説明

シート状複合体、その製造方法、このシート状複合体を用いた電極及び電気化学素子

【課題】出力特性及び高エネルギー密度を達成した電極や電気化学素子を得ることのできる金属化合物と繊維状炭素のシート状複合体、及びその製造方法に関する。
【解決手段】旋回する反応容器内で出発原料の金属化合物と繊維状炭素とを含む溶液にずり応力と遠心力を加えて反応させて、金属化合物と繊維状炭素とのコンポジット材料を生成する。コンポジット材料とバインダーである繊維状炭素とを攪拌することにより混合溶媒を生成する。混合溶媒を吸引ろ過し、真空乾燥する。この混合溶液を抄紙成型してシート状複合体を作製する。繊維状炭素の比表面積が600〜2600m2/gのカーボンナノチューブであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極活物質と炭素材料とのコンポジット材料を繊維状炭素バインダーにて抄紙成型したシート状複合体と、その製造方法、このシート状複合体を用いた電極及び電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、リチウム電池の電極としてリチウムを貯蔵、放出するカーボン材料等が用いられているが、酸化還元電位が電解液の還元電位より低いため、電解液が分解する可能性がある。そこで、酸化還元電位が電解液の還元電位より高いチタン酸リチウムが検討されているが、チタン酸リチウムは出力特性が低いという問題点がある。これに対して、チタン酸リチウムをナノ粒子化して、出力特性を向上する試みがある。しかしながら、チタン酸リチウムナノ粒子とカーボンとの複合体において、カーボンの含有率を下げることは困難であり、容量特性を向上させることは難しかった。
【0003】
そこで、旋回する反応器内で反応物にずり応力と遠心力を加えて、化学反応を促進させる方法(一般に、メカノケミカル反応と呼ばれる)によって、カーボンに分散担持されたチタン酸リチウムを得るものが知られている。(例えば特許文献1,2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−160151号公報
【特許文献2】特開2008−270795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に記載のチタン酸リチウムナノ粒子を担持したカーボンを使用した電極は、優れた出力特性を発揮するものの、最近では、この種の電極において、さらに出力特性を向上させ、電気伝導度を向上させる要求がある。
【0006】
従来の金属酸化物活物質と繊維状炭素とのコンポジット電極では、電極を作成する際にバインダーとして、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDF)などの有機バインダーを利用していた。しかしながら、有機バインダーは、絶縁体であるがため、出力特性及びエネルギー密度の低下要因となるという問題点があり、有機バインダーを利用しない電極への期待が高まっている。
【0007】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであって、その目的は、有機バインダーを使用せず、電気化学素子を得ることのできる電極活物質と炭素材料とのコンポジット材料を繊維状炭素バインダーにてシート状に抄紙成型することにより、出力特性及び高エネルギー密度を達成した電極や電気化学素子を得ることのできるシート状に抄紙成型したシート状複合体、及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、前記シート状複合体を用いた電極及び電気化学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明のシート状複合体は、炭素材料にリチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物が担持されたコンポジット材料を繊維状炭素バインダーを用いて抄紙成型されたシート状複合体であり、前記コンポジット材料の繊維状炭素バインダーが、比表面積が600〜2600m2/gのカーボンナノチューブであることを特徴とする。
【0009】
前記コンポジット材料に対して繊維状炭素バインダーを5wt%〜200wt%添加したシート状複合体も本発明の一態様である。
【0010】
前記シート状複合体の厚さが20μm〜60μmであるシート状複合体も本発明の一態様である。
【0011】
前記シート状複合体を集電体の表面に形成した電極も本発明の一態様である。
【0012】
前記電極を用いた電気化学素子も本発明の一態様である。
【0013】
また、本発明のシート状複合体の製造方法は、炭素材料にリチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物を担持させたコンポジット材料を得る複合化処理と、前記コンポジット材料と繊維状炭素バインダーとを攪拌することにより混合溶液を生成する攪拌処理と、前記攪拌された混合溶液を抄紙成型してシート状複合体を得るシート化処理を有し、前記繊維状炭素バインダーが、比表面積が600〜2600m2/gのカーボンナノチューブであることを特徴とする。
【0014】
また、前記複合化処理は、旋回する反応器内において、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物の出発原料及び炭素材料にずり応力と遠心力を加えて得られた混合物を加熱し、炭素材料にリチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物を担持させたコンポジット材料を得ることも本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、炭素材料にリチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物が担持されたコンポジット材料に対して、有機物でない繊維状炭素をバインダーとして添加して抄紙成型したシート状複合体は、高レート特性、高出力特性、高容量特性を示す。また、このシート状複合体を用いた電極及び電気化学素子も同様の効果を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における第1の特性比較での実施例のシートの状態を示した写真図である。
【図2】本発明の実施形態における第1の特性比較での比較例のシートの状態を示した写真図である。
【図3】本発明の実施形態における実施例のシートの状態を示した概略図である。
【図4】本発明の実施形態における第4の特性比較(LFP/CNF)のレート特性評価の結果を示したグラフである。
【図5】本発明の実施形態における第4の特性比較(LFP/KB)のレート特性評価の結果を示したグラフである。
【図6】本発明の実施形態における第5の特性比較のCレート範囲での充放電測定の結果を示したグラフである。
【図7】本発明の製造方法に使用する反応器の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施する形態について、説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本実施形態に係るリチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物(以下、金属化合物)と繊維状炭素バインダー(以下、繊維状炭素)とのシート状複合体は、
(1)コンポジット材料の複合化処理において、炭素材料に金属化合物の出発原料を加えて、メカノケミカル反応の一つである超遠心力処理(Ultra-Centrifugal force processing method:以下、UC処理という)し、金属化合物と炭素材料とのコンポジット材料を作製する。
(2)コンポジット材料のシート化処理において、このコンポジット材料に対してバインダーとして繊維状炭素と溶媒を加え、攪拌することにより混合溶液を作製し、この混合溶液を抄紙成型してシート状複合体を作製する。
以下、本実施形態で使用する金属化合物、炭素材料及び繊維状炭素について説明すると共に、(1)(2)の製造工程について詳述する。
【0019】
本実施形態で使用する金属化合物、炭素材料及び繊維状炭素は、次のような特徴を有するものである。
(金属化合物)
本実施形態で使用する金属化合物は、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物を使用する。金属化合物の一例としては、Liαβγである (a)(M=Co,Ni, Mn, Ti,
Si, Sn, Al, Zn,Mg、Y=O)、LiCoO2、Li4Ti5O12、SnO2、SiOなどの酸化物系の金属化合物、(b) (M=Fe,Mn,V、 Y=PO4,SiO4,BO3,P2O7) などの酸素酸塩系の金属化合物、(c) (M=Ni, Co,Cu、Y=N)、Li2.6Co0.4N などの窒化物の金属化合物を使用することができる。それに加えて、MαM'βであるSi、Sn、Geなどの金属、(M=Sn,Sb,Si、M'=Fe,Co,
Mn, V, Ti)Sn3V2、Sb3Coなどの合金を使用することができる。
【0020】
(炭素材料)
本実施形態で使用する炭素材料としては、繊維構造であるカーボンナノチューブ(以下、CNTとする)やカーボンナノファイバー(以下、CNFとする)、中空シェル状の構造を有するカーボンブラックであるケッチェンブラック(以下、KBとする)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、無定形炭素、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、活性炭、メソポーラス炭素などがある。この炭素材料は、金属化合物の出発原料と混合しUC処理を行うことでコンポジット材料となる。
【0021】
(繊維状炭素)
本実施形態で使用する繊維状炭素バインダーとしては、比表面積が600〜2600m2/gである単層または多層のカーボンナノチューブ(以下、SGCNTとする)を使用する。このSGCNTは比表面積が600〜2600m2/gと大きいため、ファンデルワールス力によるバンドル(束)形成、ミクロ凝集がほとんどないため、高分散化が期待できる。本実施形態において、SGCNTは、直径が2.3nm〜3.7nm(3.0±0.7nm)のものを利用する。この繊維状炭素は、コンポジット材料に混合することによりコンポジット材料を抄紙成型してシート化する際のバインダーとして作用する。
【0022】
以下、本実施形態の複合体の製造工程(1)(2)のについて詳述する。
(1)コンポジット材料の複合化処理について
本実施処理で使用するコンポジット材料は、炭素材料に金属化合物の出発原料を加えて、UC処理を行うことにより作製する。また、炭素材料が繊維構造を有する場合(例えば、CNT、CNF)、繊維構造の分散及び均質化を目的として超高圧分散処理を施しても良い。
【0023】
すなわち、コンポジット材料の複合化処理の一例(炭素材料が繊維構造を有する場合)としては、
(a)超高圧分散処理として、繊維構造を有する炭素材料を分散化し、
(b)UC処理として、超高圧分散処理によって分散化された炭素材料に金属化合物の出発原料を加えて、UC処理し、
(c)前記(a)(b)の処理を得たその生成物を真空乾燥し、その後、焼成することにより、金属化合物が炭素材料に担持されたコンポジット材料を作製する。
【0024】
(a)超高圧分散処理について
繊維構造を有する炭素材料を超高圧分散処理によって分散化する処理は、 (a)混合処理、(b)超高圧分散処理からなる。
【0025】
(a)混合処理
混合処理では、繊維構造を有する炭素材料と溶媒とを混合させ混合溶媒を生成する。この炭素材料と溶媒との混合方法は、既存の方法を用いることができる。一例としては、ホモジナイザーによる混合が挙げられる。炭素材料と溶媒は、溶媒1Lに対して、炭素材料0.5〜1gの比率が好ましい。
【0026】
繊維構造を有する炭素材料と混合する溶媒としては、アルコール類、水、これらの混合溶媒を用いることができる。例えば、イソプロピルアルコールを溶媒として使用することができる。溶媒としてIPAを利用した場合には、炭素材料の凝集を抑制するという有利な効果を奏することができる。
【0027】
(b)超高圧分散処理
超高圧分散処理では、一般的にジェットミキシング(噴流衝合)と呼ばれる既知の方法を用いる。すなわち、筒状のチャンバの内壁の互いに対向する位置に一対のノズルを設け、高圧ポンプにより加圧された繊維構造を有する炭素材料の混合溶液を、各ノズルから噴射してチャンバ内で正面衝突させる。これにより、炭素材料のバンドルが粉砕され、分散及び均質化することができる。一例としては、炭素材料に対して200MPa,3Pass,0.5g/Lの圧力及び濃度で処理を行う。
【0028】
(b)UC処理について
例えば図7に示すような反応器を用いて行うことができる。図7に示すように、反応器は開口部にせき板1−2を有する外筒1と貫通孔2−1を有し旋回する内筒2からなる。この反応器の内筒内部に反応物を投入し、内筒を旋回することによってその遠心力で内筒内部の反応物が内筒の貫通孔を通って外筒の内壁1−3に移動する。この時反応物は内筒の遠心力によって外筒の内壁に衝突し、薄膜状となって内壁の上部へずり上がる。この状態では反応物には内壁との間のずり応力と内筒からの遠心力の双方が同時に加わり、薄膜状の反応物に大きな機械的エネルギーが加わることになる。この機械的なエネルギーが反応に必要な化学エネルギー、いわゆる活性化エネルギーに転化するものと思われるが、短時間で反応が進行する。
【0029】
この反応において、薄膜状であると反応物に加えられる機械的エネルギーは大きなものとなるため、薄膜の厚みは5mm以下、好ましくは2.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下である。なお、薄膜の厚みはせき板の幅、反応液の量によって設定することができる。
【0030】
また、本実施形態の反応方法は反応物に加えられるずり応力と遠心力の機械的エネルギーによって実現できるものと考えられるが、このずり応力と遠心力は内筒内の反応物に加えられる遠心力によって生じる。したがって、本実施形態に必要な内筒内の反応物に加えられる遠心力は1500N(kgms−2)以上、好ましくは70000N(kgms−2)以上、さらに好ましくは270000N(kgms−2)以上である。
【0031】
以上の本実施形態の反応方法は液相反応であれば、加水分解反応、酸化反応、重合反応、縮合反応等様々な反応に適用することができる。
【0032】
なかでも、従来ゾル−ゲル法で行われていた金属塩の加水分解反応、縮合反応よる金属化合物の生成に適用することによって、均一な金属化合物のナノ粒子を形成することができる。
【0033】
以上の金属化合物のナノ粒子は電気化学素子用電極に好適な活物質として作用する。すなわち、ナノ粒子化することによって比表面積が格段に拡大して、出力特性、容量特性が向上する。
【0034】
さらに、このような金属塩の加水分解反応、縮合反応よる金属化合物の生成反応において、反応過程で炭素材料を加えることによって、金属化合物のナノ粒子を高分散担持させた炭素材料を得ることができる。すなわち、図9の反応器の内筒の内部に金属化合物の出発原料と炭素材料を投入して、内筒を旋回して金属化合物の出発原料と炭素材料を混合、分散する。さらに内筒を旋回させながら水酸化ナトリウムなどの触媒を投入して加水分解、縮合反応を進行させ、金属化合物を生成するとともに、この金属化合物と炭素材料を分散状態で、混合する。反応終了とともに、金属化合物のナノ粒子の前駆体を高分散担持させた炭素材料を形成することができる。
【0035】
以下に、金属化合物がチタン酸リチウム(以下、LTO)の場合についてのUC処理について詳述する。UC処理では、超高圧分散処理を経た繊維構造を有する炭素材料に、金属化合物である金属酸化物活物質の金属アルコキシド、リチウム化合物及び反応抑制剤を加えて、UC処理をする。以下、金属アルコキシド、リチウム化合物及び反応抑制剤について説明すると共に、UC処理について詳述する。
【0036】
(金属アルコキシド)
本実施形態で使用する金属アルコキシドとしては、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属のアルコキシドを使用する。この金属アルコキシドとしては、チタンアルコキシドが好ましく、その他、金属アルコキシドの加水分解反応の反応速度定数が10-5mol-1sec-1以上のものが好ましい。
【0037】
(リチウム化合物)
リチウム化合物として酢酸リチウム(CH3COOLi、和光純薬工業株式会社製、特級)を用いることができる。酢酸リチウム以外のリチウム源としては、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウムなどを利用することができる。リチウム化合物の溶液は、蒸留水、酢酸、イソプロピルアルコールの混合溶液に、酢酸リチウムを溶解させることにより調製できる。
【0038】
(反応抑制剤)
金属アルコキシドとしてチタンアルコキシドを用いた場合、反応が早すぎて、チタン酸リチウムを作製する際に酸化チタンが形成されてしまい、チタン酸リチウムを作製することができない場合があるといった問題点があった。
【0039】
そこで、反応抑制剤として該チタンアルコキシドと錯体を形成する所定の化合物を添加することにより、化学反応が促進しすぎるのを抑制することができる。チタンアルコキシドと錯体を形成することができる物質としては、酢酸の他、クエン酸、蓚酸、ギ酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、プロピオン酸、レプリン酸等のカルボン酸、EDTA等のアミノポリカルボン酸、トリエタノールアミン等のアミノアルコールに代表される錯化剤が挙げられる。
【0040】
本実施形態においては、二段階のUC処理によって繊維構造を有する炭素材料に金属酸化物活物質ナノ粒子前駆体を高分散担持させることが望ましい。すなわち、一回目のUC処理として、反応器の内筒の内部に炭素材料、金属アルコキシド、イソプロピルアルコールを投入し、内筒を旋回して炭素材料と金属アルコキシドが均一に分散された混合溶液を得る。
【0041】
さらに二回目のUC処理として、内筒を旋回させながら、リチウム化合物、反応抑制剤、水を含む混合溶液を投入することにより、金属アルコキシドとリチウム化合物との化学反応が促進され、反応終了と共に、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物の前駆体を高分散担持した炭素材料が得られる。
【0042】
このように、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物との化学反応を開始する前に、金属アルコキシドと炭素材料を分散させるため、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物の前駆体は均一に炭素材料に分散担持されることとなり、金属化合物ナノ粒子の凝集が予防され、出力特性が向上する。
【0043】
なお、一段階のUC処理によっても、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物の前駆体を分散担持させた炭素材料は生成可能である。この場合は炭素材料、金属アルコキシド、反応抑制剤、及び水を反応器の内筒の内部に投入して、内筒を旋回して、これらを混合、分散すると共に加水分解、縮合反応を進行させ、化学反応を促進させる。反応終了と共に、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物の前駆体を分散担持させた炭素材料を得ることができる。
【0044】
(乾燥)
UC処理によって得られた金属化合物の前駆体を高分散担持した炭素材料の混合溶液を85℃〜100℃の範囲で乾燥する。これによって、金属化合物の凝集を防止し、本実施形態の電極材料を使用した電極や電気化学素子の容量、出力特性を向上させる。
【0045】
(焼成)
乾燥した金属化合物の前駆体を高分散担持した炭素材料を、例えば300℃で1時間、900℃で4分間という二段階焼成によって、金属化合物ナノ粒子が炭素材料に高分散担持された複合体粉末を得る。さらに、900℃の高温で短時間焼成することによって均一な組成の金属化合物が得られる。これにより、金属化合物の凝集を防ぎ、粒径の小さな結晶性のナノ粒子である金属化合物と炭素材料とのコンポジット材料を作製することができる。
【0046】
(2)コンポジット材料のシート化処理について
シート化処理では、コンポジット材料の複合化処理を経た金属化合物と炭素材料とのコンポジット材料と、バインダーである繊維状炭素とを溶媒に加えて、攪拌することによりスラリー状の混合溶液を生成する。これにより、コンポジット材料及び繊維状炭素とを溶媒中に均一に分散させると共に、繊維状炭素の微砕を行う。この混合溶液を抄紙成型し、減圧乾燥してシート化する。
【0047】
すなわち、シート化処理の一例としては、
(a)前処理として、繊維状炭素バインダーを超高圧分散処理によって分散化してもよい。
(b)攪拌処理として、超高圧分散処理によって分散化された繊維状炭素にコンポジット材料を加えた混合溶液を攪拌し、
(c)シート化処理として、該攪拌された混合溶液を抄紙成型し、減圧乾燥してシート化することによりシート状複合体を作製する。
【0048】
(a)前処理について
繊維状炭素バインダーを超高圧分散処理によって分散化する前処理は、前述したコンポジット材料の複合化処理における(a)前処理と同様である。この前処理により、繊維状炭素バインダーとIPAとを混合させて混合溶液を生成し、この混合溶液に超高圧分散処理を施して繊維状炭素バインダーが分散化した混合溶液を得る。
【0049】
(b)攪拌処理について
前記シート化処理の(a)前処理を経た繊維状炭素バインダーが分散化した混合溶液に、(1)コンポジット材料の複合化処理を経たコンポジット材料を加え、攪拌することによりスラリー状の混合溶液を生成する。
【0050】
混合溶液の攪拌には、ホモジナイザーを利用することができる。ホモジナイザーとは、ジェネレータの一種であり、ドライブユニットと固定外刃と回転内刃からなり、高速分散〜微砕〜均一化の一連のホモジネーションを行うものである。これにより、コンポジット材料及び繊維状炭素バインダーとを溶媒中に均一に分散させると共に、繊維状炭素バインダーの微砕を行う。
(c)シート化処理について
シート化処理では、前記攪拌処理を経た混合溶液を抄紙成型してシート化する。抄紙成型では、混合溶液をPTFE濾紙(直径:35mm、平均細孔0.2μm)を用いて減圧ろ過することによりシートとする。このシートを60℃で、3時間減圧乾燥を行った。以上の処理により、コンポジット材料と炭素材料とのシート状複合体を形成することができる。このシート状複合体は必要に応じてプレスなどの圧延処理が施される。
【0051】
(電極)
コンポジット材料と繊維状炭素とのシート状複合体を、アルミニウム箔等の金属箔の集電体と同じサイズに切り取り、該集電体の上に載せ、その上から別途用意した金属箔で挟み、金属箔の上下方向から10t/cm2の圧力で1分間プレスすることで、集電体とシート状複合体を一体化させる。この様に集電体と一体化したシート状複合体は、電気化学素子の電極、すなわち電気エネルギー貯蔵用電極とすることができ、その電極は高出力特性、高容量特性を示す。
【0052】
集電体としては、アルミニウム、銅、白金等の金属材料からなる箔が用いられ、表面には、エッチング処理により凹凸加工が施されたエッチング箔や平坦状のプレーン箔が用いられる。なお、集電体とシート状複合体とを一体化させるためのプレスする圧力は0.01〜100t/cm2が好ましく、この押圧によって、エッチング処理したアルミニウム箔の拡面化した凹凸部に圧力がかかり、この凸部が抄紙成型したシート状複合体に食い込む、又は凹部にシート状複合体の一部が挟まることにより、優れた接合性を付与することができる。
【0053】
(電気化学素子)
このシート状複合体及びシート状複合体を用いた電極を用いることができる電気化学素子は、リチウムやマグネシウムなどの金属イオンを含有する電解液を用いる電気化学キャパシタや電池である。すなわち、本実施形態の電極は、金属イオンの吸蔵、脱着を行うことができ、負極や正極として作動する。例えば、本実施例の電極を、対極となる活性炭、金属イオンが吸蔵、脱着するカーボンや金属酸化物等の電極と、セパレータを挟んで積層し、金属イオンを含有する電解液を用いることによって、電気化学キャパシタや電池を構成することができる。
【実施例】
【0054】
[第1の特性比較(バインダーとしてのSGCNTの有無による特性比較)]
第1の特性比較では、コンポジット材料に対して添加する繊維状炭素バインダーであるSGCNTの有無による特性比較を行った。第1の特性比較で使用する実施例及び比較例は、以下の通りである。本特性比較では、金属化合物としてLTOと、炭素材料としてCNFを使用し、このコンポジット材料にバインダーとして添加する繊維状炭素としてSGCNTを使用する。
【0055】
(実施例1)
実施例1は、CNFをジェットミキシングによりIPA中に分散化させた混合溶液を生成し、UC処理を行う反応器の内筒の内部に、該混合溶液、チタンアルコキシド、IPAを投入し、一回目のUC処理を行う。さらにリチウム化合物、反応抑制剤、水を投入して二回目のUC処理を行い、LTOの前駆体を高分散担持したCNFを得た。このLTO前駆体を高分散担持したCNFを90℃で乾燥し、さらに窒素雰囲気中で900℃で焼成することでチタン酸リチウムのナノ粒子がCNFに高分散担持されたコンポジット材料を得た。
次に、SGCNTバインダーをジェットミキシングによりIPA中に分散化させた混合溶液を生成し、この混合溶液に前記コンポジット材料を加え攪拌することによりスラリー状の混合溶液を作成した。この混合溶媒をPTFE濾紙(直径:35mm、平均細孔0.2μm)を用いて減圧ろ過し、抄紙成型してシートを得た後、このシートを60℃で、3時間減圧乾燥を行いシート状複合体を形成した。
【0056】
(比較例1)
比較例1は、実施例1がCNTバインダーを用いて抄紙成型してシート状複合体を形成したのに対し、抄紙成型の際にバインダーを用いないものとし、その他については実施例1と同様とした。
【0057】
このようにして作製した実施例1のシート状複合体の状態を現した写真を図1、比較例1のシート状複合体の状態を表した写真を図2に示す。図1は、実施例1のシートの状態を示した写真である。図1からは、バインダーとしてSGCNTを加えた実施例1では、粒子状の金属化合物とCNFとのコンポジット材料が、SGCNTがバインダーとして作用することにより自立シート化していることが判る。また、図1(b)からは、自立シートに粒子状のコンポジット材料が均一に配置されることにより、シート状複合体の表面にコンポジット材料の粒子が露出していないことが判る。
【0058】
一方、図2は、比較例1のシートの状態を示した図である。図2からは、バインダーを使用せず混合溶媒の溶媒としてIPAを使用した比較例1では、粒子状の金属化合物と繊維状炭素とのコンポジット材料が堆積しているだけである。金属化合物と繊維状炭素とのコンポジット材料自体には、粘着、付着、接合など作用はないため一体とはならず、シートを形成していないことが判る。
【0059】
以上より、粒子状で単体では一体とならずシートを形成しない金属化合物と繊維状炭素とのコンポジット材料に対して、SGCNTをバインダーとして加えることにより、自立したシートを形成することが判る。
【0060】
つまり、図3の実施例のシートの状態を示した概略図に示すように、バインダーとしてSGCNTを利用したシートでは、繊維状のSGCNTが絡まりその間にナノレベルの粒子状であるLTOを担持した炭素材料(コンポジット材料)が取り込まれる。これにより、自立可能な強度のあるシートを作製することができる。また、このシート状複合体を用いた電極及び電気化学素子でも同様の効果を実現することができる。つまり、金属化合物と炭素材料とのコンポジット材料に対してバインダーとして繊維状炭素を加えることにより、金属化合物と炭素材料とのコンポジット材料が均一に配置されるシート状複合体及びシート状複合体を用いた電極及び電気化学素子を形成することができる。
【0061】
[第2の特性比較(バインダーの種類による特性比較)]
第2の特性比較では、コンポジット材料に対して添加するバインダーの種類による特性比較を行った。第2の特性比較で使用する実施例2及び比較例2は、以下の通りである。本特性比較では、金属化合物としてLTOと、炭素材料としてCNFを使用し、コンポジット材料にバインダーとして添加する繊維状炭素としてSGCNTを使用する。
【0062】
(実施例2)
実施例2は、実施例1にて形成したシート状複合体を圧延処理し、このシート状複合体をエッチングしたアルミニウム箔にプレスして一体化して電極を作製し、対極となるリチウム箔とをセパレータを介して対向させ、プロピレンカーボネート(PC)溶媒、1Lに、電解質としてLiBF4を1モル添加した(1M LiBF4/PC)電解液を用いて、電気化学セルを作製した。
【0063】
(比較例2)
比較例2は、実施例1に記載のコンポジット材料に、バインダーとして有機バインダーであるカルボキシメチルセルロース(CMC)を混合した混合水溶液を作製し、この混合水溶液をエッチングしたアルミニウム箔に塗布し、溶媒(水)を除去してアルミニウム箔表面にコーティング層を形成したコーティング電極を作製した。このコーティング電極に対極となるリチウム箔とをセパレータを介して対向させ、プロピレンカーボネート(PC)溶媒、1Lに、電解質としてLiBF4を1モル添加した(1M LiBF4/PC)電解液を用いて、電気化学セルを作製した。
【0064】
[レート特性]
このように作製した実施例2及び比較例2のセルについて、電極電位1.0〜3.0V、Cレートが100Cでの充放電測定を行ったところ、表1に示すような結果が得られた。
【表1】

【0065】
表1から明らかなように、実施例2は、比較例2と比較して、容量密度が高くなることがわかる。すなわち、金属化合物とCNFとのコンポジット材料に対してバインダーとしてSGCNTを加えたシート状複合体を用いた電極体は、バインダーとして有機バインダー(CMC)を用いたコーティング電極と比較して、単位当たりの容量は大きくなることが判る。
【0066】
以上より、金属化合物と炭素材料とのコンポジット材料に対してバインダーとしてSGCNTを加えることにより、単位当たりの容量が高い特性を示すシート状複合体及びシート状複合体を用いた電極及び電気化学素子を形成することができる。
【0067】
[第3の特性比較(バインダーの添加量による特性比較)]
第3の特性比較では、コンポジット材料に対して添加するバインダーの添加量による特性比較を行った。第3の特性比較で使用する実施例3〜7及び比較例3は、以下の通りである。本特性比較では、金属化合物としてLTOと、炭素材料としてCNFを使用し、コンポジット材料にバインダーとして添加する繊維状炭素としてSGCNTを使用する。
【0068】
(実施例3〜7、比較例3)
実施例3は、実施例1のシート状複合体と同様に作製した。ここでSGCNTバインダーの添加量をコンポジット材料に対して5wt%となるように配合したシート状複合体とした。
実施例4は、実施例1のシート状複合体と同様に作製した。ここでSGCNTバインダーの添加量をコンポジット材料に対して7wt%となるように配合したシート状複合体とした。
実施例5は、実施例1のシート状複合体と同様に作製した。ここでSGCNTバインダーの添加量をコンポジット材料に対して14wt%となるように配合したシート状複合体とした。
実施例6は、実施例1のシート状複合体と同様に作製した。ここでSGCNTバインダーの添加量をコンポジット材料に対して20wt%となるように配合したシート状複合体とした。
実施例7は、実施例1のシート状複合体と同様に作製した。ここでSGCNTバインダーの添加量をコンポジット材料に対して200wt%となるように配合したシート状複合体とした。
比較例3は、比較例1と同様に、抄紙成型の際にバインダーを用いないでシート状複合体の作製を試みた。
これら実施例3〜7及び比較例3は、チタン酸リチウムとCNFの比が80:20となるようにチタン酸リチウムナノ粉末とCNFの量を調整した。
【0069】
[シートの自立化]
このようにして作製した実施例3〜7及び比較例3のシート状複合体が自立するか試験を行ったところ、表2に示すような結果が得られた。表中の○△×は、作製したシートの状態をしめすものであり、○は表面にムラがない均一で自立したシート、△は表面にムラがいるが自立したシート、×は一体とならずシートを形成してない状態を示す。
【表2】

【0070】
表2から明らかなように、比較例3では、シートが一体とはならず自立してないことが判る。実施例3のシートでは、シートの表面を観察すると表面にムラできる。しかしながら、ムラがあるものの、シートは自立する。実施例4〜7のシートでは、粒子状のLTOとCNFとのコンポジット材料が繊維状のSGCNFバインダーによって均一となりムラがないシートとなった。
【0071】
特に、ムラのない適正なシートを作製する場合には、バインダーとして添加するSGCNFの量をコンポジット材料に対して5wt%以上とすることが望ましい。さらに、SGCNFの量を7wt%以上とすることで、より適正なシートを作製することができる。一方、シート状複合体を電極とする場合は、容量密度の向上のために、LTOの添加量が多いことが望ましい。従って、バインダーとして添加するSGCNTの量は50wt%以下とすることが望ましい。より高い容量密度のためには、SGCNTの量を25wt%以下とすることで、高い容量密度のシートを作製することができる。
【0072】
以上より、金属化合物であるLTOと炭素材料とのコンポジット材料に対して5wt%〜200wt%、望ましくは7wt%〜50wt%、さらに望ましくは7wt%〜25wt%添加することにより、LTOと炭素材料とのコンポジット材料が均一に配置され、且つ高容量密度のシート状複合体及シート状複合体を用いた電極及び電気化学素子が形成される。
【0073】
[第4の特性比較(コンポジット材料の種類による特性比較)]
第4の特性比較では、本実施形態の金属化合物と炭素材料の種類によるレート特性の比較を行った。第4の特性比較で使用する実施例8,9及び比較例4,5は、以下の通りである。
【0074】
(実施例8)
実施例8は、金属化合物と炭素材料とのコンポジット材料としてリン酸鉄リチウム(以下、LFP)とCNFとのコンポジット材料を使用した。
(実施例9)
実施例9は、金属化合物と炭素材料とのコンポジット材料としてLFPとKBとのコンポジット材料を使用した。
実施例8及び9のコンポジット材料に対してバインダーとしてSGCNTを20wt%とIPAとを加え、攪拌することにより混合溶液を作成した。この混合溶液をPTFE濾紙(直径:35mm、平均細孔0.2μm)を用いて減圧ろ過した。その後、減圧ろ過した混合溶液を抄紙成型して厚さを40〜45μmのシート状複合体を得た。形成したシートを圧延処理し、このシート状複合体をエッチングしたアルミニウム箔にプレスして一体化して電極を作製した。この電極と、対極となるリチウム箔とをセパレータを介して対向させ、電解液としてプロピレンカーボネート(PC)溶媒、1Lに、電解質としてLiBF4を1モル添加した(1M LiBF4/PC)電解液を用いて、電気化学セルを作製した。
【0075】
(比較例4)
金属化合物と炭素材料とのコンポジット材料としてLFPとCNFとのコンポジット材料を使用した。
(比較例5)
比較例5は、金属化合物と炭素材料とのコンポジット材料としてLFPとKBとのコンポジット材料を使用した。
これらのコンポジット材料に対してバインダーとして有機バインダーであるPVDFを5wt%混合し混合溶液を作成し、この混合溶液によってアルミニウム箔表面にコーティング層を形成したコーティング電極を作製した。この電極と、対極となるリチウム箔とをセパレータを介して対向させ、電解液としてプロピレンカーボネート(PC)溶媒、1Lに、電解質としてLiBF4を1モル添加した(1M LiBF4/PC)電解液を用いて、電気化学セルを作製した。
【0076】
[レート特性]
このように作製した実施例8,9及び比較例4,5のセルについて、充放電測定を行ったところ、図4,5に示すような結果が得られた。図4は、LFPとCNFとのコンポジット材料に、バインダーとしてSGCNTを使用した電極のレート特性を示した図である。図5は、LFPとKBとのコンポジット材料にバインダーとしてSGCNTを使用したセルのレート特性を示した図である。
【0077】
図4からは、コンポジット材料としてLFP/CNFを使用した場合において、コンポジット材料に対してバインダーとしてSGCNTを添加した実施例8は、バインダーとして有機バインダーを添加した比較例4と比較して高いレート特性を示すことが判る。
【0078】
図5からは、コンポジット材料としてLFP/KBを使用した場合においても、コンポジット材料に対してバインダーとしてSGCNTを添加した実施例9は、バインダーとして有機バインダーを添加した比較例5と比較して高いレート特性を示すことが判る。
【0079】
以上より、金属化化合物として、LFPを用い、炭素材料としてCNFまたはKBを用いたコンポジット材料に対してもバインダーとしてSGCNTを添加することにより高レート特性のシート状複合体及シート状複合体を用いた電極及び電気化学素子が形成することができる。
【0080】
[第5の特性比較(レート特性の特性比較)]
第5の特性比較では、コンポジット材料に対して添加するバインダーの有無による特性比較を行った。第5の特性比較で使用する実施例10〜12及び比較例6〜8は、以下の通りである。本特性比較では、金属化合物としてLTOと炭素材料としてCNFを使用し、コンポジット材料にバインダーとして添加する繊維状炭素としてSGCNTを使用する。
【0081】
(実施例10〜12)
実施例2にて形成したシート状複合体の厚さを実施例10〜12においてそれぞれ設定して、電気化学セルを作製した。実施例10では、抄紙成型したシート状複合体の厚さを23μmとした。実施例11では、抄紙成型したシート状複合体の厚さを50μmとした。実施例12では、抄紙成型したシート状複合体の厚さを71μmとした。
【0082】
(比較例6〜8)
比較例2と同様にCMCをバインダーとしたコーティング電極のコーティング層の厚みをそれぞれ設定して電気化学セルを作製した。比較例6では、コーティング電極のコーティング層の厚さを23μmとした。比較例7では、コーティング電極のコーティング層の厚さを50μmとした。比較例8では、コーティング電極のコーティング層の厚さを71μmとした。
【0083】
[レート特性]
このように作製した実施例10〜12及び比較例6〜8のセルについて、電極電位1.0〜3.0V、Cレート範囲1〜500Cでの充放電測定を行ったところ、図6に示すような結果が得られた。図6は、Cレート範囲における容量利用率(Capacity utilization)を示したものである。図6(a)は、実施例10と比較例6とのレート特性の比較、図6(b)は、実施例11と比較例7とのレート特性の比較、図6(c)は、実施例12と比較例8とのレート特性の比較である。
【0084】
図6からは、シート状複合体の厚さとのコーティング層の厚さが同じであれば、バインダーとして有機バインダーを利用した比較例6〜8と、バインダーとしてSGCNTを添加した実施例10〜12とでは、実施例10〜12の方がレート特性は高い評価を示すことが判る。なお、シート状複合体の厚さは、図6(c)で示すシート状複合体の厚さが71μmのレート特性が低下していることを考慮すると、20μm〜50μmが好ましい。
【0085】
以上のように、金属化合物としてのLTOと炭素材料とのコンポジット材料に対してバインダーとして繊維状炭素を添加することにより、シート状複合体の厚みに関係なく高レート特性のシート状複合体及びシート複合体を用いた電極及び電気化学素子が形成することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 … 外筒
1−2… せき板
1−3… 内壁
2 … 内筒
2−1… 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料にリチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物が担持されたコンポジット材料を繊維状炭素バインダーを用いて抄紙成型したシート状複合体であり、
前記コンポジット材料の繊維状炭素バインダーが、比表面積が600〜2600m2/gのカーボンナノチューブであることを特徴とするシート状複合体。
【請求項2】
前記コンポジット材料に対して繊維状炭素バインダーを5wt%〜200wt%添加したことを特徴とする請求項1に記載のシート状複合体。
【請求項3】
前記シート状複合体の厚さが20μm〜50μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシート状複合体。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載のシート状複合体を集電体の表面に形成したことを特徴とする電極。
【請求項5】
請求項4に記載の電極を用いたことを特徴とする電気化学素子。
【請求項6】
炭素材料にリチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物を担持させたコンポジット材料を得る複合化処理と、
前記コンポジット材料と繊維状炭素バインダーとを攪拌することにより混合溶液を生成する攪拌処理と、
前記攪拌された混合溶液を抄紙成型してシート電極を得るシート化処理を有し、
前記繊維状炭素バインダーが、比表面積が600〜2600m2/gのカーボンナノチューブであることを特徴とするシート状複合体の製造方法。
【請求項7】
前記複合化処理は、旋回する反応器内において、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物の出発原料及び炭素材料にずり応力と遠心力を加えて得られた混合物を加熱し、炭素材料にリチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物を担持させたコンポジット材料を得ることを特徴とする請求項6に記載のシート状複合体の製造方法。

【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−98265(P2013−98265A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238058(P2011−238058)
【出願日】平成23年10月29日(2011.10.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノテクノロジープログラム/カボンナノチューブキャパシタ開発プロジェクト」委託研究 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000228578)日本ケミコン株式会社 (514)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(504358517)有限会社ケー・アンド・ダブル (19)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】