説明

シート状化粧料

【課題】、高い密着感を有し、使用中シートが剥がれにくい含浸シート状化粧料を提供する。
【解決手段】シートに化粧料を含浸したシート状化粧料であって、
シートが、
(A)50〜100質量%のコットンで構成される不織布で、
(B)目付け 60〜100g/m2
(C)空隙率 89〜99%のものであり、
化粧料が、
(D)液状油 1.20〜12.75質量%、
(E)架橋型オルガノポリシロキサン 0.05〜1.25質量%、
(F)キサンタンガム 0.01〜0.17質量%、
(G)水
を含有するものであるシート状化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布などのシート基材に化粧水、乳液を含浸したり、ゲルを塗工した化粧料は、パックやふき取り剤として多用されてきた。皮膚に保湿効果を付与することを目的とするシート状化粧料は、これまで様々な種類が提案されてきた。例えば、不織布等のシート基材を支持体とし、化粧水や乳液、クリーム等を含浸させたもの(特許文献1)や、高分子を架橋させた膏体に有効成分を保持させたものなどである。これらシート状化粧料の利点は、皮膚上にシートを密着、担持させ、一定時間閉塞することにより、保湿等の効果を高め、優れた潤いを付与できることである。
【0003】
近年、化粧水や乳液をシートに含浸させた含浸タイプのシート状化粧料は、「顔に貼付するだけでケアが完了する」という簡便さから、需要が増大している。それに伴い、より使い心地が良く、顔面へのシートの密着性が良好で、長時間貼っていてもシートが剥がれ落ちないことが求められている。
【0004】
含浸タイプのシート状化粧料は、含浸する化粧料の液量をコントロールすることが重要で、適正量からはずれると、使用中にシートから液が垂れ落ちてしまったり、逆にシートが顔に密着しなかったりする。液の垂れ落ちを防止するため、含浸する化粧料の量を少なくすると、製造途中で化粧料がシートに十分含浸されない「含浸ムラ」が発生したり、使用中密着感が得られないという問題が生じる。
【0005】
含浸型シート状パックにおいて、化粧料中にシリコーンを含有させることで、密着性と閉塞性を高めることが検討されている(特許文献2)。しかしながら、従来のコットン100%不織布やレーヨン100%不織布で嵩の低い不織布は、貼付面の反対側の層から化粧料中の揮発成分の蒸散が早いため、経時での肌への密着性は弱く、乾燥して剥がれてしまうという問題があった。
【0006】
シートの密着性を上げるため、形状にも様々な工夫がなされており、顔面を1枚のシートで覆うタイプのもの(上下一体型)や、顔半分を上下で分け2枚のシートで覆うもの(上下セパレート型)、眼の部分を境に上下2枚で覆うもの(上下セパレート型)などが提案されており、どのタイプも切れ込みを入れることや上下に分けたシートが貼付時互いに重なりあうことで、密着性を上げる試みがなされている(特許文献3)。不織布素材や不織布表面処理、目付けや厚みなどに特徴を持たせたることにより、密着性を向上させることも検討されている(特許文献4)が、含浸する化粧料とのマッチングまでは考慮しておらず、その密着性・持続性には課題が残っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−114664号公報
【特許文献2】特開2000−256128号公報
【特許文献3】特開2002−142861号公報
【特許文献4】特開2008−261067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高い密着感を有し、使用中にシートが顔面から剥がれにくい含浸シート状化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、シートとして、親水性繊維の不織布で、特定の目付と空隙率の不織布を用い、含浸する化粧料として、液状油、架橋型オルガノポリシロキサン、キサンタンガム及び水を組み合わせて用いることにより、シートから化粧料の液垂れや乾燥が抑制され、貼付直後から高い密着感を有し、使用中や経時でもシートが顔面から剥がれにくいシート状化粧料が得られることを見出した。
【0010】
本発明は、シートに化粧料を含浸したシート状化粧料であって、
シートが、
(A)50〜100質量%のコットンで構成される不織布で、
(B)目付け 60〜100g/m2
(C)空隙率 89〜99%のものであり、
化粧料が、
(D)液状油 1.20〜12.75質量%、
(E)架橋型オルガノポリシロキサン 0.05〜1.25質量%、
(F)キサンタンガム 0.01〜0.17質量%、
(G)水
を含有するものであるシート状化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシート状化粧料は、化粧料を十分に含むことができるとともに、シートから化粧料の液垂れや乾燥が抑制され、貼付直後から高い密着感を有し、その高い密着感が持続し、使用中、経時においても、シートが顔面から剥がれにくいものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明で用いるシートの形状(セパレート型)の一例を示す図である。
【図2】本発明で用いるシートの形状(セパレート型)の一例を示す図である。
【図3】本発明で用いるシートの形状(セパレート型)の一例を示す図である。
【図4】本発明で用いるシートの形状(目元用)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で用いるシートは、(A)50〜100質量%のコットンで構成される不織布である。
コットンの割合が50質量%未満では、不織布に化粧料が十分に吸収されず含浸不足になり、貼付直後の密着感が得られない。同時に、不織布に含まれる化粧料の量が少ないため、より乾きやすくなり経時の密着性も低下してしまう。さらに、コットンのような天然素材を用いると、不織布の肌ざわりが柔らかく、肌への追随性が増すため、より高い密着性を得ることができる。
【0014】
コットン以外で、不織布の素材としては、吸水性を有する天然繊維、化学繊維等が挙げられる。天然繊維としては、パルプ、麻等の植物系天然繊維、羊毛、絹等の動物系天然繊維などが挙げられる。化学繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、アクリル、ナイロン等の合成繊維、パルプより得られるビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、溶剤紡糸されたレーヨンであるリヨセル、テンセル等の再生繊維などが挙げられる。肌への密着性を考慮すると天然繊維が好ましい。
【0015】
また、シートは、目付け(シートの単位面積当たりの繊維重量)が、60〜100g/m2、好ましくは70〜90g/m2である。この範囲内であれば、高い密着感を得ることができ、使用中に剥がれにくくなる。
目付けは、JIS L1096に従って、測定される。
【0016】
さらに、シートの空隙率は、89〜99%である。この範囲内であれば、水分をたくさん抱え込むことができ、経時の水分蒸散を抑え、初期と経時での肌密着性を担保することができる。
空隙率は、以下の式により、求められる。
【0017】
空隙率(%)
=100−{(目付け(g/cm2)/不織布の比重(g/cm3)/厚さ(cm))×100}
【0018】
肌の凹凸に合わせてシートが追随すると密着感が向上するため、シートが薄いと高い密着感が得られるのが一般的である。しかしながら、シートが薄いとシートに保持できる化粧料の量が少なく制限されるため、初期の密着性は得られても、あくまで一時的で、化粧料の量の少なさゆえ水分の蒸散が早く、シートが乾いて剥がれ落ちてしまう。本発明においては、シート内部の空隙率を高め、シートにたくさんの化粧料を抱え込むことができるようにし、水分が多少蒸散しても、シートは乾燥せず、経時でも密着性を維持することができる。
【0019】
このようなシートは、例えば、スパンレース法、ニードルパンチ法、サーマルボンド法、スパンボンド法等により製造される。これらの中でも、スパンレース法が、繊維間を未接着状態で絡合でき、シートの柔軟性が維持可能で顔面へのフィット性がより高いので好ましい。
また、シートは、乾燥工程前にプレスしない「ノンプレス」であるのが好ましい。乾燥時間を短縮するためにプレスする場合もあるが、プレスすると不織布が押さえつけられて薄くなるため、密に詰まった不織布になり、固さが出てしまう。製造工程の乾燥前にプレスしない(ノンプレス)ことで、柔軟さを残したまま嵩を高くし、空隙率を上げることができる。また、不織布表面の毛羽立ちを残し、不織布同士の密着力を高くし、肌への密着感も高めることができる。
【0020】
本発明においては、シートとして、コットン100質量%のスパンレースかつノンプレスの不織布が好ましい。
このようなシートとしては、例えば、コットエースC080S/Z09(目付80g/m2;空隙率93%;ユニチカ社)等を使用することができる。
【0021】
シートの形状としては、顔面に貼付されるものであれば特に制限されないが、例えば、顔面を1枚のシートで覆うタイプ(上下一体型)、顔半分を上下で分け2枚のシートで覆うもの(上下セパレート型)、眼の部分を境に上下2枚のシートで顔面を覆うもの(上下セパレート型)や、目元のみを覆うものなどが挙げられる。
シートの形状の例を、図1〜図4に示す。
【0022】
通常、顔半分を上下2枚のシートで覆うセパレート型のマスク(上マスク(額部分を覆うマスク)と下マスク(口周辺部を覆うマスク))では、頬でシート同士が重なり合うことで、密着感がよいと認識されている。本発明では、頬部でシート同士がしっかりと密着することができる。特に、製造方法をノンプレスにすることでシートが毛羽立つため、シート同士がよく絡み合い、剥がれ落ちを抑制でき、また肌の産毛とシートの毛羽立ちも絡み合い、より剥がれにくくなる。
【0023】
本発明で用いる化粧料は、
(D)液状油 1.20〜12.75質量%、
(E)架橋型シリコーン 0.05〜1.25質量%、
(F)キサンタンガム 0.01〜0.17質量%、
(G)水
を含有するものである。
【0024】
成分(D)の液状油としては、25℃で液状の油剤であり、25℃での粘度が0より大きく10万mPa・s以下のものである。成分(D)の液状油としては、通常化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、例えば、炭化水素油、エステル油、シリコーン油等が挙げられる。
【0025】
炭化水素油としては、イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン等が挙げられる。
エステル油としては、例えば、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、リシノレイン酸オクチルドデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、エルカ酸オクチルドデシル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、アボガド油、ヒマワリ油等が挙げられる。
また、シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0026】
これらの中で、後述する成分(E)との溶解性の高いものが好ましく、イソパラフィン、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、50mPa・s以下のジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0027】
成分(D)の液状油は、成分(E)の溶媒として作用し、成分(E)と共に油性のゲルを形成し、化粧料中の水分が蒸発する過程で、蒸発表面に濃縮され、化粧料の水分の蒸散を抑制し、経時でのシートと肌の密着性を維持できるものと考えられる。さらに、保湿剤としての効果も有する。
【0028】
成分(D)の液状油は、1種以上を用いることができ、化粧料中に1.20〜12.75質量%、好ましくは3.3〜5.9質量%含有される。この範囲内であれば、使用後のべたつきがなく、シートと肌の密着性を維持でき、貼付するのに使用感の高い化粧用シートを得ることができる。
【0029】
本発明で用いる成分(E)の架橋型オルガノポリシロキサンとしては、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとビニルジメチルポリシロキサンとを架橋反応させたもの、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとフェニルビニルジメチコンとを架橋反応させたものが挙げられる。具体的には、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー等が挙げられる。
【0030】
また、これらは、低粘度の炭化水素油や、シリコーン油に溶解されて市販されている。具体的には、KSG−15((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーとシクロペンタシロキサンとの混合物)、KSG−16((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーとジメチコンとの混合物)、KSG−18((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーとジフェニルシロキシフェニルトリメチコンとの混合物)、KSG−41((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマーとミネラルオイルとの混合物)、KSG−42((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマーとトリオクタノインとの混合物)、KSG−43((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマーとスクワランとの混合物)(以上、信越化学工業社製)等の市販品を使用することができる。
成分(E)は、成分(D)をゲル化させ、化粧料中に分散されるが、化粧料を吸収したシートを肌に貼付した際、水分の蒸散に伴い化粧料表面に濃縮され、化粧料の蒸発を抑制し、シートの肌への密着性を維持するものと考えられる。
【0031】
成分(E)は、1種以上を用いることができ、化粧料中に0.05〜1.25質量%、好ましくは0.125〜0.625質量%含有される。この範囲内であれば、使用後のべたつきが少なく、使用感が良好であり、高い密着性を得ることができる。
【0032】
また、成分(D)と成分(E)の質量割合は、0.014≦(E)/(D)≦0.172、特に0.032≦(E)/(D)≦0.116であるのが、成分(D)の粘度をあまり上げず、べたつきを抑え、且つ、化粧料の水分蒸散を抑え、シートの密着性を保持する観点から好ましい。
【0033】
本発明で用いる成分(F)は、キサンタンガムであり、重量平均分子量が100万〜2000万であるものが好ましい。成分(F)のキサンタンガムは、化粧料に適度な粘性を与え、シートへの化粧料の保持性を高めると共に、高い密着感を付与することができる。
成分(F)は、化粧料中に0.01〜0.17質量%、好ましくは0.05〜0.15質量%含有される。この範囲内であれば、シートの化粧料保持性を有し、使用後のべたつきが抑えられる点から好ましい。また、貼付初期の密着感もあり、ぴったりと張り付くことができる。
【0034】
本発明において、成分(G)の水は、化粧料中の溶媒として働く。水は、化粧料中の各成分の残分をなし、50〜98.5質量%、特に60〜95.5質量%含有されるのが好ましい。
【0035】
化粧料は、架橋型オルガノポリシロキサンが溶けてゲル化している液状油と、水溶性高分子が溶けて水相で重合体を形成している水相が混ざり合って構成される。油相及び水相の各相がゲル化していることが重要であり、水相がゲル化していることは、貼付直後の初期密着性に寄与し、液状油がゲル化していることは、経時での密着性に寄与する。水相がゲル化して適度な粘性があることで、貼付時に肌とシートがぴたっとくっつき、高い密着感を与える。架橋型オルガノポリシロキサンがゲル化した液状油は、複雑な高次構造を形成し、不織布に保持させるとその液状油が化粧料の表面付近でやや凝集し、障壁として働き、水分の蒸散を抑制する。同時にゲル化した液状油は不織布にからみつき、不織布同士の密着性を上げ、経時での剥がれ落ちを抑制する。
【0036】
本発明においては、シートに含浸させる化粧料中に、更に、成分(H)として、成分(F)以外の水溶性高分子を含有することができ、ぬるぬる感やべたべた感がなく化粧料に高い粘性を与え、さらっとした感触を得ることができる。また、水に溶けてゲル化し、流動性の高いゲルを形成することで水分の蒸散をより抑制することができる。
【0037】
かかる水溶性高分子としては、通常化粧料に用いられるものであれば制限されず、合成水溶性高分子、半合成水溶性高分子、天然水溶性高分子の何れでも使用することができる。
合成水溶性高分子としては、例えば、アクリル酸・メタクリル酸アルキル(炭素数10〜30)共重合体、エチレンオキシドープロピレンオキシドブロック共重合体、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテルポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。これらの中でも使用性等の観点から、アクリル酸・メタクリル酸アルキル(炭素数10〜30)共重合体(例えば、B.F.グッドリッチ社製の「PEMULEN TR−1」等)、カルボキシビニルポリマー(例えば、B.F.グッドリッチ社製の「カーボポール980」等)が好ましく用いられる。
【0038】
半合成水溶性高分子としては、例えば、カルボキシメチルセルロース又はその塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系高分子;可溶性デンプン、カルキシメチルデンプン、メチルデンプン等のデンプン系水溶性高分子;アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸塩等のアルギン酸系水溶性高分子;多糖類系水溶性誘導体などが挙げられる。
【0039】
天然水溶性高分子としては、例えば、グアーガム、ローストビンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、デンプン、デキストリン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸が挙げられる。 また、動物系天然高分子として、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等が挙げられ、微生物系天然高分子として、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等が挙げられる。
【0040】
成分(H)としては、曳糸性がないこと、更にシートに対する化粧料の保持性が高い点から、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、カルボキシビニルポリマーが好ましい。
【0041】
成分(H)の水溶性高分子は、1種又は2種以上を用いることができ、全組成中に0.11〜0.35質量%、特に0.15〜0.25質量%含有されるのが、べたつきが少なく、みずみずしい使用感を実現するうえで好ましい。
【0042】
また、本発明においては、水溶性高分子として、成分(F)のキサンタンガムと、それ以外の水溶性高分子(H)を組み合わせて用いることにより、化粧料の粘性が得られるとともに、使用感が良好であるので好ましい。
(F)キサンタンガムのみ含有する液を含浸させた場合、肌に吸い付くようなぺたっとした粘性が得られるため、肌の凹凸にしっかりと張り付くが、乾燥しやすく剥がれやすくなる場合がある。一方、これ以外の水溶性高分子(H)を含有する液を含浸させた場合、とろりとした水あめのような粘性は得られるものの、保形性が低く崩れやすいため、肌にのせるとパシャっと崩れてそのまま馴染んでしまうため、肌に密着しない。これらを組み合わせることにより、成分(H)の水溶性高分子が、水相中で水性成分を抱え込みながら流動性のある立体構造形成して水分蒸散を抑制し、同時に、(F)キサンタンガムの独特の粘性が表面に加わることで、顔への密着性が発揮される。
このため、成分(F)と成分(H)の質量割合は、0.029≦(F)/(H)<1、特に0.2≦(F)/(H)≦0.9であるのが好ましい。
【0043】
本発明においては、特に、(F)キサンタンガムと、(H)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を組み合わせて用いるのが、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体によって増粘効果が増強されるとともに、キサンタンガムによって肌への密着感が向上し、同時に経時の乳化安定性を向上させることもでき、好ましい。
化粧料の粘度は、25℃で5万mPa・s以下であることが好ましく、1000mPa・s以上であることが、肌への密着感が向上し、且つ、液だれし難い点から好ましい。
【0044】
化粧料は、前記成分以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、多価アルコール等の保湿剤、固体脂、界面活性剤、香料、植物エキス、防腐剤、酸化防止剤、粉体、キレート剤等を含有することができる。
【0045】
本発明において、シートに含浸させる化粧料は、次のようにして製造することができる。
すなわち、一部の(G)水に成分(F)、更には成分(H)を加え、加熱して溶解する。溶解を確認後、攪拌しながら成分(D)、(E)を加え、均一にした後、残部の(G)水を加え、室温まで冷却する。
【0046】
本発明のシート状化粧料は、前記のようにして得られた化粧料をシートに含浸させたものである。前記のようなシートと化粧料を組み合わせることにより、シート中の水分が高い状態で保持され、貼付直後の初期密着感が高く、経時でも剥がれにくいものである。
【0047】
本発明のシート状化粧料は、例えば、含浸前のシートを折りたたんで包装袋に入れ、そこに化粧料を注ぎ込み、封をし、シートに液を含浸させることにより、シート状化粧料とすることができる。
シートの折りたたみ方は、上下セパレート型の場合、例えば、上マスク下マスク、それぞれを顔の中心で左右対称に1回折り、上下のマスクを重ねて包装袋に入れるのが好ましい。2回以上折りたたんでしまうと包装袋に入れた際分厚くなり、含浸ムラの原因になる。
【0048】
本発明において、化粧料は、シート質量の4〜13倍、特に9〜12倍含浸させるのが、含浸ムラが生じにくく、しかも液だれせず、高い密着感を得ることができる。
また、包装袋としてはアルミピローが好ましく、シートを二つ折りの状態で入れたときに、端が折れ曲がったりせずに入れることができる大きさであるのが好ましい。
【0049】
本発明のシート状化粧料は、包装袋から取り出し、それを肌に貼付することにより、使用することができる。
上下セパレート型の場合には、まず、上又は下のどちらか一方のシートを肌に載せる。上シートをのせた場合、眼の位置に合わせて肌にのせ、額、頬を軽く押さえて鼻の部分をフィットさせる。下シートをのせた場合、鼻および口の位置に合わせて肌にのせ、頬、フェイスラインを軽く押さえフィットさせる。次に、残った一方のシートを肌にのせ、フィットさせる。最後に顔全体を手のひらで押さえ、シートを密着させる。15分程度おいてからシートを剥がして使用する。
【実施例】
【0050】
実施例1〜9、比較例1〜5
表1に示す組成の化粧料及びシートを用いて、シート状化粧料を製造した。得られたシート状化粧料について、貼付直後の密着感、経時での剥がれにくさ、使用後のべたつきのなさ、化粧料の液垂れのなさ及び不織布への含浸スピードを評価した。また、化粧料の粘度を測定した。結果を表1に併せて示す。
【0051】
(製造方法)
(化粧料の製造)
(1)予め85℃の湯浴で0.3質量%を除く残りの成分(G)、1.5質量%のグリセリン、メチルパラベン、ポリエチレングリコール1540を溶解する。
(2)ジカプリン酸ネオペンチルグリコールを除く成分(D)、成分(E)、成分(F)、成分(H)、1.3−ブチレングリコールを溶解させる。
(3)(1)の組成物に(2)を投入し、プロペラで攪拌して混合する。
(4)水酸化カリウムでpH7.0に調整する。
(5)48〜58℃の湯浴でカモミラ抽出物、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、成分(D)(ジカプリン酸ネオペンチルグリコールのみ)、5質量%のグリセリンを混合し均一にした後、成分(G)をゆっくりと投入して、乳化物を得る。
(6)(4)の組成物に(5)で得られた乳化物を投入し、プロペラで攪拌して均一に混合する。混合後、室温まで下げ、得られた組成物を化粧料とする。
【0052】
(シート状化粧料の製造)
シートは、表1に示した不織布を図1に示す顔の形に成形したものを用いた。各シートの重さは約2.5gで、シートの各パーツをそれぞれ二つ折りにして重ね、包装袋(縦16.9cm、横12.8cmのアルミピロー)に入れる。そこに、化粧料26gを注入し、封をして化粧料をシートに含浸させ、シート状化粧料を得た(シート質量に対して10.4倍の化粧料を注入)。
【0053】
(評価方法)
(1)貼付直後の密着感:
専門パネラー10名により、各シート状化粧料を全顔に貼付してもらい、貼付直後の密着感を官能評価した。密着感が非常に高い場合を5点、非常に低い場合を1点とする5段階評価を行い、平均点を求めた。
【0054】
(2)経時での剥がれにくさ:
(1)で、各シート状化粧料を貼付して20分経過した後の密着感を、専門パネラー10名により官能評価した。非常に剥がれにくい場合を5点、非常に剥がれやすい場合を1点とする5段階評価を行い、平均点を求め四捨五入した値を記載した(なお、5点を最も良い。1点を最も悪い。とする判断である。)。
【0055】
(3)使用後のべたつきのなさ:
(1)で、各シート状化粧料を貼付して20分経過後、シートを取り、肌のべたつき度合いを、専門パネラー10名により官能評価した。べたつかない場合を5点、非常にべたつく場合を1点とする5段階評価を行い、平均点を求め四捨五入した値を記載した。
【0056】
(4)化粧料の液垂れのなさ:
(1)で、各シート状化粧料を全顔に貼付するため、アルミピローからシートを取り出したときの化粧料の液垂れ具合を、専門パネラー10名により官能評価した。化粧料の液垂れがない場合を5点、非常に液垂れする場合を1点とする5段階評価を行い、平均点を求め四捨五入した値を記載した。
【0057】
(5)不織布への含浸スピード:
表1に示した各シートを5cm四方に切った。シャーレに15gの各化粧料を入れ、そこに5cm四方に切った不織布を、下辺が化粧料に触れるくらいの高さにつるした。30分経過後、シートに化粧料が展開する高さを測定し、含浸スピードとした。
化粧料の高さが4cmを超え5cmまで展開した場合を5点、高さ3cmを超え4cmまで展開した場合を4点、高さ2cmを超え3cmまで展開した場合を3点、高さ1cmを超え2cmまで展開した場合を2点、高さ1cmしか展開しなかった場合を1点とする5段階で評価した。
【0058】
(6)化粧料の粘度:
粘度の測定は、B−M型粘度計、ロータNo.4,6rpm(1分)、30℃で測定した。
【0059】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに化粧料を含浸したシート状化粧料であって、
シートが、
(A)50〜100質量%のコットンで構成される不織布で、
(B)目付け 60〜100g/m2
(C)空隙率 89〜99%のものであり、
化粧料が、
(D)液状油 1.20〜12.75質量%、
(E)架橋型オルガノポリシロキサン 0.05〜1.25質量%、
(F)キサンタンガム 0.01〜0.17質量%、
(G)水
を含有するものであるシート状化粧料。
【請求項2】
更に、(H)キサンタンガム以外の水溶性高分子を含有する請求項1記載のシート状化粧料。
【請求項3】
成分(F)と成分(H)の質量割合が、0.029≦(F)/(H)<1である請求項2記載のシート状化粧料。
【請求項4】
成分(D)と成分(E)の質量割合が、0.014≦(E)/(D)≦0.172である請求項1〜3のいずれか1項記載のシート状化粧料。
【請求項5】
シートの目付けが、70〜90g/m2である請求項1〜4のいずれか1項記載のシート状化粧料。
【請求項6】
化粧料をシート質量の4−13倍含浸させる請求項1〜5のいずれか1項記載のシート状化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−153666(P2012−153666A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15321(P2011−15321)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】