説明

シート構造体の製造装置及び製造方法

【課題】美観性に優れたシート構造体を容易に製造し得るシート構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】製造装置1は、シート2a上に溶融樹脂33cを吐出することにより樹脂製スペーサ2bを形成する吐出機構33と、樹脂製スペーサ2bが形成されたシート2a上に別のシート2aを積層する積層機構31と、温度差低減機構45とを備えている。温度差低減機構45は、吐出機構33から吐出された溶融樹脂33cがシート2aに接触する前に、シート2aの加熱及び溶融樹脂33cの冷却のうちの少なくとも一方を行うことにより溶融樹脂33cと溶融樹脂33cが吐出されるシート2aとの間の温度差を低減する機構である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート構造体の製造装置及び製造方法に関し、詳細には、樹脂製スペーサを介して積層された複数の樹脂シートを備えるシート構造体の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可撓性を有するシートと、そのシートの上に形成された構造体とを有するシート構造体が種々知られている。このようなシート構造体の具体例としては、例えば、下記の特許文献1に開示されているような採光断熱材が挙げられる。
【0003】
特許文献1に開示されている採光断熱材は、透光性を有するベースシートと、ベースシートの上に、樹脂製スペーサを介して間隔をおいて積層された複数の透光性シートとを有する。この採光断熱材では、樹脂製スペーサと透光性シートとにより、ベースシートの上に形成された構造体が構成されている。
【0004】
また、特許文献1には、上記採光断熱材の製造方法として、シート上に溶融樹脂を吐出することにより表面に樹脂製スペーサが形成されたシートを積層する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-80783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のシート構造体の製造方法では、シートの平坦性が低下し、得られるシート構造体の美観性が低くなりがちであるという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、美観性に優れたシート構造体を容易に製造し得るシート構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、シートの平坦性が低下する原因が、シートと溶融樹脂とが接触するときのシートと溶融樹脂との温度差が大きいことにあることを見出し、その結果、本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係るシート構造体の製造装置は、樹脂製スペーサを介して積層された複数の樹脂シートを備えるシート構造体の製造装置である。本発明に係るシート構造体の製造装置は、吐出機構と、積層機構と、温度差低減機構とを備えている。吐出機構は、シート上に溶融樹脂を吐出することにより樹脂製スペーサを形成する機構である。積層機構は、樹脂製スペーサが形成されたシート上に別のシートを積層する機構である。温度差低減機構は、吐出機構から吐出された溶融樹脂がシートに接触する前に、シートの加熱及び溶融樹脂の冷却のうちの少なくとも一方を行うことにより溶融樹脂と溶融樹脂が吐出されるシートとの間の温度差を低減する機構である。
【0010】
本発明に係るシート構造体の製造装置のある特定の局面では、温度差低減機構は、溶融樹脂の冷却を行う冷却機構を含む。
【0011】
本発明に係るシート構造体の製造装置の他の特定の局面では、冷却機構は、吐出機構から吐出された溶融樹脂が、シートに接触する前に、外周面に接触するように設けられている冷却ロールである。
【0012】
本発明に係るシート構造体の製造装置の別の特定の局面では、冷却ロールの外周面には、周方向に沿って延びており、溶融樹脂が搬送される搬送溝が形成されている。この構成によれば、冷却ロールと溶融樹脂との接触面積を大きくできる。従って、溶融樹脂を効率的に冷却することができる。
【0013】
本発明に係るシート構造体の製造装置のさらに他の特定の局面では、温度差低減機構は、溶融樹脂が吐出されるシートを加熱する加熱機構を含む。
【0014】
本発明に係るシート構造体の製造装置のさらに別の特定の局面では、加熱機構は、溶融樹脂が吐出されるシートに熱風を吹き付ける熱風吹き付け機構である。
【0015】
本発明に係るシート構造体の製造方法は、樹脂製スペーサを介して積層された複数の樹脂シートを備えるシート構造体の製造方法である。本発明に係るシート構造体の製造方法は、スペーサ形成工程と、シート積層工程とを備えている。スペーサ形成工程は、シート上に溶融樹脂を吐出することにより樹脂製スペーサを形成する工程である。シート積層工程は、樹脂製スペーサが形成されたシート上に別のシートを積層する工程である。本発明に係るシート構造体の製造方法では、樹脂製スペーサ形成工程において吐出された溶融樹脂がシートに接触する前に、シートの加熱及び溶融樹脂の冷却のうちの少なくとも一方を行うことにより溶融樹脂と溶融樹脂が吐出されるシートとの間の温度差を低減する。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、吐出機構から吐出された溶融樹脂がシートに接触する前に、シートの加熱及び溶融樹脂の冷却のうちの少なくとも一方を行うことにより溶融樹脂と溶融樹脂が吐出されるシートとの間の温度差が低減される。従って、シートの平坦性の低下を抑制でき、高い美観性を有するシート構造体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】採光断熱材の一部分を拡大した略図的断面図である。
【図2】シート構造体の製造装置の略図的構成図である。
【図3】テーブルの略図的平面図である。
【図4】図3の線IV−IVにおける略図的断面図である。
【図5】図3の線V−Vにおける略図的断面図である。
【図6】冷却ロールの模式的斜視図である。
【図7】ベースシートを固定する工程を説明するためのシート構造体の製造装置の略図的構成図である。
【図8】ベースシートを固定する工程を説明するためのシート構造体の製造装置の一部分を拡大した略図的構成図である。
【図9】ベースシートを固定する工程を説明するためのシート構造体の製造装置の一部分を拡大した略図的構成図である。
【図10】ベースシートを固定する工程を説明するためのシート構造体の製造装置の一部分を拡大した略図的構成図である。
【図11】ベースシートを固定する工程を説明するためのシート構造体の製造装置の一部分を拡大した略図的構成図である。
【図12】ベースシート上に樹脂製スペーサを形成する工程を説明するためのシート構造体の製造装置の一部分を拡大した略図的構成図である。
【図13】樹脂製スペーサが形成されたベースシートの略図的平面図である。
【図14】図14(a)は、溶融樹脂の吐出量を表すタイムチャートである。図14(b)は、圧送ポンプの圧力を表すタイムチャートである。
【図15】実施例で作製した採光断熱材の平面視写真である。
【図16】比較例で作製した採光断熱材の平面視写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図2に示す製造装置1を例に挙げて説明する。なお、本実施形態の製造装置1は、シート構造体の一種である採光断熱材を製造するための装置である。但し、本発明のシート構造体の製造装置は、採光断熱材以外のシート構造体を製造するための装置であってもよい。すなわち、本発明のシート構造体の製造装置は、樹脂製スペーサを介して積層された複数の樹脂シートを備えるシート構造体を製造するための装置である限り、特に限定されない。
【0019】
(採光断熱材2)
まず、図2に示す本実施形態の製造装置1について説明する前に、製造装置1により製造される採光断熱材2について、図1を参照しつつ説明する。
【0020】
図1に示すように、採光断熱材2は、矩形状の複数の樹脂シート2aを備えている。本実施形態では、樹脂シート2aは、透光性を有している。すなわち、樹脂シート2aは、透光性シートである。複数の樹脂シート2aは、相互に平行に形成されている線状の複数の樹脂製スペーサ2bを介して積層されている。このため、隣り合う樹脂シート2a間には、空気層が形成されている。従って、高い断熱効果を得ることができる。
【0021】
複数の樹脂シート2aには、最下層に位置するベースシート2a1と、その他のシート2a2とが含まれている。ベースシート2a1と、シート2a2とは、同一の種類のシートであってもよいし、別の種類のシートであってもよい。
【0022】
(製造装置1)
次に、図2〜図5を参照しつつ、採光断熱材2の製造装置1について詳細に説明する。図2に示すように、製造装置1は、テーブル10を備えている。テーブル10は、駆動機構11に取り付けられている。テーブル10は、この駆動機構11により、x方向に移動可能となっている。なお、駆動機構11の構成は、特に限定されないが、駆動機構11は、例えば、レールと、サーボモーターとにより構成することができる。また、駆動機構11は、搬送ベルトを用いたものであってもよい。この場合、テーブル10をより高速で駆動することができる。従って、採光断熱材2の生産性を高めることができる。
【0023】
図3に示すように、テーブル10の表面10aには、ベースシート2a1が固定される固定領域12が設けられている。本実施形態では、上述のように、ベースシート2a1が矩形状であるため、固定領域12も矩形状である。固定領域12の長さ方向は、x方向に沿っている。
【0024】
図2及び図3に示すように、テーブル10は、テーブル本体13と、矩形状の第1及び第2の吸着部材14,15とを備えている。テーブル本体13は、駆動機構11に接続されている。第1及び第2の吸着部材14,15は、テーブル本体13に取り付けられている。図4及び図5に示すように、吸着部材14,15は、吸着部材本体14a、15aと、多孔体14b、15bとを備えている。多孔体14b、15bは、吸着部材本体14a、15aの上に設けられている。
【0025】
吸着部材本体14a、15aの材質は特に限定されない。吸着部材本体14a、15aは、例えば、金属、合金、セラミックなどの硬質かつ、通気性の低い材料により形成される。具体的には、本実施形態では、吸着部材本体14a、15aは、表面にアルマイト処理が施されたAlにより形成されている。
【0026】
図2及び図3に示すように、多孔体14b、15bは、細長形状を有している。具体的には、多孔体14b、15bは、矩形状である。多孔体14b、15bは、多孔体14b、15bの表面がテーブル本体13の表面と面一となるように設けられている。
【0027】
図3に示すように、多孔体14b、15bは、少なくとも一部が固定領域12内に位置するように設けられている。具体的には、多孔体14bは、固定領域12のx方向のx1側に位置する第1の端部12a内に少なくとも一部が位置するように配置されている。多孔体14bは、第1の端部12a内において、y方向に沿って配置されている。
【0028】
多孔体15bは、固定領域12のx方向のx2側に位置する第2の端部12b内に少なくとも一部が位置するように配置されている。多孔体15bは、第1の端部12a内において、y方向に沿って配置されている。
【0029】
多孔体14b、15bは、連続気泡を有する多孔体である。本実施形態では、多孔体14b、15bは、実質的にカーボンからなるポーラスカーボンにより構成されている。
【0030】
多孔体14b、15bの気孔率は、10体積%〜50体積%の範囲内にあることが好ましく、30体積%〜40体積%の範囲内にあることがより好ましい。多孔体14b、15bの平均気孔径は、例えば、1μm〜10μm程度であることが好ましく、3μm〜7μm程度であることがより好ましい。なお、本発明において、「気孔率」とは、アルキメデス法により測定された気孔率をいうものとする。
【0031】
図4及び図5に示すように、吸着部材14,15には、多孔体14b、15bの背面に接続されている連通孔14c、15cが形成されている。図2に示すように、この連通孔14c、15cには、多孔体14b、15bに負圧を与える負圧発生機構としての減圧ポンプ17に接続されている。減圧ポンプ17と、多孔体14b、15bとの間には、ソレノイドバルブ18,19が設けられている。これらソレノイドバルブ18,19を開状態とすることにより、多孔体14b、15bに負圧を与えることができる。一方、ソレノイドバルブ18,19が閉状態である場合は、多孔体14b、15bには、負圧は供給されない。
【0032】
また、連通孔14c、15cには、多孔体14b、15bに正圧を与える正圧発生機構20が接続されている。本実施形態では、この正圧発生機構20と、上述の多孔体14b、15bと、負圧発生機構としての減圧ポンプ17とによって、ベースシート2a1を固定領域12に固定する固定機構25が構成されている。
【0033】
正圧発生機構20は、圧縮空気を供給する圧縮ポンプ21と、圧縮ポンプ21と連通孔14c、15cとの間に配置されているイオン供給機構22とを備えている。このイオン供給機構22により、圧縮ポンプ21から供給される圧縮空気に、イオンが供給される。このため、本実施形態においては、正圧発生機構20からは、圧縮されたイオンエアーが多孔体14b、15bに供給される。
【0034】
正圧発生機構20と、連通孔14c、15cとの間には、ソレノイドバルブ23,24が設けられている。これらソレノイドバルブ23,24を開状態とすることにより、多孔体14b、15bに圧縮されたイオンエアーを供給することができる。一方、ソレノイドバルブ23,24が閉状態である場合は、多孔体14b、15bには、圧縮されたイオンエアーは供給されない。
【0035】
また、製造装置1には、ベースシート供給機構30と、吐出機構33と、積層機構31とが設けられている。このベースシート供給機構30は、ベースシート2a1をテーブル10上に供給するための機構である。ベースシート供給機構30は、ロール30aと、搬送ロール30b〜30fと、吸着機構34と、カッター35とを備えている。ロール30aには、ベースシート2a1が巻回されている。ロール30aは、ベースシート2a1を供給する。搬送ロール30b〜30fは、ロール30aから供給されたベースシート2a1を搬送する。
【0036】
吐出機構33は、樹脂製スペーサ2bを形成するための溶融樹脂を吐出するための機構である。吐出機構33には、溶融樹脂を圧送する圧送ポンプ54を有するホットメルト機50が接続されている。このホットメルト機50から溶融樹脂が吐出機構33へと供給される。ホットメルト機50は、樹脂を溶融するための溶融室50aを備えている。溶融室50aには、溶融室50a内を減圧するための減圧機構51と、溶融室50aに、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを供給するためのガス供給機構52が接続されている。これら減圧機構51、ガス供給機構52により、溶融室50aが、減圧された不活性ガス雰囲気とされている。これにより、溶融樹脂の酸化による劣化が抑制されている。また、溶融室50aと吐出機構33とを接続している配管53も極力短くされている。これによっても、溶融樹脂の酸化による劣化が抑制されている。
【0037】
吐出機構33は、溶融樹脂が吐出される吐出ノズル33aを備えている。この吐出ノズル33aの近傍には、ヒーター33bが配置されている。このヒーター33bによって、吐出ノズル33aが加熱され、所定の温度以上に保持される。これにより、吐出ノズル33aから溶融樹脂がスムーズに流出するようにされている。なお、ヒーター33bは、特に限定されず、例えば、電熱線、赤外線照射機構、温風吐出機構などにより構成することができる。
【0038】
積層機構31は、樹脂製スペーサ2bが形成されたシートの上に、別のシート(本実施形態では、シート2a2)を積層するための機構である。積層機構31は、ロール32aと、搬送ロール32b〜32fと、吸着機構36と、カッター37とを備えている。ロール32aには、シート2a2が巻回されている。ロール32aは、シート2a2を供給する。搬送ロール32b〜32fは、ロール32aから供給されたシート2a2を搬送する。
【0039】
積層機構31には、昇降機構38が接続されている。この昇降機構38は、積層機構31をテーブル10に対して、昇降させる機構である。
【0040】
製造装置1には、温度差低減機構45が設けられている。この温度差低減機構45は、吐出機構33から吐出された溶融樹脂がシート2aに接触する前に、シート2aの加熱及び溶融樹脂の冷却のうちの少なくとも一方を行うことにより溶融樹脂と溶融樹脂が吐出されるシート2aとの間の温度差を低減する機構である。具体的には、本実施形態では、温度差低減機構45は、吐出機構33から吐出された溶融樹脂がシート2aに接触する前に、シート2aの加熱及び溶融樹脂の冷却の両方を行う機構である。もっとも、温度差低減機構45は、シート2aの加熱及び溶融樹脂の冷却のうちの一方のみを行うものであってもよい。
【0041】
温度差低減機構45は、シート2aに接触する前の溶融樹脂を冷却する冷却機構としての冷却ロール44と、加熱機構46とを有する。冷却ロール44は、吐出機構33から吐出された溶融樹脂が、シート2aに接触する前に、外周面44aに接触するように設けられている。冷却ロール44は、回転可能に支持されている。
【0042】
詳細には、図6に示すように、冷却ロール44の外周面44aには、周方向に沿って形成された複数の搬送溝44bが形成されている。溶融樹脂は、この搬送溝44bに導かれ、搬送溝44bによって搬送される。
【0043】
加熱機構46は、溶融樹脂に接触する前のシート2aを加熱する機構である。本実施形態では、加熱機構46は、第1〜第4の熱風吹き付け機構41,42,47,48を備えている。第1及び第2の熱風吹き付け機構41,42は、ベースシート2a1を加熱するための機構である。具体的には、第1の熱風吹き付け機構41は、ベースシート2a1の一方側の面に熱風を吹き付けることによりベースシート2a1を加熱する機構であり、第2の熱風吹き付け機構42は、ベースシート2a1の他方側の面に熱風を吹き付けることによりベースシート2a1を加熱する機構である。第3及び第4の熱風吹き付け機構47,48は、シート2a2を加熱するため野機構である。具体的には、第3の熱風吹き付け機構47は、シート2a2の一方側の面に熱風を吹き付けることによりシート2a2を加熱する機構であり、第4の熱風吹き付け機構48は、シート2a2の他方側の面に熱風を吹き付けることによりシート2a2を加熱する機構である。
【0044】
製造装置1には、除電機構としての第1〜第4のイオンエアー吹き付け機構43a、43b、49a、49bが設けられている。第1のイオンエアー吹き付け機構43aは、吐出機構33から吐出された溶融樹脂がベースシート2a1に接触する前に、ベースシート2a1の一方側の表面に対してイオンエアーを吹き付けることにより、ベースシート2a1を除電する機構である。第2のイオンエアー吹き付け機構43bは、吐出機構33から吐出された溶融樹脂がベースシート2a1に接触する前に、ベースシート2a1の他方側の表面に対してイオンエアーを吹き付けることにより、ベースシート2a1を除電する機構である。第3のイオンエアー吹き付け機構49aは、吐出機構33から吐出された溶融樹脂がシート2a2に接触する前に、シート2a2の一方側の表面に対してイオンエアーを吹き付けることにより、シート2a2を除電する機構である。第4のイオンエアー吹き付け機構49bは、吐出機構33から吐出された溶融樹脂がシート2a2に接触する前に、シート2a2の他方側の表面に対してイオンエアーを吹き付けることにより、シート2a2を除電する機構である。
【0045】
さらに、製造装置1には、制御部40が設けられている。図示は省略するが、制御部40は、製造装置1の各デバイスに接続されており、各デバイスを制御するものである。
【0046】
(採光断熱材2の製造)
次に、採光断熱材2の製造工程について説明する。
【0047】
まず、制御部40は、駆動機構11に、テーブル10を図1に示す位置から、x方向のx2側に、図7及び図8に示す位置まで移動させる。すなわち、吸着機構34のx方向x1側端部と、多孔体15bのx方向x1側端部とがx方向において同位置となるまで、テーブル10を移動させる。
【0048】
次に、図9に示すように、制御部40は、吸着機構34を降下させ、ベースシート2a1の端部を多孔体15bの表面に密着させる。次に、制御部40は、吸着機構34による吸着を停止すると共に、図2に示すソレノイドバルブ24を開状態とし、多孔体15bにベースシート2a1の端部を吸着させる。
【0049】
次に、制御部40は、吸着機構34を上昇させ、吸着機構34をベースシート2a1から離す。その後、図10に示すように、制御部40は、テーブル10を、x方向のx1側に移動させる。そして、ベースシート2a1がテーブル10の多孔体14bのx方向のx2側端よりもx2側にまで供給されたときに、制御部40は、テーブル10の移動を停止させる。
【0050】
なお、テーブル10をx方向のx1側に移動させる際に、ロール30aにバックテンションをかけるようにしてもよい。そうすることにより、ベースシート2a1にたるみが生じることを効果的に抑制することができる。
【0051】
本実施形態では、上記ベースシート2a1の供給工程において、制御部40は、図2に示す第1及び第2のイオンエアー吹き付け機構43a、43bを駆動し、イオンエアーをベースシート2a1の両面に吹き付けることにより、ベースシート2a1の除電を行う。
【0052】
また、制御部40は、第1及び第2の熱風吹き付け機構41,42を駆動し、熱風をベースシート2a1の両面に吹き付けることにより、ベースシート2a1を加熱する。
【0053】
次に、制御部40は、ソレノイドバルブ23を開状態とし、多孔体14bにベースシート2a1の端部を吸着させる。これにより、図3に示す固定領域12において、ベースシート2a1のx1側の端部と、x2側の端部との両方が吸着された状態となる。
【0054】
次に、図11に示すように、制御部40は、吸着機構34を降下させ、吸着機構34に、ベースシート2a1のx2側の端部を吸着させる。その後、制御部40は、カッター35を降下させてベースシート2a1を切断した後に、吸着機構34を上昇させる。これにより、ベースシート2a1のテーブル10への固定が完了する。
【0055】
次に、制御部40は、駆動機構11に、テーブル10のx1側端部が、吐出機構33よりもx2側に位置するまで、テーブル10を移動させる。続いて、図12に示すように、テーブル10をx1側に移動させながら、吐出機構33からベースシート2a1上に樹脂を吐出する。これにより、図13に示すように、x方向に沿って、ベースシート2a1上に、相互に平行に延びる複数の樹脂製スペーサ2bを形成する(スペーサ形成工程)。
【0056】
図12に示すように、このスペーサ形成工程において、吐出機構33から吐出された溶融樹脂33cは、冷却ロール44の外周面に形成されている搬送溝44bに沿って、ベースシート2a1上にまで搬送される。
【0057】
次に、ベースシート2a1をテーブル10上に固定した要領と実質的に同様の要領で、ロール32aから供給されるシート2a2をベースシート2a1上に配置する(シート積層工程)。具体的には、まず、制御部40は、テーブル10上に固定されたベースシート2a1のx2側の端部が吸着機構36の下方に位置するようにテーブル10を移動させる。次に、吸着機構36を降下させ、ベースシート2a1に樹脂製スペーサ2bを介してシート2a2を接着させる。その後、制御部40は、吸着機構36によるシート2a2の吸着を解除させ、吸着機構36を上昇させる。続いて、制御部40は、テーブル10をx2側に移動させ、移動完了後、吸着機構36によりシート2a2を吸着させた状態でカッター37によりシート2a2を切断することにより、シート2a2の配置を完了させる。
【0058】
本実施形態では、このシート積層工程においても、制御部40は、図2に示す第3及び第4のイオンエアー吹き付け機構49a、49bを駆動し、イオンエアーをシート2a2の両面に吹き付けることにより、シート2a2の除電を行う。
【0059】
また、制御部40は、第3及び第4の熱風吹き付け機構47,48を駆動し、熱風をシート2a2の両面に吹き付けることにより、シート2a2を加熱する。
【0060】
そして、上記のスペーサ形成工程を行う。その後、上記シート積層工程とスペーサ形成工程とを繰り返し行うことにより、図1に示す採光断熱材2を完成させる。そして、最後に、制御部40は、正圧発生機構20に、圧縮されたイオンエアーを多孔体14b,15bに供給させる。これにより、吸着部材14,15によるベースシート2a1の吸着を解除する。その後、テーブル10から採光断熱材2を取り外す。
【0061】
上記シート積層工程を繰り返し行った場合、最上層に位置するシート2a2の高さが徐々に高くなっていく。このため、シート積層工程を行う毎に、制御部40は、昇降機構38を駆動させ、積層機構31の位置を徐々に高くしていく。これにより、積層機構31と、最上層に位置するシート2a2との間の距離を一定に保持することができる。
【0062】
なお、上記採光断熱材2の製造方法では、図14に示すように、溶融樹脂33cを、吐出機構33から間欠的に吐出する必要がある。このため、制御部40は、圧送ポンプ54を間欠的に駆動する。この場合、吐出機構33から吐出される溶融樹脂33cの流量は、吐出開始直後と、吐出終了直前において少なくなる。従って、吐出開始直後及び吐出終了直前の溶融樹脂33cにより形成された樹脂製スペーサ2bの部分は、他の部分よりも細くなる。従って、製造された採光断熱材2のうち、吐出開始直後及び吐出終了直前の溶融樹脂33cにより形成された樹脂製スペーサ2bの部分が形成されている部分は、事後的に切除することが好ましい。また、この場合において、シート2aの積層位置をx方向に順次ずらせていくようにしてもよい。
【0063】
以上説明したように、本実施形態では、吐出機構33から吐出された溶融樹脂33cがシート2aに接触する前に、温度差低減機構45により、溶融樹脂33cとシート2aとの間の温度差が低減されている。このため、溶融樹脂33cがシート2aに接触したときに、シート2aが変形しにくい。このため、シート2aの平坦性の低下を抑制でき、高い美観性を有する採光断熱材2を製造することができる。特に、本実施形態では、溶融樹脂33cを冷却する冷却ロール44と、シート2aを加熱する第1〜第4の熱風吹き付け機構41,42,47,48とが両方設けられているため、溶融樹脂33cとシート2aとの間の温度差をより小さくできる。従って、シート2aの平坦性の低下をより効果的に抑制できる。もっとも、本発明においては、冷却機構と加熱機構との両方を設ける必要は必ずしもない。冷却機構及び加熱機構のうちの少なくとも一方のみを設けてもよい。
【0064】
また、本実施形態では、冷却ロール44の外周面44aに搬送溝44bが設けられており、溶融樹脂33cは、この搬送溝44b内を通過する。このため、溶融樹脂33cが効率的に冷却され、溶融樹脂33cとシート2aとの間の温度差をより小さくできる。また、溶融樹脂33cの揺らぎを抑制できるため、樹脂製スペーサ2bの蛇行を効果的に抑制することができる。
【0065】
(実施例)
第1〜第4の熱風吹き付け機構41,42,47,48を設けないこと以外は、上記実施形態の製造装置1と同様の構成を有する製造装置を用いて、採光断熱材を作製した。なお、採光断熱材の製造に際して、樹脂シート2aとしては、厚み50μmのPET製シートを使用した。テーブル10の移動速度は、30m/分とした。溶融樹脂33cの直径は、0.7mmとした。吐出機構33から吐出される溶融樹脂33cの温度は、170℃とした。冷却ロール44の温度は、11℃とした。吐出ノズル33aと、溶融樹脂33cと冷却ロール44とが接触するまでの間に位置する溶融樹脂33cの長さは、1.7mmであった。溶融樹脂33cの冷却ロール44と接触している部分の長さは、314mmであった。本実施例で得られた採光断熱材の平面視写真を図15に示す。
【0066】
また、比較例として、冷却ロール44を設けないこと以外は、上記実施例で使用した製造装置と同様の構成を有する製造装置を使用し、実施例と同様にして採光断熱材を作製した。なお、比較例においては、溶融樹脂33cの、吐出ノズル33aの先端から樹脂シート2aと接触するまでの間の距離は、220mmであった。本比較例で得られた採光断熱材の平面視写真を図16に示す。
【0067】
冷却ロール44を用いて溶融樹脂33cを事前に冷却した実施例においては、樹脂シート2aに接触する直前の溶融樹脂33cの温度は、118℃であった。それに対して、事前に溶融樹脂33cを冷却しなかった比較例では、樹脂シート2aに接触する直前の溶融樹脂33cの温度は、165℃であった。この結果から、冷却ロール44を用いることにより、樹脂シート2aに接触する直前の溶融樹脂33cの温度を低くし、樹脂シート2aと溶融樹脂33cとの間の温度差を小さくできることが分かる。そして、樹脂シート2aと溶融樹脂33cとの間の温度差が大きかった比較例では、図16に示すように、反射像が大きく歪んでいることから、樹脂シート2aが変形していることが分かるのに対して、樹脂シート2aと溶融樹脂33cとの間の温度差が小さかった実施例では、図15に示すように、反射像があまり歪んでいないことから、樹脂シート2aに大きな変形が発生していないことが分かる。この結果から、樹脂シート2aに接触するときの樹脂シート2aと溶融樹脂33cとの間の温度差を小さくすることにより、樹脂シート2aの変形を抑制でき、美観性に優れた採光断熱材を製造できることがわかる。
【0068】
(変形例)
なお、上記実施形態では、樹脂シート2aの供給源として、2つのロール30a、32aを配置する例について説明したが、樹脂シート2aの供給源を3つ以上設けてもよい。その場合、例えば、ひとつの供給源で樹脂シート2aがなくなった場合にも、他の供給源から樹脂シート2aを供給できるため、装置を停止させることなく製造を継続することができる。また、3つ以上の樹脂シート2aの供給源を設けることにより、製造し得るシート構造体のバリエーションを増やすことができる。
【符号の説明】
【0069】
1…製造装置
2…採光断熱材
2a…樹脂シート
2a1…ベースシート
2a2…シート
2b…樹脂製スペーサ
10…テーブル
10a…テーブルの表面
11…駆動機構
12…固定領域
12a…固定領域の第1の端部
12b…固定領域の第2の端部
13…テーブル本体
14…第1の吸着部材
15…第2の吸着部材
14a、15a…吸着部材本体
14b、15b…多孔体
14c、15c…連通孔
17…減圧ポンプ
18,19,23,24…ソレノイドバルブ
20…正圧発生機構
21…圧縮ポンプ
22…イオン供給機構
25…固定機構
30…ベースシート供給機構
30a、32a…ロール
30b〜30f、32b〜32f…搬送ロール
31…積層機構
33…吐出機構
33a…吐出ノズル
33b…ヒーター
33c…溶融樹脂
34,36…吸着機構
35,37…カッター
38…昇降機構
40…制御部
41…第1の熱風吹き付け機構
42…第2の熱風吹き付け機構
47…第3の熱風吹き付け機構
48…第4の熱風吹き付け機構
43a…第1のイオンエアー吹き付け機構
43b…第2のイオンエアー吹き付け機構
44…冷却ロール
44a…冷却ロールの外周面
44b…搬送溝
45…温度差低減機構
46…加熱機構
49a…第3のイオンエアー吹き付け機構
49b…第4のイオンエアー吹き付け機構
50…ホットメルト機
50a…溶融室
51…減圧機構
52…ガス供給機構
53…配管
54…圧送ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製スペーサを介して積層された複数の樹脂シートを備えるシート構造体の製造装置であって、
シート上に溶融樹脂を吐出することにより前記樹脂製スペーサを形成する吐出機構と、
前記樹脂製スペーサが形成されたシート上に別のシートを積層する積層機構と、
前記吐出機構から吐出された前記溶融樹脂が前記シートに接触する前に、前記シートの加熱及び前記溶融樹脂の冷却のうちの少なくとも一方を行うことにより前記溶融樹脂と前記溶融樹脂が吐出されるシートとの間の温度差を低減する温度差低減機構とを備える、シート構造体の製造装置。
【請求項2】
前記温度差低減機構は、前記溶融樹脂の冷却を行う冷却機構を含む、請求項1に記載のシート構造体の製造装置。
【請求項3】
前記冷却機構は、前記吐出機構から吐出された溶融樹脂が、前記シートに接触する前に、外周面に接触するように設けられている冷却ロールである、請求項2に記載のシート構造体の製造装置。
【請求項4】
前記冷却ロールの外周面には、周方向に沿って延びており、前記溶融樹脂が搬送される搬送溝が形成されている、請求項3に記載のシート構造体の製造装置。
【請求項5】
前記温度差低減機構は、前記溶融樹脂が吐出されるシートを加熱する加熱機構を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシート構造体の製造装置。
【請求項6】
前記加熱機構は、前記溶融樹脂が吐出されるシートに熱風を吹き付ける熱風吹き付け機構である、請求項5に記載のシート構造体の製造装置。
【請求項7】
樹脂製スペーサを介して積層された複数の樹脂シートを備えるシート構造体の製造方法であって、
前記シート上に溶融樹脂を吐出することにより前記樹脂製スペーサを形成するスペーサ形成工程と、
前記樹脂製スペーサが形成されたシート上に別のシートを積層するシート積層工程とを備え、
前記スペーサ形成工程において前記吐出された溶融樹脂が前記シートに接触する前に、前記シートの加熱及び前記溶融樹脂の冷却のうちの少なくとも一方を行うことにより前記溶融樹脂と前記溶融樹脂が吐出されるシートとの間の温度差を低減する、シート構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−143676(P2011−143676A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8229(P2010−8229)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】