説明

シート型触媒ヒーター

【課題】厚みの薄いコンパクトなシート状であり、かつ温度分布が均一なシート型触媒ヒーターを提供することを目的とする。
【解決手段】触媒に燃料ガスと酸化性ガスを供給することで発生する熱を利用したヒーター機能を有するシート状の触媒ヒーターであって、少なくとも、前記燃料ガスが導入される燃料供給室と、前記触媒が配置される触媒室を具備し、該触媒室には酸化性ガスが供給されており、前記燃料供給室と前記触媒室は燃料ガス透過フィルムによって隔たれており、該燃料ガス透過フィルムを通して前記燃料供給室から前記触媒室に前記燃料ガスが供給されるものであることを特徴とするシート型触媒ヒーター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒に燃料ガスと酸化性ガスを供給することで発生する熱を利用したヒーター機能を有するシート型触媒ヒーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
触媒ヒーターとは、ガス状態の水素、メタノール、エタノール、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の燃料を、空気等の酸化性ガスと共に触媒体上に供給し、その触媒上で燃料と酸素を酸化反応させて、発熱し、その発生した熱を利用するヒーターのことである。
【0003】
従来、触媒ヒーターは、図9に示すように、円筒状の燃焼筒91の中にペレット状または、ハニカム状の触媒体粒子を充填した触媒部92、セラミックリングや発泡セラミック拡散板を用いた拡散部93を備えていた(特許文献1)。しかし、従来のこの方式は、燃料と空気を一ヶ所から供給し、燃料と空気を混合し拡散するために、十分な反応空間が必要であった。そのため、触媒部と拡散部は、非常に大きな層長となり、触媒ヒーター全体の構造は非常に大型なものであった。
【0004】
大型の触媒ヒーターをコンパクトなシート状にするため、図10(A)、(B)に示すように、触媒部94を細孔のある棒状のチューブ95の中にいれ、触媒ヒーターの燃料と空気を混合させたガスを、このチューブの長手方向から、チューブ内の触媒上に供給させる方法も考えられた(特許文献2)。しかし、このような触媒ヒーター90であると燃料供給の際、ガス供給の入口と出口であるチューブの両端部で温度が低く、チューブの中心部で温度が高いといった、温度分布が均一でない問題があった。また、容積についても十分に小型化されておらず、より一層のコンパクト化が要求されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−53711号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第6062210号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、燃料電池や半導体製造装置において、製品の小型化にともない、使用する触媒ヒーターの省スペース化、すなわち触媒ヒーターの構造を厚みが薄いシート状にすることが、強く要求されるようになった。特に、自動車用の燃料電池で問題となっている一つに、低温環境下での燃料電池の始動性がある。燃料電池が始動するためには、燃料電池内の電解質膜中を、水素イオンが伝導しなければならない。水素イオンの伝導には、電解質膜中に水が必要であるが氷点下の環境下において、電解質膜中の水が氷結してしまい、燃料電池が始動しないといった問題がある。
【0007】
そこで、上記の燃料電池で使用する燃料が、触媒ヒーターでも使用することができるため、厚みが薄いシート状の触媒ヒーターが得られるのであれば、始動時に触媒ヒーターであたたまることで、燃料電池スタックの形状を大きくすることなく、始動時の氷結の問題を解決することができる。そのため、このようなシート状の触媒ヒーターの開発が求められている。また、現在電気によるシート状のヒーターを、燃料電池内に使用することも考えられるが、この場合、燃料電池に使用されている燃料に引火する可能性があり、好ましくない。
【0008】
一方、半導体製造装置においても、従来使用されている電気を使用したシート状のヒーターでは、漏電による発火等の恐れがあるため、電気を使用しないシート状のヒーターが求められている。
【0009】
しかしながら、図10に示すような従来のシート状の触媒ヒーター90では、前述のように燃料供給の際、ガス供給の入口と出口であるチューブ95の両端部で温度が低く、チューブ95の中心部で温度が高いといった、温度分布が均一でない問題がある。自動車用の燃料電池にこのような触媒ヒーターを使用すると、触媒ヒーターの温度分布が均一でないために、短時間で燃料電池内の電解質膜中の氷を均一に溶解することができず、短時間で燃料電池の十分なパワーを得ることが出来ない。また、燃料電池では、燃料と空気の供給は、別に行われているが、従来の触媒ヒーターでは、燃料と空気は、混合され、触媒上に供給されるため、燃料と空気を混合する空間が必要となり、触媒ヒーターを併用した燃料電池の省スペース化が困難となる。
【0010】
本発明は、上記のような問題点を考慮してなされたもので、厚みの薄いコンパクトなシート状であり、かつ温度分布が均一なシート型触媒ヒーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明は、触媒に燃料ガスと酸化性ガスを供給することで発生する熱を利用したヒーター機能を有するシート状の触媒ヒーターであって、少なくとも、前記燃料ガスが導入される燃料供給室と、前記触媒が配置される触媒室を具備し、該触媒室には酸化性ガスが供給されており、前記燃料供給室と前記触媒室は燃料ガス透過フィルムによって隔たれており、該燃料ガス透過フィルムを通して前記燃料供給室から前記触媒室に前記燃料ガスが供給されるものであることを特徴とするシート型触媒ヒーターである(請求項1)。
【0012】
このように、シート型触媒ヒーターが、燃料ガスが導入される燃料供給室と、触媒が配置される触媒室を具備し、該触媒室には酸化性ガスが供給されており、前記燃料供給室と前記触媒室は燃料ガス透過フィルムによって隔たれており、該燃料ガス透過フィルムを通して前記燃料供給室から前記触媒室に前記燃料ガスが供給されるものであれば、厚みを薄く、コンパクトな形状とできる。また、燃料を燃料ガス透過フィルムを通して供給することで酸化性ガスが供給された触媒室に燃料を均一に供給することができるので、シート型触媒ヒーターの温度分布を均一にすることができる。また、電気を使用していないため、漏電等の問題がない。
【0013】
また、前記シート型触媒ヒーターは、更に、前記酸化性ガスが導入される酸化性ガス供給室を具備し、前記酸化性ガスは、前記酸化性ガス供給室から酸化性ガス透過フィルムを通して前記触媒室に供給されるものであることが好ましい(請求項2)。
【0014】
このように、前記シート型触媒ヒーターが、更に、酸化性ガスが導入される酸化性ガス供給室を具備し、前記酸化性ガスは、前記酸化性ガス供給室から酸化性ガス透過フィルムを通して前記触媒室に供給されるものであれば、触媒室に酸化ガスを均一に供給することができる。また、燃料ガスと酸化性ガスを別々に触媒室に供給することができるため、燃料と空気等の酸化性ガスを混合するための拡散層を省くことができ、シート型触媒ヒーターの構造をさらに薄くすることができる。
【0015】
また、前記触媒は、棒状又は繊維状の担体に坦持されるか、前記燃料ガス透過フィルムに坦持されたものであることが好ましい(請求項3)。
【0016】
このように、触媒が棒状又は繊維状の担体に坦持されたものであれば、触媒の表面積を大きくすることができ、効率よく触媒反応させることができる。
また、触媒が燃料ガス透過フィルムに坦持されたものであれば、よりコンパクトなシート状触媒ヒーターとすることができる。
【0017】
また、前記燃料ガス透過フィルムは、厚みが0.01〜5.0mm、ガス透過率が0.1〜100×10−9cm・cm/sec・cm・cmHgの範囲のものであることが好ましい(請求項4)。
【0018】
前記燃料ガス透過フィルムの厚み及びガス透過率がこのような範囲のものであれば、燃料供給室から触媒室へ均一に燃料ガスを供給することができ、燃料ガス以外の物質が触媒室へ透過するのを防ぐフィルター機能が高いため、このような範囲のものが好ましい。
【0019】
また、前記燃料供給室の内部に、前記燃料ガスを導入するための空間を保持するためのスペーサーが設けられたものであることが好ましい(請求項5)。
【0020】
このように、燃料供給室の内部に、燃料ガスを導入するための空間を保持するためのスペーサーが設けられていれば、燃料供給室に導入された燃料ガスを、スペーサーによって保持された燃料供給室内の空間で、すぐに拡散させることができ、触媒室に燃料ガスをより均一に供給することができる。
【0021】
また、前記酸化性ガス供給室の内部に、断熱材が設けられたものであることが好ましい(請求項6)。
【0022】
このように、酸化性ガス供給室の内部に、断熱材が設けられていれば、シート状触媒ヒーターの温度分布をより均一することができる。
【0023】
また、前記燃料供給室における前記触媒室に接する側とは反対側の外側面は燃料ガス不透過フィルムであり、前記触媒室側の外側面は酸化性ガス不透過フィルムであることが好ましい(請求項7)。
【0024】
このように、燃料供給室における触媒室に接する側とは反対側の外側面は燃料ガス不透過フィルムであり、触媒室側の外側面は酸化性ガス不透過フィルムであれば、燃料が触媒ヒーターの外部に漏れる恐れがなく安全である。
【0025】
また、前記触媒室が、前記燃料供給室をはさんで両側に配置されることで、前記シート型触媒ヒーターの両面側に形成されたものであり、前記燃料供給室の前記触媒室に接する両面が前記燃料ガス透過フィルムであり、前記触媒室側の外側面は酸化性ガス不透過フィルムであることが好ましい(請求項8)。
【0026】
このように、触媒室が、燃料供給室をはさんで両側に配置されることで、シート型触媒ヒーターの両面側に形成されたものであり、燃料供給室の触媒室に接する両面が燃料ガス透過フィルムであり、触媒室側の外側面は酸化性ガス不透過フィルムであれば、シート型触媒ヒーターの両面を均一に所望の温度とすることができる。また、燃料が触媒ヒーターの外部に漏れる恐れもなく安心である。
【0027】
また、前記シート型触媒ヒーターは、自動車用燃料電池を温めるために使用されるものであることが好ましい(請求項9)。
【0028】
本発明のシート型触媒ヒーターを自動車用燃料電池を温めるために使用すれば、燃料電池を均一に安全に温めることができる。また、本発明のシート型触媒ヒーターであれば燃料電池の省スペース化を実現することが可能である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、厚みの薄いコンパクトなシート状であり、かつ温度分布が均一なシート型触媒ヒーターを提供することができる。また、本発明のシート型触媒ヒーターでは電気を使用しないため、漏電する恐れもない。従って、本発明に係るシート型触媒ヒーターを、例えば、自動車用燃料電池を温めるために使用すれば、燃料電池を安全に均一に温めることができる上に、燃料電池の省スペース化も実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
図1は、本発明に係るシート型触媒ヒーターの一例を示す図である。図1(A)は、シート型触媒ヒーター1の斜視図であり、図1(B)はシート型触媒ヒーター1の断面図である。発明の構成を判り易くするため、図1(A)等では、厚さ方向を拡大して模式的に描いているが、このシート型触媒ヒーター1は、使用時にシート状の形状である。また、図1(B)に示されるように、シート型触媒ヒーター1には、燃料ガスが導入される燃料供給室4と、触媒が配置される触媒室5が形成されている。触媒室5には酸化性ガスが供給されており、燃料供給室4と触媒室5は燃料ガス透過フィルム2よって隔たれている。また、シート型触媒ヒーター1の燃料供給室4の触媒室5に接する側とは反対の外側面はガス不透過フィルム3となっている。燃料供給室4に導入された燃料ガスは、燃料ガス透過フィルム2を通して燃料供給室4から触媒室5に供給されるようになっている。触媒室5には、ガス透過フィルムを介して燃料ガスおよび酸化性ガスが供給されるので、均一な濃度でガスが触媒に接し、均一な発熱を可能とする。
【0032】
また、シート型触媒ヒーター1において、触媒室5側の外側面は酸化性ガス不透過フィルム8が形成されている。触媒室5には、図1(C)に示されるような、棒状の担体に触媒がコーティングされた触媒体9が配置されている。また、触媒室5の燃料ガス透過フィルム2とは反対側には、酸化性ガス透過フィルム7が形成されており、酸化性ガス透過フィルム7と酸化性ガス不透過フィルム8に挟まれた空間は酸化性ガス供給室6となっている。この酸化性ガス供給室6に導入された酸化性ガスは、酸化性ガス透過フィルム7を通して酸化性ガス供給室6から触媒室5に供給されるようになっている。
シート型触媒ヒーター1では、このようにして、触媒室5に供給された燃料ガスと酸化性ガスが、触媒上で酸化反応することによって熱が発生する。
【0033】
図1に示されるように、本発明に係るシート型触媒ヒーター1は、触媒に燃料ガスと酸化性ガスを供給することで発生する熱を利用したヒーター機能を有するシート状の触媒ヒーターであって、少なくとも、燃料ガスが導入される燃料供給室4と、触媒が配置される触媒室5を具備し、触媒室5には酸化性ガスが酸化性ガス供給室6から供給されており、燃料供給室4と触媒室5は燃料ガス透過フィルム2によって隔たれており、燃料ガス透過フィルム2を通して燃料供給室4から触媒室5に燃料ガスが供給されるものであることを特徴している。
【0034】
尚、上記態様におけるシート型触媒ヒーター1では、酸化性ガスは、酸化性ガス供給室6から触媒室5に供給されるようにしてもよいが、酸化性ガスと燃料ガスを混合したものを燃料供給室4に導入し、燃料供給室4から触媒室5に酸化性ガスと燃料ガスの両方が供給されるようにしてもよい。
【0035】
本発明のシート型触媒ヒーターで使用される燃料ガスとしては、水素やメタノール、エタノール等のアルコール類、プロパン、ブタン等の炭化水素類などが挙げられる。尚、これらの燃料ガスは燃料供給室4に導入される時は、液体又は気体のどちらの状態でも構わない。また、酸化性ガスとしては、例えば、空気や酸素が用いられる。
【0036】
また、燃料ガス透過フィルム2は、燃料ガスを均一に触媒室5に供給することができ、また、埃や水滴などの燃料ガス以外の物質が触媒室5へ侵入するのを防ぐフィルターの機能も有している。本発明のシート型触媒ヒーター1で使用されるガス透過フィルム2は膜厚が0.01mm〜5.0mmで、かつガス透過率が0.1〜100×10−9cm・cm/sec・cm・cmHgの範囲のフィルムで構成されるのが好ましい。このようなフィルムとしては微孔性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)などが挙げられる。
【0037】
また、本発明のシート型触媒ヒーター1において、燃料供給室4における触媒室5に接する側とは反対側の外側面は、燃料ガス不透過フィルム3であるのが好ましく、ガス不透過フィルム3は、耐熱性、柔軟性をもったガスバリア性の高いフィルムとするのが好ましく、例えば、アルミなどの金属フィルム、PETやPPにアルミ等を蒸着した、蒸着フィルムなどが挙げられる。
【0038】
また、図1に示されるシート型触媒ヒーター1のように、本発明に係るシート型触媒ヒーターは、更に、酸化性ガスが導入される酸化性ガス供給室6を具備し、酸化性ガスは、酸化性ガス供給室6から酸化性ガス透過フィルム7を通して触媒室5に供給されるものであることが好ましい。
【0039】
上述のように、図1に示されるシート型触媒ヒーター1において、燃料ガスと反応する酸化性ガスは、酸化性ガスを透過する酸化性ガス透過フィルム7と、酸化性ガス不透過フィルム8で囲まれた酸化性ガス供給室6から、酸化性ガス透過フィルム7を透過し、触媒室5に供給される。また、酸化性ガス供給室6は、触媒室5と隣接する触媒室5の間の空間を利用して形成されている。そのため厚さが厚くならず、シート型触媒ヒーター1の形状をコンパクトにシート状にすることができる。酸化性ガス透過フィルム7としては、耐熱性、柔軟性をもったフィルムで、埃や水滴などの酸化性ガス以外の物質が触媒室に透過して侵入するのを防ぐフィルターとすることができ、たとえば微孔性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)などが考えられる。酸化性ガス不透過フィルム8は、触媒室5が接触する面から、空気等の酸化性ガスを供給することができるなら、酸化性ガス不透過フィルムでなく酸化性ガス透過フィルムとすることもできる。
【0040】
このような構造のシート型触媒ヒーター1において、燃料ガスは燃料ガス透過フィルム2を透過し、触媒室5に配置された触媒体上に供給され、酸化性ガスは酸化性ガス透過フィルム7を透過し、触媒室5に配置された触媒体上に供給される。このように、本発明におけるシート型触媒ヒーター1は、触媒上に供給される前に、燃料ガスと酸化性ガスを混合するための拡散層が必要でないため、コンパクトなシート状の触媒ヒーターとなっている。
【0041】
また、シート型触媒ヒーター1において、触媒室5には、棒状の担体に触媒が薄く均一にコーティングされた触媒体9が配置されている。このように、本発明に係るシート型触媒ヒーターでは、触媒は、例えば、棒状の担体に坦持された状態で触媒室に配置されることができる。触媒が坦持される棒状の担体は、耐熱性が高く、触媒が担持可能で、触媒が効率よく反応するため表面積を大きくする担体であればよく、例えば、アルミナ、シリカ、ゼオライト等のセラミック系、アルミニウム、ステンレス等の金属系に薄く触媒を均一にコーティングするものが挙げられる。また、例えば、硝子繊維、ポリイミド、PTFE等に触媒をコーティングして坦持させてもよい。
【0042】
尚、触媒は、表面積を大きくし、反応効率を上げるため1〜100nmの微粒子にしたものを使用することができ、例えば、プラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、鉄、ルテニウム、モリブデン、タングステン、スズ、及びそれらの組合せからなる触媒が挙げられるが、これらに限られるものではなく、一般的に触媒ヒーターで用いられる触媒は、本発明に使用できる。
【0043】
また、本発明におけるシート型触媒ヒーター1は、自動車用燃料電池を温めるために使用することができる。図2、3は図1に示されるシート型触媒ヒーター1を自動車用燃料電池を温めるために使用した場合を示した図である。
【0044】
図2は自動車用燃料電池を温めるために本発明のシート型触媒ヒーター1を使用した場合の全体図である。シート型触媒ヒーター1は燃料電池スタック16に隣接して、燃料電池スタック16を挟むようにして配置されている。燃料ガス21は、燃料ガス導入部14から燃料ガス用の配管18を通ってシート型触媒ヒーター1と燃料電池スタック16に供給される。一方、燃料ガス21と反応する酸化性ガス22は酸化性ガス導入部15から、酸化性ガス用配管19を通って、ヒーター部に配置されたシート型触媒ヒーター1と燃料電池スタック16に供給される。供給された燃料ガス21と酸化性ガス22は、シート状触媒ヒーター1内と燃料電池スタック16内で反応する。反応に使用されなかった燃料ガスおよび酸化性ガスと、反応で生成された水等の排ガスが排気口17から排出される。
【0045】
一方、図3は、図2において燃料電池スタック16に隣接するように配置されたシート型ヒーター1の使用時における様子を説明した図である。燃料ガス21は、燃料ガス導入部14から燃料ガス用の配管18を通ってシート型触媒ヒーター1の燃料供給室4に供給され、燃料ガス透過フィルム2を透過し、触媒室5に供給される。また、酸化性ガス22は、酸化性ガス導入部15から酸化性ガス用の配管19を通って、酸化性ガス供給室6に供給され、酸化性ガス透過フィルム7を透過し、触媒室5に供給される。供給された燃料ガスと酸化性ガスは触媒室5で反応する。反応で使用されなかった燃料ガスおよび酸化性ガスと、反応で生成された水等の排ガスが排気口17から排出される。
【0046】
このように、燃料電池では、燃料ガスと、反応用の酸化性ガスはそれぞれ別々に供給されるのに対し、シート型触媒ヒーター1でも自動車用燃料電池と同様に、燃料ガスと酸化性ガスは別々に供給され触媒上で酸化反応をする。また、反応で使用されなかった燃料ガスおよび酸化性ガスと、反応で生成された水は、自動車用燃料電池スタック16とシート型触媒ヒーター1との同じ排気口17より排気することができる。従って、自動車用燃料電池で使用している配管18,19、排気口17をシート型触媒ヒーター1でも、容易に使用することができるため、本発明のシート型触媒ヒーター1を自動車用燃料電池を温めるために使用すれば、自動車用燃料電池の省スペース化に役立つことができる。
【0047】
一方、図4は、本発明に係るシート型触媒ヒーターの他の一例を示す図である。図4(A)は、シート型触媒ヒーター101の斜視図であり、図4(B)はシート型触媒ヒーター101の断面図である。図4(A)、(B)に示されるように、シート型触媒ヒーター101は、シート状の形状を有し、図1に示されるシート型触媒ヒーター1と同様な構成で燃料供給室104が形成されている。また、燃料供給室104の燃料ガス透過フィルム102を挟んで上側は触媒室106となっており、燃料供給室104における触媒室106に接する側とは反対側の外側は燃料ガス不透過フィルム103であり、触媒室106側の外側面は酸化性ガス不透過フィルム108が形成されている。ここで、シート型触媒ヒーター101では、触媒110が燃料ガス透過フィルム102に直接コーティングされた触媒層105が触媒室内106内に形成されている。尚、この場合、触媒室106は、酸化性ガス供給室を兼ねるようになっている。
【0048】
触媒110は、燃料ガス透過フィルム102にコーティング剤111によって固定されている。また、コーティング剤111は燃料ガスと反応するための酸化性ガスを透過することができ、さらに、埃や水滴が触媒に透過するのを防ぐための役割を担っている。コーティング剤111としては、例えば、高分子固体電解質などが挙げられる。このような構造のシート型触媒ヒーター101において、燃料ガスは燃料供給室104から燃料ガス透過フィルム102を通して、酸化性ガスは、コーティング剤111を透過し、触媒層105内に供給され、触媒110上で反応することができる。
【0049】
このように、本発明に係るシート型触媒ヒーターにおける触媒は、燃料ガス透過フィルムの触媒室側に直接コーティングし、燃料ガス透過フィルムに坦持させることで触媒室に配置されてもよい。また、上述したように、例えば、不織布、硝子ウール等のような繊維状の担体に触媒をコーティングしたものをシート型触媒ヒーターの触媒室に配置するようにしてもよい。
【0050】
図5は、本発明に係るシート型触媒ヒーターの燃料供給室の内部に、燃料ガスを導入するための空間を保持するためのスペーサーが設けられた場合を示した図である。図5(A)は、シート型触媒ヒーター201の斜視図であり、図5(B)はシート型触媒ヒーター201の断面図である。図5(A)、(B)に示されるように、シート型触媒ヒーター201は、シート状の形状を有し、図1におけるシート型触媒ヒーター1と同様の構成で、燃料供給室204と、棒状の担体に触媒がコーティングされた触媒体209が配置された触媒室205、酸化性ガス供給室206が形成されており、燃料ガスは燃料供給室204から燃料ガス透過フィルム202を通して、酸化性ガスは酸化性ガス供給室206から酸化性ガス透過フィルム207を通して、それぞれ触媒室205に供給されるようになっている。また、燃料供給室204における触媒室205に接する側とは反対側の外側は燃料ガス不透過フィルム203であり、触媒室205側の外側面は酸化性ガス不透過フィルム208である。ここで、シート型触媒ヒーター201における燃料供給室204には、燃料ガス透過フィルム202と燃料ガス不透過フィルム203との間にスペーサー212が設けられている。このスペーサー212によって、燃料供給室204は燃料ガスを導入するための空間を保持することができ、燃料ガスを確実に均一に触媒室に供給することができるので、このような構造が好ましい。
【0051】
また、図6は、本発明に係るシート型触媒ヒーターの酸化性ガス供給室の内部に、断熱材が設けられた場合を示した図である。図6(A)は、シート型触媒ヒーター301の斜視図であり、図6(B)はシート型触媒ヒーター301の断面図である。図6(A)、(B)に示されるように、シート型触媒ヒーター301は、シート状の形状を有し、図1におけるシート型触媒ヒーター1と同様の構成で、燃料供給室304と、棒状の担体に触媒がコーティングされた触媒体309が配置された触媒室305、酸化性ガス供給室306が形成されており、燃料ガスは燃料供給室304から燃料ガス透過フィルム302を通して、酸化性ガスは酸化性ガス供給室306から酸化性ガス透過フィルム307を通して、それぞれ触媒室305に供給されるようになっている。また、燃料供給室304における触媒室305に接する側とは反対側の外側は燃料ガス不透過フィルム303であり、触媒室側の外側面は酸化性ガス不透過フィルム308である。ここで、シート型触媒ヒーター301において、酸化性ガス不透過フィルム307の酸化性ガス供給室306側には、断熱材313が接合されている。このように、酸化性ガス供給室306の内部に断熱材313が設けられていることによって、シート型触媒ヒーター301の温度がより均一になるため、このような構造が好ましい。
【0052】
また、断熱材313としては、シリコーン樹脂の発泡体、ガラス繊維、フッ素系樹脂の発泡体などから形成された耐熱性発泡シートや耐熱性多孔シート、およびそれらの組合せからなるものが挙げられる。
【0053】
次に、図7は、本発明に係るシート型触媒ヒーターの両面側に触媒室が形成された場合を示した図である。図7(A)は、シート型触媒ヒーター401の斜視図であり、図7(B)はシート型触媒ヒーター401の断面図である。図7(A)、(B)に示されるように、シート型触媒ヒーター401は、シート状の形状を有し、燃料ガスが導入される燃料供給室404と触媒室405と、酸化性ガスが導入される酸化性ガス供給室406を具備している。シート型触媒ヒーター401では、燃料供給室404の触媒室405に接する両面が燃料ガス透過フィルム402であって、触媒室405は、燃料供給室404をはさんで両側に配置されている。シート型触媒ヒーター401の両面側に形成された触媒室405の内部には、棒状の担体に触媒がコーティングされた触媒体409がそれぞれ配置されている。また、燃料供給室404の両側に配置された触媒室405上には酸化性ガス透過フィルム407をはさんで酸化性ガス供給室406がそれぞれ形成されており、シート型触媒ヒーター401の触媒室側の外側面は酸化性ガス不透過フィルム408となっている。シート型触媒ヒーター401において、燃料ガスは燃料供給室404から両側の触媒室405に燃料ガス透過フィルム402を通して供給され、酸化性ガスは両側の酸化性ガス供給室406からそれぞれ接する触媒室405に酸化性ガス透過フィルム407を通して供給される。このように、触媒室405が燃料供給室404をはさんで両側に配置されることで、シート型触媒ヒーター401の両面側に形成されたものであれば、シート型触媒ヒーター401の両面を均一に目的の温度にすることができ、発熱量が多いヒーターとするためには、このような構造が好ましい。
【0054】
尚、本発明に係るシート型触媒ヒーターは、触媒燃焼であり、より低い温度でも燃料ガスを完全燃焼できるため、反応により生じる廃棄ガスは二酸化炭素と水のみで、一酸化炭素、窒素酸化物等の有害物質の生成を抑えることができる。
【実施例】
【0055】
以下に本発明の実施例をあげてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
まず、図8(A)に示されるような本発明に係るシート型触媒ヒーター501を作製した。シート型触媒ヒーター501には、燃料供給室504が形成されており、また、燃料供給室504の燃料ガス透過フィルム502を挟んで上側は触媒室506となっており、触媒室506は酸化性ガス供給室を兼ねるようになっている。燃料供給室504における触媒室506に接する側とは反対側の外側は燃料ガス不透過フィルム503であり、触媒室505側の外側面は酸化性ガス透過フィルム508が形成されている。触媒510は、燃料ガス透過フィルム502の触媒室506側に均一に塗布し、コーティング剤511によって固定されており、触媒層505が形成される。このような構造のシート型触媒ヒーター501において、燃料ガスは燃料供給室504から燃料ガス透過フィルム502を通して、酸化性ガスは、コーティング剤511を透過し、触媒層505内に供給され、触媒510上で反応するようになっている。
【0057】
ここで、シート型触媒ヒーター501において、燃料ガス透過フィルム502としては、厚み0.1mmの微孔性PTFEフィルムを用いた。また、燃料ガス不透過フィルム503としては、0.03mmのアルミフィルムを用いた。燃料ガス透過フィルム502には、触媒511としてPtの微粉末を均一に塗布して、高分子固体電解質からなるコーティング剤によって薄くコーティングして触媒層505を形成した。尚、触媒層505の厚みは0.1mmであった。
【0058】
また、図8(B)に示されるように、作製したシート型触媒ヒーター501の燃料供給室504と触媒室506に、それぞれ、燃料ガス導入用ポンプ514および酸化性ガス導入用ポンプ515を利用して燃料ガスおよび酸化性ガスを導入した。尚、燃料ガスとして水素99.99%を燃料供給室504に導入し、酸化性ガスとして空気を酸化性ガス供給室506に導入するようにした。
【0059】
尚、触媒層506内の触媒510上で水素と空気が反応することによって生成された水と反応に使用されなかった燃料ガスおよび空気は、排気口517から排出されるようにした。
【0060】
上記のように水素と空気が反応することで発熱を始めたシート型触媒ヒーター501の表面の温度を数点測定し、表面の温度が均一となっているかを調べたところ、各測定点における平均温度は81℃であった。また各測定点における温度差は、最小で5℃、最大で20℃であった。また、シート型触媒ヒーター501のサイズを測定したところ、15cm×10cmであり、厚みは0.5mmとすることができた。また、厚みとヒーター上の温度差について、実施例1のシート型触媒ヒーター501と図10に示される従来の触媒ヒーター(比較例1)とを比較した結果を表1に示した。
【0061】
【表1】

【0062】
表1から明らかなように、本発明のシート型触媒ヒーター501は、従来の触媒ヒーターと比べ、非常に厚みの薄いシート状の形状とすることができた。また、本発明におけるシート型触媒ヒーター501では、表面の温度分布も、従来に比べ、より均一な表面温度とすることができた。
【0063】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な効果を奏するいかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0064】
例えば、本実施の形態および本実施例においては、燃料ガスと酸化性ガスとを別々に供給する場合について説明したが、燃料供給室に燃料ガスと空気を混合したものを導入するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係るシート型触媒ヒーターの一例の(A)斜視図および(B)断面図と(C)触媒がコーティングされた棒状の担体の例を示した図である。
【図2】図1におけるシート型触媒ヒーター1を自動車用燃料電池を温めるために使用した場合を説明するための図である。
【図3】図2において自動車用燃料電池を温めるために使用中のシート型触媒ヒーター1の状態を説明するための図である。
【図4】本発明に係るシート型触媒ヒーターの他の一例の(A)斜視図および(B)断面図を示した図である。
【図5】本発明に係るシート型触媒ヒーターの他の一例の(A)斜視図および(B)断面図を示した図である。
【図6】本発明に係るシート型触媒ヒーターの他の一例の(A)斜視図および(B)断面図を示した図である。
【図7】本発明に係るシート型触媒ヒーターの他の一例の(A)斜視図および(B)断面図を示した図である。
【図8】実施例1における(A)シート型触媒ヒーターの断面図を示した図と(B)燃料ガス等の導入系および排出系を説明するための図である。
【図9】従来の触媒ヒーターの一例を示した図である。
【図10】従来の触媒ヒーターの他の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0066】
1、101、201、301、401、501…シート型触媒ヒーター、
2、102、202、302、402、502…燃料ガス透過フィルム、
3、103、203、303、503…燃料ガス不透過フィルム、
4、104、204、304、404、504…燃料供給室、
5、106、205、305、405、506…触媒室、
6、206、306、406…酸化性ガス供給室、
7、207、307、407、508…酸化性ガス透過フィルム、
8、108、208、308、408…酸化性ガス不透過フィルム、
9、209、309、409…棒状の担体に触媒がコーティングされた触媒体、
14…燃料ガス導入部、 15…酸化性ガス導入部、 16…燃料電池スタック、
17、517…排気口、 18…燃料ガス用配管、 19…酸化性ガス用配管、
21…燃料ガス、 22…酸化性ガス、 110、510…触媒、
111、511…コーティング剤、 212…スペーサー、 313…断熱材、
105、505…触媒層、 514…燃料ガス導入用ポンプ、 515…酸化性ガス導入用ポンプ、 90…従来の触媒ヒーター、 91…燃焼筒、
92、94…触媒部、 93…拡散部、 95…チューブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒に燃料ガスと酸化性ガスを供給することで発生する熱を利用したヒーター機能を有するシート状の触媒ヒーターであって、少なくとも、前記燃料ガスが導入される燃料供給室と、前記触媒が配置される触媒室を具備し、該触媒室には酸化性ガスが供給されており、前記燃料供給室と前記触媒室は燃料ガス透過フィルムによって隔たれており、該燃料ガス透過フィルムを通して前記燃料供給室から前記触媒室に前記燃料ガスが供給されるものであることを特徴とするシート型触媒ヒーター。
【請求項2】
更に、前記酸化性ガスが導入される酸化性ガス供給室を具備し、前記酸化性ガスは、前記酸化性ガス供給室から酸化性ガス透過フィルムを通して前記触媒室に供給されるものであることを特徴とする請求項1に記載のシート型触媒ヒーター。
【請求項3】
前記触媒は、棒状又は繊維状の担体に坦持されるか、前記燃料ガス透過フィルムに坦持されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート型触媒ヒーター。
【請求項4】
前記燃料ガス透過フィルムは、厚みが0.01〜5.0mm、ガス透過率が0.1〜100×10−9cm・cm/sec・cm・cmHgの範囲のものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシート型触媒ヒーター。
【請求項5】
前記燃料供給室の内部に、前記燃料ガスを導入するための空間を保持するためのスペーサーが設けられたものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシート型触媒ヒーター。
【請求項6】
前記酸化性ガス供給室の内部に、断熱材が設けられたものであることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載のシート型触媒ヒーター。
【請求項7】
前記燃料供給室における前記触媒室に接する側とは反対側の外側面は燃料ガス不透過フィルムであり、前記触媒室側の外側面は酸化性ガス不透過フィルムであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のシート型触媒ヒーター。
【請求項8】
前記触媒室が、前記燃料供給室をはさんで両側に配置されることで、前記シート型触媒ヒーターの両面側に形成されたものであり、前記燃料供給室の前記触媒室に接する両面が前記燃料ガス透過フィルムであり、前記触媒室側の外側面は酸化性ガス不透過フィルムであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のシート型触媒ヒーター。
【請求項9】
前記シート型触媒ヒーターは、自動車用燃料電池を温めるために使用されるものであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のシート型触媒ヒーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−174727(P2009−174727A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11177(P2008−11177)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(593145766)美浜株式会社 (10)
【Fターム(参考)】