説明

シード層の形成方法及びシリコン含有薄膜の成膜方法

【課題】 薄膜の面内均一性の更なる向上を可能とする、薄膜を形成するためのシード層の形成方法を提供すること。
【解決手段】 下地上に、薄膜のシードとなるシード層を形成するシード層の形成方法であって、アミノシラン系ガスを用いて、下地上に、アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコンを吸着させる工程(ステップ11)と、ジシラン以上の高次シラン系ガスを用いて、アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコンが吸着された下地上に、ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコンを堆積する工程(ステップ12)と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シード層の形成方法及びシリコン含有薄膜の成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体集積回路装置の微細化が進展している。このような微細化の進展により、半導体集積回路装置に使用される各種薄膜においては、更なる薄膜化、及び膜質の更なる良質化が要請されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ジシランガスを用いて、アモルファスシリコン膜を成膜する成膜方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−86173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
“膜質の良質さ”を評価する指標の一つに、ウエハ面内における膜厚の均一性(面内均一性)がある。
【0006】
特許文献1においては、アモルファスシリコン膜を成膜する際に、成膜温度を530℃以下に設定し、かつ、ジシランガスの流量を毎分300cc以上に設定する。これにより、面内均一性が良いアモルファスシリコン膜が得られることが記載されている。
【0007】
例えば、特許文献1においては、例えば、ジシランガスの流量を毎分1000cc〜2000ccの範囲、成膜温度を450℃〜475℃の範囲とすることで、成膜されたアモルファスシリコン膜に対し、約±3.0〜7.0%の特に良好な面内均一性が得られている。
【0008】
しかしながら、半導体集積回路装置の微細化の進展とともに、薄膜の面内均一性については、更なる向上が要求されている。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、薄膜の面内均一性の更なる向上を可能とする、薄膜を形成するためのシード層の形成方法及びそのシード層を用いたシリコン含有薄膜の成膜方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の第1の態様に係るシード層の形成方法は、下地上に、薄膜のシードとなるシード層を形成するシード層の形成方法であって、(1)アミノシラン系ガスを用いて、前記下地上に、前記アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコンを吸着させる工程と、(2)ジシラン以上の高次シラン系ガスを用いて、前記アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコンが吸着された前記下地上に、前記ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコンを堆積する工程と、を具備する。
【0011】
この発明の第2の態様に係るシード層の形成方法は、下地上に、薄膜のシードとなるシード層を形成するシード層の形成方法であって、アミノシラン系ガス、及びジシラン以上の高次シラン系ガスを用いて、前記アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコンを前記下地に吸着させつつ、前記アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコンが吸着しなかったサイトを、前記ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコンで埋めつつ、前記ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコンを前記下地上に堆積して前記シード層を形成する。
【0012】
この発明の第3の態様に係るシリコン含有薄膜の成膜方法は、下地上にシード層を形成し、前記シード層上にシリコン含有薄膜を成膜するシリコン含有薄膜の成膜方法であって、(1)前記下地上に、前記シード層を形成する工程と、(2)前記シード層上に、前記シリコン含有薄膜を形成する工程と、を備え、前記(1)工程が、上記第1の態様又は上記第2の態様に係るシード層の形成方法を用いて行われる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、薄膜の面内均一性の更なる向上を可能とする、薄膜を形成するためのシード層の形成方法及びそのシード層を用いたシリコン含有薄膜の成膜方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の第1の実施形態に係るシード層の形成方法及びシリコン含有薄膜の成膜方法一例を示す流れ図
【図2】(A)図〜(C)図は第1の実施形態に係るシード層の形成方法及びシリコン含有薄膜の成膜方法の主要な工程を示す断面図
【図3】膜厚と面内均一性との関係を示す図
【図4】この発明の第2の実施形態に係るシード層の形成方法及びシリコン含有薄膜の成膜方法一例を示す流れ図
【図5】(A)図〜(C)図は第2の実施形態に係るシード層の形成方法及びシリコン含有薄膜の成膜方法の主要な工程を示す断面図
【図6】この発明の第3の実施形態に係るシード層の形成方法及びシリコン含有薄膜の成膜方法一例を示す流れ図
【図7】(A)図〜(B)図は第3の実施形態に係るシード層の形成方法及びシリコン含有薄膜の成膜方法の主要な工程を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図にわたり、共通の部分には共通の参照符号を付す。
【0016】
(第1の実施形態)
図1はこの発明の第1の実施形態に係るシード層の形成方法及びシリコン含有薄膜の成膜方法一例を示す流れ図、図2A〜図2Cは第1の実施形態に係るシード層の形成方法及びシリコン含有薄膜の成膜方法の主要な工程を示す断面図である。
【0017】
図1のステップ1に示すように、下地上、本例ではシリコン基板(シリコンウエハ=シリコン単結晶)上に形成されたシリコン酸化物(SiO)膜上にシード層を形成する。第1の実施形態に係るシード層の形成方法の一例は次の通りである。
【0018】
図1のステップ11、及び図2Aに示すように、アミノシラン系ガスを用いて、シリコン基板1上に形成されたシリコン酸化物膜2上に、アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコン*1を吸着させる。具体的な一例としては、シリコン基板1を加熱し、シリコン酸化物膜2の主表面に第1のシード層原料ガスとして、アミノシラン系ガスを流す。これにより、アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコンを含む成分がシリコン酸化物膜2の主表面上に吸着され、原子層レベル、例えば、原子が1層ほどのレベル(単原子層オーダー)で吸着した第1シード層3が形成される。第1シード層3は、極めて薄い層である。図2Aでは、シリコン原子が粒状に吸着された第1シード層3を示している。このような第1シード層3は、薄膜原料を単原子層オーダーで積み上げていく、例えば、ALD法を用いることで形成することができる。
【0019】
アミノシラン系ガスの例としては、
BAS(ブチルアミノシラン)
BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)
DMAS(ジメチルアミノシラン)
BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)
TDMAS(トリジメチルアミノシラン)、
DEAS(ジエチルアミノシラン)、
BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)、
DPAS(ジプロピルアミノシラン)、
DIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)
の少なくとも一つを含むガスを挙げることができる。本例では、DIPASを用いた。
【0020】
第1シード層3を形成する際の処理条件の一例は、
DIPAS流量: 200sccm
処 理 時 間: 1min
処 理 温 度: 400℃
処 理 圧 力: 133.3Pa( 1Torr)
である。
【0021】
次に、図1のステップ12、及び図2Bに示すように、ジシラン以上の高次シラン系ガスを用いて、アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコン*1が吸着されたシリコン酸化物膜2上、即ち第1シード層3が形成されたシリコン酸化物膜2上に、ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコンを堆積する。具体的な一例としては、シリコン基板1を加熱し、第1シード層3が形成されたシリコン基板1の主表面に第2のシード層原料ガスとして、ジシラン以上の高次シラン系ガスを流す。これにより、ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコン*2が第1シード層3上に堆積され、第2シード層4が形成される。第2シード層4は、例えば、第1シード層3が粒状に形成されていた場合には、粒の間を埋めつつ、第1シード層3上に形成される。このような第2シード層4は、例えば、CVD反応により薄膜原料を堆積していく、CVD法を用いることで形成することができる。
【0022】
ジシラン以上の高次シラン系ガスの例としては、
Si
Si2m+2(ただし、mは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物
Si2n(ただし、nは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物
の少なくとも一つを含むガスを挙げることができる。
【0023】
上記Si2m+2(ただし、mは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物としては、
トリシラン(Si
テトラシラン(Si10
ペンタシラン(Si12
ヘキサシラン(Si14
ヘプタシラン(Si16
の少なくとも一つから選ばれることが、実用上、好ましい。
【0024】
また、上記Si2n(ただし、nは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物としては、
シクロトリシラン(Si
シクロテトラシラン(Si
シクロペンタシラン(Si10
シクロヘキサシラン(Si12
シクロヘプタシラン(Si14
の少なくとも一つから選ばれることが、実用上、好ましい。
【0025】
本例では、ジシラン以上の高次シラン系ガスとして、ジシランを用いた。
【0026】
第2シード層4を形成する際の処理条件の一例は、
ジシラン 流量: 200sccm
処 理 時 間: 4.3min
処 理 温 度: 400℃
処 理 圧 力: 133.3Pa( 1Torr)
である。
【0027】
このようにして、本例では、第1シード層3と、第1シード層3上に形成された第2シード層4とを含む二重シード層5を形成する。二重シード層5の状態は、例えば、アモルファス状態である。
【0028】
二重シード層5上には、薄膜本膜が形成される。このため、二重シード層5の厚さとしては、例えば、二重シード層5の厚さと薄膜本膜の厚さとを合計した膜厚を考慮し、0nmを超え2nm以下の範囲とされることが良い。
【0029】
また、二重シード層5のうち、第2シード層4には、ドーパントをドープするようにしても良い。第2シード層4にドーパントをドープする場合には、図1のステップ12、及び図2Bに示す工程において、ジシラン以上の高次シラン系ガスとともに、ドーパントを含むガスを供給すれば良い。
【0030】
ドーパントの例としては、
ボロン(B)
リン(P)
ヒ素(As)
酸素(O)
炭素(C)
窒素(N)
を挙げることができる。
【0031】
これらのドーパントについては混合されても良い。即ち、上記6種類のドーパントから選ばれる少なくとも一つのドーパントを含むガスを、ジシラン以上の高次シラン系ガスとともに供給し、第2シード層4を形成することが可能である。この場合には、アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコンが吸着されたシリコン基板1上に、上記6種類のドーパントの少なくとも一つを含有させつつ、ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコンが堆積される。
【0032】
次に、図1のステップ2、及び図2Cに示すように、二重シード層5が形成されたシリコン基板1上に、薄膜本膜としてシリコン含有薄膜6を形成する。
【0033】
シリコン含有薄膜6の例としては、
シリコン(Si)膜
シリコンゲルマニウム(SiGe)膜
を挙げることができる。これらのシリコン含有薄膜は、次のようにして形成することができる。
【0034】
(シリコン膜の例)
シリコン含有薄膜6をシリコン膜とする場合には、シリコン膜の原料ガスとして、上記ジシラン以上の高次シラン系ガスよりも低次の低次シラン系ガスを用いる。例えば、第2シード層4の形成にジシランガスを用いたときには、シリコン膜の原料ガスとして、モノシランガスを用いる。
【0035】
シリコン含有薄膜6をシリコン膜とし、原料ガスとしてモノシランガスを用いた場合の処理条件の一例は、
モノシラン流量: 200sccm
処 理 時 間: 3.8min
処 理 温 度: 490℃
処 理 圧 力: 53.3Pa( 0.4Torr)
である。上記処理条件においては、例えば、膜厚が約3nmのシリコン膜が、薄膜本膜として形成される。
【0036】
(シリコンゲルマニウム膜の例)
シリコン含有薄膜6をシリコンゲルマニウム膜とする場合には、シリコンゲルマニウム膜の原料ガスとして、上記ジシラン以上の高次シラン系ガスよりも低次の低次シラン系ガスと、モノゲルマン(GeH)ガスとを用いる。例えば、第2シード層4の形成にジシランガスを用いたときには、シリコンゲルマニウム膜の原料ガスとして、モノシランガスとモノゲルマンガスとを用いる。
【0037】
シリコン含有薄膜6をシリコンゲルマニウム膜とし、原料ガスとしてモノシランガスとモノゲルマンガスとを用いた場合の処理条件の一例は、
モノシラン 流量:1200sccm
モノゲルマン流量: 500sccm
処 理 時 間 : 5min
処 理 温 度 : 400℃
処 理 圧 力 : 533Pa( 4Torr)
である。上記処理条件においては、例えば、膜厚が約4nmのシリコンゲルマニウム膜が、薄膜本膜として形成される。
【0038】
このようにして、本例では、二重シード層5上に、シリコン膜、又はシリコンゲルマニウム膜からなるシリコン含有薄膜6を形成する。
【0039】
シリコン含有薄膜6の成膜後の状態は、
アモルファス状態
アモルファス状態とナノ結晶状態とが混在した状態
ナノ結晶状態
多結晶状態
のいずれか一つとされる。これらのシリコン含有薄膜6の成膜後の状態は、シリコン含有薄膜6の成膜中に決定される、又はシリコン含有薄膜6の成膜後の処理により決定することができる。例えば、シリコン含有薄膜6の成膜中に状態を決定する場合には、処理温度、処理圧力、原料ガス流量などを調節すれば良い。また、シリコン含有薄膜6の成膜後に状態を決定する場合には、シリコン含有薄膜6が形成されたシリコン基板1にアニール処理を施せば良い。アニール処理の際の処理温度、処理圧力、処理時間などを調節することで、シリコン含有薄膜の状態を、上記4つの状態のいずれかに制御することができる。
【0040】
シリコン含有薄膜6は、薄膜本膜である。このため、形成しようとする薄膜の厚さは、シリコン含有薄膜6の厚さにてほぼ決まる。シリコン含有薄膜6の厚さは、ユーザーの要求により決定されるものである。しかし、実用的な観点を考慮すると、シリコン含有薄膜6の厚さは、0nmを超え100nm以下の範囲とされることが良いであろう。
【0041】
また、シリコン含有薄膜6には、第2シード層4と同様に、ドーパントをドープするようにしても良い。
【0042】
ドーパントの例としては、
ボロン(B)
リン(P)
ヒ素(As)
酸素(O)
炭素(C)
窒素(N)
を挙げることができる。これらドーパントは、第2シード層4の場合と同様に、混合されていても良い。
【0043】
また、ドーパントは、シリコン含有薄膜6の成膜中、又はシリコン含有薄膜6の成膜後にドープすることができる。ドーパントをシリコン含有薄膜6の成膜中にドープする場合には、図1のステップ2、及び図2Cに示す工程において、例えば、原料ガスとともに、ドーパントを含むガスを供給すれば良い。また、ドーパントをシリコン含有薄膜6の成膜後にドープする場合には、ドーパントをシリコン含有薄膜6中に気相拡散により拡散させれば良い。
【0044】
このような第1の実施形態に係るシード層の形成方法及びシリコン含有薄膜の成膜方法によれば、次のような利点を得ることができる。
図3は、膜厚と面内均一性との関係を示す図である。
図3には、二重シード層5上にモノシランガスを用いて形成したシリコン含有薄膜6(実施形態)、アミノシラン系ガスのみを用いて形成した単一シード層上にジシランガスを用いて形成したシリコン含有薄膜(比較例1)、及びシード層を形成せずに下地(SiO)上にジシランガスを用いて形成したシリコン含有薄膜(比較例2)の3つの薄膜の膜厚と面内均一性との関係が示されている。なお、膜厚は、シード層有りの場合には、シード層の膜厚とシリコン含有薄膜の膜厚とを合計した値である。
【0045】
図3に示すように、比較例1、比較例2においては、面内均一性の最も良い値は、約±2〜4%である。対して、実施形態において最も良い面内均一性の値は、約±1%である。しかも、約±1%の良好な面内均一性は、膜厚が10nm付近でも維持される。つまり、実施形態は、膜厚が増しても良好な面内均一性を保つことができる、ということである。
【0046】
また、膜厚が薄い方を見て行くと、3.5nm未満では実施形態よりも、比較例1の方が、面内均一性が良好となる。この傾向から、二重シード層5上にモノシランガスを用いて形成したシリコン含有薄膜6において、約±1%の良好な面内均一性を得たい場合には、厚さ3.5nm以上とすると良い。
【0047】
なお、このことは、厚さ3.5nm未満のシリコン含有薄膜(二重シード層5の厚さ込み)6は採用不可である、ということを示すものではない。面内均一性が約±4〜15%でもユーザーの要求を満たすのであれば、厚さ3.5nm未満のシリコン含有薄膜6を用いても何等支障はない。ただし、シリコン含有薄膜6の厚さを二重シード層5の厚さ込みで3.5nm以上とすると、約±1%の良好な面内均一性が得られる、という更なる利点を享受できる、ということである。
【0048】
このように第1の実施形態によれば、シード層を、アミノシラン系ガスを用いて形成した第1シード層3と、ジシラン以上の高次シラン系ガスを用いて形成した第2シード層4とを含む二重シード層5とすることで、薄膜の面内均一性の更なる向上を可能とする、薄膜を形成するためのシード層の形成方法及びそのシード層を用いたシリコン含有薄膜の成膜方法を得ることができる。
【0049】
(第2の実施形態)
図4はこの発明の第2の実施形態に係るシード層の形成方法及びシリコン含有薄膜の成膜方法一例を示す流れ図、図5A〜図5Cは第2の実施形態に係るシード層の形成方法及びシリコン含有薄膜の成膜方法の主要な工程を示す断面図である。
【0050】
第2の実施形態が、第1の実施形態に対して特に異なるところは、第1の実施形態においては、二重シード層5であったところを、アミノシラン系ガスを用いて形成したシード層と、ジシラン以上の高次シラン系ガスを用いて形成したシード層とを複数積層し、多重シード層としたことである。
【0051】
即ち、図4のステップ13、及び図5Aに示すように、第1の実施形態で説明したステップ12の後、アミノシラン系ガスを用いて、上記ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコン*2が堆積された下地、即ち第2シード層4上に、アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコン*1を再吸着させ、第3シード層7を形成する。第3シード層7の形成には、第1シード層3の形成と同様に、例えば、ALD法が用いられる。
【0052】
第3シード層7の形成に使用されるアミノシラン系ガスの例は、第1の実施形態で説明したアミノシラン系ガスの例と同じである。もちろん、第1シード層3の形成に使用したアミノシラン系ガスを、そのまま第3シード層7の形成に使用しても良い。本例では、第1シード層3の形成に使用したDIPASを用いた。
【0053】
第3シード層7を形成する際の処理条件の一例は、
DIPAS流量: 200sccm
処 理 時 間: 10sec
処 理 温 度: 400℃
処 理 圧 力: 133.3Pa( 1Torr)
である。
【0054】
次に、図4のステップ14、及び図5Bに示すように、ジシラン以上の高次シラン系ガスを用いて、アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコン*1が再吸着された下地、即ち第3シード層7上に、ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコン*2を再堆積させ、第4シード層8を形成する。第4シード層8の形成には、第2シード層4の形成と同様に、例えば、CVD法が用いられる。
【0055】
第4シード層8の形成に使用されるジシラン以上の高次シラン系ガスの例は、第1の実施形態で説明したジシラン以上の高次シラン系ガスの例と同じである。もちろん、第2シード層4の形成に使用したジシラン以上の高次シラン系ガスを、そのまま第4シード層8の形成に使用しても良い。本例では、第2シード層4の形成に使用したジシランを用いた。
【0056】
第4シード層8を形成する際の処理条件の一例は、
ジシラン 流量: 200sccm
処 理 時 間: 1min
処 理 温 度: 400℃
処 理 圧 力: 133.3Pa( 1Torr)
である。
【0057】
次に、図4のステップ15に示すように、シード層の積層数が所定の積層数に達したか否かを判断する。達していない場合(No)には、再度ステップ13に戻り、ステップ13及びステップ14を繰り返す。達した場合(Yes)には、ステップ2に進み、図5Cに示すように、少なくとも第1シード層3〜第4シード層8の4つの層を含む多重シード層9上に、シリコン含有薄膜6を形成する。シリコン含有薄膜6の形成方法については、第1の実施形態で説明したシリコン含有薄膜6の形成方法と同じで良い。
【0058】
このように、シード層は、少なくとも第1シード層3〜第4シード層8の4つの層を含む多重シード層9とすることが可能である。シード層を多重シード層9としても、第1の実施形態と同様の利点を得ることができる。
【0059】
なお、第3シード層7、及び第4シード層8は、第1の実施形態で説明した第1シード層3、及び第2シード層4の変形と、同じ変形が可能である。
【0060】
例えば、第4シード層8にあっては、第1の実施形態と同様に、ドーパントのドープも可能であるし、多重シード層9の状態にあっては、アモルファス状態でよい。
【0061】
同様に、シリコン含有薄膜6についても、第1の実施形態で説明した変形と同様の変形が可能である。
【0062】
(第3の実施形態)
図6はこの発明の第3の実施形態に係るシード層の形成方法及びシリコン含有薄膜の成膜方法一例を示す流れ図、図7A、図7Bは第3の実施形態に係るシード層の形成方法及びシリコン含有薄膜の成膜方法の主要な工程を示す断面図である。
【0063】
第3の実施形態が、第1の実施形態に対して特に異なるところは、第1の実施形態においては、二重シード層5であったところを、アミノシラン系ガス及びジシラン以上の高次シラン系ガスの双方を用いて形成した混合シード層としたことである。
【0064】
即ち、図6のステップ16、及び図7Aに示すように、下地、本例ではシリコン酸化物膜2上に、アミノシラン系ガス、及びジシラン以上の高次シラン系ガスを用いて、混合シード層10を形成する。混合シード層10は、例えば、アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコン*1を下地上、本例ではシリコン酸化物膜2上に吸着させながら、上記シリコン*1が吸着しなかったサイトを、ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコン*2で埋めつつ、上記シリコン*2を堆積しながら形成される。
【0065】
混合シード層10を形成する際の処理条件の一例は、
DIPAS流量: 200sccm
ジシラン 流量: 200sccm
処 理 時 間: 15.4min
処 理 温 度: 400℃
処 理 圧 力: 133.3Pa( 1Torr)
である。
次に、図6のステップ2、及び図7Bに示すように、混合シード層10上に、シリコン含有薄膜6を形成する。シリコン含有薄膜6の形成方法については、第1の実施形態で説明したシリコン含有薄膜6の形成方法と同じで良い。
【0066】
このように、シード層は、アミノシラン系ガス、及びジシラン以上の高次シラン系ガスを用い、例えば、これらのガスを同時に流すことで形成した混合シード層10とすることが可能である。シード層を混合シード層10としても、第1の実施形態と同様の利点を得ることができる。
【0067】
なお、シリコン含有薄膜6は、第1の実施形態で説明した変形と同様の変形が可能である。
【0068】
以上、この発明をいくつかの実施形態に従って説明したが、この発明は、上記実施形態に限定されることは無く、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態においては、処理条件を具体的に例示したが、処理条件は、上記具体的な例示に限られるものではない。
【0070】
また、下地としては、シリコン酸化物膜2を例示したが、下地は、シリコン酸化物膜2に限られるものではない。例えば、シリコン窒化膜であっても良いし、多結晶シリコン膜であっても、シリコン基板1であっても良い。もちろん、タングステンや銅などの内部配線層を構成するような金属膜であっても良い。さらには、キャパシタなどの誘電体膜として使用されるようなタンタル酸化膜などシリコン酸化膜よりも高い比誘電率を持つ誘電体膜であっても良い。
【0071】
また、アミノシラン系ガスとしては、分子式中のシリコン(Si)が1つとなるものに限られるものではなく、分子式中のシリコンが2つとなるもの、例えば、ヘキサキスエチルアミノジシラン(C12H36NSi)なども用いることができる。
【0072】
さらに、ヘキサキスエチルアミノジシランの他、下記の式(1)〜(4)により表示される物質も用いることができる。
(1) (((R1R2)N)nSiH-n-m(R3)m …n:アミノ基の数 m:アルキル基の数
(2) ((R1)NH)nSiH-n-m(R3)m …n:アミノ基の数 m:アルキル基の数
(1)、(2)式において、
R1、R2、R3 = CH、CH、CH
R1 = R2 = R3、または同じでなくても良い。
n = 1〜6の整数
m = 0、1〜5の整数

(3) (((R1R2)N)nSiH-n-m(Cl)m …n:アミノ基の数 m:塩素の数
(4) ((R1)NH)nSiH-n-m(Cl)m …n:アミノ基の数 m:塩素の数
(3)、(4)式において
R1、R2 = CH、CH、CH
R1 = R2、または同じでなくても良い。
n = 1〜6の整数
m = 0、1〜5の整数
その他、この発明はその要旨を逸脱しない範囲で様々に変形することができる。
【符号の説明】
【0073】
1…シリコン基板、2…シリコン酸化物膜、3…第1シード層、4…第2シード層、5…二重シード層、6…シリコン含有薄膜、7…第3シード層、8…第4シード層、9…多重シード層、10…混合シード層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地上に、薄膜のシードとなるシード層を形成するシード層の形成方法であって、
(1) アミノシラン系ガスを用いて、前記下地上に、前記アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコンを吸着させる工程と、
(2) ジシラン以上の高次シラン系ガスを用いて、前記アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコンが吸着された前記下地上に、前記ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコンを堆積する工程と、
を具備することを特徴とするシード層の形成方法。
【請求項2】
前記(1)工程における前記シリコンの吸着が、ALD法を用いたシリコンの単原子層オーダーの吸着で行われ、
前記(2)工程における前記シリコンの堆積が、CVD法を用いたCVD反応によるシリコンの堆積で行われることを特徴とする請求項1に記載のシード層の形成方法。
【請求項3】
前記(2)工程の後に、
(3) 前記アミノシラン系ガスを用いて、前記ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコンが堆積された下地上に、前記アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコンを再吸着させる工程と、
(4) 前記ジシラン以上の高次シラン系ガスを用いて、前記アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコンが再吸着された前記下地上に、前記ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコンを再堆積する工程と、
を具備し、前記(3)工程、及び前記(4)工程を、少なくとも1回以上繰り返すことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシード層の形成方法。
【請求項4】
前記(3)工程における前記シリコンの吸着が、ALD法を用いたシリコンの単原子層オーダーの吸着で行われ、
前記(4)工程における前記シリコンの堆積が、CVD法を用いたCVD反応によるシリコンの堆積で行われることを特徴とする請求項3に記載のシード層の形成方法。
【請求項5】
前記(4)工程において、前記ジシラン以上の高次シラン系ガスとともに、
ボロン(B)
リン(P)
ヒ素(As)
酸素(O)
炭素(C)
窒素(N)
から選ばれる少なくとも一つのドーパントを含むガスを供給し、前記アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコンが吸着された前記下地上に、前記ドーパントを含有させつつ、前記ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコンを堆積することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のシード層の形成方法。
【請求項6】
前記(2)工程において、前記ジシラン以上の高次シラン系ガスとともに、
ボロン(B)
リン(P)
ヒ素(As)
酸素(O)
炭素(C)
窒素(N)
から選ばれる少なくとも一つのドーパントを含むガスを供給し、前記アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコンが吸着された前記下地上に、前記ドーパントを含有させつつ、前記ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコンを堆積することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のシード層の形成方法。
【請求項7】
下地上に、薄膜のシードとなるシード層を形成するシード層の形成方法であって、
アミノシラン系ガス、及びジシラン以上の高次シラン系ガスを用いて、
前記アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコンを前記下地に吸着させつつ、
前記アミノシラン系ガスに含まれた少なくともシリコンが吸着しなかったサイトを、前記ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコンで埋めつつ、
前記ジシラン以上の高次シラン系ガスに含まれた少なくともシリコンを前記下地上に堆積して前記シード層を形成することを特徴とするシード層の形成方法。
【請求項8】
前記アミノシラン系ガスが、
BAS(ブチルアミノシラン)
BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)
DMAS(ジメチルアミノシラン)
BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)
TDMAS(トリジメチルアミノシラン)
DEAS(ジエチルアミノシラン)
BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)
DPAS(ジプロピルアミノシラン)
DIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)
ヘキサキスエチルアミノジシラン
(1) (((R1R2)N)nSiH-n-m(R3)m
(2) ((R1)NH)nSiH-n-m(R3)m
(3) (((R1R2)N)nSiH-n-m(Cl)m
(4) ((R1)NH)nSiH-n-m(Cl)m
の少なくとも一つを含むガスから選ばれることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のシード層の形成方法。
(ただし、(1)、(2)式において、n:アミノ基の数、m:アルキル基の数、
(3)、(4)式において、n:アミノ基の数、m:塩素の数、
(1)〜(4)式において、n = 1〜6の整数、m = 0、1〜5の整数、
R1、R2、R3 = CH、CH、CH R1 = R2 = R3、または同じでなくても良い。)
【請求項9】
前記ジシラン以上の高次シラン系ガスが、
Si
Si2m+2(ただし、mは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物、及び
Si2n(ただし、nは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物
の少なくとも一つを含むガスから選ばれることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のシード層の形成方法。
【請求項10】
前記Si2m+2(ただし、mは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物が、
トリシラン(Si
テトラシラン(Si10
ペンタシラン(Si12
ヘキサシラン(Si14
ヘプタシラン(Si16
の少なくとも一つから選ばれ、
前記Si2n(ただし、nは3以上の自然数)の式で表されるシリコンの水素化物が、
シクロトリシラン(Si
シクロテトラシラン(Si
シクロペンタシラン(Si10
シクロヘキサシラン(Si12
シクロヘプタシラン(Si14
の少なくともいずれか一つから選ばれることを特徴とする請求項9に記載のシード層の形成方法。
【請求項11】
前記シード層の厚さは、0nmを超え2nm以下の範囲とされることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のシード層の形成方法。
【請求項12】
前記シード層は、アモルファスであることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のシード層の形成方法。
【請求項13】
下地上にシード層を形成し、前記シード層上にシリコン含有薄膜を成膜するシリコン含有薄膜の成膜方法であって、
(1) 前記下地上に、前記シード層を形成する工程と、
(2) 前記シード層上に、前記シリコン含有薄膜を形成する工程と、を備え、
前記(1)工程が、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のシード層の形成方法を用いて行われることを特徴とするシリコン含有薄膜の成膜方法。
【請求項14】
前記シリコン含有薄膜がシリコン膜であるとき、
前記シリコン膜の原料ガスとして、前記ジシラン以上の高次シラン系ガスよりも低次の低次シラン系ガスを用いることを特徴とする請求項13に記載のシリコン含有薄膜の成膜方法。
【請求項15】
前記ジシラン以上の高次シラン系ガスがジシランガスであるとき、
前記シリコン膜の原料ガスとして、モノシランガスを用いることを特徴とする請求項14に記載のシリコン含有薄膜の成膜方法。
【請求項16】
前記シリコン含有薄膜がシリコンゲルマニウム膜であるとき、
前記シリコンゲルマニウム膜の原料ガスとして、前記ジシラン以上の高次シラン系ガスよりも低次の低次シラン系ガス、及びモノゲルマンガスを用いることを特徴とする請求項13に記載のシリコン含有薄膜の成膜方法。
【請求項17】
前記ジシラン以上の高次シラン系ガスがジシランガスであるとき、
前記シリコンゲルマニウム膜の原料ガスとして、モノシランガス、及び前記モノゲルマンを用いることを特徴とする請求項16に記載のシリコン含有薄膜の成膜方法。
【請求項18】
前記シリコン含有薄膜に、
ボロン(B)
リン(P)
ヒ素(As)
酸素(O)
炭素(C)
窒素(N)
の少なくともいずれか一つから選ばれるドーパントがドープされることを特徴とする請求項13から請求項17のいずれか一項に記載のシリコン含有薄膜の成膜方法。
【請求項19】
前記ドーパントは、前記シリコン含有薄膜の成膜中、又は前記シリコン含有薄膜の成膜後にドープされることを特徴とする請求項18に記載のシリコン含有薄膜の成膜方法。
【請求項20】
前記シリコン含有薄膜の成膜後の状態が、
アモルファス状態
アモルファス状態とナノ結晶状態とが混在した状態
ナノ結晶状態
多結晶状態
のいずれか一つであることを特徴とする請求項13から請求項19のいずれか一項に記載のシリコン含有薄膜の成膜方法。
【請求項21】
前記シリコン含有薄膜の成膜後の状態が、前記シリコン含有薄膜の成膜中に決定される、又は前記シリコン含有薄膜の成膜後の処理により決定されることを特徴とする請求項20に記載のシリコン含有薄膜の成膜方法。
【請求項22】
前記シリコン含有薄膜の厚さは、0nmを超え100nm以下の範囲とされることを特徴とする請求項13から請求項21のいずれか一項に記載のシリコン含有薄膜の成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−95945(P2013−95945A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237987(P2011−237987)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】