シート状物およびその製造方法
【課題】 本発明の目的は従来の極細繊維による研磨布では達成し得なかった優れた研磨特性を有しつつも、高い加工能率を兼ね備えた高性能研磨布を提供しようとするものである。
【解決手段】 熱可塑性ポリマーからなる極細繊維を有するシート状物であって、任意の面積0.01mm2の範囲における極細繊維が
(A)極細繊維の繊維径CV%≧40%
(B)繊維径1〜300nmである極細繊維の繊維径CV%≦30%
(C)繊維径1〜300nmである極細繊維の存在比率が10〜90%
であることを特徴とするシート状物。
【解決手段】 熱可塑性ポリマーからなる極細繊維を有するシート状物であって、任意の面積0.01mm2の範囲における極細繊維が
(A)極細繊維の繊維径CV%≧40%
(B)繊維径1〜300nmである極細繊維の繊維径CV%≦30%
(C)繊維径1〜300nmである極細繊維の存在比率が10〜90%
であることを特徴とするシート状物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気記録ディスクなどに用いるアルミニウム合金基板やガラス基板を超高精度の仕上げ加工を施すのに好適に用いられるシート状物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク等の磁気記録媒体は、高容量化、高記録密度化に伴い、磁気ヘッドの浮上高さが著しく小さくなる傾向がある。長手記録媒体の場合、磁気ヘッドと磁気ディスク基板上の磁性体を円周方向に揃えるために記録ディスクの基板表面に円状の微細な条痕を形成するテクスチャー加工という表面処理が行われている。
【0003】
長手記録媒体の研磨加工において、テクスチャリング加工は、高容量化、高記録密度化が著しいハードディスクにおいて、キーポイントとなる技術であり、磁気ディスクのテクスチャリング加工面の表面粗さ(Ra)を細かくすると、空気層流が薄くなり、磁気ヘッドが接近して記録密度を向上させることが可能となる。
【0004】
また、近年更なる高記録密度化に伴い、磁性体がディスク表面に垂直方向に配列された垂直記録媒体の開発が進められており、これに対応するためには基板の平均表面粗さ(Ra)を極小化し、かつスクラッチ欠点と呼ばれる基板表面の傷を極小化するというような優れた研磨特性が必要となる。
【0005】
研磨特性と同様に加工能率も必要である。加工能率とは一定条件のもと一定時間にできあがる加工割合であり、一般にテープ研磨加工はスラリーを滴下したテープ状物に磁気ハードディスクを回転させながら数回接触させて表面を研磨する方法をとるが、加工能率が低下すると研磨時間、スラリー量および使用するテープ量が増大するため、高コストとなる他に、テープに接触する回数が増加するためにスクラッチ欠点の増加等の研磨特性の悪化にも大きな影響を与える。
【0006】
通常、研磨特性向上のためには繊維径を可能な限り細くし、砥粒の坦持状態を均一化することが必要であるが、この場合には押し付け圧が分散することとなるために加工能率が著しく低下することとなる。また、加工能率を向上する目的で砥粒粒子径を拡大したり、テープの押し付け圧等を増加させた場合にはスクラッチ欠点を増加させることとなったり、研磨特性を低下させることとなるためにこの相反する2つの特性を両立させることは困難であり、昨今開発が急速に展開される磁気ハードディスク研磨加工において優れた研磨特性と加工能率を両立したシート状物の開発が切望されていた。
【0007】
合成繊維からなる不織布を利用した磁気ハードディスク研磨加工用シート状物においては種々の提案が行われている。
【0008】
例えば0.03dtex以下の極細繊維絡合不織布に高分子弾性体を含浸させた研磨布が提案されており、Raが1.0nm以下を達成している(特許文献1)。しかしながら、実施例に記載される研磨布表面に立毛する極細繊維は繊度0.0003dtex以上(繊維径183nm相当)範囲であり、Raの値は高々0.4nmと最近の高記録密度化に対応できるレベルに到達していない。さらに不織布を構成する極細繊維は0.03dtex以下という比較的細い繊維のみで構成されているため、押し付け圧が分散することとなり、加工能率が低下するものである。
【0009】
また、繊維質基材を構成する繊維が極細繊維が収束してなる繊維束により構成されており、繊維中心部には0.3〜10μm、外周部には0.05〜1μmと繊維径が異なる極細繊維によってRaが0.19〜0.35nmと優れた研磨特性を達成している(特許文献2)。しかしながら、外周部に存在する極細繊維の繊維径は0.05μm以上であり、研磨特性には限界があることに加え、繊維束の外層部に比較的繊維径の小さい極細繊維が局在化していることから研磨時の摩擦力によって外周部の極細繊維が脱落し、そこに砥粒凝集物や研磨クズが堆積するなどしてスクラッチ(大きな傷)を発生させるばかりか、繊維径の小さい極細繊維による繊維束が変形することによって押し付け圧が分散することとなるため、加工能率が低下することとなる。
【0010】
さらにいずれの技術においても長手記録媒体のテクスチャー加工用研磨布を目的とした技術であり、極限的な平面平滑性が必要とされる垂直記録媒体の加工には対応できないものである。
【特許文献1】特開2002−79472号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−236739号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は従来の極細繊維による研磨布では達成し得なかった優れた研磨特性を有しつつも、高い加工能率を兼ね備えたシート状物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のかかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
(1)熱可塑性ポリマーからなる極細繊維を有するシート状物であって、任意の面積100μm2の範囲に存在する極細繊維が
(A)繊維径CV%≧40%
(B)繊維径1〜300nmである極細繊維の繊維径CV%≦30%
(C)繊維径1〜300nmである極細繊維の存在比率が10〜90%
であることを特徴とするシート状物
【発明の効果】
【0013】
本発明によればシート状物の任意の場所において繊維径が大幅に異なる極細繊維が均等に混在していることによって、従来では決して成し得なかった優れた研磨特性を有しつつも、加工能率が高いシート状物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について、望ましい実施形態とともに詳細に説明する。
【0015】
熱可塑性ポリマーからなる極細繊維を有するシート状物であって、任意の面積0.01mm2の範囲に存在する極細繊維が
(A)繊維径CV%≧40%
(B)繊維径1〜300nmである極細繊維の繊維径CV%≦30%
(C)繊維径1〜300nmである極細繊維の存在比率が10〜90%
であることを特徴とするシート状物である。
【0016】
本発明のシート状物とは実質的な支持体として極細繊維からなる繊維層を有し、その極細繊維間に高分子弾性体が配置されているものであり、表面に極細繊維からなる立毛を有するものである。
【0017】
本発明の極細繊維とは、難溶解性ポリマーが単繊維直径1〜3000nmの繊維形状となったものの総称であり、形態的にはその単繊維がバラバラに分散したもの、単繊維が部分的に結合しているもの、あるいは複数の単繊維が凝集した集合体などの全ての総称である。
【0018】
本発明のシート状物の支持体となる繊維層では、任意の面積100μm2の範囲で(A)〜(C)を満たすものである。本発明における任意の面積100μm2の範囲とはシート状物をエポキシ樹脂等で包埋し、ミクロトーム等でシート状物の表面から数μmを切削し、任意の切削面を電子走査型顕微鏡(SEM)あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した面積100μm2の範囲であり、(A)〜(C)は該範囲に存在する極細繊維の径を測定し、求めた値である。シート状物の切削については必要に応じて凍結切削やレーザーによる切削を用いることができる。繊維径測定にはSEMあるいはTEMで撮影した写真を画像処理ソフト(WINROOF)で計測することができる。極細繊維の断面が異形の場合にはその断面積から算出した円の相当径をその繊維の繊維径とした。繊維径測定は同一横断面から無作為に抽出した10ヶ所について行い、(A)〜(C)は10ヶ所の平均値とする。
【0019】
本発明の(A)〜(C)について詳述します。
(A)繊維径CV%≧40%
前述した方法により得られた繊維径の測定結果から繊維径CV%=(σALL/RALL)×100(%)(σALL:標準偏差、RALL:平均繊維径))として該範囲内全体について求めた値である。
【0020】
繊維径CV%は極細繊維の繊維径のバラツキを意味し、この数値が大きい場合には繊維径が極めて小さなものと大きなものが混在していること表す。該繊維径CV%が40%未満の場合には本発明の特徴であるシート状物表面に繊維径が大きいものと小さいものが混在した立毛を形成することが困難となる。該CV%は50%以上が好ましい範囲であり、上限値は製糸安定性を考えれば実質的に80%以下である。
(B)繊維径1〜300nmである極細繊維の繊維径CV%≦30%
(A)の場合と同様に前述した方法により得られた繊維径の測定結果から繊維径が1〜300nmである極細繊維を抽出し、繊維径CV%=(σ1〜300/R1〜300)×100(%)(σ1〜300:繊維径1〜300nmの極細繊維の標準偏差、R1〜300:繊維径1〜300nmの極細繊維の平均繊維径))として該範囲内全体について求めた値である。
実質的に砥粒を坦持する繊維径1〜300nmという極めて繊維径が小さい極細繊維群に関しては、バラツキが抑制されている必要がある。すなわち、該繊維径CV%が30%を超えると、砥粒の担持状態にムラができ、研磨特性が低下する結果となる。該繊維径CV%については値が低下するに伴い研磨特性が向上することが期待されるが、本発明の作製可能な下限値は10%である。
(C)繊維径1〜300nmである極細繊維の存在比率が10〜90%
本発明における繊維径1〜300nmである極細繊維の存在比率とは繊維径が1〜300nmの範囲に入る極細繊維の断面積の合計を全ての極細繊維の断面積の合計で除した値を100倍することにより求めることができる。
【0021】
繊維径が1〜300nmである極細繊維の存在比率が10%未満の場合には砥粒の坦持状態が不均一になり、研磨特性が低下する。一方、90%を超える場合には実質的に押し付け圧を担う繊維径の大きい極細繊維が存在しないことを意味し、加工能率の低下を招く。研磨特性と加工能率を両立させるためには該存在比率は30〜90%が好ましく、更に好ましくは50〜90%の範囲である。
【0022】
本発明のシート状物は前述した(A)〜(C)を同時に満足することを特徴とするものであり、シート状物の任意の場所において繊維径が大幅に異なる極細繊維が均等に混在していることによって、立毛処理を施した際あるいは研磨加工時に繊維径が大きい極細繊維に繊維径が小さい極細繊維が絡みついた極細繊維束となる。該極細繊維束には繊維径が小さい極細繊維間に砥粒サイズ(数百nm)に合致した空隙が形成され、遊離砥粒を用いたスラリーを滴下した際には砥粒を凝集させることなく均一に担持することとなる。更に研磨面に押し付けられた際には繊維径の大きい極細繊維が実質的な押し付け圧を担い、一方で繊維径の小さい極細繊維が過剰な圧を分散させ、自己調整することによって、従来では決して成し得なかった優れた研磨特性を有しつつも、加工能率が高いシート状物を提供することができる。
【0023】
本発明のシート状物は、極細繊維同士の交差点が、SEMを用いて2000倍にて観測した面積0.01mm2の範囲50ヶ所において、平均で500個以上存在していることが好ましく、より好ましくは700個以上である。
【0024】
本発明における極細繊維同士の交差点の数は、シート状物表面の立毛の分散状態に相当し、極細繊維を含むシート状物の表面をSEMあるいはTEMで撮影し、無作為に面積0.01mm2の範囲を抽出し、シート状物表面に露出した極細繊維同士の交差点をカウントするものである。合計50枚以上の表面写真を測定し、各写真についてカウントを行い、50ヶ所の平均を求め小数点第一位で四捨五入するものである。このとき、表面にポリウレタンなどの高分子弾性体が露出し、極細繊維が存在しない部分や、ニードルパンチ等により大きな穴を形成している部分は避け、判定に用いないものとする。ここでいう極細繊維同士の交差点とは、片端がシート状物に入り込んおらず分散して立毛した極細繊維1本1本同士の交差点であり、交差角の鋭角が20°以上である交差点である。繊維が部分的に合流している箇所や、交差せずに並行している部分、フィブリル化した部分は除くものとする。また、極細繊維が2本以上凝集して形成される束同士の交差点、あるいは束状部分と極細繊維1本の間の交差点もカウントしない。なお、極細繊維が数百本単位で凝集した束の表面で、部分的に分散した極細繊維間の交差点についてはカウントするものとする。
【0025】
繊維径が小さい極細繊維と繊維径が大きい極細繊維からなる立毛が表面に分散することにより、スラリーが滴下された場合に砥粒が凝集することなく研磨布表面に付着することが可能である。更に本発明の特有の立毛が分散していることにより、本発明の効果が発揮されやすく、従来にない優れた研磨特性を有しつつも加工能率の高いシート状物となる。従って、繊維径の異なる極細繊維が繊維束内に存在する場合であっても、繊維径の大きい極細繊維と繊維径の小さい極細繊維が層を成し、存在している場合(特許文献2)には本発明の効果は得られないものである。該立毛の交差点の上限は実現可能な範囲として5000個である。
【0026】
本発明における熱可塑性ポリマーとは、ポリアミドやポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等がことを言い、ポリアミドやポリエステルに代表される重縮合系ポリマーは融点が高いことも多く、より好ましい。本発明の言う熱可塑性ポリマーには必要に応じて粒子、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させても良いし、ポリマーの性質を損なわない程度に他の成分が共重合されていても良い。
【0027】
次に本発明のシート状物の製造方法の一例を以下に具体的に示す。
(1)平均分散径が異なるアロイポリマーを2種類以上ブレンド、紡糸して得られたアロイ繊維から成る不織布を作製し、高分子弾性体を該不織布に付与し、立毛処理を施した後、該アロイ繊維から易溶解性ポリマーを溶解除去することにより極細繊維発生加工を行うことを特徴とするシート状物の製造方法。
(2)少なくとも1種類のアロイポリマーの難溶解性ポリマーの平均分散径が1000nm以下であることを特徴とする(1)記載のシート状物の製造方法。
(3)平均分散径が異なるアロイポリマーを2種類以上ブレンドするに際し、平均分散径が最大のアロイポリマーと最小のアロイポリマーとの平均分散径比が1.5以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載のシート状物の製造方法。
【0028】
本発明におけるアロイポリマーとは溶剤に対する溶解性の異なる2種類以上のポリマーをエクストルーダーなどの溶融混練機にて混練し、該記のポリマーがアロイ化した樹脂のことを意味し、易溶解性ポリマーが海(マトリックス)、難溶解性ポリマーが球状に分散した形態(ドメイン)をなしているものである。なお、平均分散径とは難溶解性ポリマーの分散径の平均値のことを意味し、アロイポリマーを溶剤処理し、表層の海成分を溶解した後で、SEMあるいはTEMにより表面を観察し、得られた写真から同観察面に存在する500個の難溶解性ポリマーの分散物の外周を円あるいは楕円として測定する。これを少なくとも3ヶ所について行い、その平均値を平均分散径とする。
【0029】
本発明のシート状物の繊維層である不織布を作製する方法は、平均分散径が異なるアロイポリマーを2種類以上ブレンドして、紡糸して得られたアロイ繊維を絡合処理することにより安定して得ることができる。アロイポリマーでない単なるチップ同士のドライブレンドによる紡糸では混練不足により最終的な極細繊維の最小繊維径が限られることに加え、せん断の影響が繊維径の決定に大きく影響するため、極細繊維束の断面を観察した場合には、口金孔内でのせん断が大きい外層に繊維径が小さい繊維が集まり、せん断が小さい内層に繊維径の大きな繊維が集まるというような同程度の繊維径を有した極細繊維が局在化し、存在することとなるため、本発明のシート状物の特徴である繊維径が大幅に異なる極細繊維が任意の場所で混在する状態にはなりにくい。
【0030】
本発明のシート状物の製造方法では少なくとも1種類のアロイポリマーの難溶解性ポリマーの平均分散径は1000nm以下であることが好ましく、800nm以下とすることが更に好ましいことである。1000nmより大きくになると1〜300nmの極細繊維を発生しにくくなる。
【0031】
平均分散径が異なるアロイポリマーを2種類以上ブレンドするに際し、平均分散径が最大のアロイポリマーと最小のアロイポリマーとの平均分散径比が1.5以上であることが好ましい。該平均分散径比を1.5以上とすることにより、不織布の任意の場所で繊維径が大きい極細繊維と繊維径が小さい極細繊維が混在した状態を形成し易くなる。平均分散径の異なるアロイポリマーの混合比率は、前述した平均分散径が1000nm以下のアロイポリマーの混合比率が、繊維径1〜300nmの極細繊維の存在比率に大きく影響するため、該アロイポリマーの総ポリマー量に対する混合比率は10〜90%の範囲とすることが好ましい。
【0032】
本発明のシート状物の繊維層である不織布を得る方法としては、短繊維をカード、クロスラッパーを用いて幅方向に配列させた積層ウェブを形成させた後にニードルパンチを施して得られる短繊維不織布や、スパンボンドあるいはメルトブロー法などから得られる長繊維不織布、抄紙法で得られる不織布および、支持体上にナノファイバーを噴霧、浸漬、あるいはコーティングして付着させたもの、織編物が好適に用いられる、中でも得られる研磨布の引張強力や製造コストなどの点からスパンボンド法は好適に用いられる。
【0033】
スパンボンド法とは、一般には溶融したポリマーをノズルより押出し、これを高速吸引ガスにより2500〜8000m/分の速度で吸引延伸した後、移動コンベア上に繊維を捕集して繊維ウェブとする方法を用いることを言う。また、繊維ウェブの捕集に引き続いて熱接着、絡合等を施すことにより一体化させたシートを得る方法が好ましい。繊維ウェブの絡合方法は、ニードルパンチやウォータジェットパンチなどの方法を適宜組み合わせることができる。
【0034】
ニードルパンチ処理のパンチング本数としては、繊維の高絡合化による緻密な表面状態を達成することを目的とし、500〜5000本/cm2であることが好ましい。500本/cm2以上であれば、表面繊維の緻密性に優れた、所望の高精度仕上げを得るのに好ましく、5000本/cm2以下とすることにより、加工性が良好であり、良好な強度を付与させることができる。ニードルパンチ後の複合繊維不織布の繊維密度は、表面繊維本数の緻密化の観点から、0.20g/cm3以上であることが好ましい。
【0035】
ウォータジェットパンチング処理を行う場合には、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。柱状流を得るには、通常直径0.05〜1.0mmのノズルから圧力1〜60MPaで噴出させる方法により好適に用いられる。
【0036】
このようにして得られたアロイ繊維不織布は、緻密化の観点から、乾熱あるいは湿熱、あるいはその両者によって収縮させ、さらに高密度化することが好ましい。
【0037】
本発明のシート状物をテープ状として、研磨加工を施す際に、寸法変化が生じると、基板表面を均一に研磨することができないため、研磨布の形態安定性の点から、本発明に用いられるシート状物の目付は100〜600g/m2であることが好ましく、150〜300g/m2であることがより好ましい。また、同様の観点から本発明のシート状物は厚みが0.1〜10mmの範囲が好ましく、0.3〜5mmの範囲がより好ましい。なお、本発明のシート状物の密度については、均一な加工性を得るためには0.1〜1.0g/cm3の範囲が好適である。
【0038】
本発明のシート状物の製造方法においては、アロイポリマーを紡糸して得たアロイ繊維からなる不織布を極細繊維化処理する前に、ポリウレタンを主成分とする高分子弾性体を付着させることが好ましい。高分子弾性体のバインダー効果により、極細繊維が研磨布から抜け落ちるのを防止し、表面に露出したときに均一に分散することが可能となるためである。
【0039】
なお、繊維と高分子弾性体との接着を緩和する目的で、高分子弾性体を付与する前にポリビニルアルコールを付与し、繊維を保護してもよい。
【0040】
本発明に用いる高分子弾性体は、例えばポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸樹脂、アクロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマーなどを用いることができるが、中でもポリウレタン、ポリウレタン・ポリウレアエラストマーなどのポリウレタン系エラストマーが好ましい。
【0041】
ポリウレタンは、ポリオール成分にポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系のジオール、もしくはこれらの共重合物を用いることができる。また、ジイソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネート、脂環式イソシアネート、脂肪族イソシアネートなどを使用することができる。
【0042】
ポリウレタンの重量平均分子量は100,000〜300,000が好ましく、より好ましくは150,000〜250,000である。重量平均分子量100,000以上にすることにより得られるシート状物の強度を保持し、また極細繊維の脱落を防ぐことができる。また、300,000以下とすることにより、ポリウレタン溶液の粘度の増大を抑制し不織布への含浸を行いやすくすることができる。
【0043】
高分子弾性体は、主成分としてポリウレタンを用いることが好ましいが、バインダーとして性能や立毛繊維の均一分散を損なわない範囲で、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系などのエラストマー樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂などが含まれていても良く、必要に応じて着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤、難燃剤、抗菌剤、防臭剤などの添加剤が配合されていてもよい。
【0044】
本発明において、高分子弾性体の含有率は、不織布の繊維の総重量に対し、10重量%以上60%重量以上であることが好ましい。含有量によって研磨布の表面状態、クッション性、硬度、強度などを適宜調整することができる。
【0045】
使用する高分子弾性体については前述の通りであるが、高分子弾性体を付与させる際に用いる溶媒としてはN,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を好ましく用いることができる。また、水中にエマルジョンとして分散させた水系ポリウレタンを用いてもよい。溶媒に溶解した高分子弾性体溶液に不織布を浸漬する等して高分子弾性体を不織布に付与し、その後、乾燥することによって高分子弾性体を実質的に凝固し固化させる。乾燥にあたっては不織布及び高分子弾性体の性能が損なわない程度の温度で加熱してもよい。
【0046】
本発明のシート状物の製造方法において、極細繊維が研磨布の表面でランダムに分散した状態となるためには、アロイポリマーを紡糸して得たアロイ繊維からなる不織布と高分子弾性体とからなるシート状物の少なくとも片面に、アロイ繊維からなる立毛面を形成させた後に、アロイ繊維に極細繊維発生処理を施すことが重要である。アロイ繊維からなる立毛部分が表面に分散した状態で極細繊維化が起こり、極細化の工程で表面に分散し、これを乾燥せしめることで表面を覆うようにして均一に分散させることができるからである。
【0047】
本発明のシート状物の製造方法においてシート状物の表面に存在する立毛は、例えばバッフィング処理により得られる。ここでいうバッフィング処理とは、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて表面を研削する方法などにより施すのが一般的である。特に、表面をサンドペーパーにより、立毛処理することにで均一かつ緻密な立毛を形成することができる。さらに、研磨布の表面に均一な立毛を形成させるためには、研削負荷を小さくすることが好ましい。研削負荷を小さくするためには、バフ段数、サンドペーパー番手などを適宜調整することが好ましい。中でも、バフ段数は3段以上の多段バッフィングとし、各段に使用するサンドペーパーの番手をJIS規定の150番〜600番の範囲とすることがより好ましい。
【0048】
次に立毛させたアロイ繊維から極細繊維を発現せしめる方法、すなわち、極細繊維発生加工は、除去する成分(易溶解性ポリマーからなる海成分)の種類によって異なるが、PEやポリスチレン等のポリオレフィンであれば、トルエンやトリクロロエチレン等の有機溶媒、PLAや共重合ポリエステルであれば、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液で浸漬・窄液を行う方法を好ましく用いることができる。
【0049】
また、極細繊維発生加工の際に極細繊維を研磨布表面に分散させ、本発明の研磨布表面の緻密化、平滑化を達成するためには、極細繊維発生加工中、もしくは発生加工後、液中にて物理的刺激を加えることが重要である。物理的刺激としては、例えばウオータージェットパンチング処理などの高速流体流処理や、液流染色機、ウィンス染色機、ジッガー染色機、タンブラー、リラクサー等を用いた揉み処理、超音波処理等を適宜組み合わせて実施しても良い。
【0050】
更に、研磨加工時のテープ伸びによる加工ムラ、スクラッチ欠点の発生を抑える点から、研磨布の極細繊維を有する面の裏面に補強層を接着する方法が好適に用いられる。
【0051】
本発明のシート状物に補強層を接着する方法としては、熱圧着法、フレームラミ法、補強層とシート状物との間に接着層を設けるいずれの方法を採用してもよく、接着層としては、ポリウレタン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエン(NBR)、ポリアミノ酸およびアクリル系接着剤などゴム弾性を有するものが使用可能である。コストや実用性を考えると、NBRやSBRのような接着剤が好ましい。接着剤の付与方法としては、エマルジョンや、ラテックス状態でシート状物に塗布する方法が好適に用いられる。
【0052】
補強層としては、織編物や熱接着繊維を用いた不織布、フィルム状物を用いることが好ましい。中でも、高精度の研磨加工を行うには、厚みや物理特性において均一なフィルム状物を使用することがより好ましい。
【0053】
ここでいうフィルムとなる素材としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系およびポリフェニルサルファイド系などのフィルム形状を有するものであれば使用可能である。汎用性を考えた場合、ポリエステルフィルムを使用することが好ましい。フィルムからなる補強層を設ける場合には、研磨加工時の研磨布の形態安定性、クッション性および基板表面へのフィット性を全て満足させる必要があるため、不織布からなるシート状物との厚みバランスをとることが重要である。不織布からなるシート状物の仕上がり厚みとしては0.4mm以上であることが好ましく、生産性の点からより好ましくは0.4〜1.5mmの範囲である。そのため、フィルムの厚みは20〜100μmとすることが好ましい。不織布からなるシート状物の厚みが0.4mm未満の場合、テクスチャー加工時の寸法変化を抑えるため補強層が必要である。一方、フィルム層の厚みが20μm未満であると、テクスチャー加工時の寸法変化を抑えられず、100μmを超えると、シート状物全体の剛性が高くなりすぎ、結果としてスクラッチなどの発生を抑えることができないため好ましくない。
【0054】
本発明のシート状物は記録媒体用磁気ディスクの研磨加工に用いる研磨布あるいはクリーニング布として用いると効果的である。
【0055】
本発明のシート状物を用いて、ハードディスク研磨加工を行う方法としては、かかるシート状物をを加工効率と安定性の観点から、30〜50mm幅のテープ状にカットして、研磨加工用テープとして用いる。
【0056】
該研磨テープと遊離砥粒を含むスラリーとを用いて、アルミニウム合金磁気記録ディスクの研磨加工を行う方法が好適な方法である。研磨条件として、スラリーは、ダイヤモンド微粒子などの高硬度砥粒を水系分散媒に分散したものが好ましく用いられる。
【0057】
砥粒の保持性と分散性の観点から、本発明の研磨布を構成する極細繊維に適合した砥粒径としては0.2μm以下が好ましいものである。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。また実施例で用いた評価法とその測定条件について以下に説明する。
(1)アロイポリマー中の難溶解性ポリマーの平均分散径
ペレット状のアロイポリマーを溶剤(易溶解性ポリマーがPLAの場合、NaOH水溶液。易溶解ポリマーがPEの場合、熱トルエン)中で抽出除去し、水洗後(株)キーエンス社製 VE−7800型SEMで観察、加速電圧20kV、ワーキングディスタンス8mm、倍率5000倍で撮影し、表面に露出した難溶解性ポリマーを画像処理ソフト(WINROOF)を用いて円あるいは楕円として500個の平均直径を求めるものであり、これを3ヶ所以上で行い、少なくとも合計1500個以上の難溶解性ポリマーの分散径を測定することで求められるものである。
(2)シート状物評価
シート状物をエポキシ樹脂で包埋し、Reichert社製FC 4E型クライオセクショニングシステムで凍結し、ダイヤモンドナイフを具備したReichert−Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で研磨布表面から1μm程度を切削した後、その切削面を(株)キーエンス製 VE−7800型走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率5000倍で撮影した。また、必要に応じて金属染色を施した。得られた写真から無作為に面積100μm2の範囲を10ヶ所抽出し、各場所の写真を画像処理ソフト(WINROOF)を用いて全ての単繊維直径を求め、最小繊維径、最大繊維径、繊維径標準偏差、全範囲内の繊維径CV%、1〜300nmの極細繊維の繊維径CV%および1〜300nmの極細繊維の存在比率を求めた。これらの値は全て10ヶ所の各写真について測定を行い、10ヶ所の平均値とした。
【0059】
全範囲の繊維径CV%、1〜300nmの極細繊維の繊維径CV%は下記式に従い求めた。
CV%=(標準偏差/平均値)×100
1〜300nmの極細繊維の存在比率は下記式に従い求めた。
存在比率=(1〜300nmの極細繊維の断面積の合計)/(全ての極細繊維の断面積の合計)
(3)極細繊維の分散性(交差点数)
極細繊維を含むシート状物の表面を(株)キーエンス社製 VE−7800型SEMで倍率2000倍で撮影し、無作為に面積0.01mm2の範囲を抽出し、シート状物表面に露出した極細繊維同士の交差点をカウントする。合計50枚以上の表面写真を測定し、各写真についてカウントを行い、50ヶ所の平均を求め小数点第一位で四捨五入するものである。このとき、表面にポリウレタンなどの高分子弾性体が露出し、極細繊維が存在しない部分や、ニードルパンチ等により大きな穴を形成している部分は避け、判定に用いないものとする。ここでいう極細繊維間の交差点とは、片端がシート状物に入り込んでいない極細繊維1本1本間の交差角の鋭角が20°以上である交差点である。繊維が部分的に合流している箇所や、交差せずに並行している部分、フィブリル化した部分は除くものとする。また、極細繊維が2本以上凝集して形成される束同士の交差点、あるいは束状部分と極細繊維1本の間の交差点もカウントしない。なお、極細繊維が数百本単位で凝集した束の表面で、部分的に分散した極細繊維間の交差点についてはカウントするものとする。シート状物の面積0.01mm2中に平均で500個以上存在した場合を、分散性良好とした。
(4)シート状物の加工能率(研磨量)
アルミニウム基板にNi−Pメッキ処理し、ポリッシング加工したディスクの重量を予め測定しておく。40mm幅のテープとしたシート状物を用い、同条件で研磨し、水洗して十分過剰スラリーや研磨クズ等を除去した後、風乾させ、その重量を測定する。研磨前と研磨後の重量差を求める測定を3回行い、その平均値を研磨量とした。同条件で研磨した場合、この研磨量が多い方が加工能率が良いこととなる。
(5)シート状物の研磨特性(基板表面粗さ)
JIS B0601(2001年度版)に準拠して、シュミットメジャーメントシステム社(Schmitt Measurement Systems,Inc)製TMS−2000表面粗さ測定器を用いて、研磨加工後のディスク基板サンプル表面の任意の10カ所について平均粗さを測定し、10カ所の測定値を平均することにより基板表面粗さを算出した。数値が低いほど研磨特性が高いことを示す。
(6)スクラッチ点数
研磨加工後の基板5枚の両面、すなわち計10表面の全領域を測定対象として、Candela5100光学表面分析計を用いて、深さ3nm以上の溝をスクラッチとし、スクラッチ点数を測定し、10表面の測定値の平均値で評価した。数値が低いほど高性能であることを示す。
【0060】
実施例1
ナイロン6(N6)40重量%とポリ乳酸(PLA)を60重量%を独立にフィードし、温度220℃に設定した2軸押出混練機にて、スクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/hr.として得たアロイポリマーAおよびスクリュー回転数100rpm、吐出量20kg/hr.として得たポリマーBの2種類のアロイポリマーを得た。それぞれのポリマー中の難溶解性ポリマーの平均分散径を測定したところ、アロイポリマーAは590nm、アロイポリマーBは915nmであった(平均分散径比:1.6)。
【0061】
前述したアロイポリマーAを90重量%、アロイポリマーBを10重量%でブレンドし、スパンボンド法により、紡糸温度240℃で口金孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度3500m/minで紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、圧着率16%のエンボスロールで、温度80℃、線圧20kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度2.0dtex、目付150g/m2とし、油剤(SM7060:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を繊維重量に対し2重量%付与し、4枚積層し、バーブ数1、バーブ深さ0.06mmのニードルを用いて、ニードルパンチを2000本/cm2施すことで、目付600g/m2のアロイ繊維からなる不織布を得た。
【0062】
この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、ポリマーアロイ繊維重量に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次に、濃度約12%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。その後、表面をJIS#180番のサンドペーパーにて研削しアロイ繊維を立毛を形成させた。
【0063】
最後に、80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることで、海成分であるPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、シート状物に物理的刺激を付与し、研磨布表面に立毛を均一に分散させた。
【0064】
このシート状物から面積100cm2の試験片を切り出し、前述した測定方法により任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でN6極細繊維の最小径11nm、最大径1556nmであり、範囲全体の繊維径CV%は50.7%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ16.7%、86%であった。極細繊維間の交差点を数えたところ、面積0.01mm2中に平均で939個であり、分散性良好であった。
【0065】
該シート状物を40mm幅のテープとし、以下の条件で研磨加工を行った。
【0066】
アルミニウム基板にNi−Pメッキ処理した後、ポリッシング加工し平均表面粗さ0.2nmに制御したディスクを用い、研磨布表面に1次粒子径1〜10nmのダイヤモンド結晶からなる遊離砥粒スラリーを滴下し、テープ走行速度を5cm/分、荷重2.0kgfの条件で20秒間研磨を実施した。研磨量は1.51mgであった。
【0067】
研磨加工後のディスクは、表面粗さが0.12nm、スクラッチ点数は17であり、加工性も良好であった。物性値および加工テスト結果は表1に示す。
【0068】
実施例2
アロイポリマーAとアロイポリマーBを共に50重量%としたこと以外は全て実施例1に従って実施した。
【0069】
このシート状物の任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でN6極細繊維の最小径17nm、最大径1788nmであり、範囲全体の繊維径CV%は54.5%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ24.0%、58.0%であった。極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm2中に平均で809個であり、分散性良好であった。
【0070】
研磨特性および加工能率については、研磨量は2.88mg、ディスクの表面粗さが0.16nm、スクラッチ点数は32であり、良好であった。物性値および加工テスト結果は表1に示す。
【0071】
実施例3
アロイポリマーAを20重量%とアロイポリマーBを80重量%としてブレンドしたこと以外は全て実施例1に従って実施した。
【0072】
このシート状物の任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でN6極細繊維の最小径20nm、最大径2268nmであり、範囲全体の繊維径CV%は62.7%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ30.0%、37.8%であった。極細繊維間の交差点を数えたところ、面積0.01mm2中に平均で771個であり、分散性良好であった。
【0073】
研磨特性および加工能率については、研磨量は4.27mg、ディスクの表面粗さが0.19nm、スクラッチ点数は49であり、良好であった。物性値および加工テスト結果は表1に示す。
【0074】
実施例4
実施例1記載の方法でスクリュー回転数100rpm、吐出量25kg/hr.としてアロイポリマーCを得た。ポリマー中の難溶解性ポリマーの平均分散径を測定したところ、1357nmであった(実施例1記載のアロイポリマーAとの平均分散径比:2.3)。
【0075】
アロイポリマーBの代わりに、このアロイポリマーCを用いたこと以外は全て実施例1に従って実施した。
【0076】
このシート状物の任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でN6極細繊維の最小径12nm、最大径2381nmであり、範囲全体の繊維径CV%は73.2%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ18.3%、83.0%であった。極細繊維間の交差点を数えたところ、面積0.01mm2中に平均で913個であり、分散性良好であった。
【0077】
研磨特性および加工能率については、研磨量は3.02mg、ディスクの表面粗さが0.14nm、スクラッチ点数は18であり、良好であった。物性値および加工テスト結果は表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
実施例5
イソフタル酸を10mol%共重合されたPBTポリマー(PBT−I)を20重量%とポリ乳酸(PLA)を80重量%を独立にフィードし、温度230℃に設定した2軸押出混練機にて、スクリュー回転数420rpm、吐出量15kg/hr.として得たアロイポリマーDおよびPBT−Iを40重量%とPLA60重量%とをスクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/hr.として得たアロイポリマーEの2種類のアロイポリマーを得た。それぞれのポリマー中の難溶解性ポリマーの平均分散径を測定したところ、アロイポリマーDは990nm、アロイポリマーEは1863nmであった(平均分散径比:1.7)。アロイポリマーDおよびアロイポリマーEを用いて複合繊維からなる不織布を作製した以外は全て実施例1に従って実施した。
【0080】
得られたシート状物の任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でPBT−Iの極細繊維の最小径69nm、最大径1176nmであり、範囲全体の繊維径CV%は50.2%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ14.6%、83.6%であった。極細繊維間の交差点を数えたところ、面積0.01mm2中に平均で903個であり、分散性良好であった。
【0081】
研磨特性および加工能率については、研磨量は3.68mg、ディスクの表面粗さが0.15nm、スクラッチ点数は23であり、加工性も良好であった。物性値および加工テスト結果は表2に示す。
【0082】
実施例6
実施例5記載の方法でスクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/hr.としてアロイポリマーFを得た。アロイポリマーF中の難溶解性ポリマーの平均分散径を測定したところ、2863nmであった(実施例5記載のアロイポリマーDとの平均分散径比:2.9)。アロイポリマーEの代わってアロイポリマーFを用いたこと以外は全て実施例5に従って実施した。
【0083】
得られたシート状物の任意の100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でPBT−Iの極細繊維の最小径73nm、最大径1876nmであり、範囲全体の繊維径CV%は55.1%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ20.0%、76.0%であった。極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm2中に平均で716個であり、分散性良好であった。
【0084】
研磨特性および加工能率については、研磨量は5.34mg、ディスクの表面粗さが0.26nm、スクラッチ点数は33であり、加工性も良好であった。物性値および加工テスト結果は表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
比較例1
実施例1におけるアロイポリマーAのみで不織布を得ること以外は全て実施例1に従い実施した(難溶解性ポリマーの平均分散径は590nm)。
【0087】
得られたシート状物の任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でN6極細繊維の最小径10nm、最大径346nmであり、範囲全体の繊維径CV%は27.5%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ15.5%、98.0%とという本発明の研磨布がえら得た。極細繊維間の交差点を数えたところ、面積0.01mm2中に平均で1290個であり、分散性良好であった。
【0088】
研磨特性および加工能率については、研磨量は0.78mg、ディスクの表面粗さが0.12nm、スクラッチ点数は15であり、研磨特性としては優れるものの、加工効率が本発明の研磨布と比較して低下する結果となった。物性値および加工テスト結果は表3に示す。
【0089】
比較例2
実施例1と同様の方法でアロイ繊維からなる不織布とした後、ポリビニルアルコールを付与した後、ポリウレタンを付与し、熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。
次に、80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることで、海成分であるPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。最後に、表面を実施例1と同様にサンドペーパーにて研削し、立毛処理を施した。
【0090】
得られたシート状物の任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でN6極細繊維の最小径10nm、最大径332nmであり、範囲全体の繊維径CV%は26.3%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ16.7%、98.0%であった。また、表面の極細繊維はランダムに分散せず、荒れた表面であり、極細繊維間の交差点は、面積0.01mm2中に平均で130個であり、分散性は不良であった。
【0091】
研磨特性および加工能率については、ディスクの表面粗さが0.22nm、スクラッチ点数は105、研磨量は1.02mgであり、研磨特性、加工能率共に本発明の研磨布と比較して低下する結果となった。また、研磨加工面全体を観察すると、表面のうねりが大きく、均一性に欠けるものであった。物性値および加工テスト結果は表3に示す。
【0092】
比較例3
N6を20重量%とポリエチレン(PE)を80重量%とをそれぞれのポリマーを独立にフィードし、2軸押出混練機にて260℃にて混練して紡糸口金温度285℃で口金孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度3000m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、圧着率16%のエンボスロールで温度90℃、線圧20kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度2.0dtex、目付200g/m2の不織布を得た。
該アロイ繊維からなる不織布に油剤(SM7060:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を繊維重量に対し2重量%付与し、3枚積層し、バーブ数1、バーブ深さ0.06mmのニードルを用いて、ニードルパンチを2000本/cm2施すことで目付600g/m2のアロイ繊維からなる不織布を得た。
【0093】
この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、アロイ繊維重量に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次に、濃度約12%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。表面を実施例1と同様にサンドペーパーにて研削しアロイ繊維からなる立毛を形成させた。
【0094】
最後に85℃のトルエンにて1時間処理し、乾燥させることで、海成分であるPEを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、シート状物に物理的刺激を付与し、研磨布表面に立毛を均一に分散させた。
【0095】
得られたシート状物の任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でN6極細繊維の最小径110nm、最大径1130nmであり、範囲全体の繊維径CV%は32.3%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ44.5%、8.3%というシート状物が得られた。極細繊維間の交差点を数えたところ、面積0.01mm2中に平均で440個あり、分散性不良であった。
【0096】
加工能率および研磨特性については、研磨量は4.43mg、ディスクの表面粗さが0.35nm、スクラッチ点数は160であり、研磨特性が本発明の研磨布と比較して低下する結果となった。また、テクスチャー加工面全体を観察すると、表面のうねりが大きく、テクスチャー痕の均一性に欠けるものであった。物性値および加工テスト結果は表3に示す。
【0097】
比較例4
N6を50重量%、ポリエチレン(PE)を49.1重量%とポリエチレングリコールを0.9重量%とを混合し、2軸押出混練機にて260℃にて混練して紡糸口金温度290℃、紡糸速度3400m/分で紡糸し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸に油剤(SM7060:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を繊維重量に対し2重量%付与し、51mmにカットし、カード、クロスラッパー、ニードルロッカーを通し、圧着率16%のエンボスロールで温度140℃、線圧20kg/cmの条件で熱圧着し、目付670g/m2の不織布を得た。
【0098】
この不織布を濃度約12%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で35重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させた。最後に、85℃のトルエンにて1時間処理し、乾燥させることで、海成分であるPEを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。
【0099】
その後、表面を実施例1と同様にサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。得られたシート状物の任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でN6極細繊維の最小径95nm、最大径998nmであり、範囲全体の繊維径CV%は32.3%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ39.8%、10.4%であった。また、極細繊維束間の交差点を数えたところ、面積0.01mm2中に平均で40ヶ所あり、分散性不良であった。
【0100】
加工能率および研磨特性については、研磨量は2.24mg、ディスクの表面粗さが0.35nm、スクラッチ点数は160であり、研磨特性が本発明の研磨布と比較して低下する結果となった。また、テクスチャー加工面全体を観察すると、表面のうねりが大きく、テクスチャー痕の均一性に欠けるものであった。物性値および加工テスト結果は表3に示す。
【0101】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気記録ディスクなどに用いるアルミニウム合金基板やガラス基板を超高精度の仕上げ加工を施すのに好適に用いられるシート状物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク等の磁気記録媒体は、高容量化、高記録密度化に伴い、磁気ヘッドの浮上高さが著しく小さくなる傾向がある。長手記録媒体の場合、磁気ヘッドと磁気ディスク基板上の磁性体を円周方向に揃えるために記録ディスクの基板表面に円状の微細な条痕を形成するテクスチャー加工という表面処理が行われている。
【0003】
長手記録媒体の研磨加工において、テクスチャリング加工は、高容量化、高記録密度化が著しいハードディスクにおいて、キーポイントとなる技術であり、磁気ディスクのテクスチャリング加工面の表面粗さ(Ra)を細かくすると、空気層流が薄くなり、磁気ヘッドが接近して記録密度を向上させることが可能となる。
【0004】
また、近年更なる高記録密度化に伴い、磁性体がディスク表面に垂直方向に配列された垂直記録媒体の開発が進められており、これに対応するためには基板の平均表面粗さ(Ra)を極小化し、かつスクラッチ欠点と呼ばれる基板表面の傷を極小化するというような優れた研磨特性が必要となる。
【0005】
研磨特性と同様に加工能率も必要である。加工能率とは一定条件のもと一定時間にできあがる加工割合であり、一般にテープ研磨加工はスラリーを滴下したテープ状物に磁気ハードディスクを回転させながら数回接触させて表面を研磨する方法をとるが、加工能率が低下すると研磨時間、スラリー量および使用するテープ量が増大するため、高コストとなる他に、テープに接触する回数が増加するためにスクラッチ欠点の増加等の研磨特性の悪化にも大きな影響を与える。
【0006】
通常、研磨特性向上のためには繊維径を可能な限り細くし、砥粒の坦持状態を均一化することが必要であるが、この場合には押し付け圧が分散することとなるために加工能率が著しく低下することとなる。また、加工能率を向上する目的で砥粒粒子径を拡大したり、テープの押し付け圧等を増加させた場合にはスクラッチ欠点を増加させることとなったり、研磨特性を低下させることとなるためにこの相反する2つの特性を両立させることは困難であり、昨今開発が急速に展開される磁気ハードディスク研磨加工において優れた研磨特性と加工能率を両立したシート状物の開発が切望されていた。
【0007】
合成繊維からなる不織布を利用した磁気ハードディスク研磨加工用シート状物においては種々の提案が行われている。
【0008】
例えば0.03dtex以下の極細繊維絡合不織布に高分子弾性体を含浸させた研磨布が提案されており、Raが1.0nm以下を達成している(特許文献1)。しかしながら、実施例に記載される研磨布表面に立毛する極細繊維は繊度0.0003dtex以上(繊維径183nm相当)範囲であり、Raの値は高々0.4nmと最近の高記録密度化に対応できるレベルに到達していない。さらに不織布を構成する極細繊維は0.03dtex以下という比較的細い繊維のみで構成されているため、押し付け圧が分散することとなり、加工能率が低下するものである。
【0009】
また、繊維質基材を構成する繊維が極細繊維が収束してなる繊維束により構成されており、繊維中心部には0.3〜10μm、外周部には0.05〜1μmと繊維径が異なる極細繊維によってRaが0.19〜0.35nmと優れた研磨特性を達成している(特許文献2)。しかしながら、外周部に存在する極細繊維の繊維径は0.05μm以上であり、研磨特性には限界があることに加え、繊維束の外層部に比較的繊維径の小さい極細繊維が局在化していることから研磨時の摩擦力によって外周部の極細繊維が脱落し、そこに砥粒凝集物や研磨クズが堆積するなどしてスクラッチ(大きな傷)を発生させるばかりか、繊維径の小さい極細繊維による繊維束が変形することによって押し付け圧が分散することとなるため、加工能率が低下することとなる。
【0010】
さらにいずれの技術においても長手記録媒体のテクスチャー加工用研磨布を目的とした技術であり、極限的な平面平滑性が必要とされる垂直記録媒体の加工には対応できないものである。
【特許文献1】特開2002−79472号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−236739号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は従来の極細繊維による研磨布では達成し得なかった優れた研磨特性を有しつつも、高い加工能率を兼ね備えたシート状物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のかかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
(1)熱可塑性ポリマーからなる極細繊維を有するシート状物であって、任意の面積100μm2の範囲に存在する極細繊維が
(A)繊維径CV%≧40%
(B)繊維径1〜300nmである極細繊維の繊維径CV%≦30%
(C)繊維径1〜300nmである極細繊維の存在比率が10〜90%
であることを特徴とするシート状物
【発明の効果】
【0013】
本発明によればシート状物の任意の場所において繊維径が大幅に異なる極細繊維が均等に混在していることによって、従来では決して成し得なかった優れた研磨特性を有しつつも、加工能率が高いシート状物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について、望ましい実施形態とともに詳細に説明する。
【0015】
熱可塑性ポリマーからなる極細繊維を有するシート状物であって、任意の面積0.01mm2の範囲に存在する極細繊維が
(A)繊維径CV%≧40%
(B)繊維径1〜300nmである極細繊維の繊維径CV%≦30%
(C)繊維径1〜300nmである極細繊維の存在比率が10〜90%
であることを特徴とするシート状物である。
【0016】
本発明のシート状物とは実質的な支持体として極細繊維からなる繊維層を有し、その極細繊維間に高分子弾性体が配置されているものであり、表面に極細繊維からなる立毛を有するものである。
【0017】
本発明の極細繊維とは、難溶解性ポリマーが単繊維直径1〜3000nmの繊維形状となったものの総称であり、形態的にはその単繊維がバラバラに分散したもの、単繊維が部分的に結合しているもの、あるいは複数の単繊維が凝集した集合体などの全ての総称である。
【0018】
本発明のシート状物の支持体となる繊維層では、任意の面積100μm2の範囲で(A)〜(C)を満たすものである。本発明における任意の面積100μm2の範囲とはシート状物をエポキシ樹脂等で包埋し、ミクロトーム等でシート状物の表面から数μmを切削し、任意の切削面を電子走査型顕微鏡(SEM)あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した面積100μm2の範囲であり、(A)〜(C)は該範囲に存在する極細繊維の径を測定し、求めた値である。シート状物の切削については必要に応じて凍結切削やレーザーによる切削を用いることができる。繊維径測定にはSEMあるいはTEMで撮影した写真を画像処理ソフト(WINROOF)で計測することができる。極細繊維の断面が異形の場合にはその断面積から算出した円の相当径をその繊維の繊維径とした。繊維径測定は同一横断面から無作為に抽出した10ヶ所について行い、(A)〜(C)は10ヶ所の平均値とする。
【0019】
本発明の(A)〜(C)について詳述します。
(A)繊維径CV%≧40%
前述した方法により得られた繊維径の測定結果から繊維径CV%=(σALL/RALL)×100(%)(σALL:標準偏差、RALL:平均繊維径))として該範囲内全体について求めた値である。
【0020】
繊維径CV%は極細繊維の繊維径のバラツキを意味し、この数値が大きい場合には繊維径が極めて小さなものと大きなものが混在していること表す。該繊維径CV%が40%未満の場合には本発明の特徴であるシート状物表面に繊維径が大きいものと小さいものが混在した立毛を形成することが困難となる。該CV%は50%以上が好ましい範囲であり、上限値は製糸安定性を考えれば実質的に80%以下である。
(B)繊維径1〜300nmである極細繊維の繊維径CV%≦30%
(A)の場合と同様に前述した方法により得られた繊維径の測定結果から繊維径が1〜300nmである極細繊維を抽出し、繊維径CV%=(σ1〜300/R1〜300)×100(%)(σ1〜300:繊維径1〜300nmの極細繊維の標準偏差、R1〜300:繊維径1〜300nmの極細繊維の平均繊維径))として該範囲内全体について求めた値である。
実質的に砥粒を坦持する繊維径1〜300nmという極めて繊維径が小さい極細繊維群に関しては、バラツキが抑制されている必要がある。すなわち、該繊維径CV%が30%を超えると、砥粒の担持状態にムラができ、研磨特性が低下する結果となる。該繊維径CV%については値が低下するに伴い研磨特性が向上することが期待されるが、本発明の作製可能な下限値は10%である。
(C)繊維径1〜300nmである極細繊維の存在比率が10〜90%
本発明における繊維径1〜300nmである極細繊維の存在比率とは繊維径が1〜300nmの範囲に入る極細繊維の断面積の合計を全ての極細繊維の断面積の合計で除した値を100倍することにより求めることができる。
【0021】
繊維径が1〜300nmである極細繊維の存在比率が10%未満の場合には砥粒の坦持状態が不均一になり、研磨特性が低下する。一方、90%を超える場合には実質的に押し付け圧を担う繊維径の大きい極細繊維が存在しないことを意味し、加工能率の低下を招く。研磨特性と加工能率を両立させるためには該存在比率は30〜90%が好ましく、更に好ましくは50〜90%の範囲である。
【0022】
本発明のシート状物は前述した(A)〜(C)を同時に満足することを特徴とするものであり、シート状物の任意の場所において繊維径が大幅に異なる極細繊維が均等に混在していることによって、立毛処理を施した際あるいは研磨加工時に繊維径が大きい極細繊維に繊維径が小さい極細繊維が絡みついた極細繊維束となる。該極細繊維束には繊維径が小さい極細繊維間に砥粒サイズ(数百nm)に合致した空隙が形成され、遊離砥粒を用いたスラリーを滴下した際には砥粒を凝集させることなく均一に担持することとなる。更に研磨面に押し付けられた際には繊維径の大きい極細繊維が実質的な押し付け圧を担い、一方で繊維径の小さい極細繊維が過剰な圧を分散させ、自己調整することによって、従来では決して成し得なかった優れた研磨特性を有しつつも、加工能率が高いシート状物を提供することができる。
【0023】
本発明のシート状物は、極細繊維同士の交差点が、SEMを用いて2000倍にて観測した面積0.01mm2の範囲50ヶ所において、平均で500個以上存在していることが好ましく、より好ましくは700個以上である。
【0024】
本発明における極細繊維同士の交差点の数は、シート状物表面の立毛の分散状態に相当し、極細繊維を含むシート状物の表面をSEMあるいはTEMで撮影し、無作為に面積0.01mm2の範囲を抽出し、シート状物表面に露出した極細繊維同士の交差点をカウントするものである。合計50枚以上の表面写真を測定し、各写真についてカウントを行い、50ヶ所の平均を求め小数点第一位で四捨五入するものである。このとき、表面にポリウレタンなどの高分子弾性体が露出し、極細繊維が存在しない部分や、ニードルパンチ等により大きな穴を形成している部分は避け、判定に用いないものとする。ここでいう極細繊維同士の交差点とは、片端がシート状物に入り込んおらず分散して立毛した極細繊維1本1本同士の交差点であり、交差角の鋭角が20°以上である交差点である。繊維が部分的に合流している箇所や、交差せずに並行している部分、フィブリル化した部分は除くものとする。また、極細繊維が2本以上凝集して形成される束同士の交差点、あるいは束状部分と極細繊維1本の間の交差点もカウントしない。なお、極細繊維が数百本単位で凝集した束の表面で、部分的に分散した極細繊維間の交差点についてはカウントするものとする。
【0025】
繊維径が小さい極細繊維と繊維径が大きい極細繊維からなる立毛が表面に分散することにより、スラリーが滴下された場合に砥粒が凝集することなく研磨布表面に付着することが可能である。更に本発明の特有の立毛が分散していることにより、本発明の効果が発揮されやすく、従来にない優れた研磨特性を有しつつも加工能率の高いシート状物となる。従って、繊維径の異なる極細繊維が繊維束内に存在する場合であっても、繊維径の大きい極細繊維と繊維径の小さい極細繊維が層を成し、存在している場合(特許文献2)には本発明の効果は得られないものである。該立毛の交差点の上限は実現可能な範囲として5000個である。
【0026】
本発明における熱可塑性ポリマーとは、ポリアミドやポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等がことを言い、ポリアミドやポリエステルに代表される重縮合系ポリマーは融点が高いことも多く、より好ましい。本発明の言う熱可塑性ポリマーには必要に応じて粒子、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させても良いし、ポリマーの性質を損なわない程度に他の成分が共重合されていても良い。
【0027】
次に本発明のシート状物の製造方法の一例を以下に具体的に示す。
(1)平均分散径が異なるアロイポリマーを2種類以上ブレンド、紡糸して得られたアロイ繊維から成る不織布を作製し、高分子弾性体を該不織布に付与し、立毛処理を施した後、該アロイ繊維から易溶解性ポリマーを溶解除去することにより極細繊維発生加工を行うことを特徴とするシート状物の製造方法。
(2)少なくとも1種類のアロイポリマーの難溶解性ポリマーの平均分散径が1000nm以下であることを特徴とする(1)記載のシート状物の製造方法。
(3)平均分散径が異なるアロイポリマーを2種類以上ブレンドするに際し、平均分散径が最大のアロイポリマーと最小のアロイポリマーとの平均分散径比が1.5以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載のシート状物の製造方法。
【0028】
本発明におけるアロイポリマーとは溶剤に対する溶解性の異なる2種類以上のポリマーをエクストルーダーなどの溶融混練機にて混練し、該記のポリマーがアロイ化した樹脂のことを意味し、易溶解性ポリマーが海(マトリックス)、難溶解性ポリマーが球状に分散した形態(ドメイン)をなしているものである。なお、平均分散径とは難溶解性ポリマーの分散径の平均値のことを意味し、アロイポリマーを溶剤処理し、表層の海成分を溶解した後で、SEMあるいはTEMにより表面を観察し、得られた写真から同観察面に存在する500個の難溶解性ポリマーの分散物の外周を円あるいは楕円として測定する。これを少なくとも3ヶ所について行い、その平均値を平均分散径とする。
【0029】
本発明のシート状物の繊維層である不織布を作製する方法は、平均分散径が異なるアロイポリマーを2種類以上ブレンドして、紡糸して得られたアロイ繊維を絡合処理することにより安定して得ることができる。アロイポリマーでない単なるチップ同士のドライブレンドによる紡糸では混練不足により最終的な極細繊維の最小繊維径が限られることに加え、せん断の影響が繊維径の決定に大きく影響するため、極細繊維束の断面を観察した場合には、口金孔内でのせん断が大きい外層に繊維径が小さい繊維が集まり、せん断が小さい内層に繊維径の大きな繊維が集まるというような同程度の繊維径を有した極細繊維が局在化し、存在することとなるため、本発明のシート状物の特徴である繊維径が大幅に異なる極細繊維が任意の場所で混在する状態にはなりにくい。
【0030】
本発明のシート状物の製造方法では少なくとも1種類のアロイポリマーの難溶解性ポリマーの平均分散径は1000nm以下であることが好ましく、800nm以下とすることが更に好ましいことである。1000nmより大きくになると1〜300nmの極細繊維を発生しにくくなる。
【0031】
平均分散径が異なるアロイポリマーを2種類以上ブレンドするに際し、平均分散径が最大のアロイポリマーと最小のアロイポリマーとの平均分散径比が1.5以上であることが好ましい。該平均分散径比を1.5以上とすることにより、不織布の任意の場所で繊維径が大きい極細繊維と繊維径が小さい極細繊維が混在した状態を形成し易くなる。平均分散径の異なるアロイポリマーの混合比率は、前述した平均分散径が1000nm以下のアロイポリマーの混合比率が、繊維径1〜300nmの極細繊維の存在比率に大きく影響するため、該アロイポリマーの総ポリマー量に対する混合比率は10〜90%の範囲とすることが好ましい。
【0032】
本発明のシート状物の繊維層である不織布を得る方法としては、短繊維をカード、クロスラッパーを用いて幅方向に配列させた積層ウェブを形成させた後にニードルパンチを施して得られる短繊維不織布や、スパンボンドあるいはメルトブロー法などから得られる長繊維不織布、抄紙法で得られる不織布および、支持体上にナノファイバーを噴霧、浸漬、あるいはコーティングして付着させたもの、織編物が好適に用いられる、中でも得られる研磨布の引張強力や製造コストなどの点からスパンボンド法は好適に用いられる。
【0033】
スパンボンド法とは、一般には溶融したポリマーをノズルより押出し、これを高速吸引ガスにより2500〜8000m/分の速度で吸引延伸した後、移動コンベア上に繊維を捕集して繊維ウェブとする方法を用いることを言う。また、繊維ウェブの捕集に引き続いて熱接着、絡合等を施すことにより一体化させたシートを得る方法が好ましい。繊維ウェブの絡合方法は、ニードルパンチやウォータジェットパンチなどの方法を適宜組み合わせることができる。
【0034】
ニードルパンチ処理のパンチング本数としては、繊維の高絡合化による緻密な表面状態を達成することを目的とし、500〜5000本/cm2であることが好ましい。500本/cm2以上であれば、表面繊維の緻密性に優れた、所望の高精度仕上げを得るのに好ましく、5000本/cm2以下とすることにより、加工性が良好であり、良好な強度を付与させることができる。ニードルパンチ後の複合繊維不織布の繊維密度は、表面繊維本数の緻密化の観点から、0.20g/cm3以上であることが好ましい。
【0035】
ウォータジェットパンチング処理を行う場合には、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。柱状流を得るには、通常直径0.05〜1.0mmのノズルから圧力1〜60MPaで噴出させる方法により好適に用いられる。
【0036】
このようにして得られたアロイ繊維不織布は、緻密化の観点から、乾熱あるいは湿熱、あるいはその両者によって収縮させ、さらに高密度化することが好ましい。
【0037】
本発明のシート状物をテープ状として、研磨加工を施す際に、寸法変化が生じると、基板表面を均一に研磨することができないため、研磨布の形態安定性の点から、本発明に用いられるシート状物の目付は100〜600g/m2であることが好ましく、150〜300g/m2であることがより好ましい。また、同様の観点から本発明のシート状物は厚みが0.1〜10mmの範囲が好ましく、0.3〜5mmの範囲がより好ましい。なお、本発明のシート状物の密度については、均一な加工性を得るためには0.1〜1.0g/cm3の範囲が好適である。
【0038】
本発明のシート状物の製造方法においては、アロイポリマーを紡糸して得たアロイ繊維からなる不織布を極細繊維化処理する前に、ポリウレタンを主成分とする高分子弾性体を付着させることが好ましい。高分子弾性体のバインダー効果により、極細繊維が研磨布から抜け落ちるのを防止し、表面に露出したときに均一に分散することが可能となるためである。
【0039】
なお、繊維と高分子弾性体との接着を緩和する目的で、高分子弾性体を付与する前にポリビニルアルコールを付与し、繊維を保護してもよい。
【0040】
本発明に用いる高分子弾性体は、例えばポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸樹脂、アクロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマーなどを用いることができるが、中でもポリウレタン、ポリウレタン・ポリウレアエラストマーなどのポリウレタン系エラストマーが好ましい。
【0041】
ポリウレタンは、ポリオール成分にポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系のジオール、もしくはこれらの共重合物を用いることができる。また、ジイソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネート、脂環式イソシアネート、脂肪族イソシアネートなどを使用することができる。
【0042】
ポリウレタンの重量平均分子量は100,000〜300,000が好ましく、より好ましくは150,000〜250,000である。重量平均分子量100,000以上にすることにより得られるシート状物の強度を保持し、また極細繊維の脱落を防ぐことができる。また、300,000以下とすることにより、ポリウレタン溶液の粘度の増大を抑制し不織布への含浸を行いやすくすることができる。
【0043】
高分子弾性体は、主成分としてポリウレタンを用いることが好ましいが、バインダーとして性能や立毛繊維の均一分散を損なわない範囲で、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系などのエラストマー樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂などが含まれていても良く、必要に応じて着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤、難燃剤、抗菌剤、防臭剤などの添加剤が配合されていてもよい。
【0044】
本発明において、高分子弾性体の含有率は、不織布の繊維の総重量に対し、10重量%以上60%重量以上であることが好ましい。含有量によって研磨布の表面状態、クッション性、硬度、強度などを適宜調整することができる。
【0045】
使用する高分子弾性体については前述の通りであるが、高分子弾性体を付与させる際に用いる溶媒としてはN,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を好ましく用いることができる。また、水中にエマルジョンとして分散させた水系ポリウレタンを用いてもよい。溶媒に溶解した高分子弾性体溶液に不織布を浸漬する等して高分子弾性体を不織布に付与し、その後、乾燥することによって高分子弾性体を実質的に凝固し固化させる。乾燥にあたっては不織布及び高分子弾性体の性能が損なわない程度の温度で加熱してもよい。
【0046】
本発明のシート状物の製造方法において、極細繊維が研磨布の表面でランダムに分散した状態となるためには、アロイポリマーを紡糸して得たアロイ繊維からなる不織布と高分子弾性体とからなるシート状物の少なくとも片面に、アロイ繊維からなる立毛面を形成させた後に、アロイ繊維に極細繊維発生処理を施すことが重要である。アロイ繊維からなる立毛部分が表面に分散した状態で極細繊維化が起こり、極細化の工程で表面に分散し、これを乾燥せしめることで表面を覆うようにして均一に分散させることができるからである。
【0047】
本発明のシート状物の製造方法においてシート状物の表面に存在する立毛は、例えばバッフィング処理により得られる。ここでいうバッフィング処理とは、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて表面を研削する方法などにより施すのが一般的である。特に、表面をサンドペーパーにより、立毛処理することにで均一かつ緻密な立毛を形成することができる。さらに、研磨布の表面に均一な立毛を形成させるためには、研削負荷を小さくすることが好ましい。研削負荷を小さくするためには、バフ段数、サンドペーパー番手などを適宜調整することが好ましい。中でも、バフ段数は3段以上の多段バッフィングとし、各段に使用するサンドペーパーの番手をJIS規定の150番〜600番の範囲とすることがより好ましい。
【0048】
次に立毛させたアロイ繊維から極細繊維を発現せしめる方法、すなわち、極細繊維発生加工は、除去する成分(易溶解性ポリマーからなる海成分)の種類によって異なるが、PEやポリスチレン等のポリオレフィンであれば、トルエンやトリクロロエチレン等の有機溶媒、PLAや共重合ポリエステルであれば、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液で浸漬・窄液を行う方法を好ましく用いることができる。
【0049】
また、極細繊維発生加工の際に極細繊維を研磨布表面に分散させ、本発明の研磨布表面の緻密化、平滑化を達成するためには、極細繊維発生加工中、もしくは発生加工後、液中にて物理的刺激を加えることが重要である。物理的刺激としては、例えばウオータージェットパンチング処理などの高速流体流処理や、液流染色機、ウィンス染色機、ジッガー染色機、タンブラー、リラクサー等を用いた揉み処理、超音波処理等を適宜組み合わせて実施しても良い。
【0050】
更に、研磨加工時のテープ伸びによる加工ムラ、スクラッチ欠点の発生を抑える点から、研磨布の極細繊維を有する面の裏面に補強層を接着する方法が好適に用いられる。
【0051】
本発明のシート状物に補強層を接着する方法としては、熱圧着法、フレームラミ法、補強層とシート状物との間に接着層を設けるいずれの方法を採用してもよく、接着層としては、ポリウレタン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルブタジエン(NBR)、ポリアミノ酸およびアクリル系接着剤などゴム弾性を有するものが使用可能である。コストや実用性を考えると、NBRやSBRのような接着剤が好ましい。接着剤の付与方法としては、エマルジョンや、ラテックス状態でシート状物に塗布する方法が好適に用いられる。
【0052】
補強層としては、織編物や熱接着繊維を用いた不織布、フィルム状物を用いることが好ましい。中でも、高精度の研磨加工を行うには、厚みや物理特性において均一なフィルム状物を使用することがより好ましい。
【0053】
ここでいうフィルムとなる素材としては、ポリオレフィン系、ポリエステル系およびポリフェニルサルファイド系などのフィルム形状を有するものであれば使用可能である。汎用性を考えた場合、ポリエステルフィルムを使用することが好ましい。フィルムからなる補強層を設ける場合には、研磨加工時の研磨布の形態安定性、クッション性および基板表面へのフィット性を全て満足させる必要があるため、不織布からなるシート状物との厚みバランスをとることが重要である。不織布からなるシート状物の仕上がり厚みとしては0.4mm以上であることが好ましく、生産性の点からより好ましくは0.4〜1.5mmの範囲である。そのため、フィルムの厚みは20〜100μmとすることが好ましい。不織布からなるシート状物の厚みが0.4mm未満の場合、テクスチャー加工時の寸法変化を抑えるため補強層が必要である。一方、フィルム層の厚みが20μm未満であると、テクスチャー加工時の寸法変化を抑えられず、100μmを超えると、シート状物全体の剛性が高くなりすぎ、結果としてスクラッチなどの発生を抑えることができないため好ましくない。
【0054】
本発明のシート状物は記録媒体用磁気ディスクの研磨加工に用いる研磨布あるいはクリーニング布として用いると効果的である。
【0055】
本発明のシート状物を用いて、ハードディスク研磨加工を行う方法としては、かかるシート状物をを加工効率と安定性の観点から、30〜50mm幅のテープ状にカットして、研磨加工用テープとして用いる。
【0056】
該研磨テープと遊離砥粒を含むスラリーとを用いて、アルミニウム合金磁気記録ディスクの研磨加工を行う方法が好適な方法である。研磨条件として、スラリーは、ダイヤモンド微粒子などの高硬度砥粒を水系分散媒に分散したものが好ましく用いられる。
【0057】
砥粒の保持性と分散性の観点から、本発明の研磨布を構成する極細繊維に適合した砥粒径としては0.2μm以下が好ましいものである。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。また実施例で用いた評価法とその測定条件について以下に説明する。
(1)アロイポリマー中の難溶解性ポリマーの平均分散径
ペレット状のアロイポリマーを溶剤(易溶解性ポリマーがPLAの場合、NaOH水溶液。易溶解ポリマーがPEの場合、熱トルエン)中で抽出除去し、水洗後(株)キーエンス社製 VE−7800型SEMで観察、加速電圧20kV、ワーキングディスタンス8mm、倍率5000倍で撮影し、表面に露出した難溶解性ポリマーを画像処理ソフト(WINROOF)を用いて円あるいは楕円として500個の平均直径を求めるものであり、これを3ヶ所以上で行い、少なくとも合計1500個以上の難溶解性ポリマーの分散径を測定することで求められるものである。
(2)シート状物評価
シート状物をエポキシ樹脂で包埋し、Reichert社製FC 4E型クライオセクショニングシステムで凍結し、ダイヤモンドナイフを具備したReichert−Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で研磨布表面から1μm程度を切削した後、その切削面を(株)キーエンス製 VE−7800型走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率5000倍で撮影した。また、必要に応じて金属染色を施した。得られた写真から無作為に面積100μm2の範囲を10ヶ所抽出し、各場所の写真を画像処理ソフト(WINROOF)を用いて全ての単繊維直径を求め、最小繊維径、最大繊維径、繊維径標準偏差、全範囲内の繊維径CV%、1〜300nmの極細繊維の繊維径CV%および1〜300nmの極細繊維の存在比率を求めた。これらの値は全て10ヶ所の各写真について測定を行い、10ヶ所の平均値とした。
【0059】
全範囲の繊維径CV%、1〜300nmの極細繊維の繊維径CV%は下記式に従い求めた。
CV%=(標準偏差/平均値)×100
1〜300nmの極細繊維の存在比率は下記式に従い求めた。
存在比率=(1〜300nmの極細繊維の断面積の合計)/(全ての極細繊維の断面積の合計)
(3)極細繊維の分散性(交差点数)
極細繊維を含むシート状物の表面を(株)キーエンス社製 VE−7800型SEMで倍率2000倍で撮影し、無作為に面積0.01mm2の範囲を抽出し、シート状物表面に露出した極細繊維同士の交差点をカウントする。合計50枚以上の表面写真を測定し、各写真についてカウントを行い、50ヶ所の平均を求め小数点第一位で四捨五入するものである。このとき、表面にポリウレタンなどの高分子弾性体が露出し、極細繊維が存在しない部分や、ニードルパンチ等により大きな穴を形成している部分は避け、判定に用いないものとする。ここでいう極細繊維間の交差点とは、片端がシート状物に入り込んでいない極細繊維1本1本間の交差角の鋭角が20°以上である交差点である。繊維が部分的に合流している箇所や、交差せずに並行している部分、フィブリル化した部分は除くものとする。また、極細繊維が2本以上凝集して形成される束同士の交差点、あるいは束状部分と極細繊維1本の間の交差点もカウントしない。なお、極細繊維が数百本単位で凝集した束の表面で、部分的に分散した極細繊維間の交差点についてはカウントするものとする。シート状物の面積0.01mm2中に平均で500個以上存在した場合を、分散性良好とした。
(4)シート状物の加工能率(研磨量)
アルミニウム基板にNi−Pメッキ処理し、ポリッシング加工したディスクの重量を予め測定しておく。40mm幅のテープとしたシート状物を用い、同条件で研磨し、水洗して十分過剰スラリーや研磨クズ等を除去した後、風乾させ、その重量を測定する。研磨前と研磨後の重量差を求める測定を3回行い、その平均値を研磨量とした。同条件で研磨した場合、この研磨量が多い方が加工能率が良いこととなる。
(5)シート状物の研磨特性(基板表面粗さ)
JIS B0601(2001年度版)に準拠して、シュミットメジャーメントシステム社(Schmitt Measurement Systems,Inc)製TMS−2000表面粗さ測定器を用いて、研磨加工後のディスク基板サンプル表面の任意の10カ所について平均粗さを測定し、10カ所の測定値を平均することにより基板表面粗さを算出した。数値が低いほど研磨特性が高いことを示す。
(6)スクラッチ点数
研磨加工後の基板5枚の両面、すなわち計10表面の全領域を測定対象として、Candela5100光学表面分析計を用いて、深さ3nm以上の溝をスクラッチとし、スクラッチ点数を測定し、10表面の測定値の平均値で評価した。数値が低いほど高性能であることを示す。
【0060】
実施例1
ナイロン6(N6)40重量%とポリ乳酸(PLA)を60重量%を独立にフィードし、温度220℃に設定した2軸押出混練機にて、スクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/hr.として得たアロイポリマーAおよびスクリュー回転数100rpm、吐出量20kg/hr.として得たポリマーBの2種類のアロイポリマーを得た。それぞれのポリマー中の難溶解性ポリマーの平均分散径を測定したところ、アロイポリマーAは590nm、アロイポリマーBは915nmであった(平均分散径比:1.6)。
【0061】
前述したアロイポリマーAを90重量%、アロイポリマーBを10重量%でブレンドし、スパンボンド法により、紡糸温度240℃で口金孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度3500m/minで紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、圧着率16%のエンボスロールで、温度80℃、線圧20kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度2.0dtex、目付150g/m2とし、油剤(SM7060:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を繊維重量に対し2重量%付与し、4枚積層し、バーブ数1、バーブ深さ0.06mmのニードルを用いて、ニードルパンチを2000本/cm2施すことで、目付600g/m2のアロイ繊維からなる不織布を得た。
【0062】
この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、ポリマーアロイ繊維重量に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次に、濃度約12%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。その後、表面をJIS#180番のサンドペーパーにて研削しアロイ繊維を立毛を形成させた。
【0063】
最後に、80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることで、海成分であるPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、シート状物に物理的刺激を付与し、研磨布表面に立毛を均一に分散させた。
【0064】
このシート状物から面積100cm2の試験片を切り出し、前述した測定方法により任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でN6極細繊維の最小径11nm、最大径1556nmであり、範囲全体の繊維径CV%は50.7%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ16.7%、86%であった。極細繊維間の交差点を数えたところ、面積0.01mm2中に平均で939個であり、分散性良好であった。
【0065】
該シート状物を40mm幅のテープとし、以下の条件で研磨加工を行った。
【0066】
アルミニウム基板にNi−Pメッキ処理した後、ポリッシング加工し平均表面粗さ0.2nmに制御したディスクを用い、研磨布表面に1次粒子径1〜10nmのダイヤモンド結晶からなる遊離砥粒スラリーを滴下し、テープ走行速度を5cm/分、荷重2.0kgfの条件で20秒間研磨を実施した。研磨量は1.51mgであった。
【0067】
研磨加工後のディスクは、表面粗さが0.12nm、スクラッチ点数は17であり、加工性も良好であった。物性値および加工テスト結果は表1に示す。
【0068】
実施例2
アロイポリマーAとアロイポリマーBを共に50重量%としたこと以外は全て実施例1に従って実施した。
【0069】
このシート状物の任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でN6極細繊維の最小径17nm、最大径1788nmであり、範囲全体の繊維径CV%は54.5%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ24.0%、58.0%であった。極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm2中に平均で809個であり、分散性良好であった。
【0070】
研磨特性および加工能率については、研磨量は2.88mg、ディスクの表面粗さが0.16nm、スクラッチ点数は32であり、良好であった。物性値および加工テスト結果は表1に示す。
【0071】
実施例3
アロイポリマーAを20重量%とアロイポリマーBを80重量%としてブレンドしたこと以外は全て実施例1に従って実施した。
【0072】
このシート状物の任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でN6極細繊維の最小径20nm、最大径2268nmであり、範囲全体の繊維径CV%は62.7%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ30.0%、37.8%であった。極細繊維間の交差点を数えたところ、面積0.01mm2中に平均で771個であり、分散性良好であった。
【0073】
研磨特性および加工能率については、研磨量は4.27mg、ディスクの表面粗さが0.19nm、スクラッチ点数は49であり、良好であった。物性値および加工テスト結果は表1に示す。
【0074】
実施例4
実施例1記載の方法でスクリュー回転数100rpm、吐出量25kg/hr.としてアロイポリマーCを得た。ポリマー中の難溶解性ポリマーの平均分散径を測定したところ、1357nmであった(実施例1記載のアロイポリマーAとの平均分散径比:2.3)。
【0075】
アロイポリマーBの代わりに、このアロイポリマーCを用いたこと以外は全て実施例1に従って実施した。
【0076】
このシート状物の任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でN6極細繊維の最小径12nm、最大径2381nmであり、範囲全体の繊維径CV%は73.2%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ18.3%、83.0%であった。極細繊維間の交差点を数えたところ、面積0.01mm2中に平均で913個であり、分散性良好であった。
【0077】
研磨特性および加工能率については、研磨量は3.02mg、ディスクの表面粗さが0.14nm、スクラッチ点数は18であり、良好であった。物性値および加工テスト結果は表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
実施例5
イソフタル酸を10mol%共重合されたPBTポリマー(PBT−I)を20重量%とポリ乳酸(PLA)を80重量%を独立にフィードし、温度230℃に設定した2軸押出混練機にて、スクリュー回転数420rpm、吐出量15kg/hr.として得たアロイポリマーDおよびPBT−Iを40重量%とPLA60重量%とをスクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/hr.として得たアロイポリマーEの2種類のアロイポリマーを得た。それぞれのポリマー中の難溶解性ポリマーの平均分散径を測定したところ、アロイポリマーDは990nm、アロイポリマーEは1863nmであった(平均分散径比:1.7)。アロイポリマーDおよびアロイポリマーEを用いて複合繊維からなる不織布を作製した以外は全て実施例1に従って実施した。
【0080】
得られたシート状物の任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でPBT−Iの極細繊維の最小径69nm、最大径1176nmであり、範囲全体の繊維径CV%は50.2%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ14.6%、83.6%であった。極細繊維間の交差点を数えたところ、面積0.01mm2中に平均で903個であり、分散性良好であった。
【0081】
研磨特性および加工能率については、研磨量は3.68mg、ディスクの表面粗さが0.15nm、スクラッチ点数は23であり、加工性も良好であった。物性値および加工テスト結果は表2に示す。
【0082】
実施例6
実施例5記載の方法でスクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/hr.としてアロイポリマーFを得た。アロイポリマーF中の難溶解性ポリマーの平均分散径を測定したところ、2863nmであった(実施例5記載のアロイポリマーDとの平均分散径比:2.9)。アロイポリマーEの代わってアロイポリマーFを用いたこと以外は全て実施例5に従って実施した。
【0083】
得られたシート状物の任意の100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でPBT−Iの極細繊維の最小径73nm、最大径1876nmであり、範囲全体の繊維径CV%は55.1%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ20.0%、76.0%であった。極細繊維間の交差点を数えたところ、表面0.01mm2中に平均で716個であり、分散性良好であった。
【0084】
研磨特性および加工能率については、研磨量は5.34mg、ディスクの表面粗さが0.26nm、スクラッチ点数は33であり、加工性も良好であった。物性値および加工テスト結果は表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
比較例1
実施例1におけるアロイポリマーAのみで不織布を得ること以外は全て実施例1に従い実施した(難溶解性ポリマーの平均分散径は590nm)。
【0087】
得られたシート状物の任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でN6極細繊維の最小径10nm、最大径346nmであり、範囲全体の繊維径CV%は27.5%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ15.5%、98.0%とという本発明の研磨布がえら得た。極細繊維間の交差点を数えたところ、面積0.01mm2中に平均で1290個であり、分散性良好であった。
【0088】
研磨特性および加工能率については、研磨量は0.78mg、ディスクの表面粗さが0.12nm、スクラッチ点数は15であり、研磨特性としては優れるものの、加工効率が本発明の研磨布と比較して低下する結果となった。物性値および加工テスト結果は表3に示す。
【0089】
比較例2
実施例1と同様の方法でアロイ繊維からなる不織布とした後、ポリビニルアルコールを付与した後、ポリウレタンを付与し、熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。
次に、80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることで、海成分であるPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。最後に、表面を実施例1と同様にサンドペーパーにて研削し、立毛処理を施した。
【0090】
得られたシート状物の任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でN6極細繊維の最小径10nm、最大径332nmであり、範囲全体の繊維径CV%は26.3%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ16.7%、98.0%であった。また、表面の極細繊維はランダムに分散せず、荒れた表面であり、極細繊維間の交差点は、面積0.01mm2中に平均で130個であり、分散性は不良であった。
【0091】
研磨特性および加工能率については、ディスクの表面粗さが0.22nm、スクラッチ点数は105、研磨量は1.02mgであり、研磨特性、加工能率共に本発明の研磨布と比較して低下する結果となった。また、研磨加工面全体を観察すると、表面のうねりが大きく、均一性に欠けるものであった。物性値および加工テスト結果は表3に示す。
【0092】
比較例3
N6を20重量%とポリエチレン(PE)を80重量%とをそれぞれのポリマーを独立にフィードし、2軸押出混練機にて260℃にて混練して紡糸口金温度285℃で口金孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度3000m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、圧着率16%のエンボスロールで温度90℃、線圧20kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度2.0dtex、目付200g/m2の不織布を得た。
該アロイ繊維からなる不織布に油剤(SM7060:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を繊維重量に対し2重量%付与し、3枚積層し、バーブ数1、バーブ深さ0.06mmのニードルを用いて、ニードルパンチを2000本/cm2施すことで目付600g/m2のアロイ繊維からなる不織布を得た。
【0093】
この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、アロイ繊維重量に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次に、濃度約12%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。表面を実施例1と同様にサンドペーパーにて研削しアロイ繊維からなる立毛を形成させた。
【0094】
最後に85℃のトルエンにて1時間処理し、乾燥させることで、海成分であるPEを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。該溶出工程を液流染色機中にて揉み処理を行うことにより、シート状物に物理的刺激を付与し、研磨布表面に立毛を均一に分散させた。
【0095】
得られたシート状物の任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でN6極細繊維の最小径110nm、最大径1130nmであり、範囲全体の繊維径CV%は32.3%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ44.5%、8.3%というシート状物が得られた。極細繊維間の交差点を数えたところ、面積0.01mm2中に平均で440個あり、分散性不良であった。
【0096】
加工能率および研磨特性については、研磨量は4.43mg、ディスクの表面粗さが0.35nm、スクラッチ点数は160であり、研磨特性が本発明の研磨布と比較して低下する結果となった。また、テクスチャー加工面全体を観察すると、表面のうねりが大きく、テクスチャー痕の均一性に欠けるものであった。物性値および加工テスト結果は表3に示す。
【0097】
比較例4
N6を50重量%、ポリエチレン(PE)を49.1重量%とポリエチレングリコールを0.9重量%とを混合し、2軸押出混練機にて260℃にて混練して紡糸口金温度290℃、紡糸速度3400m/分で紡糸し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸に油剤(SM7060:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を繊維重量に対し2重量%付与し、51mmにカットし、カード、クロスラッパー、ニードルロッカーを通し、圧着率16%のエンボスロールで温度140℃、線圧20kg/cmの条件で熱圧着し、目付670g/m2の不織布を得た。
【0098】
この不織布を濃度約12%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で35重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させた。最後に、85℃のトルエンにて1時間処理し、乾燥させることで、海成分であるPEを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。
【0099】
その後、表面を実施例1と同様にサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。得られたシート状物の任意の面積100μm2範囲を10ヶ所観測したところ、10ヶ所の平均値でN6極細繊維の最小径95nm、最大径998nmであり、範囲全体の繊維径CV%は32.3%であった。一方、1〜300nmの繊維径CV%および存在比率を観測したところ、10ヶ所の平均値でそれぞれ39.8%、10.4%であった。また、極細繊維束間の交差点を数えたところ、面積0.01mm2中に平均で40ヶ所あり、分散性不良であった。
【0100】
加工能率および研磨特性については、研磨量は2.24mg、ディスクの表面粗さが0.35nm、スクラッチ点数は160であり、研磨特性が本発明の研磨布と比較して低下する結果となった。また、テクスチャー加工面全体を観察すると、表面のうねりが大きく、テクスチャー痕の均一性に欠けるものであった。物性値および加工テスト結果は表3に示す。
【0101】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーからなる極細繊維を有するシート状物であって、任意の面積100μm2の範囲に存在する極細繊維が
(A)繊維径CV%≧40%
(B)繊維径1〜300nmである極細繊維の繊維径CV%≦30%
(C)繊維径1〜300nmである極細繊維の存在比率が10〜90%
であることを特徴とするシート状物。
【請求項2】
シート状物の任意の面積0.01mm2の範囲、50ヶ所において、極細繊維の交差点が平均500個以上存在することを特徴とする請求項1記載のシート状物。
【請求項3】
シート状物が研磨布であることを特徴とする請求項1または2記載のシート状物。
【請求項4】
シート状物がクリーニング布であることを特徴とする請求項1または2記載のシート状物。
【請求項5】
平均分散径が異なるアロイポリマーを2種類以上ブレンド、紡糸して得られるアロイ繊維から成る不織布を作製し、該不織布に高分子弾性体を付与し、立毛処理を施した後、該アロイ繊維から易溶解性ポリマーを溶解除去することを特徴とするシート状物の製造方法。
【請求項6】
少なくとも1種類のアロイポリマーの難溶解性ポリマーの平均分散径が1000nm以下であることを特徴とする請求項5記載のシート状物の製造方法。
【請求項7】
平均分散径が異なるアロイポリマーを2種類以上ブレンドするに際し、平均分散径が最大のアロイポリマーと最小のアロイポリマーとの平均分散径比が1.5以上であることを特徴とする請求項5または6に記載のシート状物の製造方法。
【請求項1】
熱可塑性ポリマーからなる極細繊維を有するシート状物であって、任意の面積100μm2の範囲に存在する極細繊維が
(A)繊維径CV%≧40%
(B)繊維径1〜300nmである極細繊維の繊維径CV%≦30%
(C)繊維径1〜300nmである極細繊維の存在比率が10〜90%
であることを特徴とするシート状物。
【請求項2】
シート状物の任意の面積0.01mm2の範囲、50ヶ所において、極細繊維の交差点が平均500個以上存在することを特徴とする請求項1記載のシート状物。
【請求項3】
シート状物が研磨布であることを特徴とする請求項1または2記載のシート状物。
【請求項4】
シート状物がクリーニング布であることを特徴とする請求項1または2記載のシート状物。
【請求項5】
平均分散径が異なるアロイポリマーを2種類以上ブレンド、紡糸して得られるアロイ繊維から成る不織布を作製し、該不織布に高分子弾性体を付与し、立毛処理を施した後、該アロイ繊維から易溶解性ポリマーを溶解除去することを特徴とするシート状物の製造方法。
【請求項6】
少なくとも1種類のアロイポリマーの難溶解性ポリマーの平均分散径が1000nm以下であることを特徴とする請求項5記載のシート状物の製造方法。
【請求項7】
平均分散径が異なるアロイポリマーを2種類以上ブレンドするに際し、平均分散径が最大のアロイポリマーと最小のアロイポリマーとの平均分散径比が1.5以上であることを特徴とする請求項5または6に記載のシート状物の製造方法。
【公開番号】特開2008−184712(P2008−184712A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19736(P2007−19736)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
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