説明

シート状温熱化粧用具

【課題】使用者の好みの化粧料等を後からシートに含浸させることができると共に、含浸させる際に、使用者が化粧料等を含浸させる位置を容易に把握することができ、誤使用を防止すること。
【解決手段】シート状温熱化粧用具1Aは、発熱部21を収容する収容体22に設けられた粘着部25,25を備えている。シート状温熱化粧用具シート1Aは、収容体22の片面に、化粧料を含浸させる化粧料含浸部10を有しており、粘着部25,25が剥離紙2で覆われ、化粧料含浸部10の少なくとも一部は剥離紙2で覆われていないものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料の肌への浸透等を温熱によって促進させるようにするシート状温熱化粧用具に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料や薬剤が塗布されたシート状の発熱具或いは水性の化粧料、医薬成分が担持されたシートが接合されたシート状発熱具を顔面に装着し、発熱具から生じる熱を利用して、化粧料や薬剤の肌への浸透を促進させたり、毛穴を開いたりさせる技術が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、鉄粉等の被酸化性金属の粉体が密封可能に収容された収容部を備えた包材の外面に、化粧料や薬剤を塗布したもの、或いは水性の化粧料、医薬成分が担持されたシートが接着等の手段によりシート状発熱具に接合した温熱化粧用具が記載されている。
【0004】
しかしながら特許文献1に記載の温熱化粧用具は、当初から化粧料や薬剤が既にシートに塗布されており、使用者の好みの化粧料を後からシートに塗布できなかった。また、化粧料等を後からシートに塗布する場合、化粧料等を塗布するシート及びシート状発熱具の表面が不織布などの繊維状シート材で構成されており、類似の風合いを有しているため、使用者が化粧料等を塗布する位置を把握することが難しく、誤使用することがあった。そのような問題について、特許文献1の温熱化粧用具には記載されていない。また、特許文献1には、構成部材数を抑え、ゴミの発生を低減することや、温熱化粧用具に使用する粘着剤の養生について考慮されていない。
【0005】
【特許文献1】特開2006−198325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の目的は、前述した欠点を解消し得るシート状温熱化粧用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発熱部を収容する収容体に設けられた粘着部を備えるシート状温熱化粧用具であって、前記収容体の片面に、化粧料を含浸させる化粧料含浸部を有しており、前記粘着部が剥離紙で覆われ、前記化粧料含浸部の少なくとも一部は該剥離紙で覆われていないシート状温熱化粧用具を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシート状温熱化粧用具によれば、使用者の好みの化粧料等を後からシートに含浸させることができ、含浸させる際に、使用者が化粧料等を含浸させる位置を容易に把握することができ、誤使用する割合が少なくなる。本発明のシート状温熱化粧用具によれば、構成部材数が抑えられているので、ゴミの発生を低減することができる。また、本発明のシート状温熱化粧用具によれば、粘着部の粘着強度を使用するまで維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のシート状温熱化粧用具を、その好ましい一実施形態に基づいて説明する。
先ず本発明の第1実施形態のシート状温熱化粧用具について、図1〜図5に基づいて説明する。
【0010】
第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aは、図2,図3に示すように、発熱部21を収容する収容体22に設けられた粘着部25,25を備えている。シート状温熱化粧用具1Aは、図1〜図4に示すように、収容体22の片面に、化粧料を含浸させる化粧料含浸部10を有しており、粘着部25,25が剥離紙2で覆われ、化粧料含浸部10の少なくとも一部は剥離紙2で覆われていないものである。
【0011】
第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aについて、詳述する。
シート状温熱化粧用具1Aは、化粧料含浸部10とシート状発熱具20とを備えている。化粧料含浸部10とシート状発熱具20とはそれぞれ別体の部材であり、接着剤等により積極的に固着されておらず、互いに分離可能になっている。
【0012】
上記化粧料含浸部10は、図1,図3に示すように、平面視して各端部が丸みを帯びた略三日月形をしており、扁平な形状をしている。化粧料含浸部10は、図2に示すように、繊維材料からなる繊維シートにより構成されている。化粧料含浸部10は、図2に示すように、収容体22の片面の上方(発熱部21の片面の上方)であって、収容体22の中央領域に配置されている。
【0013】
上記シート状発熱具20は扁平な形状をしている。図2に示すように、シート状発熱具20は、発熱部21及び該発熱部21を収容する収容体22を備えている。収容体22は扁平なものであり、複数のシート材を貼り合わせて、発熱部21が収容される密閉空間が形成されたものである。この密閉空間が発熱部21の収容部になっている。扁平な形状を有する収容体22は、肌当接面側に位置する第1の面22a及びそれと反対側に位置する非肌当接面側に位置する第2の面22bを有している。
【0014】
上記シート状発熱具20の発熱部21は化学エネルギーを利用して発熱を起こさせる部位である。利用し得る化学エネルギーとしては、被酸化性金属の酸化反応により生じる酸化熱、酸とアルカリの中和熱、無機塩類(塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、ゼオライト等)の水和熱などが挙げられる。これらのうち、取り扱い性が良好であることや、発熱量が比較的大きいこと、携帯やコンパクト化が容易であることから、本実施形態においては、被酸化性金属の酸化反応により生じる酸化熱を用いている。
【0015】
化学エネルギーを利用した発熱部21の具体的な構成は、化学エネルギーの種類に応じて適宜定められる。例えば被酸化性金属の酸化反応により生じる酸化熱を用いる場合には、金属粉(例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、銅等)、触媒となる塩類(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属の塩化物、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩化物等)、及び水を含有した組成物から構成される。この組成物には、更に保水剤(例えば、バーミキュライト、ケイ酸カルシウム、シリカゲル、シリカ系多孔質物質、アルミナ、パルプ、木紛、吸水ポリマー等)、反応促進剤(例えば、活性炭、カーボンブラック、黒鉛等)等を含有させることができる。
【0016】
上述の成分を含有する発熱部21は、抄紙発熱体又は発熱粉体の形態となっている。特に抄紙発熱体の形態になっていることが、シート状温熱化粧用具1Aの使用中に被酸化性金属等の偏りを防止でき、均一な発熱を行い得る点から好ましい。抄紙発熱体としては、湿式抄造により得られたシート状物や、発熱粉体を紙等で挟持してなる積層体等が挙げられる。そのような抄紙発熱体は、例えば本出願人の先の出願に係る特開2003−102761号公報に記載の湿式抄造法や、ダイコーターを用いたエクストルージョン法を用いて製造することができる。
【0017】
上記シート状発熱具20の収容体22における第1の面22aは非通気面になっている。一方、第2の面22bは通気面になっており、空気の透過が可能になっている。シート状発熱具20は、収容体22における第1の面22aの側が化粧料含浸部10に対向し、第2の面22bの側が外方を向くように使用される。第2の面22bを透過してきた空気(酸素)は、収容体22内に収容されている発熱部21を構成する被酸化性金属と反応し、それによって発熱が起こる。発生した熱は、第1の面22aを通じて化粧料含浸部10及び使用者の肌に付与される。
【0018】
上記シート状発熱具20の収容体22における第1の面22a及び第2の面22bは何れもシート材から構成されている。収容体22は、図2,図3に示すように、第1の面22a及び第2の面22bをそれぞれ構成するシート材を互いに接合して形成された閉じた形状の環状接合部23を有している。環状接合部23は連続に形成されている。収容体22は、環状接合部23よりも内側の部分において第1の面22aと第2の面22bとが非接合状態になっており、その非接合部分に発熱部2を収容している。
【0019】
上記シート状発熱具20の収容体22の環状接合部23の輪郭は、図3に示すように、平面視して各端部が丸みを帯びた略三日月形をしている。環状接合部23の輪郭は、先に説明した化粧料含浸部10の輪郭と略同形である。環状接合部23の輪郭は、収容体22に収容されている発熱部21の輪郭を画定するものであるから、環状接合部23の輪郭が、化粧料含浸部10 の輪郭と略同形であることは、発熱部21と化粧料含浸部10が略同形であること意味する。
【0020】
上記シート状発熱具20は、図2,図3に示すように、発熱部21よりも外側の位置にフラップ部24を備えている。フラップ部24は、発熱部21の左右両側部からそれぞれ外方に延出した第1の面22aと第2の面22bから形成されている。つまりフラップ部24は、発熱部21を挟んで該発熱部21の両側に一対設けられている。
【0021】
上記シート状発熱具20の各フラップ部24の第1の面22a上には、図2に示すように、粘着剤層がそれぞれ設けられ、粘着部25を形成している。つまり粘着部25は、発熱部21を挟んで該発熱部21の両側に一対設けられている。粘着部25は、シート状発熱具21を使用者の身体に固定する固定手段としての働きを有するものである。
【0022】
上記シート状発熱具20のフラップ部24を形成している第1の面22a及び第2の面22bは、図2に示すように、本実施形態においては、互いに接する面が接合されているが、第1の面22a上の粘着部25が身体から剥がれ難くできる点から、部分的に接合されているか又は接合されていないことが好ましい。第1の面22aと第2の面22bとがその接する面の全域で接合されていると、フラップ部24が硬くなり、身体から剥がれ易くなる場合がある。
【0023】
上記剥離紙2は、本実施形態においては、図1に示すように、矩形状であり、シート状温熱化粧用具1Aの外周より広い。剥離紙2は、シート状温熱化粧用具1Aの面において、化粧料含浸部10及び一対の粘着部25,25が形成された一方の面側(肌当接面側)とは反対の面側、即ち、シート状温熱化粧用具1Aの非肌当接面側に配されている。剥離紙2は、図1に示すように、シート状温熱化粧用具1Aの端部から外方へ延出する部分が肌当接面側に折り返されて粘着部25,25を覆っているが、化粧料含浸部10の少なくとも一部を覆っていない。即ち、剥離紙2は、図1に示すように、化粧料含浸部10の少なくとも一部を露出するように設けられている。
【0024】
上記剥離紙2上には、1個〜10個のシート状温熱化粧用具1Aが配置されており、実施形態においては、図1に示すように、2個のシート状温熱化粧用具1Aが、シート状温熱化粧用具1Aの長手方向に直交する方向に並置されている。例えば、両目の下に装着する場合には、剥離紙2上に偶数個のシート状温熱化粧用具1Aが配置されていることが好ましい。
【0025】
第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aの形成材料について説明する。
上記化粧料含浸部10を構成する繊維シートとしては、柔軟性や伸縮性を有する材料を用いることが、使用者の身体に追従しやすくなる観点から好ましい。そのような材料としては、各種不織布、例えばエアスルー不織布、スパンボンド不 織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、これらの不織布の複合材料、これらの不織布とフィルムとの複合材料などが挙げられる。繊維シートの坪量は、含浸させる化粧料の含浸量や、化粧料含浸部10の取り扱い性等を考慮して決定され、例えば10〜250g/m2、特に30〜100g/m2とすることができる。
【0026】
上記シート状発熱具20を構成する収容体22のうち、肌当接面側の第1の面22aは、非透湿性のフィルム、例えば各種熱可塑性樹脂からなるフィルムが用いられる。収容体22のうち、非肌当接面側の第2の面22bは、透湿性フィルム又は通気性フィルムから構成される。透湿フィルムの場合には、熱可塑性樹脂と無機フィラーとを溶融混練して押し出した溶融物をフィルム状に成形し、成形されたフィルムを一軸又は二軸延伸することで製造される。透湿性フィルムの透湿度(JIS Z0208、40℃、90%RH)は、200〜5000g/(m2・24hr)、特に500〜1000g/(m2・24hr)であることが好ましいが、透湿度(JIS Z0208で規定)及び通気度(JIS P8117で規定)は、発熱体の組成や量、使用形態(短時間 発熱型、長時間発熱型、水蒸気発生型等)により適宜選定される。収容体22の肌触りを良好にする目的で、透湿フィルムの外面に不織布等の風合いの良好なシートをラミネートしてもよい。
【0027】
上記シート状発熱具20の粘着部25としては、例えばホットメルト粘着剤を用いることができる。ホットメルト粘着剤は一般に粘着基剤、粘着付与樹脂及び軟化剤を構成成分として含有している。
【0028】
上記剥離紙2としては、基材となる紙と、粘着部25に接する剥離層から構成されている。基材と剥離層との間には、剥離層の薬品が基材に染込む事を防止するために目止め層を設けている。基材、目止め層及び剥離層それぞれの材質及び目付け等は用途により自由に選択可能であり、基材としては上質紙、グラシン紙等、目止め層としてはポリエチレン、ポリプロピレン等、剥離層としてはシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0029】
以上の構成を有するシート状温熱化粧用具1Aの使用方法について説明する。
本使用方法は、図4,図5に示すように、化粧料を含浸させたシート状温熱化粧用具1Aを使用者の目の下に装着して、温熱効果によって、化粧料成分の肌への浸透を促進させ、例えば、目の下の肌色を改善させることに使用できるシート状温熱化粧用具1Aの使用方法である。
先ずシート状発熱具20の発熱部21が発熱しないように非通気性のフィルム容器(不図示)に封入されている図1に示すような剥離紙2付シート状温熱化粧用具1Aを、フィルム容器から取り出す。次に、図4(a)に示すように、剥離紙2で覆われていない化粧料含浸部10の部分、即ち化粧料含浸部10の露出している部分に、使用者の好みの化粧料を含浸させ、次に、図4(b)に示すように、粘着部25を被覆する剥離紙2を剥がす。そして含浸させた化粧料含浸部10を使用者の肌に当接させる。この状態が図5(a)に示されている。化粧料含浸部10が化粧料を含浸したことにより肌から脱落しない程度の粘着性又は吸着性を有している場合には、化粧料含浸部10に手を添えずとも該化粧料含浸部10は使用者の肌に固定(仮固定)される。次に図5(b)に示すように、化粧料含浸部10(図示せず)を覆うように、その上にシート状発熱具20を重ねる。このとき、シート状発熱具20における発熱部21の位置が、化粧料含浸部10(図示せず)と一致するようにする。化粧料含浸部10(図示せず)の上にシート状発熱具20を重ねた状態下に、シート状発熱具20に備えられた粘着部25によってシート状温熱化粧用具1Aを使用者の身体(本実施形態では目の下)に固定して使用する。
【0030】
以上の構成を有するシート状温熱化粧用具1Aを使用した際の作用効果について説明する。
第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aは、繊維シートからなる化粧料含浸部10を備えているため、使用者の好みの化粧料等を後から化粧料含浸部10に含浸させることができる。
【0031】
第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aは、剥離紙2によって、シート状温熱化粧用具1Aの化粧料含浸部10の少なくとも一部が露出されているので、使用者が化粧料等を含浸させる際に、含浸させる位置を容易に把握することができ、誤使用する割合が少なくなる。
【0032】
第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aは、その左右両側に設けられた粘着部25,25が剥離紙2によって覆われているので、粘着部25,25は含浸させる化粧料等と接することがなく、粘着部25,25の粘着強度が弱くなることがない。よって、粘着部25,25の粘着強度を使用するまで維持することができる。また、剥離紙2は、粘着部25,25を覆うように、折り返されている。即ち、シート状温熱化粧用具1Aの誤使用を防ぎ、粘着部25,25の粘着強度を維持するように、シート状温熱化粧用具1Aを覆う剥離紙2は、1枚のシートからなり、構成部材数が抑えられているので、ゴミの発生を低減することができる。
【0033】
第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aは、フィルム容器から取り出された後、シート状発熱具20の発熱部21中の被酸化性金属が空気(酸素)と接触して発熱が起こっている。よって、シート状温熱化粧用具1Aが使用者の身体(本実施形態では目の下)に固定されると、その熱が化粧料含浸部10に伝わって、該化粧料含浸部10に含まれている有効成分が使用者の皮膚に浸透しやすくなる。また発生した熱が使用者の肌にも伝わって毛穴が開き、それによっても有効成分が使用者の皮膚に浸透しやすくなる。皮膚に熱を付与している時間は5〜60分程度とすることが好ましい。この間の皮膚温度は37〜42℃に維持されることが好ましい。このような皮膚温度となるようなシート状発熱具20の発熱温度や発熱時間は、シート状発熱具20を構成する収容体22の透湿度、通気度や、収容体22に収容される発熱部21の組成によってコントロールすることができる。
【0034】
第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aの化粧料含浸部10は、図5(b)に示す状態においては、その含浸層自体が有する粘着性、吸着性及びシート状発熱具20による押さえつけによって、使用者の身体に固定されている。しかし化粧料含浸部10は、シート状発熱具20とは、お互いの接する面全体で一体化されてなく、非固定の状態になってい る。したがって化粧料含浸部10は、シート状発熱具20とは独立して使用者の身体に追従可能になっている。ここで、身体に追従可能とは、身体の表面状態の変化に対して追従可能であるとの意味である。また、身体の表面状態の変化とは、シート状温熱化粧用具1Aを例えば顔面に適用した場合に、顔面の表情の変化、動き、皮膚状態の変化等のことを意味する。その結果、シート状発熱具20が発熱し、それに起因してシート状発熱具20が硬くなり、剛軟性が高くなったとしても、化粧料含浸部10はその影響を受けず、該化粧料含浸部10の身体からの浮きや剥がれが効果的に防止される。しかもシート状温熱化粧用具1Aは、シート状発熱具20に設けられた粘着部25の粘着力を過度に高めなくても上述の浮きや剥がれが防止されるので、肌の突っ張り感が生じることも防止され、更に使用後のシート状発熱具20を肌から引き剥がすときに粘着部25の粘着剤が肌に残ってしまったり、肌へ大きな刺激やストレスを与えて、肌荒れなどのトラブルを引き起こしたりすることも防止される。
【0035】
浮きや剥がれを生じることなく化粧料含浸部10が使用者の身体に十分に追従するためには、化粧料含浸部10は柔軟であることが好ましい。少なくとも化粧料含浸部10は、発熱の前後を問わずシート状発熱具20よりも柔軟であることが好ましい。この観点から、化粧料含浸部10は、JIS L1096で規定する、ハンドルオメーターにより測定された剛軟性の値が、同装置を用いて測定されたシート状発熱具20の剛軟性の値よりも小さいことが好ましい。要するに適用する肌の形状に沿って自由に変形可能な柔らかさや伸縮性を有していることが好ましい。
【0036】
シート状温熱化粧用具1Aは、化粧料含浸部10に含浸させる液状の化粧料入りの容器と、同一のパッケージに収容し、シート状温熱具セットの状態で販売されれば、販売促進効果が期待できる。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態のシート状温熱化粧用具について、図6,図7に基づいて説明する。
第2実施形態のシート状温熱化粧用具1Bについては、第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aと異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aと同様であり、第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aの説明が適宜適用される。
【0038】
第2実施形態のシート状温熱化粧用具1Bは、図6,図7に示すように、シート状発熱具20における粘着部25の配置位置が第1の実施形態と相違している。具体的には、シート状温熱化粧用具1Bにおいては、粘着部25がシート状発熱具20の平面視において発熱部21よりも外側の位置に設けられていると共に、粘着部25が発熱部21の左右両側部にも設けられている。換言すれば、粘着部25が発熱部21の存する位置にも設けられている。但し粘着部25は、シート状発熱具20における発熱部21の存する位置の全域には設けられていない。
【0039】
以上の構成を有するシート状温熱化粧用具1Bの使用方法及びシート状温熱化粧用具1Bを使用した際の作用効果について説明する。
第2実施形態のシート状温熱化粧用具1Bの効果については、第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aの効果と異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aの効果と同様であり、第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aの効果の説明が適宜適用される。
本使用方法は、先ず剥離紙2で覆われていない化粧料含浸部10の部分、即ち化粧料含浸部10の露出している部分に、使用者の好みの化粧料を含浸させ、次に、粘着部25を被覆する剥離紙2を剥がし、シート状温熱化粧用具1Bの肌当接面側を露出させる。そして露出したシート状温熱化粧用具1Aを、図5(b)に示すように、使用者の肌に当接させる。
【0040】
シート状温熱化粧用具1Bの粘着部25は、シート状発熱具20を使用者の身体に固定することに加え、化粧料含浸部10をシート状発熱具20にお互いの接する面の一部分で一体化するように構成されている。その結果、第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aの使用手順(図5(a)及び(b)に示す手順)と異なり、第2実施形態によれば、化粧料含浸部10の一部を予めシート状発熱具20に固定した状態下に、該シート状発熱具20を使用者の身体に固定することができる。したがって、図5(a)及び(b)に示す手順では化粧料含浸部10を使用者の身体に当接させる動作、及びその上にシート状発熱具20を固定する動作という2回の動作が必要であったのに対し、シート状温熱化粧用具1Bでは予め化粧料含浸部10が固定されたシート状発熱具20を使用者の身体に固定するという1回の動作で足りるという利点がある。
【0041】
シート状温熱化粧用具1Bにおいては、化粧料含浸部10は、その左右両側部のみがシート状発熱具20に固定されており、その間の部位においてはシート状発熱具20と非固定状態になっている。したがって化粧料含浸部10は、シート状発熱具20とは独立して使用者の身体に追従可能になっている。その結果、シート状温熱化粧用具1Bによれば、シート状発熱具20が発熱し、それに起因してシート状発熱具20が硬くなり剛軟性が大きくなったとしても、化粧料含浸部10はその影響を受けず、該化粧料含浸部10の身体からの浮きや剥がれが効果的に防止できる。
【0042】
次に、本発明の第3実施形態のシート状温熱化粧用具について、図8に基づいて説明する。
第3実施形態のシート状温熱化粧用具1Cについては、第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aと異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aと同様であり、第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aの説明が適宜適用される。
【0043】
第3実施形態のシート状温熱化粧用具1Cは、図8(a)に示すように、剥離紙2の形態が第1の実施形態と相違している。具体的には、剥離紙2’は、図8(a)に示すように、シート状温熱化粧用具1Cの両端部から外方へ延出する部分が肌当接面側に折り返されているが、それらの折り返された部分がいずれも、シート状温熱化粧用具1Cの略中央まで延在している。剥離紙2’の折り返された部分は、粘着部25,25を覆っており、化粧料含浸部10の少なくとも一部を露出するように設けられている。具体的には、化粧料含浸部10の略三日月形状が露出するように、剥離紙2’の折り返された部分は、化粧料含浸部10の位置する相当部分をくりぬいて形成されている。尚、図8(b)に示すように、折り返した剥離紙2’’を二つ折りにし、その間にシート状温熱化粧用具1Cを挟む形態であっても良い。この場合、剥離紙2’’の肌当接面側に折り返された部分は、化粧料含浸部10の位置する相当部分をくりぬいて形成されている。
【0044】
以上の構成を有するシート状温熱化粧用具1Cを使用した際の作用効果について説明する。
第3実施形態のシート状温熱化粧用具1Cの効果については、第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aの効果と異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aの効果と同様であり、第1実施形態のシート状温熱化粧用具1Aの効果の説明が適宜適用される。
第3実施形態のシート状温熱化粧用具1Cは、図8に示すように、化粧料含浸部10の略三日月形状が露出するように、剥離紙2’で覆われているので、使用者が化粧料等を含浸させる際に、含浸させる位置を更に容易に把握することができ、誤使用する割合が少なくなる。
【0045】
本発明のシート状温熱化粧用具は、上述の第1,第2,第3実施形態のシート状温熱化粧用具に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、上述の第1,第2,第3実施形態のシート状温熱化粧用具における各構成要件は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜組み合わせて実施できる。
【0046】
例えば、上述の第1,第2,第3実施形態のシート状温熱化粧用具1A,1B,1Cにおいては、図2,図7に示すように、化粧料含浸部10とシート状発熱具20とを、互いに分離可能となるように備えているが、シート状発熱具20の粘着部25を肌当接面側の面の全域に設け、化粧料含浸部10を積極的にシート状発熱具20に分離不能となるように固着しても良い。さらに、化粧料含浸部10を肌への密着性を損なわない厚みと柔軟性を有するシートで構成し、シート状発熱具20と化粧料含浸部10とが環状接合部23で接合する、または接着剤等で当接面全域において接着することで、互いに分離不能となるようにしても良い。
【0047】
また、シート状温熱化粧用具1A,1B,1Cにおいては、剥離紙2上にシート状温熱化粧用具1A,1B,1Cを配置し、シート状温熱化粧用具1Aの端部から外方へ延出する部分を肌当接面側に折り返しているが、シート状温熱化粧用具1Aの非肌当接面側には剥離紙2を設けず、シート状温熱化粧用具1Aの肌当接面側にのみ剥離紙2を配置するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は本発明の使用前のシート状温熱化粧用具の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図2は図1におけるX1−X1線断面図である。
【図3】図3は本発明の使用中のシート状温熱化粧用具の第1実施形態を示す斜視図である。
【図4】図4(a)及び(b)はそれぞれ図1に示すシート状温熱化粧用具の使用方法の説明図である。
【図5】図5(a)及び(b)はそれぞれ図1に示すシート状温熱化粧用具の使用方法の説明図である。
【図6】図6は本発明の使用中のシート状温熱化粧用具の第2実施形態を示す斜視図である。
【図7】図7は図1におけるX2−X2線断面図である。
【図8】図8(a)は本発明の使用前のシート状温熱化粧用具の第3実施形態を示す斜視図である。図8(b)はシート状温熱化粧用具の第3実施形態のその他の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1A,1B,1C 温熱化粧具
2 剥離紙
10 シート状化粧料
11 繊維シート
12 含浸層
20 シート状発熱具
21 発熱部
22 収容体
24 フラップ部
25 粘着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部を収容する収容体に設けられた粘着部を備えるシート状温熱化粧用具であって、
前記収容体の片面に、化粧料を含浸させる化粧料含浸部を有しており、前記粘着部が剥離紙で覆われ、前記化粧料含浸部の少なくとも一部は該剥離紙で覆われていないシート状温熱化粧用具。
【請求項2】
前記シート状温熱化粧用具の一方の面側に前記化粧料含浸部及び一対の前記粘着部が形成され、他方の面側に剥離紙が配されており、該剥離紙は、該シート状温熱化粧用具の端部から外方へ延出する部分が前記一方の面側に折り返されて前記粘着部を覆っている請求項1に記載のシート状温熱化粧用具。
【請求項3】
一枚の剥離紙上に複数個の前記シート状温熱化粧用具が配置されており、複数個の該シート状温熱化粧用具の前記粘着部それぞれが、前記一方の面側に折り返された該剥離紙により覆われている請求項2に記載のシート状温熱化粧用具。
【請求項4】
前記発熱部が、抄紙発熱体を用いて構成されている請求項1〜3の何れかに記載のシート状温熱化粧用具。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のシート状温熱化粧用具及び前記化粧料含浸部に含浸する液状の化粧料入りの容器が、同一のパッケージの中に収容されたシート状温熱具セット。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載のシート状温熱化粧用具の使用方法であって、
使用時に、前記化粧料含浸部に化粧料を含浸するとともに剥離紙を剥がして使用者の肌に貼り付けるシート状温熱化粧用具の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−51486(P2010−51486A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218708(P2008−218708)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】