説明

シート搬送装置

【課題】カードサイズ以下のサイズのシートが硬質材料からなる場合であっても、そのシートを良好に搬送できながら、カードサイズより大きいサイズの紙などのシートも良好に搬送できる、シート搬送装置を提供する。
【解決手段】シートの搬送をガイドするための第1下ガイド部41および第1上ガイド部33は、互いに間隔を空けて対向し、それぞれシートの下面および上面に対向するように構成されている。第1上ガイド部33には、シートの搬送方向と直交する左右方向の一部に、第1下ガイド部41から離れる方向に凹んだ凹部78が形成されている。そのため、第1ガイド部と第2ガイド部との間の間隔は、凹部と対向する部分で凹部と対向しない部分よりも大きくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するためのシート搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イメージスキャナには、画像読取部を経由する搬送路に沿ってシートを搬送するシート搬送装置が備えられている。
【0003】
装置サイズの小型化のため、搬送路は、曲線状に形成されることが多い。この場合、シート搬送装置には、搬送路に沿って湾曲した第1ガイドおよび第2ガイドが備えられる。第1ガイドおよび第2ガイドは、搬送路を挟んで、それぞれ搬送路を搬送されるシートの一方面および他方面と対向するように設けられている。シートは、搬送路を第1ガイドおよび第2ガイドにガイドされつつ搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−87499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イメージスキャナを身分証明証やクレジットカードなどの表面の画像の読取りが可能な構成にすることが検討されている。
【0006】
クレジットカードなどは、プラスチックのような硬質材料からなる。そのため、第1ガイドと第2ガイドとの間の間隔が小さいと、硬質材料からなるカードサイズのシートは、搬送路を通過することができない。また、そのシートが搬送路を通過することができても、第1ガイドおよび/または第2ガイドからシートに大きな力が加わり、シートに傷がついたり、シートに曲げ跡が残ったりする。
【0007】
第1ガイドと第2ガイドとの間の間隔を広げることにより、硬質材料からなるカードサイズのシートに関する問題を解決することができる。しかしながら、第1ガイドと第2ガイドとの間の間隔が大きいと、A4サイズなどの紙が搬送されるときに別の問題が生じる。
【0008】
たとえば、搬送路の入口には、シートを1枚ずつ分離するために、ローラおよびローラの周面に接触する分離片が設けられている。第1ガイドと第2ガイドとの間の間隔が大きいと、ローラの周面と分離片との間を通過した紙に張力が加わったときに、紙によって分離片がローラの周面から離間する方向に持ち上げられるおそれがある。分離片がローラの周面から離間すると、分離片によるシートの分離性能が低下し、シートの重送を生じる。
【0009】
本発明の目的は、カードサイズ以下のサイズのシートが硬質材料からなる場合であっても、そのシートを良好に搬送できながら、カードサイズより大きいサイズの紙などのシートも良好に搬送できる、シート搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明に係るシート搬送装置は、シートの一方側の面が周面に接触して、前記シートを搬送するための第1ローラと、前記シートの前記一方側の面が対向するように構成され、前記シートの搬送をガイドするための第1ガイド部と、前記第1ガイド部と間隔を空けて対向し、前記シートの他方側の面が対向するように構成され、前記シートの搬送をガイドするための第2ガイド部とを含む。前記第2ガイド部には、前記シートの搬送方向と直交する幅方向の一部に、前記他方側に凹んだ凹部が形成されている。前記凹部内の底面は、前記一方側に凸湾曲している。
【0011】
シートは、その一方側の面が第1ローラの周面から受ける摩擦力によって搬送される。シートの搬送をガイドするための第1ガイド部および第2ガイド部は、互いに間隔を空けて対向し、それぞれシートの一方側の面および他方側の面に対向するように構成されている。
【0012】
第2ガイド部には、シートの搬送方向と直交する幅方向の一部に、第1ガイド部から離れる方向に凹んだ凹部が形成されている。そのため、第1ガイド部と第2ガイド部との間の間隔は、凹部と対向する部分で凹部と対向しない部分よりも大きくなる。
【0013】
カードサイズ以下のシートが第1ガイド部と第2ガイド部の凹部との間の相対的に大きい間隔の空間(凹部と対向する部分)を通されることにより、そのシートが硬質材料からなる場合であっても、シートが第2ガイド部に強い力で接触することを抑制できる。その結果、シートが大きく湾曲しつつ搬送されることを抑制でき、シートを傷つけたり、シートに曲げ跡を残したりすることなく、そのシートを良好に搬送することができる。
【0014】
また、凹部内の底面が凹部の凹みと反対側に凸湾曲しているので、凹部内の底面でシートが傷つけられることを抑制できる。
【0015】
カードサイズより大きいサイズのシートは、第1ガイド部と第2ガイド部との間の相対的に小さい間隔の空間を通過する。そのため、シートに張力が加わった場合、その張力を第2ガイド部で受けることができる。
【0016】
これにより、凹部に対して搬送方向の上流側に、第1ローラの周面に接触し、シートを第1ローラ周面との間に挟み込んで、シートを1枚ずつに分離するための分離部材が設けられた構成である場合に、シートに加わる張力で分離部材が第1ローラの周面から持ち上げられることを抑制できる。その結果、分離部材によるシートの分離性能が低下することを抑制できるので、シートの重送などを生じることなく、シートを良好に搬送することができる。
【0017】
よって、カードサイズ以下のサイズのシートが硬質材料からなる場合であっても、そのシートを良好に搬送できながら、カードサイズより大きいサイズの紙などのシートも良好に搬送することができる。
【0018】
凹部内の底面は、第1ガイド部との間の間隔がシートの搬送方向の下流側ほど狭くなるように湾曲していることが好ましい。
【0019】
これにより、シートの先端が凹部と対向する部分を越えて凹部と対向しない部分を移動するときに、シートの搬送に伴って、シートの他方側の面が凹部内の底面に接触する場合がある。この場合、シートにおけるその接触部分よりも先端側の姿勢が第1ガイド部と第2ガイド部における凹部を越えた部分との間の空間に沿う姿勢に変化する。よって、第1ガイド部と第2ガイド部における凹部を越えた部分との間でシートを良好に搬送することができる。
【0020】
第1ローラに対して搬送方向の下流側に、第1ローラによって送られてくるシートを搬送方向に搬送する第2ローラが設けられていてもよい。この場合、凹部と第2ローラとの間に間隔が空けられていることが好ましい。
【0021】
これにより、凹部内の底面にシートが強く接触することを抑制でき、シートの湾曲を抑制することができる。
【0022】
第2ガイド部における凹部外の部分と凹部とがなす幅方向の角部が尖っていると、カードサイズより大きいサイズのシートに尖った角部が当接し、シートが角部に沿って折れるおそれがある。
【0023】
そのため、第2ガイド部における凹部外の部分と凹部とがなす幅方向の角部は、面取りされていることが好ましい。
【0024】
第1ガイド部は、一方側に凸湾曲していることが好ましい。
【0025】
これにより、第1ガイド部と第2ガイド部との間隔が局所的に狭くなることを抑制でき、シートをより良好に搬送することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、カードサイズ以下のサイズのシートが硬質材料からなる場合に、そのシートに傷や曲げ跡をつけることなく、シートを良好に搬送することができながら、カードサイズより大きいサイズの紙などのシートも良好に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るイメージスキャナ1の外観斜視図であり、前記イメージスキャナ1の非使用時の状態を示す。
【図2】図2は、前記イメージスキャナ1の外観斜視図であり、前記イメージスキャナ1の使用時の状態を示す。
【図3】図3は、前記イメージスキャナ1の断面図である。
【図4】図4は、前記イメージスキャナ1の第1上ガイド部33および第1下ガイド部41の近傍の断面図である。
【図5】図5は、前記第1上ガイド部33の近傍の斜視図である。
【図6】図6は、前記イメージスキャナ1の下ユニット6の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<イメージスキャナの外観構成>
【0029】
図1に示されるように、イメージスキャナ1は、スキャナ本体2、供給トレイ3および排出トレイ4を備えている。
【0030】
スキャナ本体2には、上ユニット5および下ユニット6が含まれる。スキャナ本体2の正面には、シート排出口7が上ユニット5および下ユニット6に跨がって形成されている。
【0031】
なお、イメージスキャナ1を平面上に載置した状態で、そのイメージスキャナ1を正面側から見て、前後、左右および上下を規定する。そして、図1以降の各図では、図面の理解を助けるために、必要に応じて、その規定された方向を矢印で示す。
【0032】
上ユニット5は、下ユニット6に対して、下ユニット6の前上端縁に沿って左右方向に延びる軸線を中心に揺動可能に結合されている。そして、上ユニット5は、揺動により、前方に下り傾斜した通常姿勢、すなわち図2に示される姿勢と、その通常姿勢から後端部が上方に持ち上がった非図示のメンテナンス姿勢とに変位可能である。上ユニット5がメンテナンス姿勢をなす状態では、上ユニット5と下ユニット6との間が開放され、シートのジャム処理やメンテナンスを行うことができる。
【0033】
上ユニット5の上面には、図2に示されるように、操作表示部8が設けられている。操作表示部8には、複数の操作ボタン9およびパイロットランプ10などが配置されている。
【0034】
下ユニット6は、左端部および右端部に、それぞれ側面視台形状のサイドパネル11を備えている。この1対のサイドパネル11により、イメージスキャナ1の左右の側面が形成されている。上ユニット5が通常姿勢をなす状態で、1対のサイドパネル11により、上ユニット5が左右から挟まれて、上ユニット5の左右の側面が覆われる。また、その状態で、上ユニット5の上面は、各サイドパネル11の上端縁とほぼ同一の面内に配置される。
【0035】
下ユニット6の後上端部において、左右方向の中央部12Cの上面は、前下がりに傾斜している。中央部12C上には、左右方向の中央に、略矩形板状の本体側案内部材13が固定的に配置されている。
【0036】
中央部12Cの左方の左端部12Lおよび右方の右端部12Rは、中央部12Cよりも上方に突出し、略直方体形状をなしている。上ユニット5が通常姿勢をなす状態で、左端部12Lおよび右端部12Rの上面は、上ユニット5の上面とほぼ面一をなす。左端部12Lの右側面および右端部12Rの左端面には、それぞれ左右方向に延びる同一直線上を左右方向の内側に向けて延びる非図示のトレイ支持軸が形成されている。
【0037】
供給トレイ3は、2本のトレイ支持軸により、トレイ支持軸を支点に揺動可能に支持されている。供給トレイ3は、揺動により、スキャナ本体2の上面に上方から対向する収納姿勢、すなわち図1に示される姿勢と、下ユニット6の後上端部の中央部12Cの傾斜角度とほぼ同じ傾斜角度でスキャナ本体2の後上端部から後上方に延びる使用姿勢、すなわち図2に示される姿勢とに変位可能である。また、供給トレイ3は、スキャナ本体2の平面形状とほぼ同形状の板状に形成されている。そのため、供給トレイ3が収納姿勢をなす状態で、スキャナ本体2の上面は、供給トレイ3によって覆い隠される。
【0038】
供給トレイ3の内面、すなわち使用姿勢をなす状態で前上方に向く面には、略矩形板状のトレイ側案内部材14が設けられている。トレイ側案内部材14は、供給トレイ3が使用姿勢をなす状態で、供給トレイ3の前端部であって、本体側案内部材13の後方に固定的に配置されている。
【0039】
供給トレイ3が使用姿勢をなす状態で、下ユニット6の後上端部の中央部12Cの前方に、左右方向に延びる略矩形状のシート供給口15が開放される。
【0040】
供給トレイ3が使用姿勢をなす状態で、下ユニット6の後上端部の中央部12Cおよび供給トレイ3上に跨がって、左右1対のシート幅ガイド部材16が形成される。
【0041】
各シート幅ガイド部材16は、本体側ガイド部材17とトレイ側ガイド部材18とに分割されている。
【0042】
本体側ガイド部材17は、載置部19および幅規制部20を一体的に有している。載置部19は、中央部12Cの上面に沿って配置される。載置部19は、略矩形板状である。載置部19は、本体側案内部材13とほぼ同一形状に形成されている。幅規制部20は、載置部19の左右方向の外側端縁から載置部19に直交して起立する。
【0043】
なお、「直交」の概念には、90°での交差はもちろん、90°に多少の誤差を含む角度で交差する場合も含まれる。
【0044】
トレイ側ガイド部材18は、載置部21および幅規制部22を一体的に有している。載置部21は、中央部12Cの上面に沿って配置される。載置部21は、略矩形板状である。載置部21は、トレイ側案内部材14とほぼ同一形状に形成されている。幅規制部22は、載置部21の左右方向の外側端縁から載置部21に直交して起立する。
【0045】
本体側ガイド部材17の幅規制部20の後端部には、左右方向に延びる連結軸23が突出して設けられている。連結軸23の軸線は、供給トレイ3の揺動支点であるトレイ支持軸の軸線と一致している。トレイ側ガイド部材18の幅規制部22には、本体側ガイド部材17の幅規制部20の後端部と左右方向に重なる部分が形成されている。この重なる部分に、連結軸23の先端部が挿通されている。これにより、供給トレイ3の揺動に伴って、トレイ側ガイド部材18は、連結軸23を中心に揺動する。そして、供給トレイ3が使用姿勢をなす状態で、本体側ガイド部材17およびトレイ側ガイド部材18が前後に並び、幅規制部20,22は、前後方向に延びるリブ状をなす。
【0046】
1対のシート幅ガイド部材16は、それらの間の中央をセンタ基準として、互いに同じ移動量で近接/離間可能に設けられている。
【0047】
1対のシート幅ガイド部材16が互いに最も近接した状態では、左右の幅規制部20,22の間の間隔が欧米名刺サイズの短辺の長さとほぼ同じ最小幅となる。そして、1対のシート幅ガイド部材16の間において、本体側案内部材13、トレイ側案内部材14およびシート幅ガイド部材16の載置部19,21上に跨がって、欧米名刺サイズのシートを載置することができる。
【0048】
また、1対のシート幅ガイド部材16が互いに最も離間した状態で、左右の幅規制部20,22の間の間隔がリーガルサイズの紙の短辺の長さとほぼ同じ最大幅となる。そして、1対のシート幅ガイド部材16の間において、本体側案内部材13、トレイ側案内部材14およびシート幅ガイド部材16の載置部19,21上に跨がって、リーガルサイズのシートの先端部、すなわち前端部を載置することができる。
【0049】
欧米名刺サイズよりも大きく、リーガルサイズよりも小さいサイズのシートについては、1対のシート幅ガイド部材16を移動させて、左右の幅規制部20,22の間の間隔をシートの左右方向の幅に一致させることにより、本体側案内部材13、トレイ側案内部材14およびシート幅ガイド部材16の載置部19,21上に載置することができる。
【0050】
こうして、シートは、スキャナ本体2の下ユニット6の後上端部および供給トレイ3上に、左右方向の中央が1対のシート幅ガイド部材16の間の中央、すなわちシート供給口15の左右方向の中央と一致した状態にセットされる。
【0051】
排出トレイ4は、略矩形板状に形成されている。排出トレイ4は、スキャナ本体2(下ユニット6)の最下部に収納された状態、すなわち図1に示される状態と、シート排出口7からスキャナ本体2の前方に引き出された状態、すなわち図2に示される状態とに変位可能に設けられている。排出トレイ4がスキャナ本体2の最下部に収納された状態では、図1に示されるように、排出トレイ4の前面24がスキャナ本体2の前面25とほぼ面一をなす。一方、排出トレイ4がスキャナ本体2の前方に引き出された状態では、図2に示されるように、排出トレイ4の上面26がシート受け面として上方に開放される。
【0052】
また、排出トレイ4の上面26には、補助板27が排出トレイ4の前端縁に沿った軸線まわりに揺動可能に設けられている。補助板27は、揺動により、上面26に対して倒伏した姿勢と、排出トレイ4がスキャナ本体2の前方に引き出された状態で、上面26の前端部から前上方に延びる姿勢とに変位可能である。
<イメージスキャナの内部構成>
【0053】
上ユニット5および下ユニット6は、図3に示されるように、それぞれ上フレーム31および下フレーム32を備えている。上フレーム31の後端縁および下フレーム32の後端縁により、シート供給口15が形成されている。
【0054】
上フレーム31には、第1上ガイド部33、上CIS保持部34および最終ガイド部35が後側からこの順に連続して形成されている。
【0055】
第2ガイド部の一例としての第1上ガイド部33の下フレーム32に対向する面、すなわち下面は、シートの搬送をガイドするガイド面36である。ガイド面36は、前下方に相対的に急な勾配で傾斜して延び、途中部で後下方に凸となるように湾曲し、前下方に相対的に緩やかな勾配で傾斜して延びている。
【0056】
上CIS保持部34は、前上方に向かって凹む略長方形状の凹部として形成されている。上CIS保持部34には、上CISユニット37が嵌合されている。上CISユニット37は、コンタクトガラス38を備えている。上CISユニット37は、コンタクトガラス38を下フレーム32側に向けた状態に設けられている。上CIS保持部34の底面と上CISユニット37との間には、コイルばね39が介在されている。これにより、シートの厚さが大きい場合に、その厚さに応じて上CISユニット37が移動し、シートがコンタクトガラス38と良好に接触しつつ搬送される。
【0057】
最終ガイド部35は、ガイド面36の前端部とほぼ同じ傾斜角度で前下方に延びている。
【0058】
下フレーム32には、案内部40、第1下ガイド部41および下CIS保持部42が後側からこの順に連続して形成されている。
【0059】
案内部40の上面は、シートが載置される載置面である本体側案内部材13、トレイ側案内部材14およびシート幅ガイド部材16の載置部19,21の各上面とほぼ同じ傾斜角度で前下方に傾斜する略平面に形成されている。
【0060】
第1ガイド部の一例としての第1下ガイド部41の上フレーム31に対向する面、すなわち上面は、シートの搬送をガイドするガイド面43である。ガイド面43と第1上ガイド部33のガイド面36との間には、間隔が空けられている。ガイド面43は、ガイド面36の湾曲に対応して、後下方に凸となるように湾曲し、ガイド面36の前端部と平行をなして、前下方に延びている。
【0061】
なお、「平行」の概念には、一方が他方に対して僅かに傾斜する場合や一方がごく緩やかに湾曲する場合も含まれる。
【0062】
下CIS保持部42は、後下方に向かって凹む略長方形状の凹部として形成されている。下CIS保持部42には、下CISユニット44が嵌合されている。下CISユニット44は、コンタクトガラス45を備えている。下CISユニット44は、コンタクトガラス45を上フレーム31側に向けた状態に設けられている。
【0063】
また、下フレーム32には、案内部40および第1下ガイド部41の左右方向の各中央部に跨がって、供給ローラ収容部46が後下方に凹む凹部として形成されている。
【0064】
供給ローラ収容部46には、第1ローラの一例としての供給ローラ51が回転可能に収容されている。供給ローラ51の周面の一部は、案内部40および第1下ガイド部41の各上面から前上方に突出している。供給ローラ51は、シートの搬送時に、右側から見て反時計回りに回転する。
【0065】
案内部40の上面とその上面から突出した供給ローラ51の周面とに跨がるように、シート状ガイド52が設けられている。シート状ガイド52は、左右方向において、その中央が供給ローラ51の左右方向の中央と一致するように配置されている。シート状ガイド52は、フィルムからなる。シート状ガイド52は、基端部が案内部40の上面に固定され、遊端部が供給ローラ51の周面に接触している。
【0066】
供給ローラ51の前上方には、図3,4に示されるように、規制部材53、シート押さえ部材54および分離片ユニット55が設けられている。規制部材53、シート押さえ部材54および分離片ユニット55は、上フレーム31に取り付けられている。
【0067】
規制部材53は、シート状ガイド52に対してシートの搬送方向の下流側に配置されている。規制部材53は、供給ローラ51側に尖った側面視略三角形状に形成されている。そして、規制部材53は、図4に示される断面において、案内部40の上面に沿って延びる直線と直交する供給ローラ51の半径とほぼ同一直線上を延びる規制面56を有している。
【0068】
シート押さえ部材54は、板ばねからなる。シート押さえ部材54の基端部は、上フレーム31の後端部に取り付けられる。シート押さえ部材54の遊端部は、供給ローラ51の周面に前上方から当接している。
【0069】
分離片ユニット55は、ゴムからなる分離部材の一例としての分離片57を備えている。分離片57は、規制部材53に対して供給ローラ51の回転方向の下流側に配置されている。分離片57の表面は、ばね58の付勢力により、供給ローラ51の周面に弾性的に接触している。
【0070】
図3に示されるように、第1上ガイド部33および第1下ガイド部41の各前端部には、それぞれLFローラ61,62が左右方向に延びる軸線を中心に回転可能に設けられている。LFローラ61の周面の一部は、第1上ガイド部33の前端部の下面、すなわちガイド面36から後下方に突出している。また、第2ローラの一例としてのLFローラ62の周面の一部は、第1下ガイド部41の前端部の上面、すなわちガイド面43から前上方に突出している。そして、ばね63の付勢力により、LFローラ61の周面は、LFローラ62の周面に前上方から弾性的に接触している。
【0071】
上フレーム31の最終ガイド部35および下フレーム32の前端部には、それぞれ排出ローラ64,65が左右方向に延びる軸線を中心に回転可能に設けられている。排出ローラ64の周面の一部は、最終ガイド部35の下面から後下方に突出している。また、排出ローラ65の周面の一部は、下フレーム32の前端部の上面から前上方に突出している。そして、ばね66の付勢力により、排出ローラ64の周面は、排出ローラ65の周面に前上方から弾性的に接触している。
<イメージスキャナにおける画像の読取り>
【0072】
イメージスキャナ1では、シートの上面および下面に形成されている画像を選択的に読み取ることができる。また、イメージスキャナ1では、シートの両面に形成されている画像を並行して読み取ることができる。以下、シートの搬送および画像の読取りについて時系列的に説明する。
【0073】
1対のシート幅ガイド部材16の間の間隔が読取対象のシートの幅に合わされる。その後、その読取対象のシートが1対のシート幅ガイド部材16の間に後上方から差し込まれる。これにより、シートが本体側案内部材13、トレイ側案内部材14およびシート幅ガイド部材16の載置部19,21上に載置される。このとき、シートの前端部は、本体側案内部材13、トレイ側案内部材14およびシート幅ガイド部材16の載置部19,21上を滑る。シートの前端部は、シート供給口15を通って、下フレーム32の案内部40上に移動する。さらに、シートの前端部は、案内部40上を供給ローラ51に向けて滑る。
【0074】
複数枚のシートがセットされた場合、最下位置のシートの先端部における左右方向の中央部は、案内部40からシート状ガイド52上に移動する。シートの先端部における中央部は、シート状ガイド52上を滑って、供給ローラ51の周面上に導かれる。そして、最下位置のシートは、その先端部が分離片ユニット55に接触すると、分離片ユニット55との摩擦抵抗によって停止する。また、上側のシートは、その先端縁が規制部材53の規制面56に当接することによって停止する。これにより、シートのセットが完了する。
【0075】
また、シートの進入により、シート押さえ部材54の遊端部が持ち上げられ、シートの上面にシート押さえ部材54が当接する。シート押さえ部材54の付勢力により、最下位置のシートが供給ローラ51の周面に押しつけられる。
【0076】
供給ローラ51が右側から見て反時計回りに回転すると、最下位置のシートと供給ローラ51の周面との摩擦力により、最下位置のシートが供給ローラ51の周面とともに移動する。また、最下位置のシートとその直上のシートとの摩擦力により、最下位置のシートにその上方のシートがつられて移動する。そして、それらのシートの先端が分離片57の表面に当接すると、分離片57により、上方のシートの移動が規制されて、最下位置のシートのみが分離片57と供給ローラ51の周面とのニップ部分を通過する。
【0077】
分離片57と供給ローラ51の周面とのニップ部分を通過したシートは、第1上ガイド部33のガイド面36と第1下ガイド部41のガイド面43とに挟まれる搬送路をガイド面36,42にガイドされつつ搬送される。
【0078】
シートの先端がLFローラ61,62のニップ部分に当接すると、LFローラ61,62の回転により、シートの先端部がそのニップ部分に引き込まれる。そして、シートの上面および下面にそれぞれLFローラ61,62の周面が接触し、LFローラ61,62の周面からシートに搬送力が付与される。これにより、シートの搬送が続けられる。
【0079】
その後、シートの搬送が進むと、シートの上面および下面がそれぞれ上CISユニット37のコンタクトガラス38および下CISユニット44のコンタクトガラス45と対向する。そして、コンタクトガラス38,45の光出射位置において、シートの上面および下面に光が照射される。シートの上面および下面での反射光がそれぞれ上CISユニット37および下CISユニット44に内蔵されたイメージセンサに受けられることにより、シートの上面および下面に形成されている画像の読取りが達成される。
【0080】
シートの先端が排出ローラ64,65のニップ部分に当接すると、排出ローラ64,65の回転により、シートの先端部がそのニップ部分に引き込まれる。そして、シートの上面および下面にそれぞれ排出ローラ64,65の周面が接触し、排出ローラ64,65の周面からシートに搬送力が付与される。これにより、シートの搬送が続けられる。そして、シートの後端が排出ローラ64,65から離れると、シートは、排出トレイ4の上面26に排出される。
<第1上ガイド部の詳細>
【0081】
第1上ガイド部33のガイド面36は、図4に示されるように、全体として後下方に凸となるように湾曲する湾曲部71と、湾曲部71に連続し、緩やかな勾配で前下方に傾斜して延びる傾斜部72とを有している。
【0082】
湾曲部71の左右方向の中央部は、カードガイド部73である。また、ガイド面36において、カードガイド部73の左右方向の両側の部分は、一般ガイド部74である。
【0083】
カードガイド部73は、左右方向にクレジットカードの短辺の長さより少し大きい幅を有している。カードガイド部73は、小さい曲率(大きい曲率半径)で後下方に凸となるように湾曲する湾曲面からなる。
【0084】
一般ガイド部74は、急傾斜部75、湾曲部76および緩傾斜部77を有している。急傾斜部75は、傾斜部72よりも急勾配で前下方に傾斜して延びている。湾曲部76は、急傾斜部75に連続し、カードガイド部73よりも大きい曲率(小さい曲率半径)で後下方に凸となるように湾曲している。緩傾斜部77は、湾曲部76に連続し、傾斜部72と同じ勾配で前下方に延びている。
【0085】
カードガイド部73の曲率が一般ガイド部74の湾曲部76の曲率よりも小さいことにより、ガイド面36には、図5に示されるように、前上方に凹んだ凹部78が形成され、カードガイド部73は、その凹部78の底面をなしている。
【0086】
カードガイド部73と一般ガイド部74の湾曲部76との間には、大きな段差が生じており、凹部78と湾曲部76とがなす角部79は、その段差がなくなるように大きく丸面取りされている。
<第1下ガイド部の詳細>
【0087】
第1下ガイド部41のガイド面43は、図4,6に示されるように、シートの搬送方向の上流側から順に、湾曲部81および傾斜部82を有している。湾曲部81は、第1上ガイド部33の湾曲部71に対して後下方から対向している。傾斜部82は、湾曲部81に連続し、第1上ガイド部33の傾斜部72と平行をなして前下方に延びている。
【0088】
湾曲部81は、図4に示されるように、第1上ガイド部33のカードガイド部73よりも小さい曲率で後下方に凸となるように湾曲している。また、湾曲部81の曲率中心は、カードガイド部73の曲率中心とほぼ同じ位置に設定されている。これにより、カードガイド部73と湾曲部81との間の間隔は、シートの搬送方向の下流側ほど狭くなっている。
【0089】
また、カードガイド部73が一般ガイド部74よりも前上方に凹んでいるので、カードガイド部73と湾曲部81との間の間隔は、一般ガイド部74と湾曲部81との間の間隔よりも大きくなっている。
<第1上ガイド部および第1下ガイド部間でのシートの通過>
【0090】
分離片57と供給ローラ51の周面とのニップ部分を通過したシートは、第1上ガイド部33のガイド面36と第1下ガイド部41のガイド面43との間を通過する。
【0091】
クレジットカードのサイズ、いわゆるカードサイズよりも大きいサイズのシートの先端は、分離片57と供給ローラ51の周面とのニップ部分を通過した後、第1上ガイド部33の一般ガイド部74の急傾斜部75に当接する場合がある。この場合、シートの先端は、一般ガイド部74の湾曲部76に沿った軌跡を描きながら進む。これにより、シートの先端の進行方向の勾配が大きくなる。シートの搬送がさらに進むと、シートの先端は、ガイド面43の湾曲部81に当接し、湾曲部71に沿った軌跡を描きながら進む場合がある。この場合、シートの先端の進行方向がガイド面36の傾斜部72およびガイド面43の傾斜部82の勾配と一致する。その後、シートの先端は、湾曲部81から傾斜部82上に移動し、傾斜部82に沿った軌跡を描きながら進む。
【0092】
一方、たとえば、シートのサイズがカードサイズ以下であり、かつ、そのシートが硬質材料からなる場合、おおむねのシートは、分離片57と供給ローラ51の周面とのニップ部分を通過した後、第1下ガイド部41のガイド面43の湾曲部81に当接する。このとき、シートと第1上ガイド部33のカードガイド部73との間には、間隔が空いている。その後、シートの先端は、湾曲部81に沿った軌跡を描きながら進む。シートの先端の移動に伴って、シートは、分離片57と供給ローラ51の周面とのニップ部分と湾曲部81との間で後下方に凸となるように緩やかに湾曲する。そして、カードガイド部73と湾曲部81との間の間隔がシートの搬送方向の下流側ほど狭くなっているので、シートの搬送がさらに進むと、シートの上面がカードガイド部73に接触し、シートにおけるその接触部分よりも先端側の姿勢がガイド面43の傾斜部82に沿った姿勢となる。よって、シートは、ガイド面36の傾斜部72とガイド面43の傾斜部82との間を良好に搬送される。
<作用効果>
【0093】
以上のように、シートは、その下面が供給ローラ51の周面から受ける摩擦力によって搬送される。シートの搬送をガイドするための第1下ガイド部41および第1上ガイド部33は、互いに間隔を空けて対向し、それぞれシートの下面および上面に対向するように構成されている。
【0094】
第1上ガイド部33には、シートの搬送方向と直交する左右方向の一部に、第1下ガイド部41から離れる方向に凹んだ凹部78が形成されている。そのため、第1下ガイド部41と第1上ガイド部33との間の間隔は、凹部78と対向する部分で凹部78と対向しない部分よりも大きくなっている。
【0095】
そして、カードサイズ以下のシートは、第1下ガイド部41と第1上ガイド部33の凹部78との間の相対的に大きい間隔の空間(凹部78と対向する部分)を通される。これにより、シートが硬質材料からなる場合であっても、シートが第1上ガイド部33に強い力で接触することを抑制できる。その結果、シートが大きく湾曲しつつ搬送されることを抑制でき、シートを傷つけたり、シートに曲げ跡を残したりすることなく、そのシートを良好に搬送することができる。
【0096】
また、カードガイド部73は、第1下ガイド部41のガイド面43の湾曲部81側に凸湾曲しており、屈曲していない。そのため、カードガイド部73は、断面で角となる部分を有していないので、カードガイド部73でシートが傷つけられることを抑制できる。
【0097】
カードサイズより大きいサイズのシートは、第1下ガイド部41と第1上ガイド部33との間の相対的に小さい間隔の空間を通過する。そのため、シートに張力が加わった場合、その張力を第1上ガイド部33で受けることができる。
【0098】
これにより、シートに加わる張力で分離片57が供給ローラ51の周面から持ち上げられることを抑制できる。その結果、分離片57によるシートの分離性能の低下が生じないので、シートの重送などを生じることなく、シートを良好に搬送することができる。
【0099】
よって、カードサイズ以下のサイズのシートが硬質材料からなる場合であっても、そのシートを良好に搬送できながら、カードサイズより大きいサイズの紙などのシートも良好に搬送することができる。
【0100】
供給ローラ51に対して搬送方向の下流側には、凹部78と間隔を空けて、シートを搬送方向に搬送するLFローラ62が設けられている。
【0101】
シートが硬質材料からなる場合、シートがLFローラ61,62の間に進入すると、シートにおけるLFローラ61,62よりも搬送方向の下流側の部分は、LFローラ61,62の回転軸線間を結ぶ直線とほぼ垂直をなす姿勢となる。
【0102】
そのため、LFローラ62が凹部78と近い位置に設けられた場合、シートは、カードガイド部73と屈曲部81との間を通過した直後に、カードガイド部73と屈曲部81との間の形状に沿った姿勢からLFローラ61,62の回転軸線間を結ぶ直線とほぼ垂直をなす姿勢に変更される。そのため、シートが大きく変形する。
【0103】
凹部78とLFローラ62との間に、搬送方向において間隔が空けられていることにより、シートがカードガイド部73と屈曲部81との間を通過した直後に、シートの姿勢が大きく変更されることを抑制できる。よって、シートが大きく変形することを抑制できる。
【0104】
また、凹部78と湾曲部76とがなす角部79が丸面取りされているので、シートが角部79に沿って折れることを抑制できる。
【0105】
また、第1下ガイド部41が後下方に凸湾曲しているので、第1下ガイド部41と第1上ガイド部33との間の間隔が局所的に狭い部分が存在しない。そのため、シートをより良好に搬送することができる。
<変形例>
【0106】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0107】
たとえば、前述の実施形態では、イメージスキャナ1を取り上げたが、本発明に係るシート搬送装置は、イメージスキャナ1以外に、プリンタや複写機に代表される画像形成装置など、シートを搬送する機構を必要とする装置に広く適用することができる。
【0108】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0109】
33 第1上ガイド部
41 第1下ガイド部
51 供給ローラ
57 分離片
62 LFローラ
73 カードガイド部
78 凹部
79 角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの一方側の面が周面に接触して、前記シートを搬送するための第1ローラと、
前記シートの前記一方側の面が対向するように構成され、前記シートの搬送をガイドするための第1ガイド部と、
前記第1ガイド部と間隔を空けて対向し、前記シートの他方側の面が対向するように構成され、前記シートの搬送をガイドするための第2ガイド部とを含み、
前記第2ガイド部には、前記シートの搬送方向と直交する幅方向の一部に、前記他方側に凹んだ凹部が形成されており、
前記凹部内の底面は、前記一方側に凸湾曲している、シート搬送装置。
【請求項2】
前記凹部内の前記底面は、前記第1ガイド部との間の間隔が前記搬送方向の下流側ほど狭くなるように湾曲している、請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記第1ローラに対して前記搬送方向の下流側に設けられ、前記第1ローラによって送られてくる前記シートを前記搬送方向に搬送する第2ローラをさらに含み、
前記凹部と前記第2ローラとの間には、間隔が空けられている、請求項1または2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記第2ガイド部における前記凹部外の部分と前記凹部とがなす前記幅方向の角部は、面取りされている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記第1ガイド部は、前記一方側に凸湾曲している、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記凹部に対して前記搬送方向の上流側に設けられ、前記第1ローラの前記周面に接触し、前記第1ローラによって搬送される前記シートを前記周面との間に挟み込んで、前記シートを1枚ずつに分離するための分離部材をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−112511(P2013−112511A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262881(P2011−262881)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】