説明

シート状部材の端末部分をパネルに保持するクリップ

【課題】係止爪が開き過ぎるのを防止できる、U字形状の本体を有する、シート状部材の端末部分を保持できるクリップを提供する。
【解決手段】クリップ1は、ほぼU字形状の本体2と、本体2の端部3A、3Bに薄肉部6を介して連結された係止爪5とを有し、本体2の端部3A、3Bには、薄肉部6に隣接する位置に、係止爪5の外側部分7の側方への開き過ぎを防止する、過開き防止ブロック11が設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のダッシュパネル等のパネルに、防音又は遮音用のサイレンサー等の柔軟なシート状部材の端末部分を保持するクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
カーペットの端末部分を車体パネルに保持するクリップが、例えば、実開昭62−052036号公報(特許文献1)に記載されている。そのクリップは、柔軟なシート状部材であるカーペットの端末部分を、パネルの一部の両面を包囲した状態でパネルに保持させる、ほぼU字形状に形成されたばね弾性を有する本体と、カーペットがパネルに保持された状態を維持する、本体の端部に形成された係止爪とを有し、本体はパネルを包囲したカーペットをくわえるように押し込むとそのばね弾性でカーペットをパネルに挟持させるように作用し、係止爪は本体がカーペットから抜け外れるのを阻止するように作用する。これによって、カーペットの端末部分が加工を必要とせずにパネルに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−052036号公報
【特許文献2】実開昭62−171346号公報
【特許文献3】実開昭58−153142号公報
【特許文献4】実開平02−139151号公報
【0004】
特許文献2には、U字形状の本体と端部に形成された係止爪とを有するクリップが記載され、クリップは、例えば、フロアカーペットの端末部分をパネル端部に固定する。特許文献1や特許文献2のクリップは、カーペット等のシート状部材の端末部分をパネルの端部に固定するのに、シート状部材の端末部分の加工を必要としないだけでなく、本体をシート状部材をくわえるように押し込むだけの簡単な操作で済む利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のクリップには、シート状部材に、そのシート状部材がパネル端部から抜け出す方向に強い力が加わった場合、本体がその方向に引きずられて、係止爪に開き方向に力が加わり、係止爪が開き過ぎて、その係止力が損なわれてしまうおそれがあった。係止爪の係止力が損なわれてしまうと、本体がシート状部材から抜け出して、シート状部材がパネルから離脱してしまうので好ましくない。
【0006】
特許文献3及び特許文献4には、特許文献1及び特許文献2のクリップとは異なる形状のクリップが記載されている。これらのクリップにおいても、シート状部材をパネル端部に固定できるように本体がばね弾性を有するほぼU字形状に形成されている。しかし、かかるクリップにおいても、シート状部材がパネル端部から抜け出す方向に強い力が加わった場合、本体がその方向に引きずられて、本体が抜け外れるおそれがあった。
【0007】
従って、本発明の目的は、係止爪が開き過ぎるのを防止できる、U字形状の本体を有する、シート状部材の端末部分を保持できるクリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、本発明に係るクリップは、柔軟なシート状部材の端末部分を、パネルに該パネルの一部の両面を包囲した状態で保持させる、ほぼU字形状に形成されたばね弾性を有する本体と、シート状部材がパネルに保持された状態を維持する、本体の端部に形成された係止爪とを有し、本体はシート状部材をくわえるように押し込むとそのばね弾性でシート状部材をパネルに挟持させるように作用し、係止爪は本体がシート状部材から抜け外れるのを阻止するように作用する、クリップであって、係止爪は、本体のU字形状の端部において、ヒンジとなる薄肉部を介して、本体のU字形状の内側から外側に向けて延び且つ外側部分がU字形状を横切る方向である側方に向けて内側部分より大きく開く状態で、旋回可能に連結されており、本体がシート状部材に押し込まれるとき、係止爪は、開いた外側部分がシート状部材の受入れを容易にしており、押し込みの続行において係止爪の内側部分が薄肉部回りに本体の内側面に近づくように旋回してシート状部材の受入れを許容するとともに外側部分はその開きが狭められ、本体の押し込みの終了において係止爪の内側部分がシート状部材に食い込むことができるように係止爪の外側部分の開きが戻されるようになっており;本体の端部には、薄肉部に隣接する位置に、係止爪の外側部分の側方への開き過ぎを防止する過開き防止ブロックが設けてある、ことを特徴とする。
【0009】
上記のように、係止爪が本体の端部に薄肉部(ヒンジ)を介して旋回可能に連結され、本体の端部には、薄肉部に隣接する位置に、係止爪の外側部分の側方(U字形状を横切る方向)への開き過ぎを防止する過開き防止ブロックが設けてあるので、係止爪が開き過ぎるのが防止でき、シート状部材がパネル端部から抜け出す方向に強い力が加わった場合でも、本体がその方向に引きずられることがなくなり、シート状部材はパネルに堅く固定されたままに維持される。
【0010】
上記クリップにおいて、係止爪は、U字形状の本体の2つの端部のそれぞれに、薄肉部を介して旋回可能に連結されている。また、本体と係止爪と薄肉部と過開き防止ブロックとが、プラスチック材料で、一定幅で一体成形される。係止爪の外側部分の先端面がシート状部材の外面を滑るガイド面として形成されている。更に、1例として、パネルは自動車のダッシュパネルであり、シート状部材は防音用のサイレンサーであり、パネルの端部に保持されるシート状部材の部分が、シート状部材の端末部分である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の1実施形態に係るクリップの斜視図である。
【図2】図1のクリップの正面図である。
【図3】図1のクリップを一部破断した、平面図である。
【図4】図1のクリップを用いてシート状部材の端末部分をパネルに取付ける前の操作を示す斜視図である。
【図5】(A)は、図1のクリップを、図4の状態からシート状部材に押し込んで、押し込みの途中にある状態を示す図であり、(B)は、(A)におけるシート状部材及びパネルを省略した、クリップの係止爪の作用を示す図である。
【図6】(A)は、図4のクリップを更にシート状部材に押し込んで、押し込みの終了状態を示す図であり、(B)は、(A)におけるシート状部材及びパネルを省略した、クリップの係止爪の作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の1実施形態に係るクリップ1について説明する。クリップ1は、サイレンサー等の柔軟なシート状部材を、ダッシュパネル等のパネルに固定するのに用いられ、図示の1実施形態において、全体が、硬質プラスチック材料で一体成形される。クリップ1は、柔軟なシート状部材として、防音又は遮音用のサイレンサーの端末部分を、パネルとしてのダッシュパネルの取付縁部の両面を包囲した状態で、ダッシュパネルに保持させる、ほぼU字形状に形成されたばね弾性を有する本体2と、サイレンサーがダッシュパネルに保持された状態を維持する、本体2の端部3A、3Bに形成された係止爪5とを有する。本体2は、全体として、一定幅のほぼU字形状体に形成されて、湾曲部分にはばね弾性が付与されている。本体2は、U字形状の内側にサイレンサーをくわえ込んだ場合には、その湾曲部分のばね弾性によって、くわえ込んだサイレンサーをその両面から弾性的に押圧するように作用し、サイレンサーの間にダッシュパネルがある場合には、サイレンサーをダッシュパネルに押圧して挟持する。すなわち、本体2はダッシュパネルを包囲したサイレンサーをくわえるように押し込むとそのばね弾性でサイレンサーをダッシュパネルに挟持させるように作用する。
【0013】
係止爪5は、本体2のU字形状の端部3A、3Bにおいて、ヒンジとなる薄肉部6を介して、本体のU字形状の内側から外側に向けて延び且つ外側部分7がU字形状を横切る方向である側方(図2の紙面において上下方向)において、内側部分9より大きく開く状態で、旋回可能に連結されている。図示の1実施形態においては、係止爪5は、U字形状の本体の2つの端部3A及び3Bのそれぞれに、薄肉部6を介して旋回可能に連結されている。また、各係止爪5の外側部分7の先端面は、サイレンサーの外面を滑るガイド面として形成されており、本体2をサイレンサーへ押し込むとき、その外側部分7はサイレンサーを滑らかに移動し、クリップ1の押し込みを助ける。また、各係止爪5の内側部分9の端部10は尖っている。これによって、本体2が十分にサイレンサーへ押し込まれた後にそのばね弾性で抜け出る方向に移動しようとするとき、係止爪5の内側部分9の先端10がサイレンサーの表面に食い込んで、本体2が抜け外れるのを阻止する。各係止爪5は、本体2がサイレンサーに押し込まれるとき、開いた外側部分7がサイレンサーの受入れを容易にしている。係止爪5は、本体2の押し込みの続行において内側部分9が薄肉部6の回りに旋回するので内側部分9は本体2の内側面に近づくので、サイレンサーの受入れを許容する。他方、係止爪5の外側部分7はその開きが狭められるように旋回させられる。しかし、本体2の押し込みの終了において内側部分9の先端10がサイレンサーに食い込むので、外側部分7の開きが元の開きに戻される。上記のように、各係止爪5は本体2がサイレンサーから抜け外れるのを阻止する作用を行う。
【0014】
本体2には、係止爪5が設けられた端部3A及び3Bのそれぞれに、ヒンジとしての薄肉部6に隣接する位置に、係止爪5の外側部分7の側方(図2の紙面において上下方向)への開き過ぎを防止する過開き防止ブロック11が設けてある。過開き防止ブロック11は、図1及び図2に示されるように、薄肉部6の回りに旋回する係止爪5の外側部分7の外面側に形成され、薄肉部6の回りに旋回した係止爪5の外側部分7が、図2の紙面の上下方向において一定の開き角度以上に開くのを制限する。これによって、係止爪5の外側部分7の側方への開き過ぎを防止する。係止爪5の外側部分7の側方への開き過ぎが、過開き防止ブロック11によって阻止されているので、サイレンサーがダッシュパネルの端部から抜け出す方向に強い力が加わった場合でも、係止爪5の内側部分9の先端10がサイレンサーに食い込んだままに維持され、本体2がサイレンサー上に留まるので引きずられることがなくなり、これによって、サイレンサーはダッシュパネルに堅く固定されたままに維持される。なお、過開き防止ブロック11は、係止爪5の外側部分7の側方への開き過ぎを防止する限り、図示の形状に限らず、他の形状であってもよい。
【0015】
クリップ1は、図示の1実施形態においては、図1〜図3に図示のように、本体2と係止爪5と薄肉部6と過開き防止ブロック11とが、一定の短い幅の、ほぼ板を湾曲させた形状に一体成形されている。クリップ1は、図示の形状には限らないが、図示の形状の場合、クリップ1の取付け操作が容易であり、サイレンサーの取付け部分の幅が短い場合では、例えば、1つのクリップ1でサイレンサーをダッシュパネルに固定でき、サイレンサーの取付部分の幅が長い場合では、複数のクリップ1を用いて、適当な間隔をあけて固定できる。他の形状としては、クリップ全体の幅(図3の紙面の上下方向の長さ)を、図示の長さより長くしてもよい。
【0016】
図4〜図6を参照して、クリップ1によって、シート状部材としてのサイレンサー13の端末部分14をダッシュパネル15の取付部17に固定する操作を説明する。図4において、サイレンサー13の端末部分14を、ダッシュパネル15の取付部17の両面を包囲した状態にする。この操作は、例えば作業者の手作業で行う。作業者は、サイレンサー13の端末部分14をダッシュパネル15の取付部17の両面を包囲した状態で、クリップ1を、図4の矢印18に示すように、サイレンサー端末部分14をU字形状の本体2の内側にくわえるように押し込む。この押し込みによって、図5の(A)に示すように、クリップ1の本体2の端部3A、3Bに、薄肉部6の回りに旋回可能に連結された係止爪6が、その外側部分7に受入れたサイレンサー端末部分14の外面を滑らかに移動し、係止爪6の内側部分9を、本体2の内側に近づける。これによって、内側部分9が、柔軟なサイレンサー端末部分14を押付けながら受入れる。図5の(B)に図示のように、本体2の押し込みによって、係止爪5の外側部分7は、矢印19の方向に旋回させられて、その開きが狭められる。
【0017】
図6の(A)に図示のように、本体2をサイレンサー端末部分14に十分に押し込むことによって押し込みが終了する。この押し込みの終了において、本体2は、そのばね弾性によってくわえ込んだサイレンサー端末部分14をその両面から弾性的に押圧するように作用し、サイレンサー端末部分14の間にダッシュパネル15の取付部17に押圧して、サイレンサー13の端末部分14をダッシュパネル15に押圧して挟持する。また、本体2の押し込みの終了において、本体2は、そのばね弾性によって反力が作用して、本体が押し込みと反対方向に戻る。本体2が少し戻ることによって、係止爪5の内側部分9の先端10がサイレンサーに食い込む。この食い込みによって、本体2はサイレンサー端末部分14に係止した状態に留まり、サイレンサー端末部分14がダッシュパネル15の取付部17に固定される。また、係止爪5の内側部分9の先端10がサイレンサー端末部分14に食い込む姿勢は、薄肉部6の回りに係止爪5を元の姿勢に戻る姿勢に近くなるので、外側部分7の開きが元の大きな開き角度(又はそれに近い角度)に戻される。
【0018】
図6の(B)に図示のように、係止爪5の内側部分9の先端10がサイレンサー端末部分14に食い込む姿勢は、矢印21に図示のように、外側部分7を元の大きな開き角度に戻そうとする。この開き角度が過大になると、係止爪5の内側部分9の先端10がサイレンサー端末部分14への食い込む角度が、本体2が抜け外れるのを可能にする角度になってしまう(係止爪5の内側部分9と本体2の内側面との間の角度が鋭角から鈍角になってしまう)。これを阻止するため、過開き防止ブロック11が、係止爪5の外側部分7の外面側に形成され、薄肉部6の回りに旋回した係止爪5の外側部分7が、図2の紙面の上下方向において一定の開き角度以上に開くのを制限している。これによって、係止爪5の外側部分7の側方への開き過ぎを防止する。係止爪5の外側部分7の側方への開き過ぎが、過開き防止ブロック11によって阻止されているので、サイレンサー13がダッシュパネル15の端部の取付部17から抜け出す方向に強い力が加わった場合でも、係止爪5の内側部分9の先端10がサイレンサーに食い込んだままに維持される。従って、本体2がサイレンサー13の端末部分14上に留まるので、本体2が引きずられることがなくなり、サイレンサー13はダッシュパネル15に堅く固定されたままに維持される。
【符号の説明】
【0019】
1 クリップ
2 本体
3A、3B 本体の端部
5 係止爪
6 薄肉部
7 係止爪の外側部分
9 係止爪の内側部分
10 係止爪の内側部分の先端
11 過開き防止ブロック
13 サイレンサー(シート状部材)
14 サイレンサーの端末部分
15 ダッシュパネル(パネル)
17 ダッシュパネルの取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟なシート状部材の端末部分を、パネルに該パネルの一部の両面を包囲した状態で保持させる、ほぼU字形状に形成されたばね弾性を有する本体と、前記シート状部材が前記パネルに保持された状態を維持する、前記本体の端部に形成された係止爪とを有し、前記本体は前記シート状部材をくわえるように押し込むとそのばね弾性で前記シート状部材を前記パネルに挟持させるように作用し、前記係止爪は前記本体が前記シート状部材から抜け外れるのを阻止するように作用する、クリップであって、
前記係止爪は、前記本体のU字形状の端部において、ヒンジとなる薄肉部を介して、該本体のU字形状の内側から外側に向けて延び且つ外側部分が前記U字形状を横切る方向である側方に向けて内側部分より大きく開く状態で、旋回可能に連結されており、前記本体が前記シート状部材に押し込まれるとき、前記係止爪は、前記開いた外側部分が前記シート状部材の受入れを容易にしており、前記押し込みの続行において前記係止爪の前記内側部分が前記薄肉部回りに前記本体の内側面に近づくように旋回して前記シート状部材の受入れを許容するとともに前記外側部分はその開きが狭められ、前記本体の押し込みの終了において前記係止爪の前記内側部分が前記シート状部材に食い込むことができるように前記係止爪の前記外側部分の前記開きが戻されるようになっており、
前記本体の端部には、前記薄肉部に隣接する位置に、前記係止爪の前記外側部分の前記側方への開き過ぎを防止する過開き防止ブロックが設けてある、ことを特徴とするクリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップにおいて、前記係止爪は、前記U字形状の本体の2つの端部のそれぞれに、前記薄肉部を介して旋回可能に連結されている、ことを特徴とするクリップ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のクリップにおいて、前記本体と前記係止爪と前記薄肉部と前記過開き防止ブロックとが、硬質プラスチック材料で、一定幅で一体成形されている、ことを特徴とするクリップ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のクリップにおいて、前記係止爪の外側部分の先端面が前記シート状部材の外面を滑るガイド面として形成されている、ことを特徴とするクリップ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のクリップにおいて、前記パネルが自動車のダッシュパネルであり、前記シート状部材は防音用のサイレンサーである、ことを特徴とするクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−190347(P2010−190347A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36635(P2009−36635)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(390025243)ポップリベット・ファスナー株式会社 (159)
【Fターム(参考)】