説明

シート接続方法及び取付治具

【課題】ファスナー部材を固定部材の取付凹部に容易に取付ける取付治具の提供。
【解決手段】固定部材として、シート3の端部が接続される凹溝22を有するとともに上記凹溝22に端部が接続されるシート3から露出する部位にシート引張り方向とほぼ直交する方向に長い取付溝22eを有するファスナー部材22と、該ファスナー部材22が取付けられる取付凹部20を有する固定部材本体とに分割されたものを用い、上記ファスナー部材22にシート3の端部を連結するシート連結工程と、該ファスナー部材22をシート3とは反対側へ向けて引っ張って上記取付凹部20の上方に位置せしめる引張工程と、該ファスナー部材22を下方に降ろして上記取付凹部20内に入込む入込工程とを含み、引張工程及び入込工程において取付溝に挿着される突起部50aと把持するための把持部50cとを有する取付治具50を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部材にシートの端部を接続して構造物(例えばテントやドーム等)を建
てる際に用いるシート接続方法及びそのシート接続方法に好適に用いられる取付治具に関
する。
【背景技術】
【0002】
上述した固定部材にシートの端部を接続する方式として、図5に示すように、シート1
00の端部100aを折り返して重ねた部分の内側に係止部材101を入れ、その係止部
材101をファスナー部材102の凹部103に挿入し、そのファスナー部材102を固
定部材104の取付凹部105に入れ、取付凹部105に形成した係止部106にファス
ナー部材102に形成した被係止部107を係止させることで、ファスナー部材102を
抜け防止した状態で固定部材104の取付凹部105に取付ける方式が知られている(例
えば特許文献1参照)。
【特許文献1】実公平4−37149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来方法による場合には、ファスナー部材102を取付凹部1
05に取付ける際に以下のような難点があった。すなわち、ファスナー部材102が取付
凹部105の外側に位置しているときはファスナー部材102を手で確実に掴むことがで
きるので、ファスナー部材102の位置を容易に調整することができる。これに対し、フ
ァスナー部材102を取付凹部105に入れ込むときは、ファスナー部材102の長さが
取付凹部105とほぼ同一寸法またはより短い寸法であると、取付凹部105の両側に外
側へはみ出した掴み部分が無いために、ファスナー部材102を掴み難くなり、取付凹部
105への容易な入れ込みができなくなるという難点がある。
【0004】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、ファスナ
ー部材を固定部材の取付凹部に容易に取付けるようにすることができるシート接続方法及
びそのシート接続方法に好適に用いられる取付治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のシート接続方法は、シートの端部を引っ張って固定部材に接続するシート接続方法であって、前記固定部材として、前記シートの端部が接続される凹溝を有するとともに上記凹溝に端部が接続されるシートから露出する部位にシート引張り方向とほぼ直交する方向に長い取付溝を有するファスナー部材と、該ファスナー部材が取付けられる取付凹
部を有する固定部材本体とに分割されたものを用い、上記ファスナー部材にシートの端部
を連結するシート連結工程と、該ファスナー部材をシートとは反対側へ向けて引っ張って
上記取付凹部の上方に位置せしめる引張工程と、該ファスナー部材を下方に降ろして上記
取付凹部内に入込む入込工程とを含み、上記引張工程及び入込工程において上記取付溝に
挿着される突起部と把持するための把持部とを有する取付治具を用いることを特徴とする
(請求項1)。
【0006】
本発明のシート接続方法において、請求項1記載のシート接続方法において、前記取付溝を、溝底が溝開口よりも前記引張り方向側に寄るように傾斜させるとともに、前記取付治具の突起部を、前記溝底に対応する先端が前記溝開口に対応する部分よりも前記引張り方向側に寄るように傾斜させることを特徴とする(請求項2)。
【0007】
本発明の取付治具は、請求項1または2に記載のシート接続方法に用いる取付治具であ
って、前記ファスナー部材の取付溝に挿着される突起部と把持するための把持部とを有し、突起部と把持部との間に、把持部を突起部よりも前記引張工程での引張り方向側に位置させる連結部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシート接続方法および取付治具による場合には、シートの端部が凹溝に連結さ
れたファスナー部材の取付溝に取付治具の突起部を挿着し、取付治具の把持部を手で把持
してシートとは反対側にファスナー部材を引っ張り、固定部材本体の取付凹部の上方に位
置せしめて下方に降ろすと、ファスナー部材を取付凹部内に容易に入れ込むことができる。よって、ファスナー部材と取付凹部の長さの大小関係に拘わらずファスナー部材を取付凹部に容易に取付けるようにすることができる。
【0009】
請求項2のシート接続方法による場合には、取付溝が溝底を溝開口よりも引張り方向側
に寄せて傾斜しているとともに、突起部が取付溝の溝底に対応する先端を取付溝の溝開口に対応する部分よりも引張り方向側に寄せて傾斜しているので、取付溝に挿着した突起部が取付溝から抜け難い。よって、強い力でファスナー部材を移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0011】
図1は本発明のシート接続方法が適用されるシート接続部を示す分解図(正面図)で、
図2はその要部を拡大して示す正面図、図3は本発明のシート接続方法に用いられる取付
治具を示す外観斜視図である。
【0012】
図1に示すシート接続手段2は、支柱1の上端に設けられた水平板1aの上側に取付け
られる固定部材10と、固定部材10の上に設けられる防水カバー11と、更にその上に
設けられるカバー部材12とを有する。固定部材10は水平板1aにボルト13aとナッ
ト13bにより固定され、その固定部材10に対して防水カバー11及びカバー部材12
がボルト14aとナット14bにより固定されている。なお、防水カバー11とカバー部
材12の間には、ボルト14aに挿通させて防水性ワッシャ14cが配されている。なお、図2中の13cと14dはワッシャである。
【0013】
上記固定部材10は、隣合うシート3、3の間であってシート3の端部3aに沿う方向
に長手方向を一致させて配置されるものであり、図2に示すように、一対の取付凹部20
を有する固定部材本体21と、上記取付凹部20に着脱可能に取付けられる一対のファス
ナー部材22とを有する。
【0014】
取付凹部20は上記長手方向と直交する幅方向の両側に長手方向に沿って形成されてい
て、その内奥部に引掛け部20aが形成されている。各取付凹部20には、それぞれファ
スナー部材22が被引掛け部22aを引掛け部20aに引掛けて取付けられる。この取付
け状態において、両ファスナー部材22と、これらの間の固定部材本体21の部分との高
さはほぼ一定となっていて、各取付凹部20の外側は少し低く、傾斜面21aが形成され
ている。傾斜面21aの上には防水部材21bが取付けられ、防水部材21bの上面は外
側が高く内側が低くなっている。
【0015】
このような上面を有する固定部材10の上に設けられるカバー部材12の下面および防
水カバー11は、固定部材10の上面に対応する凹凸状態に形成されていて、固定部材1
0に対してカバー部材12をボルト14aおよびナット14bにより取付けると、例えば
ゴム等の弾性部材からなる防水カバー11のほぼ全域が固定部材10に押し付けられる。
【0016】
各ファスナー部材22には、その長手方向に沿って凹溝22bが形成されている。図左
側のファスナー部材22の凹溝22bは左向きに開口22cを配して形成され、図右側の
ファスナー部材22の凹溝22bは右向きに開口22cを配して形成されている。
【0017】
各シート3は、端3bよりも少し内側で折り返されて二重に重なった端部3aを有し、
その端部3aの内側に係止部材23を入れ、係止部材23よりも外側の二重部分を縫製等
により連結して形成されている。係止部材23は、例えば紐状のものが用いられる。各シート3の材質は、特に限定されるものではなく、繊維の織物や編物に樹脂コーティングしたもの、或いはフッ素樹脂や塩化ビニル樹脂のみのフィルムも含む。
【0018】
各凹溝22bには、係止部材23が溝の長手方向両端の開口部の一方から取付けられる。各凹溝22bは、開口22cの内側に設けた肉部22dにより内奥部よりも開口22cが狭くなっていて、係止部材23が抜け出るのを防止している。なお、開口22cの幅は、係止部材23の直径よりも短寸に形成されている。
【0019】
また、前記各ファスナー部材22には、取付溝22eが設けられている。各取付溝22
eは、前記凹溝22bと平行な方向、換言すると後述するシート引っ張り方向とほぼ直交
する方向に長く、下向きに窪んでいて、後述するように凹溝22bに端部3aが接続され
るシート3から露出する部位に形成されている。
【0020】
このように構成されたシート3の固定部材10への接続方法は、以下のように行われる。
【0021】
まず、支柱1の水平板1aの上に固定部材本体21を、ボルト13a等により固定する
とともに、2枚のシート3のそれぞれに係止部材23を取付ける。各シート3への係止部
材23の取付けは、次のように行う。シート3の端3bを、端部3aから反対側に折り返
し、その折り返し部分の内側に係止部材23を入れ、係止部材23よりも外側の二重部分
を縫製等により連結する。
【0022】
次に、一方(図示例の右側)のシート3の係止部材23を、固定部材本体21の幅方向
の右側に配されるファスナー部材22の凹溝22bに取付ける(シート連結工程)。この
取付けは、上述したように凹溝22bの長手方向両端の一方から係止部材23を挿入して
行う。これよりも後に、又は前に、他方(図示例の左側)のシート3の係止部材23を、
固定部材本体21の幅方向の左側に配されるファスナー部材22の凹溝22bに、同様に
して取付ける。
【0023】
次に、ファスナー部材22を固定部材本体21の取付凹部20に取付ける。この取付け
には、前記ファスナー部材22の取付溝22eと、図3に示す取付治具50とを用いる。
取付治具50は、取付溝22eに挿着する突起部50aと、手で把持する把持部50cと、これら突起部50aと把持部50cとの間に設けられた連結部50bとを有する。この取付治具50では、右側のファスナー部材22に対し、取付溝22eに突起部50aを挿着し、把持部50cを把持して左方向へ引っ張り、左側のファスナー部材22に対しては、突起部50aと把持部50cとを逆向きにして取付溝22eに突起部50aを挿着し、把持部50cを把持して右方向へ引っ張るように用いられる。取付溝22eに挿着する突起部50aは、先端50dを連結部50bに繋がった部分よりも引張り方向側に寄せて傾斜して形成されている。一方、ファスナー部材22の取付溝22eは、溝底22fを溝開口22gよりも、取付治具50による引張り方向側に寄せて傾斜して形成されている。なお、当然のことながら、溝底22fに対応する突起部50aの先端50dは、溝開口22gに対応する突起部50aの部分よりも引張り方向側に寄った位置関係である。
【0024】
この取付治具によるファスナー部材22の取付凹部20への取付けは、図4に示すよう
に、右側のファスナー部材22の取付溝22eに、取付治具50の突起部50aを挿着し、把持部50cを把持して左方向へ引っ張り、ファスナー部材22が固定部材本体21の右側の取付凹部20の上方に位置させ(引張工程)、その後、把持部50cを降下させることで、取付凹部20にファスナー部材22を入込ませて取付ける(入込工程)。このとき、被引掛け部22aを引掛け部20aに引掛けて抜け防止する。これよりも後に、又は前に、左側のファスナー部材(図示せず)を固定部材本体21の幅方向左側の取付凹部20に、同様にして取付ける。但し、取付治具50の向きと引っ張り方向は逆である。この工程において、シート3の端3bが上側に位置するように取付ける。
【0025】
続いて、一方(例えば図示例では右側)のシート3の端3bを下側に、他方(例えば図
示例では左側)のシート3の端3bを上側にして重ね、その相互に重なる部分に、両面に
接着層を有するテープ24を貼着する。これにより、両側のシート3、3は、テープ24
を介して繋がった状態で固定部材10に取付けられる。
【0026】
しかる後、固定部材10の上に、防水カバー11およびカバー部材12を、ボルト14
a等により固定する。これにより、本実施形態のシート接続部が完成する。
【0027】
なお、上述した実施形態では突起部50aをその先端50dが連結部50bに繋がった
部分よりも引張り方向側に寄るように傾斜して形成し、一方のファスナー部材22の取付
溝22eも、溝底22fを溝開口22gよりも引張り方向側に寄せて傾斜して形成してい
るが、本発明はこれに限らない。例えば、突起部50aの先端に引張り方向側に折り曲げ
た鈎部を形成し、取付溝22eの溝底22f近傍の側面に前記鈎部が係止される凹部を形
成した構成であってもよく、或いは、他の抜け防止手段(例えば摩擦抵抗を増大化させる
等)を有する構成であってもよい。そして、このような抜け防止手段を備える場合には、
突起部50a及び取付溝22eの傾斜角度は垂直または垂直に近い角度としてもよい。
【0028】
また、上述した実施形態では固定部材の両側にシートを接続しかつ両シートの端をテー
プ(24)により一体的に繋ぐ例を挙げているが、本発明はこれに限らない。テープ(2
4)を省略して両シートが分離した構成としてもよい。又は、固定部材の片側にのみシー
トを接続する場合にも同様に適用することができる。なお、相互に重なる部分の接合は、テープ以外にも熱接合や接着剤による接合でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のシート接続方法が適用されるシート接続部を示す分解図(正面図)である。
【図2】図1のシート接続部の要部を拡大して示す正面図である。
【図3】本発明のシート接続方法に用いられる取付治具を示す外観斜視図である。
【図4】図3の使用方法の説明図である。
【図5】特許文献1のシート接続部を示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0030】
3 シート
10 固定部材
20 取付凹部
21 固定部材本体
22 ファスナー部材
22b 凹溝
22c 開口
22e 取付溝
22f 溝底
22g 溝開口
23 係止部材
50 取付治具
50a 突起部
50b 連結部
50c 把持部
50d 先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの端部を引っ張って固定部材に接続するシート接続方法であって、
前記固定部材として、前記シートの端部が接続される凹溝を有するとともに上記凹溝に
端部が接続されるシートから露出する部位にシート引張り方向とほぼ直交する方向に長い
取付溝を有するファスナー部材と、該ファスナー部材が取付けられる取付凹部を有する固
定部材本体とに分割されたものを用い、
上記ファスナー部材にシートの端部を連結するシート連結工程と、
該ファスナー部材をシートとは反対側へ向けて引っ張って上記取付凹部の上方に位置せ
しめる引張工程と、
該ファスナー部材を下方に降ろして上記取付凹部内に入込む入込工程とを含み、
上記引張工程及び入込工程において上記取付溝に挿着される突起部と把持するための把
持部とを有する取付治具を用いることを特徴とするシート接続方法。
【請求項2】
請求項1記載のシート接続方法において、
前記取付溝を、溝底が溝開口よりも前記引張り方向側に寄るように傾斜させるとともに、
前記取付治具の突起部を、前記溝底に対応する先端が前記溝開口に対応する部分よりも前記引張り方向側に寄るように傾斜させることを特徴とするシート接続方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシート接続方法に用いる取付治具であって、
前記ファスナー部材の取付溝に挿着される突起部と把持するための把持部とを有し、突起部と把持部との間に、把持部を突起部よりも前記引張工程での引張り方向側に位置させる連結部が設けられていることを特徴とする取付治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−174925(P2008−174925A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7672(P2007−7672)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】