説明

シート形成用組成物、充填材入りフッ素樹脂シートおよび充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法

【課題】応力緩和性、特に高温での応力緩和性、および気密性に優れた充填材入りフッ素樹脂シートおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】フッ素樹脂(A)、充填材(B)、前記充填材(B)100重量部に対し、1〜20重量部の下記式(1)で表されるアルコキシシラン(C)、および加工助剤(D)を含有することを特徴とするシート形成用組成物。
(R1)4-nSi(OR2n (1)
[式(1)中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基または炭素数1〜5の1価の炭化水素基であり;R2は、それぞれ独立して、炭素数1〜5の1価の炭化水素基であり;nは、2,3または4である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート形成用組成物、充填材入りフッ素樹脂シートおよび充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法関する。
【背景技術】
【0002】
充填材入りフッ素樹脂シートは、フッ素樹脂に充填材を充填してシート状に加工したものであり、フッ素樹脂の持つ耐薬品性、耐熱性に加えて、充填材の持つ固有の機能・特性を付加し、あるいはフッ素樹脂の欠点である耐クリープ性を改善することにより、シール材等に多く用いられている。
【0003】
このようなシール材として、本願出願人は、特開2007−253519号公報(特許文献1)において、フッ素樹脂、充填材および加工助剤を含む充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法を開示している。この製造方法により、低い応力緩和性および高い気密性が両立し、ガスケット材料に適した充填材入りフッ素樹脂シートを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−253519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法で製造された従来のフッ素樹脂シートには、応力緩和性、特に高温下での応力緩和性にさらに改善の余地があった。
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、気密性に優れ、しかも応力緩和性、特に高温での応力緩和性に優れた充填材入りフッ素樹脂シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシート形成用組成物は、フッ素樹脂(A)、充填材(B)、前記充填材(B)100重量部に対し1〜20重量部の下記式(1)で表されるアルコキシシラン(C)、および加工助剤(D)を含有することを特徴としている。
【0007】
(R1)4-nSi(OR2n (1)
[式(1)中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基または炭素数1〜5の1価の炭化水素基であり;R2は、それぞれ独立して、炭素数1〜5の1価の炭化水素基であり;nは、2,3または4である。]
【0008】
前記充填材(B)は、二酸化ケイ素およびケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の充填材であることが好ましい。
前記アルコキシシラン(C)は、テトラエトキシシランおよび/またはテトラメトキシシランであることが好ましい。
【0009】
前記フッ素樹脂(A)と前記充填材(B)との重量比は、フッ素樹脂:充填材=1:0.1〜4であることが好ましい。
前記加工助剤(D)の量は、フッ素樹脂(A)と充填材(B)との合計100重量部に対して5〜50重量部であることが好ましい。
【0010】
本発明の充填材入りフッ素樹脂シートは、前記シート形成用組成物から製造されたこと特徴としている。
本発明の充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法は、前記シート形成用組成物を予備成形し、得られたプリフォームを圧延し、その後焼成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシート形成用組成物から製造された充填材入りフッ素樹脂シートは、応力緩和性、特に高温での応力緩和性、および気密性に優れている。
本発明の充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法によれば、応力緩和性、特に高温での応力緩和性、および気密性に優れた充填材入りフッ素樹脂シートを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
[シート形成用組成物]
本発明のシート形成用組成物は、フッ素樹脂(A)、充填材(B)、前記充填材(B)100重量部に対し1〜20重量部の下記式(1)で表されるアルコキシシラン(C)、および加工助剤(D)を含有する。
(R1)4-nSi(OR2n (1)
[式(1)中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基または炭素数1〜5の1価の炭化水素基であり;R2は、それぞれ独立して、炭素数1〜5の1価の炭化水素基であり;nは、2,3または4である。]
【0013】
<フッ素樹脂(A)>
前記フッ素樹脂(A)としては、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、変性PTFE、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂(ETFE)、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレンエチレン共重合樹脂(FEP)および四フッ化エチレン−パーフロロアルキル共重合樹脂(PFA)など、従来より公知のフッ素樹脂をいずれも好ましく用いることができる。これらの中でも、押出成形、圧延などを行う際の加工性の面で、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)が好ましく、乳化重合によって得られたPTFEが特に好ましい。
【0014】
前記フッ素樹脂(A)としてPTFEを用いる場合には、前記フッ素樹脂に上述したPTFE以外のフッ素樹脂が、少量、たとえば10重量%(フッ素樹脂の合計量を100重量%とする。)以下の量で含まれていても良い。
前記フッ素樹脂(A)としては、粉末状のものをそのまま用いても良く、水にフッ素樹脂微粒子を分散させたディスパージョンを用いてもよい。
【0015】
<充填材(B)>
前記充填材(B)は、好ましくは、その粒子の表面に水酸基を有する。このような充填材としては、その粒子の表面に水酸基を有する充填材および/またはその粒子の表面に水酸基を有しない充填材の粒子の表面に、表面改質により水酸基を導入した充填材を用いることができる。前記表面改質としては、従来より公知の方法を用いることができる。本発明において、充填材(B)がその粒子の表面に水酸基を有する充填材であると、このような充填材の粒子の表面の水酸基と後述するアルコキシシラン(C)とが反応し、充填材(B)の粒子間を結合し、ネットワーク構造を構築すると考えられるため、応力緩和性のより低い、特に、高温での応力緩和性のより低い、充填材入りフッ素樹脂シートを得ることができると考えられる。
【0016】
前記充填材(B)としては、二酸化ケイ素およびケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の充填材が好ましい。このような二酸化ケイ素やケイ酸塩は、その粒子の表面に水酸基を有するものが多い。
【0017】
前記二酸化ケイ素としては、その結晶性の違いにより、石英、クリストバル石、リンケイ石、ルシャテリーライト、タンパク石および3SiO2・H2Oなどが挙げられ、その他に無定形のものおよびガラス状のものなどが挙げられる。
【0018】
ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸アルミニウム(クレーカリオナイト、パイロフィライト)、ケイ酸マグネシウム(タルク)、ケイ酸カルシウム(ウオラストナイト、ゾノトライト)、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラスビーズ、ガラス繊維、シリカ系バルンおよびマイカ等が挙げられる。これらの中でも、ケイ酸アルミニウム(クレー、カリオナイト、パイロフィライト)、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムおよび/またはマイカが好ましい。
【0019】
前記以外に、黒鉛、カーボンブラック、膨張黒鉛、活性炭、カーボンナノチューブ等の炭素系充填材;炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、シリコンカーバイド、アルミナ等の無機充填材; またはPPS等の樹脂の粉体;等を用いることができ、これら充填材の粒子の表面に水酸基を有するものが好ましい。
【0020】
本発明によれば、フッ素樹脂(A)の充填率が高く、充填材(B)の充填率が低い場合であっても、高い気密性を有し、応力緩和性に優れた充填材入りフッ素樹脂シートを得ることができる。前記フッ素樹脂(A)と前記充填材(B)との重量比は、好ましくは1:0.1〜4、さらに好ましくは1:0.25〜2である。
【0021】
<アルコキシシラン(C)>
前記アルコキシシラン(C)は、下記式(1)で表される。
(R1)4-nSi(OR2n (1)
上記式(1)において、R1は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基または炭素数1〜5の1価の炭化水素基であり、好ましくは、メチル基またはエチル基である。
【0022】
上記式(1)において、R2は、それぞれ独立して、炭素数1〜5の1価の炭化水素基であり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であり、特に好ましくは、メチル基またはエチル基である。
【0023】
上記式(1)において、nは、2,3または4であり、好ましくは4である。
アルコキシシラン(C)としては、例えば、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラプロポキシシラン(TPOS)およびテトラブトキシシラン(TBOS)などを挙げることができる。これらアルコキシシランは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用することもできる。この中でも、応力緩和性のより低い充填材入りフッ素樹脂シートを得るために、テトラメトキシシランおよび/またはテトラエトキシシランを用いることが好ましい。
【0024】
シート形成用組成物中の前記アルコキシシラン(C)の量は、充填材(B)100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは、2〜20重量部、さらに好ましくは、5〜20重量部である。アルコキシシラン(C)がこのような量で含まれていると、高い気密性を維持したまま、応力緩和性の低い充填材入りフッ素樹脂シートを得ることができる。
【0025】
充填材入りフッ素樹脂シートを製造する際に、下記方法(I)を用いる場合、シート形成用組成物中の前記アルコキシシラン(C)の量が、充填材(B)100重量部に対して20重量部を超える量で含まれていると、圧延工程後の圧延シート中に、アルコキシシラン(C)が残存している場合が多くなるため、最終的に得られるシートは、空隙の多いものとなる可能性が高くなり、気密性や応力緩和特性に劣る恐れがある。
【0026】
<加工助剤(D)>
前記加工助剤(D)としては、特に制限されなく、従来公知の加工助剤、たとえば、石油系炭化水素溶剤、アルコール類、水などを用いることができる。
【0027】
石油系炭化水素溶剤の市販品としては、たとえば、エクソンモービル(有)製のアイソパーC(炭化水素系有機溶剤、分留温度:97〜104℃)、アイソパーG(炭化水素系有機溶剤、分留温度:158〜175℃)、アイソパーM(炭化水素系有機溶剤、分留温度:218〜253℃)などが挙げられる。
【0028】
この加工助剤(D)の量は、シート形成用樹脂組成物中に、フッ素樹脂(A)と充填材(B)との合計100重量部に対して、好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜30重量部である。加工助剤(D)がこのような量で含まれていると、充填材入りフッ素樹脂シートを製造する際に、下記方法(I)を用いる場合には、予備成形工程にて、均一に押出成形することが可能であり、良好なプリフォームを製造することができる。
【0029】
シート形成用樹脂組成物は、本質的には、上記したフッ素樹脂(A)、充填材(B)、アルコキシシラン(C)および加工助剤(D)のみからなる。
これらの成分が含まれたフッ素樹脂シート形成用樹脂組成物を調製するには、上記各成分を任意の順序で一度に、あるいは少量ずつ複数回に分けて容器内に添加し、攪拌・混合等すればよい。
【0030】
前記撹拌・混合する方法は、特に制限されないが、フッ素樹脂(A)、充填材(B)、アルコキシシラン(C)、および加工助剤(D)を、製造しようとする充填材入りフッ素樹脂シートの組成に対応するように配合し、任意の順序で撹拌・混合すればよい。
また、攪拌・混合する際の温度は、加工助剤が揮発しないよう、圧延工程におけるロール温度よりも低い温度が好ましい。
【0031】
[充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法]
本発明の充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法は、上記シート形成用組成物から充填材入りフッ素樹脂シートを形成することができれば特に制限されず、従来公知の方法を用いることができるが、好ましくは、上記シート形成用組成物を予備成形し、得られたプリフォームを圧延し、その後焼成する方法(以下、方法(I)ともいう。)である。
以下に、この方法(I)を具体的に示す。
【0032】
≪方法(I)≫
方法(I)は、予備成形工程、圧延工程、乾燥工程、焼成工程をこの順序で含んでいる。
【0033】
<予備成形工程>
予備成形工程では、前記シート形成用組成物を押出成形し、プリフォーム(押出成形物)を製造する。
【0034】
このプリフォームの形状は、特に限定されないが、その後のシート形成の効率、シート性状の均質性などを考慮すると、ロッド状またはリボン状が望ましい。
方法(I)では、後述する圧延工程において加工助剤を徐々に揮発させるため、予備成形工程は、温度を加工助剤が揮発しないよう、圧延工程におけるロール温度よりも低い温度下で行うことが好ましい。
【0035】
<圧延工程>
予備成形工程に続く圧延工程では、プリフォームを、二軸ロールに代表される圧延ロール間を通過させてシート状に圧延、成形する。
【0036】
方法(I)では、この圧延工程は、ロール温度が40〜80℃であることが好ましい。
ロール温度が上記範囲にあると、フッ素樹脂(A)の硬度がやや低下し、充填材入りフッ素樹脂シートをより緻密化しやすくなる。
【0037】
一方、圧延工程を40℃よりも低い温度で行うと、前記加工助剤(D)が揮発し難くなる傾向にある。また、80℃を越える温度で圧延を行うと、前記加工助剤(D)が過度に揮発してしまうことがある。この場合、圧延工程初期の時点で残存する加工助剤が少なくなるため、フッ素樹脂(A)を充分に膨潤させ、繊維化させ難くなり、得られる充填材入りフッ素樹脂シートの強度が劣る傾向にある。また、組成物中の加工助剤(D)が急激に気化することにより膨れ現象が生じる場合があり、充填材入りフッ素樹脂シートの気密性も低下する傾向にある。
【0038】
また、方法(I)では、前記圧延工程により調製された圧延シートをさらに圧延する工程を含むこと、すなわち圧延工程を複数回(たとえば3〜50回)繰り返すことが好ましい。圧延を繰り返すことにより、フッ素樹脂シート内部をさらに緻密化することができる。なお圧延工程を繰り返す場合には、圧延を繰り返すごとにロール間隔を狭くする。
【0039】
二軸ロールにより前記プリフォームを圧延してシート形成する際には、たとえばロール間距離を0.5〜20mmにセットし、ロール表面移動速度(シート押出速度)を5〜50mm/秒としてプリフォームを圧延すればよい。
【0040】
<乾燥工程>
乾燥工程では、前記の圧延されたシートを常温で放置するか、フッ素樹脂の融点未満の温度で加熱することにより、加工助剤を除去する。
【0041】
<焼成工程>
焼成工程では、乾燥後シートをフッ素樹脂の融点以上の温度で加熱し、焼結させる。加熱温度としては、シート全体を均一に焼成する必要があること、および、過度の高温ではフッ素系有害ガスが発生することなどを考慮すると、フッ素樹脂の種類によっても多少異なるが、たとえば340〜370℃が適当である。
【0042】
[充填材入りフッ素樹脂シート]
充填材入りフッ素樹脂シートは、上記シート形成用組成物から製造されれば、特に制限されないが、上記方法(I)で製造されたシートが好ましい。この充填材入りフッ素樹脂シートは、応力緩和性、特に高温での応力緩和性、および気密性に優れており、具体的には、200℃での応力緩和率(JIS R3453に準拠、加熱温度のみ100℃から200℃に変更)は、好ましくは63%以下、さらに好ましくは60%以下であり、その下限値は45%であってもよく、漏洩量(気密性、φ48×φ67×厚さ1.5mmの試験片に対して面圧19.6MPa、窒素ガス内圧0.98MPa)は、好ましくは1.0×10-4Pa・m3/s以下、さらに好ましくは9.0×10-5Pa・m3/s以下であり、その下限値は1.0×10-5Pa・m3/sであってもよい。
【0043】
このような本発明の充填材入りフッ素樹脂シートは、ガスケットに用いることができ、本発明の充填材入りフッ素樹脂シートからなるガスケットは、高温下(たとえば200℃以上)で長期に渡って使用できる。
前記ガスケットは、本発明の充填材入りフッ素樹脂シートを所望の形状に切り抜くことにより容易に製造できる。
【0044】
[実施例]
以下、本発明の製造方法を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0045】
<試験方法>
厚さ1.5mmのシートから試験片を作成し、以下のように応力緩和率および気密性を測定した。
【0046】
漏洩量(気密性);
φ48mm×φ67mmの寸法に打ち抜いたガスケット試験片を、φ100mm×高さ50mm、表面粗さRmax=12μmの鋼フランジ間に装着し、圧縮試験機により面圧19.6MPa(200kgf/cm2G)となるよう荷重を負荷した。フランジに設けられた圧力導入用の貫通孔からガスケット内径側に窒素ガス内圧0.98MPa(1.0kgf/cm2G)を負荷した後圧力導入配管を封じ、1時間保持した。保持前後の圧力変化を圧力センサで読み取り、圧力降下から漏洩量を求めた。
【0047】
応力緩和率;
厚さ1.5mmのシートから試験片を作成し、この試験片について加熱温度を100℃から200℃に変更した点を除いてJIS R3453に準拠して応力緩和率を測定した。
【0048】
[実施例1]
PTFEファインパウダー(CD−1、旭硝子(株)製)600g、
NK−300(微粉末クレー、昭和KDE(株)製)400g、
アイソパーM(炭化水素系有機溶剤、分留温度:218〜253℃、エクソンモービル(有))300g、および
テトラエトキシシラン(TEOS)40g
をニーダーで5分間混合した後、室温(25℃)で16時間放置することにより熟成させ、シート形成用組成物を調製した。
【0049】
この組成物を、室温(25℃)で、口金300mm×20mmの押出機で押出し、プリフォームを作成した。
このプリフォームを、ロール径700mm、ロール間隔20mm、ロール速度6m/分、ロール温度40℃の条件下で二軸ロールにより圧延した。この圧延の直後に、得られたシートを、ロール間隔を10mmとして再度圧延した。さらに、この圧延の直後に、得られたシートを、ロール間隔を5mmとして再度圧延した。最後に、この圧延の直後に、得られたシートを、ロール間隔を1.5mmとして再度圧延し、厚さ1.5mmのシートを得た。
【0050】
このシートを室温(25℃)で24時間放置し溶剤を除去した後、電気炉内350℃で3時間焼成し、充填材入りフッ素樹脂シートを得た。
この充填材入りフッ素樹脂シートの漏洩量(気密性)は4.8×10-5Pa・m3/s、応力緩和率は52%であった。
【0051】
[実施例2]
TEOSの使用量を8gに変更した以外は実施例1と同様の方法で充填材入りフッ素樹脂シートを製造した。
この充填材入りフッ素樹脂シートの漏洩量(気密性)は4.2×10-5Pa・m3/s、応力緩和率は55%であった。
【0052】
[実施例3]
TEOSの使用量を80gに変更した以外は実施例1と同様の方法で充填材入りフッ素樹脂シートを製造した。
この充填材入りフッ素樹脂シートの漏洩量(気密性)は8.4×10-5Pa・m3/s、応力緩和率は53%であった。
【0053】
[実施例4]
TEOSをTMOSに変更した以外は実施例1と同様の方法で充填材入りフッ素樹脂シートを製造した。
この充填材入りフッ素樹脂シートの漏洩量(気密性)は6.3×10-5Pa・m3/s、応力緩和率は51%であった。
【0054】
[実施例5]
NK−300を400g用いる代わりに、シリカ(クリスタライトA-A、龍森製)を400g用いたこと以外は実施例1と同様の方法で充填材入りフッ素樹脂シートを製造した。
この充填材入りフッ素樹脂シートの漏洩量(気密性)は6.7×10-5Pa・m3/s、応力緩和率は54%であった。
【0055】
[実施例6]
NK−300を400g用いる代わりに、アルミナ(A−42、昭和電工製)を400g用いたこと以外は実施例1と同様の方法で充填材入りフッ素樹脂シートを製造した。
この充填材入りフッ素樹脂シートの漏洩量(気密性)は1.7×10-5Pa・m3/s、応力緩和率は57%であった。
【0056】
[比較例1]
TEOSを用いないこと以外は実施例1と同様の方法で充填材入りフッ素樹脂シートを製造した。
この充填材入りフッ素樹脂シートの漏洩量(気密性)は3.4×10-5Pa・m3/s、応力緩和率は75%であった。
【0057】
[比較例2]
TEOSの使用量を120gに変更した以外は実施例1と同様の方法で充填材入りフッ素樹脂シートを製造した。
この充填材入りフッ素樹脂シートの漏洩量(気密性)は2.0×10-3Pa・m3/s、応力緩和率は66%であった。
【0058】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂(A)、充填材(B)、前記充填材(B)100重量部に対し1〜20重量部の下記式(1)で表されるアルコキシシラン(C)、および加工助剤(D)を含有することを特徴とするシート形成用組成物。
(R1)4-nSi(OR2n (1)
[式(1)中、
1は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基または炭素数1〜5の1価の炭化水素基であり;
2は、それぞれ独立して、炭素数1〜5の1価の炭化水素基であり;
nは、2,3または4である。]
【請求項2】
前記充填材(B)が、二酸化ケイ素およびケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の充填材であることを特徴とする請求項1に記載のシート形成用組成物。
【請求項3】
前記アルコキシシラン(C)が、テトラエトキシシランおよび/またはテトラメトキシシランであることを特徴とする請求項1または2に記載のシート形成用組成物。
【請求項4】
前記フッ素樹脂(A)と前記充填材(B)との重量比が、フッ素樹脂:充填材=1:0.1〜4であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のシート形成用組成物。
【請求項5】
前記加工助剤(D)の量が、フッ素樹脂(A)と充填材(B)との合計100重量部に対して5〜50重量部であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のシート形成用組成物。
【請求項6】
前記請求項1〜5の何れかに記載のシート形成用組成物から製造されたこと特徴とする充填材入りフッ素樹脂シート。
【請求項7】
前記請求項1〜5の何れかに記載のシート形成用組成物を予備成形し、得られたプリフォームを圧延し、その後焼成することを特徴とする充填材入りフッ素樹脂シートの製造方法。

【公開番号】特開2011−153254(P2011−153254A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16849(P2010−16849)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】