説明

シート状皮膚洗浄用具

【課 題】シート状が割れたり、ヒビ、クラックが入ったりすることなく、安定して水のみによって接着が可能で、経済性の高いシート状洗浄剤を提供すること。
【解決手段】(a)水溶性高分子、界面活性剤及び保湿剤からなる、可撓性を有するシート状洗浄剤と(b)湿潤状態で圧縮弾性を具備する吸水性シートとが積層・接着された洗浄用具であって、該シート状洗浄剤は水溶性であり、シート状洗浄剤の片面が吸水性シートに溶解含浸されており、吸水性シートの片側又は両側に接着されている構造であることを特徴とするシート状皮膚洗浄用具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄用基材シートと洗浄剤としてのシート状洗浄剤とが積層・圧着によって一体化されたシートタイプの皮膚洗浄用具に関する。
【背景技術】
【0002】
シャワー時、あるいは入浴時に使用する洗浄用具としては種々のものが古くから使用されており、一般的には、別々の洗浄剤や石鹸と、浴用タオルとを使用されている。しかし、特に旅行先などへこれらを持ち運ぼうとすると、嵩張るし、重く何かと不便なものであった。
そこで、洗浄具と皮膚洗浄剤とが一体化されたものは携行しやすく、取り扱いも簡便であるために、種々のものが提案されている。
例えば、固形石鹸が内蔵されたポリウレタンフォームをナイロン製繊維基材で被覆した構造の洗浄具がドイツ公開公報第2121388号(特許文献1)などに提案されている。
【0003】
コンパクト化を図るために、連続気孔構造を有するスポンジシートに脂肪酸石鹸を含有する洗浄剤を含浸せしめた使い捨てタイプの身体洗浄用具が、例えば米国特許公報第4397754号(特許文献2)などに提案されている。
また、セルローススポンジ基材にHLBが7以上の界面活性剤を非水状態でコーティングした洗浄用具が特開平5−117699号(特許文献3)に開示されている。
これと類似する技術として、スポンジなどの多孔質基材上にコーティング法又はスプレー法で洗浄剤を塗布する技術が、米国特許公開公報2005/0158368号(特許文献4)に開示されている。
一方、湿潤状態での接着性維持を目的に、合成スポンジと固形石鹸との間に遮水性フィルムを挟みこみ、水に不溶性の接着剤で互いに接着した一体型洗浄用具が英国特許公報第977156号(特許文献5)に提案されている。
【0004】
【特許文献1】ドイツ公開公報第2121388号
【特許文献2】米国特許公報第4397754号
【特許文献3】特開平5−117699号
【特許文献4】米国特許公開公報2005/0158368号
【特許文献5】英国特許公報第977156号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、特許文献1の技術によると、洗浄具を構成する部材の数が多い分、製造工程が煩雑なものであり、一貫工程で生産するには適していない。
使用に際しても、バルク製品のハンドリング性は余り良くなく、使用済み後の洗浄具を廃棄するには、残存した石鹸の処置がやり辛く中途半端なものであり、再使用しようとすると内蔵された石鹸がふやけてしまい、保存状態によっては袋にカビなどが発生する懸念もあった。
次に、特許文献2の技術によると、連続気孔構造を有するスポンジシート基材を圧縮しておき、脂肪酸石鹸とポリエチレンオキシドアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤からなる洗浄剤を溶融状態で含浸せしめようとする点に特徴がある。しかし、粘度の高い洗浄剤組成物を基材内に含浸させることは難しく、加熱と冷却が必要となるために工程が複雑となりコスト面で難点があった。
次に、特許文献3の技術によると、圧縮状態のセルロース発泡体基材の表面に液状洗浄剤をコーティングするものであるが、塗工時に液ダレ、流出を防ぐには、ごく少量の洗浄剤しか塗工できず、使用時に十分な洗浄効果を発現するには不向きであった。
【0006】
特許文献4の技術によると、多孔質基材表面に液状洗浄剤を噴霧したり、塗布する技術が開示されるが、上記と同様の問題点が存在していた。また、噴霧の場合、ロスが大きい問題点もあった。
さらに、特許文献5の技術によると、スポンジブロックの上にバリア性フィルムを接着し、その上に水不溶性の接着剤によって固形石鹸を接着する製造プロセスを一貫的に行おうとするものである。しかしながら、石鹸を接着するには、適合する接着剤の選定が難しい点が存在する。また、この方法で得られる洗浄具は硬く、使用感が悪く、泡立ち性も十分なものではなかった。
また、この技術によると、石鹸とスポンジとが、水不透過性のバリア性フィルムで隔離されているので、使用に際しては、石鹸を肌に塗りつけた後、洗浄具を反転させてスポンジ面で体を擦り、泡立ちがなくなると再度反転して、かかる操作を反復せねばならず非常に煩雑なものであった。さらに、反転操作に際して洗浄具を床に落しやすいという問題点も存在していた。
【0007】
このように、従来の上記した問題点に鑑み鋭意研究した結果、本発明は皮膚面の洗浄に十分な使用量の石鹸分を、接着剤を使用せずとも、簡単なプロセスで弾性基材と確実に原形を保つように一体化でき、かつ連続的に製造できる技術を提供することを課題とする。
使用面については、顔のような起伏に富んだ部位でも確実に洗浄できるように柔軟性に優れ、また洗浄時に、いちいち手を持ち替えたり、反転させることなく洗浄動作ができ、かつ、泡立ち性に優れ洗浄効果の高い洗浄用具を提供することを課題とする。
さらには、携帯性の観点から、薄くコンパクトに包装でき、使用後はそのまま廃棄が可能な簡便な洗浄用具を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の発明は、(a)可撓性を有するシート状洗浄剤と、(b)湿潤状態で圧縮弾性を具備する吸水性シートと、が積層・接着された洗浄用具であって、該シート状洗浄剤は水溶性であり、シート状洗浄剤の片面が吸水性シートに溶解含浸されており、吸水性シートの片側又は両側に接着されている構造であることを特徴とするシート状皮膚洗浄用具である。
第二の発明は、前記シート状洗浄剤が、水溶性高分子、界面活性剤、保湿剤および水を含有することを特徴とするシート状皮膚洗浄用具である。
第三の発明は、前記シート状洗浄剤の水への溶解速度が、25℃で5秒以上90秒以下の範囲であることを特徴とするシート状皮膚洗浄用具である。
第四の発明は、前記シート状洗浄剤の引張伸度が2%〜8%であることを特徴とするシート状皮膚洗浄用具である。
第五の発明は、前記吸水性シートが、繊維シート、スポンジシートから選ばれた1種又は2種以上のシートであることを特徴とするシート状皮膚洗浄用具である。
第六の発明は、前記繊維シートが、絹を含有することを特徴とするシート状皮膚洗浄用具である。
第七の発明は、前記スポンジシートが、セルローススポンジシート、合成樹脂スポンジシートから選ばれた1種又は2種以上のスポンジシートであることを特徴とするシート状皮膚洗浄用具である。
第八の発明は、前記吸水性シートが、シート状洗浄剤に接する側に網目構造を有することを特徴とするシート状皮膚洗浄用具である。
第九の発明は、前記シート状洗浄剤の表面に文字情報、絵柄又は模様が付与されていることを特徴とするシート状皮膚洗浄用具である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来、接着剤を使用しないと困難であった石鹸と多孔質体とを複雑な工程を経ることなく、特別の接着剤を使用することなく水を媒体とするのみで確実に接着できて、かつ連続的に皮膚洗浄用シートの製造が可能となる。このため、工程ロスが大幅に低減され、かつランニングコストも抑制できる。また、シート状の洗浄剤が割れたり、ヒビ、クラックが入ったりすることなく安定して接着が可能であるので、優れた外観品位の洗浄用具を提供することが可能となる。
本発明のシート状皮膚洗浄用具は薄いシート状であり、屈曲性にも優れるので顔面など凹凸の激しい部位を洗浄するにも有効である。また、湿潤時には、水に接触した箇所から石鹸分の溶解が早く進むとともに、圧縮弾性を有する吸水性基材による起泡効果によって泡立ち性が高められ洗浄効果が高い。
顔面、手、首など身体の所定部位の洗浄に使用できるのみならず、メーク落としなどのクレンジング用としても使用が可能である。
また、本発明のシート状皮膚洗浄用具は軽量で嵩張らず、旅行先などへの携行性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の皮膚洗浄用具を図を用いて説明する。
図1は、本発明の皮膚洗浄用具の断面図、図2〜図4は、その変例、図5は、本発明の皮膚洗浄具の斜視図、図6はその変例を示す。図1〜図4は皮膚洗浄用具を構成する層が分解された状態として示す。
なお、図5及び図6は、本発明の理解容易なように一部捲り挙げられた構造となっているが、実際には図1〜4と同様に全面的な積層構造物である。
本発明の皮膚洗浄具は、可塑性の、水溶性高分子、界面活性剤、保湿剤及び水分を含有するシート状洗浄剤と、吸水性シートを備えた洗浄用具シートであることが基本であるが、図1に示すように、可塑性を有するシート状洗浄剤1と吸水性シートのスポンジシート2から積層されたものであってもよいし、図2に示すようにシート状洗浄剤1に吸水性シートのウエブ3が積層されたものでも、図3に示すようにシート状洗浄剤1と吸水性シートのスポンジシート2との間隙にメッシュ状不織布4を介在させた積層構造、あるいは図3の示す積層体の他面にさらにシート状洗浄剤1を両面に配置するように積層構造の洗浄用具も含まれる。
さらに、図5は、図1の洗浄用具の変例で、両面にシート状洗浄剤1が配置されたもの、図6は、本発明の変例でシート状洗浄剤1、吸水性シートのメッシュ状不織布4、スポンジシート2、メッシュ状不織布4及びシート状洗浄剤の5層構造物を示す。
なお、以下の実施例において上記図1〜4で示されるシート状洗浄用具の素材、構造等について、より具体的に説明する。
【0011】
また、本発明のシート状皮膚洗浄用具を構成する部材についても説明する。
本発明のシート状洗浄剤は、柔軟性、可撓性を有するシートであり、好ましくは、水溶性高分子と界面活性剤と保湿剤と水からなるシートである。
水溶性高分子は、水溶性であり、乾燥後にフィルム状の膜を形成するものであれば、特に限定されない。
例えば、セルロース、セルロースエーテル(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシピロピルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール;デンプン;プルラン;ヒアルロン酸ナトリウム;アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム等の多糖類;水溶性コラーゲン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等があげられる。特にヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、プルランが好適である。なお、上記水溶性高分子は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0012】
界面活性剤は、脂肪酸アルカリ塩、アシルアミノ酸アルカリ塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル塩、アシルスルホコハク酸塩、アシルタウリン塩、アシルメチルタウリン塩、モノアルキルリン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、ヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩等のアニオン活性剤、イミダゾリン系両性活性剤、ベタイン系両性活性剤等の両性活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、マルチトールヒドロキシ脂肪酸エステル、モノラウリン酸ポリグリセリル等のノニオン活性剤、トリメチルアルキルアンモニウムクロライド等のカチオン活性剤等が上げられる。特に脂肪酸アルカリ塩、イミダゾリニウム系両性活性剤、ベタイン系両性活性剤、ヒドロキシエーテルカルボン酸塩が好適である。なお、上記界面活性剤は単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
保湿剤は、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、1,3―ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール、砂糖、トレハロース、マルトース等の糖、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトールなどの糖アルコール、アミノ酸類などが挙げられる。特にグリセリン、ジグリセリンが好適である。なお、上記保湿剤は単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、ヤシ油、菜種油、ココナッツ油、パーム油などの植物油を泡立ち促進のために配合することもできる。
必要に応じて、コエンザイムQ10、リポ酸、フラボノイド類などのスキンケア成分を配合することも可能である。
上記のような成分を配合することにより、皮膚刺激を低減しつつ高い洗浄効果をもたらすことが可能となる。
【0014】
また、該シート状洗浄剤の厚みは、50μm〜200μm程度のものを好ましく使用できる。さらに好ましくは、50μm〜150μm程度である。この範囲であると、柔軟性に富み、かつ洗浄に必要な石鹸量を確保することが出来るからである。
該シート状洗浄剤は、水に溶解しやすくするために、保湿剤と水を含有させておくことが好ましい。シート状洗浄剤が含有する水分量は、1〜20重量%の範囲内であることが好ましい。水への溶解速度は、25℃において5秒以上90秒以下が好ましく、さらに好ましくは10秒以上45秒以下が適当である。該溶解速度の測定方法は、次の方法による。
大きさ6cm×6cm、厚み120μmの正方形サンプルを調製し、25℃の条件下、70ppmの人工硬水500ミリリットルに一定速度で攪拌し、完全に溶解するのに要した時間を測定し、この数値を溶解速度とする。
【0015】
溶解速度が、この範囲になるように配合調製すると、基材である吸水性シートの表面を湿らせておき、次いでこの面にシート状洗浄剤を圧着したときに溶解・軟化した石鹸成分が、吸水性シートの空隙内部に浸透しやすく、乾燥して固定化され接着構造が発現するようになる。また、シート状洗浄剤が変形したり、ふやけることもなく接着することが可能となる。
シート状洗浄剤の一部が溶解して吸水性シートの空隙内部へと浸透した石鹸成分は、乾燥しても空隙内に存在するために接着構造が保持される。このために、接着に寄与する成分として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルランのような水溶性高分子を含有しているとさらに接着効果が高まるので特に好ましい。
さらに、このような構造であると、使用時に水で濡らしても接着界面で剥離が発生することなく、速やかに石鹸成分が溶解するとともに吸水性シートの内部にも吸収され、洗浄時には、吸水性シートの圧縮弾性に起因する泡立効果によりフォーミングが起こり易く、洗浄効果が高くなる。
【0016】
本発明で使用するシート状洗浄剤として、可撓性を有し、屈曲性に富むシート材を使用する。好ましく使用できるシート状洗浄剤は、温度20℃、湿度60%RH条件下における引張り試験法(引張間隔(掴み間隔)30mm、引張速度6mm/分)による破断伸度が2%〜8%、破断応力が1〜4MPa(1〜4N/mm)程度のものを使用することが好ましい。引張り特性が、この範囲内にあると、ハンドリングも容易であり、吸水性シートとの積層及び接着加工がやりやすく、工程ロスが少なくて済む。
本発明で使用するシート状洗浄剤の表面には加飾性を高めるために、顔料などにより着色を施したり、顆粒成分、スクラブ剤を使用して斑点模様を付与することもできる。また、シルク印刷、スクリーン印刷などの手法により絵柄、文字など任意の模様や情報を付与することもできる。また、エンボスなどの方法で凹凸を付与することもできる。
【0017】
次に、本発明で使用する吸水性シートについて説明する。吸水性シートは、少なくともシート状洗浄剤を圧着する面側が吸水性と保水性を有していることが必要である。ここでいう吸水性シートの吸水性と保水性とは、吸水性シートに水分を噴霧などの方法で付与したときに、吸水性シート表面が、圧着されるシート状洗浄剤を部分的に溶解できる程度の水分を保持できる特性を意味する。過剰の水分が残存しては、シート状洗浄剤の全体を溶解もしくは膨潤させてしまうこととなるので、余分の水分は内部に吸収され散逸できるような構造であることが望ましい。このために、JISL 1907(1994) 5.1.1に準じて測定した吸水速度が3秒以内であることが好ましい。吸水速度が3秒を超えると、シート状洗浄剤と接着するときに、該シート状洗浄剤がふやけすぎたり、品位が損なわれやすい。さらに好ましくは、吸水速度が2秒以内が適当である。
また、吸水性シートは、親水性の素材を使用することも出来るが、疎水性素材であっても、表面部が吸水性を有するように親水化処理を施すことも出来る。
【0018】
また、吸水性シートは、湿潤状態で圧縮弾性を具備することが必要である。これは、湿潤状態で泡立ち性を高め洗浄効果を増進するためである。
該吸水性シートの圧縮弾性については、JISL1018(ニット生地試験方法)に準じた圧縮弾性率が、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上であると、起泡効果を高めるうえで好都合である。湿潤状態でもこのような圧縮弾性が維持される素材を選定するとさらに洗浄時の起泡効果を優れたものにすることができる。
【0019】
該吸水性シートは、上記した特性を有していれば特段限定されるものではなく、湿潤状態でも圧縮弾性を有する繊維シート類、スポンジシート類を使用する。
該繊維シート類としては、例えばケン縮構造などによるバルキー性を有する織物、編み物、不織布、ウェブ類が圧縮弾性の点で好適である。
繊維シート類の素材は特に限定されるものではないが、コットン、麻、レーヨンなどのセルロース類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリウレタン類、絹などを好ましく挙げることができる。肌へのソフト感、なじみ感の点で絹を含有する繊維シートを使用するのが好ましい。絹を使用すると肌触りがソフトであるばかりでなく、セリシンのような可溶性スキンケア成分が含有されるので、洗浄と共にスキンケアにも好適である。
【0020】
スポンジシート類としては、NBRなどの合成ゴム類、天然ゴム類、ポリウレタン類などからなる発泡シート、あるいはセルロースなどの天然素材からなる発泡シート類を好ましく使用できる。セルローススポンジとしては、圧縮乾燥状態にある発泡体をスライスしたものも好ましく使用できる。
発泡構造としては、保水性と水分の浸透性を発現させる目的で、少なくともシート表面付近にオープンセル構造を有していることが好ましい。このとき、オープンセルが表面より内部側の方が広くなるようにしておくと、いわゆるアンカー効果により接着性が向上する。
【0021】
これらの吸水性シート類は、単独で使用することも出来るし、2種以上を組み合わせて積層することもできる。2種以上を組み合わせる場合は、少なくとも1層が圧縮弾性を有しているシートを使用することが適切である。積層の場合は、接着剤を使用しても良いし、熱接着としてもよい。ホットメルトを併用することもできる。
さらに好ましくは、シート状洗浄剤と吸水性シートとの接着性を高めるために、吸水性シートのシート状洗浄剤に接する側に点状又は線状の突起、溝などによる凹凸構造を形成しておくと接着面積を高めることができ、接着性がさらに向上する。
また、網目構造を有する繊維シート、例えば、繊維束がメッシュ状となるように加工された繊維シートなどをシート状洗浄剤に接するように設けると接着強度を高める上で好ましい。
吸水性シートは、1層のもの、又は2層以上のものを使用できるが、ハンドリング性、洗浄時の柔軟性などの点で厚みが1mm〜10mm程度のものを好ましく使用できる。圧縮セルローススポンジのように湿潤時に膨潤する性質の吸水性シートを使用する場合は、乾燥時の厚みを0.5mm〜2mm程度とすることができる。
【0022】
シート状洗浄剤と吸水性シートを接着するための好ましい条件について説明する。
吸水性シートに対しては、接着直前に接着表面に水分を付与しておく。例えば、噴霧法などが好ましい方法として挙げられる。いずれにせよ接着表面が少し湿る程度であれば、水分量は特段限定されるものではない。シート状洗浄剤をその表面に適用したときにふやけすぎず、少し成分が溶解する程度であればよい。
次に水分を保持した吸水性シート面にシート状洗浄剤を重ね、ロールプレスなどの圧着手段を用いて圧着する。圧着に際しては、常温でプレスしてもよいが、シート状洗浄剤の変形性を高めるために30〜70℃程度に加熱することも出来る。これらのプロセスはインラインの一貫工程で実行すると生産性が良いので好ましい。
【0023】
かくして、シート状洗浄剤と吸水性シートが接着されたシート状皮膚洗浄用具を得ることが出来る。該シート状洗浄剤と吸水性シートとの間の接着強度は、好ましくは、0.4N/15mm〜5N/15mm程度の範囲内である。この範囲内であると、使用に際してシート状洗浄剤と吸水性シートとの間で層間剥離が発生する可能性は低く、実用性に優れたものとなる。なお、該接着強度は、JISL 1086(接着しん地試験方法)に規定される剥離強さの測定方法に準拠して測定される。
また、シート状洗浄剤は、吸水性シートに対し片側に設けても良いが、身体用など大面積の洗浄用具として使用する場合には、吸水性シートの両側にシート状洗浄剤を設けることが好ましい。シート状洗浄剤のサイズは特段限定されるものではなく、目的に応じて任意のサイズに加工することができる。
【実施例】
【0024】
次に本発明の好ましい実施例について、積層構成を示す図面をもとに説明するが、これらに限定されるものではない。
(シート状洗浄剤の製造)
水溶性高分子としてヒドロキシプロピルメチルセルロース、界面活性剤として脂肪酸ナトリウム塩、保湿剤としてグリセリンを配合したシート状洗浄剤を製造した。このシートの厚みは100μm、引張り試験における破断伸度は3.8%、破断応力は2.5MPaであり、屈曲性に富んでいた。(引張間隔(掴み間隔)30mm、引張速度6mm/分)
また、水への溶解速度は、25℃で11秒であった。
【0025】
(実施例1)
吸水性シートとしては、図1に示すように圧縮状態の乾燥セルローススポンジシートの片側に、製造例のシート状洗浄剤を接着した構成のものである。
このセルローススポンジシートは保水性を有しており、かつ吸水性が高いために表面にスプレーした剰余の水分は内部へと速やかに浸透した。このため、接着の過程で一部溶解した石鹸分は、セルローススポンジシートの多孔構造の空隙内に吸収されて存在しており、接着強度も高かった。また、接着の工程でシート状洗浄剤がふやけたり、変形することなく、湿潤状態で圧縮弾性を保持しており、かつ高級品の外見を呈していた。
また、入浴又はシャワーで使用したときに、本発明の洗浄用具は薄いシート状であるにもかかわらず通常の石鹸と繊維シートとを併用する場合と同様に泡立ち性が良好であった。
【0026】
(実施例2)
図2に示すようにポリエステル繊維とコットンとが混合されたケン縮構造を有するウエブを吸水性シートとして使用し、この片側に、製造例の易水溶性のシート状洗浄剤を接着した構成のものである。
この混合ウエブは保水性を有しており、かつ吸水性が高いために表面にスプレーした剰余の水分は内部へと速やかに浸透した。このため、接着の過程で一部溶解した石鹸分は、ウエブの表面付近の繊維と接着状態にあり、一部は繊維間隙内に吸収され固化した構造となっており、接着強度も高く、基材のウエブは湿潤状態でも圧縮弾性を保持していた。接着の工程で、シート状洗浄剤はふやけたり、変形することなく、実施例1のものと同様に高級品の外見を呈した。
使用時において、薄いシート状であるにもかかわらず通常の石鹸と繊維シートとを併用する場合と同様に泡立ち性が良好であった。
【0027】
(実施例3)
基材の吸水性シートとしては、図3に示すようにポリウレタン製スポンジシートとメッシュ状コットン不織布をホットメルト材で接着したシート(図ではホットメルト材は省略されている)を使用し、該メッシュ状コットン不織布上に易水溶性の製造例のシート状洗浄剤を積層・接着した構成例のものである。
メッシュ状コットン不織布は、親水性素材であるため保水性が高く、一方、メッシュ状の構造であるので表面にスプレーした剰余の水分は内部へと速やかに浸透し、圧着時にシート状洗浄剤が水でふやけたり、変形することもなく接着することができ、基材の積層シートは湿潤状態でも圧縮弾性を保持していた。
溶解した石鹸分は、メッシュ部分の繊維間隙に毛細管現象で取り込まれそのまま乾燥後も存在しているため接着強度も高かった。
使用時においては、薄いシート状であるにもかかわらず通常の石鹸と繊維シートとを併用する場合と同様に泡立ち性が良好であった。
【0028】
(実施例4)
吸水性シートとしては、図4に示すようにポリウレタン製スポンジシートとメッシュ状コットン不織布をホットメルト材で接着したシート(図ではホットメルト材は省略されている)を使用し、メッシュ状コットン不織布上に易水溶性の製造例のシート状洗浄剤を積層・接着し、一方、反対側にも易水溶性のシート状洗浄剤をスポンジシートに直接接着した積層構成例のものである。
メッシュ状コットン不織布は、保水性が高く、一方、メッシュ状の構造であるので表面にスプレーした剰余の水分はポリウレタン製スポンジシート側に速やかに浸透し、圧着時にシート状洗浄剤が水でふやけたり、変形することもなく接着することができた。溶解した石鹸分は、メッシュ部分の繊維間隙に毛細管現象で取り込まれそのまま乾燥後も存在しており、接着強度も高かった。反対側のシート状洗浄剤も同様に一部溶解した石鹸成分がスポンジ内部に浸透した状態で固化しており、接着性に優れていた。
使用時において、基材の積層シートは湿潤状態でも圧縮弾性を保持しており泡立ち性が良好であった。
シート状洗浄剤が基材シートの両側に設けられているので、大面積のボデイ洗浄用として好ましく使用できた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の皮膚洗浄用具の積層構成の一例を示す分解図。
【図2】本発明の皮膚洗浄用具の積層構成の別な一例を示す分解図。
【図3】本発明の皮膚洗浄用具の積層構成の別な一例を示す分解図。
【図4】本発明の皮膚洗浄用具の積層構成の別な一例を示す分解図。
【図5】本発明の皮膚洗浄具の斜視図
【図6】図5の変例
【符号の説明】
【0030】
1 シート状洗浄剤
2 スポンジシート
3 ウエブ
4 メッシュ状不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)可撓性を有するシート状洗浄剤と(b)湿潤状態で圧縮弾性を具備する吸水性シートとが積層・接着された洗浄用具であって、該シート状洗浄剤は水溶性であり、シート状洗浄剤の片面が吸水性シートに溶解含浸されており、吸水性シートの片側又は両側に接着されている構造であることを特徴とするシート状皮膚洗浄用具。
【請求項2】
前記シート状洗浄剤が、水溶性高分子、界面活性剤、保湿剤および水を含有することを特徴とする請求項1記載のシート状皮膚洗浄用具。
【請求項3】
前記シート状洗浄剤の水への溶解速度が、25℃で5秒以上90秒以下の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状皮膚洗浄用具。
【請求項4】
前記シート状洗浄剤の引張伸度が2%〜8%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート状皮膚洗浄用具。
【請求項5】
前記吸水性シートが、繊維シート、スポンジシートから選ばれた1種又は2種以上のシートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート状皮膚洗浄用具。
【請求項6】
前記繊維シートが、絹を含有することを特徴とする請求項5に記載のシート状皮膚洗浄用具。
【請求項7】
前記スポンジシートが、セルローススポンジシート、合成樹脂スポンジシートから選ばれた1種又は2種以上のスポンジシートであることを特徴とする請求項5又は6に記載のシート状皮膚洗浄用具。
【請求項8】
前記吸水性シートが、シート状洗浄剤に接する側に網目構造を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシート状皮膚洗浄用具。
【請求項9】
前記シート状洗浄剤の表面に文字情報、絵柄又は模様が付与されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のシート状皮膚洗浄用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−46129(P2010−46129A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210674(P2008−210674)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(593170702)株式会社ピーアンドピーエフ (27)
【出願人】(591254958)株式会社タイキ (35)
【Fターム(参考)】