説明

シート状物の送り出し装置

【課題】シート状物を正確に送り出すことができ、送り出しの高速化及び効率化に対応する。
【解決手段】シート状物を垂直積層状態で収容可能なスタック部12にある最下段のシート状物の載置部16aと、シート状物の上流側端部に当接する段差部16bを有し、送り面14aに沿ってシート状物を押出すべく水平往復動を行うキッカー16と、押出されたシート状物を上下で挟み付け引出すべく回転運動を行う引出しローラ18と、送風機の吸引作用による吸引力を発生する吸引手段22とを備える。キッカー16の載置部16aには貫通孔16cが形成され、貫通孔16cを介して吸引手段22からの吸引力により載置部16aに載せられたシート状物を吸引し、該吸引は、引出しローラ18にシート状物が送り込まれる時点までは継続され、引出しローラ18にシート状物が送り込まれる時点で、キッカー16の速度は既に減速され且つ引出しローラ18の周速度よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状物を送り出す送り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のシート状物を送り出す送り出し装置としては、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
この特許文献1に記載の送り出し装置においては、蹴込板の移行路上にシート状物を積み重ね、蹴込板の往復移動によって最下部のシート状物を1枚ずつ送り出す装置において、蹴込板に最下部のシート状物の上流側下面を支える支え面と、シート状物の上流側の後端縁に引っ掛る当り面とを設け、支え面に上下方向に貫通する貫通部を開設し、貫通部を蹴込板の移行路の下方に配置した吸気装置に連通させている。
【0004】
蹴込板に貫通部を設け、貫通部からシート状物の後端側下面を吸着することから、シート状物の後端側に反りが生じていても吸着作用によってシート状物を蹴込板の支え面に密着して、蹴込板の前進移動時に蹴込板の当り面に確実にシート状物の後端縁を引っ掛けることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭55−96838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、吸引力がシートの水平移動に対して妨げになることを防ぐために、蹴込板のストロークの半分移動した時点で、貫通部が吸気装置と非連通となり、吸引力がなくなるようにしている。そのため、シートが自由になって傾いたり送り出しのタイミングがずれてしまう虞があり、送り出しの高速化及び効率化に十分対応できない、という問題がある。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、シート状物を正確に送り出すことができ、送り出しの高速化及び効率化に対応することができる送り出し装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、シート状物を送り出す送り出し装置であって、
1つ以上のシート状物を垂直方向に積層状態で収容可能な収容部と、
収容部にある最下段のシート状物を載せる載置部と、シート状物の上流側端部に当接する段差部を有し、送り面に沿ってシート状物を押し出すべく水平方向に往復動を行う押し出し部材と、
押し出し部材によって押し出されたシート状物を上下で挟み付けて引き出すべく回転運動を行う引き出しローラと、
送風機による吸引作用による吸引力を発生する吸引手段と、
を備え、
前記押し出し部材の載置部には貫通孔が形成されて、貫通孔を介して前記吸引手段からの吸引力により載置部に載せられたシート状物を吸引しており、該吸引は、少なくとも引き出しローラにシート状物が送り込まれる時点までは継続され、
引き出しローラにシート状物が送り込まれる時点で、押し出し部材の速度は既に減速されており且つ引き出しローラの周速度よりも小さいことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、押し出し部材の最大速度は、引き出しローラの周速度よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記引き出しローラは、対になった上下のローラ対からなり、少なくとも一方のローラの表面は弾性材からなり、ローラ対はシート状物が介在していない状態において互いに弾接していることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発明において、引き出しローラの上流側には1つのシート状物のみの通過を許容するゲート部が設けられ、ゲート部の上流側の送り面には第2貫通孔が設けられて、第2貫通孔を介して前記吸引手段からの吸引力により送り面上のシート状物を吸引することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シート状物に反りが発生していたとしても、送風機による吸引作用により載置部に載せられたシート状物を吸引するので、押し出し部材の段差部によってシート状物の上流側端部を確実に当接させてシート状物を押し出すことができる。
【0013】
この吸引は、引き出しローラにシート状物を送り込むまでは少なくとも継続されるので、シート状物はそれまで押し出し部材に拘束され、シート状物が自由になって傾いたりすることを防ぎ、送り出しタイミングを正確にコントロールすることができ、送り出しの高速化に対応することができる。
【0014】
引き出しローラにシート状物が送り込まれる時点で、押し出し部材の速度は既に減速されているため、引き出しローラにシート状物を送り込んでから直ぐに、次のシート状物を送り出すための準備をすることができ、送り出しの高速化及び効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態による送り出し装置の平面図である。
【図2】本発明の実施形態による送り出し装置の側面図である。
【図3】本発明の実施形態による送り出し装置の主要部の断面図である。
【図4】図3の4−4線に沿って見た、最下段のシート状物のみを仮想線で示した図である。
【図5A】本発明の実施形態による送り出し装置の作用を表す断面図である。
【図5B】本発明の実施形態による送り出し装置の作用を表す断面図である。
【図5C】本発明の実施形態による送り出し装置の作用を表す断面図である。
【図5D】本発明の実施形態による送り出し装置の作用を表す断面図である。
【図5E】本発明の実施形態による送り出し装置の作用を表す断面図である。
【図6】キッカーの速度と、引き出しローラの周速度との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
【0017】
図1〜図3は、本発明の実施形態による送り出し装置を表す図である。
【0018】
この実施形態による送り出し装置10は、シート状物としての紙製シートを送り出すための装置となっているが、これに限るものでなく、シート状物としてダンボール、合成樹脂シート、その他の任意の薄肉材とすることも可能である。
【0019】
図において、送り出し装置10は、大別して、送り出すべき複数のシート状物が積層された状態で待機された収容部としてのスタック部12と、送り面を画成する送りプレート14と、シート状物を送り面に沿って押し出すべく往復動を行う押し出し部としてのキッカー16と、キッカー16によって押し出されたシート状物を上下で挟み付けて引き出すべく回転運動を行う引き出しローラ18と、引き出しローラ18で引き出されたシート状物を搬送する搬送手段20と、送り面上から下方に向けて吸引する吸引力を発生する吸引手段22と、キッカー16、引き出しローラ18及び搬送手段20の駆動を行う駆動手段38と、を備えている。
【0020】
尚、この明細書において、基本的に送り出し下流側を前側とし、送り出し上流側を後側とする。
【0021】
スタック部12には、待機されたシート状物の移動を規制するべく、前後左右にガイド12a〜12dが設けられる。送り出し上流側となる後側ガイド12b及び左右側ガイド12c、12dはシート状物の大きさに合わせて前後左右に調整可能となっている。
【0022】
送り出し下流側となる前側ガイド12aの下側には、ゲート部13が設けられる。ゲート部13は、後述の送り面14aと前側ガイド12aとの上下方向の間に形成されており、一度に1つのシート状物のみを通過させるものとなっている。ゲート部13の高さは、シート状物の厚みの1倍以上2倍未満、例えば、シート状物の厚みの1.5倍程度とすることができる。ゲート部13は、送り出すシート状物の全幅に対応して形成する必要はなく、送り出すシート状物の幅の一部に対応して形成することで十分である。これにより、一度に2つ以上のシート状物の通過をゲート部13によって防止することができる一方で、通過するべき1つのシート状物については、ゲート部13を通過する部分以外の反りを許容することができる。この例では、2つのゲート部13が設けられている(図4参照)。
【0023】
スタック部12の下方には、送り面14aを画成する送りプレート14が設けられ、送りプレート14は、スタック部12に積層されたシート状物を支持すると共に、その上をスタック部12の最下段のシート状物が送り出されるようになっている。送りプレート14のゲート部13の近傍には、上下方向に貫通する複数の貫通孔14bが形成されており、また、送りプレート14の中央には、キッカー16が往復摺動するための摺動溝14cが形成される。
【0024】
キッカー16は、前記摺動溝14cを往復動できる寸法を持ち、前記送りプレート14によって画成される送り面14aとほぼ面一となった載置部16aと、載置部16aの後部に形成された段差部16bとを備えた板状部材である。段差部16bの高さは、シート状物の厚みの1倍未満、例えば、シート状物の厚みの0.5倍程度とすることができる。載置部16aにシート状物を載せて且つ段差部16bがシート状物の後端に当接するようにして、1つのシート状物のみを送り出すことができるようになっている。また、載置部16aには、段差部16bの手前に上下方向に貫通する複数の貫通孔16cが形成される。
【0025】
引き出しローラ18の上下の対は、ゲート部13の下流側に設けられる。この対は、複数対設けることができ、各対において、一方の引き出しローラ18aが駆動軸18cに取り付けられた駆動ローラとなっており、他方の引き出しローラ18bが従動ローラとなっている。これらのローラの少なくとも一方はその表面が弾性材でライニングされた弾性ローラとなっている。シート状物を引き出している状態では、弾性ローラの弾性変形によって、シート状物がローラ対の間に介在することが可能となっている。また、上下のローラ対の間隔は、シート状物の厚みに依存するものの、シート状物が肉薄の場合には、間隔をマイナスに、即ち、シート状物が上下のローラ対の間に介在していない状態においても、常時、ローラが弾接した状態となっているとよい。
【0026】
搬送手段20は、無端状の搬送チェーンからなり、シート状物の幅に応じて複数個の搬送チェーンを設けることができる。この例では、3つの搬送チェーンが設けられており、1つの搬送チェーン20aはシート状物の中央上方に設けられ、他の2つの搬送チェーン20bはシート状物の側方下方に設けられ、これらの搬送チェーン20a、20bによってシート状物を挟んで搬送可能である。また、搬送チェーン20aには、各シート状物を送り出すべくシート状物の後端部に形成された凹部に係止可能となった搬送爪20cが所定間隔をあけて取り付けられている。
【0027】
吸引手段22は、送りプレート14の下方に設けられた第1吸引ボックス24と、キッカー16の裏面に設けられて前記送りプレート14の摺動溝14cの下方に設けられた開口14d内に配置される第2吸引ボックス26と、第1吸引ボックス24と第2吸引ボックス26にダクト25、27を介して接続される送風機28と、を有する。第1吸引ボックス24は送りプレート14の前記貫通孔14bに連通し、第2吸引ボックス26はキッカー16の前記貫通孔16cに連通する。第1吸引ボックス24及び第2吸引ボックス26は、送風機28による吸引作用により、送り出し動作中、負圧となっている。尚、この例では、第2吸引ボックス26は、キッカー16と一体になっておりキッカー16と共に往復動するようになっているが、これに限るものではなく、貫通孔16cと連通可能な固定の吸引ボックスとすることも可能である。
【0028】
送風機28は、吸引風量が多く、吸引力が低い(例えば、吸引力は−8kPa(実測値)、風量は1000L/min〜140〜140L/min)特性を有し、例えば、リングブロア方式の圧空送風機を使用することができる。送風機28の吸引口にはダクトが接続され、該ダクトが分岐されて前記ダクト25と前記ダクト27となる。
【0029】
駆動手段38は、駆動モータ40と、ギヤボックス41を介して駆動モータ40からの回転力が伝達されるクランク板42と、クランク板42の回転運動を往復運動にしてキッカー16に伝達する連接棒44と、ギヤボックス41を介して駆動モータ40からの回転力を搬送手段20の各搬送チェーン20a、20b及び引き出しローラ18の駆動軸18cに伝達する駆動機構46と、を備える。駆動機構46は、適宜のスプロケット、チェーン及びギヤ等によって構成される。連接棒44の後端は、クランク板42の偏心位置に軸着され、連接棒44の前端は、キッカー16の後端に軸着される。
【0030】
以上のように構成される送り出し装置10において、その作用を説明する。
【0031】
図5Aに示すように、スタック部12には、複数のシート状物が積層されており、その前後方向は、前側ガイド12aと後側ガイド12bとの間で移動不能となっており、その左右方向は左右側ガイド12c、12dとによって移動不能となっている。最下段のシート状物だけは、前方向にのみ移動可能となっており、送りプレート14上の送り面14a及びキッカー16の載置部16a上にある。
【0032】
駆動モータ40が駆動されると、連接棒44によってキッカー16が往復動を開始し、同期して搬送手段20の搬送チェーン20a、20bが移動を開始し、同期して送り出しローラ18が回転を開始する。
【0033】
シート状物に反りが発生していると、積層されたシート状物との間に隙間が形成されることになる。シート状物の質量が大きい場合には、上に載ったシート状物の質量で隙間の発生をある程度防ぐことができるが、シート状物の質量が小さい場合、またはスタック部12に積層されるシート状物の残量が少なくなると、隙間は形成されたままとなる。しかしながら、最下段にあるシート状物は、送りプレート14に形成された貫通孔14b、第1吸引ボックス24及びダクト25を通して、及びキッカー16に形成された貫通孔16c、第2吸引ボックス26及びダクト27を通して、送風機28からの吸引力を受けるために、少なくとも、貫通孔14b、16cの近傍の部分に関しては、反りが矯正されて平坦な形状となることができる。よって、キッカー16が前進するときに、キッカー16が空振りすること無く、段差部16bが最下段のシート状物の後端部に当接して、シート状物を確実に下流側に押し出すことができる(図5B)。このときに、シート状物に作用する送風機28の吸引力はバキュームのような大きな力ではないため、シート状物は、貫通孔14bを通じた吸引力による抵抗を受けることなく、貫通孔14bを通過してゲート部13を通過することができ、ゲート部13の下流側において一定速度で回転する引き出しローラ18に送り込まれることができる。そして、引き出しローラ18によってシート状物が引き出されると、シート状物は、同期して移動する搬送チェーン20a、20bによって搬送される(図5C)。また、搬送チェーン20aの搬送爪20cがシート状物に係止して、搬送する。
【0034】
引き出しロール18にシート状物の前端部が送り込まれた後、キッカー16が最も前進した位置に達すると、キッカー16は後退し(図5D)、最も後退した位置へと戻る(図5E)。このときもキッカー16の貫通孔16cを通じた吸引力が継続して発生しているものの、次に最下段になって送り出すべきシート状物は、スタック部12で拘束されているために、キッカー16に追随して後退することはない。そして、キッカー16の段差部16bが次に送り出すシート状物の後端部よりも後退した後、再び前進すると、段差部16bが次に送り出すシート状物の後端部に当接して、これを押し出すことができる。
【0035】
キッカー16の送り出し速度は、クランク板42に軸着される連接棒44の後端の位置に依存し、キッカー16のストロークの始めにおいてはキッカー16は加速され、中間において最大速度となり、ストロークの終わりにおいてキッカー16は減速される。連接棒44の長さに対して、クランク板42の回転中心と連接棒44の軸着位置との間の長さが十分小さい場合、キッカー16の速度はほぼ正弦的に変化する(図6参照)。一方、引き出しローラ18の回転速度は、1つのシート状物の送り出し動作中に変化はすることなく、その周速度は原則一定となっている(図6参照)。
【0036】
図5Aに示すように、シート状物の長さをLとし、引き出しロール18の周速度vを一定とすると、引き出しロール18が1枚のシート状物を引き出すのに要する時間Tは、T=L/vとなる(図6参照)。効率的な送り出しを実現するためには、シート状物と次のシート状物との間の間隔を極力開けずに連続的に送り出すことが望ましい。連続的な送り出しを可能とするためには、上記時間Tの間にキッカー16が次のシート状物を引き出しロール18に送り込むために往復動する必要があり、送り込みに寄与しない無駄なストロークがあれば、その分だけ、キッカー16の速度を上げる必要がある。逆を言えば、キッカーの最大速度が同じ条件であれば、無駄な動きをすればそれだけ、送り出しは間欠となり、効率が悪くなることになる。
【0037】
そのため、キッカー16のストロークは、最下段のシート状物がスタック部12にある位置からその前端部が引き出しロール18に送り込まれる位置までの距離と同程度となっており、キッカー16の動きに無駄のないようにしている。即ち、図5Aに示すように、キッカー16のストロークをaとし、最下段のシート状物がスタック部12にある位置からその前端部が引き出しロール18に送り込まれる位置までの距離をbとすると、aはbより僅かに大きい程度、即ち1.2b≧a>1.0b程度とするとよい。
【0038】
そして、キッカー16がシート状物の前端部を引き出しロール18に送り込む時点では、キッカー16はストロークの終了近傍、即ち、最も前進した位置の近傍にあり、よってキッカー16の速度は既に減速されて、且つ引き出しロール18の周速度よりも小さくなるように設定されている。
【0039】
以上の設定により、キッカー16はシート状物の前端部を引き出しロール18に送り込むと直ぐに後退して、次のシート状物を押し出す準備に入ることができる。
【0040】
また、キッカー16の最も後退した位置は、積層されたシート状物の後端部より僅かに後退した位置でよく、これによって、キッカー16の無駄な動きを防止して、次のシート状物の送り出しを直ぐに行うことができるようになる。
【0041】
シート状物の前端部を引き出しロール18に送り込む時点でキッカー16が既に減速していると、慣性力によってシート状物がキッカー16よりも飛び出してシート状物が傾いたりまたはシート状物の引き出しタイミングがずれてしまったりする虞があるが、本発明では、シート状物はキッカー16の貫通孔16cを通じた吸引力によって、引き出しロール18に引き渡されるまで、キッカー16によって常時拘束されている。そのためシート状物は傾いたりまたはシート状物の引き出しタイミングがずれたりすることなく、確実にコントロールされた状態でシート状物の送り出しを行うことができ、搬送手段20との搬送タイミングも確実に図ることができる。
【0042】
また、キッカー16がシート状物の前端部を引き出しロール18に送り込む時点で、キッカー16の速度は引き出しロール18の周速度よりも小さくなっているので、引き出しロール18の状態に関らず、キッカー16によって押し出されたシート状物は、引き出しロール18対の間を円滑に通過していくことができる。
【0043】
仮に、キッカー16がシート状物の前端部を引き出しロール18に送り込む時点でのキッカー16の速度が引き出しロール18の周速度よりも大きいとすると、シート状物が高速で引き出しロール18に突き当たることになり、シート状物が引き出しロール18に衝突して、円滑に引き出しロール18対の間を通過することが困難になる。これに対して本発明では、このような不具合を回避することができる。
【0044】
また、図6に示したように高速化を図るために、キッカー16の最大速度は、引き出しロール18の周速度よりも大きくなるようにするとよい。
【0045】
また、引き出しローラ対の表面が弾性変形することでシート状物が挟持されるために、引き出しローラとシート状物との滑りを無くし、シート状物の引き出しタイミングを正確にコントロールすることができる。
【0046】
吸引力は、送風機の吸引力を利用しており、バキューム吸着とは異なっている。そのため、バキュームによる吸着力に比較すると、吸引力は小さいが、気密性に考慮する必要がなく、また、吸引力のオン・オフの切替を行う必要がなく、切換弁等を不要とすることができ、高速化に適した装置とすることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 送り出し装置
12 スタック部(収容部)
13 ゲート部
14a 送り面
14b 貫通孔(第2貫通孔)
16 キッカー(押し出し部材)
16a 載置部
16b 段差部
16c 貫通孔
18 引き出しローラ
22 吸引手段
28 送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状物を送り出す送り出し装置であって、
1つ以上のシート状物を垂直方向に積層状態で収容可能な収容部と、
収容部にある最下段のシート状物を載せる載置部と、シート状物の上流側端部に当接する段差部を有し、送り面に沿ってシート状物を押し出すべく水平方向に往復動を行う押し出し部材と、
押し出し部材によって押し出されたシート状物を上下で挟み付けて引き出すべく回転運動を行う引き出しローラと、
送風機による吸引作用による吸引力を発生する吸引手段と、
を備え、
前記押し出し部材の載置部には貫通孔が形成されて、貫通孔を介して前記吸引手段からの吸引力により載置部に載せられたシート状物を吸引しており、該吸引は、少なくとも引き出しローラにシート状物が送り込まれる時点までは継続され、
引き出しローラにシート状物が送り込まれる時点で、押し出し部材の速度は既に減速されており且つ引き出しローラの周速度よりも小さいことを特徴とするシート状物の送り出し装置。
【請求項2】
押し出し部材の最大速度は、引き出しローラの周速度よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のシート状物の送り出し装置。
【請求項3】
前記引き出しローラは、対になった上下のローラ対からなり、少なくとも一方のローラの表面は弾性材からなり、ローラ対はシート状物が介在していない状態において互いに弾接していることを特徴とする請求項1または2記載のシート状物の送り出し装置。
【請求項4】
引き出しローラの上流側には1つのシート状物のみの通過を許容するゲート部が設けられ、ゲート部の上流側の送り面には第2貫通孔が設けられて、第2貫通孔を介して前記吸引手段からの吸引力により送り面上のシート状物を吸引することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシート状物の送り出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−250798(P2012−250798A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123814(P2011−123814)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(506100990)日本トーカンパッケージ株式会社 (41)
【Fターム(参考)】