説明

シート状化粧料

【課題】油溶性紫外線吸収剤のシートから肌への移行性及び肌上での紫外線効果の持続性に優れているシート状化粧料を提供すること。
【解決手段】下記の成分(a)〜成分(c)および水を含有する水中油型乳化組成物を、シート状基材に含浸させてなるシート状化粧料であって、(b)/(a)の質量比が5/100〜25/100であるシート状化粧料が提供される。
(a)油溶性紫外線吸収剤
(b)(a)と相溶性があり、SP値が7.0〜9.5である油剤
(c)アルキル変性カルボキシビニルポリマー

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯性や使用時の利便性等の理由から各種の有効成分(紫外線吸収剤、保湿剤、美白剤、血行促進剤など)を含む化粧料組成物を含浸させたシート状化粧料が提供されている。シート状化粧料に用いられる化粧料組成物はその生産性と経時安定性から主に水相を外相とする水中油型乳化組成物として用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−335627号公報
【特許文献2】特開平7−187950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたような、水中油型乳化組成物は、耐水性の面で十分でなく、有効成分が皮膚上から汗などによって容易に流れ落ち、十分な残留性が得られないという課題がある。
一方、十分な残留性を得るために、特許文献2には、アルキル変性カルボキシビニルポリマーとシリカ被覆粉体を用いる技術が開示されている。
しかしながら、特許文献2に開示された組成物を特にシート状化粧料に用いる場合は、有効成分の肌への移行性が十分でなく、組成物の本来の性能が発揮されない場合があることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、下記の成分(a)〜成分(c)および水を含有する水中油型乳化組成物を、シート状基材に含浸させてなるシート状化粧料であって、(b)/(a)の質量比が5/100〜25/100であるシート状化粧料が提供される。
(a)油溶性紫外線吸収剤
(b)(a)と相溶性があり、SP値が7.0〜9.5である油剤
(c)アルキル変性カルボキシビニルポリマー
【0006】
ここで、成分(b)が成分(a)と相溶性があるとは、20〜30℃の範囲内のいずれかの温度において1:1の質量比で混合したときに透明な一相になることを意味する。
【0007】
また、本発明によれば、
シート状基材に含浸させてシート状化粧料を得るための水中油型乳化組成物であって、
下記の成分(a)〜成分(c)および水を含有し、
(b)/(a)の質量比が5/100〜25/100である水中油型乳化組成物も提供できる。
(a)油溶性紫外線吸収剤
(b)(a)と相溶性があり、SP値が7.0〜9.5である油剤
(c)アルキル変性カルボキシビニルポリマー
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、油溶性紫外線吸収剤のシートから肌への移行性及び肌上での紫外線効果の持続性に優れているシート状化粧料、水中油型乳化組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明のシート状化粧料は、下記の成分(a)〜成分(c)および水を含有する水中油型乳化組成物を、シート状基材に含浸させてなるシート状化粧料であって、(b)/(a)の質量比が5/100〜25/100である。
(a)油溶性紫外線吸収剤
(b)(a)と相溶性があり、SP値が7.0〜9.5である油剤
(c)アルキル変性カルボキシビニルポリマー
このようなシート状化粧料は、油溶性紫外線吸収剤のシートから肌への移行性及び肌上での紫外線効果の持続性に優れている。
【0010】
(成分(a))
シート状化粧料に含浸される水中油型乳化組成物に使用される成分(a)の油溶性紫外線吸収剤は、通常化粧料に用いられるものであれば特に制限はない。例えば、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5−トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5―硫酸等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル等の安息香酸系紫外線吸収剤;サリチル酸−2−エチルヘキシル、サリチル酸トリエタノールアミン等のサリチル酸系紫外線吸収剤;及び4−t−ブチル−4‘−メトキシジベンゾイルメタン、4−メトキシジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらは1種単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。この中でも、水中油型乳化組成物の安定性の観点から、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、ジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤が好ましい。
本発明に用いる油溶性紫外線吸収剤の含有量は、水中油型乳化組成物全体に対し、合計で1質量%〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜20質量%であり、さらに好ましくは5〜15質量%である。1質量%以上とすることで紫外線防御効果が確実に得られ、40質量%以下とすることで使用性に優れる。
【0011】
(成分(b))
本発明に用いられる成分(b)の油剤は成分(a)と相溶性があり、かつSP値が7.0〜9.5(cal/cm3)1/2である油剤である。ここで相溶性とは、20〜30℃のいずれかの温度において1:1の質量比で混合したときに透明な一相になることを意味する。SP値は溶解度パラメーターと呼ばれるもので、この値から物質の相対的な極性の高さを推定することができる。SP値は種々の方法で実測又は計算で決定される。本発明においては、Fedorsの方法に従い、 J. BRANDR UP著「POLYMER HANDBOOK 4th 」(JHON WILEY & SONS,INC 1999年発行)、VII685〜686項に示されるパラメーターを用いて求めたものである。油剤が混合物の場合は、成分(b)の油剤のSP値は、加重平均(構成成分それぞれのSP値と質量分率の積の総和)として求める。また、天然物やポリマーなどの構造式が特定できないものについては代表構造に従って計算する。
好ましい油剤のSP値は7.0〜9.5であり、より好ましくは7.2〜9.2であり、さらに好ましくは7.4〜9.0である。
このような成分(b)の具体例としては、流動パラフィン(SP値:7.4)、スクワラン(SP値:8.0)などの炭化水素類;ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(SP値:8.9)などのエステル油類;ホホバ油(SP値:8.6)、オリーブ油(SP値:9.3)などの植物油類などを挙げることができる。これらの油類は、水中油型乳化組成物の使用感の観点から好ましい。
成分(b)の油剤は1種単独でも2種以上を組み合わせても良く、含有量は、水中油型乳化組成物全体に対し、合計で0.05〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは0.2〜8質量%であり、さらに好ましくは1〜5質量%である。0.05質量%以上で紫外線吸収性能の持続性の効果が発揮でき、10質量%以下では使用感が良好である。
本発明のシート状化粧料に用いる水中油型乳化組成物においては、成分(a)と相溶するがSP値が上記の範囲にない油剤を含んでも良い。しかしながら、成分(a)の皮膚への高い移行性と肌上での残留性を得るためには、成分(a)と相溶する油剤成分全体のSP値の加重平均が7.0〜9.5の範囲にある必要があり、7.2〜9.2であることがより好ましく、7.4〜9.0であることが更に好ましい。なかでも、成分(a)と相溶する油剤成分全体のSP値の加重平均が、成分(a)のSP値よりも低いことが好ましい。
【0012】
水中油型乳化組成物においては、成分(a)と成分(b)の質量比が特定の割合、すなわち、(b)/(a)が5/100〜25/100であることが必要であり、10/100〜20/100の範囲であることがより好ましい。(b)/(a)の質量比を5/100以上とすることでシートから肌への移行性と肌上での持続性の向上効果を発揮し、25/100以下とすることで優れた紫外線効果の持続性が得られる。
本発明において、肌への紫外線吸収剤の移行性、肌上での紫外線効果の持続性(残留性)が高まる理由は明らかではないが、特定のSP値の成分(b)を使用し、(b)/(a)を5/100以上とすることで、(a)の油溶性紫外線吸収剤と成分(b)とで構成される油相と、水相とがなじみにくくなると推測される。従って、(a)の油溶性紫外線吸収剤を含んで構成される油相が長時間肌に残留することができると考えられる。
【0013】
(成分(c))
本発明で用いる成分(c)のアルキル変性カルボキシビニルポリマーは、アルキル基とカルボキシル基を有するビニル系の重合体で、水性媒体に溶解もしくは膨潤状態となって増粘・ゲル化作用を示すものであり、例えば次のX、Y及びZから誘導される重合生成物(特開昭59−232107号公報)が好ましいものとして挙げられる。
X.オレフィン性不飽和カルボン酸モノマー
Y.アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数10〜30のアルコールとのエステル
Z.オレフィン性多官能性モノマー(架橋剤)
このX,Y及びZは、X=95.9〜98.8質量%、Y=1〜3.5質量%、Z=0.1〜0.6質量%として重合することが更に好ましい。かかる成分(c)の具体例としては、ペムレンTR−1、ペムレンTR−2、カーボポールETD2020、カーボポール1382(いずれもルーブリゾール社製)等の市販品が挙げられる。成分(c)のアルキル変性カルボキシビニルポリマーの含有量は、水中油型乳化組成物全体に対し、合計で0.01〜2質量%であることがこのましく、さらに、好ましくは0.02〜1質量%であり、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。含有量を0.01質量%以上とすることにより、水中油型乳化組成物の乳化状態を安定化させる効果を発揮し、2質量%以下とすることで、塗布時の使用感が良好なものとなる。
【0014】
(成分(d))
本発明のシート状化粧料に使用される水中油型乳化組成物は、さらに成分(d)として、粉体を含有することが好ましい。
成分(d)の粉体は、化粧品に通常配合されるものであれば特に制限されず、無機粉体、有機粉体いずれでも好適に用いられ、その形状は、球状、板状等いずれでもよい。粉体の内部構造にも特に制限はなく、多孔質、中空、無孔質等いずれのものも使用することができる。
粉体の平均粒径は0.01〜50μmであることが好ましく、0.05〜20μmがより好ましく、0.2〜8μmがさらに好ましい。
この中で、真球度が7割以上の球状粉体が好ましく、さらに真球度が8割以上の球状粉体が好ましい。真球度の測定は、走査型電子顕微鏡にて固体粒子の電子顕微鏡写真を撮り、粒子同士が重なっていないもの100個を無作為に選び出し、粒子の投影像が真円のもの、もしくは投影像の外接円を描かせ、外接円の半径の90%の半径を有する同心円と外接円との間に投影像の輪郭がすべて含まれる形状を有しているものの数をもって粒子の真球度とする。
【0015】
かかる粒子の具体例としては、ケイ酸、無水ケイ酸、タルク、マイカ、セリサイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ゼオライト、セラミックスパウダーなどの無機粉体;シリコーンパウダー、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタン、シルクパウダー、スチレン・アクリル共重合体、フェノール樹脂、アクリル樹脂、微結晶繊維粉体、メタクリル酸アルキル共重合体およびその類似化合物等の有機粉体が挙げられる。
この中で、無水ケイ酸、タルク、マイカ、シリコーンパウダー、メタクリル酸アルキル共重合体が好ましく、特にシリコーンパウダー、メタクリル酸アルキル共重合体が好ましい。
粉体の含有量は水中油型乳化組成物全体に対し、合計で1〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%であり、さらに好ましくは4〜9質量%である。含有量を1質量%以上とすると、皮膚にさらさらとした感触を与えることができ、20質量%以下とすることで粉体が過剰に皮膚に残ってしまうことを抑制できる。
【0016】
(その他主要成分)
本発明のシート状化粧料に使用される水中油型乳化組成物は、界面活性剤、前記以外の油剤、保湿剤、防腐剤、及び、香料を含有しても良い。
界面活性剤としては、通常化粧料に用いられるものであれば特に制限はない。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンイソステアリン酸ジエステル、α−モノイソステアリルグリセリルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸ポリグリセリド等のノニオン性界面活性剤;アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム、モノアルキルリン酸塩、N−ステアロイルメチルタウリンナトリウム等のアニオン性界面活性剤等が好ましい。
本発明においては、非イオン界面活性剤の親水親油バランス(HLB)は特に限定されないが、10〜18、特に12〜16の非イオン界面活性剤を用いると、優れた安定性の水中油型乳化組成物が得られる。
ここでHLBはGriffinの定義に倣い、界面活性剤分子中の親水基の重量分率に20を乗じた数値とする。
界面活性剤は1種でも2種以上を組み合わせても良く、含有量は0.01〜1質量%であり、好ましくは0.05〜0.5質量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.3質量%である。0.01質量%以上で十分に安定化の効果を発揮し、1質量%以下で使用感が良好である。
前記以外の油剤としては、例えばシリコーン類、ミツロウ等のロウ類、ミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル類が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロプレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール;アミノ酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等のNMF成分;ヒアルロン酸、コラーゲン、ムコ多糖類、及び、コンドロイチン硫酸等の水溶性高分子物質等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記防腐剤としては、例えば、安息香酸塩、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、2,4,4´−トリクロロ−2´−トリクロロカルバニリド、塩化ベンザルコニウム、ヒノキチオール、レゾルシン、及び、エタノール等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
(その他任意成分)
以上のその他の成分のほか、前記化粧料には、その効果を損なわない限り、従来より、化粧料、医薬品などで公知の任意成分を、適宜利用することが出来る。例えば、アルコール類、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、色素、乳化安定剤、収斂剤、清涼剤、ビタミン類、アミノ酸類等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明のシート状化粧料に用いる水中油型乳化組成物は、5℃〜50℃の間で液体のものであることが好ましい。この中で粘度が10〜20000mPa・sであることが好ましく、さらに100〜8000mPa・s、さらに400〜5000mPa・sであることが感触と移行性の点で好ましい。
ここで、粘度はB型粘度計で測定するもので、25℃の条件化において、ローター(No.1〜No.4)および回転数(6,12,30,60rpm)は組成物の粘度範囲に応じて指示値が10〜100の範囲に入るように適切なものを使い、1分間回転させた後の値を読む。複数のローターと回転数の組合せが選択可能な場合は、回転数が低いほうの組合せを選ぶ。
【0019】
(水中油型乳化組成物の製法)
本発明のシート状化粧料に用いる水中油型乳化組成物は、たとえば、成分(a)と成分(b)を完全溶解させ、さらに、成分(c)を添加することで製造される。
【0020】
(シート基材)
本発明のシート状化粧料に用いるシート状基材としては、天然繊維の不織布及び織布、合成繊維の不織布及び織布、両者を混合した不織布及び織布のいずれをも使用することができる。具体的には、例えばレーヨン、アセテート、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、コットン及びこれらを混綿したものの不織布又は織布、更に湿式又は乾式パルプシート、熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等)で強化したパルプシートなどが挙げられる。この中でも使用感及び有効成分の肌への移行性に優れる点で、パルプ、レーヨン、リヨセル、コットン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするシート状基材が好ましい。
シート状基材は1枚のみで構成されてもよいし、2枚以上を重ねて構成されたものでも良い。パルプについては、柔らかさと強度を両立するために薄いパルプを重ね合わせて用いることが好ましく、更に熱可塑性樹脂で強化したパルプは、エンボス処理により適度な厚み(嵩高さ)を付与でき、かつ皮膚を濡らしすぎないので好ましい。
前記シート状基材の製造方法としては、特に制限はなく、スパンレース式、サーマルボンド式、浸漬接着式、ニードルパンチ式、スパンボンド式、ステッチボンド式、及び、メルトブローン式等、各々の目的、シート状基材の材質、使用部位等に応じて適宜選択することが可能である。
【0021】
(シート状化粧料の製法)
本発明のシート状化粧料は、前記水中油型乳化組成物を、前記シート状基材に含浸させてなる。含浸の方法としては、特に制限はなく、公知の含浸方法が挙げられる。
本発明のシート状化粧料において、上記水中油型乳化組成物の含浸率は、使用時の感触のよさという点から、シート状基材の質量の20〜500質量%が好ましく、50〜400質量%がより好ましい。
【0022】
(形態、包装)
本発明のシート状化粧料は一辺が2〜5cmのパフや、10〜30cm程度のペーパータオル様に切断されたものが使いやすくて好ましい。容器は密閉できるものであればなんでもよく、据え置き用の箱あるいは携帯用の袋状のものが好適に用いられる。シート状化粧料はこれらの容器にそのまま、あるいは折りたたみ、あるいは、巻き上げた状態で収納される。シート状化粧料はひとつの容器に数枚〜数百枚を一括で収容して包装しても良いし、個別に包装しても良い。
【0023】
(使用)
本発明のシート状化粧料は腕、首筋等を直接清拭することで、汗や皮脂をふき取ると同時に紫外線吸収剤を塗布することができる。
使用する場所、時間帯に制限はないが、日中の外出前、あるいは外出中に好適に用いられる。本発明のシート状化粧料は特に、運動後に汗が浮いたときなどに汗や皮脂のふき取りを兼ねて紫外線防御を行うことができる点で優れている。
【実施例】
【0024】
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1〜14、比較例1〜3)
【0025】
表1に示す組成(質量%)の水中油型乳化組成物を調製し、シート状基材に含浸させ、シート状化粧料を製造した。具体的には、シート状基材としてパルプシート(坪量60g/m)0.8gを用い、これに水中油型乳化組成物を2.4g含浸させ、シート状化粧料を得た。
なお、表1に示す成分(b)は、いずれも成分(a)と相溶性がある。また、表1中の精製水の欄のBLは「バランス」を示す。
【0026】
(評価)
(1)シートからの紫外線吸収剤の移行性
作成したシート状化粧料で、3M社製トランスポアサージカルテープを貼った石英板を5回清拭したのち、SPFアナライザー(labsphere社製)を用いて前記石英板のUV-A領域の透過率を測定した。
別途、表1に示した組成の水中油型乳化組成物を、3M社製トランスポアサージカルテープを貼った石英板に0.2ml/100cmになるように塗布したものについても同様にUV-A透過率を求め、以下の式の「水中油型乳化組成物のUV-A透過率」とした(範囲は50mm×80mm)。シートからの紫外線吸収剤の移行度は以下の式で求めた。
シートからの紫外線吸収剤の移行度(相対値)=(シート状化粧料で清拭した石英板のUV-A透過率)/(水中油型乳化組成物のUV-A透過率)
各透過率は5回測定の平均値とした。
移行度は、以下のA〜Dで評価した。
【0027】
移行度
A 1.0以上
B 0.9以上、1.0未満
C 0.8以上、0.9未満
D 0.8未満
【0028】
(2)使用感
シート状化粧料を使用し、使用直後および3時間後の使用感を下記の基準に従って専門パネラーが評価した。
使用感(直後)
A 良い
B やや良い
C 普通
D やや悪い
E 悪い
【0029】
使用感(持続性)
A 続く
B やや続く
C 普通
D やや続かない
E 続かない
【0030】
(3)紫外線効果の持続性
表1のシート状化粧料で3M社製トランスポアサージカルテープを貼った石英板を清拭し、直後および3分の水浸漬処理の後にSPF測定を行い、水浸漬処理後のSPF値の変化を下記の基準に従って評価した。
SPF測定は、SPFアナライザー(labshere社製)を用いて紫外領域の吸光度を測定し、Method for the in vitro determination of UVA protection provided by sunscreen products, Guideline prepeared by the COLIPA in vitro photoprotection methods task force(2007)に従い、計算し、5回測定の平均値をSPF値とした。
水処理後のSPF値の減少率
A 10%以内
B 20%以内
C 30%以内
D 40%以内
E 40%を超える
結果を表1に併せて示す。
なお、表1中の含浸率とは、シート状基材にどの程度水中油型乳化組成物が含浸されているかを示すものであり、シート状化粧料の質量をシート状基材の質量で除して算出したものである。
【0031】
【表1】

【0032】
本発明のシート状化粧料は、紫外線吸収剤の移行性が高く、また紫外線吸収剤の残留性にも優れることがわかる。さらに、本発明のシート状化粧料は感触が良く、それが持続し、また、水に浸漬されても高い紫外線防御効果が続くことがわかる。
本発明のシート状化粧料はまた、清拭直後のサラサラ感およびその持続性にも優れている。
さらに、実施例1〜5,実施例8,9を比較すると、(b)/(a)が10/100以上、20/100以下である場合に、特に、紫外線吸収剤の移行性が高く、また残留性にも優れることがわかる。
また、実施例1,2,5,8,9を参照すると、成分(b)の含有量が0.5〜1質量%の場合には、使用直後のさらさら感に非常に優れたものとなることがわかる。
さらに、実施例1〜14では、成分(c)を0.06質量%以上、0.4質量%以下含み、水中油型乳化組成物が非常に安定性に優れていた。
一方、(b)/(a)が30/100である比較例1,3/100である比較例2では、紫外線吸収剤の移行性および残留性が低いことがわかる。
また、SP値が9.8である油剤を使用した比較例3では、紫外線吸収剤の移行性が低く、さらに、紫外線吸収剤の残留性が非常にわるいことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(a)〜成分(c)および水を含有する水中油型乳化組成物を、シート状基材に含浸させてなるシート状化粧料であって、
(b)/(a)の質量比が5/100〜25/100であるシート状化粧料。
(a)油溶性紫外線吸収剤
(b)(a)と相溶性があり、SP値が7.0〜9.5である油剤
(c)アルキル変性カルボキシビニルポリマー
【請求項2】
前記成分(a)の油溶性紫外線吸収剤が全水中油型乳化組成物あたり、1〜40質量%である請求項1記載のシート状化粧料。
【請求項3】
前記成分(b)の油剤が全水中油型乳化組成物あたり0.05〜10質量%である請求項1および2のいずれか1項記載のシート状化粧料。
【請求項4】
前記成分(c)のアルキル変性カルボキシビニルポリマーが全水中油型乳化組成物あたり0.01〜2質量%である請求項1〜3のいずれか1項記載のシート状化粧料。
【請求項5】
前記成分(b)が流動パラフィン、スクワラン、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ホホバ油、オリーブ油からなる群から選択される1種以上である請求項1〜4のいずれか1項記載のシート状化粧料。
【請求項6】
前記水中油型乳化組成物が、更に成分(d)として粉体を含有する請求項1〜5のいずれか1項記載のシート状化粧料。
【請求項7】
前記成分(d)の粉体が全水中油型乳化組成物あたり1〜20質量%である請求項6に記載のシート状化粧料。
【請求項8】
シート状基材に含浸させてシート状化粧料を得るための水中油型乳化組成物であって、
下記の成分(a)〜成分(c)および水を含有し、
(b)/(a)の質量比が5/100〜25/100である水中油型乳化組成物。
(a)油溶性紫外線吸収剤
(b)(a)と相溶性があり、SP値が7.0〜9.5である油剤
(c)アルキル変性カルボキシビニルポリマー

【公開番号】特開2011−126848(P2011−126848A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289559(P2009−289559)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】