説明

シート材型電池の製造方法、シート材型電池及びシート材型単電池を組み合わせる組電池

【課題】シート材型電池において、簡単な構成で電池外形を規制できるようにすることである。
【解決手段】シート材型電池10は、ラミネートフィルムを成形して電池の外形とするシート材ケース12と、シート材ケース12の内部に収納される電池用発電要素14と、電池用発電要素14の電極体に接続され、シート材ケース12の外側に引き出される電極端子16と、樹脂成形によるシート材ケース12の補強材30とを備える。補強材30は、シート材ケース12の周辺部における枠形状の枠体部32と、枠体部32の向かい合う辺を結ぶ複数のリブ部34とからなる。補強材30を含めたシート材型電池10の外形寸法精度は、枠体部32、リブ部34を樹脂成形する金型精度で定めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材で電池用発電要素を包み込み、電池用発電要素から両電極を外部に引き出し、シート材の端部を封止して形成されるシート材型電池の製造方法、シート材型電池及びシート材型単電池を組み合わせる組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の電子機器の発達に伴い、電子機器の小型化、省スペースのニーズが高まって、これに用いる電池にも薄型化や可撓性が求められている。そこで、シート状のラミネート材を用いて電池用発電要素を気密に封止することが行われる。例えば、シート状のラミネート材として、ポリエチレン層とアルミニウム箔層とポリエチレン層との3層構造のものを用い、発電要素を内部に収納し、電極を外に引き出してリチウムイオン電池やニッケル水素電池等を形成することが行われる。
【0003】
これらの電池をシート材型電池と呼ぶことにすれば、シート型電池は、形状の自由度を有し、小型軽量に適しているが、シート状のラミネート材を用いるため、剛性が余り高くなく、電池の外形寸法の精度はあまりよくない。また、例えば電池用発電要素の内部反応により外形の膨張を起こしやすい。特許文献1には、電池パックとしての剛性を高めるため、合成樹脂を用いて形成されたパック筐体に金属製の補強板を貼り付け、その筐体内にラミネート製の電池ケースを格納することが開示される。
【0004】
【特許文献1】特開2001−307703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シート材型電池1つでは電力が不足のときは、ラミネート材型単電池を複数整列配置等で積層し、直列又は並列等の接続を用いて組電池とすることが行われる。例えば車両用電源として用いるときは、数十個の単電池を積層して用いられる。
【0006】
このような場合、ラミネート材型単電池の外形寸法がばらつくと、組電池の外形に影響を及ぼす。1例で計算すると、80個の単電池を整列配置する場合、各単電池の寸法がそれぞれ0.1mmずつ変化したとすると、組電池では8mmもの変化となる。電池用発電要素の内部反応による外形の膨張は0.1mmより大きいこともあるので、単電池をそのまま積層するだけでは組電池が車両等の所定の設置場所に納まらないことが起こる。
【0007】
特許文献1のように補強板付パック筐体にラミネート材型単電池をそれぞれ収納することも考えられるが、補強板付パック筐体の製造が複雑で、コストがかかる。また、組電池全体を外側から拘束板及び拘束帯等で拘束し、電池用発電要素の内部反応による外形の膨張を抑えることも行われているが、拘束構造が複雑となる。このように、従来技術においては、シート材型電池の外形の規制が困難である。
【0008】
本発明の目的は、簡単な構成で電池外形の規制を行うことができるシート材型電池の製造方法、シート材型電池及びシート材型単電池を組み合わせる組電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るシート材型電池製造方法は、シート材で電池用発電要素を包み込み、電池用発電要素から両電極を外部に引き出し、シート材の端部を気密に封止して収納し、略扁平矩形の電池体を形成する工程と、電池体を補強材成形金型の中に配置し、電池体の矩形周辺に沿って気密封止端部を挟み込む枠体部と、枠体部の向かい合う辺を電池体の扁平面に沿って結ぶリブ部とからなる補強材を樹脂成形するとともに、電池体の扁平面で、樹脂成形が行われない部分を金型内壁で加圧して寸法成形する工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るシート材型電池製造方法において、電池体は、充放電使用により扁平面を外側に膨張するように変形し、両電極の引き出し方向に沿った変形よりも両電極の引き出し方向に直交する方向に沿った変形が大きく、リブ部は、両電極の引き出し方向に直交する方向に沿って配置されることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るシート材型電池製造方法において、樹脂成形に用いられる樹脂は、ガラス繊維強化樹脂であることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るシート材型電池は、シート材で電池用発電要素を包み込み、電池用発電要素から両電極を外部に引き出し、シート材の端部を気密に封止して収納する略扁平矩形の電池体と、電池体の矩形周辺に沿って気密封止端部を挟み込む枠体部と、枠体部の向かい合う辺を電池体の扁平面に沿って結ぶリブ部とを一体として樹脂成形により形成された補強材と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るシート材型単電池を組み合わせる組電池は、略扁平矩形の単電池を、扁平面が互いに向かい合うように複数整列配置する組電池であって、単電池は、シート材で電池用発電要素を包み込み、電池用発電要素から両電極を外部に引き出し、シート材の端部を気密に封止して収納する略扁平矩形の電池体と、電池体の扁平面に平行に電池体の矩形周辺に沿って気密封止端部を挟み込む枠体部と、枠体部の向かい合う辺を電池体の扁平面に沿って結ぶリブ部とを一体として樹脂成形により形成された補強材と、を備え、樹脂成形により寸法が管理される補強材の外形寸法の積算により全体の寸法が決まることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記構成により、電池体は、金型の中に配置されて、電池体の周りに補強材が樹脂成形され、樹脂成形が行われない電池体の扁平面は金型内壁で加圧されて寸法成形される。つまり、金型の内壁および樹脂成形の際の加圧により電池体の外形が規制され、その状態で枠体部とリブ部とが補強材として一体成形される。したがって、一体化した補強材で電池体の外形の膨張等を効果的に抑制するとともに、補強材を含めたシート材型電池の外形寸法は精度の高い金型精度で定まる補強材の外形寸法となるので、簡単な構成で電池外形の規制を行うことができる。
【0015】
また、リブ部は、電池体の変形の大きい方向に沿って配置されるので、電池体の外形の膨張等をより効果的に抑制できる。また、樹脂はガラス繊維強化樹脂とするので、補強材の剛性をより高めることができる。
【0016】
また、組電池は、補強材を含めた外形寸法が精度の高い金型精度で定まる補強材の外形寸法となるシート材型単電池を複数整列配置するので、組電池全体の寸法精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、シート材型電池としてリチウムイオン電池について説明するが、シート材を用いて電池を形成するものであれば、これ以外の電池でもよく、例えばニッケル水素電池、あるいはキャパシタを電池として用いるものであってもよい。また、電池用発電要素の構成は2枚の電極体の間にセパレータをはさんで重ね合わせ、これをロール状に巻いたものとして説明するが、これらを平板状に積層する構成のものでもよい。また、シート材として、プラスチックフィルムと金属箔とプラスチックフィルムの3層ラミネートシート材について説明するが、電池の構成によってはプラスチックフィルム層を適当に省略することができる。また、シート材及びシート材の合わせ目に配置される接着材の材質、厚み等は、例示であって、他の材質、厚みであってもよい。
【実施例1】
【0018】
図1は、シート状のラミネート材を用いて電池用発電要素を気密に封止するシート材型電池10の平面図及び側面図である。平面図においては、一部を破断し、シート材型電池10の内部構造を示している。シート材型電池10は、ラミネートフィルムを成形して電池の外形とするシート材ケース12と、シート材ケース12の内部に収納される電池用発電要素14と、電池用発電要素14の電極体に接続され、シート材ケース12の外側に引き出される電極端子16と、樹脂成形によるシート材ケース12の補強材30とを備える。補強材30は、シート材ケース12の周辺部における枠形状の枠体部32と、枠体部32の向かい合う辺を結ぶ複数のリブ部34とからなる。
【0019】
シート材ケース12の内部に収納される電池用発電要素14は、シート材型電池10の機能部分であるので、これについて最初に説明し、次に、シート材ケース12の気密封止構造を、次いで、補強材30の構成について説明する。
【0020】
電池用発電要素14は、リチウムイオン電池として知られている発電構造を実現する要素で、活物質が塗布された2枚の電極体の間にセパレータをはさんで重ね合わせ、これをロール状に巻き、これに電解液を浸み込ませたものである。2枚の電極体のうち、一方の電極体はアルミニウム箔が下地材料で、その表面にコバルト酸リチウム等のリチウム含有複合化合物である活物質が塗布され、他方の電極体は銅箔が下地材料で、その上にリチウムイオンを吸蔵させた炭素材等の活物質が塗布される。セパレータは溶媒で可塑化されたポリマー電解質が用いられる。そして、電解液を注入して一方の電極体とセパレータと他方の電極体との間に浸み込ませることで、リチウムイオン電池の発電要素としての機能を発揮するようになる。電解液には、LiClO、LiPF等のリチウム塩を溶解した有機溶媒が用いられる。なお、2種類の電極体及びセパレータをロール状に巻く方法の他に、これらをシート状のまま積層する構成としてもよい。
【0021】
なお、電池用発電要素14は、一般的に熱に弱いので、以後の補強材形成工程においては、電池用発電要素14の部分に樹脂成形等の熱が余分に加わらないように配慮することが好ましい。また、耐熱セパレータ等を用いて、電池用発電要素14の耐熱性を向上させることもできる。
【0022】
電極端子16は、電池用発電要素14の2枚の電極体にそれぞれ接続される導電端子で、電池用発電要素14から電力を外部に引き出す機能を有する。具体的には、電池用発電要素14において、一方の電極体のアルミニウム箔に正の電極端子が溶接等で接続され、他方の電極体の銅に負の電極端子が溶接等で接続される。電極端子16の厚みは、例えば1mm程度とすることができる。
【0023】
次に、シート材ケース12の封止構造について説明する。図2は、電極端子16が接続された電池用発電要素14をシート材ケース12の中に収納する様子を示す図である。図3は、シート材型電池10の封止部分を典型的に示すものとして、図1のA−A線に沿って電極端子16近傍の断面構造を示す図である。
【0024】
シート材ケース12は、ラミネートフィルム20を電池用発電要素14の外形に概略倣うような形状に成形したもので、具体的には1枚のラミネートフィルム20の素材を折り返して上下2つの面を有するシートのようにし、上面側のシートには電池用発電要素14の上面形状に倣うような凹面形状を成形し、下面側のシートには電池用発電要素14の下面形状に倣うような凹面形状を成形し、上面側のシートの周辺端部と下面側のシートの周辺端部とを向かい合わせ、その一対の凹面形状の間に電池用発電要素14を配置できるように合わせる。そして、合わせ目に適当な封止代を取って、外形を切断等により成形する。このようにして封止前のシート材ケース12を得ることができる。勿論、ラミネートフィルム20からなる複数のシートを適当な凹面形状と封止代を有するように成形し、それらを組み合わせて、シート材ケース12とすることもできる。
【0025】
すなわち、シート材ケース12は、その中央部に、一対の凹部を向かい合わせ、外形でいえば一対の凸部となるふくらみ部11を有し、そのふくらみ部11の周辺にラミネートフィルム20の上下シートが向かい合う鍔部13を有する外形を備える。このふくらみ部11の内部空間が電池用発電要素14の収納空間となり、鍔部13がラミネートフィルム20の上面側シートと下面側シートとを互いに接着して気密封止する部分となり、ふくらみ部11が扁平面となる。そして、鍔部13には、気密封止用の接着材28が配置される。
【0026】
ラミネートフィルム20は、図3に示すように、表面保護用のプラスチックフィルム22と、ガスバリア層として金属箔24と、内部保護用のプラスチックフィルム26を3層に積層したものである。具体的には、約30μm厚さのポリプロピレンフィルムと、約60μm厚さのアルミニウム箔と、約15μm厚さのナイロンフィルムを密着積層したものを用いることができる。ここで、ポリプロピレンフィルム層は表面保護用のプラスチックフィルム22としてシート材ケース12の外表面側となり、ナイロンフィルムは内部保護用のプラスチックフィルム26として電池用発電要素14側となるように配置される。
【0027】
ラミネートフィルム20のナイロンフィルム側には、さらに熱溶着性の接着材28の層が設けられる。具体的には、厚さ約30μmのポリプロピレンを用いることができる。この厚みのポリプロピレンは、例えば、220℃、50atmの高温高圧を印加することで、数秒程度で溶融し、2つのプラスチックの間に挟んで溶融させることで、この2つのプラスチックと一体となって強固に接着することができる。接着材28は、ラミネートフィルム20の全面に渡って設けてもよいが、少なくともシート材ケース12の周辺の端部において気密封止を行うラミネートフィルム20の合わせ目に設けられる。すなわち、シート材ケース12の鍔部13にそって、周辺ぐるりに、内部保護用プラスチックフィルム26であるナイロンフィルムの表面に、接着材28が配置される。
【0028】
シート材ケース12の鍔部13において、電極端子16の部分に設けられる介在層18は、金属材料である電極端子16とラミネートフィルム20との間に設けられ、その間の気密封止を十分にする機能を有する。すなわち、熱溶着性のポリプロピレンは、プラスチック材料同士の接着には好適であるが、金属材料とプラスチック材料との間の接着にはそのままでは不十分となる。そこで介在層を用い、金属材料−介在層18−接着材28−ナイロンの構造とし、介在層18と接着材28とを加熱溶融することで、これらの相乗効果で金属材料とナイロンとの間の気密封止を確保するものである。かかる介在層18としては、加熱加圧下で溶融し、接着材との適合性によいプラスチックフィルムが好ましく、具体的には、変性ポリプロピレンを用いて、電極端子16の根元部の周囲をくるむように配置することができる。
【0029】
したがって、接着材28が配置されたシート材ケース12を開いた状態で、電極端子16付き電池用発電要素14をセットし、シート材ケース12を閉じ、その後、鍔部13を加熱されたプレス板等で加圧加熱し、接着材28及び介在層18を溶融させることで、合わせ目を熱溶着できる。このようにして、電池用発電要素14から電極端子16を外部に引き出し、シート材ケース12を気密に封止できる。その後、電解液注入が行われて、電池としての機能を発揮する。電解液注入は、シート材ケース12に適当な注入口を設け、電解液注入装置を用いて注入口から電解液を電池用発電要素14に向けて注入し、その後注入口をふさぐことで行うことができる。
【0030】
補強材30は、後述するように、いわゆるインサートモールドの技術を用い、電池用発電要素14等を含むシート材ケース12と一体となるように樹脂成形されるものである。図4は、シート材ケース12を省略して補強材30のみを抜き出し、部分斜視図で示したものである。このように、補強材30は、シート材ケース12の鍔部13に沿い、その部分を補強する枠形状の枠体部32と、枠体部32の向かい合う辺を接続し、シート材ケース12の上下のふくらみ部11、すなわち上下扁平面をそれぞれ補強する複数のリブ部34とから構成される樹脂成形部材である。補強材30の材質としては、ガラス繊維で強化されたポリプロピレン等を用いることができる。
【0031】
リブ部34は、シート材ケース12のふくらみ部11にそって配置されるが、その配置方向は、シート材型電池10を作動させたときの扁平面の膨張を効果的に抑制できる方向に行われることが好ましい。上記の電池用発電要素14のように、2枚の電極体の間にセパレータをはさんで重ね合わせ、これをロール状に巻くものでは、電池の作動によって、ロールの巻き軸に垂直な方向に扁平面が膨張しやすい。すなわち、電極端子16をロールの巻き軸方向に引き出すものとすれば、電極端子16の引き出し方向に直交する方向に扁平面が膨張しやすいので、リブ部34は、この方向に配置されるのが好ましい。
【0032】
図5は、かかる構成のシート材型電池10の製造方法についてのフローチャートである。以下に、このフローチャートを用いて、シート材型電池10を製造する手順を説明する。
【0033】
発電要素形成工程(S10)は、上記のように、活物質が塗布された2枚の電極体の間にセパレータをはさんで重ね合わせ、これをロール状に巻き、電解液をまだ浸みこませていない電池用発電要素14を形成する工程である。電極接続工程(S12)は、2つの電極体にそれぞれアルミニウム、銅の電極端子16を溶接等で接続し、電池用発電要素14から外部に引き出す工程である。
【0034】
次に、シート材で包み込む(S14)。そして、電池用発電要素14を内部に収納し、電極端子16を外部に引き出した状態で、シート材ケース12を気密に封止する。具体的には、上記のように、接着材28が配置されたシート材ケース12を開いた状態で、電極端子16付き電池用発電要素14をセットし、シート材ケース12を閉じる。そして、鍔部13を加熱されたプレス板等で加圧加熱し、接着材28等を溶融させることで、合わせ目を熱溶着し、気密に封止する。このようにしてまだ補強材30が設けられていない電池体が形成される。なお、電解液注入は、この段階で行ってもよく、あるいは補強材30を形成する以後の工程が終了した後に行ってもよい。
【0035】
次に、補強材がまだ設けられていない電池体が、適当な射出成形装置の型の中に配置される(S18)。ここで補強材30を形成するための金型の説明をする。図6は、補強材成形用の金型40の断面図で、金型40は、パーティションライン41で分かれる下金型42と上金型44とから構成される。そして、それぞれは、シート材ケース12のふくらみ部11を受け入れる凹部50を有する。凹部50の大きさは、シート材ケース12のふくらみ部11や鍔部13の外形より小さめに設定される。そして、図示されていない樹脂注入口から注入される樹脂が流れ込むキャビティ52を有する。
【0036】
キャビティ52は、電池体におけるシート材ケース12の鍔部13に沿ってその上下及び側面に設けられる枠体用キャビティ54と、枠体用キャビティ54の向かい合う辺を接続するリブ用キャビティ56とを含む。凹部50とキャビティ52とは、ともに金型40の内面のくぼみであるが、後者には樹脂が注入されるが、前者には樹脂が注入されない。すなわち、凹部50は図示されていない樹脂注入口とは直接には接続されず、さらに、電池体におけるシート材ケース12のふくらみ部11と凹部50との間の隙間がないので、キャビティ52から樹脂が流れ込むこともないのである。
【0037】
したがって、凹部50は、金型40の内部に電池体を配置し、金型40を閉じたとき、電池体におけるシート材ケース12のふくらみ部11等を金型内壁によって金型の締め付け圧で加圧し、ふくらみ部11等の寸法を規制する寸法成形機能を有する。
【0038】
図7は金型を開いて、まだ補強材30が設けられていない電池体36を下金型42にセットする様子を示す図である。下金型42の凹部50は、電池体36の図では現れていない下側のふくらみ部11に対応する。枠体用キャビティ54は、電池体36の鍔部13の下面側と側面側に対応して設けられ、リブ用キャビティ56は、凹部50の一部にさらに掘り下げられて設けられている。この下金型42に、図7の白抜き矢印のように、電池体36が置かれ、その上に上金型44がかぶせられ、しっかり締め付けられて金型40の内部に電池体36が配置される。
【0039】
再び図5に戻り、補強材30の樹脂成形と、加圧寸法成形が行われる(S20)。具体的には、凹部50の金型内壁によってふくらみ部11等が加圧され、凹部寸法で定まる外形寸法に扁平面が規制され、その状態で、金型40の樹脂注入口から溶融樹脂が注入され、加圧されて、キャビティ52に流れ込む。溶融樹脂も加圧されているので、凹部50の金型内壁によって規制されていないふくらみ部11等も、この加圧溶融樹脂により押し付けられ、余分なふくらみが規制される。そして、キャビティ内で架橋反応を進めることで、キャビティ52の枠体用キャビティ54に対応する部分は、電池体36の鍔部13を挟み込む枠体部32として樹脂成形が行われ、リブ用キャビティ56に対応する部分は、枠体部32の向かい合う辺を結ぶ上下複数のリブ部34として樹脂成形が行われる。
【0040】
この樹脂成形の樹脂注入量、加圧、温度等のシーケンスは、図示されていない射出成形装置における成形制御部の制御の下で実行される。樹脂は上記のように、ガラス繊維強化スチレン樹脂を用いることができる。その場合の成形条件は、一例を上げると、溶融樹脂温度を220℃、加圧を50atm、注入時間を5sec、注入時間も含めた加圧時間を15sec等とすることができる。
【0041】
こうして、枠体部32と複数のリブ部34とが一体として樹脂成形される。こうして、電池体36の気密封止端部を挟み込んで補強し、さらに電池体36のふくらみ部11、すなわち扁平面のふくらみやすい方向を補強する補強材30が、電池体36と一体化して樹脂成形される。
【0042】
樹脂成形が十分行われれば、金型40から接着・挟み込みが行われた電池を取り出す型外し(S22)が行われ、補強材30と一体化したシート材型電池が得られる(S24)。こうして、図1に示すシート材型電池が出来上がる。
【0043】
このようにして出来上がったシート材型電池10は、補強材30も含めた外形寸法は、金型40の凹部50及びキャビティ52の寸法で定まる。したがって、金型寸法を精度よくすることで、補強材30を含めたシート材型電池10の外形寸法を、例えば数十分の1mmあるいはμm程度の精度のものとすることができる。
【実施例2】
【0044】
外形寸法が金型精度で定まるシート材型電池10を用いることで、寸法精度のよい組電池を得ることができる。図8は、図1で説明したシート材型電池10を、扁平面が互いに向かい合うように複数個整列配置した組電池60の一部を示す図である。いま、シート材型電池10の整列配置される方向に沿った寸法をH±Δhとすると、図8の例においては、この寸法は、シート材型電池10のリブ部34の外形寸法で定まる。すなわち、図6で説明した金型40のリブ用キャビティ56の寸法で定まる。
【0045】
いま、シート材型電池10をn個整列配置して組電池60を構成すると、組電池60の整列配置される方向の総寸法は、n×(H±Δh)となる。例えば、n=80として、従来技術では、補強材がなく、1つのシート材型電池の寸法精度が動作中も含め、せいぜい±0.05mmであり、組電池の総寸法の精度は、±4mmが精一杯である。これに対し、金型精度は格段によく、補強材30の寸法精度は±数μmに抑えることも可能である。したがって、組電池60の総寸法の精度は、±数分の1mm程度あるいはそれ以下に抑えることができる。
【0046】
組電池60は、図8に示す直列配置のみならず、直列配置したものをさらに並列配置して用いてもよい。そのような場合等には、組電池の総寸法が枠体部32の寸法精度で定まることにもなるが、いずれにせよ、高精度の外形寸法で組電池を構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係るシート型電池、およびそれを整列配置させた組電池は、車両用の電源に用いることができる。また、車両以外の用途、例えば、家電製品に用いることができ、あるいは産業用装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る実施の形態におけるシート材型電池の平面図及び側面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、電極端子が接続された電池用発電要素をシート材ケースの中に収納する様子を示す図である。
【図3】図1のA−A線に沿った断面の構造図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、シート材ケースを省略して補強材のみを示した図である。
【図5】本発明に係る実施の形態におけるシート材型電池の製造方法のフローチャートである。
【図6】本発明に係る実施の形態における補強材成形用金型の断面図である。
【図7】本発明に係る実施の形態において、電池体を下金型にセットする様子を示す図である。
【図8】本発明に係る他の実施の形態において、シート材型電池を複数個整列配置した組電池の一部を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10 シート材型電池、11 ふくらみ部、12 シート材ケース、13 鍔部、14 電池用発電要素、16 電極端子、18 介在層、20 ラミネートフィルム、22,26 プラスチックフィルム、24 金属箔、28 接着材、30 補強材、32 枠体部、34 リブ部、36 電池体、40 金型、41 パーティションライン、42 下金型、44 上金型、50 凹部、52 キャビティ、54 枠体用キャビティ、56 リブ用キャビティ、60 組電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材で電池用発電要素を包み込み、電池用発電要素から両電極を外部に引き出し、シート材の端部を気密に封止して収納し、略扁平矩形の電池体を形成する工程と、
電池体を補強材成形金型の中に配置し、電池体の矩形周辺に沿って気密封止端部を挟み込む枠体部と、枠体部の向かい合う辺を電池体の扁平面に沿って結ぶリブ部とからなる補強材を樹脂成形するとともに、電池体の扁平面で、樹脂成形が行われない部分を金型内壁で加圧して寸法成形する工程と、
を備えることを特徴とするシート材型電池製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシート材型電池製造方法において、
電池体は、充放電使用により扁平面を外側に膨張するように変形し、両電極の引き出し方向に沿った変形よりも両電極の引き出し方向に直交する方向に沿った変形が大きく、
リブ部は、両電極の引き出し方向に直交する方向に沿って配置されることを特徴とするシート材型電池製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のシート材型電池製造方法において、
樹脂成形に用いられる樹脂は、ガラス繊維強化樹脂であることを特徴とするシート材型電池製造方法。
【請求項4】
シート材で電池用発電要素を包み込み、電池用発電要素から両電極を外部に引き出し、シート材の端部を気密に封止して収納する略扁平矩形の電池体と、
電池体の矩形周辺に沿って気密封止端部を挟み込む枠体部と、枠体部の向かい合う辺を電池体の扁平面に沿って結ぶリブ部とを一体として樹脂成形により形成された補強材と、
を備えるシート材型電池。
【請求項5】
略扁平矩形の単電池を、扁平面が互いに向かい合うように複数整列配置する組電池であって、
単電池は、
シート材で電池用発電要素を包み込み、電池用発電要素から両電極を外部に引き出し、シート材の端部を気密に封止して収納する略扁平矩形の電池体と、
電池体の扁平面に平行に電池体の矩形周辺に沿って気密封止端部を挟み込む枠体部と、枠体部の向かい合う辺を電池体の扁平面に沿って結ぶリブ部とを一体として樹脂成形により形成された補強材と、
を備え、樹脂成形により寸法が管理される補強材の外形寸法の積算により全体の寸法が決まることを特徴とするシート材型単電池を組み合わせる組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−114406(P2006−114406A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302080(P2004−302080)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】