説明

シート搬送装置および記録装置

【課題】シート搬送路内に位置する先行シートと後続シートを効率よく搬送することができるシート搬送装置および記録装置を提供すること。
【解決手段】先行シートP1は断続的に搬送し、後続シートP2は連続的に搬送する。後続シートP2の搬送速度は、先行シートP1と後続シートP2との間のシート間隔mに応じた速度v0,v1またはv2に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを順次搬送するシート搬送装置、および、そのシート搬送装置を備えた記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像情報に基づいてシート状の記録媒体に画像を記録する装置として、プリンタ、複写機あるいはファクシミリ等の記録装置がある。このような記録装置には、積載された複数枚のシート(シート状の記録媒体)を1枚ずつ分離して、そのシートを画像形成部へ順次搬送するためのシート搬送装置が備えられている。特許文献1には、このような記録装置として、複数枚のシートに渡って連続的に画像を記録する場合に、先行するシート(先行シート)に対する記録終了を待たずに、後続のシート(後続シート)の給紙および搬送を効率よく行う構成が記載されている。具体的には、2枚のシートの間隔をできるだけ狭めるために、シートの給紙部近傍に用紙端部検知センサーを備え、その端部検知センサーが先行シートの後端を検知したときに、後続シートの給紙を即座に開始する構成となっている。
【0003】
また、記録装置としては、画像形成部にてシートを一旦停止させた状態で搬送方向と直交する方向に記録ヘッドを移動させて1ライン分の記録を行い、この1ライン毎の記録を繰り返すことにより画像を完成させる方式のものがある。このように、シートを断続的に搬送しながら1ライン毎の記録を行う方式は、一般的に、ラインプリント方式と呼ばれている。特許文献2には、このようなラインプリント方式における給紙部が記載されている。この給紙部は、先行シートが記録に伴って搬送方向の下流方向へ断続的に搬送されて、その先行シートの後端が所定位置まで搬送されたときに、後続シートの給紙を開始する。そして、後続のシートは、それが所定位置まで搬送されて一旦停止した後に、先行シートに対する記録の進行に併せて断続的に搬送される。後続シートの断続的な搬送は、先行シートの搬送の断続回数に合わせる必要はなく、例えば、後続シートの搬送の断続回数を減らして、それを長い距離を搬送する方法も提案されている。そのため、特許文献2においては、画像記録中の先行シートを搬送するローラの駆動モータと、後続シートを搬送するローラの駆動モータと、が別々に配備されており、それら2枚のシートは、それぞれのモータによって別々に搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−301573号公報
【特許文献2】米国特許第7178914号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示される技術を用いて記録時間を短縮するためには、断続的に搬送される先行シートと後続シートとの間隔が一定以上大きくしないことが望ましい。それ故に、後続シートの搬送速度は先行シートの搬送速度に併せて同等もしくはそれ以上に設定する必要がある。一方、後続シートの搬送速度を遅くする程、後続シート用の搬送ローラを駆動音が小さくなる。さらに、搬送速度が下がる程、搬送されるシートと、ゴムローラなどの搬送ローラと、の間のスリップの量が減って、搬送ローラの磨耗が軽減して耐久性も向上する。つまり、駆動音や搬送ローラの耐久性の面からは、後続シートの搬送速度は遅い方が望ましい。しかしながら、後続シートの搬送速度を下げ過ぎた場合には、先行シートと後続シートとの間隔が徐々に大きくなり、連続記録時における記録時間が増大してしまう。
【0006】
本発明の目的は、シート搬送路内に位置する先行シートと後続シートを効率よく搬送することができるシート搬送装置および記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシート搬送装置は、給紙部に積載された複数のシートを1枚ずつ分離してからシート搬送路に沿って順次搬送する搬送手段を備え、前記搬送手段は、前記シート搬送路内に位置する先行シートと後続シートを搬送可能であるシート搬送装置であって、前記搬送手段は、前記先行シートを断続的に搬送し、かつ前記後続シートを当該後続シートと前記先行シートとの間のシート間隔に応じた搬送速度で連続的に搬送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、先行シートを断続的に搬送すると共に後続シートを連続的に搬送し、かつ後続シートの搬送速度は、先行シートと後続シートとの間のシート間隔に応じた速度とすることにより、先行シートと後続シートを効率よく搬送することができる。具体的には、先行シートの搬送時間を増大させることなく、後続シートの搬送速度を小さく抑えた上、それらを効率よく搬送することができる。後続シートの搬送速度を抑えることにより、シート搬送動作時の駆動音を軽減することができる。
【0009】
また、シートを搬送するためにゴムローラなどを用いた場合には、そのゴムローラとシートとの間のスリップの程度を小さく抑えて、ゴムローラの耐久性を向上させることができる。また、先行シートに対して画像を記録する場合には、その先行シートに続いて効率よく搬送される後続シートが次の先行シートとなるため、複数枚のシートに対して順次効率よく画像を連続記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るシート搬送装置を備えた記録装置の構成例を説明するための要部の斜視図である。
【図2】図1の記録装置におけるシート搬送路の要部の断面図である。
【図3】先行シートに対する記録動作時における図2のシート搬送路の要部の断面図である。
【図4】後続シートの給紙時における図2のシート搬送路の要部の断面図である。
【図5】後続シートの搬送時における図2のシート搬送路の要部の断面図である。
【図6】後続シートの搬送時における図2のシート搬送路の要部の断面図である。
【図7】後続シートの搬送速度と、シート間隔と、の関係の説明図である。
【図8】先行シートおよび後続シートの搬送速度と、シート間隔と、の関係の説明図である。
【図9】図1の記録装置における制御系の要部のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係るシート搬送装置を備えた記録装置の一例としての、インクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)の概略斜視図である。同図において、1はインクジェット記録装置本体、2は、記録媒体としてのシートを積載収納するカセット(給紙部)であり、装置本体1に着脱可能に備えられている。11Aは画像記録部であり、記録ヘッド11と、記録ヘッド11が搭載されるキャリッジ12と、が備えられている。
【0013】
カセット2から給紙されて、矢印Yの搬送方向(副走査方向)に搬送されたシートは、記録部11Aと対向する所定位置に到達したときに、一旦停止される。そのシートの停止時に、記録ヘッド11を搭載したキャリッジ12を搬送方向Yと交差(本例の場合は、直交)する矢印Xの主走査方向に移動させながら、記録ヘッド11からインクを吐出させることによって、1ライン分の画像を記録する。1ライン分の記録が終わると、再びシートを所定量搬送し、再度1ライン分の記録を行う。このように、シートの断続的な搬送と伴って、1ライン分ずつの記録を繰り返すことにより画像が記録される。キャリッジ12は、不図示のモータを含むベルト駆動装置などにより、主走査方向に往復動される。
【0014】
記録ヘッド11は、シートの記録面に向かってインクを吐出可能な複数のノズルが形成されており、これらのノズルは搬送方向Yと交差(本例の場合は、直交)する方向のノズル列に沿うように配列されている。そのノズル列は複数形成されている。それぞれのノズルには、ノズル列毎に異なる色のインクを吐出するように、供給チューブ13を介してインクタンク14から各色のインクが供給される。装置本体1のフレーム15,15の間には、互いに平行なガイドシャフト16と不図示のガイドレールが掛け渡されており、これらによってキャリッジ12が主走査方向に移動可能に支持されている。シートの記録面と対向する記録ヘッド11の吐出口面には、ノズルの先端に位置する吐出口が形成されている。ノズルは、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などの吐出エネルギー発生素子を用いて、インクを吐出するように構成されている。電気熱変換素子を用いた場合には、その電気熱変換体の発熱によりノズル内のインクを発泡させ、その発泡エネルギーを利用して吐出口からインクを吐出することができる。記録ヘッド11は、例えばサーマルヘッド等、インクジェット記録ヘッド以外のものであってよい。
【0015】
23は、記録ヘッド11の回復機構であり、記録ヘッド11が主走査方向の移動範囲の一端側に移動したときに、その記録ヘッド11に対向する位置に配備されている。このヘッド回復機構23は、記録動作の待機中、記録動作の前後、もしくは1ライン毎の記録の合間に作動することにより、記録ヘッド11のノズルの目詰まり等を防止して、記録ヘッド11の性能を維持するための回復処理を実行する。その回復処理としては、記録ヘッド11に対するキャッピング、インクの吸引、ワイピング等の動作を含むことができる。
【0016】
図2は、シートを給紙してから、シートに画像を記録した後、そのシートを排紙までの一連の動作を説明するための要部の断面図である。
【0017】
装置本体1には、シート収納部である給紙カセット2が脱自在に装着され、その給紙カセット2には、複数枚のシートPがシート束として集積されている。装置本体1には、給紙カセット2に積載されたシートPを1枚ずつ分離して順次送り出す給紙ローラ対(給紙ローラ5と分離ローラ6)が備えられている。給紙カセット2には、シートPが積載される回動可能なシート支持板3と、シートPの側端と後端を規制する不図示のシート側端規制板およびシート後端規制板と、が設けられている。シート支持板3は、給紙カセット2に回動自在に取り付けられ、不図示の付勢バネの付勢力により矢印A方向に回動する。これにより、シート支持板3上に積載されたシートPは、給紙ローラ5に押し付けられる。給紙ローラ5は、不図示の給紙モータからの駆動力によって図2中の反時計方向に回転されることにより、シート束の最上位に位置するシート(最上位シート)P1を送り出す。その際、最上位シートP1と、その下位に位置するシートP2と、の間に発生した摩擦力により、下位のシートP2が最上位シートP1と共に送り出されるように追従してくる場合がある。しかし、下位のシートP2は、給紙ローラ5に圧接された分離ローラ6の摩擦抵抗力により、その送り出しが阻止される。
【0018】
分離ローラ6の回転軸の中心には不図示のトルクリミッタが設けられていて、分離ローラ6に所定の回転負荷トルクが付与されているため、下位のシートP2の送り出しを妨げるように作用する。一方、分離ローラ6に所定の回転負荷トルクを超えたトルクが発生した場合には、給紙ローラ5と共に最上位シートP1を挟持して送り出すニップローラとして機能する。すなわち、給紙ローラ5とシートPとの間に発生する摩擦力をF1、シートP同士の間に発生する摩擦力をFp、分離ローラ6のトルクリミッタの回転負荷トルクの接線力をF3とすると、それらの関係は、F1>F3>Fpとなっている。よって、最上位シートP1だけが給紙カセット2からシート搬送路8へ送り出される。シート搬送路内に送り出されたシートは、搬送ローラ対(搬送ローラ7aとピンチローラ7b)の間のニップ部に到達してから、それらによって搬送路8の下流側へ順次搬送される。さらに、そのシートは、画像形成ローラ対(画像形成ローラ9とピンチローラ10)の間のニップ部に到達してから、そのニップ部に挟まれたまま、記録ヘッド11と対向する記録位置のプラテン19上まで搬送される。本例の場合、搬送ローラ7aとしてゴムローラを使用し、画像形成ローラ10として金属ローラを使用している。
【0019】
記録ヘッド11による画像の記録はプラテン19上において1ラインずつ行われるため、画像が記録されるシートは間欠的に搬送される。記録部11Aの搬送方向下流側には、画像が記録されたシートを搬送するための搬送ローラ20aと拍車20bが配備されている。シートにおける画像の記録面に接触する拍車20bは、記録面に付与されたインクが転写しないように配慮されている。画像の記録が終了したシートは、これらの搬送ローラ20aと拍車20bとによって排紙トレイ22上へ排出される。
【0020】
このような記録装置において記録画像の品質を向上させるためには、断続的に搬送するシートの1回毎の搬送量を精度よく安定させることが重要となる。シートの搬送量が不足した場合には、1ライン毎の画像のつなぎ目に白いスジの画像欠陥が生じてしまい、逆に、シートの搬送量が過剰となった場合には、1ライン毎の画像のつなぎ目に黒いスジの画像欠陥が生じてしまう。そのため、本例の記録装置は、1ライン毎のシートの搬送誤差を数ミクロン〜十数ミクロンに抑えることを目標としている。このようにシートを高精度に搬送するためには、画像形成ローラ対9,10よりも搬送方向上流側のシートに加わる負荷(バックテンション)を軽減、もしくは、安定させることが重要となる。
【0021】
そこで本例の場合は、図3に示すように、記録動作中は、シート支持板3または分離ローラ6を給紙ローラ5から矢印B1,B2方向に離間させ、かつ、ピンチローラ7bを搬送ローラ7aから矢印B3方向に離間させる。これにより、画像形成ローラ対9,10よりも搬送方向上流側に位置するシートの挟持部(ニップ部)の全てを開放して、シートに掛かるバックテンションを極力軽減する。それぞれの挟持部の開放動作(離間動作)は不図示のコントロールカムよって制御され、そのコントロールカムは第1のモータ104(図9参照)によって駆動される。その第1のモータ104は、給紙ローラ5および搬送ローラ7aを順方向に回転させるための駆動源ともなる。画像形成ローラ9は、それとは別の第2のモータ105(図9参照)によって駆動させる。
【0022】
バックテンションの軽減させるための別の方法としては、例えば、搬送ローラ対7a,7bおよび給紙ローラ対5,6によってシートを挟持したまま、画像形成ローラ対9,10によるシートの搬送に同期して同量の搬送を行う方法がある。この方法は同期搬送などとも称されており、本例のようにシートの挟持部を解除する方法よりも構成が簡単であり、コストメリットがある。しかしながら、搬送ローラ対7a,7bおよび給紙ローラ対5,6によるシートの同期搬送は、それらのローラの外径公差などによる搬送誤差のために、長い距離に渡ってシートを安定的に搬送することは極めて困難である。したがって本例においては、確実にバックテンションを安定化するために、上述したようにシートの挟持部を開放する方法を採用している。
【0023】
図9は、本例の記録装置の制御系の要部のブロック構成図である。CPU100は、本記録装置の動作の制御処理やデータ処理等を実行する。ROM101は、それらの処理手順等のプログラムが格納され、またRAM102は、それらの処理を実行するためのワークエリアなどとして用いられる。記録ヘッド11からのインクの吐出は、CPU100がヘッドドライバ11Aを介して、電気熱変換素子などの吐出エネルギー発生素子を駆動することにより行われる。CPU100は、キャリッジ12を主走査方向に駆動するためのキャリッジモータ103をモータドライバ103Aを介して制御し、前述した第1および第2のモータ104,105をモータドライバ104A,105Aを介して制御する。またCPU100は、記録装置外部のホスト装置(コンピュータ装置)200から受信した記録データおよび制御信号に基づいて、画像の記録動作などを実行することができる。
【0024】
次に、複数枚のシートに対して連続的に画像を記録する記録動作について説明する。以下の説明においては、先行して画像が記録されるシートを先行シートP1とし、その次に画像が記録されるシートを後続シートP2とする。
【0025】
図4は、後続シートP2の給紙開始タイミングを説明するための図である。複数枚のシートに対して連続的に画像を記録する場合、記録時間を短縮するために、先行シートP1に対する記録動作中に後続シートP2の給紙が開始される。ただし、先行シートP1の後端P1bが搬送ローラ対7a,7bの間を抜ける前に、後続シートP2の給紙が開始された場合、それまで解放されていた搬送ローラ対7a,7bの挟持部が開放されなくなって、先行シートP1にバックテンションが掛かってしまう。つまり、前述したように、給紙ローラ5および搬送ローラ7aを順方向に回転させる第1のモータの駆動力がコントロールカムにも伝わって、搬送ローラ対7a,7bの挟持部の開放動作が解除されてしまう。その結果、先行シートP1にバックテンションが掛かって、その先行シートP1に対する記録画像の悪影響が出るおそれがある。そこで本例においては、先行シートP1の後端P1bが確実に搬送ローラ対7a,7bの間を抜けてから、後続シートS2の給紙を開始する。そのために、搬送ローラ7aよりも搬送方向下流側の近傍位置には、シート端部検知センサー30が配備されており、その検知センサー30が先行シートP1の後端P1bを検知したときに、後続シートP2の給紙が開始される。
【0026】
図5は、その後における後続シートP2の搬送動作を説明するための図である。後続シートP2の搬送は、その先端P2aが検知センサー30によって検知されたときに、一旦停止する。この時点では、既に、後続シートP2の給紙および分離作業は完了しているため、それらの作業の役目を終えたシート支持板3および分離ローラ6は、不図示のコントロールカムによって給紙ローラ5から離間して、それらの間の挟持部は開放される。一方、搬送ローラ対7a,7bは挟持状態にあって、不図示の第1のモータを逆回転させることによって、搬送ローラ7aのみに駆動力が伝達されて、後続シートp2がさらに搬送方向下流側へ搬送される。
【0027】
図6は、その後に、後続シートP2が先行シートP1に追いつくまでの動作を説明するための図である。先行シートP1は、後続シートP2の給紙および搬送動作中においても、記録動作に伴って搬送方向下流側へ断続的に搬送される。その先行シートP1の後端P1bの位置は、その後端P1bが検知センサー30によって検知された時点から、画像形成ローラ9による先行シートP1の搬送距離を計測することにより、検出することができる。例えば、画像形成ローラ9を駆動する第2のモータがパルスモータの場合には、そのパルスモータの駆動パルスをカウントすることにより、画像形成ローラ9による先行シートP1の搬送距離を計測することができる。また、後続シートP2の先端P2aの位置は、その先端P2aが検知センサー30によって検知された時点から、搬送ローラ7aによる後続シートP2の搬送距離を測定することにより、検出することができる。例えば、搬送ローラ7aを駆動する第1のモータがパルスモータの場合には、そのパルスモータの駆動パルスをカウントすることにより、搬送ローラ7aによる後続シートP2の搬送距離を計測することができる。このように、先行シートP1の後端P1bと、後続シートP2の先端P2aと、の間隔は、画像形成ローラ9と搬送ローラ7aの駆動量に応じて制御可能である。具体的には、後続シートP2の先端P2aが先行シートP1の後端P1bに対して所定距離(本例では、15mm)近づくまで、後続シートP2を一定速度(本例では、100mm/sec)で搬送させる。
【0028】
次に、記録動作によって断続的に搬送される先行シートP1と、後続シートP2と、の位置関係について説明する。例えば、先行シートP1の断続的な搬送に併せて、後続シートP2も同じ速度、同じタイミング、同じ搬送量で断続的に搬送することにより、それらのシートP1,P2の間隔を所定間隔の15mmに維持することができる。しかしながら、未だ画像の記録対象となっていない後続シートP2に関しては、断続的に搬送する必要はなく、連続的に搬送しても問題はない。むしろ、後続シートP2を連続的に搬送したならば、結果的に、後続シートP2の搬送速度が抑えることができる。このように搬送速度を抑えることができた場合には、搬送ローラ7aの駆動部の駆動音が低減でき、さらには、搬送ローラ7aと後続シートP2との間のスリップ量を減少させて、ゴムローラなどの搬送ローラ7aの耐久性を向上させることができる。しかしながら、後続シートP2の搬送速度を低すぎた場合には、先行シートP1との間隔が大きくなってしまい、結果的に、記録速度が低下してしまう。一方、後続シートP2の搬送速度が高過ぎた場合には、それが先行シートP1に追いついてしまい、最悪の場合、それが先行シートP1に衝突するおそれがある。
【0029】
そこで本例においては、先行シートP1と後続シートP2との間隔(シート間隔)をモニタリングして、そのシート間隔に応じて搬送速度を制御する。
【0030】
図7および図8は、このような搬送速度の制御方法を説明するための図である。図7は、シート間隔mと、後続シートP2の搬送速度vと、の関係の説明である。本例の場合は、シート間隔mが所定範囲内α≦m≦βにあるときに、後続シートP2の搬送速度vはv0に設定される。搬送速度v0は、後述するように、先行シートP1の断続的な搬送時における搬送速度Vfよりも低い(v0<Vf)。つまり、後続シートP2の搬送速度は、先行シートP1の搬送速度未満である。一方、シート間隔mがm<αにあるとき、つまりシート間隔mが小さくなり過ぎたときには、後続シートP2の搬送速度vはv1に設定される。速度v1は、速度v0よりも低い(v1<v0)また、シート間隔mがβ<mにあるとき、つまりシート間隔mが大きくなり過ぎたときには、後続シートP2の搬送速度vはv2に設定される。速度v2は、速度v0よりも高い(v2>v0)。このように、本例においては、シート間隔mに応じて後続シートP2の搬送速度vを3段階(v0,v1,v2)に設定する。
【0031】
図8は、先行シートP1と後続シートP2の搬送速度と、シート間隔mと、の関係の説明図である。図8中上側のグラフは、縦軸が搬送速度、横軸が時間であって、実線は先行シートP1の搬送速度の変化、点線は後続シートP2の搬送速度の変化を示している。図8中下側のグラフは、縦軸がシート間隔m、横軸が時間であって、シート間隔mの変化を示している。これら上下のグラフの横軸は同一の時間軸である。
【0032】
図8において、時点TAよりも前の期間では、先行シートP1は停止中であり、また後続シートP2は所定の搬送速度v0で搬送されているため、シート間隔mは徐々に小さくなる。しかしながら、時点TAの直前から先行シートP1の加速が開始されて、時点TAでは先行シートP1の搬送速度が後続シートP2の搬送速度v0を越すため、時点TAを境にしてシート間隔mは徐々に大きくなる。先行シートP1は搬送速度Vfまで加速された後、その搬送速度Vfに維持される。その後、時点TBの直前から先行シートP1の減速が開始されて、時点TBを過ぎてから停止されるため、時点TBを境にしてシート間隔mは小さくなる。そのまま徐々に小さくなるシート間隔mは、時点TCにおいて距離α以下となる。この結果、先述したように後続シートP2の搬送速度vは、v0からv1へと切り替わる。これにより、シート間隔mの減少の程度が小さく抑えられることになる。
【0033】
その後、先行シートP1が再び再加速を開始して、時点TDにおいてシート間隔mが距離α以上となると、後続シートP2の搬送速度vはv1からv0へと戻される。その後の時点TEにおいて、シート間隔mが距離β以上にまで大きくなると、後続シートP2の搬送速度vはv0からv2へと切り替わる。
【0034】
このように、後続シートP2はv0を基本の搬送速度として搬送され、シート間隔mに応じて、搬送速度が3段階(v0,v1,v2)に切り替えられて連続的に搬送される。後続シートP2の搬送速度は、先行シートP1の搬送速度Vfよりも低い範囲内に設定される。
【0035】
以上のように、シート間隔に応じた速度で後続シートP2を連続的に搬送することにより、記録速度を低下させることなくシート間隔を所定範囲内に収めることができ、しかも後続シートP2の搬送速度を低く抑えることができる。また、後続シートP2の搬送速度を低く抑えることによって、搬送ローラ7aの駆動音を小さく抑えることができ、さらに搬送ローラ7aとシートP2との間のスリップを小さく抑えて、搬送ローラ7aの磨耗を軽減して耐久性を向上させることもできる。
【0036】
(他の実施形態)
後続シートの搬送速度の切り替えは、3段階のみに限定されない。例えば、その切り替えを2段階として、シート間隔が小さくなり過ぎたときにだけ後続シートの搬送速度を低くし、逆に、シート間隔が大きくなり過ぎたときにだけ後続シートの搬送速度を高くするようにしてもよい。また、その搬送速度を変更する段階を4以上の複数段階としてもよい。
【0037】
また、記録すべき画像中にシートの搬送方向に延在する大きな空白部分がある場合に、その空白部分の大きさに応じて、先行シートP1の1回当りの搬送距離を長くすることがある。この場合、前述したように、後続シートP2の搬送速度v2が先行シートP1の搬送速度Vf未満に制限されていると、シート間隔mが大きくなり過ぎて、記録速度を充分に高められなくなることが考えられる。このような場合には、記録速度の高速化に支障をきたす直前までシート間隔mが大きくなったときに、後続シートP2の搬送速度を先行シートP1の搬送速度Vfと同速またはそれ以上に設定してもよい。この場合には、駆動音の発生やローラの耐久性の悪化をきたすことになる。しかし、先行シートP1の1回当りの搬送距離を長くして記録するような画像はイレギュラーな画像と考えられるため、一時的な緊急処置として、このように後続シートP2の搬送速度を高めてもよい。
【0038】
また本発明は、種々のシートを搬送可能なシート搬送装置、および、そのシート搬送装置によって搬送されるシートに対して種々の処理を施す処理装置に対して、付録適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 記録装置本体
5,6 給紙ローラ対
7a,7b 搬送ローラ対
8 シート搬送路
9,10 画像形成ローラ対
11 記録ヘッド
12 キャリッジ
30 シート端部検知センサー
P シート(記録媒体)
P1 先行シート
P2 後続シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙部に積載された複数のシートを1枚ずつ分離してからシート搬送路に沿って順次搬送する搬送手段を備え、前記搬送手段は、前記シート搬送路内に位置する先行シートと後続シートを搬送可能であるシート搬送装置であって、
前記搬送手段は、前記先行シートを断続的に搬送し、かつ前記後続シートを当該後続シートと前記先行シートとの間のシート間隔に応じた搬送速度で連続的に搬送することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記後続シートの前記搬送速度は、前記シート間隔に応じて複数段階に変更されることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記後続シートの前記搬送速度は、前記シート間隔が所定の範囲内にあるときに所定の速度に設定され、前記シート間隔が前記所定の範囲から外れたときに変更されることを特徴とする請求項1または2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記後続シートの前記搬送速度は、前記シート間隔が前記所定の範囲よりも大きい方向に外れたときに、前記所定の速度よりも高く変更されることを特徴とする請求項3に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記後続シートの前記搬送速度は、前記シート間隔が前記所定の範囲よりも小さい方向に外れたときに、前記所定の速度よりも低く変更されることを特徴とする請求項3または4に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記後続シートの前記搬送速度は、前記シート間隔を前記所定の範囲内に維持するように変更されることを特徴とする請求項3に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記後続シートの前記搬送速度は、前記先行シートが断続的に搬送されるときの搬送速度未満であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のシート搬送装置と、
前記先行シートの断続的な搬送の停止時に、前記先行シートに画像を記録する記録手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項9】
前記記録手段は、前記先行シートの搬送方向と交差する方向に移動可能なインクジェット記録ヘッドを用いて、前記先行シートに画像を記録することを特徴とする請求項8に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−112450(P2013−112450A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258946(P2011−258946)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】