説明

シート繰出装置

【課題】帯状シートを円滑に送出することができ、送出中の帯状シートがずり落ち難いシート繰出装置を提供する。
【解決手段】シートロール群RGを回転させることで帯状シートSを連続的に繰り出すシート繰出部10と、シート繰出部10から繰り出された帯状シートSを案内するターンローラ21〜23を備えたシート案内部20と、シート案内部20の下流側に設置された、帯状シートSを挟み込むガイドローラ31及び押圧部材32を有するシートロック部30と、引出装置側における帯状シートSの引出速度と、帯状シートSの繰出速度とがバランスしているか否かを検出するバランス検出部40と、帯状シートSの引出速度と繰出速度とがバランスするように、シートロール群RGの回転数を制御する制御手段とを備え、ターンローラ21は、アルミニウム製の筒状体にゴムチューブを外嵌することで、帯状シートSに対する外周面の静止摩擦係数を大きくしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、長尺の帯状シートが巻回された複数のシートロールから帯状シートを連続的に繰り出すシート繰出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器等に装着されるシュリンクラベル等の筒状のラベルは、多数のラベルが繋がった状態でシート状に折り畳まれた長尺帯状のラベル形成基材を、ラベリング装置において順次切断することで個別のラベルを形成しながら容器等に装着するのが一般的であり、こういった長尺帯状のラベル形成基材のような帯状シートは、通常、ロール状に巻回されたシートロールとして供給されるため、ラベリング装置には、複数のシートロールから帯状シートを円滑かつ連続的に繰り出すことができるように、複数のシートロールを相互に接続した状態で多段に積み重ねたシートロール群から積極的に帯状シートを繰り出すシート繰出装置が並設されている。
【0003】
こういったシート繰出装置としては、例えば、図5及び図6に示すようなものがある。このシート繰出装置50は、図7に示すように、長尺の帯状シートSが巻回された複数のシートロールSRを相互に接続した状態で多段に積み重ねたシートロール群RGを回転可能に装着するシートロール装着台51と、このシートロール装着台51に装着されたシートロール群RGを回転させる駆動モータ52と、先端部が上下方向に揺動するように基端部が軸支された揺動アーム53とを備えており、シートロール群RGから繰り出された帯状シートSは、複数のターンバー54a〜54eを介して順次案内され、揺動アーム53の先端部の上方に固定設置された複数の固定ローラ55と、揺動アーム53の先端部に取り付けられた複数の可動ローラ53aとに交互に掛け渡された状態で、ラベリング装置等の帯状シートの引出装置に導かれている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−67278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したように、シートロール群RGから繰り出された帯状シートSを、複数のターンバー54a〜54eを介して順次案内するシート繰出装置50では、帯状シートSがターンバー54a〜54eの外周面を摺動しながら送出されることになるので、帯状シートSを弛みなく、円滑に送り出すためには、接触する帯状シートSに対する各ターンバー54a〜54eの摩擦抵抗を大きくすることができない。
【0006】
しかしながら、帯状シートSに対する各ターンバー54a〜54eの摩擦抵抗をちいさくすると、送出中の帯状シートSに加わるテンションが、何らかの理由で小さくなった場合、帯状シートSが、ターンバー54a〜54eに沿って、簡単にずり落ちてしまうという問題があった。
【0007】
特に、近年のシュリンクラベルの場合は、装着した容器表面の滑り性を向上させるために、滑り性の良いシュリンクフィルム(シート基材)を使用したり、表面側に滑り性を向上させるニスコート等の処理を施したりしたものが用いられているため、ターンバーからのずり落ちが発生しやすいといった問題がある。
【0008】
そこで、この発明の課題は、帯状シートを円滑に送出することができ、しかも、送出中の帯状シートがずり落ち難いシート繰出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、長尺の帯状シートが巻回された複数のシートロールから帯状シートを連続的に繰り出すことができるように、複数のシートロールを相互に接続した状態で多段に積み重ねたシートロール群を回転可能に装着するシートロール装着台と、前記シートロール装着台に装着された前記シートロール群を回転させる回転駆動手段と、前記シートロール群から繰り出された前記帯状シートを所定の送出経路に案内する複数の案内部とを備えたシート繰出装置において、前記案内部が、外周面に接触している帯状シートのずれ落ちを阻止する表面性状を有するシート保持ローラを備えていることを特徴とするシート繰出装置を提供するものである。
【0010】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明のシート繰出装置において、前記シート保持ローラにおける外周面の帯状シートに対する静止摩擦係数を1.0以上に設定したのである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、請求項1にかかる発明のシート繰出装置では、案内部が、外周面に接触している帯状シートのずれ落ちを阻止する表面性状を有するシート保持ローラを備えているので、このシート保持ローラ部分では、帯状シートが円滑に送出されると共に、そのずり落ちが防止される。
【0012】
これによって、帯状シートを円滑に送出するために、案内部に設置されているターンバーの表面の摩擦抵抗を小さくすることが可能となり、ターンバーに代えて、帯状シートの送出抵抗が極めて小さいガイドローラ等を設置することも可能になる。
【0013】
特に、請求項2にかかる発明のシート繰出装置は、シート保持ローラにおける外周面の帯状シートに対する静止摩擦係数が1.0以上に設定されているので、低テンション状態で運転しても、シート保持ローラ部分において帯状シートがずり落ちることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1〜図3に示すように、このシート繰出装置1は、長尺の帯状シートSが巻回された複数のシートロールSRを多段に積み重ねたシートロール群RGを回転させることによって、各シートロールSRから帯状シートSを繰り出すシート繰出部10と、このシート繰出部10から繰り出された帯状シートSを所定の送出経路に沿って案内するシート案内部20と、シート繰出部10から繰り出され、シート案内部20を介して送出された帯状シートSを必要に応じて挟持することでロックするシートロック部30と、シート繰出装置1から繰り出された帯状シートSを使用するラベリング装置等の引出装置側における帯状シートSの引出速度と、シート繰出装置1における帯状シートSの繰出速度とがバランスしているか否かを検出するバランス検出部40とを備えている。
【0015】
前記シートロール群RGを構成しているシートロールSRは、図7に示すように、相互に回転しないように、周り止めされた状態で多段に積み重ねることができるリールRにそれぞれ装着されており、各シートロールSRは、上段のシートロールSRにおける帯状シートSの巻始部分を隣接する下段のシートロールSRにおける帯状シートSの巻終部分に接続するといった具合に、順次接続されており、多段に積み重ねられた複数のシートロールSR間にわたって、その繰り出し高さ位置を変化させながら、帯状シートSを連続的に繰り出すことができるようになっている。
【0016】
前記シート繰出部10は、シートロール群RGを回転可能に装着するシートロール装着台11と、このシートロール装着台11に装着されたシートロール群RGを回転させる駆動モータ12とから構成されており、駆動モータ12には、その回転数を変化させることができるように、インバータが付設されている。なお、シートロール装着台11には、フロア上を水平移動させるためのキャスタ13が取り付けられている。
【0017】
前記シート案内部20は、シート繰出部10から繰り出された帯状シートSを方向転換させる、帯状シートSの送り方向に回転自在な(自由に回転する)3本のターンローラ21、22、23を備えており、シート繰出部10によってシートロール群RGから繰り出された帯状シートSは、3本のターンローラ21〜23によって順次方向転換しながら、所定の送出経路に沿ってシートロック部30まで案内されるようになっている。
【0018】
図4(a)、(b)に示すように、ターンローラ22、23は単なるアルミニウム製の筒状体22a、23aによって形成されているが、ターンローラ21は、ターンローラ22、23と同様のアルミニウム製の筒状体21aにエチレンプロピレンゴムによって形成されたゴムチューブ21bが外嵌されており、帯状シートSに接触するターンローラ21の外表面は、接触する帯状シートSに対する静止摩擦係数が1.62に設定されている。
【0019】
前記シートロック部30は、シート繰出部10からシート案内部20を介して繰り出された帯状シートSが掛けられるガイドローラ31と、このガイドローラ31に掛けられた帯状シートS部分において、ガイドローラ31に対して接近離反する押圧部材32とを備えており、このシート繰出装置1から繰り出された帯状シートSを使用するラベリング装置等の引出装置側における帯状シートSの引出動作が停止されると、押圧部材32が帯状シートSをガイドローラ31に押し付けて帯状シートSの送出を停止させるようになっている。
【0020】
前記バランス検出部40は、先端部が上下方向に揺動するように基端部が軸支された揺動アーム41と、揺動アーム41の先端部に取り付けられた2個の可動ローラ42と、揺動アーム41の先端部の上方に固定設置された2個の固定ローラ44とを備えており、シートロック部30から送出された帯状シートSは、2個の可動ローラ42及び2個の固定ローラ44に交互に掛け渡された状態で、下流側に設置されるラベリング装置等の引出装置に送出されるようになっている。
【0021】
従って、引出装置側における帯状シートSの引出速度がシート繰出装置1における帯状シートSの繰出速度より大きい場合は、揺動アーム41の先端部が上昇し、引出装置側における帯状シートSの引出速度がシート繰出装置1における帯状シートSの繰出速度より小さい場合は、揺動アーム41の先端部が降下するので、揺動アーム41が揺動するか否かによって、引出装置側における帯状シートSの引出速度と、シート繰出装置1における帯状シートSの繰出速度とがバランスしているか否かを検出することができる。
【0022】
前記揺動アーム41の回動軸には、揺動アーム41の角度を検出するポテンションメータ43が取り付けられており、このポテンションメータ43によって検出された揺動アーム41の角度信号が図示しない制御手段に入力され、この制御手段によって、揺動アーム41が所定の角度に保持されるように、駆動モータ12の回転数がフィードバック制御されるようになっている。これによって、各シートロールSRの径変化に影響を受けることなく、下流側に設置されるラベリング装置等の引出装置側における帯状シートSの引出速度とシートロール群RGからの帯状シートSの繰出速度とがバランスし、引出装置がシートロール群RGから帯状シートSを円滑に引き出すことができるようになっている。
【0023】
以上のように、このシート繰出装置1では、シート案内部20が3本のターンローラ21、22、23によって構成されているので、シート案内部20における帯状シートSの送出抵抗が極端に小さく、しかも、シート繰出部10から繰り出された帯状シートSを最初に案内する1本目のターンローラ21は、その外周面の帯状シートSの表面との静止摩擦係数が1.78に設定されているので、帯状シートSのターンローラ21の外周面に対する下方向への摩擦抵抗が大きくなる。
【0024】
従って、このシート繰出装置1では、シート案内部を複数本のターンバーによって構成し、帯状シートの円滑な送出及び帯状シートのずり落ち防止の双方を実現するために、帯状シートが摺動するターンバーの外周面の摩擦抵抗が適度な大きさに設定されている従来のシート繰出装置に比べて、シート繰出部10から繰り出された帯状シートSの送出がより円滑に行われると共に、シート案内部20を通過する帯状シートSのテンションがある程度低下しても、帯状シートSがさらにずり落ち難くなる。
【0025】
以下、表1に示す、シート基材や表面処理材の異なる3種類の帯状シートと、表2に示す、表面素材の異なる3種類のターンローラやターンバーとをそれぞれ組み合わせ、表3に示すように、それぞれの組み合わせに対して、帯状シートにずり落ちが発生するか否かについて検証した。なお、表3に示す、帯状シートとターンローラやターンバーとの間の静止摩擦係数については、JIS K 7125「プラスチック−フィルム及びシート−摩擦係数試験方法」に準拠した試験方法に基づいて導出した。具体的には、1.96N(≒200g)の重量になるように調整されたサンプル片に帯状シートを貼り合わせ、このサンプル片を紐につなぎ、紐の片端をオートグラフ(AG−5000E:(株)島津製作所製)の上部のチャックに固定する。そして、ターンローラやターンバーの表面素材と同様の素材によって形成された、200mm×80mmのプレートを台上に固定設置し、このプレート上に帯状シートを貼り合わせたサンプル片を載置し、100mm/minでサンプル片を引っ張り、サンプル片の移動開始時点に検出された静止摩擦力と法線力(=1.96N)とに基づいて、静止摩擦係数を算出した。ただし、ターンローラやターンバーの周方向と帯状シートのずり落ち方向とで、表面の滑り性が異なる場合は、帯状シートのずり落ち方向に相当する方向がサンプル片の引っ張り方向と一致するように、縦横の向きを考慮して、プレートを配置する必要がある。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
なお、上述した実施形態では、帯状シートSを所定の高さ位置に保持するシート保持ローラとして機能する1本目のターンローラ21を、アルミニウム製の筒状体21aにエチレンプロピレンゴムによって形成されたゴムチューブ21bを外嵌することによって、帯状シートSに対する外周面の静止摩擦係数を1.62に設定しているが、これに限定されるものではなく、表3からも分かるように、種々の素材によって外周面を形成することにより、帯状シートに対する外周面の静止摩擦係数を1.0以上、より好ましくは、1.2以上に設定しておけばよい。
【0030】
また、シート保持ローラは、ゴム質のような摩擦係数の大きな材質に限られず、例えば、ローラの表面に帯状シートのずり落ちを阻止する形状の小突起が多数形成されたものであってもよい。
【0031】
また、上述した実施形態では、1本目のターンローラ21が、シート保持ローラとして機能するように、帯状シートSに対する外周面の静止摩擦係数を大きくしているが、これに限定されるものではなく、1本目のターンローラ21に代えて、その他のターンローラ22、23のいずれか一方について、帯状シートSに対する外周面の静止摩擦係数を大きくすることも可能である。
【0032】
また、上述した実施形態では、1本のターンローラ21だけがシート保持ローラとして機能するように、帯状シートSに対するターンローラ21の外周面の静止摩擦係数を大きくしているが、その他のターンローラ22、23のいずれか一方または双方についても、ターンローラ21と同様に、シート保持ローラとして機能するように、帯状シートSに対する外周面の静止摩擦係数を大きくしておくことが望ましい。
【0033】
また、上述した実施形態では、3本のターンローラ21〜23によってシート案内部20を構成しているが、これに限定されるものではなく、外周面の静止摩擦係数が大きいターンローラを少なくとも1本使用するのであれば、その他のターンローラの一部または全てを、帯状シートが外周面を摺動するターンバーに置き換えることも可能である。ただし、その場合は、ターンバーの外周面の動摩擦係数をできるだけ小さくしておくことが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明にかかるシート繰出装置の一実施形態を示す平面図である。
【図2】同上のシート繰出装置を示す側面図である。
【図3】同上のシート繰出装置における天板部分を取り外した状態を示す平面図である。
【図4】(a)、(b)は同上のシート繰出装置におけるシート案内部を構成しているターンローラを示す断面図である。
【図5】従来のシート繰出装置を示す平面図である。
【図6】同上のシート繰出装置を示す側面図である。
【図7】シート繰出装置に装着されるシートロール群を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 シート繰出装置
10 シート繰出部
11 シートロール装着台
12 駆動モータ
20 シート案内部
21 ターンローラ(シート保持ローラ)
21a 筒状体
21b ゴムチューブ
22、23 ターンローラ
30 シートロック部
31 ガイドローラ
32 押圧部材
40 バランス検出部
41 揺動アーム
42 可動ローラ
43 ポテンションメータ
44 固定ローラ
S 帯状シート
SR シートロール
RG シートロール群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の帯状シートが巻回された複数のシートロールから帯状シートを連続的に繰り出すことができるように、複数のシートロールを相互に接続した状態で多段に積み重ねたシートロール群を回転可能に装着するシートロール装着台と、
前記シートロール装着台に装着された前記シートロール群を回転させる回転駆動手段と、
前記シートロール群から繰り出された前記帯状シートを所定の送出経路に案内する複数の案内部と
を備えたシート繰出装置において、
前記案内部が、外周面に接触している帯状シートのずれ落ちを阻止する表面性状を有するシート保持ローラを備えていることを特徴とするシート繰出装置。
【請求項2】
前記シート保持ローラは、その外周面に対する帯状シートの静止摩擦係数が1.0以上に設定されている請求項1に記載のシート繰出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−273440(P2006−273440A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90584(P2005−90584)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】