シート高速切断装置
【課題】高速切断が可能であり、構造がコンパクトで、故障しにくいシート高速切断装置を提供する。
【解決手段】走行中のシートSの入側に配置された入側ニップロール1、および出側に配置された出側ニップロール2と、入側ニップロール1と出側ニップロール2との間に配置された切断部3とからなり、切断部3は、転軸4に取付けられた平板状の切断刃5とからなり、切断刃5は、切断中に、その刃先がシートSの走行方向に沿って揺動する。走行中のシートを入側ニップロール1と出側ニップロール2で挟んでシートSに走行方向の張力をかけた状態で回転軸4を回転させると切断刃5も回転し、シートSを切断する。切断刃5はシートSの走行方向に沿って回転するので、シートSの走行を妨げることなく切断ができ、高速化が可能となる。
【解決手段】走行中のシートSの入側に配置された入側ニップロール1、および出側に配置された出側ニップロール2と、入側ニップロール1と出側ニップロール2との間に配置された切断部3とからなり、切断部3は、転軸4に取付けられた平板状の切断刃5とからなり、切断刃5は、切断中に、その刃先がシートSの走行方向に沿って揺動する。走行中のシートを入側ニップロール1と出側ニップロール2で挟んでシートSに走行方向の張力をかけた状態で回転軸4を回転させると切断刃5も回転し、シートSを切断する。切断刃5はシートSの走行方向に沿って回転するので、シートSの走行を妨げることなく切断ができ、高速化が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート高速切断装置に関する。さらに詳しくは、高速でシートを走行させ、かつロール状に巻き取る高速巻取装置に連設して用いられ、シートを所望の長さに高速で切断する切断装置に関する。
本出願人は、キッチンペーパーロールやタオルペーパーロール、クッキングペーパーロールその他の薄用紙ロールを得るため大径の原反ロールから小径の小巻きロールに巻芯なしで巻き取り、しかも高速で巻き取って巻芯なしロール製品とするための芯なしロールの高速巻取装置を開発し、特許出願している(特願2011−88502号)。本発明のシート高速切断装置は、前記芯なしロールの高速巻取装置に好適なものであるが、その用途はこれに限られるものではない。
【背景技術】
【0002】
従来のシート切断装置として、特許文献1〜5がある。
特許文献1,2の装置は上下の刃を走行中のシートに対し直角方向に移動させて、シートをせん断するギロチン型の装置である。この従来技術では、切断作用中の刃はシートの走行を妨げる位置で昇降するので、いかに刃の昇降動作を早くしても、原理的に高速度で切断することはできないものである。
【0003】
特許文献3,4の切断装置は、回転ドラムに取付けた刃を走行中のシートに喰い込ませて、シートを切断するロータリー型の装置である。
このロータリー型切断装置では、シートの長さ方向(走行方向)の切断長さが小さい場合は、回転ドラムの直径を小さくできるので高速切断が可能であるが、切断長さが長くなると高速切断が実用上不可能となる。
すなわち、クッキングペーパーロールのように巻取り長さが5m前後になると、回転ドラムの直径は約1.6m程度の大径にならざるをえないが、このような大径のドラムを高速で回転させるには大馬力の動力源が必要となるし、動力が小さいと回転速度が遅くなるので高速切断できないことになる。したがって、ロータリー型切断装置は高速切断には現実的でない。
【0004】
特許文献5の切断装置は、クランク機構により円運動する上刃と、この上刃と同期して水平運動する下刃により、走行中のシートを切断するもので、ギロチン型とロータリー型の両方の要素をもっている。
しかるに、この従来技術は、運動部材を数多く使うクランク機構を用いているので、高速化が困難であり、かつシートを切断することにより発生する紙粉が機構部分に堆積するとクランク機構の運動が妨げられ故障しやすいという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−142627号公報
【特許文献2】特開2008−55521号公報
【特許文献3】特開平9−193087号公報
【特許文献4】特開平11−320483号公報
【特許文献5】特開2005−11624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、高速切断が可能であり、構造がコンパクトで、故障しにくいシート高速切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明のシート高速切断装置は、走行中のシートの入側に配置された入側ニップロール、および出側に配置された出側ニップロールと、前記入側ニップロールと前記出側ニップロールとの間に配置された切断部とからなり、該切断部は、回転軸と、該転軸に取付けられた平板状の切断刃とからなり、該切断刃は、切断中に、その刃先がシートの走行方向に沿って揺動することを特徴とする。
第2発明のシート高速切断装置は、第1発明において、前記切断刃は、その刃先がのこ歯状に形成されていることを特徴とする。
第3発明のシート高速切断装置は、第1発明において、前記切断部の回転軸と前記入側ニップロールとを動力的に連絡する動力伝達手段と該動力伝達手段に介装された、前記入側ニップロールの回転動力を前記回転軸に伝達したり遮断するクラッチとを備えていることを特徴とする。
第4発明のシート高速切断装置は、第3発明において、前記クラッチに、常時回転駆動力を入力しておきながら出力軸の回転をロックしておき、切断時に該出力軸のロックを解除するクラッチ制御機構を備えたことを特徴とする。
第5発明のシート高速切断装置は、第1発明において、前記入側ニップロールと前記出側ニップロールとの間には、走行中に切断されたシートを上下から保持するシートガイドが設けられており、該シートガイドは、シートの走行方向に延びる線状部材で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、走行中のシートを入側ニップロールと出側ニップロールで挟んでシートに走行方向の張力をかけた状態で回転軸を回転させると切断刃も回転し、その刃先がシートの走行方向に揺動して、シートを切断する。切断刃はシートの走行方向に沿って揺動するので、シートの走行を妨げることなく切断ができ、高速化が可能となる。また、回転する部材は回転軸と平板状の切断刃だけなので、質量が小さくてすみ、この点からも高速回転が可能となる。しかも、構成部材は主として回転部材のみであり、複雑な動きをするリンク機構を用いないので紙粉等による故障も生じにくい。
第2発明によれば、シートに切断刃の刃先が差し込まれたとき、刃先がのこ歯状なので、まず鋭利な切り目が入り、これに入側・出側ニップロールで付与されている張力が作用すると、瞬時にシートが切断される。このため、切断刃によりシートの横断面の全てを切断する前に切断完了するので、高速切断が可能となる。
第3発明によれば、切断刃の回転動力は入側ニップロールから動力伝達手段を介して取っているので、シートに送りをかける入側ニップロールと切断刃とは物理的に同期がとれており、切断作用時における切断刃の揺動速度はシートの走行速度と一致する。このため、切断時にシートを無理に引きちぎったり、逆に切断刃の動作遅れによる切断不良は生じない。しかも、クラッチの入り切りにより、切断タイミングを自由に制御できるので、シートの切断長さを自由に設定できる。
第4発明によれば、クラッチの出力軸の回転をロックしておくとクラッチ内部ですべりが生じ、回転軸と切断刃は停止状態を保っている。そしてロックを外すと、クラッチ内部が瞬時につながり、回転動力が切断刃に伝達され回転する。このため、回転起動時の立ち上がり遅れが生じないので、シート切断長さの制御が正確に行える。
第5発明によれば、シートガイドで切断されたシートの尾端も先端も落下しないように保持しているので、切断後の次のシートの送り出しが詰りを生ずることなく行える。またシートガイドは線状部材がシートの走行方向に延びているだけなので、ニップロールの上下ロールの間の狭い空間にも挿入できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のシート高速切断装置の技術原理説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るシート高速切断装置の平面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視側面図である。
【図4】図2のIV−IV線矢視正面図である。
【図5】クラッチまわりの動力伝達経路を示す平面図である。
【図6】クラッチまわりの動力伝達経路を示す側面図である。
【図7】クラッチ制御機構の作動説明図である。
【図8】(A)はシートガイドの正面図、(B)はシートガイドの平面図である。
【図9】シート切断作用の説明図である。
【図10】本発明のシート高速切断装置が適用された芯なしロール巻取り設備の全体概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0011】
まず、図10に基づき、本発明の高速切断装置Aが用いられる巻取設備の全体構成を説明しておく。
同図において、LRはシートSの原反ロールである。原反ロールLRは、直径が1000mm以上、重量が200kg以上の大径のものが代表的であるが、より小径でも、より大径でも用いることができる。
原反ロールLRを回転させ、あるいはこれに加えてピンチロールPrを回転させて、シートSを繰り出すと、アキュムレータAcと高速切断装置Aを経て、シートSは高速巻取装置Wdで巻き取られる。なお原反ロールLRとピンチロールPrとの間の適所には、外観検査機等が配置されることがあるが、これらの配置は任意である。
高速巻取装置Wdの入側には本発明の高速切断装置Aが配置されるが、この高速切断装置Aは高速走行するシートSを幅方向に瞬時に切断するものである。本発明の高速切断装置Aは、このような全体設備のなかで使用されるが、周辺設備は図示のものに限られない。
【0012】
本発明が適用される巻取設備は、クッキングペーパーやキッチンペーパーをロールに巻き取る設備であり、また直径が15mm〜100mm位の小巻きロールに巻き取る設備である。この巻取直径の下限値付近は、公知のラッピングフィルムロールと同等の小径であるが、上限値付近の直径は、3〜4倍位の大きさであり、カットするシートの長さは数10cmから数10m位である。つまり、本発明の高速切断装置Aは、枝葉シートよりも長さが長く、しかし、数10m以上の長さは有しない中規模の長さにシートを切断する用途に用いられるものである。
【0013】
切断対象のシートとしては、耐熱性を与える等の目的からシリコンをコーティングしたクッキングペーパーを含むが、シリコンを含有しないシートも当然に含まれる。
なお、シリコンを含有するクッキングペーパーは、料亭などの会食の席で個人用膳の調理具として用いられるものであり、クッキングペーパーを鍋状に成形して、その中に食材を置いて小型コンロで加熱料理する等の用途に用いられている。
以下では、クッキングペーパー等を含み、切断対象となる材料を単にシートという。
【0014】
図1に基づき本発明の高速切断装置Aの技術原理を説明する。
本発明の高速切断装置Aは、走行中のシートSの入側に配置された入側ニップロール1と出側に配置された出側ニップロール2との間に配置された切断部3とからなり、切断部3は、回転軸4と、この回転軸4に取付けられた平板状の切断刃5とからなり、切断刃5は、回転中に、その刃先がシートSの走行方向に沿って回転することを特徴としている。
本発明によれば、走行中のシートSを入側ニップロール1と出側ニップロール2で挟んでシートSに走行方向の張力をかけ、その状態で切断刃5を回転させて、その刃先でシートSを切断する。切断刃5はシートSの走行方向に沿って回転するので、シートSの走行を妨げることなく切断ができ、高速化が可能となる点に特徴がある。
【0015】
つぎに、本発明の一実施形態に係る高速切断装置Aを説明する。
図2〜図4は高速切断装置Aの基本的機械構成を示している。
10は左右の固定フレームであり、これに入側揺動フレーム11と出側揺動フレーム21が揺動自在に取付けられている。また、高速切断装置Aの主たる部材は、この固定フレーム10と入側・出側揺動フレーム11,21を介して組付けられている。
【0016】
左右2枚の入側揺動フレーム11は、その外端部が左右の固定フレーム10の入側の上端部にピン11pで軸支され、内端部が上下に揺動するようになっている。そして、左右2枚の入側揺動フレーム11の中間部同士の間には、入側ニップロール1の上ロール1Aが軸受を介して回転自在に軸支されている。
また、左右の入側揺動フレーム11の内端上部の間には連結バー12が固定され、この連結バー12の中間位置には、接圧調整シリンダ13が連結されている。接圧調整シリンダ13はエアーシリンダで構成されており、シリンダ13Sは適宜の架構9に牽垂され、ピストンロッド13pが連結バー12に結合されている。
【0017】
左右の固定フレーム10における上ロール1Aの直下には下ロール1Bが軸受を介して回転自在に軸支されている。
上ロール1Aと下ロール1BとはシートSを挟んで送りをかけるものであるので、所望の接触圧が必要である。前記接圧調整シリンダ13は、この接触圧を調整するもので、供給エアー圧を加減することにより、接触圧を微妙に調整することができる。また、接圧シリンダ13を収縮させると、上ロール1Aが上昇するので、下ロール1Bとの間の隙間が大きくなり、最初にシートSを通す紙通し作業が容易に行える。
【0018】
左右2枚の出側揺動フレーム21は、その外端部が左右の固定フレーム10の出側の上端部にピン21pで軸支され、内端部が上下に揺動するようになっている。そして、左右2枚の出側揺動フレーム21の中間部同士の間には、出側ニップロール1の上ロール2Aが軸受を介して回転自在に軸支されている。
また、左右の出側揺動フレーム21の内端上部の間には連結バー22が固定され、この連結バー22の中間位置には、接圧調整シリンダ23が連結されている。接圧調整シリンダ23はエアーシリンダで構成されており、シリンダ23Sは適宜の架構9に牽垂され、ピストンロッド23pが連結バー22に結合されている。
【0019】
左右の固定フレーム10における上ロール2Aの直下には下ロール2Bが軸受を介して回転自在に軸支されている。
上ロール1Aと下ロール1BとはシートSを挟んで送りをかけるものであるので、所望の接触圧が必要である。前記接圧調整シリンダ23は、この接触圧を調整するもので、供給エアー圧を加減することにより、接触圧を微妙に調整することができる。また、接圧シリンダ23を収縮させると、上ロール2Aが上昇するので、下ロール2Bとの間の隙間が大きくなり、最初にシートSを通す紙通し作業が容易に行える。
【0020】
出側揺動アーム21の連結ビーム22と架構9の間には引張りスプリング26が取付けられている。この引張りスプリング26は、接圧調整シリンダ23を収縮させるとき、引き上げ力を付勢して、上ロール2Aの引き上げを瞬間的に行えるようにするために設けられている。
【0021】
出側ニップロール2における下ロール2Bの一端のプーリ24はモータM等の動力源にベルト等で連絡されている。出側ニップロール2の下ロール2Bの他端のプーリと入側ニップロール1の下ロール1Bの他端のプーリとはベルト25が掛け合わされて、回転動力が伝達されると共に、同期回転するようになっている。
また、入側ニップロール1の上ロール1Aのプーリと出側ニップロール2の上ロール2Aのプーリとの間にもベルト15が掛け廻されて、同期回転するようになっている。既述のごとく上ロール1A、2Aは接圧調整シリンダ23,23で下ロール1B、2Bに接触することで摩擦伝動されて回転するが、ベルト15、25によって、上ロール1A,2Aの回転速度はほぼ同期することとなる。
【0022】
ただし、上ロール1A、2Aの回転速度は下ロール1B、2Bへの接触圧に依存する度合いの方が多いので、出側ニップロール2における上下ロール2A、2Bの接触圧を、入側ニップロール1における上下ロール1A、1Bの接触圧より高くしておけば、出側ニップロール2によるシートSに対する引張り力が入側ニップロール1により送り力より高くなって、シートSに適当な張力を発生させることができる。もちろん、接触圧の加減でシートSに発生させる張力を加減することもできる。
【0023】
切断部3の回転軸は、左右2本の回転軸4,4からなり、入側ニップロール1と出側ニップロール2の間における左右の固定フレーム10に、軸受を介して回転自在に軸支されている。
切断刃5は2本の回転軸4、4に取付けられ、回転軸4と共に回転するようになっている。また、切断刃5は平板状の部材であって、その一端縁には三角刃が連続してのこ歯状に形成された刃先5aを備えている。
この刃先5aは、切断すべきシートSにくい込んで断続的につながった三角形の切り込みを入れることができる。
【0024】
回転軸4は図1に示すように、反時計回りに回転するが、その回転動力の動力伝達経路を図5及び図6に基づき説明する。
入側ニップロール1における下ロール1Bの軸端には歯車41が取付けられている。この歯車41はアイドル歯車42に噛み合い、アイドル歯車42と同軸のプーリ43は、クラッチ40の入力側プーリ44にベルト45が巻き掛けられている。クラッチ40の出力軸45は切断刃5の回転軸4に連結されている。
【0025】
切断部3における回転軸4の駆動力を入側ニップロール1の下ロール1Bから取っているのは、入側ニップロール1の回転と切断刃5の回転とを物理的に同期させるためである。こうすることにより切断刃5の回転に遅れが発生せず、ひいてはシートSの送り速度と切断刃5の刃先5aの水平方向移動速度が略一致することになる。このため、シートSの切断が確実に行える。
【0026】
上記のクラッチ40には、クラッチ40の接断を瞬時に制御するクラッチ制御機構50が設けられている。
このクラッチ制御機構50は図7に示すように、回転軸4に取付けられたロック部材51と、ストッパー52とこれを回転させる駆動シリンダ53とからなる。ストッパー52は、下爪55と上爪56を平行に並べ連結板57で結合したもので、連結板57はピン58で貫通され揺動するようになっている。連結板57からはステー59が伸びており、その先端には駆動シリンダ53のピストンロッドが連結されている。駆動シリンダ53はエアシリンダで構成されている。
【0027】
本実施形態では、クラッチ40の制御に、常時接続方式を採用している。常時接続とは、クラッチには常時入力動力を与えておき、出力側の回転を強制的に止めておく制御方法である。この制御方法では、クラッチ40の内部ですべりを生じさせて出力側の回転停止を許容している。そして、回転動力を伝達する時は、出力側の強制停止を解除することで、クラッチ40内のすべりを解放し、瞬時に入力を出力側に伝え、タイムラグを生じない回転起動を可能としている。通常のクラッチ制御であると、入力側の接断を切り替えるので、クラッチに入力が入ってから出力がなされるまでの間に入力の立上りに要する時間が必要とされ、どうしてもタイムラグが出る。
しかし、本実施形態におけるクラッチ制御方法であると、クラッチ出力軸(回転軸5)のロックを解除してから回転しはじめるまでに、ほとんどタイムラグが生じないので、シートSの切断長さを正確にすることができるのである。
【0028】
図7に基づき、クラッチ制御機構50の作用を説明する。
1)ロック状態
駆動シリンダ53のピストンロッドが伸びた状態で、下爪55がロック部材51に当り回転軸4の回転を止めている。この状態では、クラッチ40は内部で滑りを生じているので、入力側ホイール44から回転動力が入っていても、出力軸45および、それに連結されている回転軸4は回転していない。
2)ロックが外れる
後述するシートSの切断信号が入ると、駆動シリンダ53のピストンロッドが引き込まれ、下爪55がロック部材51から外れる。
この瞬間に、クラッチの出力軸41(図5参照)は回転するので、回転軸4と共に切断刃5は反時計方向に回転する。
【0029】
3)一時停止
ロック部材51が上爪55に当ると回転軸4および切断刃5の回転は止められる。この一時停止の少し前に切断刃5の刃先はシートSにくい込んで切断する。
4)ロック状態に復帰
駆動シリンダ53がピストンロッドを伸ばして、下爪55の位置が少し高くなると、ロック部材51は下爪55に当って止る。この状態で、切断刃5はつぎの切断時まで、この姿勢を保つ。
【0030】
図8に基づきシートガイド60を説明する。シートガイド60は、シートSの走行方向に伸ばして展張した金属線61で構成され、上ガイド62と下ガイド63からなる。
上ロール1A、2Aおよび下ロール1B、2Bは、各金属線61と干渉しないように、環状の溝63が複数束形成されている。また、上ガイド62も下ガイド63は、入側ニップロール1と出側ニップロール2の間でも張設されているが、切断刃5は、その刃先に三角波状の凹みがあるので、切断刃5が回転しても、各金属線61と接触することはない。
このため、シートSの切断時に、シートSは切断刃5で下方に押下げられようとするが、下ガイド63でシートSが下からないように下支えするので、シートSの切断が可能となっている。また、切断時の反応で波うたないように、上ガイド62でもシートSの尾端の挙動を規定されている。
【0031】
本実施形態における切断タイミングは、切断すべきシートSの長さによって所望に設定できる。切断すべきシート長さの到達は、入側ニップロール1や出側ニップロール2の積算回転数、あるいはタイマーで計測した時間の到達で把握できる。
切断タイミングが到達したとき、切断信号を発すれば、接圧調整シリンダ23が出側ニップロール2の上ロール2Aを押し下げると同時に、クラッチ制御機構50の駆動シリンダ53を収縮させる。
上ロール2Aの押下げにより出側ニップロール2の引張り力が強くなって、シートSに張力が作用した状態となり、同時に切断刃5が反時計方向に回転する。そして、図9に示す要領でシート5の切断作用が開始する。
【0032】
図9に基づき、切断刃によるシートSの切断作用を詳述する。
(I)切断開始
切断刃5がシートSに喰い込む寸前であり、刃先5aがシートSの表面に当っている。
(II)切断中
刃先5aがシートSに喰い込む。完全には切断できていないが、シートSには刃先が喰い込み、断続した三角形の切り込みが出来ている。
(III)切断完了
シートSには、出側ニップロール2で張力がかけられているので、シートSに刃先による切り込みができた段階で、幅方向に延びる破断が生じる。このため、先行のシートS1と後行のシートS2が分離される。このようにして、切断刃によりシートの横断面の全てを切断する前に切断完了するので、高速切断が可能となる。
【0033】
本実施形態によれば、切断刃5はシートSの走行方向に沿って揺動するので、シートSの走行を妨げることなく切断ができ、高速化が可能となる。また、回転する部材は回転軸4と平板状の切断刃5だけなので、質量が小さくてすみ、この点からも高速回転が可能となる。しかも、構成部材は主として回転部材のみであり、複雑な動きをするリンク機構を用いないので紙粉等による故障も生じにくい。
【符号の説明】
【0034】
1 入側ニップロール
2 出側ニップロール
3 切断部
4 転軸
5 切断刃
11 入側揺動フレーム
21 出側揺動フレーム
13 接圧調整シリンダ
23 接圧調整シリンダ
40 クラッチ
51 ロック部材
53 駆動シリンダ
62 上ガイド
63 下ガイド
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート高速切断装置に関する。さらに詳しくは、高速でシートを走行させ、かつロール状に巻き取る高速巻取装置に連設して用いられ、シートを所望の長さに高速で切断する切断装置に関する。
本出願人は、キッチンペーパーロールやタオルペーパーロール、クッキングペーパーロールその他の薄用紙ロールを得るため大径の原反ロールから小径の小巻きロールに巻芯なしで巻き取り、しかも高速で巻き取って巻芯なしロール製品とするための芯なしロールの高速巻取装置を開発し、特許出願している(特願2011−88502号)。本発明のシート高速切断装置は、前記芯なしロールの高速巻取装置に好適なものであるが、その用途はこれに限られるものではない。
【背景技術】
【0002】
従来のシート切断装置として、特許文献1〜5がある。
特許文献1,2の装置は上下の刃を走行中のシートに対し直角方向に移動させて、シートをせん断するギロチン型の装置である。この従来技術では、切断作用中の刃はシートの走行を妨げる位置で昇降するので、いかに刃の昇降動作を早くしても、原理的に高速度で切断することはできないものである。
【0003】
特許文献3,4の切断装置は、回転ドラムに取付けた刃を走行中のシートに喰い込ませて、シートを切断するロータリー型の装置である。
このロータリー型切断装置では、シートの長さ方向(走行方向)の切断長さが小さい場合は、回転ドラムの直径を小さくできるので高速切断が可能であるが、切断長さが長くなると高速切断が実用上不可能となる。
すなわち、クッキングペーパーロールのように巻取り長さが5m前後になると、回転ドラムの直径は約1.6m程度の大径にならざるをえないが、このような大径のドラムを高速で回転させるには大馬力の動力源が必要となるし、動力が小さいと回転速度が遅くなるので高速切断できないことになる。したがって、ロータリー型切断装置は高速切断には現実的でない。
【0004】
特許文献5の切断装置は、クランク機構により円運動する上刃と、この上刃と同期して水平運動する下刃により、走行中のシートを切断するもので、ギロチン型とロータリー型の両方の要素をもっている。
しかるに、この従来技術は、運動部材を数多く使うクランク機構を用いているので、高速化が困難であり、かつシートを切断することにより発生する紙粉が機構部分に堆積するとクランク機構の運動が妨げられ故障しやすいという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−142627号公報
【特許文献2】特開2008−55521号公報
【特許文献3】特開平9−193087号公報
【特許文献4】特開平11−320483号公報
【特許文献5】特開2005−11624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、高速切断が可能であり、構造がコンパクトで、故障しにくいシート高速切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明のシート高速切断装置は、走行中のシートの入側に配置された入側ニップロール、および出側に配置された出側ニップロールと、前記入側ニップロールと前記出側ニップロールとの間に配置された切断部とからなり、該切断部は、回転軸と、該転軸に取付けられた平板状の切断刃とからなり、該切断刃は、切断中に、その刃先がシートの走行方向に沿って揺動することを特徴とする。
第2発明のシート高速切断装置は、第1発明において、前記切断刃は、その刃先がのこ歯状に形成されていることを特徴とする。
第3発明のシート高速切断装置は、第1発明において、前記切断部の回転軸と前記入側ニップロールとを動力的に連絡する動力伝達手段と該動力伝達手段に介装された、前記入側ニップロールの回転動力を前記回転軸に伝達したり遮断するクラッチとを備えていることを特徴とする。
第4発明のシート高速切断装置は、第3発明において、前記クラッチに、常時回転駆動力を入力しておきながら出力軸の回転をロックしておき、切断時に該出力軸のロックを解除するクラッチ制御機構を備えたことを特徴とする。
第5発明のシート高速切断装置は、第1発明において、前記入側ニップロールと前記出側ニップロールとの間には、走行中に切断されたシートを上下から保持するシートガイドが設けられており、該シートガイドは、シートの走行方向に延びる線状部材で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、走行中のシートを入側ニップロールと出側ニップロールで挟んでシートに走行方向の張力をかけた状態で回転軸を回転させると切断刃も回転し、その刃先がシートの走行方向に揺動して、シートを切断する。切断刃はシートの走行方向に沿って揺動するので、シートの走行を妨げることなく切断ができ、高速化が可能となる。また、回転する部材は回転軸と平板状の切断刃だけなので、質量が小さくてすみ、この点からも高速回転が可能となる。しかも、構成部材は主として回転部材のみであり、複雑な動きをするリンク機構を用いないので紙粉等による故障も生じにくい。
第2発明によれば、シートに切断刃の刃先が差し込まれたとき、刃先がのこ歯状なので、まず鋭利な切り目が入り、これに入側・出側ニップロールで付与されている張力が作用すると、瞬時にシートが切断される。このため、切断刃によりシートの横断面の全てを切断する前に切断完了するので、高速切断が可能となる。
第3発明によれば、切断刃の回転動力は入側ニップロールから動力伝達手段を介して取っているので、シートに送りをかける入側ニップロールと切断刃とは物理的に同期がとれており、切断作用時における切断刃の揺動速度はシートの走行速度と一致する。このため、切断時にシートを無理に引きちぎったり、逆に切断刃の動作遅れによる切断不良は生じない。しかも、クラッチの入り切りにより、切断タイミングを自由に制御できるので、シートの切断長さを自由に設定できる。
第4発明によれば、クラッチの出力軸の回転をロックしておくとクラッチ内部ですべりが生じ、回転軸と切断刃は停止状態を保っている。そしてロックを外すと、クラッチ内部が瞬時につながり、回転動力が切断刃に伝達され回転する。このため、回転起動時の立ち上がり遅れが生じないので、シート切断長さの制御が正確に行える。
第5発明によれば、シートガイドで切断されたシートの尾端も先端も落下しないように保持しているので、切断後の次のシートの送り出しが詰りを生ずることなく行える。またシートガイドは線状部材がシートの走行方向に延びているだけなので、ニップロールの上下ロールの間の狭い空間にも挿入できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のシート高速切断装置の技術原理説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るシート高速切断装置の平面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視側面図である。
【図4】図2のIV−IV線矢視正面図である。
【図5】クラッチまわりの動力伝達経路を示す平面図である。
【図6】クラッチまわりの動力伝達経路を示す側面図である。
【図7】クラッチ制御機構の作動説明図である。
【図8】(A)はシートガイドの正面図、(B)はシートガイドの平面図である。
【図9】シート切断作用の説明図である。
【図10】本発明のシート高速切断装置が適用された芯なしロール巻取り設備の全体概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0011】
まず、図10に基づき、本発明の高速切断装置Aが用いられる巻取設備の全体構成を説明しておく。
同図において、LRはシートSの原反ロールである。原反ロールLRは、直径が1000mm以上、重量が200kg以上の大径のものが代表的であるが、より小径でも、より大径でも用いることができる。
原反ロールLRを回転させ、あるいはこれに加えてピンチロールPrを回転させて、シートSを繰り出すと、アキュムレータAcと高速切断装置Aを経て、シートSは高速巻取装置Wdで巻き取られる。なお原反ロールLRとピンチロールPrとの間の適所には、外観検査機等が配置されることがあるが、これらの配置は任意である。
高速巻取装置Wdの入側には本発明の高速切断装置Aが配置されるが、この高速切断装置Aは高速走行するシートSを幅方向に瞬時に切断するものである。本発明の高速切断装置Aは、このような全体設備のなかで使用されるが、周辺設備は図示のものに限られない。
【0012】
本発明が適用される巻取設備は、クッキングペーパーやキッチンペーパーをロールに巻き取る設備であり、また直径が15mm〜100mm位の小巻きロールに巻き取る設備である。この巻取直径の下限値付近は、公知のラッピングフィルムロールと同等の小径であるが、上限値付近の直径は、3〜4倍位の大きさであり、カットするシートの長さは数10cmから数10m位である。つまり、本発明の高速切断装置Aは、枝葉シートよりも長さが長く、しかし、数10m以上の長さは有しない中規模の長さにシートを切断する用途に用いられるものである。
【0013】
切断対象のシートとしては、耐熱性を与える等の目的からシリコンをコーティングしたクッキングペーパーを含むが、シリコンを含有しないシートも当然に含まれる。
なお、シリコンを含有するクッキングペーパーは、料亭などの会食の席で個人用膳の調理具として用いられるものであり、クッキングペーパーを鍋状に成形して、その中に食材を置いて小型コンロで加熱料理する等の用途に用いられている。
以下では、クッキングペーパー等を含み、切断対象となる材料を単にシートという。
【0014】
図1に基づき本発明の高速切断装置Aの技術原理を説明する。
本発明の高速切断装置Aは、走行中のシートSの入側に配置された入側ニップロール1と出側に配置された出側ニップロール2との間に配置された切断部3とからなり、切断部3は、回転軸4と、この回転軸4に取付けられた平板状の切断刃5とからなり、切断刃5は、回転中に、その刃先がシートSの走行方向に沿って回転することを特徴としている。
本発明によれば、走行中のシートSを入側ニップロール1と出側ニップロール2で挟んでシートSに走行方向の張力をかけ、その状態で切断刃5を回転させて、その刃先でシートSを切断する。切断刃5はシートSの走行方向に沿って回転するので、シートSの走行を妨げることなく切断ができ、高速化が可能となる点に特徴がある。
【0015】
つぎに、本発明の一実施形態に係る高速切断装置Aを説明する。
図2〜図4は高速切断装置Aの基本的機械構成を示している。
10は左右の固定フレームであり、これに入側揺動フレーム11と出側揺動フレーム21が揺動自在に取付けられている。また、高速切断装置Aの主たる部材は、この固定フレーム10と入側・出側揺動フレーム11,21を介して組付けられている。
【0016】
左右2枚の入側揺動フレーム11は、その外端部が左右の固定フレーム10の入側の上端部にピン11pで軸支され、内端部が上下に揺動するようになっている。そして、左右2枚の入側揺動フレーム11の中間部同士の間には、入側ニップロール1の上ロール1Aが軸受を介して回転自在に軸支されている。
また、左右の入側揺動フレーム11の内端上部の間には連結バー12が固定され、この連結バー12の中間位置には、接圧調整シリンダ13が連結されている。接圧調整シリンダ13はエアーシリンダで構成されており、シリンダ13Sは適宜の架構9に牽垂され、ピストンロッド13pが連結バー12に結合されている。
【0017】
左右の固定フレーム10における上ロール1Aの直下には下ロール1Bが軸受を介して回転自在に軸支されている。
上ロール1Aと下ロール1BとはシートSを挟んで送りをかけるものであるので、所望の接触圧が必要である。前記接圧調整シリンダ13は、この接触圧を調整するもので、供給エアー圧を加減することにより、接触圧を微妙に調整することができる。また、接圧シリンダ13を収縮させると、上ロール1Aが上昇するので、下ロール1Bとの間の隙間が大きくなり、最初にシートSを通す紙通し作業が容易に行える。
【0018】
左右2枚の出側揺動フレーム21は、その外端部が左右の固定フレーム10の出側の上端部にピン21pで軸支され、内端部が上下に揺動するようになっている。そして、左右2枚の出側揺動フレーム21の中間部同士の間には、出側ニップロール1の上ロール2Aが軸受を介して回転自在に軸支されている。
また、左右の出側揺動フレーム21の内端上部の間には連結バー22が固定され、この連結バー22の中間位置には、接圧調整シリンダ23が連結されている。接圧調整シリンダ23はエアーシリンダで構成されており、シリンダ23Sは適宜の架構9に牽垂され、ピストンロッド23pが連結バー22に結合されている。
【0019】
左右の固定フレーム10における上ロール2Aの直下には下ロール2Bが軸受を介して回転自在に軸支されている。
上ロール1Aと下ロール1BとはシートSを挟んで送りをかけるものであるので、所望の接触圧が必要である。前記接圧調整シリンダ23は、この接触圧を調整するもので、供給エアー圧を加減することにより、接触圧を微妙に調整することができる。また、接圧シリンダ23を収縮させると、上ロール2Aが上昇するので、下ロール2Bとの間の隙間が大きくなり、最初にシートSを通す紙通し作業が容易に行える。
【0020】
出側揺動アーム21の連結ビーム22と架構9の間には引張りスプリング26が取付けられている。この引張りスプリング26は、接圧調整シリンダ23を収縮させるとき、引き上げ力を付勢して、上ロール2Aの引き上げを瞬間的に行えるようにするために設けられている。
【0021】
出側ニップロール2における下ロール2Bの一端のプーリ24はモータM等の動力源にベルト等で連絡されている。出側ニップロール2の下ロール2Bの他端のプーリと入側ニップロール1の下ロール1Bの他端のプーリとはベルト25が掛け合わされて、回転動力が伝達されると共に、同期回転するようになっている。
また、入側ニップロール1の上ロール1Aのプーリと出側ニップロール2の上ロール2Aのプーリとの間にもベルト15が掛け廻されて、同期回転するようになっている。既述のごとく上ロール1A、2Aは接圧調整シリンダ23,23で下ロール1B、2Bに接触することで摩擦伝動されて回転するが、ベルト15、25によって、上ロール1A,2Aの回転速度はほぼ同期することとなる。
【0022】
ただし、上ロール1A、2Aの回転速度は下ロール1B、2Bへの接触圧に依存する度合いの方が多いので、出側ニップロール2における上下ロール2A、2Bの接触圧を、入側ニップロール1における上下ロール1A、1Bの接触圧より高くしておけば、出側ニップロール2によるシートSに対する引張り力が入側ニップロール1により送り力より高くなって、シートSに適当な張力を発生させることができる。もちろん、接触圧の加減でシートSに発生させる張力を加減することもできる。
【0023】
切断部3の回転軸は、左右2本の回転軸4,4からなり、入側ニップロール1と出側ニップロール2の間における左右の固定フレーム10に、軸受を介して回転自在に軸支されている。
切断刃5は2本の回転軸4、4に取付けられ、回転軸4と共に回転するようになっている。また、切断刃5は平板状の部材であって、その一端縁には三角刃が連続してのこ歯状に形成された刃先5aを備えている。
この刃先5aは、切断すべきシートSにくい込んで断続的につながった三角形の切り込みを入れることができる。
【0024】
回転軸4は図1に示すように、反時計回りに回転するが、その回転動力の動力伝達経路を図5及び図6に基づき説明する。
入側ニップロール1における下ロール1Bの軸端には歯車41が取付けられている。この歯車41はアイドル歯車42に噛み合い、アイドル歯車42と同軸のプーリ43は、クラッチ40の入力側プーリ44にベルト45が巻き掛けられている。クラッチ40の出力軸45は切断刃5の回転軸4に連結されている。
【0025】
切断部3における回転軸4の駆動力を入側ニップロール1の下ロール1Bから取っているのは、入側ニップロール1の回転と切断刃5の回転とを物理的に同期させるためである。こうすることにより切断刃5の回転に遅れが発生せず、ひいてはシートSの送り速度と切断刃5の刃先5aの水平方向移動速度が略一致することになる。このため、シートSの切断が確実に行える。
【0026】
上記のクラッチ40には、クラッチ40の接断を瞬時に制御するクラッチ制御機構50が設けられている。
このクラッチ制御機構50は図7に示すように、回転軸4に取付けられたロック部材51と、ストッパー52とこれを回転させる駆動シリンダ53とからなる。ストッパー52は、下爪55と上爪56を平行に並べ連結板57で結合したもので、連結板57はピン58で貫通され揺動するようになっている。連結板57からはステー59が伸びており、その先端には駆動シリンダ53のピストンロッドが連結されている。駆動シリンダ53はエアシリンダで構成されている。
【0027】
本実施形態では、クラッチ40の制御に、常時接続方式を採用している。常時接続とは、クラッチには常時入力動力を与えておき、出力側の回転を強制的に止めておく制御方法である。この制御方法では、クラッチ40の内部ですべりを生じさせて出力側の回転停止を許容している。そして、回転動力を伝達する時は、出力側の強制停止を解除することで、クラッチ40内のすべりを解放し、瞬時に入力を出力側に伝え、タイムラグを生じない回転起動を可能としている。通常のクラッチ制御であると、入力側の接断を切り替えるので、クラッチに入力が入ってから出力がなされるまでの間に入力の立上りに要する時間が必要とされ、どうしてもタイムラグが出る。
しかし、本実施形態におけるクラッチ制御方法であると、クラッチ出力軸(回転軸5)のロックを解除してから回転しはじめるまでに、ほとんどタイムラグが生じないので、シートSの切断長さを正確にすることができるのである。
【0028】
図7に基づき、クラッチ制御機構50の作用を説明する。
1)ロック状態
駆動シリンダ53のピストンロッドが伸びた状態で、下爪55がロック部材51に当り回転軸4の回転を止めている。この状態では、クラッチ40は内部で滑りを生じているので、入力側ホイール44から回転動力が入っていても、出力軸45および、それに連結されている回転軸4は回転していない。
2)ロックが外れる
後述するシートSの切断信号が入ると、駆動シリンダ53のピストンロッドが引き込まれ、下爪55がロック部材51から外れる。
この瞬間に、クラッチの出力軸41(図5参照)は回転するので、回転軸4と共に切断刃5は反時計方向に回転する。
【0029】
3)一時停止
ロック部材51が上爪55に当ると回転軸4および切断刃5の回転は止められる。この一時停止の少し前に切断刃5の刃先はシートSにくい込んで切断する。
4)ロック状態に復帰
駆動シリンダ53がピストンロッドを伸ばして、下爪55の位置が少し高くなると、ロック部材51は下爪55に当って止る。この状態で、切断刃5はつぎの切断時まで、この姿勢を保つ。
【0030】
図8に基づきシートガイド60を説明する。シートガイド60は、シートSの走行方向に伸ばして展張した金属線61で構成され、上ガイド62と下ガイド63からなる。
上ロール1A、2Aおよび下ロール1B、2Bは、各金属線61と干渉しないように、環状の溝63が複数束形成されている。また、上ガイド62も下ガイド63は、入側ニップロール1と出側ニップロール2の間でも張設されているが、切断刃5は、その刃先に三角波状の凹みがあるので、切断刃5が回転しても、各金属線61と接触することはない。
このため、シートSの切断時に、シートSは切断刃5で下方に押下げられようとするが、下ガイド63でシートSが下からないように下支えするので、シートSの切断が可能となっている。また、切断時の反応で波うたないように、上ガイド62でもシートSの尾端の挙動を規定されている。
【0031】
本実施形態における切断タイミングは、切断すべきシートSの長さによって所望に設定できる。切断すべきシート長さの到達は、入側ニップロール1や出側ニップロール2の積算回転数、あるいはタイマーで計測した時間の到達で把握できる。
切断タイミングが到達したとき、切断信号を発すれば、接圧調整シリンダ23が出側ニップロール2の上ロール2Aを押し下げると同時に、クラッチ制御機構50の駆動シリンダ53を収縮させる。
上ロール2Aの押下げにより出側ニップロール2の引張り力が強くなって、シートSに張力が作用した状態となり、同時に切断刃5が反時計方向に回転する。そして、図9に示す要領でシート5の切断作用が開始する。
【0032】
図9に基づき、切断刃によるシートSの切断作用を詳述する。
(I)切断開始
切断刃5がシートSに喰い込む寸前であり、刃先5aがシートSの表面に当っている。
(II)切断中
刃先5aがシートSに喰い込む。完全には切断できていないが、シートSには刃先が喰い込み、断続した三角形の切り込みが出来ている。
(III)切断完了
シートSには、出側ニップロール2で張力がかけられているので、シートSに刃先による切り込みができた段階で、幅方向に延びる破断が生じる。このため、先行のシートS1と後行のシートS2が分離される。このようにして、切断刃によりシートの横断面の全てを切断する前に切断完了するので、高速切断が可能となる。
【0033】
本実施形態によれば、切断刃5はシートSの走行方向に沿って揺動するので、シートSの走行を妨げることなく切断ができ、高速化が可能となる。また、回転する部材は回転軸4と平板状の切断刃5だけなので、質量が小さくてすみ、この点からも高速回転が可能となる。しかも、構成部材は主として回転部材のみであり、複雑な動きをするリンク機構を用いないので紙粉等による故障も生じにくい。
【符号の説明】
【0034】
1 入側ニップロール
2 出側ニップロール
3 切断部
4 転軸
5 切断刃
11 入側揺動フレーム
21 出側揺動フレーム
13 接圧調整シリンダ
23 接圧調整シリンダ
40 クラッチ
51 ロック部材
53 駆動シリンダ
62 上ガイド
63 下ガイド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中のシートの入側に配置された入側ニップロール、および出側に配置された出側ニップロールと、前記入側ニップロールと前記出側ニップロールとの間に配置された切断部とからなり、該切断部は、回転軸と、該転軸に取付けられた平板状の切断刃とからなり、該切断刃は、切断中に、その刃先がシートの走行方向に沿って揺動する
ことを特徴とするシート高速切断装置。
【請求項2】
前記切断刃は、その刃先がのこ歯状に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のシート高速切断装置。
【請求項3】
前記切断部の回転軸と前記入側ニップロールとを動力的に連絡する動力伝達手段と
該動力伝達手段に介装された、前記入側ニップロールの回転動力を前記回転軸に伝達したり遮断するクラッチとを備えている
ことを特徴とする請求項1記載のシート高速切断装置。
【請求項4】
前記クラッチに、常時回転駆動力を入力しておきながら出力軸の回転をロックしておき、切断時に該出力軸のロックを解除するクラッチ制御機構を備えた
ことを特徴とする請求項3記載のシート高速切断装置。
【請求項5】
前記入側ニップロールと前記出側ニップロールとの間には、走行中に切断されたシートを上下から保持するシートガイドが設けられており、
該シートガイドは、シートの走行方向に延びる線状部材で構成されている
ことを特徴とする請求項1記載のシート高速切断装置。
【請求項1】
走行中のシートの入側に配置された入側ニップロール、および出側に配置された出側ニップロールと、前記入側ニップロールと前記出側ニップロールとの間に配置された切断部とからなり、該切断部は、回転軸と、該転軸に取付けられた平板状の切断刃とからなり、該切断刃は、切断中に、その刃先がシートの走行方向に沿って揺動する
ことを特徴とするシート高速切断装置。
【請求項2】
前記切断刃は、その刃先がのこ歯状に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のシート高速切断装置。
【請求項3】
前記切断部の回転軸と前記入側ニップロールとを動力的に連絡する動力伝達手段と
該動力伝達手段に介装された、前記入側ニップロールの回転動力を前記回転軸に伝達したり遮断するクラッチとを備えている
ことを特徴とする請求項1記載のシート高速切断装置。
【請求項4】
前記クラッチに、常時回転駆動力を入力しておきながら出力軸の回転をロックしておき、切断時に該出力軸のロックを解除するクラッチ制御機構を備えた
ことを特徴とする請求項3記載のシート高速切断装置。
【請求項5】
前記入側ニップロールと前記出側ニップロールとの間には、走行中に切断されたシートを上下から保持するシートガイドが設けられており、
該シートガイドは、シートの走行方向に延びる線状部材で構成されている
ことを特徴とする請求項1記載のシート高速切断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−1566(P2013−1566A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138226(P2011−138226)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(304008474)ウィンテック株式会社 (5)
【出願人】(501215174)石崎商事株式会社 (2)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(304008474)ウィンテック株式会社 (5)
【出願人】(501215174)石崎商事株式会社 (2)
[ Back to top ]