説明

シート用酸素供給器

【課題】 ヘッドセット型の吐出口部材を用いることのない、使用者の口元付近への高濃度酸素の吐出供給を、構成の複雑化等を伴うことなく実現可能とした。
【解決手段】 換気ファン12の作動により空気の通過、流動されるダクト14と、このダクト内に収容された、所定複数枚の酸素富化膜モジュール16aを重ねてなる酸素富化膜ユニット16と、酸素富化膜ユニットを介して生成された高濃度酸素を、その吸引によりダクト外に送出する真空ポンプ18と、真空ポンプによる高濃度酸素の送出路先端に設けられた、高濃度酸素を吐出するための吐出口部材20と、を具備してなり、ペルチェ効果の発生されるペルチェ素子ユニット50が、ダクト内にその発熱部50aを配置することにより設けられるとともに、このペルチェ素子ユニットの吸熱部50bが、真空ポンプからの送出路となる送出管30中に介在されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気を取り込んで高濃度酸素を生成し吐出する、車両用シート等への内蔵に適したシート用酸素供給器に関する。
【背景技術】
【0002】
長時間の運転時等における眠気や疲労の軽減等、いわゆるリフレッシュを目的として、高濃度酸素をドライバー等の乗員に供給可能とする車載用の酸素供給器が、たとえば特開2004−299647号公報に開示されている。
【0003】
この公報にも開示のように、この種の酸素供給器は、外気(空気)を取り込んで高濃度酸素を生成する酸素富化膜ユニットと、この酸素富化膜ユニットを介して生成された高濃度酸素を送出する真空ポンプと、この真空ポンプにより送出された高濃度酸素をその外部に吐出、供給する吐出口部材との組み合わせとして概略なり、この吐出口部材を使用者の口元に近づけてセットすること等によって、その高濃度酸素の供給を受けることが可能になる。
【0004】
ところで、この前出の特開2004−299647号公報にも開示されている通り、この種の吐出口部材として、通常、頭部に装着する、いわゆるヘッドセット型のものが利用される。しかしながら、この種のヘッドセット型の吐出口部材をドライバーが走行開始当初から装着しているのでは煩わしく、また、ドライバーが走行途中にこのヘッドセット型の吐出口部材を装着するにあたっては、自動車を一旦停止した後に行わなければならないため、その使用開始時期を逸することも起こり得る。
【0005】
ここで、前出の特開2004−299647号公報においては、ヘッドセット型以外の吐出口部材の形態として、シートバックの上端面等やインパネ等に設けたものも例示されている。しかしながら、このような形態であると、吐出口部材から吐出、供給された高濃度酸素が、空気中に拡散されるため、効率的な酸素吸入をドライバー等の使用者が容易に得られないということが起こり得る。
【0006】
また、吐出口部材を使用者の口元から離して設置するためには、使用者の口元までの距離を考慮したそれ相応の吐出量が要求される。しかしながら、従来の一般的な酸素富化膜ユニットによる高濃度酸素の生成量には限度があるため、高濃度酸素の増大化は容易でない。
【特許文献1】特開2004−299647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、ヘッドセット型の吐出口部材においては装着の煩わしさが避けられず、また、従来の構成においては高濃度酸素の十分な吐出供給量が容易に確保できないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係るシート用酸素供給器は、ペルチェ効果の発生されるペルチェ素子ユニットを、酸素富化膜ユニットの収容されたダクト内に、その発熱部を配置することにより設けるとともに、このペルチェ素子ユニットの吸熱部を、真空ポンプの出力側の送出路中に介在したことを、その最も主要な特徴としている。
【0009】
また、この発明の請求項2は、吐出口部材を、シートベルト、使用者の襟元および胸元の少なくともいずれかに係着可能なクリップを有してなるものとしたことを、その最も主要な特徴としている。
【0010】
さらに、この発明の請求項3は、透光性素材からなる水抜き用カプセルを、送出路を形成する送出管に対し、その着脱を可能に設けるとともに、所定の照射光を発する照光部材により、この水抜き用カプセルを照射可能としたことを、その最も主要な特徴としている。
【0011】
そして、この発明の請求項4は、照光部材をLEDとして具体化したことを、その最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に示すシート用酸素供給器によれば、ペルチェ素子ユニットの発熱部をダクト内に配することで、このダクト内の空気の昇温による高濃度酸素の流量の増加が得られることから、吐出口部材からの高濃度酸素の吐出供給量の増大化が十分に可能になるという利点がある。
【0013】
また、ペルチェ素子ユニットの吸熱部による高濃度酸素の冷却も得られることから、使用者に快適な高濃度酸素が構成の複雑化を伴うことなく得られるという利点も、この請求項1によれば得られる。
【0014】
そして、請求項2によれば、クリップでの係着によって、シートベルト、使用者の襟元および胸元の少なくともいずれかに、吐出口部材を装着することが可能となるため、ヘッドセットを用いることなく、使用者の口元に近い部分に吐出口部材が容易に装着できるという利点がある。
【0015】
また、請求項3によれば、所定の照光部材により発生された照射光を、透光性素材からなる水抜き用カプセルに照射するため、水の貯留量が外部から容易に認識でき、よって、そのメンテナンスが容易に可能になるという利点がある。
【0016】
さらに、請求項4によれば、消費電力の少ないLEDを照光部材としていることから、水抜き用カプセルに対する適切な照光が、いわゆる省エネのもとで容易に可能になるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ヘッドセット型の吐出口部材を用いることのない、使用者の口元付近への高濃度酸素の吐出供給を、構成の複雑化等を伴うことなく実現可能とした。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明のシート用酸素供給器10の概略の構造図を兼ねた空気回路図であり、図示のように、この発明のシート用酸素供給器は、換気ファン12の作動により空気の通過流動されるダクト14と、このダクト内に収容された、高濃度酸素を生成可能とする酸素富化膜ユニット16と、酸素富化膜ユニットを介してダクト内の空気を吸引するとともに、この酸素富化膜ユニットにより生成された高濃度酸素を、送出路を介してダクト外に送出する真空ポンプ18と、送出路先端に取り付けられた、高濃度酸素をその外部に吐出供給するための吐出口部材20と、を具備している。
【0019】
ダクト14は、空気を取り込む吸気口22と、その空気の不要分、たとえば酸素富化膜への透過の拒否された窒素等を排出する排気口24とを、その開口としてそれぞれ有して形成され、空気中に混在する粉塵等からの酸素富化膜の保護をはかるべく、たとえば、吸気口および排気口の双方に集塵フィルタ26が配されている。そして、吸気口22からの空気の取り込みをはかり、かつその空気の流動方向を排気口24方向に規定する換気ファン12が、たとえばこのダクト14の排気口近傍に設けられている。
【0020】
なお、この換気ファン12としては、一般的な送風ファンが利用できる。また、詳細は後述するが、この実施例においては、この換気ファン12が2機並置されている。
【0021】
ダクト14内に収容される酸素富化膜ユニット16は、酸素富化膜モジュール16aを所定複数枚、たとえば4枚程度有隙積層することにより形成される。この酸素富化膜モジュール16aは、中空フレームの表面に、酸素の透過しやすい酸素富化膜を貼付することにより形成され、ダクト14内の空気を真空ポンプ18の吸引力のもとでその内部に吸引することにより、空気中の酸素を、この酸素富化膜に強制透過させるよう構成されている。
【0022】
換気ファン12での吸引により吸気口22からダクト14内に取り込まれた空気は、この酸素富化膜ユニット16により、酸素富化膜を透過した酸素と、その透過の拒否された窒素等の他成分とに選択的に分離され、この酸素富化膜での透過の拒否された窒素等の他成分は、換気ファンの気流に乗って、ダクトの排気口24からそのまま外部に排出(排気)される。
【0023】
真空ポンプ18の吸引力のもとで酸素富化膜ユニットの酸素富化膜モジュール16a内に透過された酸素は、高濃度酸素としてその配管(供給管)28を経て真空ポンプ18に吸い込まれる。そして、この高濃度酸素は、真空ポンプ18での送り出しにより、送出路となるその配管(送出管)30を経て吐出口部材20から外部に吐出供給される。
【0024】
なお、この真空ポンプ18としては、一般的なドライ式ダイヤフラム型真空ポンプが利用できる。
【0025】
ここで、図1を見るとわかるように、このシート用酸素供給器10は、ダクト14を有する本体32と、真空ポンプ18と、吐出口部材20とに概略的に分割規定される。そして、図2を見るとわかるように、たとえば、本体32をシートバック34に内蔵し、また真空ポンプ18をシートクッション36に内蔵するとともに、シートバックの側面等に配した接続口38を介して吐出口部材20を送出管(送出路)30に接続することによって、このシート用酸素供給器10はシート40に搭載される。
【0026】
図2を見るとわかるように、この吐出口部材20は、接続口38に着脱可能に連結、挿着される連結端41をその一端末に有した、可撓性のスパイラルチューブ42と、吐出口を形成するマウス部44と、このマウス部を所定箇所、たとえば使用者の服の襟元、胸元、あるいはシート40に対応するシートベルトに係着可能とするクリップ46との組み合わせとして形成され、このスパイラルチューブの連結端をシートバック側面等の接続口38に挿着することにより、この吐出口部材の、マウス部からの高濃度酸素の吐出が可能となる。
【0027】
この吐出口部材のマウス部44をクリップ46によりシートベルト48に係着した例を、図3に示す。
【0028】
なお、このシート用酸素供給器10においては、スパイラルチューブの連結端41を挿着したときのみ、送出管30からその外部への高濃度酸素の流動を保障するように、接続口38は形成されている。
【0029】
ここで、この発明のシート用酸素供給器の吐出口部材20は、従来のような頭部に装着するヘッドセット型のものとは異なり、図3に示すような、クリップ46によるシートベルト48等への係着使用が前提となる。このような場合、この吐出口部材のマウス部44は、ヘッドセット型のものより使用者の口元付近から離れるため、このクリップ式の吐出口部材20においては、高濃度酸素の吐出量がそれ相応に要求される。
【0030】
そこで、図1に示すように、この発明においては、ペルチェ効果の発生されるペルチェ素子ユニット50が、ダクト14内にその発熱部50aを配置することにより設けられるとともに、このペルチェ素子ユニットの吸熱部50bが、真空ポンプ18の出力側の送出路30中に介在されている。
【0031】
このペルチェ素子ユニット50の原理およびその詳細は一般的に知られたものであるため、ここでの説明は省略するが、このペルチェ素子ユニットは、異種の2金属からなる発熱部50aおよび吸熱部50bを接合することによりなるペルチェ素子を主体として概略形成されている。
【0032】
このうちの吸熱部50bは、送出管30と共に高濃度酸素の送出路の一部として規定され、その内部流路50cを経て、高濃度酸素は送出管(送出路)中を流動される。
【0033】
酸素富化膜ユニット16における高濃度酸素の流量、つまり高濃度酸素の生成量は、その周辺温度に依存されることがわかっている。そして、その流量は、温度上昇に比例して高くなることから、ペルチェ素子ユニットの発熱部50aの発熱によりダクト14内の温度を上昇させることによって、酸素富化膜ユニット16により生成される高濃度酸素の量を増やすことが容易に可能となる。
【0034】
また、ペルチェ素子ユニットの発熱部50aをダクト14内に配することで、ダクト内での空気の流動により、この発熱部の過熱も防止されることから、ダクト内の温度上昇と同時に、この発熱部の過熱防止効果も容易に確保可能となる。
【0035】
さらに、ダクト14内の温度上昇により、酸素富化膜ユニット16により生成された高濃度酸素の温度も上昇される。しかし、真空ポンプ18を経て送り出された高濃度酸素は、送出管30によりなる送出路中に介在されたペルチェ素子ユニットの吸熱部50bを通過されるため、この吸熱部での吸熱のもとで、この高濃度酸素の冷却が行われる。
【0036】
このように、この発明においては、ダクト14内を温度上昇させる昇温部材、および温度上昇した高濃度酸素の冷却部材として、双方の機能を併せ持つペルチェ素子ユニット50を利用するため、その構成の簡素化が十分に可能となる。
【0037】
そして、このペルチェ素子ユニットの発熱部50aによるダクト14内の昇温により、酸素富化膜ユニット16による高濃度酸素の生成量が増加できるため、図1に示すように、2機の換気ファン12を並列配置することによって、ダクト内への空気の取り込み量を増加させるとともに、図2に示すように、たとえば酸素富化膜ユニットを2ユニット並置とすることによって、ダクト内への空気の取り込み量の増加に酸素富化膜ユニットを対応させることが可能となる。
【0038】
ところで、この種の酸素供給器に使用される酸素富化膜は、水蒸気透過性能を持つため、送出路内に水蒸気の流通を規制する箇所を設ける必要がある。そこで、図1に示すように、この種の酸素供給器においては、通常、水抜き用カプセル52を高濃度酸素の送出管30によりなる送出路中に着脱可能に設けることが行われる。
【0039】
図2を見るとわかるように、この水抜き用カプセル52は、たとえばシートバック34の側面等に露出して設けられた目視可能な凹部54に着脱可能に設けられ、その取り外しにより、内部に貯留された水の排出を可能に構成されている。
【0040】
ここで、この発明においては、この水抜き用カプセル52として、透光性を持つ素材、たとえば透明あるいは半透明のプラスチック素材等からなるものを具体化するとともに、この水抜き用カプセルを、照射光を発する照光部材56により照射するものとしている(図1、図2参照)。
【0041】
この照光部材56として、たとえばBlue−LED等のLED(発光ダイオード)が例示できる。
【0042】
このように、Blue−LED(照光部材)56の光を水抜き用カプセル52に照射することによって、この水抜き用カプセルの持つ透光性のもとで、水の貯留量が容易に認識できるため、そのメンテナンスが容易に可能になるという効果が得られる。
【0043】
また、Blue−LED56の光により水抜き用カプセル52が露光されるため、このBlue−LEDからの光はイルミネーションとしても機能する。
【0044】
さらに、このシート用酸素供給器10は、図1に示すように、送風乾燥用の送風切換電磁弁58を有している。
【0045】
この送風切換電磁弁58は、たとえば本体32内に配設され、真空ポンプ18による吸引力を、酸素富化膜ユニット16を介さずにダクト14内に作用させるように、このダクトに設けられた取出口60と酸素富化膜ユニットからの供給管(配管)28との間に、たとえば分岐配管62を介して接続されている。
【0046】
なお、このダクトの取出口60にも、集塵用フィルタ64が配設される。
【0047】
この送風切換電磁弁58は、通常、閉鎖状態にあり、この送風切換電磁弁の閉鎖状態において、真空ポンプ18の吸引力のもとでの酸素富化膜ユニット16による高濃度酸素の生成が可能となる。そして、この送風切換電磁弁58の解放により、ダクト14内の空気は、真空ポンプ18の吸引力のもとで酸素富化膜ユニット16を介さずに真空ポンプ、送出管30、水抜き用カプセル52、スパイラルチューブ42、マウス部44へと流動するため、この空気による、これら部材内の送風通気乾燥が可能となる。
【0048】
このように、このシート用酸素供給器10においては、使用後に必要なアフタケアを自動的に行うものとしている。
【0049】
このような構成のシート用酸素供給器10の電気回路ブロック図を、図4に示す。この電気回路ブロック図を見るとわかるように、このシート用酸素供給器10は、高濃度酸素の供給時間を規定するタイマT1回路65と、その後の送風乾燥時間を規定するタイマT2回路66とを有し、この各タイマ回路による換気ファン駆動回路67、真空ポンプ駆動回路68、ペルチェ素子ユニット駆動回路70、Blue−LED駆動回路72および送風切換電磁弁駆動回路74の電気的制御のもとで、それに対応する換気ファン12、真空ポンプ18、ペルチェ素子ユニット50、Blue−LED56および送風切換電磁弁58をそれぞれ作動制御するものとして構成されている。
【0050】
また、このシート用酸素供給器10には起動用の操作スイッチ76が設けられる。そして、図示のように、この実施例においては、2個の操作スイッチ76−1,76−2が、その操作を検出するスイッチ検出回路78に対して並列に接続されている。
【0051】
この2個の操作スイッチ76−1,76−2は、たとえば、シート40の左右サイドにそれぞれ配される(図2参照)。
【0052】
なお、この図2には操作スイッチ76−2の記載はないが、この操作スイッチ76−2は、操作スイッチ76−1と反対側の左右サイドのシートバック側面、あるいはシートクッション側面等に設けられる。
【0053】
以下、図5に示すフローチャートに沿って、このシート用酸素供給器10の動作を説明する。
【0054】
まず、操作スイッチ76−1,76−2のいずれかの操作によりスイッチ検出回路78がその操作を検出すると(202)、次に、タイマT1回路65のON動作のもとで高濃度酸素供給時間の計測が開始されるとともに(204)、続いて換気ファン駆動回路66、および真空ポンプ駆動回路68の同期したON動作のもとで、換気ファン12および真空ポンプ18がそれぞれ起動(ON)される(206)(図4および図1参照)。
【0055】
次に、サーモスイッチ80が作動したか否かが判断される(208)(図4参照)。
【0056】
このサーモスイッチ80は、真空ポンプ18の過熱状況を検出可能に設けられたものであり、図4に示すように、真空ポンプ駆動回路68に対し電気的に接続されている。
【0057】
真空ポンプ18の正常作動時であれば、このサーモスイッチ80はOFF状態を維持し、そのOFF状態においては、図5のステップ(208)でNoと判断されるため、次にペルチェ素子ユニット駆動回路70のON動作のもとで、ペルチェ素子ユニット50が起動(ON)されるとともに(210)、Blue−LED駆動回路72のON動作のもとで、Blue−LED56が点灯(ON)される(212)(図4および図1参照)。
【0058】
図5に示すように、次に、スイッチ操作等により電源がOFFとなったか、あるいはタイマT1回路65での計測時間が予め設定された時間に到達したか否か、つまりタイムアップとなった否かが判断され(214)、スイッチ操作等による電源OFF、タイマT1回路のタイムアップのいずれかが検出されるまで、ここではNoと判断されて、ステップ(206)からの動作が繰り返し実行される。
【0059】
この、ステップ(202)からステップ(214)までの動作が、シート用酸素供給器10における高濃度酸素の生成工程となり、吐出口部材のマウス部44からの高濃度酸素の吐出供給が行われる(図1、図3参照)。
【0060】
そして、スイッチ操作等により電源がOFFとされるか、あるいはタイマT1回路65がそのタイムアップを認識すると、図5のステップ(214)でのYesとの判断のもとで、まず、ペルチェ素子ユニット駆動回路70のOFF動作により、ペルチェ素子ユニット50が停止(OFF)されるとともに(216)、タイマT2回路66のON動作により、送風乾燥時間の計測が開始される(218)(図4参照)。
【0061】
このタイマT2回路66のON動作に伴って、送風切換電磁弁58が、その送風切換電磁弁駆動回路74のON動作により開放(ON)されると(220)、次に、タイマT2回路での計測時間が予め設定された時間に到達したか否かが判断され(222)、タイマT2回路のタイムアップが検出されるまで、ここではNoと判断されて、ステップ(220)での動作が継続実行される(図4および図1参照)。
【0062】
図1を見るとわかるように、この送風切換電磁弁58が開放されると、ダクト14内の空気が、酸素富化膜ユニット16を介することなく、真空ポンプ18の吸引力のもとでダクトの取出口60から分岐配管61、真空ポンプを経て送出管30に送り出される。つまり、これによって、真空ポンプ18、送出管30、水抜き用カプセル52および吐出口部材20に対する送風乾燥が行われる。
【0063】
そして、タイマT2回路66がそのタイムアップを認識すると、図5のステップ(222)でのYesとの判断のもとで、まず、ペルチェ素子ユニット駆動回路70のOFF動作により、ペルチェ素子ユニット50が停止(OFF)される(224)。続いて、換気ファン駆動回路66、および真空ポンプ駆動回路68の同期したOFF動作のもとで、換気ファン12および真空ポンプ18がそれぞれ停止(OFF)されるとともに(226)、送風切換電磁弁駆動回路74のOFF動作のもとでの送風切換電磁弁58の閉鎖(OFF)(228)、およびBlue−LED駆動回路72のOFF動作によるBlue−LED56の消灯(OFF)(230)が順次行われて、このシート用酸素供給器10の、高濃度酸素生成工程から送風乾燥工程までの一連の動作が終了する(図4および図1参照)。
【0064】
また、シート用酸素供給器10の作動中、たとえば、真空ポンプ18の過熱等により、そのサーモスイッチ80がON動作され、図4に示す、このサーモスイッチの接続された過熱検出回路82がこのサーモスイッチのON動作を検出すると、図5のステップ(208)でのYesとの判断のもとで、ステップ(224)〜ステップ(230)により、ペルチェ素子ユニット50の停止(OFF)、換気ファン12、真空ポンプ18の同期停止(OFF)、送風切換電磁弁58の閉鎖(OFF)、およびBlue−LED56の消灯(OFF)が順次行われて、高濃度酸素生成工程、あるいは送風乾燥工程が強制的に中止される(図4および図1参照)。
【0065】
上記のように、この発明のシート用酸素供給器10は、ペルチェ素子ユニットの発熱部50aにより、ダクト14内の空気を昇温させており、この空気の昇温により高濃度酸素の流量の増加が望めるため、ダクト内への空気の取り込み量を増加させることによって、吐出口部材20からの高濃度酸素の吐出供給量の増加が十分に可能となる。
【0066】
つまり、この発明によれば、吐出口部材20からの高濃度酸素の吐出供給量の増加が得られるため、使用者の口元から若干離れた場所からの吐出供給であっても、高濃度酸素を使用者の口元に適切に供給することが可能となる。
【0067】
つまり、ヘッドセット型の吐出口部材を用いることなく、使用者の口元への高濃度酸素の提供が容易に可能となることから、使用者に煩わしさを感じさせることのない吐出口部材の装着が可能となり、よって、車両走行前等に事前に装着しておくことで、使用開始時期を逸することのない使用が十分に可能となる。
【0068】
また、この発明においては、ペルチェ素子ユニットの発熱部50aにより昇温された高濃度酸素を、同じペルチェ素子ユニットの持つ吸熱部50bにおいて冷却しているため、使用者に快適な低温の高濃度酸素を吐出供給することが容易に可能となる。このように、冷却された高濃度酸素であれば、新鮮な酸素との印象を使用者に強く与えることができ、また体感的にも、使用者が気分を一新するのに効果的であることから、高濃度酸素を冷却することで、より快適な使用感を得ることが十分に可能となる。
【0069】
さらに、ダクト14内の空気の昇温、および生成された高濃度酸素の冷却に、単一のペルチェ素子ユニット50を利用しているにすぎないため、その構成の簡素化も十分に可能となる。
【0070】
ここで、この実施例においては、吐出口部材20として、クリップ46をマウス部44に有した、いわゆるクリップ式のものを例示しているが、このマウス部を使用者の口元近傍位置等に配置、係着できればよいため、この構成に限定されるものではない。しかし、シートベルト48や使用者の襟元、胸元等に係着可能なクリップ式とすることで、その装着作業が容易となるため、使用者自らが装着する場合に限らず、隣席等の乗員による補助装着も容易に可能となることから、この点においても、使用開始時期を逸することのない使用が十分に可能となる。
【0071】
また、運転時等の疲労のもとでは、丸背となる姿勢崩れを生じやすく、この場合の着座者の口元は、シートベルト48や使用者の襟元、胸元等に装着したマウス部44に対しより接近されることから、マウス部をクリップ46によってシートベルトや使用者の襟元、胸元等に装着ことにより、その効果的使用が十分にはかられる。
【0072】
そして、この実施例においては、水抜き用カプセル52をBlue−LED56により照光するものとして具体化しているが、LEDの色はこれに限定されるものではなく、また、ここではLEDをその照光部材として具体化しているが、水抜き用カプセルを照射可能とすれば足りるため、この照光部材として、他の色のLEDや、またLED以外の他の照光手段を、ここでいう照光部材としてもよい。
【0073】
しかしながら、照光部材56としてLEDを使用することにより、省電力化、つまり省エネが適切に可能となるため、バッテリーを電源とする自動車等におけるその使い勝手が確実に向上される。
【0074】
さらに、LEDであれば、水抜き用カプセル52に照射された光がイルミネーションとしても機能するため、その付随効果も十分に期待できる。
【0075】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
ここでは、自動車用のシートをシート用酸素供給器の搭載されるシートとして具体化しているが、これに限定されず、飛行機、船舶、列車等の他の乗り物用シートや、建物内で使用されるリラックスシート等も、その搭載の対象となり得ることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明に係るシート用酸素供給器の概略の構造図を兼ねた空気回路図である。
【図2】このシート用酸素供給器のシートへの搭載例を示す、その概略斜視図である。
【図3】このシート用酸素供給器の使用例である。
【図4】このシート用酸素供給器の電気回路ブロック図である。
【図5】このシート用酸素供給器でのフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
10 シート用酸素供給器
12 換気ファン
14 ダクト
16 酸素富化膜ユニット
18 真空ポンプ
20 吐出口部材
50 ペルチェ素子ユニット
52 水抜き用カプセル
56 照光部材(Blue−LED)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
換気ファンの作動により空気の通過、流動されるダクトと;このダクト内に収容された、所定複数枚の酸素富化膜モジュールを重ねてなる酸素富化膜ユニットと;酸素富化膜ユニットを介して生成された高濃度酸素を、その吸引によりダクト外に送出する真空ポンプと;真空ポンプによる高濃度酸素の送出路先端に設けられた、高濃度酸素を吐出するための吐出口部材と;を具備してなるシート用酸素供給器であり、
ペルチェ効果の発生されるペルチェ素子ユニットが、上記ダクト内にその発熱部を配置することにより設けられるとともに、このペルチェ素子ユニットの吸熱部が、上記真空ポンプの出力側の上記送出路中に介在されたことを特徴とするシート用酸素供給器。
【請求項2】
前記吐出口部材が、シートベルト、使用者の襟元および胸元の少なくともいずれかに係着可能なクリップを有して形成された請求項1記載のシート用酸素供給器。
【請求項3】
透光性素材からなる水抜き用カプセルが、前記送出路を形成する送出管に対し、その着脱を可能に設けられるとともに、所定の照光部材により発生された照射光を、この水抜き用カプセルに照射可能とした請求項1または2記載のシート用酸素供給器。
【請求項4】
前記照光部材がLEDである請求項3記載のシート用酸素供給器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−204662(P2006−204662A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22503(P2005−22503)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】