説明

シート状物の延伸機

【課題】メンテナンスに必要な時間を低減して稼働の効率を向上させたシート状物の延伸機の提供。
【解決手段】折れ尺状に配置された複数個のリンク装置を所定の経路上を周回させる無端リンク装置をシート状物が搬送される空間の両側に相対して配置され、前記リンク装置の周回に伴ってシート状物を前記空間で搬送して延伸するシート状物の延伸機で、回転しつつ前記走行するリンク装置と噛み合わされて駆動するスプロケット200と、このスプロケットに連結されてこれを回転させるモータと、このモータの回転軸の軸方向と交差する方向に嵌め込まれ前記スプロケットと連結する部材と、前記スプロケットに配置され前記連結する連結部材の径より大きい内径を有して前記連結部材がその内側に挿入されて前記回転軸に嵌め込まれる貫通孔と、前記連結部材が嵌め込まれた状態で前記挿入孔206内に配置され前記スプロケットに対して前記連結部材を位置決めする部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折れ尺状に連結された複数のリンク装置が経路に沿って走行する無端リンク装置を備えリンク装置の走行に伴ってシート状物を延伸する延伸機に係り、回転しながらリンク装置に係号して走行させるスプロケットを備えたシート状物の延伸機に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなシート状物の延伸機の従来の技術としては、特開2006−205409号公報(特許文献1)が知られている。この従来技術は、折れ尺状に形成されて連結された複数の等長リンクから構成されたリンク装置を有して内周側、外周側2つの閉じた経路を形成する各レール上を走行する無端リンク装置をシート状物が搬送される空間を挟み相対して配置したものが開示されている。
【0003】
さらに、この従来技術では、各無端リンク装置の走行の経路は前記搬送される空間の両側で搬送の方向(シート状物の入口側から出口側に向かう方向)に沿ってシート状物の側に配置される部分とこの反対側(外側)に位置してリンク装置が前記出口側から入口側に戻る部分とを備えて、上記経路を構成する内周側のレールの内側に配置された複数個のスプロケットによりリンク装置が駆動されるものが開示されている。特に、スプロケットは入口側に2個、出口側に1個配置され、これらのスプロケットが回転することで、リンク装置とスプロケットの歯とが噛み合ってリンク装置を押し出して駆動する。
【0004】
押し出されたリンク装置がシート状物の側の経路上を走行しつつ空間の入口側に搬送されて来たシート状物を掴み出口側に搬送しつつ、リンク装置の間隔を増大させてシート状物を延伸する。この間隔の増大は、折れ尺状に構成されている各リンク装置が開くように展開されることで行われている。各リンク装置は搬送空間の入口側からシート状物側の経路を走行して延伸したシート状物を出口側で放離して開放したのち、反シート側の経路上を出口側のスプロケットにより押し出されて駆動される。この際、各リンク装置の間隔は折れ尺状のリンクが収縮して縮小された状態で戻り経路上を入口側へ向かって走行した後、入口側のスプロケットにより再度駆動されてシート状物側の経路へ進入する。上記従来技術は、このようにしてリンク装置が所定の経路上を周回する構成となっている。
【0005】
また、リンク装置と噛み合ってこれを駆動するスプロケットは、略円板の形状を備えて円板の中心において回転軸を有し、スプロケットの下方に配置され回転軸周りにこれを回転させる駆動力を供給するモータと回転するシャフトを介して連結されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−206409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術では、連結されたモータからの駆動力がスプロケットに伝達されて、スプロケットと係号しているリンク装置が駆動される。ここで、無端リンクの走行中に各リンク装置の展開や収縮に動作に支障が発生したり、走行の経路上で摩擦による抵抗が局所的に著しく増大したりする等の異常が発生すると、リンク装置と噛み合ってこれを駆動するスプロケットに大きな荷重が掛かることになる。
【0008】
このような荷重がスプロケットに印加されると、これを回転させる駆動力を供給するモータ及びその回転シャフトとスプロケットとの間を連結する部材にも大きな荷重が掛かる。この連結する部材に過度の荷重が印加されて損傷した場合には、正常な走行を行わせる駆動力をスプロケットに供給することができなくなるため、延伸機の動作を停止して連結部材の交換、修理を行う必要が生じる。
【0009】
ここで、円板形状のスプロケットとモータの円筒形状のシャフトとを連結する部材が破断した場合には、両者を分離して連結する部材の部分個々を取り出すことができるが、部材が分離しておらず変形している場合には、スプロケットがシャフトに取り付けられた状態でこれを取り外すことが必要となる。しかしながら、上記従来の技術は、このような変形した連結する部材を取り外す構成について十分に考慮されておらず、スプロケットにモータのシャフトを取り付けた状態で変形した部材を取り出すことができず、これらの全体を取り外し交換をすることになって作業の時間が増大し延伸機の運転の効率を著しく損なっていた。
【0010】
本発明の目的は、メンテナンスに必要な時間を低減して稼働の効率を向上させたシート状物の延伸機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、折れ尺状に配置された複数個のリンク装置を所定の経路上を周回させる無端リンク装置をシート状物が搬送される空間の両側に相対して配置され、前記リンク装置の周回に伴ってシート状物を前記空間で搬送して延伸するシート状物の延伸機であって、回転しつつ前記走行するリンク装置と噛み合わされてこれを駆動するスプロケットと、このスプロケットに連結されてこれを回転させるモータと、このモータの回転軸の軸方向と交差する方向に嵌め込まれ前記スプロケットと連結する部材と、前記スプロケットに配置され前記連結する連結部材の径より大きい内径を有して前記連結部材がその内側に挿入されて前記回転軸に嵌め込まれる貫通孔と、前記連結部材が嵌め込まれた状態で前記挿入孔内に配置され前記スプロケットに対して前記連結部材を位置決めする部材とを備えたシート状の延伸機により達成される。
【0012】
さらに、前記連結部材が略円筒形状を有して前記モータ軸に嵌め込まれる部分と前記挿入孔内に配置される部分とこれらの間に配置されこれらより径が小さくされた小径部とを備えたことにより達成される。
【0013】
さらにまた、前記小径部が前記モータ軸に嵌め込まれた状態でこのモータ軸の外周面と略同じ位置に配置されたことにより達成される。
【0014】
さらにまた、前記位置決めする部材が前記連結部材が嵌め込まれた状態で前記挿入孔内周と略同一の外形状を有して前記連結部材の外周を覆って配置されたことにより達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態を以下図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例を図1乃至図3を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施例に係るシート状物の延伸機の構成の概略を示す上面図である。本実施例のシート状物の延伸機(以下、延伸機)100は、中央にシート状物101を図上左から右側に搬送するための搬送空間102が配置され、シート状物101または搬送空間102の左右(図上上下)方向の両端側にシート状物101の両端を保持して搬送しつつ所定の方向に延伸する無端リンク装置103,104が配置されている。
【0018】
図上、無端リンク装置103,104は、環状に連結された複数のリンク装置とその環の内部に配置されて各リンク装置と係号してこれを搬送方向に移動させて周回させるスプロケット105,106,107及び108,109,110を備えている。また、図示していないが、少なくとも1つのこれらスプロケットに連結されてこれを回転駆動するための駆動モータを備えている。本実施例では、無端リンク装置103のスプロケット105,106は、シート状物101の上流側に隣り合って配置され、スプロケット107は下流側端部に配置されている。同様に無端リンク104のスプロケット105,106は、シート状物101の上流側に隣り合って配置され、スプロケット107は下流側端部に配置されている。
【0019】
搬送空間102あるいは、無端リンク装置103,104のシート状物に面する側の経路は、シート状物101の延伸の状態に応じて、3つの部分に大きく分けられる。すなわち、延伸を受けていないシート状物101が搬入されてこれを保持する予熱部111と、この予熱部111のシート状物101搬送方向の下流側に位置し予熱部111で予熱されたシート状物101を保持しつつ幅方向または搬送方向に延伸する延伸部112、さらにこの搬送方向下流側に配置され延伸部112からのシート状物101を保持しつつ冷却する冷却部113とで構成される。
【0020】
さらに、各無端リンク103,104は、シート状物101に面してこれを保持する側(シート側)の反対の側(反シート側)は、搬送方向下流側端部に達した無端リンク114,115がスプロケット107,110と係号して上流方向に向きを変えて戻る戻り経路を備えている。この戻り経路を上流側に移動した無端リンク114,115は、スプロケット105,108と係号し、さらにリンク同士の間隔が調節されて、スプロケット106,109と係号して再度予熱部111に供給される。
【0021】
このように、無端リンク114,115は、無端リンク装置103,104において環状の経路上を周回する。また、これら無端リンク装置103,104の各無端リンクの周回経路は、シート状物101を把持して搬送を開始する予熱部111において、無端リンク114,115の把持部が平行となるように配置されている。さらに、シート状物101を延伸する延伸部112では、無端リンク114,115の各リンク装置が末広がり状に移動するように、さらに下流側の冷却部113では再度平行に移動するように、周回経路が配置されている。
【0022】
また、予熱部111のシート状物101の入口側であるスプロケット106,109のシート側のリンク装置上方には、各リンク装置に備えられてシート状物を把持する掴み装置を動作させるための押板116,117が配置されている。さらに、冷却部113の下流端部であってスプロケット107,110のシート側のリンク装置上方には、掴み装置を動作させてシート状物101を開放させる押板118,119と備えている。
【0023】
無端リンク114,115が周回する無端リンク装置103,104の間の搬送空間
102の入口側に延伸対象のシート状物101が搬送されてくると、余熱部111において、周回に伴い押板116,117により開閉される各リンク装置の掴み装置に把持されて、これらの下流方向への移動により搬送空間102の出口側に搬送される。
【0024】
無端リンク114,115の周回経路が末広がり状にされる延伸部112にシート状物が搬送されると、シート状物の幅方向にシート状物が延伸される。さらに、本実施例では、延伸部112において無端リンク114,115の各リンク装置の掴み装置同士の間隔も広げられており、周回経路の方向についてもシート状物が延伸されることになる。つまり、延伸部112においては、シート状物が搬送方向及び幅方向の2方向に延伸される。
【0025】
図2は、図1に示すスプロケット部の構成を拡大して示す断面図である。図2(a)は、図1に示すスプロケット105乃至110のうち、これを回転させる駆動力が回転軸に供給されるものの回転軸周囲の構成の概略を示す縦断面図である。図2(b)は、図2
(a)中のA−A線に示す断面の構成を示す横断面図である。
【0026】
この図2(a)において示すスプロケット200は、図1に示すスプロケット105乃至110のいずれか一つに相当するものであり、これを回転駆動するスプロケットモータ202の上方において、そのモータ軸204に連結されている。このモータ軸204は、略円筒形状で図上上下方向に沿って軸が配置され、この軸が円筒形状の側面においてスプロケットの中心部に配置された円筒部201の中心に配置された貫通孔内に挿入されている。
【0027】
本実施例では、モータ軸204は円筒部201の中心部の貫通孔の内周壁上部と接してこれと連結され、内周壁下部とはモータ軸204にはめ込まれたリング形状の連結リング205を介して連結されている。連結リング205は、モータ軸204の上方からその内側の孔内にモータ軸204が貫通するように嵌め込まれて側面に配置された段差部の段上に載せられる。この段差は、モータ軸204の外径がスプロケットモータ202とのモータ軸204の先端との間の所定の位置で軸径が小さくされたことにより形成されている。
【0028】
また、本実施例では、スプロケット200の円筒部201の下端部はスプロケット200の円板部203に一つの部材として繋がっており、円板部203上方の円筒部203とモータ軸204とが連結されている。
【0029】
この円筒部201とモータ軸204とを連結する手段は、連結ピン208を含み、特に、円筒部201とモータ軸204とに連結ピン208が挿入されて固定されて両者が連結される構成となっている。この連結ピン208が挿入されて連結される位置は、上記連結リングの上方に位置する。
【0030】
このモータ軸204と円筒部201との連結部は、連結リング205の上方であって、円筒部201及びモータ軸204に配置された貫通孔とこの貫通孔内に嵌め込まれれた連結ピン208とこの連結ピン208の端部を覆って取り付けられその位置を固定する固定カバー207とを備えている。
【0031】
すなわち、モータ軸204には、その軸の方向と交差する方向、特には略垂直な方向
(図上左右方向、略水平な方向)に配置された貫通孔が配置され、この貫通孔はモータ軸204の円筒の側面に開口を有する径が大きな部分である略円筒形状の嵌入孔211とこれと略同軸に配置されこれより径が小さい小径孔209とを含んで構成されている。
【0032】
嵌入孔211は、略円筒形状の連結ピン208がその軸を嵌入孔211とほぼ同軸にして内側に嵌め込まれるものであり、嵌入孔211の略円筒形状の側壁による内径は連結ピン208の嵌め込まれる部分の外径とほぼ等しくされている。つまり、連結ピン208は嵌入孔211内に嵌め込まれることでモータ軸204に嵌合して両者が連結、結合される構成となっている。なお、嵌合された状態で連結ピン208と小径孔209との軸は平行またはほぼ一致している。
【0033】
嵌め込まれる連結ピン208は、略円筒形状を有して、両端の円筒部の中間にこれら円筒部より径が小さくされた小径部212を備えている。つまり、この小径部212の両端側に径が大きな円筒部分を備え、これら円筒部分がそれぞれモータ軸204及びスプロケット200の円筒部201と連結するモータ軸側部208a、スプロケット側部208bとなっている。
【0034】
小径部212は、具体的には略円筒形状の連結ピン208の円筒の側面をその円筒の軸方向のほぼ同一の位置でその軸周りの円周に沿って凹まされた溝を加工して形成されている。この凹みである小径部212の位置は、連結ピン208が嵌入孔211に嵌め込まれた状態で、嵌入孔211が配置されたモータ軸204の外周側面と略同一の位置にされる。つまり、モータ軸204の軸の中心からの外周側面の半径方向の位置と略同じ位置になるように構成されている。
【0035】
さらに、スプロケット200の円筒部201には、連結ピン208またはモータ軸204の貫通孔と略同じ軸方向に貫通孔である挿入孔206及び小径孔210が配置されている。挿入孔206は連結ピン206の円筒部よりその径が大きな貫通孔であり、その内側に連結ピン208が挿入されて配置され円筒部201の内部に位置するモータ軸204の嵌入孔211に嵌め込まれる。つまり、挿入孔206は、連結ピン208の取り付け、取り外しの作業のための孔であり、円筒部201の外部から連結ピン208に作業を施せるように、その略円筒形状の孔の径が連結ピン208のものより大きくされている。
【0036】
挿入孔206の内部でモータ軸204に嵌合した状態で、連結ピン208の外周側(円筒部201側)に突き出ている円筒状部分であるスプロケット側部208bの外周と挿入孔206の内側壁面との間には隙間がある。本実施例では、この隙間を埋めてスプロケット側部208bと円筒部201とを連結し、これらの相対位置を位置決めして固定する固定カバー207が、この隙間に円筒部201の外側から嵌め込まれる。
【0037】
嵌入される固定カバー207は、その外周の径が挿入孔206の内径とほぼ等しい略円筒形状を有し、その円筒形状の一端面には連結ピン208のスプロケット側部208bが嵌められて係号するスプロケット側部208bと略同径の円筒状の凹み部がその軸を固定カバー207の円筒形状の軸と同軸にして配置されている。固定カバー207が挿入部に嵌め込まれた状態で、凹み部がスプロケット側部208bと嵌合してその位置が固定カバー207に対して位置決めされるとともに、固定カバー207の円筒部が挿入孔206に係号してその外周が挿入孔206の内周壁と接触して固定カバー207の位置を円筒部
201に対して位置決めする。
【0038】
このようにして、連結ピン208が円筒部201に対して位置決めされ、連結ピン208と位置決めされて連結されているモータ軸204が円筒軸201を有するスプロケットに対して位置決めされる。この構成により、スプロケットモータ202の回転による駆動力がモータ軸204から連結ピン208、固定カバー207を介してスプロケット200に伝達される。
【0039】
上記固定カバー207,連結ピン208及び円筒部201,モータ軸204の連結では、固定カバー207の挿入によりモータ軸201とスプロケット200とが連結、結合される。さらに、連結ピン208が挿入される挿入孔206,嵌入孔211,小径孔209とは連結ピン208と略同軸に配置されており、これらも略同軸にはいちされることになる。
【0040】
さらに、円筒部201には、挿入孔206とモータ軸201を挟んだ反対の側に、これと同軸に配置された略円筒形状の貫通孔である小径孔210が配置されており、この小径孔210は、連結ピン208より径が小さく形成されている。連結ピン208が挿入されてモータ軸204及び円筒部201に対して位置が固定された状態で、小径孔210の円筒形状の軸も連結ピン208と略同軸に配置されている。
【0041】
このような構成により、モータ軸204に伝達される駆動力がスプロケット200に伝達され、スプロケット200外周でこれに係号しつつ経路を走行する図1に示す無端リンク装置103または104を構成するリンク装置200が駆動される。しかし、無端リンク装置103または104のこれらリンク装置200の走行を妨げる障害が生起した場合に、無端リンク114,115を走行させようとするスプロケット200にリンク装置
200から大きな荷重が印加される。
【0042】
この荷重が過大となると、モータ軸204からスプロケットモータ202に損壊を及ぼす外力が印加されるため、過大な荷重が印加される前にこれの伝達を抑制する構成が必要となる。本実施例では、連結ピン208の小径部212は、円筒部201とモータ軸204との間を連結する部材である連結ピン208において、機械的強度が小さくされた部分であり、荷重が大きくなると応力が集中して破壊されやすい箇所である。
【0043】
特に、本実施例では、小径部212はモータ軸204の外周と略同じ半径位置に配置されており、モータ軸204を回転させるトルクによって小径部212が破断された場合に、モータ軸204が円筒部201内で空回りしてスプロケットモータ202または無端リンク114,115とこれを構成するリンク装置に過大な負荷が掛かることが抑制される。
【0044】
また、破断してモータ軸204空回りする場合には、延伸機100を停止して、このモータ軸を有するスプロケット部の連結ピン208を交換して円筒部201とモータ軸204とを再度連結して運転を再開できる。一方、破断に至らず連結ピン208が小径部211において変形した状態となった場合にも、延伸機100を停止して連結ピン208を交換するためにこれを取り出す必要が有る。
【0045】
図3は、従来の技術によるスプロケットとモータとの連結の構成を示す断面図である。図3(a)は、スプロケットモータ202のモータ軸204周りの構成の概略を示す縦断面図である。図3(b)は、図3(a)のB−B線でみた横断面図である。
【0046】
この従来技術では、図2に示す実施例と同様に、円筒部201とモータ軸204とを連結するために両者に挿入された略円筒形状の連結ピン301は、両端側の円筒形状部である軸側部301aとスプロケット側部301bとこれらの間に位置する小径部303とを備えている。さらに、スプロケット側部301bの円筒部外径が略円筒形状で同軸に配置される挿入孔302の内径と同一の径となるように構成されている。
【0047】
つまり、連結ピン301を挿入孔302及び嵌入孔211に嵌め込んだ状態で、円筒部201とモータ軸204とが結合された状態することができる。さらに、連結ピン301のスプロケット側部301bの端面には、連結ピン301を取り出しやすくするためのメネジ302が形成され、連結ピン301を取り出す際にこのメネジ302内に所定の形状のネジを有する部材をねじ込んで、この部材を引っ張ることで連結ピン301と取り出すことができるようにされている。
【0048】
一方、連結ピン301が破断せずに変形した状態となった場合、特に、小径部303において軸側部301aの軸とスプロケット側部301bの軸とがズレるように変形した場合には、挿入孔302、嵌入孔211の壁面が連結ピン301に掛かり、これを取り出すことが困難となってしまう。このため、連結ピン301の変形、特に小径部303において変形した場合に、連結ピン301が取り出すことができず、スプロケット200及びスプロケットモータ202の連結を正常に復帰させるためには両者を取り外す作業をしなければならない。
【0049】
一方、本実施例では、挿入孔206の内径が連結ピン208のスプロケット側部208bの外径より大きく、連結ピン208を嵌入孔211に係合させた状態で両者の間に隙間が存在する。両者の間の位置関係を固定するために別の部材を上記隙間に配置すると、上記内径と外径との間の距離の分だけ連結ピン208は変形しても、嵌入孔211に係号された軸側部208aは挿入孔206(円筒部201)の内径の内側に位置している。
【0050】
本実施例においてスプロケット200に対する大きな荷重が印加された場合、軸側部
208aとスプロケット側部208bとが小径部212を挟んでズレる変形をする場合が有る。このような変形時に、挿入孔206の内周と軸側部208aの外径(嵌入孔211の内径)との距離の範囲内でズレが生じる限りは、固定カバー207を取り除くと、連結ピン208のスプロケット部208bが挿入孔206内側に存在し、軸側部208aが挿入孔206の内径の範囲内に存在するので、連結ピン208をモータ軸204が円筒部
201内部に取り付けられた状態でスプロケット200の外側に取り出すことが可能となる。
【0051】
過荷重が印加されたためにスプロケット200の円筒部201とモータ軸204との間の結合がズレる等駆動装置の異常が生じたことが判明した場合には、延伸機100の動作を停止して、異常の部位を確認し、必要に応じて異常を修正する。上記連結ピン208での変形(ズレ)が判明した場合は、連結ピン208を取り外して交換する。
【0052】
まず、固定カバー207を円筒部201の外側壁方向に引っ張り出して取り外す。この作業を容易に行えるように固定カバー207の外周側端面に作業者の指の掛かりができるような凹み部や切り欠きを設けてもよい。固定カバー207を取り除いた後、変形した連結ピン208を取り外す。
【0053】
この際、変形が大きく円筒部201の挿入孔206の内側壁面のさらに外側にまで連結ピン208の軸側部208aが変位している場合には、スプロケット200及びスプロケットモータ202全体を取り外す。挿入孔206の内側壁面の内側で軸側部208aが変位している場合には、モータ軸204が円筒部201内側に挿入された状態で連結ピン
208を取り外す。
【0054】
この作業を容易にするため、本実施例の連結ピン208のスプロケット側部208bの円形の端面には穴内に雌ネジ部213が配置されている。この雌ネジ部213に、固定カバー207の外周側端面に配置された貫通孔を通して所定の形状の雄ネジが形成された棒状の部材がねじこまれて連結ピン208と連結された後、スプロケット外側に引っ張り出すことで、連結ピン208を取り出すことが容易になる。
【0055】
上記のような構成により、本実施例は、連結ピン208の変形時でもスプロケット200とモータとを接続させた状態で、これらを分離することなく、連結ピン208を取り外して交換することができる。このため、過大な荷重が掛かりスプロケットとモータとの結合部に異常が生じても、これら全体を取り外す等の作業を要さずメンテナンスの作業時間を短縮して、延伸機100の動作の効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例に係るシート状物の延伸機の構成の概略を示す上面図である。
【図2】図1に示すスプロケット部の構成を拡大して示す断面図である。
【図3】従来の技術によるスプロケットとモータとの連結の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
100 延伸機
101 シート状物
102 搬送空間
103,104 無端リンク装置
105,106,107,108,109,110 スプロケット
111 予熱部
112 延伸部
113 冷却部
114,115 無端リンク
116,117,118,119 押板
200 スプロケット
201 円筒部
202 スプロケットモータ
203 円板部
204 モータ軸
205 連結リング
206 挿入孔
207 固定カバー
208 連結ピン
209,210 小径孔
211 嵌入孔
212 小径部
213 雌ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折れ尺状に配置された複数個のリンク装置を所定の経路上を周回させる無端リンク装置をシート状物が搬送される空間の両側に相対して配置され、前記リンク装置の周回に伴ってシート状物を前記空間で搬送して延伸するシート状物の延伸機であって、
回転しつつ前記走行するリンク装置と噛み合わされてこれを駆動するスプロケットと、このスプロケットに連結されてこれを回転させるモータと、このモータの回転軸の軸方向と交差する方向に嵌め込まれ前記スプロケットと連結する部材と、前記スプロケットに配置され前記連結する連結部材の径より大きい内径を有して前記連結部材がその内側に挿入されて前記回転軸に嵌め込まれる貫通孔と、前記連結部材が嵌め込まれた状態で前記挿入孔内に配置され前記スプロケットに対して前記連結部材を位置決めする部材とを備えたシート状の延伸機。
【請求項2】
前記連結部材が略円筒形状を有して前記モータ軸に嵌め込まれる部分と前記挿入孔内に配置される部分とこれらの間に配置されこれらより径が小さくされた小径部とを備えた請求項1に記載のシート状物の延伸機。
【請求項3】
前記小径部が前記モータ軸に嵌め込まれた状態でこのモータ軸の外周面と略同じ位置に配置された請求項1または2に記載のシート状物の延伸機。
【請求項4】
前記位置決めする部材が前記連結部材が嵌め込まれた状態で前記挿入孔内周と略同一の外形状を有して前記連結部材の外周を覆って配置された請求項1乃至3の何れかに記載のシート状物の延伸機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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