説明

シート材ホルダー

【課題】伝票やメモ、ポスター等のシート状物品を吊り下げて保持することのできる手軽なホルダーであって、シート状物品の着脱操作が簡単で、該物品を下向きにも横向にも取り外すことのできるものを提供すること。
【解決手段】縦板状の基板と、該基板の表面を覆うように基板に取り付けられた容器状のカバーと、前記基板に沿って上下移動自在に前記カバー内に収納されたボールとを備え、前記カバーの底板は、下側ほど前記基板側に近づくような傾斜板として形成されるとともに、カバーの下端部及び側縁部と前記基板との間に、シート材をカバー内に挿入できるスリット状の隙間が形成されているシート材ホルダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝票やメモ、ポスター等のシート状物品を一時的に吊り下げて保持するために使用するに適した手軽なホルダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
メモを書き込んだ紙片や伝票等を紛れないように保持する方法として、クリップで挟んで壁や家具の外面に吊り下げておくことが広く行われている。例えば家庭では、電話で受けた伝言や面会の予定等を記したメモをマグネット付きのクリップに挟んで冷蔵庫の外面等に磁着しておくことが多い。また、事務所等では、必要事項を記載した紙片を挟んだクリップをホワイトボードに付着させておくことも多い。
【0003】
このような目的で使用されるクリップとしては、磁石の押さえ具と台座との間で磁力により紙片を挟むものや、台座に軸で回動自在に取り付けた蝶番式押え具をトルクバネの力で挟圧方向に付勢するものが一般的である。この種のクリップには、本体の背面にマグネット、粘着パッド等の取付け手段が設けられているものも多い。
【0004】
しかしながら、磁石式押え具で紙片を挟むものや、トルクバネで押え具を付勢するクリップは、紙片を挟んだり外したりするときに、その都度、磁石式押え具を台座に対し着脱したり、指で押え具の後部を強く押さえて紙片挟圧用の口を開かせる必要があり、余計な労力を必要とするとともに、操作に手間がかかるという問題があった。
【0005】
上記広く知られたクリップのほかに、シート材を手軽に保持するホルダーとして、下記特許文献1に示すようなハンガーが提案されている。このハンガーは、本体の前壁と後壁の上部が結合一体化され、下部は互いに分離していて、前壁の内面と後壁の内面とが互いに接近するように傾斜した断面形状に形成されている。そして、これら前壁と後壁の間に円筒(ローラ)が水平に収納されている。この円筒は、重力により下向きに付勢されているが、前壁の下部内面が後壁側に近づくように傾斜しているので、円筒が自重で後壁の表面に押し付けられるようになっている。なお、後壁の背面には、加圧により接着するコーティングが施されたパッドが支持壁に対する支持手段として設けられている。
【0006】
このハンガーは、紙片等のシート材を前壁と後壁の下側の隙間から後壁に沿って上向きに挿入することにより、後壁側に付勢された前記円筒と後壁との間で該シート材が挟まれるため、落下しないように保持されるのである。挟み込まれたシート材を取り外す時は、該シート材を円筒に沿って横移動させ、本体の側面に形成されている隙間から抜き取ればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3,591,013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載のものは、壁面等に接着固定された本体の下側の隙間から後壁表面に沿ってシート材を上向きに押し込むだけで該シート材を保持することができるので便利であるが、シート材を本体の側面から横方向に挿入することができないので、不便であった。また、円筒がシート材と線接触するので、引き出すとき等に無理な力が作用するとシート材に傷が付くおそれがあった。
【0009】
そこで本発明は、バネ式クリップのような人手による開操作が不要で、簡単にシート材を吊り下げて保持することができ、シート材に傷がつきにくく、しかもシート材を本体の下側からでも側面側からでも簡単に挿入して保持できるシート材ホルダーを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用した。すなわち、請求項1に記載の本発明に係るシート材ホルダーは、縦板状の基板と、該基板の表面を覆うように基板に取り付けられた容器状のカバーと、前記基板に沿って上下移動自在に前記カバー内に収納されたボールとを備え、前記カバーの底板は、下側ほど前記基板側に近づくような傾斜板として形成されるとともに、カバーの下端部及び側縁部と前記基板との間に、シート材の挿入および引き出しができるスリットが形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載のシート材ホルダーは、カバー内に2個のボールが横に並べて収納されており、両ボールの間に縦方向の仕切りが設けられているものである。また、請求項3に記載のシート材ホルダーは、基板の背面に、該基板を壁等の固定物に取り付けて支持することのできる磁石又は粘着剤層からなる支持手段が設けられているものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるシート材ホルダーは、2個のボールと基板との間でシート材を挟んで保持するものであるから、シート材の挿入操作は簡単であり、上記特許文献1に記載の円筒のような線接触ではなく、それぞれのボールはいわば点接触でシート材を押圧するので、シート材がずれにくく、無理な力が作用しても傷つきにくい。また、シート材は、下側からでも横からでも挿入したり引き出したりすることができるので、使い勝手がよい。
【0013】
請求項に記載のように、ボールを2個設けておき、仕切りで互いに分離しておけば、シート材の保持が確実であり、シート材の挿入離脱も容易である。また、請求項3のように、シート材ホルダー自体を家具等に取り付けることのできる支持手段を設けておけば、より便利である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を表す斜視図である。
【図2】その要部の断面図である。
【図3】その下面図である。
【図4】その平面図である。
【図5】その正面図である。
【図6】異なる実施形態の正面図(a)および断面図(b)である。
【図7】異なる実施形態の正面図(a)および下面図(b)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について具体的に説明する。図1は本発明のシート材ホルダーの外観を表すもので、図2は、その要部の断面図である。このシート材ホルダー1は、基板2とカバー3とで本体が構成され、その内側に2個のボール5が仕切り8で仕切られた状態で収納されている。なお、本体を構成する基板2とカバー3は、ポリカーボネートその他の樹脂、アルミ、ステンレス鋼等の金属その他の材質で作ることができる。
【0016】
基板2は板状であり、その表面2aの大部分は平らであるが、下端部2bは端部側が次第に薄くなるような円滑な曲面となっていて、シート材を下側から挿入する場合に挿入しやすくなっている。基板2の背面2c側には、シート材ホルダーを構造物等に取り付けて支持するための支持手段7が取り付けられている。支持手段7としては、磁石(マグネット)、粘着剤層(例えば両面粘着テープ)等を利用することができる。
【0017】
カバー3は、内部に2個のボール5を収納する空間9が形成された概略容器状であり、上端部は前記基板2と結合一体化されているが、側部および下部は基板2から分離している。前記ボール収納用空間9の底面9aは、下側ほど基板2に近づくように傾斜した傾斜面として形成されている。そして、この底面9aの上部には、より傾斜が急な傾斜壁面9bが接続されている。傾斜壁面9bの上端部には逆方向に傾斜した傾斜面9cが接続され、さらにこの傾斜面9cの上端部には天井面9dが接続されている。ボール収納用空間9は、これら傾斜面によって凹状に形成されている。なお、ボール収納用空間9内に設けられた前記仕切り8は、上記カバー3内面に固定した状態で、図3に示すように、カバー3の内面中央部に設けられている。
【0018】
カバー3と基板2との間には、その上端の結合部から下方に向かって、図1、図2に示すような隙間10が形成されている。隙間10の幅は、保持されるシート材が楽に通過できる大きさであり、その上部は、幅がほぼ同じ溝状であるが、下部はラッパ状に開いている。これは、下側からの挿入を楽にするためである。
【0019】
カバー3の外面は、図1、図3、図4、図5に示すように、上下中間部が膨出した凸形状に形成され、その上部には、肉厚調節のための切り込み部12,12が形成されている。また、カバー3の上端部には、アリ溝状の結合凹部14が形成され、これに前記基板2の断面概略台形状に形成された結合部15が嵌合した状態で固定されている。これにより、基板2とカバー3とが一体化している。
【0020】
ボール5は、適度の重量と強度を備えたボールであり、好ましくは鋼球が使用される。場合によっては、鋼球のかわりに銅、真鍮、プラスチック、セラミック、ガラス等の玉を採用することもできる。ボールの大きさは使用条件によって適当なものを選べばよいが、通常のメモ用紙や伝票等を保持する場合は、例えばパチンコ玉程度の大きさとするのが適当である。
【0021】
ボールとして鋼球を使用する場合、その表面は研磨した光沢面としておいてもよく、サンドブラスト処理等により微細凹凸の梨地状にしておいてもよい。光沢面としておけば、シート材が滑り易いので傷つきにくく、挿入、離脱も円滑に行える。逆に、梨地状としておけば、摩擦力が増えるので、保持が強固になることが期待できる。
【0022】
このシート材ホルダー1は、壁や柱等の建築構造物や、冷蔵庫、金庫等の家具の外面、ボードの表面等を利用して固定支持し使用される。シート材ホルダー1の支持には、前記マグネット、粘着層等の支持手段7を利用すればよいが、シート材ホルダー1の上部に孔やリング状の係合手段を設けて、これを釘やピンに引っ掛けて吊り下げてもよい。
【0023】
このシート材ホルダー1で紙片やプラスチック板等のシート材Sを保持するには、図2に示すように、シート材Sをホルダー1の下側の隙間もしくは側部の隙間から基板2に沿ってスライドさせ、内部に挿入すればよい。挿入されたシート材は、自重で基板2に密着しているボール5,5を押しのけて該ボールと基板2との間に嵌まり込む。すると、傾斜面9bに沿って移動するボール5が重力によりこのシート材を基板2の表面に押し付けて保持するのである。なお、支持手段7がマグネットである場合は、当該マグネットと支持体(例倉庫等)との間にも別のシート材を保持することができるので便利である。
【0024】
ホルダー1に保持しているシート材を取り外すには、該シート材Sを横方向又は下方向に引っ張ればよい。すると、該シート材を押えているボール5が転動するので、シート材を容易に引き抜くことができる。シート材を押えているものがボールで、シート材に点接触しているので、全方向への転動が容易であり、シート材に無理な力を与えずに離脱させることができる。なお、シート材を抜き取る場合は、下向きよりも横向きに引っ張るほうがボールの抵抗が少ないため、簡単である。
【0025】
以上の説明では、シート材Sとして、紙、プラスチック板等を例にとって説明したが、このシート材ホルダーは、紙やプラスチック板に限らず、金属板その他の材質の薄板でも保持することができる。
【0026】
例えば、図6(a)に示すような金属板製の定規Kの保持に使用しても便利である。特に、対象となる定規Kの端部に引っ掛け用の穴Hが設けられている場合は、図6(b)に示すように、この穴H内にボール5が嵌まり込んで保持するため、保持がきわめて確実かつ強固となる。この状態から抜き取る場合は、定規を少し持ち上げればボールの嵌合が浅くなるため、横方向に簡単に抜き取ることができる。
【0027】
図7(a)、(b)は上記と若干異なる形態を表すもので、上記実施形態のものよりも幅が大きくなっている。このように、ホルダー1の幅を広げてボール5,5の間隔を大きくすれば、幅の広いポスター等の保持がより確実となる。
【0028】
なお、以上の説明では、ボールが2個の実施形態について述べたが、場合によっては1個だけでもよく、3個以上としてもよい。ボール同士の間隔を大きくしておけば、大きなシート材でも確実に保持できる。また、基板2やカバー3は、透明な材料で製作すれば、内部の状態が見えるので便利であるが、不透明な材料で製作しておけば、いたずらされにくいという利点がある。
【符号の説明】
【0029】
1 シート材ホルダー
2 基板
3 カバー
5 ボール
7 支持手段
8 仕切り
9 空間
10 隙間
S シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦板状の基板と、該基板の表面を覆うように基板に取り付けられた容器状のカバーと、前記基板に沿って上下移動自在に前記カバー内に収納されたボールとを備え、前記カバーの底板は、下側ほど前記基板側に近づくような傾斜板として形成されるとともに、カバーの下端部及び側縁部と前記基板との間に、シート材を挿入および引き出しできるスリットが形成されていることを特徴とするシート材ホルダー。
【請求項2】
カバー内に2個のボールが横に並べて収納されており、両ボールの間に縦方向の仕切りが設けられている請求項1に記載のシート材ホルダー。
【請求項3】
基板の背面に、該基板を壁等の固定物に取り付けて支持することのできる磁石又は粘着剤層からなる支持手段が設けられている請求項1又は2に記載のシート材ホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−99852(P2013−99852A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213053(P2011−213053)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(397054716)光ナノテック株式会社 (17)
【Fターム(参考)】