域12内で光走査可能な構成である。この場合、第2実施形態の反射鏡22は、図7に示すように、例えば広い面積を有する再帰反射シートのような再帰反射体23で構成するとよい。これにより、光走査する本実施形態においても、前述の光学調整作業をすることがないため、第1実施形態と比較すると初期セットアップを容易にすることができる。なお、反射鏡22を備えた構成に限らず、第1実施形態のように投光部13と受光部5を対向して配置する構成において、受光素子19を例えばシート搬送方向に一列状に複数設ける構成であってもよい。
【0074】
図8に示す投光制御部4の構成例において、受光光学系18は、例えば、レーザー光発振部16からのレーザー光を透過すると共に再帰反射体23(例えば再帰反射シート)からの反射光を受光素子19に向けて反射するビームスプリッターで構成される。
【0075】
また、図8に示す投光制御部4の構成例において、投光光学系17は、受光光学系18を透過したレーザー光を光走査するもので、例えば、半導体製造技術を利用したプレーナー型の2次元光走査手段である。これにより、投光制御部4は、図9に示すように、シート搬送方向に対して水平及び垂直方向にレーザー光を光走査することができる。なお、レーザー光は、シート表面近傍(例えば、表面からの高さが10mm以内程度)を水平方向に走査するとよく、これにより、揮発直後のガスを測定できるため、精度よく計測できる。また、これに限らず、図9の再帰反射体23面に一点鎖線で示すように、水平及び垂直方向を同時に動かして、光走査してもよい。光走査手段は、2次元の光走査手段に限らず、例えば水平方向に光走査可能な1次元光走査手段であってもよく、ガスの揮発領域12内で光走査可能であればよい。このようにして、揮発領域12内の実際の計測エリアであるレーザー光の投光領域15(図7参照)を広くすることができる。また、投光光学系17として、特許第2722314号に記載された電磁駆動式のガルバノミラーを適用することができる。
【0076】
また、投光制御部4は、レーザー光を走査中に複数回投光することができ、例えば、数ミリ秒の間に、複数回揮発ガス成分濃度を計測することができる。これにより、計測エラーの問題が少なく信頼性の高い測定をすることができる。また、計測機器制御部11は、複数得られた計測結果を平均化処理して投光領域15における揮発ガス成分濃度を計測結果として得ることもでき、広い計測エリア内を代表する測定結果を得ることができる。
【0077】
さらに、本実施形態は、レーザー光を光走査する構成であるため、第2実施形態と同様に光路長を長くすることでき、本実施形態においても、第1実施形態と比較するとより低濃度のガスを検出でき、検出下限値を低くすることができる。
【0078】
図10は、本発明に係るシート乾燥制御装置1の第4実施形態を示す概略上面図である。なお、図2の第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0079】
乾燥装置本体3の筐体10により形成されるシートを乾燥するエリアである乾燥ブロックは、筐体10内のシート搬送方向に沿って、複数設けられる場合も一般的にある。本実施形態においては、図10に示すように、例えば、3つの乾燥ブロック(第1乾燥ブロック10A、第2乾燥ブロック10B、第3乾燥ブロック10C)に分割されている場合で説明する。
【0080】
上記の様に複数の乾燥ブロックを有する乾燥装置本体3の乾燥動作を乾燥ブロック毎に制御するために、本実施形態におけるシート乾燥制御装置1は、図10に示すように、例えば第1実施形態に示した投光制御部4及び受光部5並び乾燥制御部6を、上記乾燥ブロック毎に、第1投光制御部4A、第2投光制御部4B、第3投光制御部4C、第1受光部5A、第2受光部5B、第3受光部5C、並びに第1乾燥制御部6A、第2乾燥制御部6B、第3乾燥制御部6Cとして配置する構成である。
【0081】
また、本実施形態における構成では、揮発ガス成分濃度の目標値を乾燥ブロック毎に予め設定する中央制御部24を備える。中央制御部24は、揮発ガス成分濃度の目標値の設定以外に、様々な印刷条件等に対応する乾燥作用の強度、揮発ガス成分濃度の各目標値等のデータを保存し、オペレーターにより選択される印刷条件等に対応する各乾燥作用の強度や投光するレーザー光の波長を各投光制御部に指令することができ、さらに、乾燥ブロック毎に計測される揮発ガス成分濃度と目標値を比較し乾燥状態を判定し、シートを乾燥させる作用の強度を調整する制御信号を各乾燥制御部に出力する様に構成されている。なお、乾燥作用の強度を調整するにあたって、搬送部7、発熱部8、送風部9の少なくともいずれか1つの乾燥作用の強度を調整すればよい。
【0082】
図11は、本実施形態に係るシート乾燥制御装置1により乾燥装置本体3を制御する場合において、シートの搬送距離D(図10参照)とシートに残留する揮発性溶剤の濃度(溶剤残留濃度)の低下状態を説明する説明図である。
【0083】
ここで、乾燥装置本体3に入る前の溶剤残留濃度は、乾燥品質基準において残留が許容される溶剤残留濃度(以下、「溶剤残留許容濃度Co」という)に比べ大きな値を示す。例えば、印刷工程等において揮発性の溶剤を塗布等されたシート2は、各乾燥ブロックにおいて乾燥作用を得るに従い所定の乾燥速度で溶剤残留許容濃度Co以下に乾燥される。一般的に最初の乾燥ブロックに入る前の溶剤残留濃度は1%(10000ppm)程度であり、溶剤残留許容濃度Coは、例えば印刷事業者や印刷物により異なるが、20ppm以下とされている。そして、シート2は所定の速度で乾燥し、その乾燥速度は乾燥作用の強度によって変化する。本実施形態に係るシート乾燥制御装置1により計測する揮発ガス成分濃度は、所定の強度の乾燥作用を与えた場合に、実際どのような乾燥速度で乾燥しているかを示す指標として扱うことができる。
【0084】
ところで、前述したFT−IR等による従来の測定においては、例えば、図11に示すように、乾燥装置本体3から搬出された箇所(○印で示す箇所)にてバッチ計測により溶剤残留濃度を、揮発ガス成分濃度に基づき推測していた。そのため、乾燥装置本体3における乾燥は、溶剤残留濃度が、図11に点線で示すように、一定の傾き(すなわち一定の乾燥速度)で変化する乾燥なのか、一点鎖線で示すように、溶剤残留濃度が乾燥工程の初期又は終期に急激に低下する(すなわち乾燥速度が初期又は終期に急激に増加)乾燥なのかが分からなかった。なお、溶剤残留濃度がどのように変化する乾燥が最適なのかは、乾燥させるシートの種類等によって一般的に異なる。
【0085】
本実施形態に係るシート乾燥制御装置1は、揮発ガス成分濃度の目標値を乾燥ブロック毎に設定し、乾燥ブロック毎の揮発ガス成分濃度を、例えば、図11に示す箇所(●印で示す箇所)で、計測し各投光制御部4A、4B、4Cにより計測する揮発ガス成分濃度が乾燥ブロック毎の目標値に近づく様に乾燥装置本体3の乾燥動作を制御することができるため、乾燥ブロック毎に所定の乾燥速度になるように制御することができる。したがって、例えば、図11に点線で示すように、一定の乾燥速度で乾燥動作をさせることでき、また、一点鎖線で示すように、乾燥速度が乾燥工程の初期又は終期に急激に増加する様な、乾燥動作もさせることができる。
【0086】
ところで、本実施形態においては、乾燥ブロック毎に所定の強度の乾燥作用を与えることができるが、各乾燥作用の結果(乾燥度合い)は、各乾燥ブロックのシート搬出側においてよく現れる。
【0087】
本実施形態においては、投光制御部4及び受光部5は、図10、11に示すように、各乾燥ブロックにおけるシート搬送方向の終端部側の揮発ガス成分濃度を測定可能にそれぞれ配置する構成である。これにより、本実施形態における構成では、乾燥ブロック毎の乾燥作用の結果を精度よく表すことができる。ただし、各乾燥ブロックの終端部から0mmの箇所に投光や受光をすることは現実的ではなく、終端部から、例えば50mm以内であることが望ましく、各乾燥ブロックの終端部からの投光や受光を行う箇所までの距離が乾燥ブロック毎の搬送距離D1、D2、D3(図10参照)の例えば5%以内であることが望ましい。なお、前述した第1〜3実施形態においても、投光制御部4及び受光部5をシート搬送方向の終端部側の揮発ガス成分濃度を測定可能に配置するとよい。
【0088】
なお、本実施形態において、計測手段は、各投光制御部4A、4B、4Cと、各受光部5A、5B、5Cとを備えて構成され、制御手段は、中央制御部24と、各乾燥制御部6A、6B、6Cとを備えて構成されている。
【0089】
また、上記の説明において、様々な印刷条件等に対応する乾燥作用の強度及び各目標値のデータの保存、測定結果と目標値の比較、乾燥状態の判定等の演算等は、中央制御部24によって行う場合で説明したが、中央制御部24を設けず、例えば、各投光制御部4A、4B、4Cや各乾燥制御部6A、6B、6Cで行う構成でもよい。さらに、前述した他の実施形態で説明した構成を各乾燥ブロックに、適用することもできる
【0090】
次に、本実施形態に係るシート乾燥制御装置1の制御動作について、図10、12に基づいて説明する。なお、第1実施形態の制御動作と同じ部分については説明を簡略化する。以下の説明において、シート乾燥制御装置1は、例えば、第1乾燥ブロック10A及び第2乾燥ブロック10Bにおいては、所定の印刷条件(例えば、インク塗布量)等に対応した強度(例えば、発熱部の温度、送風量、搬送速度等)で乾燥作用をシート2に与えた時の揮発ガス成分濃度を事前に計測し、この濃度を目標値とする。また、第3乾燥ブロック10Cにおいては、第1実施形態と同様に、シート2の種類に応じて定められる揮発ガス成分許容濃度を目標値とし、目標値が終端部側で計測される様な乾燥作用の強度は、シート2の種類毎に実験等により予め求められているものとする。そして、乾燥ブロック毎に作成された初期データは、例えば、中央制御部24内のメモリに既に保存され、初期データの作成(ステップS11)が完了しているものとして説明する。
【0091】
まず、オペレーター等により選択された印刷条件等に対応する初期データを中央制御部24内のメモリから読み出す(ステップ12)。次に、その初期データに基づいて中央制御部24は、ブロック毎に乾燥作用の強度を各乾燥制御部(第1乾燥制御部6A、第2乾燥制御部6B、第3乾燥制御部6C)に指令し、この指令に基づき各乾燥制御部は、乾燥ブロック毎に、所定の乾燥作用の強度で乾燥装置本体3の乾燥動作を開始させる。それと共に、中央制御部24は、レーザー光の波長や出力を各投光制御部(第1投光制御部4A、第2投光制御部4B、第3投光制御部4C)の計測機器制御部に指令する(ステップS13)。さらに、各投光制御部及び受光部は、第1実施形態と同じ方法で、揮発ガス成分濃度を計測(ステップS14)し、計測結果を中央制御部24に出力する(ステップS15)。そして、中央制御部24は、各乾燥ブロックの揮発ガス成分濃度が目標値の許容範囲内であるかをそれぞれ判定し、許容範囲内であると判定された乾燥ブロックの乾燥制御部に、同じ乾燥作用の強度で乾燥動作させる指令を出力すると共に、この乾燥ブロックについてはステップS14に戻り再び計測する(ステップS16)。また、計測した揮発ガス成分濃度が、許容範囲外の場合、第1乾燥ブロック10A及び第2乾燥ブロック10Bについては、次のステップS17に進み、第3乾燥ブロック10Cについては、次のステップS18に進む。最後に、ステップS17として、第1乾燥ブロック10A及び第2乾燥ブロック10Bについては、中央制御部24は、計測値が許容範囲の下限値より低い場合は、乾燥しにくい状態と判定し、揮発ガス成分濃度が目標値に近づく様に、乾燥作用の強度を予め設定する所定量増加させる制御信号を対応する乾燥制御部に出力する。また、中央制御部24は、計測された揮発ガス成分濃度が許容範囲の上限値より高い場合は、乾燥しやすい状態と判定し、揮発ガス成分濃度が目標値に近づく様に、乾燥作用の強度を予め設定する所定量減少させる制御信号を対応する乾燥制御部に出力する(ステップS17)。また、第3乾燥ブロック10Cについては、ステップS18として、第1実施形態で説明したステップ5と同じ判定を行い、判定結果に応じて制御信号を乾燥制御部に出力する(ステップS18)。そして、所定の時間に達するまで上記ステップS14〜S18までの乾燥動作を乾燥ブロック毎に行う。
【0092】
このような構成により、本実施形態に係るシート乾燥制御装置1は、乾燥ブロック毎に、所定の乾燥作用の強度が得られるように、乾燥装置本体3の乾燥動作を制御することができる。したがって、例えば、乾燥させるシートの種類等に応じて、乾燥ブロック毎に最適な乾燥作用の強度で、乾燥装置本体3の乾燥動作を制御することができる。
【0093】
次に、本発明に係る乾燥制御方法の実施形態を図面に基づいて説明する。
図5は、本発明に係る乾燥制御方法の実施形態を示すフロー図でもある。図1,2は、本実施形態における乾燥制御方法を使用するシート乾燥装置の一例を示す概略図でもある。
【0094】
本実施形態の乾燥制御方法は、シート2を搬送させながらシート2に含まれる溶剤を揮発させてシート2を乾燥する乾燥ブロック(筐体10により形成されるシートを乾燥するエリアを示す)を有する乾燥装置本体3のシート2を乾燥させる乾燥動作を、以下に説明する手順で制御する方法である。
【0095】
本実施形態における乾燥制御方法は、図5に示すように、まず、例えば、前述した初期データを事前に作成し、所定の印刷条件等を選択し、選択した条件に基づき乾燥装置本体3の乾燥動作を開始(ステップS1、2)させる。そして、乾燥ブロック内のシート2から揮発するガスの揮発領域12に赤外域の波長のレーザー光を投光し、ガスの揮発領域12を透過するレーザー光を受光し、受光するレーザー光の受光強度に基づきガスの揮発領域12におけるシート2から揮発するガスの揮発ガス成分濃度を計測(ステップS3)する。さらに、計測する揮発ガス成分濃度が、例えば、選択した印刷条件等に応じて予め設定される揮発ガス成分濃度の許容範囲内であるかを判定する(ステップS4)。そして、許容範囲内の場合は、ステップS3に戻り再測定すると共に、乾燥装置本体3を同じ乾燥作用の強度で乾燥動作さる。また、許容範囲の上限値より高い場合は、例えば、乾燥作用の強度を予め定める所定量減少させ、許容範囲の下限値より低い場合は、乾燥作用の強度を予め定める所定量増加させる(ステップS5)。そして、所定の時間に達するまで上記ステップS3〜S5までの乾燥動作を行う。このようにして、揮発ガス成分濃度に基づき、乾燥装置本体3におけるシート2を乾燥させる作用の強度を調整して乾燥動作を制御する。
【0096】
このような構成により、本実施形態に係る乾燥制御方法は、シート2からのガスの揮発ガス成分濃度を測定しガスの揮発状態を判定し、判定結果に応じて乾燥装置本体3の乾燥動作を制御することにより、乾燥装置本体3による乾燥作用の結果(乾燥度合い)を定量的に直接管理することができる。このようにして、シート2の乾燥工程における品質管理の精度を高めて、乾燥品質を向上させてシートを乾燥する乾燥制御方法を提供することができる。
【0097】
次に、本発明に係るシート乾燥装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るシート乾燥装置の実施形態を示す概略構成図でもある。同様に、図2は、本実施形態のシート乾燥装置についての概略上面図でもある。
【0098】
図1において、本実施形態のシート乾燥装置25は、シートを搬送させながら該シートに含まれる溶剤を揮発させてシートを乾燥する乾燥ブロックを有する乾燥装置本体3と、乾燥装置本体3のシートを乾燥させる乾燥動作を制御する、例えば、前述した第1実施形態のシート乾燥制御装置1とを備え、シート乾燥制御装置1により乾燥装置本体3の乾燥動作を制御し、シートを乾燥するように構成されている。なお、シート乾燥制御装置1は、これに限らず、前述した他の実施形態のシート乾燥制御装置1全てを適用することができる。また、乾燥装置本体3は、前述した他の実施形態の乾燥装置本体3全てを適用でき、これらに限らず、シートを搬送させながら該シートに含まれる溶剤を揮発させてシートを乾燥する乾燥ブロックを有し、乾燥作用の強度をシート乾燥制御装置1から制御可能な構成の乾燥装置本体3であればよい。
【0099】
このような構成により、本実施形態に係るシート乾燥装置25は、シート乾燥制御装置1により乾燥装置本体3における乾燥作用の効果を定量的に直接管理し、シート2の乾燥工程における乾燥品質についての管理精度を高めて、乾燥品質を向上させてシートを乾燥するシート乾燥装置25を提供することができる。
【0100】
なお、以上の全ての説明では、乾燥装置本体3は単一のものとして説明したが、単一のものに限らず、複数の乾燥装置本体3を並べて構成したものであってもよい。また、投光部13は、1つの波長のレーザー光を投光するものとして説明したが、単一の波長に限らず、例えば、複数の投光部13を備えて、複数の波長のレーザー光を投光し、受光部5を各波長のレーザー光の反射光をそれぞれ検知可能な構成としてもよい。さらに、受光部5がこのような構成の場合には、レーザー発振部16は、複数の波長のレーザー光を同時に発振可能な構成であってもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 シート乾燥制御装置
2 シート
3 乾燥装置本体
4 投光制御部
5 受光部
6 乾燥制御部
11 計測機器制御部
12 揮発ガス領域
13 投光部
22 反射鏡
23 再帰反射体
24 中央制御部
25 シート乾燥装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送させながら該シートに含まれる溶剤を揮発させてシートを乾燥する乾燥ブロックを有する乾燥装置本体の乾燥動作を制御するシート乾燥制御装置において、
前記シートから揮発するガスの揮発ガス成分濃度を、赤外域の波長のレーザー光により計測する計測手段と、
前記計測手段により計測する前記揮発ガス成分濃度に基づき、前記乾燥装置本体におけるシートを乾燥させる作用の強度を調整して前記乾燥動作を制御する制御手段と、
を備えて構成することを特徴とするシート乾燥制御装置。
【請求項2】
前記計測手段は、前記乾燥ブロック内のシートから揮発するガスの揮発領域に赤外域の波長のレーザー光を投光する投光部及び前記ガスの揮発領域を透過するレーザー光を受光する受光部を有し、該受光部の受光強度に基づき前記ガスの揮発領域におけるシートから揮発するガスの揮発ガス成分濃度を計測することを特徴する請求項1に記載のシート乾燥制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記計測手段により計測する揮発ガス成分濃度が、予め設定する揮発ガス成分濃度の目標値に近づく様に、前記乾燥装置本体における前記シートを乾燥させる作用の強度を調整して前記乾燥動作を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のシート乾燥制御装置。
【請求項4】
前記乾燥ブロックは、前記乾燥装置本体内のシート搬送方向に沿って複数設けられ、前記計測手段は、該乾燥ブロック毎に配置する構成とし、前記制御手段は、前記揮発ガス成分濃度の目標値を前記乾燥ブロック毎に予め設定し、前記乾燥装置本体における前記シートを乾燥させる作用の強度を調整して前記乾燥動作を前記乾燥ブロック毎に制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のシート乾燥制御装置。
【請求項5】
前記計測手段は、前記乾燥ブロックにおけるシート搬送方向の終端部側の前記揮発ガス成分濃度を測定可能に配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のシート乾燥制御装置。
【請求項6】
前記計測手段は、前記レーザー光を前記乾燥ブロック内で光走査可能な構成としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のシート乾燥制御装置。
【請求項7】
前記計測手段の測定対象のガスは、揮発性有機化合物を主成分とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のシート乾燥制御装置。
【請求項8】
前記計測手段の測定対象のガスは、水を主成分とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のシート乾燥制御装置。
【請求項9】
前記投光部と前記受光部は、前記揮発領域を挟んで対向して配置することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載のシート乾燥制御装置。
【請求項10】
前記計測手段は、前記揮発領域を透過するレーザー光を反射する反射鏡を備え、前記投光部及び前記受光部を、該反射鏡と対向して前記揮発領域を挟んで配置する構成としたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載のシート乾燥制御装置。
【請求項11】
前記反射鏡は、反射するレーザー光の光軸を調整して、前記受光部におけるレーザー光の受光強度を調整可能な構成としたことを特徴とする請求項10に記載のシート乾燥制御装置。
【請求項12】
前記反射鏡は、再帰反射体とすることを特徴とする請求項10に記載のシート乾燥制御装置。
【請求項13】
前記投光部から投光するレーザー光の波長は、中間赤外域の波長であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載のシート乾燥制御装置。
【請求項14】
シートを搬送させながら該シートに含まれる溶剤を揮発させてシートを乾燥する乾燥ブロックを有する乾燥装置本体の乾燥動作を制御する乾燥制御方法であって、
前記乾燥ブロック内のシートから揮発するガスの揮発ガス成分濃度を、赤外域の波長のレーザー光により計測し、計測する前記揮発ガス成分濃度に基づき、前記乾燥装置本体における前記シートを乾燥させる作用の強度を調整して前記乾燥動作を制御することを特徴とする乾燥制御方法。
【請求項15】
前記赤外域の波長のレーザー光を前記乾燥ブロック内のシートから揮発するガスの揮発領域に投光し、前記ガスの揮発領域を透過するレーザー光を受光し、該受光したレーザ光の受光強度に基づき前記ガスの揮発領域におけるシートから揮発するガスの揮発ガス成分濃度を計測することを特徴する請求項14に記載の乾燥制御方法。
【請求項16】
前記計測する揮発ガス成分濃度が、予め設定する揮発ガス成分濃度の目標値に近づく様に、前記乾燥装置本体における前記シートを乾燥させる作用の強度を調整して前記乾燥動作を制御することを特徴とする請求項14又は15に記載の乾燥制御方法。
【請求項17】
前記乾燥ブロックを前記乾燥装置本体内のシート搬送方向に沿って複数設け、該乾燥ブロック毎に前記ガスの揮発ガス成分濃度を計測し、前記揮発ガス成分濃度の目標値を前記乾燥ブロック毎に予め設定し、前記乾燥装置本体における前記シートを乾燥させる作用の強度を調整して前記乾燥動作を前記乾燥ブロック毎に制御することを特徴とする請求項14〜16のいずれか1つに記載の乾燥制御方法。
【請求項18】
前記揮発ガス成分濃度の計測は、前記乾燥ブロックにおけるシート搬送方向の終端部側の前記揮発ガス成分濃度を測定して行うことを特徴とする請求項14〜17のいずれか1つに記載の乾燥制御方法。
【請求項19】
前記揮発ガス成分濃度の計測は、前記レーザー光を前記乾燥ブロック内で光走査して行うことを特徴とする請求項14〜18のいずれか1つに記載の乾燥制御方法。
【請求項20】
前記請求項1〜13のいずれか1つに記載のシート乾燥制御装置と、
シートを搬送させながら該シートに含まれる溶剤を揮発させてシートを乾燥する乾燥ブロックを有する乾燥装置本体と、
を備え、
前記シート乾燥制御装置により前記乾燥装置本体の乾燥動作を制御し、シートを乾燥することを特徴とするシート乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−163676(P2011−163676A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27778(P2010−27778)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】