説明

シーミングスピンドルからのスリーブ取り外し装置

【課題】缶蓋巻締機のシーミングスピンドルから、オイルシールの摺動面を有するスリーブを、オイルシール摺接面に傷を付けることなく簡単に外せるようにする。
【解決手段】半円環状部材11,12からなる円環状部材1と、棒状部材2と板状部材3とネジ棒部材4と雌ねじ部材5と芯出し部品6を有する。棒状部材2の一端を半円環状部材11,12に固定し、雌ねじ部材5を板状部材3の中央に固定し、ネジ棒部材4を雌ねじ部材5の雌ねじ51aに螺合し、ネジ棒部材4の先端に軸受部品を介して芯出し部品6を取り付けた。半円環状部材11,12は、シーミングスピンドル102のフランジ102aの凹部102bに嵌まる凸部14aを有する。凸部14aを凹部102bに嵌めて、円環状部材1の中心穴10内に隙間を介してスリーブ109を配置し、芯出し部品6で芯出しを行った後に棒状部材2を板状部材3に固定して、ネジ棒部材4を回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、缶蓋巻締機(シーマー)のシーミングスピンドルから、オイルシールの摺動面を有するスリーブを外す装置に関する。
【背景技術】
【0002】
缶蓋巻締機は、缶の本体(胴)にビールやジュースなどを入れた後、本体の上端縁部に蓋の周縁部を巻いて締めつけることで、本体に蓋を固定する装置であり、例えば図5に示すものが挙げられる(下記の特許文献1参照)。
図5の缶蓋巻締機は、シーミングヘッド101と、シーミングスピンドル102と、ノックアウトロッド103と、シーミングロール104と、リフター105を備えている。シーミングヘッド101は、図示しない左側の軸を中心として公転するように構成されている。シーミングヘッド101の公転軌道の円周方向に、複数のシーミングスピンドル102が等間隔で配置され、シーミングヘッド101に対して各シーミングスピンドル102が、転がり軸受106により回転(自転)自在に支持されている。
【0003】
シーミングヘッド101の転がり軸受106の上部には、潤滑油のオイルタンクとなる空間101aが設けてあり、この空間(オイルタンク)101aから転がり軸受106に潤滑油が供給される。転がり軸受106の下端には、クランプリング107によりオイルシール108が取り付けられている。
シーミングスピンドル102は、最も下側に配置された転がり軸受106の内輪の下端面を保持するフランジ102aを有し、このフランジ102aより先端側の外径が基端側より小さく形成されている。この小径部102bにスリーブ109とカラー110が外嵌されている。スリーブ109とカラー110は、内面に溝を設けてこの溝にOリング111を取り付けることにより、シーミングスピンドル102の小径部102bに強固に外嵌されている。
【0004】
このスリーブ109のフランジ102a側の外周面が、オイルシール108のリップ部が接触する摺接面となっている。カラー110はスリーブ109の位置調整用のスペーサ(シーミングチャック112とスリーブ109との間を埋めるもの)として配置されている。そして、シーミングスピンドル102の最も先端(小径部102bよりさらに外径が小さい部分)の外周面に、シーミングチャック112が螺合されている。
【0005】
シーミングスピンドル102には、ガイドリング113を介してノックアウトロッド103が内挿され、ノックアウトロッド103の先端に、缶の蓋121を押さえるパッド103aが設けてある。
シーミングロール104は、図示しないシーミングシャンクシャフト下端に支持されたシーミングレバー114により、リフター105に置かれた缶の胴122に向かって接近するように、また公転および自転自在となるように支持されている。
【0006】
この缶蓋巻締機は以下のように駆動する。
手前の工程で、缶の胴122内にビールやジュースなどの液体が入り、その上に蓋121を載せたものが、リフター105の上に置かれている。先ず、このリフター105が、シーミングスピンドル102の下方に配されて、上昇し、シーミングチャック112が蓋121の外縁部と胴122の上端縁部を押さえる。
【0007】
次に、ノックアウトロッド103の先端のパッド103aを蓋121に押し当てる。次に、シーミングロール104をチャック112に接近させて、シーミングスピンドル102を回転させるとともに、シーミングロール104を回転させることにより、蓋121の周縁部を胴122の上端縁部に巻き締め固定する。
このような缶蓋巻締機では、上方のオイルタンク101aから潤滑油が転がり軸受106に供給されており、潤滑油が漏れると下側に配置された缶に付着する恐れがあるため、オイル漏れを確実に防止する必要がある。そのために、オイルシール108を取り付けるとともに、クランプリング107にラビリンスリール107aを設けているが、漏れが生じた場合には缶蓋巻締機の駆動を停止してオイルシール108を交換する必要がある。
【0008】
オイルシール108の交換時には、スリーブ109とカラー110が存在しない状態で新しいオイルシール108を取り付ける必要がある。そのため、シーミングスピンドル102からシーミングチャック112とスリーブ109とカラー110を外す作業が必要となる。
シーミングチャック112は、シーミングスピンドル102の先端部に螺合されているため、その取り外しは特に問題なくできる。しかし、スリーブ109とカラー110は、内面の溝にOリング111を入れて、シーミングスピンドル102に強固に取り付けられているため、簡単に引き抜くことができない。
【0009】
そのため、スリーブ109とカラー110を取り外す作業に時間がかかったり、プーリー抜きなどの道具で無理に引き抜こうとして、外周面に傷を付けたりする恐れがある。特に、スリーブ109のオイルシール108が摺接する面に傷が付くと、そのスリーブ109を使用できなくなる。
下記の特許文献2には、回転軸に圧挿されるインナーレース外周の環状溝にスナップリングが嵌挿された軸受のインナーレースを、前記回転軸から取り外す軸受のインナーレース取り外し装置が提案されている。この装置は、前記インナーレースの外周を径方向に挟み込む複数に分割された挟持部材と、前記挟持部材の一側に設けられ前記スナップリングに係合する係合部と、複数の連結部材を介して前記挟持部材に連結され中心部にねじ穴が貫設された支持部材と、抜出し用ボルトと、を備えている。
【0010】
前記抜き出し用ボルトは、前記支持部材のねじ穴に螺合されるとともに、先端部が前記回転軸の軸端面に当接可能にされ、先端部を前記回転軸の軸端面に当接し前記支持部材のねじ穴にねじ込むことにより、前記インナーレースを前記挟持部材及びスナップリングを介して前記回転軸から抜き出すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−172457号公報
【特許文献2】特開2007−44822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明の課題は、缶蓋巻締機のシーミングスピンドルから、オイルシールの摺動面を有するスリーブを外す装置として、オイルシール摺接面に傷を付けることなくスリーブを簡単に外すことができる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、この発明は、シーミングヘッドと、シーミングヘッドに転がり軸受を介して回転自在に支持されているシーミングスピンドルと、を有し、前記シーミングスピンドルは、前記転がり軸受を構成する内輪のオイルシールが配置される下側の端面を保持するフランジを有し、このフランジは径方向に延びる複数の凹部を有し、前記フランジの下側に前記オイルシールの摺動面を有するスリーブが外嵌されている缶蓋巻締機の、前記シーミングスピンドルから前記スリーブを外す、シーミングスピンドルからのスリーブ取り外し装置であって、下記の構成(1) 〜(9) を有することを特徴とする。
【0014】
(1) 前記スリーブが所定の隙間を介して配置される中心穴を有する外包部材が、前記スリーブの周方向で分割された複数の分割体。
(2) 前記各分割体に形成された、前記中心穴からスリーブ側に突出して前記複数の凹部に嵌まる凸部。
(3) 前記複数の分割体を結合する結合部材。
(4) 前記各分割体からスリーブの軸方向に延びる棒状部材。
(5) 中央に板面を貫通する雌ねじが形成され、周辺に前記棒状部材の先端を係合する係合部を有する板状部材。
(6) 前記棒状部材の先端を、前記板状部材の係合部に固定する固定部材。
(7) 前記板状部材の前記雌ねじに螺合されたネジ棒部材。
(8) 前記シーミングスピンドルの先端面に接触させる端面と、前記シーミングスピンドルの先端部内に挿入する突起と、を有し、前記ネジ棒部材の前記板状部材から前記外包部材側に突出させる側の先端に、ネジ棒部材の回転を許容するように取り付けられた芯出し部材。
(9) 前記ネジ棒部材の前記芯出し部材が取り付けられた先端とは反対の端部に設けられた操作部。
【0015】
この発明のスリーブ取り外し装置は、缶蓋巻締機からシーミングスピンドルを前記転がり軸受とスリーブが付いた状態で外したものに対して、以下の方法で使用する。
先ず、前述のように取り外されたものを、シーミングスピンドルの先端側を上にして置き、下部を動かないように支持した状態で、前記複数の分割体を前記棒状部材の先端を上側に向けた状態で、シーミングスピンドルに外嵌されているスリーブの径方向外側に配置して、各分割体の前記凸部をシーミングスピンドルの前記フランジの凹部に嵌める。この状態で各分割体を結合部材で結合する。これにより、前記スリーブが前記外包部材(分割体が結合されたもの)の中心穴に所定の隙間を介して配置され、前記スリーブの前記フランジ側の端面が前記凸部の上に配置される。
【0016】
次に、前記ネジ棒部材が螺合されている板状部材を、ネジ棒部材の先端(芯出し部材側)を下方に向けて前記シーミングスピンドルの上方に配置し、この板状部材の係合部に、前記各分割体から上方に延びている前記棒状部材の先端を係合する。この状態で前記操作部を操作して、前記板状部材に螺合されているネジ棒部材を下向きに回転させることで、前記芯出し部の突起をシーミングスピンドルの先端部内に挿入し、前記芯出し部の端面をシーミングスピンドルの先端面に当てる。前記棒状部材の長さはこの状態が実現できる長さとする。これにより、シーミングスピンドルと前記ネジ棒部材の芯出しが行われる。次に、前記棒状部材の先端を前記板状部材の係合部に固定する。
【0017】
この状態で、前記ネジ棒部材をさらに同じ向きに回転させ続けることで、前記芯出し部の端面がシーミングスピンドルの端面に強く押し付けられ、ネジ棒部材が下降できなくなると、ネジ棒部材が螺合している雌ねじを有する板状部材が上昇する。これに伴って、前記板状部材に固定されている前記棒状部材とともに前記外包部材も上昇する。この外包部材の前記凸部の上に前記スリーブの前記フランジ側の端面が配置されているため、この外包部材の上昇に伴って、前記凸部が前記スリーブを上方に移動する。
【0018】
ここで、前記ネジ棒部材の長さを、取り外し対象となるスリーブの軸方向寸法とそのシーミングスピンドルに対する外嵌位置に応じて、前記移動によりスリーブがシーミングスピンドルの外嵌位置から外せる長さにしておくことで、前記移動により前記スリーブがシーミングスピンドルから取り外される。また、前記スリーブが前記外包部材の中心穴に所定の隙間を介して配置されていることから、前記スリーブの内周面は前記外包部材の内周面と接触しないため、取り外しの際に前記スリーブの外周面に傷が生じない。
【発明の効果】
【0019】
この発明のスリーブ取り外し装置によれば、オイルシール摺接面に傷を付けることなくシーミングスピンドルからスリーブを簡単に外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施形態に相当するスリーブ取り外し装置を、組み立てた状態で上側から見た斜視図である。
【図2】この発明の一実施形態に相当するスリーブ取り外し装置を、組み立てた状態で下側から見た斜視図である。
【図3】実施形態のスリーブ取り外し装置をシーミングスピンドルに取り付けている途中の状態を示す斜視図である。
【図4】実施形態のスリーブ取り外し装置とスリーブおよびシーミングスピンドルとの関係を示す断面図であって、(a)は、スリーブ取り外し装置の取り付けが完了した状態(芯出し状態)を示し、(b)は、スリーブ取り外し装置によるスリーブ取り外し作業の最終段階を示す。
【図5】缶蓋巻締機のシーミングスピンドルの部分を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態について説明する。
図1および2は、この実施形態のスリーブ取り外し装置を示す図である。図1は、組み立てた状態で上側から見た斜視図であり、図2は組み立てた状態で下側から見た斜視図である。
この実施形態のスリーブ取り外し装置は、一対の半円環状部材(複数の分割体)11,12からなる円環状部材(外包部材)1と、4本の棒状部材2と、板状部材3と、ネジ棒部材4と、雌ねじ部材5と、芯出し部品(芯出し部材)6を備えている。
【0022】
半円環状部材11の半円環状部材12と向かい合う各端面に、突起11aが形成されている。この突起11aが嵌まる凹部12aが半円環状部材12に形成されている。半円環状部材12の凹部12aの近くに、外周面から半円環状部材11と向かい合う端面に貫通する貫通孔12bが形成されている。この貫通孔12bは大径部と小径部で構成され、端面側が小径部で外周面側が大径部となっている。外周面側の大径部にボルト13の頭部が配置され、小径部にボルト13の軸部が配置される。
【0023】
半円環状部材11にも、外周面から半円環状部材12と向かい合う端面に貫通する貫通孔11bが形成されている。この貫通孔11bも大径部と小径部で構成され、端面側が小径部で外周面側が大径部となっている。端面側の小径部にボルト13の先端部が螺合するネジ溝が形成されている。
半円環状部材11と半円環状部材12は、半円環状部材11の突起11aを半円環状部材12の凹部12aに嵌め、半円環状部材12の貫通孔12bから挿入したボルト(結合部材)13の先端を半円環状部材11のネジ溝に螺合することで結合されて、円環状部材(外包部材)1となる。この円環状部材1の中心穴10の直径が、取り外し対象のスリーブの外径より少し(例えば4mm以上)大きい寸法に設計されている。これにより、円環状部材1の中心穴10に、取り外すスリーブが所定の隙間を介して(スリーブの外周面と円環状部材1の内周面との間隔が、例えば2mm以上となるように)配置される。
【0024】
また、半円環状部材11と半円環状部材12の下面(棒状部材2が延びている側の反対面)の周方向中心に、径方向に延びる溝11c,12cが形成されている。この溝11c,12cに突起部材14の基端を嵌めて、止めネジ15で固定することで、その先端部(凸部)14aを中心穴10内に(中心穴10のスリーブ側に)突出させている。
4本の棒状部材2は、長さ方向両端に雄ねじが形成されていて、一端の雄ねじが、各半円環状部材11,12の周方向の二カ所(周方向中心からの距離が同じになる位置)に設けた雌ねじに螺合されている。これにより、各半円環状部材11,12の上面から各2本の棒状部材2が垂直に(スリーブの軸方向に)延びている。各棒状部材2の上端(他端)部は小径部となっていて、この小径部に雄ねじ21が形成されている。
【0025】
板状部材3の平面形状は長方形であって、その中心点から同距離で離れた4カ所に、棒状部材2の小径部(上端部)を貫通させる貫通孔(係合部)31が形成されている。貫通孔31の直径は、棒状部材2の小径部より大きく(小径部を遊嵌させる寸法)、棒状部材2の主要部(小径部以外の部分)より小さく形成されている。また、棒状部材2の小径部の軸方向の寸法を、板状部材3の板厚方向の寸法よりも大きくしてある。
【0026】
これにより、棒状部材2の上端部を板状部材3の貫通孔31に挿入した時に、両者の間に隙間が存在し、棒状部材2の小径部下端のフランジ面21a(図3参照)で板状部材3の下面が支持され、棒状部材2の雄ねじ21が板状部材3の上側に突出する。この雄ねじ21の突出した部分に蝶ナット22を螺合することで、棒状部材2の上端が板状部材3に固定される。
【0027】
板状部材3には、また、面内の中央に前記長方形の中心点を中心とした貫通孔32が形成され、これを挟んで径方向に沿った位置に1対の雌ねじ孔33が形成されている。これらの孔を利用して、ネジ棒部材4を螺合させる雌ねじ部材5が、固定用ボルト53により板状部材3に取り付けてある。これにより、板状部材3に中央を貫通する雌ねじが形成されている。
雌ねじ部材5は、貫通孔32に配置される胴部51と、板状部材3の下面に配置されるフランジ部52とからなり、胴部51にネジ棒部材4を螺合させる雌ねじ51aが形成されている。フランジ部52には、板状部材3の雌ねじ孔33と連通させて、固定用ボルト53の頭部を配置する貫通孔52aが形成されている。
【0028】
ネジ棒部材4は、雌ねじ部材5に螺合される雄ねじが形成された雄ねじ部41と、それより上方(基端)に形成された六角棒部(操作部)42とからなる。ネジ棒部材4の雄ねじ部41より下方(先端)に、軸受部品43を介して芯出し部品6が取り付けてある。軸受部品43は、雄ねじ部41の先端が固定された軸部43aと、内輪43bと、外輪43cとからなり、軸部43aと内輪43bは一体に形成されている。
半円環状部材11,12、棒状部材2、板状部材3、およびネジ棒部材4はSUS304製であり、雌ねじ部材5は砲金(スズを8〜12%含む青銅)製である。
【0029】
芯出し部品6は、大径部61と小径部62とからなり、先端の小径部62がシーミングスピンドルの先端部内に挿入される突起である。大径部61の小径部62側の端面61aがシーミングスピンドルの先端面に押し当てる部分である。大径部61に軸受部品43の外輪43cを収める凹部が形成されている。この芯出し部品6はナイロン製であり、大径部61の凹部を弾性変形させて外輪43cに外嵌することで、外輪43cに固定されている。
【0030】
これにより、ネジ棒部材4が回転した時に、軸受部品43の軸部43aと内輪43bは回転するが、軸受部品43の外輪43cと芯出し部品6は回転しない。すなわち、芯出し部品6は、軸受部品43によりネジ棒部材4の先端に、ネジ棒部材4の回転を許容するように取り付けられている。
以上のように、この実施形態のスリーブ取り外し装置は、使用する前の状態で、各2本の棒状部材2が固定された1対の半円環状部材11,12からなる支持部品と、板状部材3に雌ねじ部材5を介して、先端に芯出し部品6が取り付けられたネジ棒部材4が螺合されている移動部品と、ボルト13と、蝶ネジ22と、に分かれている。
【0031】
この実施形態のスリーブ取り外し装置は、以下のようにして使用する。
先ず、図5に示す缶蓋巻締機のシーミングスピンドル102から、シーミングチャック112を外した後、クランプリング107を外してオイルシール108を外す。この状態でシーミングスピンドル102を引き抜くと、シーミングスピンドル102が転がり軸受106とスリーブ109およびカラー110が付いた状態で外れる。これを、シーミングスピンドル102の先端側を上にして置き、下部を動かないように固定する。
【0032】
次に、この状態のスリーブ109およびシーミングスピンドル102に、以下の方法で支持部品を取り付ける。
すなわち、図3に示すように、各半円環状部材11,12を、棒状部材2の雄ねじ21を上側に向けた状態で、シーミングスピンドル102に外嵌されているスリーブ109の径方向外側に配置して、各半円環状部材11,12の凸部14a(突起部材14の先端部)をシーミングスピンドル102のフランジ102aの凹部102bに嵌める。次に、半円環状部材11の突起11aを半円環状部材12の凹部12aに嵌め、半円環状部材12の貫通孔12bから挿入したボルト13の先端を、半円環状部材11の貫通孔11bのネジ溝に螺合する。
これにより、図4(A)に示すように、円環状部材1の中心穴10にスリーブ109が所定の隙間を介して配置された状態となり、スリーブ109のフランジ102a側の端面が凸部14aの上に配置される。
【0033】
次に、この状態の支持部品およびシーミングスピンドル102に、以下の方法で移動部品を取り付ける。
すなわち、先ず、ネジ棒部材4の雄ねじ部41の板状部材3からの突出量を、芯出し部品6が固定された側で少なくなるようにする。次に、ネジ棒部材4の芯出し部品6側を下方に向けて、板状部材3をシーミングスピンドル102の上方に配置し、4本の棒状部材2の雄ねじ21が形成されている上端部を、板状部材3の各貫通孔31に入れる。この状態で、棒状部材2の上端部(小径部)と板状部材3の貫通孔31との間に隙間が存在し、板状部材3の上側に雄ねじ21が突出し、棒状部材2の小径部下端のフランジ面21aで板状部材3の下面が支持される。
【0034】
この状態で、六角棒部42を回してネジ棒部材4を下向きに回転させることにより、芯出し部品6の小径部(突起)62をシーミングスピンドル102の先端部内に挿入し、芯出し部品6の端面61aをシーミングスピンドル102の先端面102cに当てる。これにより、シーミングスピンドル102とネジ棒部材4の芯出しが行われる。次に、各棒状部材2の雄ねじ21に蝶ナット22を螺合することで、棒状部材2の上端を板状部材3に固定する。図4(A)はこの状態を示している。
【0035】
この状態からさらに、六角棒部42を同じ向きに回し続けて、ネジ棒部材4を下向きに回転させ続ける。これに伴い、芯出し部品6の端面61aがシーミングスピンドル102の端面102cに強く押し付けられて、ネジ棒部材4が下降できなくなると、ネジ棒部材4が雌ねじ部材5を介して螺合されている板状部材3が上昇する。
これに伴って、板状部材3に固定されている棒状部材2とともに円環状部材1が上昇する。この円環状部材1の上昇に伴って、凸部14aがスリーブ109を上方に移動することにより、スリーブ109とその上方のカラー110がシーミングスピンドル102から取り外される。図4(B)はこの状態を示している。
【0036】
この取り外しの際に、スリーブ109は円環状部材1の中心穴10に所定の隙間を介して配置されているため、スリーブ109の外周面に傷が生じない。また、砲金製の雌ねじ部材5を板状部材3に固定することで、板状部材3の中央に雌ねじ51aを形成しているため、雌ねじ51aに螺合されたネジ棒部材4をスムーズに回転できる。さらに、ネジ棒部材4の先端に軸受部品43を介して芯出し部品6が取り付けられているため、芯出し部品6による芯出し状態を保持しながら、ネジ棒部材4をスムーズに回転できる。
【符号の説明】
【0037】
1 円環状部材(外包部材)
10 中心穴
11 半円環状部材(分割体)
12 半円環状部材(分割体)
11a 突起
11b 貫通孔
12a 凹部
12b 貫通孔
13 ボルト
14 突起部材
14a 凸部
2 棒状部材
21 雄ねじ
21a フランジ面
22 蝶ナット
3 板状部材
31 貫通孔(係合部)
32 貫通孔
33 雌ねじ孔
4 ネジ棒部材
41 雄ねじ部
42 六角棒部(操作部)
43 軸受部品
43a 軸部
43b 内輪
43c 外輪
5 雌ねじ部材
51 雌ねじ部材の胴部
51a 雌ねじ
52 雌ねじ部材のフランジ部
52a 貫通孔
53 固定用ボルト
6 芯出し部品
61 大径部
61a 大径部の端面(シーミングスピンドルの先端面に押し当てる部分)
62 小径部(シーミングスピンドルの先端部内に挿入される突起)
101 シーミングヘッド
101a 潤滑油のオイルタンクとなる空間
102 シーミングスピンドル
103 ノックアウトロッド
104 シーミングロール
105 リフター
106 転がり軸受
107 クランプリング
108 オイルシール
109 スリーブ
110 カラー
111 Oリング
112 シーミングチャック
114 シーミングレバー
121 缶の蓋
122 缶の胴(本体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーミングヘッドと、シーミングヘッドに転がり軸受を介して回転自在に支持されているシーミングスピンドルと、を有し、前記シーミングスピンドルは、前記転がり軸受を構成する内輪のオイルシールが配置される下側の端面を保持するフランジを有し、このフランジは径方向に延びる複数の凹部を有し、前記フランジの下側に前記オイルシールの摺動面を有するスリーブが外嵌されている缶蓋巻締機の、前記シーミングスピンドルから前記スリーブを外す装置であって、
前記スリーブが所定の隙間を介して配置される中心穴を有する外包部材が、前記スリーブの周方向で分割された複数の分割体と、
前記各分割体に形成された、前記中心穴からスリーブ側に突出して前記複数の凹部に嵌まる凸部と、
前記複数の分割体を結合する結合部材と、
前記各分割体からスリーブの軸方向に延びる棒状部材と、
中央に板面を貫通する雌ねじが形成され、周辺に前記棒状部材の先端を係合する係合部を有する板状部材と、
前記棒状部材の先端を、前記板状部材の係合部に固定する固定部材と、
前記板状部材の前記雌ねじに螺合されたネジ棒部材と、
前記シーミングスピンドルの先端面に接触させる端面と、前記シーミングスピンドルの先端部内に挿入する突起と、を有し、前記ネジ棒部材の前記板状部材から前記外包部材側に突出させる側の先端に、ネジ棒部材の回転を許容するように取り付けられた芯出し部材と、
前記ネジ棒部材の前記芯出し部材が取り付けられた先端とは反対の端部に設けられた操作部と、
を有することを特徴とするシーミングスピンドルからのスリーブ取り外し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−92982(P2011−92982A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250555(P2009−250555)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】