説明

シート状センサ装置

【課題】 不均一な面における圧力変化を測定でき、かつ、低コストでも荷重分布の分解能の良いシート状センサを提供する。
【解決手段】導電性繊維と該導電性繊維の周囲を被覆する非導電性材料とからなるたて糸及びよこ糸を含む織物からなるセンサ本体、前記センサ本体において、縦方向の第1の縦領域に含まれる前記たて糸と横方向の第1の横領域に含まれる前記よこ糸とに電圧を印加する第1の電圧印加手段、及び前記第1の縦領域と第1の横領域との交差部分の静電容量の変化を検出する第1の手段、を備えてなるシート状センサ装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はシート状センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、不均一な面における圧力変化を測定する方法として、織物や編物等をシート状にして、それにセンサ機能を持たせることで圧力変化の測定を可能としていた。特許文献1は、上下2枚のシート素地に感圧センサを組込み、荷重による抵抗値の変化を測定することにより圧力変化を測定している。
しかし、荷重分布の分解能が感圧センサの個数に依存するため、分解能を上げるためには感圧センサを増やさざるを得ず、コストがかかるという問題が生じる。
【特許文献1】特開2004−132765
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、従来のように不均一な面における圧力変化を測定でき、かつ、低コストでも荷重分布の分解能の良いシート状センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものである。すなわち、
導電性繊維と該導電性繊維の周囲を被覆する非導電性材料とからなるたて糸及びよこ糸を含む織物からなるセンサ本体、前記センサ本体において、縦方向の第1の縦領域に含まれる前記たて糸と横方向の第1の横領域に含まれる前記よこ糸とに電圧を印加する第1の電圧印加手段、及び前記第1の縦領域と第1の横領域との交差部分の静電容量の変化を検出する第1の手段、を備えてなるシート状センサ装置である。
【発明の効果】
【0005】
上記構成により、センサ本体は、たて糸及びよこ糸を織物とすることで形成される。そのため、たて糸及びよこ糸は交差部分が生じる。すなわち、たて糸の芯部とよこ糸の芯部との間に絶縁体(非導電性材料)が存在するコンデンサが形成される。この状態で交差部分を加圧すると、たて糸とよこ糸との間に形成されるコンデンサの静電容量が増加する。この静電容量の変化を測定することで交差部分での圧力変化を測定することが可能となる。
また、交差部分へ物体が近づいたり、軽く触れる(圧力なし)ことにより交差部分の電界に乱れが生じたときにも静電容量が変化する。よって、交差部分での近接センサ若しくはタッチセンサとして使用することも可能である。
センサの分解能は縦領域又は横領域の面積に応じて簡単に調整できることになる。また、たて糸、よこ糸が安価な導電性繊維の周囲を非導電性材料で被覆するだけで形成できるため、コストを上げることなく分解能の良いセンサを作成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、この発明の要素について説明する。
(導電性繊維、非導電性材料)
導電性繊維は、たて糸又はよこ糸の芯部に位置し、導電性繊維の周囲を非導電性材料で被覆する(図1A参照)。導電性繊維の周囲を非導電性材料で被覆する方法は、導電性繊維の周囲に非導電性材料をらせん状に巻きつける方法の他、導電性繊維を中心部に配置しその周囲に非導電性材料が配置されるよう紡績又は紡糸する方法がある。
導電性繊維の材質としては、ステンレスやカーボンなどを使用することができる。また、非導電性材料の材質としては、綿やポリエステルなどを使用することができる。
シート状センサは、たて糸及びよこ糸を織物とすることで形成される。そのため、たて糸及びよこ糸は交差部分が生じる(図1B参照)。すなわち、たて糸の芯部とよこ糸の芯部との間に絶縁体(非導電性材料)が存在するコンデンサを形成する。
上記の状態で交差部分を加圧すると、各導電性繊維の間隔が短くなるため、たて糸とよこ糸との間に形成されるコンデンサの静電容量が増加する。この静電容量の変化を測定することで交差部分での圧力変化を測定することが可能である。
【0007】
(静電容量の変化を検出する手段)
静電容量の変化を検出し、圧力分布を測定するための測定装置12は、静電容量を測定するためのLCRメータ13、LCRメータ13で得られた静電容量から圧力を導き出す静電容量−圧力変換部及びシート状センサの静電容量を測定するタイミングを調整するタイミング調整部14から構成される(図2参照)。
【0008】
静電容量の測定方法は特に限定されないが、例えば、LCRメータを用いて測定することができる。たて糸とよこ糸との交差部分で形成されるコンデンサに交流電流を流し、次にコンデンサの交流電圧を測定する。交流電流と交流電圧とは静電容量に応じた位相差が生じるため、位相差より静電容量を測定することができる。
【0009】
センサ本体11は、複数のたて糸とよこ糸とにより形成される。圧力測定の分解能を向上させる場合には、一本の糸毎の静電容量を測定することが好ましいが、データ処理速度を向上させるため、たて糸又はよこ糸の複数本を一つの観測領域としてデータ処理を行うことが望ましい。
センサ本体11への加圧の測定は次のとおりである。まず、LCRメータ13により特定の縦領域11Taと特定の横領域11Yaとの間に交流電流を流し、その後交流電圧を測定する。次に、同じ縦領域11Taと隣の横領域11Ybとの間で同様に測定をしていく(図2参照)。この操作をセンサ本体11の全体について行うことで、センサ本体11に係る圧力分布を測定することができる。
特定の領域から隣の領域への測定に順序は特に限定されず、横領域を固定しておき、縦領域のみを順に移動させてもよい。
特定の領域の静電容量の測定後、隣への領域の静電容量の測定はタイミング調整部により所定のタイミングで行われる。このタイミングは圧力測定の目的やセンサの使用環境に応じて適宜調整される。
図2の例では縦領域及び横領域はシート本体において、すき間なく連続しているが、これらの間にすき間を設けることもできる。また、各領域を相互にオーバーラップさせることもできる。
【0010】
静電容量−圧力変換部15は、静電容量値から圧力値への変換機能、センサ本体11上の圧力分布図の作成等を行う。LCRメータ13で測定された静電容量のデータは、タイミング調整部14からセンサ上の位置に関するデータが付与され、静電容量−圧力変換部15に渡される。静電容量−圧力変換部15は静電容量から圧力値に変換する。次に、位置に関するデータをもとにセンサ本体上の圧力分布を作成する。静電容量−圧力変換部15で得られたデータは、ネットワークを介してPC等で観測することができる。
【0011】
本発明者らは、実験においてシート状センサの静電容量を測定したので、各パラメータを示す。芯糸に金属繊維直径0.08mmを使用し、カバーリング糸にポリエステルフィラメント糸300Dを使用した。撚糸条件としてカバーリング糸を供給するメインスピンドル回転数8000rpm、芯糸送り出しローラーの速度8m/min、仮撚機構は未使用にして撚糸加工した糸をたて糸とよこ糸に使用して、たて糸を60本/6cm、よこ糸を32本/5cmの密度となるよう製織した。この織物のたて及びよこの導電性繊維に1V、500Hzの交流電圧を与えたとき65pFの静電容量を示し、この状態のまま手で押圧すると77pFに増加した。また、1V、1MHzの交流電圧を与えたとき67pFの静電容量を示し、この状態のまま手を5cmの距離まで近づけると75pFに増加した。
【実施例1】
【0012】
図3に本発明の実施例であるシート状センサ21を用いた患者モニタリングシステム20の概略図を示す。シート状センサ21はケーブルを介してPC23に接続されており、遠隔による患者の監視を行うことができる。シート状センサ21の静電容量は、測定装置22を用いて測定され、所定のデータ形式に変換してPC23に送られる。シート状センサ21(ベットシート)上に寝ている患者の圧力分布を観測することにより、患者の状況(現在、寝ているのかどうかなど)を確認することができる。
【0013】
シート状センサ21は複数のたて糸及びよこ糸を織物とすることで形成される。たて糸及びよこ糸は導電性繊維を芯部として、その周囲を非導電性材料で被覆する構成である。そのため、たて糸及びよこ糸を織物とした場合、たて糸とよこ糸との交差部分には、たて糸の導電性繊維とよこ糸の導電性繊維との間に非導電性材料(絶縁体)が挟まれる形となる。すなわち、たて糸とよこ糸との交差部分にはコンデンサが形成される。コンデンサの静電容量は各導電性繊維間(たて糸の芯部とよこ糸の芯部の間)の距離に反比例して増加する。そのため、シート状センサ30を加圧すれば、各導電性繊維間の距離は狭まり、静電容量は増加する。この静電容量の変化を観測することにより、ベットで寝ている患者のモニタリングを行うことができる。
【0014】
センサ本体は、複数のたて糸とよこ糸とにより形成される。圧力測定の分解能を向上される場合には、一本の糸毎の静電容量を測定することが好ましいが、データ処理速度を向上させるため、たて糸又はよこ糸の複数本を一つの観測領域としてデータ処理を行う。
センサ本体への加圧の測定はLCRメータにより特定の縦領域と特定の横領域との間に交流電流を流し、その後交流電圧を測定する。次に、隣の縦領域と隣の横領域との間で同様に測定をしていく。この操作をセンサ全体について行うことで、センサ本体に係る圧力分布を測定することができる。
特定の領域の静電容量の測定後、隣への領域の静電容量の測定はタイミング調整部により所定のタイミングで行われる。
この動作をシート全体に亘って行い、シート上における圧力分布を測定することができる。
得られたデータは所定のデータ形式に変換してPC23に送られる。シート状センサにおける圧力分布を取得したPC23では、リアルタイムで患者の状況を確認することができる。
【0015】
以上のように、患者のモニタリングシステムとしてシート状センサを使用することにより、遠隔による患者の状況確認を行うことができる。深夜における患者の状況確認や、独居老人の状況確認に使用できる。
また、このシート状センサをホテルなど大規模な建物の室内や廊下のカーペットに使用し、客の移動を把握したり夜間侵入者を監視することも可能である。
【実施例2】
【0016】
図4は本発明の別の実施例であるシート状センサ31を用いた折り畳み式キーボード30の概略図である。シート状センサ31はPC33とケーブルにより接続される。シート状センサ31の静電容量は測定装置32により測定され、、所定のデータ形式に変換され、PC33に送られる。シート状センサ31の大きさは、市販のキーボードの大きさと同程度である。キーの配置も通常のものと同じである。
【0017】
シート状センサ31の内部構成は実施例1と同様であるため説明を省略する。シート状センサ31には、キーが配置されており、各キーの区別は、各キーに対応する縦領域と横領域により判断される。キーへの加圧の検出方法は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0018】
上記構成により、シート状センサ31上に割り振られたキーを加圧することで、PC上でのキー操作を可能とすることができる。
これにより、デスク上でスペースを占領するキーボードを、使用しない場合には折り畳んで保管することも可能となる。
また、シート状センサを使用した電卓、ピアノの鍵盤等にも応用することが可能である。
【0019】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明のセンサ本体を構成する糸の構成図(A)及び、たて糸とよこ糸との交差部分の断面図(B)である。
【図2】図2はシート状センサを使用した圧力分布測定システムの構成図である。
【図3】図3は実施例である患者モニタリングシステムの概略図である。
【図4】図4は他の実施例である折り畳み式キーボードの概略図である。
【符号の説明】
【0021】
1 たて糸又はよこ糸
2 導電性繊維
3 非導電性材料
11 21 31 シート状センサ
11Ta 11Tb 縦領域
11Ya 11Yb 横領域
12 22 32 測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性繊維と該導電性繊維の周囲を被覆する非導電性材料とからなるたて糸及びよこ糸を含む織物からなるセンサ本体、
前記センサ本体において、縦方向の第1の縦領域に含まれる前記たて糸と横方向の第1の横領域に含まれる前記よこ糸とに電圧を印加する第1の電圧印加手段、及び
前記第1の縦領域と第1の横領域との交差部分の静電容量の変化を検出する第1の手段、
を備えてなるシート状センサ装置。
【請求項2】
前記センサ本体において、縦方向の第2の縦領域に含まれる前記たて糸と横方向の第2の横領域に含まれる前記よこ糸とに電圧を印加する第2の電圧印加手段及び、
前記第2の縦領域と第2の横領域との交差部分の静電容量の変化を検出する第2の手段、
を備えてなる請求項1に記載のシート状センサ装置。
【請求項3】
前記センサ本体は複数の縦領域と複数の横領域、を備え、
所定のタイミングで所定の前記縦領域と所定の前記横領域とを選択し、選択された縦領域に含まれるたて糸と選択された横領域に含まれるよこ糸とに電圧を印加する手段、及び
前記選択された縦領域と前記選択された横領域との静電容量の変化を検出する手段、
を備えてなる請求項1に記載のシート状センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−234716(P2006−234716A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52727(P2005−52727)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000116622)愛知県 (99)
【Fターム(参考)】