説明

シート貼付方法およびシート貼付治具

【課題】シートを容易に被着体に貼り付けることができるシート貼付方法およびシート貼付治具を提供すること。
【解決手段】被着体の被着面に、基材23と粘着層22とを有し被着面と略同じ形状に形成された保護シート2を貼り付けるシート貼付方法であって、保護シート2は、当該保護シート2の対称軸位置で折り曲げ可能なシート貼付治具1の第一の面17に貼り付けられ、貼付治具1を保護シート2と共に第一の面17とは反対側の第二の面18を内側にして折り曲げる手順と、貼付治具1が折り曲げられた状態で保護シート2を貼付治具1の折曲部分まで剥がし、粘着層22の一部を露出させる手順と、露出した粘着層22を被着面に押し当てて保護シート2の一部を貼り付ける手順と、被着面に沿って貼付治具1を移動させ、粘着層22の残部を露出させると共に被着面に押し当てて保護シート2の残部を貼り着ける手順と、を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート貼付方法およびシート貼付治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物品を搬送する際には、物品の表面に保護シート等の接着シートが貼付されている。これは、傷や汚れが物品に付くことを防止したりするためである。
例えば、自動車等を輸送する際には、自動車等のホイールの表面に保護シートが貼り付けられている。これは、ホイール表面に傷や汚れが付くことを防止したり、ホイール内部のディスクブレーキに錆が発生することを防止したりするためである。
【0003】
保護シートとしては、例えば、特許文献1にカバー部材として記載されている。
特許文献1に記載されているカバー部材は、ポリエチレン等の遮水フィルムで形成され、接着剤層を有する。カバー部材は、接着剤層を介して数百枚積層された状態で自動車組立ラインに供給される。このようにカバー部材が複数枚積層された形態を積層タイプと称する場合がある。
自動車組立ラインの作業者は、積層されたカバー部材から一枚ずつ剥がして、ホイールに貼り付ける。
【0004】
その他、積層タイプの保護シートに対して図20に示すような貼付治具100が用いられている。貼付治具100は、保護シート200と略同じ長さの直径の円形に形成されており、この貼付治具100には、複数枚の保護シート200が積層されている。
図20に示すような積層タイプの保護シート200の場合、作業者は、次のような手順で貼り付ける。まず、貼付治具100上に積層された保護シート200の内、表層側の保護シート200の半分を剥がして粘着層201を露出させる。次に、貼付治具100を持ちながら露出させた粘着層201をホイールに対して位置決めをして貼り付ける。その後、貼付治具100をホイールの貼付面に沿って移動させることで粘着層201の残部を露出させ、保護シート200をホイールに対して貼り付ける。保護シート200を半分剥がしてからホイールに貼り付けるこのような手順を行うと、位置決め作業が容易になる。そのため、このような手順が従来から実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3879985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような貼付治具に積層された保護シートの半分を剥がす手順は、剥がし具合を目視で確認しながら行う。習熟していない作業者にとっては、所定位置まで保護シートを剥がすという作業が難しく、剥がし不足や剥がし過ぎが生じたり、保護シートのような接着シートは幅が広く剛性がないので、折れて接着剤層の面同士が接着してしまったり、当該接着剤層の面が他のものに接着してしまったりして貼付作業に時間が掛かりすぎてしまったりする。
また、ホイールの表面に保護シートを貼り付ける場合に限らず、その他の被着体にシートを貼り付ける際にも、シートを所定位置まで剥がす作業が難しいという問題がある。
このような問題から、従来のような治具や方法では、シートを剥がす作業に慣れていない作業者は、シートを所定位置まで剥がす作業に時間が掛かってしまう。また、シートを所定位置まで剥がすことができないと、前述のような自動車組立ラインにおいては、ホイールに対する位置決めが難しくなるので、貼付作業に時間が掛かってしまうこともある。その結果、自動車製造ラインの作業者の習熟度が低い場合、ホイールへのシート貼付作業のタクトタイムが伸び、製造効率の低下を招くおそれがある。
そのため、被着体への貼付作業を容易に実施できる方法や貼付治具が要望されている。
【0007】
本発明の目的は、シートを容易に被着体に貼り付けることができるシート貼付方法およびシート貼付治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシート貼付方法は、
被着体の被着面に対して、基材と前記基材の一方の面に形成された粘着層とを有し前記被着面と略同じ形状に形成されたシートを貼り付けるシート貼付方法であって、
前記シートは、当該シートの対称軸位置で折り曲げることが可能な貼付治具の第一の面に前記粘着層を介して貼り付けられており、
前記貼付治具を前記シートと共に前記貼付治具の前記第一の面とは反対側の第二の面を内側にして折り曲げる手順と、
前記貼付治具が折り曲げられた状態で前記シートを前記貼付治具の折り曲げられた部分まで剥がし、前記粘着層の一部を露出させる手順と、
露出した前記粘着層の一部を前記被着面に押し当てて、前記シートの一部を前記被着体に貼り付ける手順と、
前記シートの前記粘着層の残部を露出させると共に前記被着面に押し当てて、前記シートの残部を前記被着体に貼り着ける手順と、を実施する
ことを特徴とする。
【0009】
本発明のシート貼付方法において、
前記シートを前記貼付治具の折り曲げられた部分まで剥がし、前記粘着層の一部を露出させる手順の後、
前記粘着層の一部を露出させたままで、前記シートを前記貼付治具の折曲方向へ折り返す手順と、
前記粘着層の一部が露出され、かつ前記シートが折り返されたままで、折り曲げられていた前記貼付治具を前記貼付治具の折曲方向とは反対方向に折り戻す手順と、を実施する
ことが好ましい。
【0010】
本発明のシート貼付方法において、
前記シートを前記貼付治具の折り曲げられた部分まで剥がし、前記粘着層の一部を露出させる手順の後、
前記粘着層の一部を露出させたままで、前記シートを前記貼付治具の折曲方向へ折り返す手順、を実施する
ことが好ましい。
【0011】
本発明のシート貼付方法において、
前記シートの残部を前記被着体に貼り着ける手順を実施する際に、前記被着面に沿って前記貼付治具を移動させて前記シートの前記粘着層の残部を露出させる
ことが好ましい。
【0012】
本発明のシート貼付方法において、
前記貼付治具、前記シートおよび前記粘着層は、光透過性の材質で形成されている
ことが好ましい。
【0013】
本発明のシート貼付方法において、
前記被着体の前記被着面は、略円形であり、
前記シートは、前記被着面と略同じ長さの直径を有する略円形状に形成され、
前記貼付治具は、前記シートの直径位置で折り曲げ可能に形成されている
ことが好ましい。
【0014】
本発明のシート貼付治具は、
被着体の被着面に対して、基材と前記基材の一方の面に形成された粘着層とを有し前記被着面と略同じ形状に形成されたシートを貼り付ける際に用いられるシート貼付治具であって、
前記シートの対称軸のシート面内における長さと略同じ長さの第一の辺を有する第一の本体部と、当該対称軸のシート面内における長さと略同じ長さの第二の辺を有する第二の本体部と、前記第一の本体部と前記第二の本体部とを前記第一の辺および前記第二の辺で連結する連結部と、を備え、
前記連結部で折り曲げることが可能に形成されている
ことを特徴とする。
【0015】
本発明のシート貼付治具において、
前記連結部は、前記第一の本体部および前記第二の本体部の表面に貼り付けられて前記第一の本体部および前記第二の本体部を連結する連結シートであり、
前記シートは、前記連結シートに貼り付けられ、
前記連結シートと前記第一の本体部および前記第二の本体部の表面との接着力が、前記シートと前記連結シートとの接着力よりも大きい
ことが好ましい。
【0016】
本発明のシート貼付治具において、
前記被着体の前記被着面は、略円形であり、
前記シートは、前記被着面と略同じ長さの直径を有する略円形状に形成され、
前記貼付治具は、前記シートの直径と略同じ長さの第一の弦部を有する略半円形の第一の本体部と、当該直径と略同じ長さの第二の弦部を有する略半円形の第二の本体部とを備え、
前記連結部は、前記第一の弦部および前記第二の弦部で、前記第一の本体部と前記第二の本体部とを連結する
ことが好ましい。
【0017】
本発明のシート貼付治具において、
前記被着体は、自動車用のホイールである。
ことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシート貼付方法によれば、貼付治具がシートの対称軸位置で折り曲げ可能に形成され、この貼付治具の第一の面にシートが貼り付けられている。
シートの粘着面を露出させる際には、貼付治具を折り曲げる手順を経て、シートを折り曲げられた部分まで剥がす。このとき、シートは、折り曲げられた部分でそれ以上剥がれないように規制されるので、その対称軸位置まで剥がされた状態で剥離が止まり、シートが半分剥がされた状態となる。そのため、作業者の習熟度合いによらず、シートを半分まで剥がす作業が容易になり、被着体への貼付作業も容易になる。
【0019】
本発明のシート貼付治具によれば、シートの対称軸と略同じ長さの第一の辺を有する第一の本体部と、当該対称軸と略同じ長さの第二の辺を有する第二の本体部とが、当該辺において連結部で折曲可能に連結されているので、上述の本発明のシート貼付方法を実施できる。そのため、作業者の習熟度合いによらず、シートを半分まで剥がす作業が容易になり、被着体への貼付作業も容易になる。
また、複数枚の保護シートが粘着層を介して積層されている場合には、各保護シートを被着体に対して貼り付けるごとに、貼付治具を折り曲げる手順を実施する。本発明のように連結部が形成されていることで、毎回、同じ位置で貼付治具を半分に折り曲げることができる。その結果、積層された保護シートのいずれも半分まで安定して剥がすことができるようになり、貼付作業が安定する。
【0020】
本発明において、略同じ形状、略同じ長さまたは略同じ大きさという場合は、厳密に同じ形状、同じ長さまたは同じ大きさでなくても良いことを意味する。例えば、貼り付けた後に被着体よりもシートが若干はみ出しても、はみ出した部分をきっかけにして被着体から剥離し易くならなければ、大きさが異なっても良い。
また、本発明において貼付治具としては、板状、フィルム状、シート状などであって、こしのある素材で形成されていれば貼付治具に含まれる。
【0021】
また、本発明のシート貼付方法において、シートを折り曲げられた部分まで剥がし、シートの粘着層の一部を露出させた手順の後、さらに次の手順を実施する。粘着層の一部を露出させたままで、シートを貼付治具の折曲方向へ折り返す手順と、粘着層の一部が露出され、かつシートが折り返されたままで、折り曲げられていた貼付治具を貼付治具の折曲方向とは反対方向に折り戻す手順である。
シートの剥がされた部分だけを掴む場合、シート自体が、こしの弱い素材で形成されていると安定して掴むことができないし、位置決めや貼付作業を行い難い。
一方で、上述のように、シートを貼付治具の折曲方向へ折り返す手順と、粘着層を露出させ、かつシートを折り返したままの状態で貼付治具を折り戻す手順とを実施することで、シートの剥がされた部分を貼付治具と共に掴むことができるようになる。そうすると、掴む部分の厚みが増し、また、貼付治具が保護シートの半分剥がされた部分を保持する当て板の役割も果たすので、シートを安定して掴むことができる。それゆえ、シートの被着体に対する位置決めや貼付作業が容易になる。
【0022】
また、本発明のシート貼付方法において、シートを折り曲げられた部分まで剥がし、シートの粘着層の一部を露出させた手順の後、粘着層の一部を露出させたままで、シートを貼付治具の折曲方向へ折り返す手順を実施する。その後、露出した前記粘着層の一部を前記被着面に押し当てて、前記シートの一部を前記被着体に貼り付ける手順を実施する。つまり、上述のようなシートが折り返されたままで、折り曲げられていた貼付治具を貼付治具の折曲方向とは反対方向に折り戻す手順を実施せずに、貼り付けを実施する。
このようなシート貼付方法でも、シートを安定して掴むことができる。それゆえ、シートの被着体に対する位置決めや貼付作業が容易になる。
【0023】
また、本発明のシート貼付方法において、シートの残部を被着体に貼り着ける手順を実施する際に、被着面に沿って貼付治具を移動させてシートの粘着層の残部を露出させるので、シートの残部を露出させながら被着面に貼り付ける作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0024】
また、本発明のシート貼付方法において、貼付治具、シートおよび粘着層が光透過性の材質で形成されている場合、これらを透かして被着体の形状や位置を確認しながらシートを貼り付けることができるので、被着体に対する位置決め作業が容易になる。
【0025】
また、本発明のシート貼付方法において、被着体の被着面は、略円形であり、シートも同形状の略円形であって被着面と略同じ長さの直径に形成されている。さらに、貼付治具は、シートの当該直径位置で折り曲げ可能に形成されている。
そのため、シートを略半円形に剥がす作業が容易になるとともに、露出した粘着層の略半円形の円弧の部分を、被着面の略円形の外周部分に合わせるようにして位置決めすることが容易になる。それゆえ、シートの被着体に対する位置決めや貼付作業が容易になる。
なお、本発明において、被着体、シートおよび貼付治具について略円形という場合には、厳密な円形である場合に限られない。
【0026】
また、本発明のシート貼付治具において、第一の本体部および第二の本体部が連結シートで連結されている場合、この連結シートによって貼付治具の折り曲げが可能である。
また、連結シートと第一の本体部および第二の本体部の表面との接着力が、シートと連結シートとの接着力よりも大きい場合には、連結シートに貼り付けられていたシートを剥がす際に、連結シートとシートとが一緒になって貼付治具から剥がされることを防止することができる。
【0027】
さらに、本発明のシート貼付治具において、被着体の被着面は、略円形であり、シートも同形状の略円形であって被着面と略同じ長さの直径に形成されている。さらに、貼付治具は、シートの直径と略同じ長さの弦部を有する略半円形の第一の本体部および第二の本体部と、これら本体部を弦部で連結する連結部と、を備える。そのため、貼付治具もシートと略同じ大きさの円形となるので、貼付治具とシートの外周位置を合わせて貼り合わせれば、より確実にシートの直径位置で折り曲げられることができ、シートを半円形に剥がす作業が容易になる。
【0028】
また、本発明のシート貼付治具が、被着体として自動車用のホイールに対して用いられる場合、上述のように、本発明のシート貼付治具によれば、シートを半分まで剥がす作業が容易になるので、シートをホイールに貼り付ける作業に迅速に取り掛かることができる。
さらに、本発明のシート貼付治具によれば、略半円形に粘着層を露出させることが容易である。そのため、粘着層の略半円形の円弧部分とホイールの外周部分とを合わせることで位置決めされるので、位置決め作業が容易になる。
よって、自動車製造ラインにおいて、ホイールへシートを貼り付ける作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第一実施形態に係るシート貼付治具を示す斜視図。
【図2】前記シート貼付治具にシートを複数枚積層させた状態を示す斜視図。
【図3】前記シート貼付治具にシートを複数枚積層させた状態を示す断面図。
【図4】本発明の第一実施形態に係るシート貼付方法の第一の手順を実施した状態を示す断面図。
【図5】前記シート貼付方法の第二の手順を実施した状態を示す断面図。
【図6】前記シート貼付方法の第三の手順を実施した状態を示す断面図。
【図7】前記シート貼付方法の第四の手順を示す断面図。
【図8】前記シートを被着体に貼り終えた状態を示す断面図。
【図9】本発明の第二実施形態に係るシート貼付方法の第三の手順を示す断面図。
【図10】前記第二実施形態に係る前記シート貼付方法の第四の手順を示す断面図。
【図11】前記第二実施形態に係る前記シート貼付方法の第四の手順を実施した状態を示す断面図。
【図12】前記第二実施形態に係る前記シート貼付方法の第五の手順を実施した状態を示す断面図。
【図13】前記第二実施形態に係る前記シート貼付方法の第六の手順を示す断面図。
【図14】本発明の第三実施形態に係るシート貼付方法の第四の手順を示す断面図。
【図15】前記第三実施形態に係る前記シート貼付方法の第五の手順を実施した状態を示す断面図。
【図16】本発明の第四実施形態に係るシート貼付治具にシートが積層された状態を示す断面図。
【図17】本発明の第五実施形態に係るシート貼付治具にシートが積層された状態を示す断面図。
【図18】本発明の実施形態の変形に係るシート貼付治具を示す斜視図。
【図19】本発明の実施形態の別の変形に係るシート貼付治具を示す斜視図。
【図20】従来技術に係るシート貼付治具に保護シートが積層された状態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
<第一実施形態>
第一実施形態では、被着体が、略円形である自動車のホイールの場合を例に挙げて説明する。
図1には、第一実施形態に係るシート貼付治具1が示されている。図2には、このシート貼付治具1に複数枚の保護シート2(本発明のシート)が積層された状態が示されている。図3には、シート貼付治具1に保護シート2が積層された状態の断面図が示されている。第一実施形態に係るシート貼付治具1は、自動車のホイールの表面(本発明の被着面)に保護シート2を貼り付ける際に用いられる治具である。
【0031】
(保護シート)
保護シート2は、図3に示すように、基材23と、この基材23の一方の面に形成されている粘着層22とを有する。保護シート2は、ホイールの直径と略同じ長さの直径を有する略円形に形成されている。複数枚の保護シート2は、図2や図3に示すように、粘着層22を介して積層された状態でシート貼付治具1に貼り付けられている。
保護シート2は、ホイール表面を覆うことができる。
保護シート2は、図2に示すように、つまみ部21を有する。作業者は、つまみ部21をつまみながら保護シート2をシート貼付治具1から剥がすことができる。
【0032】
基材23の材質は、ホイール表面に傷や汚れが付くことを防止できる材質や、若しくはホイール内部のディスクブレーキに錆が発生することを防止できる材質であれば特に限定されない。基材23としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド等の合成樹脂フィルム、不織布等のシート材料、アルミ箔のような金属フィルム等を用いることができる。基材23は、光透過性の材質で形成されていることが好ましい。光透過性の材質で形成されていれば、基材23を通してホイールの位置を確認しながら位置決め作業を行うことができる。基材23の厚さ寸法は、特に限定されるものではなく、要求される性能に合わせて適宜選択すればよいが、例えば、10μm以上200μm以下が好ましく、特に20μm以上100μm以下が好ましい。このような厚さ寸法範囲の保護シート2は、破れにくいので被着体の保護性能が向上し、厚すぎないので被着体の形状にも追従しやすく、コストも低減できる。第一実施形態における保護シート2の基材23としては、50μmのポリエチレンを用いる。
【0033】
粘着層22の材質は、ホイール表面に貼付可能な材質であれば特に限定されない。粘着層22としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、ゴム系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリウレタン系、エチレン酢酸ビニル(Ethylene-Vinylacetate,EVA)系等の粘着剤を用いて形成することができる。中でも、アクリル系粘着剤は、粘着力の点で優れているので、好ましい。粘着層22は、基材23と同様にして、光透過性の材質で形成されていることが好ましい。光透過性の材質で形成されていれば、基材23および粘着層22を通してホイールの位置を確認しながら貼付作業を行うことができる。
粘着層22の厚さ寸法は、特に限定されないが、粘着性能とコストとのバランスの観点から、例えば、2μm以上100μm以下が好ましく、特に3μm以上50μm以下が好ましい。第一実施形態における粘着層22は、15μmのアクリル系の粘着剤を用いて形成されている。
保護シート2の厚さ寸法は特に限定されないが、12μm以上300μm以下が好ましい。
【0034】
(シート貼付治具)
シート貼付治具1は、図2および図3に示すように、保護シート2と略同じ大きさの略円形に形成されている。シート貼付治具1は、保護シート2を保持すると共に、貼り付け時の治具となり、保護シート2の対称軸位置で折り曲げることができる。本実施形態では、保護シート2が略円形なので、当該対称軸位置は、保護シート2の直径位置に相当し、シート貼付治具1は、保護シート2の直径位置で折り曲げることができることになる。なお、直径位置とは、厳密な直径の位置である必要は無く、円形の保護シート2を略半分に折り曲げられるような位置であればよい。
シート貼付治具1は、第一の本体部11と、第二の本体部12と、第一の本体部11および第二の本体部12を連結する連結部13と、つまみ部14とを備える。以下、第一の本体部11および第二の本体部12をまとめて説明する場合は、本体部11,12と表記する場合がある。
複数枚の保護シート2が、シート貼付治具1の第一の面17に積層される。このとき、図2および図3に示すように、つまみ部21とつまみ部14とが同じ位置に揃えられている。
第一の本体部11は、保護シート2の直径と略同じ長さの第一の弦部15を有し、第二の本体部12は、保護シート2の直径と略同じ長さの第二の弦部16を有し、どちらも略半円形の板状に形成されている。第一の本体部11と第二の本体部12とは、第二の本体部12につまみ部14が形成されている点を除いて同じ形状である。以下、第一の弦部15および第二の弦部16をまとめて説明する場合は、弦部15,16と表記する場合がある。
【0035】
連結部13は、本体部11,12を連結する部分で折り曲げることができるように形成されている。シート貼付治具1は、第一の面17とは反対側の第二の面18を内側にして折り曲げ可能である。
連結部13は、略半円形の本体部11,12同士を、弦部15,16で連結する。シート貼付治具1全体として見た場合には、連結部13は、図1に示すように、円形の直径の位置に形成されている。また、連結部13で折り曲げると、シート貼付治具1は、直径位置で折曲り、本体部11,12同士が重なって半円形になる。
連結部13は、シート貼付治具1を少なくとも一方側に折り曲げ可能に形成されていればよく、両側に折り曲げ可能に形成されていてもよい。保護シート2は、連結部13が両側に折り曲げ可能な場合には、シート貼付治具1のどちらか一方の面に積層され、一方側にのみ折り曲げ可能な場合、折り曲げた際に外側となる面に積層される。
シート貼付治具1を折り曲げる角度としては、第一の本体部11と第二の本体部12とが成す角度を90度以下とするのが好ましい。角度が小さいほど、保護シート2を直径位置まで剥がす作業が容易になる。
【0036】
本体部11,12は、保護シート2を保持する当て板として必要なこしを有する材質および厚さ寸法であれば特に限定されない。本体部11,12の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド等の合成樹脂フィルムや、上質紙、コート紙、クラフト紙、グラシン紙等の紙材、不織布等のシート材料、アルミニウム等の金属板などを用いることができる。本体部11,12は、基材23および粘着層22と同様にして、光透過性の材質で形成されていることが好ましい。光透過性の材質で形成されていれば、本体部11,12、基材23および粘着層22を通してホイールの位置を確認しながら貼付作業を行うことができる。
本体部11,12の厚さ寸法は、特に限定されるものではなく、要求される性能に合わせて適宜選択すればよいが、例えば、50μm以上100mm以下が好ましく、特に75μm以上150μm以下が好ましい。第一実施形態における本体部11,12は、1mmのポリプロピレン板を用いる。
【0037】
連結部13の材質は、本体部11,12同士を連結するとともに、繰り返して折り曲げることが可能であれば、特に限定されない。連結部13としては、例えば、粘着テープ、粘着シート、蝶番が挙げられる。粘着テープや粘着シートとしては、基材の一方の面に粘着剤層を積層した構成のテープやシートなどを用いることができる。当該基材としては、基材23で例示した紙、布、合成樹脂等の材質のものを用いることができる。当該粘着剤層としては、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、ウレタン系、スチレン系、シリコーン系、ポリエステル系などの粘着剤を挙げることができる。第一実施形態では、本体部11,12を粘着テープで連結する。
連結部13の幅寸法は、折り曲げた際に、本体部11と本体部12とを重ね合わせることができる程度の大きさであることが好ましい。連結部13の幅寸法が大きくなりすぎると、折曲位置がシート貼付治具1の直径位置とずれるので、保護シート2を半分まで剥がす作業が難しくなる。
【0038】
(シート貼付方法)
次に、図面を参照して、本発明の第一実施形態に係る保護シート2の貼付方法を説明する。
図4〜8には、保護シート2の貼付方法の手順を概説する断面図が示されている。
【0039】
上述した図3は、保護シート2の貼付方法を実施する前のシート貼付治具1に積層された保護シート2の状態を説明する断面図でもある。図3には、シート貼付治具1に5枚の保護シート2が積層された状態(積層体)が断面図として図示されているが、保護シート2の積層枚数は、このような枚数に限定されない。すなわち、シート貼付治具1と保護シート2とが一緒に折曲可能な枚数であればよい。例えば、第一実施形態のように、保護シート2が、50μmのポリエチレンであって15μmの粘着層22を有する場合には、約20枚から30枚までの枚数の保護シート2が積層されている。
【0040】
・第一の手順
図4は、シート貼付治具1を図3の矢印D3方向へ折り曲げる第一の手順を実施した状態を示す断面図である。
第一の手順では、保護シート2が積層された第一の面17とは反対側の第二の面18を内側にして、シート貼付治具1を半分に折り曲げる(図3に示す矢印D3方向参照)。図4に示すように、シート貼付治具1は、連結部13で折り曲げられ、積層された保護シート2もそれぞれ、連結部13の位置(折曲位置P)で折り曲げられている。
【0041】
・第二の手順
図5は、保護シート2を半分剥がす第二の手順を実施した状態を示す断面図である。
第二の手順では、保護シート2のつまみ部21を持って図4の矢印D4方向へ引っ張りながら、積層体の表層側の保護シート2を折曲位置Pまで剥がす。このとき、保護シート2は、シート貼付治具1とともに折曲位置Pで折り曲げられているので、保護シート2を引っ張りながら剥がすと、折曲位置Pで剥離が規制される。これは、折曲位置Pを過ぎると、第二の手順での保護シート2の引張方向が、保護シート2の残部を剥がすための方向と異なるからである。よって、図5に示すように、第二の手順によって、保護シート2の半分が剥がされ、粘着層22の一部が略半円形に露出した状態となる。
【0042】
・第三の手順
図6は、粘着層22を自動車タイヤ3のホイール4へ貼り付ける第三の手順を実施した状態を示す断面図である。
第三の手順では、まず、シート貼付治具1のつまみ部14側と、保護シート2のつまみ部21側とを掴む。
シート貼付治具1や保護シート2を掴んだ後、略半円形に露出した粘着層22をホイール表面4Aの外周部分に合うように位置決めし、粘着層22をホイール表面4Aに押し当てることで、保護シート2の略半分を貼り付ける。シート貼付治具1、保護シート2、粘着層22が光透過性の材質で形成されていれば、シート貼付治具1、保護シート2、粘着層22を透かしてホイール4の形状や位置を確認しながら保護シート2をホイール4に貼り付けることができる。
【0043】
・第四の手順
図7は、保護シート2の残部をホイール4へ貼り付ける第四の手順を示す断面図である。
第四の手順では、シート貼付治具1のつまみ部14側を掴んだまま、ホイール表面4Aに沿って、図6に示す矢印D6方向へ移動させる。その後、連結部13側を図7に示す矢印D7方向へ起こすようにして移動させる。そうすると、保護シート2の残部が積層体から剥がされ、粘着層22の残部も露出する。露出した粘着層22の残部をホイール表面4Aへ押し当てることで、保護シート2の残部が貼り付けられる。
図8は、保護シート2全体をホイール4へ貼り終えた状態を示す断面図である。
ここで、前記第三の手順において、保護シート2の略半分が所定位置に貼り付けられているので、保護シート2の残りの部分を貼りつけるだけで容易かつ正確にホイール表面4Aの所望位置に保護シート2を貼りつけることが出来る。
【0044】
〔第一実施形態の作用効果〕
シート貼付治具1を用いて上述のシート貼付方法を実施することで、次のような効果を奏する。
【0045】
作業者の習熟度合いによらず、保護シート2を半分まで剥がす作業が容易になり、ホイール4への貼付作業も容易になる。
【0046】
シート貼付治具1は、半円形の本体部11,12をその弦部15,16の部分で連結部13によって折曲可能に連結した構成である。そのため、シート貼付治具1を折り曲げる第一の手順および保護シート2を半分剥がして粘着層22を略半円形に露出させる第二の手順を確実かつ容易に実施できる。
【0047】
また、シート貼付治具1は、ホイール表面4Aの直径と略同じ長さの弦部15,16を有する略半円形の一対の本体部11,12と、この一対の本体部11,12を弦部15,16で連結する連結部13と、を備える。そのため、シート貼付治具1も保護シート2と略同じ大きさの円形となるので、シート貼付治具1と保護シート2の外周位置を合わせて貼り合わせれば、シート貼付治具1の折曲位置と保護シート2の直径位置とがより確実に重なる。そうすると、保護シート2を直径位置で折り曲げることがより確実になるので、保護シート2を半分剥がす作業がさらに容易になる。
【0048】
第一実施形態では、シート貼付治具1に保護シート2が複数枚積層された積層タイプの場合について説明した。このような積層タイプの場合は、保護シート2を一枚剥がしてホイール4に貼付し、別のホイール4に対してはさらに保護シート2を一枚剥がして貼り付けるので、シート貼付治具1を折り曲げる手順を複数回実施することになる。シート貼付治具1は、上述のように連結部13で本体部11,12が連結された構造なので、同じ折曲位置Pでシート貼付治具1を折り曲げることができる。その結果、積層された保護シート2のいずれも半分まで安定して剥がすことができるようになり、貼付作業が安定する。
【0049】
シート貼付治具1、基材23および粘着層22が光透過性の材質で形成されている場合、これらを透かしてホイール4の形状や位置を確認しながら保護シート2をホイール4に貼り付けることができる。その結果、保護シート2のホイール4に対する位置決め作業が容易になる。
【0050】
保護シート2は、ホイール表面4Aを覆うことができるように、ホイール表面4Aと略同じ長さの直径を有する略円形に形成されている。そのため、第二の手順では、ホイール表面4Aの半円形に対してほぼ同等の大きさで保護シート2が剥がされて、粘着層22が略半円形に露出した状態となる。露出した粘着層22の略半円形の円弧の部分を、ホイール表面4Aの円形の外周部分に合わせるようにすれば、保護シート2の貼り付け位置を容易に位置決めできる。
【0051】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態に係るシート貼付方法について図面を用いて説明する。尚、以下の説明では、既に説明した部分と同一の部分については、同一符号を付してその説明を省略又は簡略する。
第二実施形態においても、第一実施形態で説明したシート貼付治具1を用いて保護シート2をホイール4に貼り付けるが、第二実施形態は、別の手順が加わった点で、第一実施形態の貼付方法と異なる。
第一実施形態のシート貼付方法の第二の手順にて、保護シート2を半分剥がした後、第一実施形態の第三の手順とは異なる第三の手順を実施する。第一の手順および第二の手順は、第一実施形態と同様である。
【0052】
・第三の手順(第二実施形態)
図9は、第二実施形態の第三の手順を説明する図であり、図10は、保護シート2を折り返す第二実施形態の第三の手順を実施した状態を示す断面図である。
第二実施形態の第三の手順では、保護シート2の第二の手順で剥がされた部分を、粘着層22の一部を露出させたままで、シート貼付冶具1の折曲方向(図9の矢印D9方向)へ折り返す。図10に示すように、保護シート2は、粘着層22が形成されていない基材23の面を内側にして本体部11側に折り返されるので、粘着層22は、略半円形に露出した状態である。
【0053】
・第四の手順(第二実施形態)
図11は、シート貼付治具1を折り戻す第二実施形態の第四の手順を実施した状態を示す断面図である。
第四の手順では、シート貼付治具1を図10の矢印D10方向へ折り曲げることで、半円形に折り曲げられていたシート貼付治具1が、円形に折り戻される。このとき、保護シート2は、粘着層22の一部が略半円形に露出され、かつ保護シート2が第二実施形態の第三の手順で折り返された状態のままである。
【0054】
・第五の手順(第二実施形態)
図12は、粘着層22を自動車タイヤ3のホイール4へ貼り付ける第五の手順を実施した状態を示す断面図である。
第五の手順では、まず、シート貼付治具1のつまみ部14側と、保護シート2のつまみ部21側とを掴む。このとき、第四の手順で、シート貼付治具1が円形の状態に戻されているので、保護シート2のつまみ部21側をシート貼付治具1の本体部11とまとめて掴むことができる。そのため、保護シート2の半分剥がされた部分だけ掴む場合よりも掴む部分の厚みが増し、また、本体部11が保護シート2の半分剥がされた部分を保持する当て板の役割も果たす。
シート貼付治具1や保護シート2を掴んだ後、略半円形に露出した粘着層22をホイール4の外周部分に合うように位置決めし、粘着層22をホイール4に押し当てることで、保護シート2の半分を貼り付ける。
【0055】
・第六の手順(第二実施形態)
図13は、保護シート2の残部をホイール4へ貼り付ける第六の手順を示す断面図である。
第六の手順では、シート貼付治具1のつまみ部14側を掴んだまま、図12に示す矢印D12方向へ移動させ、さらにホイール表面4Aに沿って図13に示す矢印D13方向へ移動させる。そうすると、保護シート2の残部が積層体から剥がされ、粘着層22の残部も露出する。露出した粘着層22の残部をホイール表面4Aへ押し当てることで、保護シート2の残部が貼り付けられる。
保護シート2全体をホイール4へ貼り終えた状態は、第一実施形態と同様に、図8に示す断面図のように表される。
【0056】
〔第二実施形態の作用効果〕
第二実施形態のシート貼付方法によれば、上述の第一実施形態で説明した効果の他、次のような効果も奏する。
【0057】
第二実施形態の第四の手順では、第三の手順で本体部11側に折り返した保護シート2と共に本体部11も折り返して、シート貼付治具1を、半円形から元の円形の状態に戻す。その結果、第五の手順では、保護シート2の剥がされた部分をシート貼付治具1の本体部11とまとめて掴むことができる。つまり、このような手順を実施することで、保護シート2の半分剥がされた部分だけで掴む場合よりも掴む部分の厚みが増し、また、本体部11が保護シート2の半分剥がされた部分を保持する当て板の役割も果たすので、保護シート2を安定して掴むことができる。それゆえ、保護シート2のホイール4に対する位置決めや貼付作業が容易になる。
【0058】
第二実施形態の第四の手順では、保護シート2は、ホイール表面4Aを覆うことができるように、ホイール表面4Aと略同じ長さの直径を有する円形に形成されている。そのため、第二の手順では、ホイール表面4Aの半円形に対してほぼ同等の大きさで保護シート2が剥がされて、粘着層22が略半円形に露出した状態となる。
さらに、シート貼付治具1は、保護シート2の外形と略同じ形状に形成されている。そのため、第四の手順で、シート貼付治具1を元の状態に折り戻し、第五の手順で、保護シート2の剥がした部分を本体部11と共に掴む際には、露出した粘着層22の略半円形の円弧の部分は、シート貼付治具1の外周部分とほぼ一致させることができる。
そして、シート貼付治具1の外周部分とホイール表面4Aの外周部分とを合わせることで、露出した粘着層22の略半円形の円弧の部分が、ホイール表面4Aの円形の外周部分に位置決めされるので、位置決めを容易に行うことができる。
【0059】
シート貼付治具1は、上述の通り、半円形の本体部11,12をその弦部15,16の部分で連結部13によって折曲可能に連結した構成である。そのため、半分に折り曲げたシート貼付治具1を元の円形に戻す第四の手順を確実かつ容易に実施できる。
【0060】
また、第二実施形態の第六の手順では、ホイール表面4Aに沿ってシート貼付治具1を移動させると、保護シート2の残部が露出する。そのため、第一実施形態の第四の手順と比べると、保護シート2の残部を容易に露出させることができる。よって、第二実施形態のシート貼付方法によれば、当該残部を露出させながらホイール表面4Aに貼り付ける作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0061】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態に係るシート貼付方法について図面を用いて説明する。尚、以下の説明では、既に説明した部分と同一の部分については、同一符号を付してその説明を省略又は簡略する。
第三実施形態においても、第一実施形態で説明したシート貼付治具1を用いて保護シート2をホイール4に貼り付けるが、第三実施形態は、別の手順が加わった点で、第一実施形態の貼付方法と異なる。
また、第三実施形態は、第二実施形態のシート貼付方法の第四の手順であるシート貼付治具1を折り戻す手順(図10および図11参照)を実施しない点で、第二実施形態と異なる。
【0062】
第三実施形態のシート貼付方法は、第一実施形態の第一の手順および第二の手順と同様の手順を実施した後、第二実施形態の第三の手順と同様の手順を実施する。
【0063】
・第四の手順(第三実施形態)
図14は、粘着層22を自動車タイヤ3のホイール4へ貼り付ける第三実施形態の第四の手順を実施した状態を示す断面図である。
第三実施形態では、第三の手順の後、図10の矢印D10方向にシート貼付治具1を折り戻さずに、図14に示すように、そのまま略半円形に露出した粘着層22の一部をホイール4の外周部分に合うように位置決めし、粘着層22をホイール4に押し当てることで、保護シート2の半分を貼り付ける。このとき、第二実施形態と異なり、シート貼付治具1および保護シート2は、どちらも略半円形に折り曲げられた状態であるが、保護シート2のつまみ部21側をシート貼付治具1の本体部11とまとめて掴むことができる。そのため、保護シート2の半分剥がされた部分だけ掴む場合よりも掴む部分の厚みが増し、また、本体部11が保護シート2の半分剥がされた部分を保持する当て板の役割も果たす。
【0064】
・第五の手順(第三実施形態)
図15は、保護シート2の残部をホイール4へ貼り付ける第三実施形態の第五の手順を示す断面図である。
第五の手順では、シート貼付治具1をホイール表面4Aに沿って図14に示す矢印D14方向へ移動させ、さらに図15に示す矢印D15方向へ移動させる。そうすると、保護シート2の残部が積層体から剥がされ、粘着層22の残部も露出する。露出した粘着層22の残部をホイール表面4Aへ押し当てることで、保護シート2の残部が貼り付けられる。
保護シート2全体をホイール4へ貼り終えた状態は、第一実施形態と同様に、図8に示す断面図のように表される。
【0065】
〔第三実施形態の作用効果〕
第三実施形態のシート貼付方法によれば、上述の第一実施形態で説明した効果の他、次のような効果も奏する。
第三実施形態のシート貼付方法によれば、第二実施形態と同様に、保護シート2を安定して掴むことができるようになるので、保護シート2のホイール4に対する位置決めや貼付作業が容易になる。
また、第三実施形態のシート貼付方法によれば、シート貼付治具1および保護シート2が略半円形に折り曲げられた状態でも、シート貼付治具1の外周部分とホイール表面4Aの外周部分とを合わせることで、露出した粘着層22の略半円形の円弧の部分が、ホイール表面4Aの円形の外周部分に位置決めされるので、位置決めを容易に行うことができる。
【0066】
<第四実施形態>
次に、本発明の第四実施形態に係るシート貼付治具1Aについて図面を用いて説明する。シート貼付治具1Aは、連結部において第一実施形態のシート貼付治具1と相違する。
図16には、シート貼付治具1Aが示されている。尚、以下の説明では、既に説明した部分と同一の部分については、同一符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0067】
シート貼付治具1Aは、第一実施形態と同様に、保護シート2の外形と同じく略円形に形成されている。シート貼付治具1Aの第一の本体部11Aおよび第二の本体部12Aは、厚さ寸法が第一実施形態の本体部11,12よりも大きいことを除いて、同様に半円形に形成されている。シート貼付治具1Aの材質は、変形可能な可撓性プラスチックであることが好ましい。
【0068】
第四実施形態における連結部13は、図16に示すように、第一の本体部11Aと第二の本体部12Aとの間に形成されている切欠13Aである。切欠13Aは、シート貼付治具1Aの円形の直径の位置に略V字形の溝として形成されている。切欠13Aは、例えば、円形の板の直径位置に溝を掘ることで形成される。
第四実施形態では、図16に示すように、切欠13Aが形成されている面に保護シート2が複数枚積層されている。シート貼付治具1Aは、切欠13Aが形成されていない第二の面18を内側にして、図16に示す矢印D16方向へ折り曲げられる。
【0069】
〔第四実施形態の作用効果〕
シート貼付治具1Aも、切欠13Aによって、直径位置で半円形に折り曲げることができる。そのため、シート貼付治具1Aを用いても、上述の第一実施形態から第三実施形態までと同様のシート貼付方法を実施することができ、同様の効果を奏する。
【0070】
<第五実施形態>
次に、本発明の第五実施形態に係るシート貼付治具1Bについて図面を用いて説明する。シート貼付治具1Bは、連結部において第一実施形態のシート貼付治具1と相違する。
図17には、シート貼付治具1Bが示されている。尚、以下の説明では、既に説明した部分と同一の部分については、同一符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0071】
シート貼付治具1Bは、第一実施形態と同様に、保護シート2の外形と同じく略円形に形成されている。シート貼付治具1Bは、第一の本体部11Bおよび第二の本体部12Bを備え、これらは、第一実施形態の本体部11,12と同様に半円形に形成されている。第一の本体部11Bは、第一実施形態の第一の弦部15と同様に、第一の弦部15Bを有し、第二の本体部12Bは、第一実施形態の第二の弦部16と同様に、第二の弦部16Bを有する。
【0072】
第五実施形態における連結部13Bは、図17に示すように、本体部11B,12Bが連結シート5で連結されていることで構成される。連結シート5は、基材51と、この基材51に一方の面に形成された粘着層52とを有する。連結シート5は、この粘着層52を介して本体部11B,12Bに貼り付けられている。粘着層52の大きさは限定されないが、本実施形態では、シート貼付治具1Bの円形と略同じ大きさに形成されている。第一の本体部11Bと第二の本体部12Bとは、弦部15B,16Bを所定間隔離した状態で本体部11B,12Bの表面(第一の面17)に貼り付けられた連結シート5によって連結される。
第五実施形態では、図17に示すように、複数枚の保護シート2が、連結シート5を介して第一の面17側に積層されている。シート貼付治具1Bは、連結シート5が貼り付けられていない第二の面18を内側にして図17に示す矢印D17方向へ折り曲げられる。
【0073】
連結シート5の基材51や粘着層52には、第一実施形態で説明したような保護シート2と同様の材質や寸法のものを用いることができる。但し、連結シート5と本体部11,12との接着力が、保護シート2と連結シート5との接着力よりも大きくなるように設定されていることが好ましい。このように設定されていることで、連結シート5に貼り付けられていた保護シート2を剥がす際に、連結シート5と保護シート2が一緒になってシート貼付治具1Bから剥がされることを防止できる。
【0074】
〔第五実施形態の作用効果〕
シート貼付治具1Bも、連結シート5による連結部13Bによって、直径位置で半円形に折り曲げることができる。そのため、シート貼付治具1Bを用いても、上述の第一実施形態から第三実施形態までと同様のシート貼付方法を実施することができ、同様の効果を奏する。
【0075】
<実施形態の変形>
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で、以下に示される変形等をも含む。
【0076】
上記実施形態では、被着体として、円形の自動車のホイールを例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被着体の被着面の形状が、四角形や多角形、楕円形等の場合にも本発明を適用できる。
また、上記実施形態では、円形の被着体に合わせて、シート貼付治具1,1A,1Bは、いずれも円形の場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。被着体の形状に対応する形状のシート、およびこのシート形状に対応する形状のシート貼付治具とすることができる。シート貼付治具は、貼り付けられたシートが、対称軸位置で折り曲げることが可能であればよい。なお、対称軸位置とは厳密な対称軸位置である必要はなく、シート2を略半分に折り曲げられる位置であればよい。
被着体が円形以外の場合を説明する具体的な例として、被着体が四角形の窓ガラスの場合を挙げて説明する。この場合、被着面は、四角形である。窓ガラスに貼付するシートとしては、保護シート、遮熱シート、防犯シート等が挙げられる。シートは、窓ガラスのガラス面と略同じ四角形状に形成されたシートが用いられる。この場合、シートと略同じ四角形状の、図18に示すようなシート貼付治具1Fを用いることが好ましい。このシート貼付治具1Fは、シートの略半分の大きさの四角形に形成された第一の本体部11Fと第二の本体部12Fとを備え、貼り付けられるシートの対称軸位置に合わせて折曲可能に連結部13Fで連結されている。本体部11F,12Fは、上記実施形態の本体部11,12と同様に弦部15,16を有する。本体部11F,12Fや連結部13Fは、上記実施形態で説明したものと同様の材質のものを用いることができる。
このようなシート貼付治具1Fを用いた場合でも、上記実施形態で説明した手順と同様にして、シートを半分の位置まで剥がすことが容易に行うことができる。それゆえ、窓ガラスにシートを貼付する作業が容易になる。
【0077】
また、連結部は、一つに限定されない。連結部が複数形成されていても、治具を折り曲げた際に治具に積層されたシートを対称軸位置で折り曲げ可能な治具であればよい。例えば、図19に示すようなシート貼付治具1Gは、第一の本体部11と第二の本体部12とが、複数の連結部13C,13D,13Eで構成される連結部13によって連結されている。
【0078】
また、シート貼付方法についても、上記実施形態の例に限定されない。例えば、第三実施形態において、第四の手順で露出した粘着層22の一部をホイール表面4Aへ貼り付けた後、そのまま、ホイール表面4Aに沿ってシート貼付治具1を移動させる方法を説明したが、第四の手順の後、第五の手順の前に、シート貼付治具1を略半円形の状態から、略円形の状態に折り戻した状態で、ホイール表面4Aに沿ってシート貼付治具1を移動させてもよい。
【0079】
また、第四実施形態で説明した切欠13Aは、シート貼付治具1Aの第一の面17に形成されていたが、両面に形成してもよい。切欠13Aが両面に形成されていれば、シート貼付治具1Aを両側に折り曲げることができる。
【0080】
また、シート貼付治具1は、作業員が持ちながら貼付作業を行うことのできるサイズや重量であることが好ましい。よって、被着体が自動車のホイールの場合、本発明の適用対象としては、直径が14インチ(35.56cm)から20インチ(50.80cm)程度のホイールが好ましい。
【0081】
被着体の被着面は、平面状に限らず、曲面状であっても良い。被着面が曲面状である場合には、追従性のある材質や厚さ寸法で形成された保護シートを用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0082】
1,1A,1B,1F,1G…シート貼付治具、2…保護シート(シート)、3…自動車タイヤ、4…ホイール(被着体)、4A…ホイール表面(被着面)、5…連結シート、11,11A,11F…第一の本体部、12,12A,12F…第二の本体部、13…連結部、13A…切欠、13B,13C,13D,13E…連結部、14…つまみ部、15…第一の弦部、16…第二の弦部、21…つまみ部、22…粘着層、23…基材、P…折曲位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体の被着面に対して、基材と前記基材の一方の面に形成された粘着層とを有し前記被着面と略同じ形状に形成されたシートを貼り付けるシート貼付方法であって、
前記シートは、当該シートの対称軸位置で折り曲げることが可能な貼付治具の第一の面に前記粘着層を介して貼り付けられており、
前記貼付治具を前記シートと共に前記貼付治具の前記第一の面とは反対側の第二の面を内側にして折り曲げる手順と、
前記貼付治具が折り曲げられた状態で前記シートを前記貼付治具の折り曲げられた部分まで剥がし、前記粘着層の一部を露出させる手順と、
露出した前記粘着層の一部を前記被着面に押し当てて、前記シートの一部を前記被着体に貼り付ける手順と、
前記シートの前記粘着層の残部を露出させると共に前記被着面に押し当てて、前記シートの残部を前記被着体に貼り着ける手順と、を実施する
ことを特徴とするシート貼付方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたシート貼付方法において、
前記シートを前記貼付治具の折り曲げられた部分まで剥がし、前記粘着層の一部を露出させる手順の後、
前記粘着層の一部を露出させたままで、前記シートを前記貼付治具の折曲方向へ折り返す手順と、
前記粘着層の一部が露出され、かつ前記シートが折り返されたままで、折り曲げられていた前記貼付治具を前記貼付治具の折曲方向とは反対方向に折り戻す手順と、を実施する
ことを特徴とするシート貼付方法。
【請求項3】
請求項1に記載されたシート貼付方法において、
前記シートを前記貼付治具の折り曲げられた部分まで剥がし、前記粘着層の一部を露出させる手順の後、
前記粘着層の一部を露出させたままで、前記シートを前記貼付治具の折曲方向へ折り返す手順、を実施する
ことを特徴とするシート貼付方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載のシート貼付方法において、
前記シートの残部を前記被着体に貼り着ける手順を実施する際に、前記被着面に沿って前記貼付治具を移動させて前記シートの前記粘着層の残部を露出させる
ことを特徴とするシート貼付方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載のシート貼付方法において、
前記貼付治具、前記シートおよび前記粘着層は、光透過性の材質で形成されている
ことを特徴とするシート貼付方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載のシート貼付方法において、
前記被着体の前記被着面は、略円形であり、
前記シートは、前記被着面と略同じ長さの直径を有する略円形状に形成され、
前記貼付治具は、前記シートの直径位置で折り曲げ可能に形成されている
ことを特徴とするシート貼付方法。
【請求項7】
被着体の被着面に対して、基材と前記基材の一方の面に形成された粘着層とを有し前記被着面と略同じ形状に形成されたシートを貼り付ける際に用いられるシート貼付治具であって、
前記シートの対称軸のシート面内における長さと略同じ長さの第一の辺を有する第一の本体部と、当該対称軸のシート面内における長さと略同じ長さの第二の辺を有する第二の本体部と、前記第一の本体部と前記第二の本体部とを前記第一の辺および前記第二の辺で連結する連結部と、を備え、
前記連結部で折り曲げることが可能に形成されている
ことを特徴とするシート貼付治具。
【請求項8】
請求項7に記載されたシート貼付治具において、
前記連結部は、前記第一の本体部および前記第二の本体部の表面に貼り付けられて前記第一の本体部および前記第二本体部同士を連結する連結シートであり、
前記シートは、前記連結シートに貼り付けられ、
前記連結シートと前記第一の本体部および前記第二の本体部の表面との接着力が、前記シートと前記連結シートとの接着力よりも大きい
ことを特徴とするシート貼付治具。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のシート貼付治具において、
前記被着体の前記被着面は、略円形であり、
前記シートは、前記被着面と略同じ長さの直径を有する略円形状に形成され、
前記貼付治具は、前記シートの直径と略同じ長さの第一の弦部を有する略半円形の第一の本体部と、当該直径と略同じ長さの第二の弦部を有する略半円形の第二の本体部とを備え、
前記連結部は、前記第一の弦部および前記第二の弦部で、前記第一の本体部と前記第二の本体部とを連結する
ことを特徴とするシート貼付治具。
【請求項10】
請求項7から請求項9までのいずれかに記載のシート貼付治具において、
前記被着体は、自動車用のホイールである。
ことを特徴とするシート貼付治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−35574(P2013−35574A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173997(P2011−173997)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】