説明

シート状加熱ユニット、それを備えた便座装置およびそれを備えた衛生洗浄装置

【課題】シワなどによる空隙の発生を十分に防止できケーシングに容易かつ確実に貼り付け可能なシート状加熱ユニット、それを備えた便座装置およびそれを備えた衛生洗浄装置を提供する。
【解決手段】衛生洗浄装置は、着座部の加熱機能を有する便座装置を備える。便座装置は便座を備える。便座においては、着座部を有する上部ケーシングの下面に便座ヒータ450が貼り付けられる。上部ケーシングは第1の側部、第2の側部および後部を有する。上部ケーシングの第1の側部、第2の側部および後部は、それぞれ内側縁部および外側縁部を有する。便座ヒータ450は、上部ケーシングの複数の内側縁部に対応する複数の内側縁部II1,II2,II3を有する。便座ヒータ450の複数の内側縁部II1,II2,II3からなる便座ヒータ450の内側部分に複数の切り込み部S1,S2が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状加熱ユニット、それを備えた便座装置およびそれを備えた衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、使用者が冷え切った便座に着座する際の不快感を防止するために暖房機能を備えた便座装置がある。特許文献1には、略楕円形状の上部便座ケーシング、略馬蹄形状の便座ヒータ、および略楕円形状の下部便座ケーシングを備える便座装置が記載されている。
【0003】
この便座装置においては、上部便座ケーシングの下面に、シート状の加熱ユニットが貼り付けられる。加熱ユニットは、発熱線を含む線状ヒータが上部便座ケーシングとほぼ同じ形状を有する2枚のアルミニウム薄膜で挟み込まれた構造を有する。ヒータ駆動部から線状ヒータに電流が供給されることにより線状ヒータの発熱線が発熱する。発熱線の熱が線状ヒータを挟み込む2枚のアルミニウム薄膜の全体に迅速に伝達し、上部便座ケーシングの全体が迅速に加熱される。それにより、使用者は快適に上部便座ケーシングに着座することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−253748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の便座装置において、上部便座ケーシングと加熱ユニットとの間に多数の空隙が存在すると、加熱ユニットから上部便座ケーシングへの熱の伝達効率が低下する。そのため、使用者が上部便座ケーシングに着座したときに温度むらを感じる場合がある。
【0006】
さらに、このような空隙は、上部便座ケーシングと加熱ユニットとの間の接着強度を低下させる。そのため、加熱ユニットが上部便座ケーシングから剥離しやすくなる。
【0007】
そのため、上記特許文献1の便座装置の作製時には、上部便座ケーシングと加熱ユニットとの間にできる限り空隙が形成されないように貼り付け作業を行うことが求められる。しかしながら、このような貼り付け作業には熟練が必要となる。
【0008】
本発明の目的は、シワなどによる空隙の発生を十分に防止できケーシングに容易かつ確実に貼り付け可能なシート状加熱ユニット、それを備えた便座装置およびそれを備えた衛生洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明において、第1の発明に係るシート状加熱ユニットは、内側縁部、外側縁部および着座面を有するケーシングの下面に設けられるシート状加熱ユニットであって、ケーシングの下面に貼り付け可能なシート状の熱伝達部材と、熱伝達部材に設けられる発熱体と、を備え、熱伝達部材は、ケーシングの内側縁部および外側縁部に対応する内側縁部および外側縁部を有し、熱伝達部材の内側縁部に複数の切り込みが形成されているものである(請求項1)。
【0010】
このシート状加熱ユニットにおけるシート状の熱伝達部材は、ケーシングの下面に貼り付けられる。発熱体により発生される熱は、熱伝達部材を介してケーシングに伝達される。
【0011】
ケーシングの内側縁部に対応する熱伝達部材の内側縁部に複数の切り込みが形成されている。それにより、複数の切り込みにより熱伝達部材の複数の部分の位置関係に自由度が与えられる。したがって、ケーシングの下面への熱伝達部材の貼り付け時に、熱伝達部材の各部分をそれぞれ独立に位置決めすることが可能となる。その結果、熱伝達部材とケーシングとの間に空隙が生じることを十分に防止しつつ熱伝達部材をケーシングの下面に容易にかつ確実に貼り付けることが可能となる。
【0012】
(2)また、本発明において、熱伝達部材は、前後方向に延びる中心線を対称軸として略線対称となる位置にそれぞれ設けられる第1の側部および第2の側部と、第1の側部および第2の側部の一端を互いにつなぐ後部と、を有しており、複数の切り込みは、中心線を対称軸として略線対称となる位置に設けられていてもよい(請求項2)。
【0013】
この場合、ケーシングの下面への熱伝達部材の貼り付け時に、後部の中心部分を位置決めすることにより、空隙の発生を十分に防止できるように、第1の側部および第2の側部をそれぞれ容易かつ確実にケーシングの下面に貼り付けることが可能となる。
【0014】
ここで本発明において、「前後方向に延びる中心線」とは、第1の発明に係るシート状加熱ユニットが搭載されるべき第2の発明に係る便座装置における便座の幾何学的中心線であって、この便座に着座した使用者から見て前方及び後方を結ぶ直線をいう。
【0015】
(3)さらに、本発明において、上述の複数の切り込みは、第1の側部と後部との境界部に設けられる第1の切り込みと、第2の側部と後部との境界部に設けられる第2の切り込みと、を含んでいてもよい(請求項3)。
【0016】
この場合、第1の切り込みおよび第2の切り込みにより熱伝達部材の第1の側部、第2の側部および後部の位置関係に自由度が与えられる。これにより、ケーシングの下面への熱伝達部材の貼り付け時に、後部をケーシングの下面に位置決めして貼り付けた状態で第1の側部および第2の側部をそれぞれケーシングの下面に位置決めすることができる。したがって、シワなどによる空隙の発生を十分に防止できるように、後部ならびに第1の側部および第2の側部を容易かつ確実にケーシングの下面に貼り付けることが可能となる。
【0017】
(4)また、本発明において、複数の切り込みは、第1の側部に設けられる第3の切り込みと、第2の側部に設けられる第4の切り込みと、を含んでいてもよい(請求項4)。
【0018】
この場合、第3の切り込みにより第1の側部の前方部分および後方部分の位置関係に自由度が与えられる。第4の切り込みにより第2の側部の前方部分および後方部分の位置関係に自由度が与えられる。これにより、ケーシングの下面への熱伝達部材の貼り付け時に、後部ならびに第1の側部および第2の側部の後方部分をケーシングの下面に位置決めして貼り付けた状態で第1の側部および第2の側部の前方部分をそれぞれケーシングの下面に位置決めすることができる。したがって、空隙の発生を十分に防止できるように、後部ならびに第1の側部および第2の側部を容易かつ確実にケーシングの下面に貼り付けることが可能となる。
【0019】
(5)さらに、本発明において、複数の切り込みは、後部に設けられる第5の切り込みおよび第6の切り込みを含んでいてもよい(請求項5)。
【0020】
この場合、後部においては、第5および第6の切り込みにより後部の中央部分、一端部分および他端部分の位置関係に自由度が与えられる。これにより、ケーシングの下面への熱伝達部材の貼り付け時に、後部の中央部分をケーシングの下面に位置決めして貼り付けた状態で後部の一端部分および他端部分ならびに第1の側部および第2の側部をそれぞれケーシングの下面に位置決めすることができる。したがって、空隙の発生を十分に防止できるように、後部ならびに第1の側部および第2の側部を容易かつ確実にケーシングの下面に貼り付けることが可能となる。
【0021】
(6)また、本発明において、ケーシングの下面は、前後方向に延びる中心線を対称軸として略線対称となる状態で湾曲するように形成されるとともに中心線の両側に曲率半径が最小となる部分をそれぞれ有し、複数の切り込みは、ケーシングの上記曲率半径が最小となる部分に重なる位置にそれぞれ設けられる第7の切り込みおよび第8の切り込みを含んでいてもよい(請求項6)。
【0022】
この場合、ケーシングの曲率半径が最小となる部分においては、熱伝達部材が折れ曲がった状態でケーシングの下面に貼り付けられる。このとき、熱伝達部材の折れ曲がり部分で分割される複数の部分の位置関係に自由度が与えられる。それにより、空隙の発生を十分に防止できるように、熱伝達部材を容易かつ確実に貼り付けることが可能となる。
【0023】
(7)また、本発明において、第2の発明に係る便座装置は、便器上に取り付け可能な便座を備え、便座は、内側縁部、外側縁部および着座面を有するケーシングと、第1の発明に係るシート状加熱ユニットと、を備えるものである(請求項7)。
【0024】
この便座装置は、第1の発明に係るシート状加熱ユニットを備える。このシート状加熱ユニットによれば、ケーシングの下面への熱伝達部材の貼り付け時に、熱伝達部材の各部分をそれぞれ独立に位置決めすることが可能となる。それにより、熱伝達部材とケーシングとの間に空隙が生じることを十分に防止しつつ熱伝達部材をケーシングの下面に容易にかつ確実に貼り付けることが可能となる。したがって、便座の組み立て作業が容易となり、便座装置の生産性が向上する。その結果、便座装置の低コスト化が実現される。
【0025】
また、ケーシングの下面とシート状加熱ユニットの熱伝達部材との間に空隙の発生を十分に防止できるので、空隙に起因するケーシングの着座面上の温度むらの発生が十分に抑制される。
【0026】
(8)さらに、本発明において、第3の発明に係る衛生洗浄装置は、便器上に取り付け可能でかつ給水源から供給される洗浄水を人体に噴出する衛生洗浄装置であって、第2の発明に係る便座装置と、便座装置の便座を便器の上面上で開閉可能に支持する本体部と、本体部に設けられ、給水源から供給される洗浄水を人体に噴出するノズル装置と、を備えるものである(請求項8)。
【0027】
この衛生洗浄装置においては、第2の発明に係る便座装置が設けられているので、使用者が加温された便座に着座した状態でノズル装置から人体に洗浄水が噴射される。
【0028】
第2の発明に係る便座装置の便座の組み立て作業は容易であるので、衛生洗浄装置の生産性が向上する。したがって、衛生洗浄装置の低コスト化が実現される。また、便座のケーシングの下面とシート状加熱ユニットの熱伝達部材との間に空隙が生じることを十分に防止できるので、空隙に起因するケーシングの着座面上の温度むらの発生が十分に抑制される。したがって、使用者は快適に便座に着座することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、シワなどによる空隙の発生を十分に防止できケーシングに容易かつ確実にシート状加熱ユニットを貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施の形態に係る衛生洗浄装置を示す外観斜視図。
【図2】図1の遠隔操作装置の正面図。
【図3】図1の衛生洗浄装置の基本構成を説明するための模式図。
【図4】図1の便座の分解斜視図。
【図5】図4の上部ケーシングの平面図。
【図6】(a)は図4の上部ケーシングの平面図、(b)は図4の上部ケーシングのA1−A1線縦断面図、(c)は図4の上部ケーシングのA2−A2線縦断面図、(d)は図4の上部ケーシングのB1−B1線縦断面図、(e)は図4の上部ケーシングのB2−B2線縦断面図。
【図7】図4の便座ヒータの平面図。
【図8】(a)は便座ヒータの一部を示す拡大平面図、(b)は(a)のC−C線断面図。
【図9】図7の便座ヒータに形成される切り込み部の位置を説明するための平面図。
【図10】図9の切り込み部を示す便座ヒータの一部拡大平面図。
【図11】第2の実施の形態に係る便座ヒータを示す平面図。
【図12】第3の実施の形態に係る便座ヒータを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施の形態に係るシート状加熱ユニット、それを備えた便座装置およびそれを備えた衛生洗浄装置について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、シート状加熱ユニットの一例として便座ヒータを説明する。
【0032】
[A]第1の実施の形態
(1)衛生洗浄装置の外観
図1は第1の実施の形態に係る衛生洗浄装置を示す外観斜視図である。図1に示すように、衛生洗浄装置100は、主として本体部200、遠隔操作装置300、便座400、蓋部410Cおよび入室検知センサ600により構成される。この衛生洗浄装置100の便座400はトイレットルーム内で便器700の上面上に取り付けられる。
【0033】
本体部200には、便座400および蓋部410Cが開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、後述する洗浄水供給系(以下、給水系と呼ぶ。)およびノズル装置500が設けられるとともに、後述の制御部90(図3)が内蔵されている。
【0034】
図1に示すように、本体部200の正面下部にノズル装置500の一部である人体洗浄ノズル540が露出している。人体洗浄ノズル540は、給水系を介して水道配管に接続されている。人体の局部の洗浄時には、人体洗浄ノズル540が便器700内に突出し、人体の局部に洗浄水を噴出する。
【0035】
本体部200の正面上部には、着座センサ610が設けられる。着座センサ610は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ610は、人体から反射された赤外線を検知することにより便座400上に使用者が存在することを検出する。
【0036】
遠隔操作装置300には、複数のスイッチが設けられている。遠隔操作装置300は、例えば便座400上に着座する使用者が操作可能な場所に取り付けられる。
【0037】
入室検知センサ600は、トイレットルームの入口等に取り付けられる。入室検知センサ600は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、入室検知センサ600は、人体から反射された赤外線を検知することによりトイレットルーム内に使用者が入室したことを検出する。
【0038】
本体部200の制御部90(図3)は、遠隔操作装置300から送信される信号ならびに入室検知センサ600および着座センサ610から出力される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0039】
(2)遠隔操作装置の構成
図1の遠隔操作装置300により操作可能な衛生洗浄装置100の主な機能について図2を参照しつつ説明する。図2は、図1の遠隔操作装置300の正面図である。遠隔操作装置300は、コントローラ本体部301の前面の下部にコントローラ蓋部302が開閉自在に設けられた構造を有する(図2(a)太矢印参照)。
【0040】
図2(a)に示すように、コントローラ蓋部302が閉じられた状態で、コントローラ本体部301の前面の上部には、強さ調整スイッチ322,323および位置調整スイッチ324,325が設けられる。コントローラ蓋部302には、停止スイッチ311、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313が設けられる。
【0041】
使用者により、上記スイッチ311〜313,322〜325が操作される。これにより、遠隔操作装置300から図1の本体部200に各スイッチ311〜313,322〜325に応じた信号が無線送信される。本体部200の制御部90(図3)は、受信した信号に基づいて本体部200(図1)および便座400(図1)の各構成要素の動作を制御する。
【0042】
例えば、使用者がおしりスイッチ312またはビデスイッチ313を操作することにより、後述する人体洗浄ノズル540(図3)から使用者の局部に洗浄水が噴出される。また、使用者が停止スイッチ311を操作することにより、人体洗浄ノズル540からの洗浄水の噴出が停止される。
【0043】
使用者が強さ調整スイッチ322,323を操作することにより、使用者の局部に噴出される洗浄水の流量および圧力等が調整される。また、使用者が位置調整スイッチ324,325を操作することにより、人体洗浄ノズル540(図3)の位置が調整される。これにより、使用者の局部への洗浄水の噴出位置が調整される。
【0044】
図2(b)に、コントローラ蓋部302が開かれた状態の遠隔操作装置300の正面図が示されている。図2(b)に示すように、コントローラ蓋部302により覆われるコントローラ本体部301の前面の下部には、上述の停止スイッチ311、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313に加えて、自動開閉スイッチ331および便座温度調整スイッチ333が設けられる。
【0045】
これらのスイッチ311〜313,331,333が操作される場合にも、遠隔操作装置300から本体部200に各スイッチ311〜313,331,333に応じた信号が無線送信される。これにより、本体部200の制御部90は、受信した信号に基づいて本体部200および便座400の各構成要素の動作を制御する。
【0046】
自動開閉スイッチ331がオン状態のときに、トイレットルームへの使用者の入室に応じて蓋部410Cが開閉される。使用者が便座温度調整スイッチ333を操作することにより、便座400の温度が調整される。
【0047】
(3)衛生洗浄装置の基本構成
図3は、図1の衛生洗浄装置100の基本構成を説明するための模式図である。
【0048】
(3−a)本体部の給水系
初めに、衛生洗浄装置100の基本構成の一部として、本体部200の給水系を説明する。図3に示すように、本体部200は、衛生洗浄装置100の給水系として、分岐水栓2、ストレーナ4、逆止弁5、定流量弁6、止水電磁弁7、流量センサ8、熱交換器9、水ポンプ11、バッファタンク12、ノズル装置500、バキュームブレーカ31,61、サーミスタS1,S2および制御部90を含む。
【0049】
水道配管1に分岐水栓2が介挿される。分岐水栓2と熱交換器9との間に接続される配管3には、上流から下流に向かってストレーナ4、逆止弁5、定流量弁6、止水電磁弁7、サーミスタS1および流量センサ8がこの順で介挿される。熱交換器9とノズル装置500との間に接続される配管10には、上流から下流に向かってサーミスタS2、水ポンプ11およびバッファタンク12がこの順で介挿される。
【0050】
ノズル装置500は、切替弁13、人体洗浄ノズル540およびノズル洗浄ノズル520を含む。人体洗浄ノズル540には、直線流路551、旋回流路552およびビデ流路553が形成されている。切替弁13には切替弁モータ13mが接続される。
【0051】
切替弁13は複数のポートを含む。切替弁13の複数のポートに人体洗浄ノズル540の複数の流路551,552,553およびノズル洗浄ノズル520がそれぞれ接続されている。
【0052】
バキュームブレーカ31は、止水電磁弁7と流量センサ8との間の配管3の部分から延びる分岐配管30に接続される。バキュームブレーカ31には、分岐配管32の一端が接続される。バキュームブレーカ61はバッファタンク12に設けられる。
【0053】
本体部200の給水系においては、止水電磁弁7が開状態となることにより、水道配管1を流れる浄水が洗浄水として分岐水栓2によりストレーナ4に供給される。そして、ストレーナ4から流れ出る洗浄水が、逆止弁5、定流量弁6および止水電磁弁7を通して熱交換器9に供給される。
【0054】
このとき、サーミスタS1は、配管3内を流れる洗浄水の温度を測定し、制御部90に測定温度値を与える。流量センサ8は、配管3内を流れる洗浄水の流量を測定し、制御部90に測定流量値を与える。熱交換器9は、配管3を通して供給される洗浄水を設定された温度に加熱する。
【0055】
続いて、水ポンプ11が、熱交換器9により加熱された洗浄水を加圧しつつバッファタンク12を通してノズル装置500の切替弁13に供給する。サーミスタS2は、配管10内を流れる洗浄水の温度を測定し、制御装置90に測定温度値を与える。
【0056】
熱交換器9および水ポンプ11の動作は、流量センサ8から与えられる測定流量値およびサーミスタS1,S2から与えられる測定温度値に基づいて制御部90により制御される。
【0057】
上述のように、人体洗浄ノズル540は、使用者の局部の洗浄を行うために用いられる。ノズル洗浄ノズル520は、人体洗浄ノズル540における洗浄水の噴出部分を洗浄するために用いられる。
【0058】
ノズル装置500の切替弁13は、切替弁モータ13mが動作することにより、水ポンプ11から供給された洗浄水を上記の複数のポートのいずれかに選択的に供給する。これにより、人体洗浄ノズル540の複数の流路551,552,553およびノズル洗浄ノズル520のいずれかに洗浄水が選択的に供給される。
【0059】
直線流路551に洗浄水が供給される場合には、人体洗浄ノズル540から人体の局部に直線状の洗浄水が噴出される。旋回流路552に洗浄水が供給される場合には、人体洗浄ノズル540から人体の局部に所定の広がり角度で分散されるように洗浄水が噴出される。ビデ流路553に洗浄水が供給される場合には、ビデ洗浄として人体洗浄ノズル540から洗浄水が噴出される。ノズル洗浄ノズル520に洗浄水が供給される場合には、ノズル洗浄ノズル520から人体洗浄ノズル540に向かって洗浄水が噴出される。
【0060】
(3−b)便座装置の構成
さらに、衛生洗浄装置100の基本構成の一部として、便座装置110を説明する。便座装置110は、本体部200の一部の構成要素、遠隔操作装置300、便座400および入室検知センサ600を含む。図3に示すように、本体部200は、便座装置110の構成要素として制御部90、便座温度測定部401およびヒータ駆動部402を備える。また、便座400はその内部に便座ヒータ450およびサーミスタ401aを備える。
【0061】
制御部90は、例えばマイクロコンピュータからなり、使用者の入室および便座400の温度等を判定する判定部、タイマ機能を有する計時部、種々の情報を記憶する記憶部、ならびに、ヒータ駆動部402の動作を制御するための通電率切替回路等を含む。
【0062】
本体部200の温度測定部401は、便座400のサーミスタ401aに接続されている。これにより、温度測定部401は、サーミスタ401aから出力される信号に基づいて便座400の温度を測定する。また、本体部200のヒータ駆動部402は、便座400の便座ヒータ450に接続されている。
【0063】
この便座装置110においては、予め使用者が図2の遠隔操作装置300の便座温度調整スイッチ333を操作することにより、制御部90が内蔵するメモリに便座400の温度が便座設定温度として記憶される。
【0064】
制御部90は、入室検知センサ600から出力される信号に基づいてトイレットルーム内に使用者が入室したことを検出した場合に、予め記憶された便座設定温度、および温度測定部401により測定される便座400の温度に基づいてヒータ駆動部402を制御する。これにより、トイレットルーム内に使用者が入室すると、便座400の温度が便座設定温度となるように調整される。
【0065】
(4)便座の構造
(4−a)便座の全体構造
図4は図1の便座400の分解斜視図である。なお、図4の図面において、図3のサーミスタ401aの図示は省略する。以下の説明では、便座400に着座した使用者から見て前方側を便座400の前部とし、着座した使用者から見て後方側を便座400の後部とする。
【0066】
図4に示すように、便座400は、上部ケーシング410、便座ヒータ450および下部ケーシング420を備える。上部ケーシング410は、主としてアルミニウム合金などの金属板にプレス加工等を施すことにより形成され、略楕円形状を有する。便座ヒータ450は、上部ケーシング410に対応する形状を有する。詳細は後述する。下部ケーシング420は、主として合成樹脂により形成され、略楕円形状を有する。
【0067】
便座400の組み立て時には、上部ケーシング410の下面に便座ヒータ450が貼り付けられ、図3のサーミスタ401aが取り付けられる。この状態で、上部ケーシング410と下部ケーシング420とが接合される。
【0068】
図4に一点鎖線で示すように、上部ケーシング410の上面の一部が、便座400への着座時に使用者の大腿部および臀部の一部が接触する着座部410Tとなる。このように、着座部410Tは、便座400の前後方向における略中央部で中央部開口400H(図5)を挟んで左右対称に位置する。
【0069】
(4−b)上部ケーシング
上部ケーシング410の形状について詳細を説明する。図5は図4の上部ケーシング410の平面図である。
【0070】
図5に示すように、本例の上部ケーシング410は、第1の側部R1、第2の側部R2および後部R3を有する。第1の側部R1および第2の側部R2は、便座400の前後方向に延びるとともに、便座400の前後方向に沿う中心線CLを対称軸として互いに略線対称となる位置にそれぞれ設けられる。第1の側部R1および第2の側部R2の前方部分は中心線CLに向かって内側に湾曲して互いにつながっている。後部R3は、第1の側部R1および第2の側部R2を互いにつなぐように設けられる。
【0071】
第1の側部R1は、内側縁部I1および外側縁部J1を有する。第2の側部R2は、内側縁部I2および外側縁部J2を有する。後部R3は、内側縁部I3および外側縁部J3を有する。
【0072】
第1の側部R1、第2の側部R2および後部R3の内側縁部I1〜I3が上部ケーシング410の内周縁を形成する。第1の側部R1、第2の側部R2および後部R3の外側縁部J1〜J3が上部ケーシング410の外周縁を形成する。
【0073】
上部ケーシング410の内側縁部I1〜I3は、上部ケーシング410の上面から下方へ折れ曲がるように形成されている。上部ケーシング410の外側縁部J1〜J3も上部ケーシング410の上面から下方へ折れ曲がるように形成されている。
【0074】
図6(a)は図4の上部ケーシング410の平面図であり、図6(b)は図4の上部ケーシング410のA1−A1線縦断面図であり、図6(c)は図4の上部ケーシング410のA2−A2線縦断面図である。図6(d)は図4の上部ケーシング410のB1−B1線縦断面図であり、図6(e)は図4の上部ケーシング410のB2−B2線縦断面図である。
【0075】
なお、図6(a)のA1−A1線は上部ケーシング410の一方の内周面側端部SP1を通り前後方向に延びる中央部開口400Hの接線SL1と一致し、図6(a)のA2−A2線は上部ケーシング410の第1の側部R1の略中央部を通り前後方向に延びる直線SL2と一致する。
【0076】
また、図6(d)のB1−B1線は上部ケーシング410の他方の内周面側端部SP2を通り前後方向に延びる中央部開口400Hの接線SL3と一致し、図6(e)のB2−B2線は上部ケーシング410の第2の側部R2の略中央部を通り前後方向に延びる直線SL4と一致する。
【0077】
図6(a)〜(e)に示すように、上部ケーシング410は、水平面に略平行に形成された平坦部と、その平坦部から後方に向かって斜め上方に傾斜する傾斜部とを有する。平坦部と傾斜部とは連続的に湾曲しつつつながっている。
【0078】
上部ケーシング410の上面においては、平坦部と傾斜部とがつながる部分で曲率半径が最小となる。以下、曲率半径が最小となる部分を折曲部CUと呼ぶ。本実施の形態では、折曲部CUは、上部ケーシング410の前後方向にほぼ直交する。また、第1の側部R1と後部R3との境界線は折曲部CUと交差している。第2の側部R2と後部R3との境界線は折曲部CUと交差している。
【0079】
上部ケーシング410は全体に渡ってほぼ均一な厚みを有する。したがって、上部ケーシング410の下面も上面とほぼ同じ形状を有する。
【0080】
(4−c)便座ヒータ
続いて、便座ヒータ450について詳細を説明する。図7は図4の便座ヒータ450の平面図であり、図8(a)は便座ヒータ450の一部を示す拡大平面図であり、図8(b)は図8(a)のC−C線断面図である。
【0081】
図7に示すように、便座ヒータ450は、線状ヒータ460、アルミニウムからなる金属シート470および合成樹脂からなる絶縁シート490を含む。
【0082】
金属シート470は、後述するように2枚のアルミニウム箔471,472(図8(b))から構成される。線状ヒータ460は、2枚のアルミニウム箔471,472(図8(b))により挟まれた状態で金属シート470内に保持され、金属シート470の全面に渡って蛇行するように設けられる。
【0083】
図8(a)に上部ケーシング410の着座部410T(図4)に対応する部分の一部領域C8が示されている。図8(a)に示すように、この便座ヒータ450においては、上部ケーシング410の着座部410T(図4)に対応する部分で、線状ヒータ460が左右方向および前後方向に蛇行するように金属シート470内に設けられる。前後方向への蛇行部分は左右方向への蛇行部分を挟み込むように配置されている。
【0084】
線状ヒータ460のヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bは、便座部400(図4)の後部の一方側から引き出されるリード線499にそれぞれ接続される。
【0085】
図8(b)に示すように、便座ヒータ450の作製時には、まず図5の上部ケーシング410の下面に対応した形状で切り出されたアルミニウム箔471の一面上に、線状ヒータ460が蛇行するように設けられる。
【0086】
線状ヒータ460は、例えば断面円形の発熱線463a、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462により構成される。発熱線463aの外周面がエナメル層463bおよび絶縁被覆層462で順に被覆される。発熱線463aおよびエナメル層463bによりエナメル線463が構成される。
【0087】
次に、アルミニウム箔471の一面上に粘着層B1を介して他のアルミニウム箔472が貼り付けられる。これにより、線状ヒータ460が2枚のアルミニウム箔471,472により挟み込まれた状態で保持される。なお、2枚のアルミニウム箔471,472が図7の金属シート470を構成する。
【0088】
続いて、金属シート470の一面上に、粘着層B2を介して絶縁フィルム491が貼り付けられる。さらに、金属シート470の他面を覆うように、アルミニウム箔472に粘着層B3を介して他の絶縁フィルム492が貼り付けられる。絶縁フィルム491,492は同じ外形を有する。
【0089】
これにより、金属シート470が2枚の絶縁フィルム491,492により挟み込まれた状態で保持される。なお、2枚の絶縁フィルム491,492が図7の絶縁シート490を構成する。このようにして、便座ヒータ450が作製される。
【0090】
本実施の形態において、絶縁シート490の端面490Eは金属シート470の端面470Eの外方に位置する。金属シート470の端面470Eから絶縁シート490の端面490Eまでの距離Wは、例えば5mmである。この場合、金属シート470の端面470Eが絶縁シート490により確実に絶縁される。
【0091】
図9は、図7の便座ヒータ450に形成される切り込み部の位置を説明するための平面図である。図9に示すように、便座ヒータ450は、上部ケーシング410の第1の側部R1、第2の側部R2および後部R3にそれぞれ対応する第1の側部X、第2の側部Yおよび後部Zを有する。図9では、金属シート470および絶縁シート490の外形を実線で表し、第1の側部X、第2の側部Yおよび後部Zを点線で表す。
【0092】
図9に示すように、第1の側部Xおよび第2の側部Yは、便座ヒータ450の前後方向に延びるとともに、便座ヒータ450の前後方向に沿う中心線CLを対称軸として互いに略線対称となる位置にそれぞれ設けられる。第1の側部Xおよび第2の側部Yの前方部分は中心線CLに向かって内側に湾曲している。後部Zは、第1の側部Xおよび第2の側部Yを互いにつなぐように設けられる。
【0093】
第1の側部Xは、上部ケーシング410の第1の側部R1の内側縁部I1および外側縁部J1にそれぞれ対応する内側縁部II1および外側縁部JJ1を有する。第2の側部Yは、上部ケーシング410の第2の側部R2の内側縁部I2および外側縁部J2にそれぞれ対応する内側縁部II2および外側縁部JJ2を有する。後部Zは、上部ケーシング410の後部R3の内側縁部I3および外側縁部J3にそれぞれ対応する内側縁部II3および外側縁部JJ3を有する。
【0094】
本実施の形態の便座ヒータ450においては、前後方向に延びる便座ヒータ450の中心線CLの両側で、中心線CLを対称軸として略線対称となる位置に切り込み部S1,S2が形成されている。切り込み部S1は、内側縁部II1と内側縁部II2との境界部から第1の側部Xと後部Zとの境界線の途中まで延びている。切り込み部S2は、内側縁部II2と内側縁部II3との境界部から第1の側部Xと後部Zとの境界線の途中まで延びている。
【0095】
(4−d)切り込み部の先端部
図10は、図9の切り込み部S1,S2を示す便座ヒータ450の一部拡大平面図である。図10に示すように、切り込み部S1,S2の先端部においては、金属シート470および絶縁シート490にそれぞれ円形開口470S,490Sが形成されている。
【0096】
このように、切り込み部S1,S2の先端部が円形開口470S,490Sを有することにより、後述する上部ケーシング410への便座ヒータ450の貼り付け時に、切り込み部S1,S2の先端部に大きな応力集中が発生することが防止される。それにより、便座ヒータ450の破損が防止される。
【0097】
なお、便座ヒータ450の切り込み部S1,S2においても、金属シート470の端面470E(図8(b)参照)から絶縁シート490の端面490E(図8(b)参照)までの距離は、例えば5mmに保持される。
【0098】
(5)第1の実施の形態の効果
本実施の形態に係る便座ヒータ450においては、内側縁部II1と内側縁部II3との境界部から第1の側部Xと後部Zとの境界線の途中まで切り込み部S1が形成されている。また、内側縁部II2と内側縁部II3との境界部から第2の側部Xと後部Zとの境界線の途中まで切り込み部S2が形成されている。切り込み部S1,S2により第1の側部X、第2の側部Yおよび後部Zの位置関係に自由度が与えられる。
【0099】
切り込み部S1,S2は、上部ケーシング410の折曲部CUと重なる位置に設けられる。それにより、上部ケーシング410の下面への便座ヒータ450の貼り付け時には、上部ケーシング410の後部R3に便座ヒータ450の後部Zを折曲部CUに沿って折り曲げつつ容易に位置決めして貼り付けた状態で、上部ケーシング410の第1の側部R1に便座ヒータ450の第1の側部Xを折曲部CUに沿って折り曲げつつ容易に位置決めして貼り付けることができるとともに、上部ケーシング410の第2の側部R2に便座ヒータ450の第2の側部Yを折曲部CUに沿って折り曲げつつ容易に位置決めして貼り付けることができる。
【0100】
したがって、上部ケーシング410の下面と便座ヒータ450との間に空隙が生じることを十分に防止できるように、便座ヒータ450の後部Zならびに第1の側部Xおよび第2の側部Yを容易かつ確実に上部ケーシング410の下面に貼り付けることが可能となる。
【0101】
このように、便座ヒータ450を上部ケーシング410の下面に容易に貼り付けることが可能となるので、便座400の組み立て作業が容易となり、便座装置110の生産性が向上する。その結果、便座装置110の低コスト化が実現される。
【0102】
さらに、上部ケーシング410の下面と便座ヒータ450との間に、貼り付け時において生じる便座ヒータのシワなどによる大きい空隙の発生を十分に防止できるので、空隙に起因する上部ケーシング410の温度むらの発生が十分に抑制される。したがって、使用者は快適に便座400に着座することができる。
【0103】
また、切り込み部S1、S2は、貼り付け時に発生する便座ヒータ450のシワ等による大きい空隙をなくして、便座400の温度むらや便座ヒータ450の剥離を防止できるだけでなく、便座ヒータ450を上部ケーシング410の下面に貼り付けるとき、切り込み部S1、S2によって貼り付ける際に、貼り付けるべき最適な位置に貼り付けるために、実際の貼り付け位置の微調整が容易に可能となる。そのため、貼り付け位置のバラツキを十分に抑制することができるようになる。
【0104】
しかも、本実施形態の場合、切り込み部S1、S2は、いわゆる隙間のある切り欠きではなく、隙間のない切り込みであるので、線状ヒータ460から上部ケーシング410への熱伝達をする金属シート470の空白スペースを十分に極小にできるので、温度むらをより少なくすることができるようになる。
【0105】
本実施の形態に係る衛生洗浄装置100においては、上記のように、便座装置110の便座400の組み立て作業が容易である。これにより、衛生洗浄装置100の生産性が向上する。その結果、衛生洗浄装置100の低コスト化が実現される。
【0106】
[B]第2の実施の形態
第2の実施の形態に係るシート状加熱ユニットについて、第1の実施の形態に係るシート状加熱ユニットと異なる点を説明する。
【0107】
図11は、第2の実施の形態に係る便座ヒータ450を示す平面図である。図11に示すように、本実施の形態に係る便座ヒータ450においては、第1の側部Xの内側縁部II1の略中央部から中心線CLに対してほぼ直交する方向に延びるように切り込み部S3が形成されている。また、第2の側部Yの内側縁部II2の略中央部から中心線CLに対してほぼ直交する方向に延びるように切り込み部S4が形成されている。本実施の形態においても、2つの切り込み部S3,S4は、中心線CLを対称軸として互いに略線対称となる位置にそれぞれ設けられる。
【0108】
この場合、切り込み部S3により第1の側部Xの前方部分と後方部分との位置関係に自由度が与えられる。また、切り込み部S4により第2の側部Yの前方部分と後方部分との位置関係に自由度が与えられる。
【0109】
これにより、上部ケーシング410の下面への便座ヒータ450の貼り付け時に、後部Zならびに第1の側部Xおよび第2の側部Yの後方部分を上部ケーシング410の下面に位置決めして貼り付けた状態で、第1の側部Xの前方部分と第2の側部Yの前方部分とをそれぞれ独立して上部ケーシング410の下面に位置決めして貼り付けることができる。したがって、上部ケーシング410の下面と便座ヒータ450との間に空隙が生じることを十分に防止できるように、便座ヒータ450の後部Zならびに第1の側部Xおよび第2の側部Yを容易かつ確実に上部ケーシング410の下面に貼り付けることが可能となる。
【0110】
[C]第3の実施の形態
第3の実施の形態に係るシート状加熱ユニットについて、第1の実施の形態に係るシート状加熱ユニットと異なる点を説明する。
【0111】
図12は、第3の実施の形態に係る便座ヒータ450を示す平面図である。図12に示すように、本実施の形態に係る便座ヒータ450においては、中心線CLの両側において、便座ヒータ450の後部Zの内側縁部II3から前後方向に沿って延びるように2つの切り込み部S5,S6が形成されている。本実施の形態においても、2つの切り込み部S5,S6は、それぞれ便座ヒータ450の中心線CLを対称軸として互いに略線対称となる位置にそれぞれ設けられる。
【0112】
この場合、切り込み部S5,S6により後部Zの中央部分、一端部分および他端部分との位置関係に自由度が与えられる。これにより、上部ケーシング410の下面への便座ヒータ450の貼り付け時に、後部Zの中央部分を上部ケーシング410の下面に位置決めして貼り付けた状態で、後部Zの一端部分および第1の側部Xと後部Zの他端部分および第2の側部Yとをそれぞれ独立して上部ケーシング410の下面に位置決めして貼り付けることができる。したがって、上部ケーシング410の下面と便座ヒータ450との間に空隙が生じることを十分に防止できるように、便座ヒータ450の後部Zならびに第1の側部Xおよび第2の側部Yを容易かつ確実に上部ケーシング410の下面に貼り付けることが可能となる。
【0113】
[D]他の実施の形態
(1)第1の実施の形態では、切り込み部S1,S2が上部ケーシング410の折曲部CUと重なる位置に設けられるが、切り込み部S1,S2が上部ケーシング410の折曲部CUと重なる位置からずれた位置に設けられてもよい。
【0114】
(2)第1〜第3の実施の形態では、便座ヒータ450の内側縁部II1,II2,II3に2つの切り込み部が形成される。これに限らず、便座ヒータ450の内側縁部II1,II2,II3に3つまたは4つ以上の切り込み部が形成されてもよい。例えば、便座ヒータ450に切り込み部S1,S2,S3,S4が形成されてもよく、便座ヒータ450に切り込み部S1,S2,S5,S6が形成されてもよく、便座ヒータ450に切り込み部S3,S4,S5,S6が形成されてもよく、便座ヒータ450に切り込み部S1,S2,S3,S4,S5,S6が形成されてもよい。これらの場合でも、それらの切り込み部により便座ヒータ450の各部の位置関係に自由度が与えられる。これにより、上部ケーシング410の下面と便座ヒータ450との間に空隙が生じることを十分に防止できるように、便座ヒータ450を容易かつ確実に上部ケーシング410の下面に貼り付けることが可能となる。
【0115】
(3)第1〜第3の実施の形態では、便座ヒータ450の第1の側部X、第2の側部Yの前方部分が内側に湾曲しているが、便座ヒータ450の第1の側部X、第2の側部Yの前方部分は内側に湾曲する部分を有しなくてもよい。この場合においても、便座ヒータ450の内側縁部II1,II2,II3に複数の切り込み部が形成されることにより、便座ヒータ450の各部の位置関係に自由度が与えられる。これにより、上部ケーシング410の下面と便座ヒータ450との間に空隙が生じることを十分に防止できるように、便座ヒータ450を容易かつ確実に上部ケーシング410の下面に貼り付けることが可能となる。
【0116】
[E]請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0117】
上記実施の形態においては、着座部410Tが着座面の例であり、上部ケーシング410がケーシングの例であり、便座ヒータ450がシート状加熱ユニットの例であり、金属シート470および絶縁シート490が熱伝達部材の例であり、線状ヒータ460が発熱体の例である。
【0118】
また、図9および図10の切り込み部S1,S2が第1の切り込みおよび第2の切り込みの例であり、図11の切り込み部S3,S4が第3および第4の切り込みの例であり、図12の切り込み部S5,S6が第5および第6の切り込みの例である。
【0119】
さらに、曲率最小部分CUが曲率半径が最小となる部分の例である。
【0120】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0122】
100 衛生洗浄装置
110 便座装置
200 本体部
400 便座
400H 中央部開口
410 上部ケーシング
410T 着座部
450 便座ヒータ
460 線状ヒータ
462 絶縁被覆層
463 エナメル線
463a 発熱線
463b エナメル層
470 金属シート
471,472 アルミニウム箔
490 絶縁シート
491,492 絶縁フィルム
500 ノズル装置
B2 粘着層
CU 折曲部
CL 中心線
I1〜I3,II1〜II3 内側縁部
J1〜J3,JJ1〜JJ3 外側縁部
SL1,SL3 接線
SL2,SL4 直線
S1,S2,S3,S4,S5,S6 切り込み部
R1,X 第1の側部
R2,Y 第2の側部
R3,Z 後部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側縁部、外側縁部および着座面を有するケーシングの下面に設けられるシート状加熱ユニットであって、
前記ケーシングの下面に貼り付け可能なシート状の熱伝達部材と、
前記熱伝達部材に設けられる発熱体と、
を備え、
前記熱伝達部材は、前記ケーシングの内側縁部および外側縁部に対応する内側縁部および外側縁部を有し、
前記熱伝達部材の内側縁部に複数の切り込みが形成されている、
シート状加熱ユニット。
【請求項2】
前記熱伝達部材は、
前後方向に延びる中心線を対称軸として略線対称となる位置にそれぞれ設けられる第1の側部および第2の側部と、
前記第1の側部および前記第2の側部の一端を互いにつなぐ後部と、
を有しており、
前記複数の切り込みは、前記中心線を対称軸として略線対称となる位置に設けられている、
請求項1に記載のシート状加熱ユニット。
【請求項3】
前記複数の切り込みは、
前記第1の側部と前記後部との境界部に設けられる第1の切り込みと、
前記第2の側部と前記後部との境界部に設けられる第2の切り込みと、
を含んでいる、
請求項2に記載のシート状加熱ユニット。
【請求項4】
前記複数の切り込みは、
前記第1の側部に設けられる第3の切り込みと、
前記第2の側部に設けられる第4の切り込みと、
を含んでいる、
請求項2または3に記載のシート状加熱ユニット。
【請求項5】
前記複数の切り込みは、前記後部に設けられる第5の切り込みおよび第6の切り込みを含んでいる、
請求項2〜4のいずれかに記載のシート状加熱ユニット。
【請求項6】
前記ケーシングの下面は、前後方向に延びる中心線を対称軸として略線対称となる状態で湾曲するように形成されるとともに前記中心線の両側に曲率半径が最小となる部分をそれぞれ有し、
前記複数の切り込みは、前記ケーシングの前記曲率半径が最小となる部分に重なる位置にそれぞれ設けられる第7の切り込みおよび第8の切り込みを含んでいる、
請求項1〜5のいずれかに記載のシート状加熱ユニット。
【請求項7】
便器上に取り付け可能な便座を備え、
前記便座は、
内側縁部、外側縁部および着座面を有するケーシングと、
請求項1〜6のいずれかに記載のシート状加熱ユニットと、
を備える、
便座装置。
【請求項8】
便器上に取り付け可能でかつ給水源から供給される洗浄水を人体に噴出する衛生洗浄装置であって、
請求項7記載の便座装置と、
前記便座装置の前記便座を前記便器の上面上で開閉可能に支持する本体部と、
前記本体部に設けられ、給水源から供給される洗浄水を人体に噴出するノズル装置と、
を備える、
衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−56100(P2011−56100A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210159(P2009−210159)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】