説明

シート止着工具

【課題】ビニールハウス等の被覆材である塩化ビニルシート又はポリオレフィンシート等を、ビニールハウスの骨組材やドア枠、窓枠等へ固定するシート止め材におけるシート止め線材をシートと共にシート止着溝形材の溝中へ押し入れてシートを止着させる作業に用いるシート止着工具を提供する。
【解決手段】シート止着工具10の本体1は略直方体形状を成し、その前端面を正面方向に見るとシート止め線材2の導入口1aが縦に細長く下端を開放された矩形の切り欠き形状に形成され、本体を底面方向に見ると凹面部1bが形成され、凹面部内1bにシート止着溝形材4の開口縁43、43の上を走行する車輪6a、6b、及び開口縁43、43の内側の溝40中に嵌る脱輪防止車輪5a、5bが設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所謂ビニールハウス等の被覆材である塩化ビニルシート又はポリオレフィンシート等(以下、単にシートという。)を、ビニールハウスの骨組材やドア枠、窓枠等へ固定するシート止め材(シート止着溝形材と、その溝の中へシートを止める波形状で弾性なシート止め線材の組合せをいう、以下同じ。)における前記シート止め線材を前記シートと共にシート止着溝形材の溝中へ押し入れてシートを止着させる作業に用いるシート止着工具の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の野菜や果物などの促成栽培を行う所謂ビニールハウスの被覆材であるシートは、骨組材へ取付けたシート止め材で止着されている。そのシート止着作業は、シート止着溝形材のシート止着溝の開口部上にシートを広げ、その上から波形状をなす弾性なシート止め線材の一端部を先ずシートと共にシート止着溝中へ押し入れて止め付け、しかる後に同シート止め線材の溝外に残る自由部分を波形毎の単位で順次シート止着溝中へ押し入れてゆく。このシート止着作業を機械化して効率良く楽に進めるために、従来、例えば下記特許文献1〜4に開示したシート止着工具が提案されている。
【0003】
下記特許文献1に開示されたシート止着工具は、シート止着溝形材の開口縁上を長手方向に滑る滑動部と、前記滑動部から上方へ立ち上げられた手動操作部と、前記滑動部の下面から突設された滑動ガイド部と、前記滑動部の前端に平面形状を略ハの字形に設けられたシート止め線材ガイド部とで構成されている。
このシート止着工具の使用方法は、シート止め線材の端部をシートと共にシート止着溝形材のシート止着溝の中に押し入れた後、滑動部をシート止着溝形材の両縁部に乗せて手動操作部を押し、シート止着工具をシート止着溝材の長手方向の前方へ進ませる。すると、シート止め線材の一山一山が次々と左右のシート止め線材ガイド部へ交互にぶつかり、シート止め線材がシート止着溝の中へ案内されて、同シート止着溝内に固定される。このとき、シート止着工具の滑動ガイド部の両側面の下縁部に形成されたリブ状の突片の先端が、ハの字形状に傾斜された内壁面に当接し、シート止着工具が使用中に抜け落ちる事項を防止している。
【0004】
下記特許文献2に開示されたシート止着工具は、シート止着工具の本体の前端部にシート止め線材ガイド部を設け、該本体の裏面に平行な一対のスライドレールが前記シート止め線材ガイド部の前方へ相当長さ突き出る形に並設し、更に該本体の裏面には前端を傾斜面に形成すると共に、押し込み片が突設され、本体へ回動可能に取り付けられた溝形材と平行な配置とされた相当長さの取付棒の前端部に、前記開口縁と平行な2枚のガイド板をシート止め線材が通過するのに適度な間隔で組合せたシート止め線材ガイドが取り付けられた構成である。
【0005】
下記特許文献3に開示されたシート止着工具は、シート止着工具本体の前後にシート止着溝形材のシート止着溝に嵌り転動する車輪が設けられ、本体の先に内部空間を有する頭部が設けられ、該内部空間にレールの溝幅より僅かに狭い間隔を置いて左右にスプリング嵌入円板が前後にずらして設けられ、頭部の前方にシートとスプリングに潤滑材を塗布する塗布部材とスプリングを上下及び左右でガイドするスプリングガイド部材が設けられた構成である。
【0006】
下記特許文献4に開示されたシート止着工具は、把手の前後にシート止着溝形材のシート止着溝に嵌り転動する車輪が設けられ、前車輪の前方にシート止め線材をシート止着溝に嵌入させるためのローラーが設けられ、前記ローラーの前方にシート止め線材をシート止着溝の内側に押さえるガイドローラーが設けられている。更に、前記ガイドローラーの前方にシートをシート止着溝内に押し込む為のシート押し込みローラーが設けられた構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平08−8328号公報
【特許文献2】特開平09−37657号公報
【特許文献3】特許2938372号公報
【特許文献4】特開平09−94031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1〜4に開示されたシート止着工具は、シート止着作業が機械化作業として容易に行えるように、それぞれ工夫された構成ではある。
しかし、特許文献1〜4のシート止着工具は、線径が2.0mmでバネ性が高く、一平面上で同一の台形波が1波長のピッチが120mm程度、振幅が35mm程度で交互に反転する向きに連なる波形状のシート止め線材をシート止着溝形材へ押し入れる構成であるため、シート止め線材の強い剛性とバネ性による抵抗作用に打ち勝って溝中へ押し入れシート止着の目的を達成するための構成と機能及び機構を具備している。そのため必要な部材点数が多く、更に各構成要素がそれぞれ複雑な形状に組み立てられ、それらの組み合わせで複雑な構造となっている。よって、その製作に手間とコストが掛るが、それでいて必ずしも使い易いとか作業性に優れていないことは、現在のところ殆ど実用化された例が皆無に近いことで実証されている。
また、台形波が連なる波形状のシート止め線材は、シート止着溝形材のシート止着溝の中へ押し込む際に、台形波の角部でシートを強くこすって傷つけ破損させる問題も指摘されている。
【0009】
本発明の目的は、シート止め線材を、同一の円弧波が交互に反転する向きに連なる円弧波形状に構成すると、シート止着作業時の抵抗が小さいことに着眼して、同円弧波形シート止め線材で構成するシート止め材へ適用するものであり、非常に使い易く、作業の効率を高めることができ、簡易な構造で必要な部材点数が少なく、製作が容易で安価なシート止着工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るシート止着工具は、
横断面で見ると底壁の両側に立ち上がる両側壁をハの字形状に内方へ傾斜させて開口部が幅狭のシート止着溝を形成されたシート止着溝形材と、前記開口部の幅寸よりも少し大きい振幅で、一平面上で同一の円弧波が交互に反転する向きに連なる波形状をなす弾性な円弧波形シート止め線材とで構成されるシート止め材へ適用するもので、前記シート止着溝形材の開口部上に広げたシートと共に前記円弧波形シート止め線材をシート止着溝の中へ押し入れて同シートを止着させるシート止着工具であって、
シート止着工具の本体は略直方体形状を成し、その前端面を正面方向に見るとシート止め線材の導入口が縦に細長く下端を開放された矩形の切り欠き形状に形成され、前記本体を底面方向に見ると凹面部が形成され、同凹面部内に前記シート止着溝形材の開口縁の上を走行する車輪、及び開口縁の内側の溝中に嵌る脱輪防止車輪が設置された構成であり、
前記シート止め線材の一方の端部を、前記シート止着溝形材の開口部上に広げたシートと共にシート止着溝の中へ押し込み固定した上で、同シート止め線材がシート止着溝の外へ露出している部分へ導入口を対峙させ、シート止着溝形材の開口縁上へ車輪を乗せたシート止着工具本体を手で押して前進させることにより、シート止め線をシートと共にシート止着溝の中に押し入れて止着させることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明に係るシート止着工具において、
シート止め線材をシート止着溝の中へ誘導する導入口の壁部は、平面的に見てシート止め線材が滑り易い円弧状又はR状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した発明に係るシート止着工具において、
シート止め線材をシート止着溝の中へ誘導する導入口の壁部には、その表面を保護して前記シート止め線材を滑らせる鋼板が貼り付けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載した発明は、請求項1に記載した発明に係るシート止着工具において、
シート止着工具の本体の導入口には、平面形状が略ハの字形のシート止め線材のガイド部材が、導入口の前方へ突き出るように形成されていると共に、前記ガイド部材で誘い込まれたシート止め線材をシート止着溝形材のシート止着溝の下方へ誘導するガイドローラーが設置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載した発明に係るシート止着工具において、
シート止着工具本体の凹面部内に設置されてシート止着溝形材の両縁部の内側の溝中に嵌る脱輪防止車輪は、同脱輪防止車輪の一部分が本体の導入口に臨む後方部位に、前記導入口に誘い込まれたシート止め線材をシート止着溝の下方へ押し込む配置に設置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載した発明に係るシート止着工具は、
横断面で見ると底壁の両側に立ち上がる両側壁をハの字形状に内方へ傾斜させて開口部が幅狭のシート止着溝を形成されたシート止着溝形材と、前記開口部の幅寸よりも少し大きい振幅で、一平面上で同一の円弧波が交互に反転する向きに連なる波形状をなす弾性な円弧波形シート止め線材とで構成されるシート止め材へ適用するもので、前記シート止着溝形材の開口部上に広げたシートと共に前記円弧波形シート止め線材をシート止着溝の中へ押し入れて同シートを止着させるシート止着工具であって、
シート止着工具の本体は略直方体形状を成し、その前端面のシート止め線材の導入口には、平面形状が略ハの字形のガイド部材が導入口の前方へ突き出るように形成され、前記本体を底面方向に見ると凹面部が形成され、同凹面部内に前記ガイド部材から誘い込まれたシート止め線材をシート止着溝の下方へ誘導するガイドローラー、前記シート止着溝形材の開口縁の上を走行する車輪、及び開口縁の内側の溝中に嵌る脱輪防止車輪が設置された構成であり、
前記シート止め線材の一方の端部を、前記シート止着溝形材の開口部上に広げたシートと共にシート止着溝の中へ押し込み固定した上で、同シート止め線材がシート止着溝の外へ露出している部分へ導入口を対峙させ、シート止着溝形材の開口縁上へ車輪を乗せたシート止着工具本体を手で押して前進させることにより、シート止め線をシートと共にシート止着溝の中に押し入れて止着させることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載した発明は、請求項1〜6のいずれか一に記載したシート止着工具において、
シート止着工具に本体の上面には、同上面から上方へ立ち上げられた手動操作部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシート止着工具は、一平面上で同一の円弧波が交互に反転する向きに連なる波形状の弾性な円弧波形シート止め線材2で構成するシート止め材に適用するものである。即ち、円弧波形シート止め線材2は、シート止着工具10の導入口1aへぶつかって抵抗する度合いが小さく、同シート止着工具10の本体1を円滑に進ませることができ、作業の効率を高めることができるから、作業者の労力負担が少なくて済み、非常に使い易い。
そのため請求項1〜5に記載したシート止着工具の本体1は、略直方体形状を成し、その前端面を正面方向に見るとシート止め線材2の導入口1aが縦に細長く下端を開放された矩形の切り欠き形状に形成され、本体1を底面方向に見ると凹面部1bが形成され、同凹面部1b内にシート止着溝形材4の開口縁43、43の上を走行する車輪6a、6b、及び開口縁43、43の内側の溝中40に嵌る脱輪防止車輪5a、5bが設置されただけの非常にシンプルで簡易な構造であり、必要な部材点数が非常に少なく、製作が容易であり、安価に提供できる。
同様に、請求項6に記載したシート止着工具の本体1も、略直方体形状を成し、その前端面のシート止め線材2の導入口1aには、平面形状が略ハの字形のガイド部材17が、導入口1aの前方へ突き出るように形成され、前記本体1を底面方向に見ると凹面部1bが形成され、同凹面部1b内に前記ガイド部材17から誘い込まれたシート止め線材2をシート止着溝40の下方へ誘導するガイドローラー15、15、前記シート止着溝形材4の開口縁43、43の上を走行する車輪6a、6b、及び開口縁43、43の内側の溝中40に嵌る脱輪防止車輪5a、5bが設置されたシンプルで簡易な構造なので、必要な部材点数が少なく、製作が容易であり、安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1に係るシート止着工具の使用状態を示した斜視図である。
【図2】実施例1に係るシート止着工具の使用状態を示した正面図である。
【図3】実施例1に係るシート止着工具を底面方向から見た斜視図である。
【図4】シート止め線材の実施例を示す平面図である。
【図5】異なるシート止め線材の実施例を示す平面図である。
【図6】実施例2に係るシート止着工具を示す斜視図である。
【図7】実施例2に係るシート止着工具を底面方向から見た斜視図である。
【図8】実施例3に係るシート止着工具の使用状態を示した斜視図である。
【図9】実施例3に係るシート止着工具を底面方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のシート止着工具は、横断面で見ると底壁の両側に立ち上がる両側壁をハの字形状に内方へ傾斜させて開口部41が幅狭のシート止着溝40を形成されたシート止着溝形材4と、前記開口部41の幅寸よりも少し大きい振幅で、一平面上で同一の円弧波が交互に反転する向きに連なる波形状をなす弾性な円弧波形シート止め線材2とで構成されるシート止め材へ適用するものである。シート止着工具10の本体1は略直方体形状を成し、その前端面を正面方向に見るとシート止め線材2の導入口1aが縦に細長く下端を開放された矩形の切り欠き形状に形成され、本体を底面方向に見ると凹面部1bが形成され、凹面部1b内にシート止着溝形材4の開口縁43、43の上を走行する車輪6a、6b、及び開口縁43、43の内側の溝中40に嵌る脱輪防止車輪5a、5bが設置されている。シート止め線材2の一方の端部を、シート止着溝形材4の開口部41上に広げたシート3と共にシート止着溝40の中へ押し込み固定した上で、同シート止め線材2がシート止着溝40の外へ露出している部分へ導入口1aを対峙させ、シート止着溝形材4の開口縁43、43の上へ車輪6a、6bを乗せたシート止着工具本体1を手で押して前進させることによりシート止め線材2をシート3と共にシート止着溝40の中に押し入れて止着させる。
【実施例1】
【0020】
以下に、本発明に係るシート止着工具を、図示した実施例に基づいて説明する。
本実施例のシート止着工具10の本体1は、図1に示すように、一例として縦横115×47cm、高さ34cm程度の大きさの略直方体形状に形成されている。前記本体1を、側面方向から見ると、後方部分を少し下向きに傾斜させた形状に形成されており、握りやすいく作業し易い形状としている。
前記シート止着工具10は、走行中の安定性が高く左右にぶれたりしない重量(一例として350g程度)とする。
【0021】
上記シート止着工具10の本体1の前端面は、図2に示す正面方向から見るとシート止め線材2の導入口1aが縦に細長く下端を開放された矩形の切り欠き形状に形成されている。前記導入口1aの壁部は、図3に分かり易く示すように、平面的に見てシート止め線材2が滑り易い円弧状又はR状に形成されており、シート止め線材2の誘い込み易くしている。また、同導入口1aの壁部には、その表面を保護しシート止め線材2を滑らせる鋼板7、7が貼り付けられている。
【0022】
前記本体1を図3に示す底面方向に見ると、凹面部1bが形成され、同凹面部1b内にシート止着溝形材4の開口縁43、43の上を走行する車輪6a(6b)、及び開口縁43、43の内側の溝中40に嵌る脱輪防止車輪5a(5b)の組みが車軸によってシート止着工具1の進行方向の前後に2個設置されている。
前方に設置された脱輪防止車輪5aは、左右の車輪6a、6aと別々に構成されており、同脱輪防止車輪5aの一部分が本体1の導入口1aに臨む後方部位に、前記導入口1aに誘い込まれたシート止め線材2をシート止着溝40の下方へ押し込む配置に設置され、本体1の脱輪防止効果を奏すとともに、前記導入口1aによって誘い込まれたシート止め線材2をシート止着溝40の下方へ押し込む効果も奏する。
後方に設置された車輪6b、6bおよび脱輪防止車輪5bは、一体成形された構成であり、共通の車軸により、本体1の凹面部1b内に設置されている。
【0023】
上記シート止着工具10は、図1及び2に示すように、横断面で見ると底壁の両側に立ち上がる両側壁をハの字形状に内方へ傾斜させて開口部41が幅狭のシート止着溝40を形成されたシート止着溝形材4と、前記開口部41の幅寸よりも少し大きい振幅で、一平面上で同一の円弧波が交互に反転する向きに連なる波形状をなす弾性な円弧波形シート止め線材2とで構成されるシート止め材へ適用する。
【0024】
上記シート止着工具10の使用方法は、先ずシート止め線材2の一方の端部を、前記シート止着溝形材4の開口部上に広げたシート3と共にシート止着溝40の中へ押し込み固定する。
次に、前記シート止着溝40へ押し込んだシート止め線材2の端部の上に、シート止着工具本体1を、脱輪防止車輪5a、5bを同シート止着溝中40に嵌め込み、車輪6a、6bを開口縁43、43の上へ乗せて設置する。
次に、前記シート止め線材2がシート止着溝40の外へ露出している部分へ導入口1aを対峙させ、シート止着溝形材4の開口縁43、43の上へ車輪6a、6bを乗せたシート止着工具本体1を手で押して前進させる。すると、円弧波形シート止め線材2の一山一山が次々と左右の導入口1aへ交互にぶつかり、シート止め線材2がシート止着溝40内へ案内されて、同シート止着溝40内に固定される。
なお、実施例1のシート止着工具10は、例えば図8及び9に示すように、本体1の上面に、同上面から上方へ立ち上げられた手動操作部16を設けた構成で実施することにより、シート止着溝形材4の開口縁上43、43に乗せた本体1を楽に押し進めることができる。
【0025】
因みに、シート止着溝形材4は、既存の溝形材と略同形、同大であり、図2に示すように、例えば特開2003−222106号公報や実用新案登録3116845号公報に開示されている楔式連結金具8等を使用して、パイプ材9(または、他のシート止着溝形材)と圧着し連結することができる。そのため、シート止着溝形材4の両側壁には、外方へ円弧形状に突き出る支持片42、42がシート止着溝形材4の長手方向に連続して形成されており、前記両支持片42、42で楔式連結金具8の受け口80を形成する左右両側の口縁に形成された押さえ片81、81と面接触する構成としている。
【0026】
上記シート止め線材2は、図4に示すように、線径は1.6〜1.8mm程度で、バネ性の低い線材を、一平面上で同一の円弧波が1波長のピッチが90mm程度、振幅は30mm程度で交互に反転する向きに連なる波形状とされている。
前記円弧波形シート止め線材2は、例えば上記特許文献2(特開平09−37654号公報)に開示されている一平面上で同一の台形波が交互の向きに連続する波形状を成すシート止め線材と比して、非常に柔軟な形状なので、上記シート止着工具10の導入口1aへぶつかって抵抗する度合いが非常に小さい。そのため、シート止着溝形材4上のシート止着工具本体1を円滑に進ませることができ、作業者の労力負担が少なくて済み、作業の効率を高められる。
なお、本実施例のシート止着工具10の使用に適したシート止め線材の異なる実施例として、図5に示すように、円弧状の頂部をシート止着溝形材4の長手方向と平行する扁平形状に形成された構成のシート止め線材2’を使用しても、図4に示すシート止め線材2と同様の効果を奏すことができる。
【実施例2】
【0027】
図6に示すシート止着工具11も、前端面を正面方向に見るとシート止め線材2の導入口1aが縦に細長く下端を開放された矩形の切り欠き形状に形成されている。そして前記本体1を図7に示す底面方向に見ると、凹面部1bが形成され、同凹面部1b内にシート止着溝形材4の開口縁43、43の上を走行する車輪6a(6b)及び開口縁43、43の内側の溝中に嵌る脱輪防止車輪5a(5b)の組が進行方向の前後に2個設置されている。
前記本体1の導入口1aには、平面形状が略ハの字形のシート止め線材2のガイド部材13、13が、導入口1aの前方へ突き出るように形成されており、前記ガイド部13で誘い込まれたシート止め線材2をシート止着溝形材4のシート止着溝40の下方へ誘導するガイドローラー14、14が設置されている。
なお、前方に設置された車輪6aおよび脱輪防止車輪5aは、一体成形された構成を示しているが、上記実施例1のシート止着工具の車輪6aおよび脱輪防止車輪5aのように、脱輪防止車輪5aを左右の車輪6a、6aと別々に構成し、同脱輪防止車輪5aの一部が導入口1aに臨む後方部位に、前記導入口1aに誘い込まれたシート止め線材2をシート止着溝40の下方へ押し込む配置に設置された構成で実施することできる。
【0028】
上記シート止着工具11の使用方法も、先ずシート止め線材2の一方の端部を、前記シート止着溝形材4の開口部上に広げたシート3と共にシート止着溝40の中へ押し込み固定する。前記シート止着溝40へ押し込んだシート止め線材2の端部の上に、シート止着工具本体1を、脱輪防止車輪5a、5bを同シート止着溝中40に嵌め込み、車輪6a、6bを開口縁43、43の上へ乗せて設置する。そして、前記シート止め線材2がシート止着溝40の外へ露出している部分へ導入口1aを対峙させ、シート止着溝形材4の開口縁43、43の上へ車輪6a、6bを乗せたシート止着工具本体1を手で押して前進させる。すると、円弧波形シート止め線材2の一山一山が次々と左右のガイド部材13へ交互にぶつかり、ガイドローラー14、14によってシート止着溝40内へ案内されて、同シート止着溝40内に固定される。
なお、実施例2のシート止着工具10も、例えば図8及び9に示すように、本体1の上面に、同上面から上方へ立ち上げられた手動操作部16を設けた構成で実施することにより、シート止着溝形材4の開口縁上43、43に乗せた本体1を楽に押し進めることができる。
【実施例3】
【0029】
図8に示すシート止着工具12は、本体1が略直方体形状を成し、その前端面のシート止め線材2の導入口1aには、平面形状が略ハの字形のガイド部材17が、導入口1aの前方へ突き出るように形成されている。前記本体1を図9に示す底面方向に見ると、凹面部1bが形成され、同凹面部1b内の導入口1aに臨む後方部位に前記ガイド部材17から誘い込まれたシート止め線材2をテーパ部15aでシート止着溝40の下方へ誘導する2個のガイドローラー15、15が共通の車軸によって設置されている。そして、前記シート止着溝形材4の開口縁43、43の上を走行する車輪6a(6b)と開口縁43、43の内側の溝中に嵌る脱輪防止車輪5a(5b)の組が進行方向の前後に2個設置されている。
更に、前記シート止着工具12の本体1の上面前方には、同本体1の両側面に支持され、同上面から上方へ立ち上げられた手動操作部16が設けられている。但し、前記手動操作部16は、図示した形状や位置、大きさに限定されない。例えば、本体の上面中央部分に設置した構成で実施しても良いし、本体の上面に凸部を設けた形状でも実施することもできる。
【0030】
上記シート止着工具11の使用方法も、先ずシート止め線材2の一方の端部を、前記シート止着溝形材4の開口部上に広げたシート3と共にシート止着溝40の中へ押し込み固定する。前記シート止着溝40へ押し込んだシート止め線材2の端部の上に、シート止着工具本体1を、脱輪防止車輪5a、5bを同シート止着溝中40に嵌め込み、車輪6a、6bを開口縁43、43の上へ乗せて設置する。そして、前記シート止め線材2がシート止着溝40の外へ露出している部分へ導入口1aを対峙させ、シート止着溝形材4の開口縁43、43の上へ車輪6a、6bを乗せたシート止着工具本体1を手で押して前進させる。すると、円弧波形シート止め線材2の一山一山が次々と左右のガイド部材17へ交互にぶつかり、ガイドローラー15、15によってシート止着溝40内へ案内されて、同シート止着溝40内に固定される。
【0031】
以上に実施形態を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の実施形態の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する
【符号の説明】
【0032】
10、11、12 シート止着工具
1 シート止着工具の本体
1a 導入口
1b 凹面部
13、17 ガイド部材
14、15 ガイドローラー
16 手動操作部
2、2’ シート止め線材
4 シート止着溝形材
40 シート止着溝
41 開口部
5a、5b 脱輪防止車輪
6a、6b 車輪
7 鋼板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面で見ると底壁の両側に立ち上がる両側壁をハの字形状に内方へ傾斜させて開口部が幅狭のシート止着溝を形成されたシート止着溝形材と、前記開口部の幅寸よりも少し大きい振幅で、一平面上で同一の円弧波が交互に反転する向きに連なる波形状をなす弾性な円弧波形シート止め線材とで構成されるシート止め材へ適用するもので、前記シート止着溝形材の開口部上に広げたシートと共に前記円弧波形シート止め線材をシート止着溝の中へ押し入れて同シートを止着させるシート止着工具であって、
シート止着工具の本体は略直方体形状を成し、その前端面を正面方向に見るとシート止め線材の導入口が縦に細長く下端を開放された矩形の切り欠き形状に形成され、前記本体を底面方向に見ると凹面部が形成され、同凹面部内に前記シート止着溝形材の開口縁の上を走行する車輪、及び開口縁の内側の溝中に嵌る脱輪防止車輪が設置された構成であり、
前記シート止め線材の一方の端部を、前記シート止着溝形材の開口部上に広げたシートと共にシート止着溝の中へ押し込み固定した上で、同シート止め線材がシート止着溝の外へ露出している部分へ導入口を対峙させ、シート止着溝形材の開口縁上へ車輪を乗せたシート止着工具本体を手で押して前進させることにより、シート止め線をシートと共にシート止着溝の中に押し入れて止着させることを特徴とする、シート止着工具。
【請求項2】
シート止め線材をシート止着溝の中へ誘導する導入口の壁部は、平面的に見てシート止め線材が滑り易い円弧状又はR状に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載したシート止着工具。
【請求項3】
シート止め線材をシート止着溝の中へ誘導する導入口の壁部には、その表面を保護して前記シート止め線材を滑らせる鋼板が貼り付けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載したシート止着工具。
【請求項4】
シート止着工具の本体の導入口には、平面形状が略ハの字形のシート止め線材のガイド部材が、導入口の前方へ突き出るように形成されていると共に、前記ガイド部材で誘い込まれたシート止め線材をシート止着溝形材のシート止着溝の下方へ誘導するガイドローラーが設置されていることを特徴とする、請求項1に記載したシート止着工具。
【請求項5】
シート止着工具本体の凹面部内に設置されてシート止着溝形材の両縁部の内側の溝中に嵌る脱輪防止車輪は、同脱輪防止車輪の一部分が本体の導入口に臨む後方部位に、前記導入口に誘い込まれたシート止め線材をシート止着溝の下方へ押し込む配置に設置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載したシート止着工具。
【請求項6】
横断面で見ると底壁の両側に立ち上がる両側壁をハの字形状に内方へ傾斜させて開口部が幅狭のシート止着溝を形成されたシート止着溝形材と、前記開口部の幅寸よりも少し大きい振幅で、一平面上で同一の円弧波が交互に反転する向きに連なる波形状をなす弾性な円弧波形シート止め線材とで構成されるシート止め材へ適用するもので、前記シート止着溝形材の開口部上に広げたシートと共に前記円弧波形シート止め線材をシート止着溝の中へ押し入れて同シートを止着させるシート止着工具であって、
シート止着工具の本体は略直方体形状を成し、その前端面のシート止め線材の導入口には、平面形状が略ハの字形のガイド部材が、導入口の前方へ突き出るように形成され、前記本体を底面方向に見ると凹面部が形成され、同凹面部内に前記ガイド部材から誘い込まれたシート止め線材をシート止着溝の下方へ誘導するガイドローラー、前記シート止着溝形材の開口縁の上を走行する車輪、及び開口縁の内側の溝中に嵌る脱輪防止車輪が設置された構成であり、
前記シート止め線材の一方の端部を、前記シート止着溝形材の開口部上に広げたシートと共にシート止着溝の中へ押し込み固定した上で、同シート止め線材がシート止着溝の外へ露出している部分へ導入口を対峙させ、シート止着溝形材の開口縁上へ車輪を乗せたシート止着工具本体を手で押して前進させることにより、シート止め線をシートと共にシート止着溝の中に押し入れて止着させることを特徴とする、シート止着工具。
【請求項7】
シート止着工具に本体の上面には、同上面から上方へ立ち上げられた手動操作部が設けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載したシート止着工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−239883(P2010−239883A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90429(P2009−90429)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000221568)東都興業株式会社 (57)
【Fターム(参考)】