説明

シート式屋根の構造

【課題】屋根用シートの軒部側の先端部を軒部の下面側に回り込ませた取付け状態を施工容易に形成することができる、シート式屋根の構造を提供する。
【解決手段】軒部に、軒線方向に沿って延びる添え材8が、軒部の上面側から側面側へと回動するように枢着され、該添え材8に屋根用シート11の軒側の先端部が止め付けられ、該添え材8が軒部の上面側から側面側へと回動することで、屋根用シート11の軒側先端止付け部が添え材8の下面側又は背面側に回り込まされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート式屋根の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根面をシートで形成したシート式屋根の構造において、屋根用シートの軒部側の先端部を軒部の少なくとも下面側に回り込ませるように取り付ける場合、取付けの作業が上向き作業になって、施工が非常に厄介であるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、屋根用シートの軒部側の先端部を軒部の下面側に回り込ませた取付け状態を施工容易に形成することができる、シート式屋根の構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題は、屋根面がシートで形成されたシート式屋根の構造であって、
軒部に、軒線方向に沿って延びる添え材が、軒部の上面側から側面側へと回動するように枢着され、
該添え材に屋根用シートの軒側の先端部が止め付けられ、該添え材が軒部の上面側から側面側へと回動することで、屋根用シートの軒側先端止付け部が添え材の下面側又は背面側に回り込まされていることを特徴とするシート状屋根の構造によって解決される。
【0005】
この構造では、軒部に軒部の上面側から側面側へと回動するように枢着された添え材が備えられているので、添え材を軒部の上面側に位置させた状態で、屋根用シートの先端部を添え材の上面部又は側面部に下向き作業あるいは横向き作業で止め付ければ、添え材を軒部の上面側から側面側へと回動することにより、屋根用シートの軒側先端止付け部は添え材の下面側又は背面側に回り込み、従って、屋根用シートの軒部側の先端部を軒部の下面側に回り込ませた取付け状態を施工容易に形成することができる。
【0006】
上記の構造において、屋根用シートの軒側の先端部は面ファスナーで添え材に止め付けられているとよい。この場合は、屋根用シートの先端部を上記のように下向き作業あるいは横向き作業で添え材に重ねるようにするだけで、屋根用シートの先端部を添え材に止め付けることができ、施工を容易に行うことができる。
【0007】
また、上記の構造において、直交する軒部の交差出隅部において、一方の軒部の添え材の端部がもう一方の軒部の添え材の端部側に突出してへこみ部無しの交差出隅部が形成されているとよい。この場合は、直交する軒部の交差出隅部を一方の添え材の端部を突出させるだけの簡素な構造でへこみ部のないスッキリとした納まりにすることができ、へこみ部をなくすのに部品点数が増加することもないし、また、直交する各軒部の添え材が回動時に互いに干渉してしまうこともない。
【0008】
更に、この構造において、屋根用シートが、前記一方の軒部の添え材の突出端部の先端面、上面、側面及び下面をカバーする部分を備え、該部分でそれらの面がカバーされているとよい。その場合は、交差出隅部がへこみ部無しのスッキリとした納まりになることとの組み合わせにおいて、屋根用シートが、軒部交差出隅部においても軒部一般部と同様に、添え材の下面側又は背面側に回り込んだ状態となり、軒部一般部同士をきれいな仕上がり状態で連続させることができ、また、軒部出隅部用の役物シートを屋根用シートとは別に用意する必要がなく部品点数を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上のとおりのものであるから、屋根用シートの軒部側の先端部を軒部の下面側に回り込ませた取付け状態を施工容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
本実施形態のシート式屋根の構造は、図6〜図8に示すように、角形のログ材1…を井桁状に組み、上下のログ材1,1間を遮蔽部2及び/又は透光部3で塞いだ外壁構造の組立て家屋4の屋根に適用した場合のもので、図6(イ)に示すように、同様のログ材からなる左右の軒桁5,5が、それらの両端部をそれぞれ家屋の外壁よりも外方に突出させるようにして備えられると共に、同様のログ材からなる多数本の小屋梁6,7…が、図8(ロ)に示すように、上記の軒桁5,5にわたすようにして所定間隔おきに平行に備えられている。
【0012】
そして、軒桁5,5の両端に備えられて軒部を構成する最側部の小屋梁6,6には、図1、図2及び図7(イ)に示すように、該小屋梁6,6を軒部として、同様の角形ログ材からなる第1添え材8,8が、該軒部の延びる方向に向けられ、該軒部を構成する最側部の小屋梁6,6に対し、その上面側と側面側とを回動して往き来できるように、丁番10…で枢着されている。
【0013】
また、図3及び図7(イ)に示すように、軒桁5,5上に設置された多数本の小屋梁6,7…の端部の群を軒部として、同様の角形ログ材からなる第2添え材9,9が、該軒部の延びる方向に向けられ、該軒部を構成する小屋梁7…の端部に対し、該軒部の上面側と側面側とを回動して往き来できるように、丁番10…で枢着されている。
【0014】
そして、上記の第1,第2の添え材8,9は、各軒部の側面側に位置した状態で、図7(イ)及び図5(ロ)に示すように、直交する軒部の交差出隅部において、第1添え材8の端部8aが第2添え材9の端部側に突出することで、へこみ部無しの交差出隅部が形成されるようになされている。
【0015】
屋根用シート11は、例えばポリエチレンを独立気泡構造にした低発泡ポリエチレン断熱シートの両面を膜材でカバーしたものなどからなっていて、平面視方形状をしており、四隅部には、図5(イ)に示すように、切込み12…や付けシート片13が設けられて、第1〜第5の隅カバー部14,15,16,17,18が形成され、これら隅カバー部14,15,16,17,18で、第1添え材8の突出端部8aの先端面、上面、側面及び下面をカバーできるようになされている。該屋根用シート11は、次のようにして取り付けられる。
【0016】
即ち、屋根用シート11の一方の対辺の各先端部を、図1(イ)(ロ)及び図2(ハ)に示すように、最側部の小屋梁6の上面側に位置させた第1添え材8の外方側の側面部に面ファスナー19a,19bで止め付け、しかる後、図2(ニ)(ホ)に示すように、第1添え材8を回動して最側部の小屋梁6の側面側に位置させる。回動の操作は、第1添え材8の自重を利用して容易に行うことができる。これにより、屋根用シート11の先端止付け部19a,19bが第1添え材8の下面側又は背面側に回り込まされた状態となる。あとは、図4(イ−1)(イ−2)に示すように、第1添え材8と最側部の小屋梁6とを屋内側からネジ金具20a,20bの締め合わせを行えば、第1添え材8は回動阻止状態に固定される。
【0017】
また、屋根用シート11のもう一方の対辺の各先端部についても、図3(イ)〜(ハ)に示すように、小屋梁7…の端部の群の上面側に位置させた第2添え材9の外方側の側面部に面ファスナー19a,19bで止め付け、しかる後、第2添え材9を回動して前記端部の群の側面側に位置させる。回動の操作は、第1添え材8の場合と同様に、第2添え材9の自重を利用して容易に行うことができる。これにより、屋根用シート11の先端止付け部19a,19bが第2添え材9の背面側に回り込まされた状態となる。あとは、図4(ロ−1)(ロ−2)に示すように、第2添え材9と、軒桁5の上面部に取り付けたL形金物21とを、屋内側からフック式のネジ金具22aで締め合わせれば、第2添え材9は回動阻止状態に固定される。
【0018】
なお、軒部の出隅部では、第1添え材8の端部が第2添え材9の端部側に突出するようになされているので、第1,第2の添え材8,9を同時に軒部の上面側に位置させることができないが、第1,第2の添え材8,9を順次に軒部の上面側に位置させることで、上記の止付けを行っていくことができる。
【0019】
そして、直交する軒部の交差出隅部では、図5(ハ)に示すように、第1〜第5の隅カバー部14,15,16,17,18を、第1から第5の順で交差出隅部に回り込ませ、各カバー部14,15,16,17,18に予め取り付けられている面ファスナー23a…,23b…で各カバー部同士を接合すれば、交差出隅部がきれいにカバーされる。
【0020】
こうして、屋根用シート11の取付けを終えた後、図6(イ)(ロ)に示すように、小屋梁7…の上に設置したジャッキ24を伸長させて屋根用シート11に、寄せ棟屋根形の水勾配傾斜を付けることにより、屋根が完成される。
【0021】
このように、上記のシート式屋根の構造では、各軒部に軒部の上面側から側面側へと回動するように枢着された第1,第2の添え材8,8,9,9が備えられているので、第1,第2の添え材8,8,9,9を軒部の上面側に位置させた状態で、屋根用シート11の軒側の先端部を第1,第2の添え材8,8,9,9の外方側の側面部に横向き作業で止め付ければ、第1,第2の添え材8,8,9,9を軒部の上面側から側面側へと回動することにより、屋根用シート11の軒側先端止付け部19a,19bは第1,第2の添え材の背面側に回り込み、従って、屋根用シート11の軒部側の先端部を軒部の下面側に回り込ませた取付け状態を施工容易に形成することができる。
【0022】
また、上記の実施形態では、屋根用シートの軒側の先端部を面ファスナー19a,19bで第1,第2の添え材8,9に止め付けるようにしているので、屋根用シート11の先端部を横向き作業で第1,第2の添え材8,9に重ねるようにするだけで止め付けることができ、施工を容易に行うことができる。
【0023】
更に、上記の実施形態では、直交する軒部の交差出隅部において、第1添え材8の端部が第2添え材9の端部側に突出してへこみ部無しの交差出隅部が形成されているので、軒部の交差出隅部を、簡素な構造でへこみ部のないスッキリとした納まりにすることができる。また、それとの組み合わせにおいて、屋根用シート11には、切込み12…や付けシート片13が設けられて第1〜第5の隅カバー部14〜18が形成され、これら隅カバー部14〜18で、第1添え材8の突出端部の先端面、上面、側面及び下面をカバーするようになされているので、屋根用シート11が、軒部交差出隅部においても軒部一般部と同様に、添え材8,9の下面側に回り込んだ状態となり、軒部一般部同士をきれいな仕上がり状態で連続させることができるし、軒部出隅部用の役物シートを別途に用意する必要がなく部品点数を少なくすることができる。
【0024】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、屋根用シート11の軒部側の先端部が、軒部の側面側に回動した添え材8,9の背面側に回り込んでいる場合を示しているが、それよりも控えさせて、軒部の側面側に回動した添え材8,9の下面側に回り込むようにしてもよい。また、上記の実施形態では、角形のログ材を井桁状に組み、上下のログ材間を遮蔽部及び/又は透光部で塞いだ外壁構造の組立て家屋の屋根に適用した場合を示したが、本発明のシート式屋根の構造は、これに限らず、屋内外に設置される各種の建物や構造物の屋根構造として広く用いることができるものである。また、上記の実施形態で、屋根シートが断熱シートからなる場合を示したが、断熱の有無や、防水の有無に制限はなく、各種シートが用いられてよく、また、添え材の断面形状についても制限はない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態を示すもので、図(イ)及び図(ロ)は、図2(ハ)〜(ホ)と共に、第1添え材側における屋根用シートの取付け方法を順次に示す断面図である。
【図2】図(ハ)〜図(ホ)は、図1(イ)(ロ)と共に、第1添え材側における屋根用シートの取付け方法を順次に示す断面図である。
【図3】図(イ)〜図(ハ)は、第2添え材側における屋根用シートの取付け方法を順次に示す断面図である。
【図4】図(イ−1)及び図(イ−2)は第1添え材の固定方法を順次に示す断面図、図(ロ−1)及び図(ロ−2)は第2添え材の固定方法を順次に示す断面図である。
【図5】図(イ)は屋根用シートの隅部を付けシート片を分離させて示す斜視図、図(ロ)は軒部出隅部における側面側固定状態の第1,第2の添え材の斜視図、図(ハ)は軒部出隅部において第1〜第5カバー部を開いた状態を示す斜視図である。
【図6】屋根部分を示すもので、図(イ)は図7(ロ)のI−I線断面矢視図、図(ロ)は図7(ロ)のII−II線断面矢視図である。
【図7】図(イ)は屋根用シートを取り除いた状態の屋根の平面図、図(ロ)は屋根用シートを取り付けた状態の屋根の平面図である。
【図8】図(イ)は家屋の外壁部分の平面断面図、図(ロ)は小屋梁の平面図である。
【符号の説明】
【0026】
6…最側部の小屋梁(軒部)
7…小屋梁
8…第1添え材
8a…端部
9…第2添え材
10…丁番
11…屋根用シート
19a,19b…面ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根面がシートで形成されたシート式屋根の構造であって、
軒部に、軒線方向に沿って延びる添え材が、軒部の上面側から側面側へと回動するように枢着され、
該添え材に屋根用シートの軒側の先端部が止め付けられ、該添え材が軒部の上面側から側面側へと回動することで、屋根用シートの軒側先端止付け部が添え材の下面側又は背面側に回り込まされていることを特徴とするシート状屋根の構造。
【請求項2】
前記屋根用シートの軒側の先端部が面ファスナーで添え材に止め付けられている請求項1に記載のシート状屋根の構造。
【請求項3】
直交する軒部の交差出隅部において、一方の軒部の添え材の端部がもう一方の軒部の添え材の端部側に突出してへこみ部無しの交差出隅部が形成されている請求項1又は2に記載のシート式屋根の構造。
【請求項4】
前記屋根用シートが、前記一方の軒部の添え材の突出端部の先端面、上面、側面及び下面をカバーする部分を備え、該部分でそれらの面がカバーされている請求項3に記載のシート式屋根の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−83575(P2006−83575A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268453(P2004−268453)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】