説明

シート搬送装置、自動原稿送り装置及び画像形成装置

【課題】ジャム処理時の起電力が原因で、回路部から制御部へ信号が誤って出力された場合に、制御部が誤った処理を行わないようにする。
【解決手段】画像形成装置において、インターロックスイッチ7は、搬送路を覆うカバーが開かれている状態で電源ライン11と電源9とを遮断しかつ電源ライン11と配線ライン13とを接続する。カバーが開かれた状態で搬送路に詰まった用紙を引き抜いたときに、ローラーが回転することにより、それに従動してモーター137a,137bが回転して起電力(ジャム処理時の起電力)が発生した場合、起電力検知部700から起電力検知信号が出力される。起電力検知信号が制御部500に入力されてから予め定められた期間が経過するまでに、回路部15からの信号が制御部500に入力された場合、制御部500は、回路部15からの信号が入力されることにより実行する処理を行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロック機能を有するシート搬送装置、並びにそれを備える自動原稿送り装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は回転するローラーにより用紙を搬送路に沿って搬送し、搬送されてきた用紙に画像を形成して出力する。用紙が搬送路に詰まった場合(すなわち、ジャムが発生した場合)、ユーザーは搬送路に詰まった用紙を取り除かなければならない。搬送路に詰まっている用紙を引き抜いて、搬送路から用紙を取り除いた際にローラーが回転し、これに従動してモーターが回転すると、起電力(以下、ジャム処理時の起電力)が発生する。
【0003】
画像形成装置は予め定められたエラーを検知すれば、検知信号を出力する回路部を備えている。検知信号が制御部に入力されると、制御部はそれに応じた処理(例えば、エラーを報知する画像を表示部に表示させる処理)を行う。ジャム処理時の起電力により生じた電流が回路部に流れると、回路部が破壊したり、検知信号を誤って出力したりする可能性がある。
【0004】
そこで、ジャム処理時の起電力が発生すると、その起電力によりモーターを回転させて、起電力を消費する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、画像形成装置のカバーの開閉とインターロックスイッチの動作とを連動させ、カバーを閉じた場合、モーターはインターロックスイッチによりモーター用電源(24V電源)に接続され、カバーを開けた場合、モーターはインターロックスイッチにより他の電源(5V電源)に接続され、カバーを開けた状態でジャム処理時の起電力が発生すると、それにより生じる電流を他の電源に流す技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−199707号公報
【特許文献2】特開2010−28972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記二つの技術では、ジャム処理時の起電力が発生すれば、これを消費する構成にすることで、回路部が検知信号を誤って出力するのを防止している。しかし、ジャム処理時の起電力を消費しきれずに、この起電力により生じた電流が回路部に流れることにより、回路部が検知信号を誤って出力する可能性は否定できない。
【0008】
本発明は、ジャム処理時の起電力が原因で、回路部から制御部へ信号が誤って出力された場合に、制御部が誤った処理を行わないようにすることができるシート搬送装置、並びにそれを備える自動原稿送り装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の一の局面に係るシート搬送装置は、電源ラインと、前記電源ラインに接続されたモーターと、搬送路と、前記モーターの駆動力で回転することにより、シートを前記搬送路に沿って搬送するローラーと、前記搬送路に詰まったシートを取り出すために、前記搬送路にアクセスするときに開けられるカバーと、配線ラインと、前記カバーが閉じられている状態で前記電源ラインと電源とを接続しかつ前記電源ラインと前記配線ラインとを遮断し、前記カバーが開かれている状態で前記電源ラインと前記電源とを遮断しかつ前記電源ラインと前記配線ラインとを接続するインターロックスイッチと、制御部と、前記電源ラインに接続されており、前記制御部に信号を出力する回路部と、前記カバーが開かれている状態で前記ローラーの回転に従動して前記モーターが回転することにより起電力が発生した場合に、前記配線ラインに流れる電気信号の大きさに基づいて、しきい値が予め設定されており、前記配線ラインから検知される電気信号が前記しきい値を超えれば、起電力発生信号を前記制御部に出力する起電力検知部と、を備え、前記起電力発生信号が前記制御部に入力されてから予め定められた期間が経過するまでに、前記回路部からの信号が前記制御部に入力された場合、前記制御部は、前記回路部からの信号が入力されることにより実行する処理を行わず、前記期間が経過した後に、前記回路部からの信号が前記制御部に入力された場合、前記制御部は、前記回路部からの信号が入力されることにより実行する処理を行う。
【0010】
本発明の一の局面に係るシート搬送装置では、カバーが開かれている場合、インターロックスイッチによって、電源ラインと電源とが遮断されかつ電源ラインと配線ラインとが接続される。起電力検知部は、カバーが開かれている状態で、配線ラインから検知される電気信号がしきい値を超えれば、起電力発生信号を出力する。しきい値は、カバーが開かれている状態でモーターが回されることにより起電力(ジャム処理時の起電力)が発生し場合に、配線ラインに流れる電気信号(電圧、電流)の大きさに基づいて定められる。配線ラインから検知される電気信号がしきい値を超えれば、その電気信号はジャム処理時の起電力が原因と見なすのである。制御部に起電力発生信号が入力されてから予め定められた期間が経過するまでに、回路部からの信号が制御部に入力された場合、この信号は、ジャム処理時の起電力が原因で発生したものと見なし、制御部は回路部からの信号が入力されることにより実行する処理(例えば、回路部がジャム検知センサーの場合、ジャム発生箇所を示す画像を表示させる処理)を行わない。一方、上記期間が経過した後に、回路部からの信号が制御部に入力された場合、制御部は回路部からの信号が入力されることにより実行する処理を行う。以上により、本発明の一の局面に係るシート搬送装置によれば、ジャム処理時の起電力が原因で、回路部から制御部へ信号が誤って出力された場合に、制御部は回路部からの信号が入力されることにより実行する処理を行わないようにすることができる。
【0011】
予め定められた期間とは、ジャム処理時の起電力が発生すると、回路部から制御部へ信号が誤って出力される可能性のある期間をいう。
【0012】
上記構成において、前記配線ラインは、前記インターロックスイッチと接続されている一方の端部と、接地される他方の端部とを含むことができる。
【0013】
この構成によれば、ジャム処理時の起電力により発生した電流を、電源ライン及び配線ラインを通して、接地に流すことができる。よって、ジャム処理時の起電力で回路部が破壊するのを防止することができる。
【0014】
上記構成において、前記しきい値は、前記起電力が発生した場合に、前記配線ラインから検知される電圧の大きさに基づいて予め設定されており、前記起電力検知部は、前記一方の端部と前記他方の端部との間の前記配線ラインに接続され、前記配線ラインの電圧を検知し、前記配線ラインの電圧が前記しきい値を超えれば、前記起電力発生信号が前記制御部に出力される電圧検知回路を含むことができる。
【0015】
この構成によれば、起電力検知部に配線ラインを接地するレイアウトが含まれるので、起電力検知部と配線ラインを接地するレイアウトとを別々に設ける場合に比べて、構成のコンパクト化及び部品数を少なくすることができる。
【0016】
上記目的を達成する本発明の他の局面に係る自動原稿送り装置は、前記シートである原稿がセットされるトレイと、前記トレイにセットされた前記原稿を、前記原稿が読み取られる箇所に搬送する上記シート搬送装置と、を備える。
【0017】
本発明の他の局面に係る自動原稿送り装置によれば、上述した本発明の一の局面に係るシート搬送装置と同様の作用を有する。
【0018】
上記目的を達成する本発明の他の局面に係る画像形成装置は、前記シートである用紙を搬送する上記シート搬送装置と、前記シート搬送装置により搬送される前記用紙に、画像を形成して出力する画像形成部と、を備える。
【0019】
本発明のさらに他の局面に係る画像形成装置によれば、上述した本発明の一の局面に係るシート搬送装置と同様の作用を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ジャム処理時の起電力が原因で、回路部から制御部へ信号が誤って出力された場合に、制御部が誤った処理を行わないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係るシート搬送装置が備えられた画像形成装置の内部構造の概略を示す図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の外観の概略を示す図である。
【図3】図1に示す画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態において、モーター、起電力検知部及びインターロックスイッチの接続関係の一例を示す図である。
【図5】起電力検知部の一例を示す回路図である。
【図6】起電力検知部の他の例を示す回路図である。
【図7】本実施形態において、インターロックスイッチがオン状態での画像形成装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るシート搬送装置が備えられた画像形成装置1の内部構造の概略を示す図である。図2は、画像形成装置1の外観の概略を示す図である。画像形成装置1は、例えば、コピー、プリンター、スキャナー及びファクシミリの機能を有するデジタル複合機に適用することができる。画像形成装置1は装置本体100、装置本体100の上に配置された原稿読取部200、原稿読取部200の上に配置された原稿給送部300、及び装置本体100の上部前面に配置された操作部400を備える。
【0023】
原稿給紙部300は、本実施形態に係るシート搬送装置を適用した自動原稿送り装置として機能し、原稿を送る方向の上流側から順に配置された原稿トレイ305、ピックアップローラー307、用紙分離機構309、レジストローラー311、搬送ドラム313、排紙ローラー315、排紙トレイ317及び原稿搬送路323a,323b等を備える。
【0024】
原稿トレイ305には読み取りの対象とされる原稿が載置される。原稿搬送路323a,323bは搬送路の一例であり、これらを区別する必要がない場合、原稿搬送路323と記載する。原稿搬送路323aは原稿トレイ305と排紙トレイ317とをつなぐ搬送路であり、原稿の片面を自動で読み取る場合に使用される。原稿の両面を自動で読み取る場合は、さらに、原稿搬送路323bが使用される。
【0025】
原稿トレイ305に載置された原稿は、上記各種のローラー及び搬送ドラム313の回転により、原稿搬送路323に沿って搬送され、排紙トレイ317へ送られる。上記各種のローラー及び搬送ドラム313は、モーターの駆動力で回転することにより、シートを搬送路に沿って搬送するローラーの一例である。
【0026】
ピックアップローラー307は原稿トレイ305の上方に昇降可能に配置されている。ピックアップローラー307の近傍には用紙分離機構309が設けられている。用紙分離機構309は駆動ローラー309a、従動ローラー309b、無端ベルト309c及び分離ローラー309dを備える。駆動ローラー309aは従動ローラー309bよりも下流側に位置している。駆動ローラー309aと従動ローラー309bには無端ベルト309cが掛け渡されており、これらのローラーは給紙ローラーとして機能する。駆動ローラー309aと従動ローラー309bの下方には無端ベルト309cを押圧するように分離ローラー309dが配置されている。
【0027】
ピックアップローラー307及び駆動ローラー309aは、原稿トレイ305に載置された原稿を原稿トレイ305から送り出す方向に回転する。これに対して、分離ローラー309dは原稿トレイ305に載置された原稿を原稿トレイ305へ戻す方向に回転する。これらによって、ピックアップローラー307により一枚ずつ取り込まれた原稿が複数枚重ねて搬送されるのを防止している。
【0028】
用紙分離機構309の近傍にはレジストローラー311が配置されている。レジストローラー311は原稿を挟むように配置された駆動ローラー311aと従動ローラー311bから構成される。用紙分離機構309から搬送されてきた原稿は、レジストローラー311により正しい角度に補正されて、搬送ドラム313へ送られる。原稿は搬送ドラム313によって原稿読取スリット233の上を通過させられた後、排紙ローラー315によって排紙トレイ317へ排出される。原稿読取スリット233は後で説明する原稿読取部200に備えられる。
【0029】
原稿給紙部300はさらに、切換ガイド319、反転ローラー321及び原稿搬送路323bにより構成される原稿反転機構を備える。原稿反転機構は原稿の両面を自動で読み取る際に使用される。両面読み取り時、切換ガイド319は下側に切り換えられおり、原稿読取部200で表面が読み取られた原稿は、排紙ローラー315及び反転ローラー321によって原稿搬送路323bへ搬送される。その後、切換ガイド319が上側に切り換えられ、反転ローラー321が逆回転することにより、原稿が搬送ドラム313へ再び送られる。そして原稿読取部200で原稿の裏面が読み取られ、原稿は排紙ローラー315によって排紙トレイ317に排紙される。
【0030】
原稿給紙部300は複数のジャム検知センサーを備え、図1では3つのジャム検知センサー325a,325b,325cが表されている。これらのセンサーを区別する必要がない場合、ジャム検知センサー325と記載する。ジャム検知センサー325は搬送路323の異なる箇所に配置されて、搬送路323を搬送される原稿のジャムを検知する。
【0031】
原稿給紙部300は原稿給紙部300の内部を覆うカバー5を備える。カバー5を開けると、原稿搬送路323が現れる。原稿搬送路323で原稿のジャムが発生すると、カバー5を開けて、原稿搬送路323に詰まっている原稿を取り除く。カバー5は搬送路に詰まったシートを取り出すために、搬送路にアクセスするときに開けられるカバーの一例である。
【0032】
原稿読取部200は原稿の画像を光学的に読み取って画像データを生成する。原稿読取部200は、プラテンガラス231、原稿読取スリット233、光源235、第1ミラー237、第2ミラー239、第3ミラー241、第1キャリッジ243、第2キャリッジ245、結像レンズ247及びCCD(Charge Coupled Device)249を備える。
【0033】
プラテンガラス231及び原稿読取スリット233は、原稿読取部200の上面に位置している。プラテンガラス231はフラットベッド読取モードで利用され、プラテンガラス231の上に原稿を載置し、原稿が読み取られる。原稿読取スリット233は搬送ドラム313の下方に位置している。原稿読取スリット233はADF読取モードで利用され、搬送ドラム313によって搬送された原稿は、原稿読取スリット233と搬送ドラム313の間を通過する際に読み取られる。
【0034】
光源235及び第1ミラー237は第1キャリッジ243によって保持されている。第2ミラー239及び第3ミラー241は第2キャリッジ245によって保持されている。光源235から照射されて原稿で反射された光は、第1ミラー237、第2ミラー239、第3ミラー241及び結像レンズ247により、CCD249に導かれる。
【0035】
フラットベッド読取モードではプラテンガラス231上に原稿を載置し、キャリッジ(第1キャリッジ243及び第2キャリッジ245)をプラテンガラス231の長手方向(副走査方向Y)に移動させながらCCD249により原稿を読み取る。これに対してADF読取モードでは、キャリッジ(第1キャリッジ243及び第2キャリッジ245)を原稿読取スリット233と対向する位置に移動させて、原稿給紙部300から送られてきた原稿を、原稿読取スリット233を通してCCD249により読み取る。これによりCCD249から出力された電気信号を、原稿読取部200に設けられた画像エンジン(不図示)により所定の処理をして画像データとして出力する。
【0036】
装置本体100は、用紙貯留部101、画像形成部103、定着部105及び用紙搬送路111a,111bを備える。用紙搬送路111a,111bは搬送路の一例であり、これらを区別する必要がない場合、用紙搬送路111と記載する。用紙搬送路111aは、用紙貯留部101とスタックトレイ127及び排紙トレイ129とをつなぐ搬送路であり、用紙貯留部101の用紙に画像を形成する場合に使用される。
【0037】
用紙貯留部101は装置本体100の最下部に配置されており、用紙の束を貯留することができる複数の給紙カセット107を備える。給紙カセット107に貯留された用紙の束において、最上位の用紙がピックアップローラー109の駆動により、用紙搬送路111aへ向けて送出される。用紙は用紙搬送路111aを通って、画像形成部103へ搬送される。
【0038】
装置本体100は、さらに手差しトレイ131を備える。用搬送路111bは用紙搬送路111aに合流している。手差しトレイ131を用いて用紙を給紙する場合、用紙は用紙搬送路111bを搬送されて、用紙搬送路111aに送られる。
【0039】
用紙搬送路111には、レジストローラーや搬送ローラー等の各種のローラー133a,133b,133c,133d,133e,133f(これらを区別する必要がない場合、ローラー133と記載する)が配置されている。用紙はローラー133の回転により、用紙搬送路111に沿って搬送される。ローラー133はモーターの駆動力で回転することにより、シートを搬送路に沿って搬送するローラーの一例である。用紙搬送路111及びローラー133は、本実施形態に係るシート搬送装置を構成する。
【0040】
装置本体100は複数のジャム検知センサーを備え、図1では3つのジャム検知センサー135a,135b,135cが表されている。これらのセンサーを区別する必要がない場合、ジャム検知センサー135と記載する。ジャム検知センサー135は用紙搬送路111の異なる箇所に配置されて、用紙搬送路111を搬送される用紙のジャムを検知する。
【0041】
画像形成部103は搬送されてきた用紙に画像データを基にしてトナー画像を形成する。画像形成部103は感光体ドラム113、除電部115、帯電部117、露光部119、現像部121Bk,121Y,121M,121C、転写ドラム123及び転写ローラー125を備える。
【0042】
除電部115は感光体ドラム113の周面から残留電荷を除去する装置である。帯電部117は除電後の感光体ドラム113の周面を帯電させる装置である。露光部119は画像データ(原稿読取部200のCCD249から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリ受信の画像データ等)に対応して変調された光を生成し、一様に帯電された感光体ドラム113の周面に照射することにより、感光体ドラム113の周面に静電潜像を形成する装置である。
【0043】
現像部121Bk,121Y,121M,121Cは、静電潜像が形成されている感光体ドラム113の周面に、ブラック(Bk)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のトナー画像を形成させる装置である。各色の現像部を区別する必要がなければ、現像部121と記載する。ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色に対するトナーは、図略のトナー供給容器又はトナーカートリッジから供給される。
【0044】
転写ドラム123の周面で、感光体ドラム113に形成された各色のトナー画像が転写されて重ね合わされる。転写ローラー125は転写ドラム123の周面のトナー画像を、用紙貯留部101から搬送されてきた用紙に転写させるローラーである。
【0045】
トナー画像が転写された用紙は、定着部105に送られる。定着部105において、トナー画像と用紙に熱と圧力が加えられて、トナー画像を用紙に定着させる。これにより、用紙への画像の印刷が完了する。用紙はスタックトレイ127又は排紙トレイ129に排紙される。
【0046】
画像形成装置1は装置本体100の内部を覆うカバー3を備える。カバー3を開けると、用紙搬送路111が現れる。用紙搬送路111で用紙のジャムが発生すると、カバー3を開けて、用紙搬送路111に詰まっている用紙を取り除く。カバー3は搬送路に詰まったシートを取り出すために、搬送路にアクセスするときに開けられるカバーの一例である。
【0047】
操作部400は操作キー部401と表示部403を備える。表示部403はタッチパネル機能を有しており、ソフトキーを含む画面が表示される。ユーザーは画面を見ながらソフトキーを操作することによって、コピー等の機能の実行に必要な設定等をする。
【0048】
操作キー部401はハードキーからなる操作キーを備えており、具体的にはスタートキー407、テンキー409及び機能切換キー405等を備える。スタートキー407はコピー、ファクシミリ送信等の動作を開始させるキーである。テンキー409はコピー部数、ファクシミリ番号等の数字を入力するキーである。
【0049】
機能切換キー405はコピーキー、送信キー、及びスキャナーキー等を備えており、コピー機能、送信機能、スキャナー機能等を相互に切り換えるキーである。コピーキーを操作すれば、コピーの初期画面が表示部403に表示される。送信キーを操作すれば、ファクシミリ送信及びメール送信の初期画面が表示部403に表示される。スキャナーキーを操作すれば、スキャナーの初期画面が表示部403に表示される。
【0050】
図3は図1に示す画像形成装置1の構成を示すブロック図である。画像形成装置1は装置本体100、原稿読取部200、原稿給送部300、操作部400、制御部500、通信部600及び起電力検知部700が、バスによって相互に接続された構成を有する。図1を用いて既に説明した構成については、説明を省略する。
【0051】
制御部500はCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び画像メモリ等を備える。CPUは画像形成装置1を動作させるために必要な制御を、装置本体100等の画像形成装置1の上記構成要素に対して実行する。ROMは画像形成装置1の動作の制御に必要なソフトウェアを記憶している。RAMはソフトウェアの実行時に発生するデータの一時的な記憶及びアプリケーションソフトの記憶等に利用される。画像メモリは画像データ(原稿読取部200から出力された画像データ、パソコンから送信された画像データ、ファクシミリ受信の画像データ等)を一時的に記憶する。
【0052】
通信部600はファクシミリ通信部601及びネットワークI/F部603を備える。ファクシミリ通信部601は相手先ファクシミリとの電話回線の接続を制御するNCU(Network Control Unit)及びファクシミリ通信用の信号を変復調する変復調回路を備える。ファクシミリ通信部601は電話回線605に接続される。
【0053】
ネットワークI/F部603はLAN(Local Area Network)607に接続される。ネットワークI/F部603はLAN607に接続されたパソコン等の端末装置との間で通信を実行するための通信インターフェイス回路である。
【0054】
装置本体100はモーター137a,137b及びこれらを駆動制御するモーター回路139を備える。モーター137a,137bを区別する必要がない場合、モーター137と記載する。モーター137aは、例えば、用紙搬送路111a上で用紙を搬送するのに用いられるローラー133a,133b,133c,133d,133eを回転させる。モーター137bは、例えば、用紙搬送路111b上で用紙を搬送するのに用いられるローラー133fを回転させる。
【0055】
起電力検知部700は、カバー3が開かれている状態でローラー133の回転に従動してモーター137が回転することにより起電力(ジャム処理時の起電力)が発生した場合に、後で説明する配線ラインに流れる電気信号の大きさに基づいて、しきい値が予め設定されており、配線ラインから検知される電気信号がしきい値を超えれば、起電力発生信号を制御部500に出力する。
【0056】
起電力検知部700について、図4を用いて説明する。図4は本実施形態において、モーター137a,137b、起電力検知部700及びインターロックスイッチ7の接続関係の一例を示す図である。インターロックスイッチ7は3つの端子7a,7b,7cを備える。端子7aは24Vの電源9(電源の一例)に接続され、端子7bは電源ライン11に接続され、端子7cは配線ライン13に接続されている。
【0057】
インターロックスイッチ7は図2に示すカバー3の開閉と連動してスイッチが切り替わる。すなわち、カバー3が閉じられている状態で電源ライン11と電源9とを接続しかつ電源ライン11と配線ライン13とを遮断する。カバー3が開かれている状態で電源ライン11と電源9とを遮断しかつ電源ライン11と配線ライン13とを接続する。図4はカバー3が開かれている場合を示している。
【0058】
電源ライン11はモーター137a,137bを、それぞれ正逆回転させる制御をする制御回路141a,141bに接続されている。制御回路141a,141bはモーター137a,137bのモーター回路139に含まれており、4つの電界効果トランジスタにより構成されるフルブリッジである。モーター137a,137bを駆動させる電力は、電源ライン11を通して電源9から供給される。
【0059】
回路部15は、電源ライン11に接続されており、制御部500に信号を出力する。すなわち、回路部15は、カバー3が閉じられている場合、電源ライン11に接続されて、電源ライン11から供給される電力により動作をし、制御部500に信号を出力する。
【0060】
回路部15として、例えば、用紙搬送路111にジャムが発生したことを検知するジャム検知センサー135及びその駆動回路、トナーコンテナー内のトナーのニアエンドを検知するセンサー(不図示)及びその駆動回路、ファクシミリを受信した通信部600を挙げることができる。
【0061】
制御部500が、回路部15からの信号が入力されることにより実行する処理とは、回路部15が例えば、ジャム検知センサー135及びその駆動回路の場合、ジャム発生箇所を示す画像を表示部403に表示させる処理をいう。回路部15が、トナーのニアエンドを検知するセンサー及びその駆動回路の場合、トナーのニアエンドを示す画像を表示部403に表示させる処理をいう。回路部15が、ファクシミリを受信した通信部600の場合、カバー3が閉じられるまで、ファクシミリ受信した画像を用紙に形成することを待機する処理をいう。
【0062】
配線ライン13は起電力検知部700に接続されている。図5は起電力検知部700の一例を示す回路図である。起電力検知部700は分圧回路71とオープンコレクター73とを備える。分圧回路71の抵抗R1は配線ライン13に接続され、分圧回路71の抵抗R2は接地されている。分圧回路71の出力はオープンコレクター73のベースと接続されている。オープンコレクター73のコレクターはプルアップ抵抗R3を介して3.3Vの電源に接続さている。オープンコレクター73のエミッターは接地されている。オープンコレクター73のコレクターから出力された信号は、制御部500のCPUに入力される。
【0063】
起電力検知部700は、カバー3が開かれている状態で、配線ライン13から検知される電圧がしきい値を超えれば、起電力発生信号を出力する。詳細に説明すると、カバー3を開けた状態で、ジャム処理時の起電力が発生すると、電流I1が電源ライン11を通り回路部15に流れ、電流I2が電源ライン11及び配線ライン13を通り起電力検知部700に流れる。
【0064】
起電力検知部700は、通常時(予め定められたしきい値より小さい電圧)、オープンコレクター73がオフなので、Hレベルの信号が出力され、この信号は制御部500のCPUに入力される。起電力検知部700は、ジャム処理時の起電力が発生することにより、しきい値を超える電圧が、オープンコレクター73のベースに入力すると、オープンコレクター73がオンし、Lレベルの信号(すなわち、起電力発生信号)が出力され、この信号は制御部500のCPUに入力される。
【0065】
しきい値は、カバー3が開かれている状態でモーター137が回されることにより起電力(ジャム処理時の起電力)が発生した場合に、配線ライン13から検知される電圧に基づいて定められる(例えば、3V)。配線ライン13から検知される電圧がしきい値を超えれば、その電圧はジャム処理時の起電力が原因と見なすのである。
【0066】
図6は起電力検知部700の他の例を示す回路図である。起電力検知部700は、分圧回路71とコンパレーター75とを備える。コンパレーター75の非反転入力端子は、分圧回路71の出力と接続されている。コンパレーター75の反転入力端子は、抵抗R4を介して3.3Vの電源と接続されており、抵抗R5を介して接地されている。コンパレーター75の+Vcc端子は3.3Vの電源に接続され、−Vcc端子は接地されている。
【0067】
しきい値より小さい電圧(すなわち、通常時)が、コンパレーター75の非反転入力端子に入力されると、これにより、コンパレーター75からLレベルの信号が出力され、この信号は制御部500のCPUに入力される。一方、ジャム処理時の起電力が発生することにより、しきい値を超える電圧が、コンパレーター75の非反転入力端子に入力されると、出力が反転し、Hレベルの信号(すなわち、起電力発生信号)が出力され、この信号は制御部500のCPUに入力される。
【0068】
次に、インターロックスイッチ7がオン状態での画像形成装置1の動作を説明する。図7はこの動作を説明するフローチャートである。制御部500は、起電力検知部700から起電力発生信号が出力されたか否かを判断する(ステップS1)。すなわち、起電力検知部700から割り込み信号が制御部500のCPUに入力したか否かを判断する。
【0069】
制御部500が、起電力検知部700から起電力検知信号が出力されていないと判断すれば(ステップS1でNo)、ステップS1の処理が繰り返される。制御部500が、起電力検知部700から起電力検知信号が出力されていると判断すれば(ステップS1でYes)、制御部500は自身に含まれるタイマーを作動させて、予め定められた期間を計測する(ステップS3)。予め定められた期間とは、ジャム処理時の起電力が発生すると、それによる電流I1が回路部15に流れて、回路部15から制御部500に信号が誤って出力される可能性がある期間である(例えば、数百ms)。予め定められた期間を、誤動作期間と記載する。
【0070】
制御部500は、回路部15から信号が出力されたか否か判断する(ステップS5)。制御部500が、回路部15から信号が出力されていないと判断すれば(ステップS5でNo)、制御部500は、誤動作期間が経過したか否かを判断する(ステップS7)。
【0071】
制御部500が、誤動作期間が経過していないと判断すれば(ステップS7でNo)、ステップS5へ戻る。制御部500が、誤動作期間が経過したと判断すれば(ステップS7でYes)、ステップS1へ戻る。
【0072】
制御部500が、回路部15から信号が出力されたと判断すれば(ステップS5でYes)、制御部500は、誤動作期間が経過したか否かを判断する(ステップS9)。制御部500が、誤動作期間が経過していないと判断すれば(ステップS9でNo)、ジャム処理時の起電力が原因で回路部15から信号が誤って出力されたものと見なして、制御部500は、回路部15からの信号が入力されることにより実行する処理を行わず(ステップS11)、ステップS5へ戻る。
【0073】
一方、制御部500が、誤動作期間が経過したと判断すれば(ステップS9でYes)、制御部500は、回路部15からの信号が入力されることにより実行する処理を行って(ステップS13)、ステップS1へ戻る。
【0074】
本実施形態の主な効果を説明する。本実施形態によれば、カバー3が開かれている場合、インターロックスイッチ7によって、電源ライン11と電源9とが遮断されかつ電源ライン11と配線ライン13とが接続される。起電力検知部700は、カバー3が開かれている状態で、配線ライン13から検知される電圧(電気信号の一例)がしきい値を超えれば、起電力発生信号を出力する。制御部500に起電力発生信号が入力されてから予め定められた期間が経過するまでに、回路部15からの信号が制御部500に入力された場合、この信号は、ジャム処理時の起電力が原因で発生したものと見なし、制御部500は回路部15からの信号が入力されることにより実行する処理を行わない。一方、上記期間が経過した後に、回路部15からの信号が制御部500に入力された場合、制御部500は回路部15からの信号が入力されることにより実行する処理を行う。以上より、本実施形態によれば、ジャム処理時の起電力が原因で、回路部15から制御部500へ信号が誤って出力された場合に、制御部500は回路部15からの信号が入力されることにより実行する処理を行わないようにすることができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、図5及び図6に示すように、配線ライン13は、インターロックスイッチ7と接続されている一方の端部と、接地される他方の端部とを含む。これにより、ジャム処理時の起電力により発生した電流を、電源ライン11及び配線ライン13を通して、接地に流すことができる。よって、ジャム処理時の起電力で回路部15が破壊するのを防止することができる。
【0076】
さらに、本実施形態によれば、図5及び図6に示すように、しきい値は、ジャム処理時の起電力が発生した場合に、配線ライン13から検知される電圧の大きさに基づいて予め設定されており、起電力検知部700は、一方の端部と他方の端部との間の配線ライン13に接続され、配線ライン13の電圧を検知し、配線ライン13の電圧が前記しきい値を超えれば、起電力発生信号が制御部500に出力される電圧検知回路を含む。この構成によれば、起電力検知部700に配線ライン13を接地するレイアウトが含まれるので、起電力検知部700と配線ライン13を接地するレイアウトとを別々に設ける場合に比べて、構成のコンパクト化及び部品数を少なくすることができる。
【0077】
本実施形態では、シート搬送装置として、装置本体100の搬送路111に沿って用紙を搬送する例で説明した。しかしながら、これに限定されず、原稿給紙部300において、原稿トレイ305に原稿をセットし、その原稿を搬送路323に沿って搬送するシート搬送装置についても、本発明を適用することができ、上述した本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 画像形成装置
3,5 カバー
7 インターロックスイッチ
9 電源
11 電源ライン
13 配線ライン
15 回路部
111,111a,111b 用紙搬送路(搬送路の一例)
133,133a〜133f ローラー
137,137a,137b モーター
300 原稿給紙部(自動原稿送り装置の一例)
305 原稿トレイ(トレイの一例)
323,323a,323b 原稿搬送路(搬送路の一例)
700 起電力検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ラインと、
前記電源ラインに接続されたモーターと、
搬送路と、
前記モーターの駆動力で回転することにより、シートを前記搬送路に沿って搬送するローラーと、
前記搬送路に詰まったシートを取り出すために、前記搬送路にアクセスするときに開けられるカバーと、
配線ラインと、
前記カバーが閉じられている状態で前記電源ラインと電源とを接続しかつ前記電源ラインと前記配線ラインとを遮断し、前記カバーが開かれている状態で前記電源ラインと前記電源とを遮断しかつ前記電源ラインと前記配線ラインとを接続するインターロックスイッチと、
制御部と、
前記電源ラインに接続されており、前記制御部に信号を出力する回路部と、
前記カバーが開かれている状態で前記ローラーの回転に従動して前記モーターが回転することにより起電力が発生した場合に、前記配線ラインに流れる電気信号の大きさに基づいて、しきい値が予め設定されており、前記配線ラインから検知される電気信号が前記しきい値を超えれば、起電力発生信号を前記制御部に出力する起電力検知部と、を備え、
前記起電力発生信号が前記制御部に入力されてから予め定められた期間が経過するまでに、前記回路部からの信号が前記制御部に入力された場合、前記制御部は、前記回路部からの信号が入力されることにより実行する処理を行わず、前記期間が経過した後に、前記回路部からの信号が前記制御部に入力された場合、前記制御部は、前記回路部からの信号が入力されることにより実行する処理を行うシート搬送装置。
【請求項2】
前記配線ラインは、前記インターロックスイッチと接続されている一方の端部と、接地される他方の端部とを含む請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記しきい値は、前記起電力が発生した場合に、前記配線ラインから検知される電圧の大きさに基づいて予め設定されており、
前記起電力検知部は、前記一方の端部と前記他方の端部との間の前記配線ラインに接続され、前記配線ラインの電圧を検知し、前記配線ラインの電圧が前記しきい値を超えれば、前記起電力発生信号が前記制御部に出力される電圧検知回路を含む請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記シートである原稿がセットされるトレイと、
前記トレイにセットされた前記原稿を、前記原稿が読み取られる箇所に搬送する請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート搬送装置と、を備える自動原稿送り装置。
【請求項5】
前記シートである用紙を搬送する請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート搬送装置と、
前記シート搬送装置により搬送される前記用紙に、画像を形成して出力する画像形成部と、を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−23373(P2013−23373A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161892(P2011−161892)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】