説明

シームレスベルトの平面度測定方法、平面度測定装置、シームレスベルト、シームレスベルトの判定方法、及び該シームレスベルトを備えた画像形成装置

【課題】シームレスベルトの周方向における平面度を簡易にかつ正確に測定しうる平面度測定方法、その測定装置、及び高温高湿又は低温低湿下に保管したシームレスベルトを、前記平面度測定方法により測定される平面度に優れるか、どうかを判定するシームレスベルトの判定方法及び該シームレスベルトを備える画像形成装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも2本のロールを用いて所定の張力で張架され、かつ、回転させない状態でのシームレスベルト1の表面に対し、平面度測定装置9を該シームレスベルト1の周方向に走査することを特徴とするシームレスベルト1の平面度測定方法、その測定装置、該平面度測定方法を用いてシームレスベルト1の判定方法。また、高温高湿又は低温低湿下に保管しても、上記平面度測定方法により測定される平面度が全周に亘り5mm以下であるシームレスベルト1、及び該シームレスベルト1を備える画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の電子写真方式を用いた画像形成装置における転写ベルト、転写ロール、定着ベルト等に好ましく使用されるシームレスベルトの平面度測定方法、平面度測定装置、シームレスベルト、シームレスベルトの判定方法、及び該シームレスベルトを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を応用した画像形成装置は、無機又は有機光導電性感光体からなる潜像担持体上に一様な電荷を形成し、画像信号を変調したレーザーや発光ダイオード光等で静電潜像を形成した後、帯電したトナーで前記静電潜像を現像して可視化したトナー像とする。そして、上記トナー像を、中間転写体を介して、或いは転写搬送ベルト上の記録紙やOHP等の転写材に静電的に直接転写して、更にこれを加熱や加圧することによって転写材に定着させることによって、所要の再生画像を得る。近年、高速のフルカラー画像形成装置などには、感光体を複数個並べたタンデム方式が用いられることが多いが、そのときに用いられる中間転写ベルトや転写搬送ベルトなどには、半導電性のシームレスベルトが用いられることが多い。
【0003】
タンデム方式の画像形成装置に用いられる半導電性シームレスベルトは、複数の感光体と接触させるため、周長が大きく、かつ、高精度の寸法精度が求められる。また、複数のロールによって支持張設された該半導電性シームレスベルトは、高速で回転しながらロールとのスリップを発生させないようにするため、高張力でロールに張架される。汎用的な画像形成装置は、使用される環境の適用性が広く求められ、そのため、半導電性シームレスベルトには、夏の高温高湿下や冬の低温低湿下で保管されても、ロールから受ける張力によって変形しない性質が求められる。
しかし、画像形成装置中の中間転写ベルトや転写搬送ベルトがロールから受ける張力によって変形すると、下記のような不具合を生じることが知られていている。
【0004】
すなわち、例えば、ベルトの周方向の平面度が悪化すると、特に、1次転写において感光体と転写ロール間のニップ形状を歪め、トナーが正確に転写できず、転写像に濃度ムラなどの画像欠陥を生じさせてしまう。また、画像形成装置内の転写ベルトの表面近傍(数mm)には、多くのセンサーや部品が設置されており、ベルトの平面度が悪いと、これらの部品に接触してしまい、ベルト表面をキズつけたり、故障の原因となってしまったりする。上記のようなトラブルを防止するためには、初期状態で変形がないことのほか、輸送、保管、長期使用によっても変形しないベルトであることが求められる。
【0005】
このような不具合を防止するために、画像形成装置内に固定したセンサーにより、回転するベルトの周方向の平面度を測定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この測定方法では、回転するベルトの表面が、ベルトの走行によってバタつくこと、回転軸の偏心の影響を受けやすいこと、等によって、ベルトの形状を正確に測定できない。なお、ベルトの走行によるバタつきの影響を小さくするには、センサーを軸近傍に設置するとよいが、軸から離れた場所でのベルトの状態を正確に測定することはできず、ベルトが画像形勢装置内で他の部品やセンサーと接触するかどうかを、簡単に予測することはできない。また、ベルトを回転させながら平面度を測定する方法では、測定結果に対し、測定器の寄与とベルト固有の平面度が分離できず、ベルト製造における検査には不適である。
【0006】
また、画像形成装置内にベルトの平面度を測定できる機構の搭載する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、このベルト平面度の測定はベルトを回転させながら行うため、実際にはロールの回転における偏心成分に影響され、純粋にベルトの平面度を測定できない問題がある。また、特許文献2では、画像形成装置内にベルトの停止位置を規定してベルト変形位置での画像形成を禁止したり、装置の停止中はベルトテンションを解除する機構を設けたり、なども提案されている。しかしながら、このような機能をシステムに付加することは、センサーや制御機構の増設などにより、コストアップにつながってしまう問題がある。
【0007】
一方、熱可塑性樹脂性のベルトを射出形成で作製する場合、材料の組成のばらつきや冷却温度の面内ばらつきによって平面度が悪化する。ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂を塗布することでベルトを作製する場合、芯体との密着不良や焼成(イミド化反応)温度の面内ばらつき、それらによる(反応時の)体積収縮の面内ばらつき、或いは、冷却温度の面内ばらつき、によって平面度が悪化する。
また、輸送、保管、長期使用(経時)による平面度悪化は、クリープ変形の大きな材料ほど平面度が悪化しやすい。また、熱や吸湿による膨張率の大きな材料は、テンションの掛かった状態での膨張収縮の繰り返しで変形しやすい。
【0008】
これまでは、ベルトの製造初期における変形や輸送、保管、長期使用によっての変形を簡易に測定できる方法が提案されていなかった。中間転写ベルトや転写搬送ベルトの平面度に関しては、例えば、ベルト軸方向の平面度の測定方法が知られているが(例えば、特許文献3、4参照。)、軸方向のみの平面度測定法では、レーザー変位計による走査ピッチを細かくし、測定数を多くしなければ、ベルト全体の平面度のゆがみを捉えられないという問題がある。更に、ベルトの周方向に数mmから数十mmの周波数で存在するうねり成分も、上述のように、画像形成装置の再生画像に大きな影響を与えることが知られている。
以上の如く、シームレスベルトの変形の具合、特に、ベルトの周方向の平面度は、ベルトを使用する上での重要な特性値であるため、ベルト製造時の検査を精密に行う必要があり、簡易な測定法が望まれている。
【特許文献1】特開平10−142963号公報
【特許文献2】特開2001−318538号公報
【特許文献3】特開2002−148899号公報
【特許文献4】特開2004−181731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち、本発明の目的は、シームレスベルトの周方向における平面度を簡易にかつ正確に測定しうる平面度測定方法、その測定装置、及び高温高湿又は低温低湿下に保管したシームレスベルトを、前記平面度測定方法により測定される平面度に優れるか、どうかを判定するシームレスベルトの判定方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高温高湿又は低温低湿下に保管しても、上記平面度測定方法により測定される平面度に優れるシームレスベルト、及び該シームレスベルトを備える画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、本発明らは、下記の本発明を見出した。
即ち、本発明は、
【0011】
<1> 少なくとも2本のロールを用いて所定の張力で張架され、かつ、回転させない状態でのシームレスベルトの表面に対し、平面度測定装置を該シームレスベルトの周方向に走査することを特徴とするシームレスベルトの平面度測定方法である。
【0012】
<2> 前記ロールが3本以上であることを特徴とする<1>に記載のシームレスベルトの平面度測定方法である。
【0013】
<3> 更に、別の平面度測定装置を、前記シームレスベルトの軸方向に走査することを特徴とする<1>又は<2>に記載のシームレスベルトの平面度測定方法である。
【0014】
<4> シームレスベルトを張架する少なくとも2本のロールと、
該少なくとも2本のロールを用いて所定の張力で張架され、かつ、回転させない状態での該シームレスベルトの表面に対し、周方向に走査する平面度測定装置と、
を備えることを特徴とするシームレスベルトの平面度測定装置である。
【0015】
<5> 39.2Nの力で張架しつつ、28℃、85%RHの環境下で48時間保管したシームレスベルトであって、
少なくとも一部を、250mm以上離間した2本のロールにより39.2Nの張力で張架させ、該張架部分の表面に対し、回転させない状態で、平面度測定装置を前記シームレスベルトの周方向に走査することで得られる平面度が、全周に亘り5mm以下であることを特徴とするシームレスベルトである。
【0016】
<6> 39.2Nの力で張架しつつ、10℃、15%RHの環境下で48時間保管したシームレスベルトであって、
少なくとも一部を、250mm以上離間した2本のロールにより39.2Nの張力で張架させ、回転させない状態での該張架部分の表面に対し、平面度測定装置を前記シームレスベルトの周方向に走査することで得られる平面度が、全周に亘り5mm以下であることを特徴とするシームレスベルトである。
【0017】
<7> ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂を主成分とすることを特徴とする<5>又は<6>に記載のシームレスベルトである。
【0018】
<8> 前記ポリイミド樹脂が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとから得られたものことを特徴とする<7>に記載のシームレスベルトである。
【0019】
<9> タンデム方式の画像形成装置用の中間転写ベルト又は転写搬送ベルトとして使用される<5>〜<8>のいずれか1項に記載のシームレスベルトである。
【0020】
<10> 39.2Nの力で張架しつつ、28℃、85%RHの環境下で48時間保管したシームレスベルトの判別方法であって、
該シームレスベルトの少なくとも一部を、250mm以上離間した2本のロールにより39.2Nの張力で張架させ、該張架部分の表面に対し、回転させない状態で、平面度測定装置を前記シームレスベルトの周方向に走査することで得られる平面度が、全周に亘り5mm以下であるか、否かを判定することを特徴とするシームレスベルトの判定方法である。
【0021】
<11> 39.2Nの力で張架しつつ、10℃、15%RHの環境下で48時間保管したシームレスベルトであって、
該シームレスベルトの少なくとも一部を、250mm以上離間した2本のロールにより39.2Nの張力で張架させ、該張架部分の表面に対し、回転させない状態で、平面度測定装置を前記シームレスベルトの周方向に走査することで得られる平面度が、全周に亘り5mm以下であるか、否かを判定することを特徴とするシームレスベルトの判定方法である。
【0022】
<12> <5>〜<9>のいずれか1項に記載のシームレスベルトを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、シームレスベルトの周方向における平面度を簡易にかつ正確に測定しうる平面度測定方法、その測定装置、及び高温高湿又は低温低湿下に保管したシームレスベルトを、前記平面度測定方法により測定される平面度に優れるか、どうかを判定するシームレスベルトの判定方法を提供することができる。
また、高温高湿又は低温低湿下に保管しても、上記平面度測定方法により測定される平面度に優れるシームレスベルト、及び該シームレスベルトを備える画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
<シームレスベルトの平面度測定方法及び平面度測定装置>
本発明のシームレスベルトの平面度測定方法は、少なくとも2本のロールを用いて所定の張力で張架され、かつ、回転させない状態でのシームレスベルトの表面に対し、平面度測定装置を該シームレスベルトの周方向に走査することを特徴とする。
また、本発明のシームレスベルト測定装置は、シームレスベルトを張架する少なくとも2本のロールと、該少なくとも2本のロールを用いて所定の張力で張架され、かつ、回転させない状態での該シームレスベルトの表面に対し、周方向に走査する平面度測定装置と、を備えることを特徴とする。
ここで、所定の張力とは、シームレスベルトを張架して使用する際と同等又はそれ以上の張力であればよい。具体的には、例えば、測定されるシームレスベルトが電子写真方式の画像形成装置に適用されるものである場合には、39.2Nの張力であることが好ましい。
なお、この張力は、ベルトを張架しているロールに掛かっている荷重を、プッシュプルゲージ(例えば、アイコーエンジニアリング製MODEL RX−1など)で測定し、ベルトの張架方向のベクトルに換算する(ロールに掛かっている荷重は、必ずしもベルトの張力方向と平行ではない。そこで、ロールに掛かっている荷重を測定した後に、ベルトの張力方向に換算する必要がある)ことで測定することができる。
【0025】
本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置について、図面を用いて、具体的に説明する。なお、各図において同一の符号を付されたものは同一の構成要素を示しており、適宜、説明を省略する。
まず、図1を参照して、本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置の第1の例について説明する。ここで、図1は、本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置の第1の例を説明するための概略断面図である。
図1に示されるように、シームレスベルト1は、第1のロール3と第2のロール5とにより、例えば、39.2Nの張力で張架される。なお、第1のロール3は固定されており、第2のロール5を矢印aの方向に移動させ、その移動量を調整することで、シームレスベルト1が張架される際の張力を制御することができる。
このように張架されたシームレスベルト1の表面に対し、一定の距離で離間した状態で、シームレスベルト1の周方向と平行にレール7が配置され、更に、そのレールに沿って移動可能なレーザー変位計(平面度測定装置)9が設置される。
【0026】
このように、シームレスベルト1とレーザー変位計9とを配置し、シームレスベルト1を静止させた状態で(回転させない状態で)、レール7に沿ってレーザー変位計9を矢印bの方向に走査させることで、シームレスベルト1の表面の周方向の平面度を測定することができる。次いで、シームレスベルト1を回転させた後、レーザー変位計9を矢印bの方向に走査させることで、シームレスベルト1の別の部分の表面の平面度を測定することができる。これを繰り返すことで、シームレスベルト1の全周に亘って平面度を測定することが可能となる。
なお、本発明における平面度は、変位量の最大値と最小値の差分とする。
以上の方法及び装置を用いることで、シームレスベルトの周方向における平面度を簡易にかつ正確に測定することができる。
【0027】
本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置において、シームレスベルトを張架するロールを3本以上用いることが好ましい。ロールを3本以上用いることで、シームレスベルトの周長によらず、平面度を測定したい部分の距離を調節することができる。また、シームレスベルトに対し、平面度を測定したい部分に対してのみ、より均一かつより正確に所定の張力を付与することができる。
以下、ロールを3本以上用いてシームレスベルトを張架する方式を用いた平面度測定方法及び平面度測定装置について説明する。
【0028】
図2を参照して、本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置の第2の例について説明する。ここで、図2は、本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置の第2の例を説明するための概略断面図である。
図2に示されるように、シームレスベルト1は、第1のロール3と第2のロール5と第3のロール11とにより、例えば、39.2Nの張力で張架される。また、第4のロール13がシームレスベルト1に外接している。なお、第1のロール3及び第4のロール13は固定されており、第2のロール5は矢印cの方向に、第3のロール11は、例えば、荷重を掛けることで矢印dの方向に移動することができる。第2のロール5の移動量を調節することで、レーザー変位計が走査する距離、つまり、平面度を測定したい部分の距離を調整することができる。また、第2のロール5及び/又は第3のロール11の移動量を調整することで、平面度を測定したい部分のシームレスベルト1の張力を制御することもできる。
また、第1のロール3と第2のロール5とに張架された部分のシームレスベルト1の表面に対して、一定の距離で離間した状態で、シームレスベルト1の周方向と平行にレール(図示せず)が配置され、更に、そのレールに沿って移動可能なレーザー変位計(平面度測定装置)9が設置される。
【0029】
このように、シームレスベルト1とレーザー変位計9とを配置し、シームレスベルト1を静止させた状態で(回転させない状態で)、レールに沿ってレーザー変位計9を矢印eの方向へ走査させることで、シームレスベルト1の表面の周方向における平面度を測定することができる。次いで、シームレスベルト1を回転させた後、レーザー変位計9を矢印eの方向に走査させることで、シームレスベルト1の別の部分の表面の平面度を測定することができる。これを繰り返すことで、シームレスベルト1の全周に亘って平面度を測定することが可能となる。
この方法及び装置では、シームレスベルトの周長によらず、平面度を測定したい部分の距離を調整することができ、更に、平面度を測定したい部分のシームレスベルトの張力をより正確に調整することができる。そのため、シームレスベルトの種類に関わらず、その使用条件と同等の条件で、簡易にかつ正確に周方向の平面度を測定することができる。
【0030】
更に、図3を参照して、本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置の第3の例について説明する。ここで、図3は、本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置の第3の例を説明するための概略斜視図である。
図3に示されるように、本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置の第3の例は、上述の第2の例において、シームレスベルト1の周方向に走査するレーザー変位計9に加え、更に、シームレスベルト1の軸方向に走査するレーザー変位計15を配置している他は、第2の例と同様の構成を有する。
なお、レーザー変位計15を用いた軸方向の平面度の測定は、周方向の平面度の測定が行われた後、レーザー変位計9を待避させてから、レーザー変位計15をシームレスベルト1の表面に対向するように設置してから行うことが好ましい。
この方法及び装置では、シームレスベルトを張架する際の張力をより正確に調整することができることに加え、シームレスベルトの軸方向に対してもレーザー変位計を走査させることで、シームレスベルト1の軸方向の平面度も測定することができる。
その結果、シームレスベルトの種類に関わらず、その使用条件と同等の条件で、シームレスベルトの全面の平面度を、より短時間で、かつ、より正確に測定することができる。
【0031】
なお、上記平面度測定方法及び平面度測定装置において、シームレスベルトの表面の周方向に対して平面度測定装置を走査する距離としては、特に制限はないが、シームレスベルトの使用条件に応じて、適宜、設定すればよい。
例えば、シームレスベルトが、タンデム方式の画像形成装置における中間転写ベルト又は転写搬送ベルトとして使用されるものである場合、250mm以上離間した2本のロールにより張架される状態で用いられることが多いため、第1のロールと第2のロールとの距離(第1のロールの軸と第2のロールの軸との距離)を250mm以上に設定し、平面度測定装置を走査する距離も250mm以上とすることが好ましい。
【0032】
また、上記平面度測定方法及び平面度測定装置において、平面度の測定位置としては、少なくとも、張架されたシームレスベルトの一部であればよいが、正確性を得るために、シームレスベルトの軸方向における中心線、端部、中間部等の数箇所に対し、周方向の平面度を測定することが好ましい。更に、その全周に亘って、周方向の平面度を測定することが好ましい。
ここで、軸方向の測定箇所は、任意に決定することができるが、例えば、第1のロール3の軸と第2のロール5の軸との中心線とした。
【0033】
更に、上記平面度測定方法及び平面度測定装置においては、平面度測定装置としてレーザー変位計を用いていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、変位量を測定することができれば、如何なるものも用いることができる。
例えば、テストインジケータで軽く接触させて変位量を測定する方法や、発光ダイオードによる光をベルト表面に照射し、その反射光の強度で変位量を測定する方法等を用いて平面度を測定してもよい。
また、平面度測定装置とシームレスベルトとの距離は、平面度測定装置の種類に応じて、適宜、調整すればよい。
【0034】
本発明の平面度測定方法に適用されるシームレスベルトについて説明する。
本発明の平面度測定方法に適用されるシームレスベルトには、種々の用途のものが挙げられるが、平面度の影響が顕著な用途に用いられるものであることが好ましい。具体的には、電子写真方式の画像形成装置において用いられる転写ベルト、転写ロール、定着ベルト等に好ましく使用されるシームレスベルトが挙げられる。このような用途に用いられるシームレスベルトとしては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンフタレート、PC/ポリアルキレンフタレート(PAT)のブレンド材料、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)を主成分とすることが好ましく、中でも、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂を主成分とするものが好ましく、特に、ポリイミド樹脂を主成分とするシームレスベルトが好ましい。
なお、これらの樹脂を主成分とするシームレスベルトとは、これらの樹脂を50質量%以上含むことを意味し、樹脂以外に、所望の物性や特性を達成しうるように、任意の添加物を含んでいてもよい。
【0035】
以下に、本発明に好適なポリイミド樹脂からなるシームレスベルト(以下、単に、ポリイミド樹脂製シームレスベルトと称する場合がある。)の作製方法の一例について説明する。
ポリイミド樹脂製シームレスベルトは、ポリイミド前駆体溶液を調製するポリイミド前駆体溶液調製工程と、ポリイミド前駆体溶液を円筒成形管の外周面又は内周面に塗布してポリイミド前駆体塗膜を形成するポリイミド前駆体塗膜形成工程と、前記ポリイミド前駆体塗膜を加熱によりイミド転化させてポリイミド皮膜を形成するポリイミド樹脂皮膜形成工程と、を経ることにより作製することが好ましい。なお、必要に応じて他の工程を経ることができる。
これらの各工程について順に説明する。
【0036】
−ポリイミド前駆体溶液調製工程−
ポリイミド樹脂は、ポリイミド前駆体を加熱しイミド化反応させることによって得られる。このポリイミド前駆体は、通常、略等モルのテトラカルボン酸二無水物或いはその誘導体と、ジアミンと、を溶媒中で重合反応させてポリアミド酸溶液として得られる。
【0037】
前記テトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
中でも、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等がより好ましく用いられる。
【0038】
一方、前記ジアミンも特に制限はなく、具体的には、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノベンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロボキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピペラジン、H2N(CH23O(CH22O(CH2)NH2、H2N(CH23S(CH23NH2、H2N(CH23N(CH32(CH23NH2等が挙げられる。
中でも、より好ましくは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン等が挙げられ、特には、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましく用いられる。
【0039】
中でも、高弾性率と、かとう性を兼ね備える点において、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの組み合わせが特に好ましい。
【0040】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合反応させる際の溶媒としては、溶解性等の点より極性溶媒が好適に挙げられる。本発明においては、ポリイミド樹脂に可撓性を持たせるために、可塑剤の働きを有するN−メチル−2−ピロリドンを用いることが好ましいが、他の溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等を用いてもよい。これらは単数で用いてもよいし、複数併用してもよい。
これらの溶媒はポリイミド前駆体溶液を構成する溶媒としても使用することができる。
【0041】
ポリイミド前駆体溶液の固形分濃度は、次工程での円筒成形管への塗布の容易性、塗膜の均一性、膜厚制御の容易性の観点から、5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。
また、ポリイミド前駆体溶液の粘度について特に制限はないが、一般的に、1〜500Pa・sの粘度のものが扱いやすい。
【0042】
本発明におけるポリイミド樹脂製シームレスベルトを、電子写真方式の画像形成装置への適用を考慮した場合、ポリイミド樹脂中に無機或いは有機の導電性物質を含有することが好ましい。この導電性物質としては特に制限はないが、分散性に優れ、好適な抵抗範囲を制御しやすく、環境による抵抗変動が少ないという点で、カーボンブラックを用いることが好ましい。また、導電性物質の添加効果を最大限に利用でき、また、このポリイミド樹脂製シームレスベルトを中間転写ベルトとして用いた場合には、抵抗の維持性に優れた酸性カーボンブラックを用いることがより好ましい。
このような導電性物質は、ポリイミド前駆体溶液に直接分散させてもよいし、ポリイミド前駆体の重合時に予め溶剤中に分散させておく方法を用いてもよい。また、分散の方法としては特に制限されることはなく、例えば、ボールミルや超音波等で分散させる方法がある。
【0043】
−ポリイミド前駆体塗膜形成工程−
上記より得たポリイミド前駆体溶液を、円筒成形管の外周面又は内周面に塗布することにより、ポリイミド前駆体塗膜を形成する。該塗布の方法としては、例えば、ポリイミド前駆体溶液を円筒成形管の内周面に塗布する方式や、遠心成型を行う方式、或いは、外周面に浸漬塗布する方式などの適宜な方式で行うことができる(特開昭61−95361号公報、特開昭64−22514号公報、特開平3−180309号公報等参照)。
【0044】
本工程で用いられる円筒成形管としては、例えば、アルミニウムや銅、ステンレス等の金属からなる円筒成形管を好ましく用いることができる。なお、円筒成形管がアルミニウムからなる場合、350℃に加熱すると強度が低下して変形を起こしやすい。このようなアルミニウムの熱変形は、円筒成形管形状への冷間加工中に歪みが蓄積していると発生しやすい。そのような歪みを取り去るには、アルミニウムを焼鈍(焼きなまし:アルミニウム素材を350〜400℃に加熱し、空気中で自然に冷却する)する方法が挙げられる。ただし、焼鈍によっても熱変形が起こるので、所定形状への加工は、その後に施す必要がある。
【0045】
円筒成形管の内周面に塗布を行う場合、その内周面の表面粗さは、それを用いて作製されるシームレスベルトの外周面の粗さを決定する。そのため、該円筒成形管の内周面の表面粗さRaは、0.2μm以下であることが好ましい。
一方、円筒成形管の外周面に塗布を行う場合には、上記と同様にシームレスベルトの内周面の粗さを決定するため、該円筒成形管の外周面の表面粗さRaは、0.2μm以下であることが好ましい。
【0046】
また、金属からなる円筒成形管の表面(内周面又は外周面)に、ポリイミド前駆体溶液を直接塗布する場合には、後述するポリイミド樹脂皮膜形成工程において、形成されたポリイミド樹脂皮膜が円筒成形管表面に接着する可能性が高いため、円筒成形管の表面には離型性を付与する必要がある。そのため、円筒成形管の内周面又は外周面に離型剤層を形成することが好ましい。
離型剤としては、シリコーン系やフッ素系のオイルを変性して耐熱性を持たせたものが有効である。また、シリコーン樹脂の超微粒子を水に分散させた水系離型剤も用いることができる。離型層は離型剤を塗布し、溶剤を乾燥させて、そのまま、或いは焼き付け処理をして形成される。
【0047】
図4を参照して、円筒成形管の内周面にポリイミド前駆体溶液を塗布する方法について具体的に説明する。ただし、ここで説明する方式は、本発明を制限するものではない。
ここで、図4は、円筒成形管の内周面にポリイミド前駆体溶液を塗布する際に用いられる塗布装置の主要部を示す概略斜視図である。
図4において、円筒成形管21を矢印Aの方向に回転させながら、ポリイミド前駆体溶液26を容器24から、ノズル25を通して流下させる。このとき、ポリイミド前駆体溶液26には加圧装置27によって所定の吐出圧力が掛けられる。
ここで、加圧装置27の方式には特に制限はなく、具体的には、圧縮空気や高粘度液対応のモーノポンプ等が用いられる。
【0048】
ノズル25は、容器24に取り付けてもよいが、両者を離して管で連結し、容器24を別置きに固定してもよい。また、ノズル25はポリイミド前駆体溶液26を吐出しながら矢印Bの方向に進み、らせん状の塗布を行う。なお、ノズル25と円筒成形管21との距離は任意でよく、0.5mm〜100mm程度が好ましい。
ここで、ノズル25の吐出口の大きさ・形状にも制限はなく、ポリイミド前駆体溶液26を、所定圧力のもとで、所定速度で吐出できるものとする。
【0049】
このように円筒成形管21の内周面にポリイミド前駆体溶液26を塗布した場合は、円筒成形管21を高速回転させる遠心成形法によって塗膜の膜厚を平坦化させることが可能である。また、高速回転させなくても、ポリイミド前駆体分子を更に円周方向に配向させる目的を兼ねて、ヘラ28で、塗膜表面を円周方向にらせん状に擦りながらせん断力を与え、膜厚を平坦化させることも可能である。なお、ヘラ28を通過した直後は塗膜表面に筋が残ることがあるが、円筒成形管21を回転させ続けると、液の流動性により、筋は時間と共に消滅する。ノズル25とヘラ28は連動させて塗布することもできる。
ここで、ヘラ28は、ポリイミド前駆体溶液26に侵されない材料、例えば、ポリエチレンやフッソ樹脂等のプラスチックや真鍮、ステンレス等の金属の薄い板からなることが好ましく、弾力性を有することが好ましい。
【0050】
次に、図5を参照して、円筒成形管の内周面にポリイミド前駆体溶液を塗布する方法について具体的に説明する。ただし、ここで説明する方式は、本発明を制限するものではない。
ここで、図5は、円筒成形管の外周面にポリイミド前駆体溶液を塗布する際に用いられる塗布装置の主要部を示す概略斜視図である。
図5において、円筒成形管41を矢印Cの方向に回転させながら、ポリイミド前駆体溶液46を容器44から、ノズル45を通して、流下させる。このとき、ポリイミド前駆体溶液46には加圧装置47によって吐出圧力が掛けられる。
ここで、加圧装置47の方式には特に制限はなく、具体的には、図4の説明における加圧装置27と同様のものが用いられる。
【0051】
ノズル45は、容器44に取り付けてもよいが、両者を離して管で連結し、容器44を別置きに固定してもよい。また、ノズル45はポリイミド前駆体溶液46を吐出しながら矢印Dの方向に進み、らせん状の塗布を行う。なお、ノズル45と円筒成形管41との距離は任意でよく、0.5mm〜100mm程度が好ましい。
ここで、ノズル45の吐出口の大きさ・形状にも制限はなく、ポリイミド前駆体溶液46を、所定圧力のもとで、所定速度で吐出できるものとする。
【0052】
円筒成形管41の外周面に流下されたポリイミド前駆体溶液46は、ヘラ48により平坦化されて、ポリイミド前駆体塗膜が形成される。ここで用いられるヘラ48は、例えば、図4の説明におけるヘラ28と同様の材質を用い、幅10〜50mm程度に成形したものが好ましい。
より具体的には、まず、ヘラ48を軽く円筒成形管41の外周面に押し当てる。ヘラ48を押し当てた領域を、ポリイミド前駆体溶液46が通過する際、ヘラ48は押し上げられ、円筒成形管41からある隙間をもって離れる。このように、ポリイミド前駆体溶液46とヘラ48との接触により、円筒成形管41の外周面にポリイミド前駆体溶液46が押し拡げられる。このようにして、ポリイミド前駆体塗膜の厚みを制御することができる。
【0053】
円筒成形管の外周面に塗布する方法としては、上記以外にも、円筒成形管を縦置きに配置した状態で塗布を行う突き上げ塗布方法や浸漬塗布方法などを用いることができる。
【0054】
上記のようにしてポリイミド前駆体塗膜は、イミド化し乾燥した後の膜厚が50〜100μmとなるように形成することが好ましい。膜厚がこの範囲内となることにより、長期間の使用に耐え得る強度と、高画質を得るための曲げ硬さとを両立させやすくなるとともに、ベルトの体積抵抗値を適切に制御できるという利点がある。
【0055】
−ポリイミド樹脂皮膜形成工程−
前記ポリイミド前駆体塗膜形成工程により形成されたポリイミド前駆体塗膜は、本工程において、加熱されることによりイミド転化し、ポリイミド樹脂皮膜が形成させる。
ポリイミド樹脂皮膜形成工程における好ましいイミド転化の条件は、ポリイミド樹脂の種類によって異なるものの300〜450℃で、20〜60分間加熱する方法である。また、イミド転化では、溶剤が残留したままイミド化反応を進めると、ポリイミド樹脂皮膜に膨れが生じることがあるため、急激な加熱は避けることが好ましく、具体的には、最終温度に達する前に、一旦150〜200℃の温度で30〜60分間加熱乾燥して残留溶剤を除去し、続けて、温度を段階的、又は一定速度で上昇させて、加熱してポリイミド樹脂皮膜を形成することが好ましい。
【0056】
このようにして得られたポリイミド樹脂皮膜を、必要な幅にカットすることで、本発明におけるポリイミド樹脂製シームレスベルトを得ることができる。
なお、このポリイミド樹脂製シームレスベルトは、表面及び/又は裏面に任意の層を有していてもよい。このような任意の層が備えたシームレスベルトであっても、上記の平面度測定方法及び平面度測定装置を用いることで、簡易にかつ正確に平面度を測定することができる。
【0057】
上記の図4及び図5を用いたポリイミド前駆体溶液の塗布工程は、他の樹脂を用いたシームレスベルトの作製方法においても使用することができる。つまり、例えば、ポリアミドイミド樹脂を主成分とするシームレスベルトを作製する場合であれば、ポリアミドイミドを溶解した溶液を用いて、上記のように円筒形基材の内周又は外周に塗布することで、塗膜を形成し、それを乾燥させることで、シームレスベルトを得ることができる。
【0058】
<シームレスベルト、及びシームレスベルトの判定方法>
本発明の第1のシームレスベルトは、39.2Nの力で張架しつつ、28℃、85%RHの環境下で48時間保管したシームレスベルトであって、少なくとも一部を、250mm以上離間した2本のロールにより39.2Nの張力で張架させ、該張架部分の表面に対し、回転させない状態で、平面度測定装置を前記シームレスベルトの周方向に走査することで得られる平面度が、全周に亘り5mm以下であることを特徴とする。
また、本発明の第2のシームレスベルトは、39.2Nの力で張架しつつ、10℃、15%RHの環境下で48時間保管したシームレスベルトであって、少なくとも一部を、250mm以上離間した2本のロールにより39.2Nの張力で張架させ、回転させない状態での該張架部分の表面に対し、平面度測定装置を前記シームレスベルトの周方向に走査することで得られる平面度が、全周に亘り5mm以下であることを特徴とする。
すなわち、本発明のシームレスベルトは、高温高湿又は低温低湿下で48時間保管した後であっても、上述の本発明の平面度測定方法で測定した周方向の平面度に全周に亘り優れる、という優れた効果を有する。
【0059】
本発明のシームレスベルトにおいて、平面度は全周に亘り5mm以下であるということを要する。平面度が5mmを超えると、シームレスベルトを張架し回転体として用いたときに、5mm以内に隣接する部品に接触してしまう。また、本発明のシームレスベルト(特に、ポリイミド樹脂製シームレスベルト)を、電子写真方式の画像形成装置への適用を考慮した場合、平面度が5mmを超えると、均一な転写ニップを形成することができなくなり、転写画像に歪みや白抜けが発生してしまう。
ここで、「全周」とは、シームレスベルトの軸方向における任意の位置(例えば、軸方向における中心線)での全周を意味する。なお、本発明における平面度は変位量の最大値と最小値の差分とすることから、この差分が全周に亘りが5mm以下であることを要する。
また、本発明のシームレスベルトにおいて、この差分、つまり、平面度は、3mm以下であることがより好ましい。
更に、本発明のシームレスベルトにおいて、シームレスベルトの軸方向における複数の位置の全周に亘って平面度を測定し、その最大値が、5mm以下であることが好ましい。
【0060】
本発明のシームレスベルトとしては、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂を主成分とするものが好ましく、特に、ポリイミド樹脂の場合、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとから得られたものであることが好ましい。
また、本発明のシームレスベルトは、タンデム方式の画像形成装置用の中間転写ベルト又は転写搬送ベルトとして使用されることが好ましい。
【0061】
本発明のシームレスベルトの判定方法は、判定に供されるシームレスベルトが、上記本発明の第1のシームレスベルト、及び/又は、本発明の第2のシームレスベルトの条件を満たすか、否かを判定する方法である。
この判定方法により、周方向の平面度に優れたシームレスベルト(本発明のシームレスベルト)であるか、否かが判定される。この判定結果が、製品として合否や、シームレスベルトの平面度を向上させるための処理の必要性、良好なシームレスベルトを製造する工程条件等を決定するための指標となる。
【0062】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、上述の本発明のシームレスベルトを備えることを特徴とする。
本発明の画像形成装置において、本発明のシームレスベルトは、中間転写ベルト、転写搬送ベルト、或いは転写定着ベルトとして備えることで、高画質の転写画像を得ることができる。
【0063】
本発明のシームレスベルトを転写搬送ベルトとして備えた画像形成装置について、図6を参照して、説明する。ここで、図6は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
図6に示される画像形成装置は、ユニットY、M、C、BKと、転写搬送ベルト206と、転写ロール207Y、207M、207C、207BKと、用紙搬送ロール208と、定着器209とを備えている。転写搬送ベルト206として、上述の本発明のシームレスベルトが用いられる。
【0064】
ユニットY、M、C、BKは、矢印の時計方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転可能にそれぞれ感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKが備えられる。感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKの周囲には、コロトロン帯電器202Y、202M、202C、202BKと、露光器203Y、203M、203C、203BKと、各色現像装置(イエロー現像装置204Y、マゼンタ現像装置204M、シアン現像装置204C、ブラック現像装置204BK)と、感光体ドラムクリーナー205Y、205M、205C、205BKとがそれぞれ配置されている。
【0065】
ユニットY、M、C、BKは、転写搬送ベルト206に対して4つ並列に、ユニットY、M、C、BKの順に配置されているが、ユニットBK、Y、C、Mの順等は、画像形成方法に合わせて適当な順序を設定することができる。
【0066】
転写搬送ベルト206は、ベルト支持ロール210、211、212、213によって、矢印の反時計方向に感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKと同じ周速度をもって回転可能になっており、ベルト支持ロール212、213の中間に位置するその一部が感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとそれぞれ接するように配置されている。転写搬送ベルト206は、ベルト用クリーニング装置214が備えられている。
【0067】
転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、転写搬送ベルト206の内側であって、転写搬送ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとが接している部分に対向する位置にそれぞれ配置され、感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKと、転写搬送ベルト206を介してトナー画像を用紙(被転写体)216に転写する転写領域(ニップ部)を形成している。転写ロール207Y、207M、207C、207BKは、図6のように感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKの直下に配置していても、図示してはいないが、直下からずれた位置に配置してもよい。
【0068】
定着装置209は、転写搬送ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201BKとのそれぞれの転写領域(ニップ部)を通過した後に搬送できるように配置されている。
【0069】
用紙搬送ロール208により、用紙216は転写搬送ベルト206に搬送される。
【0070】
図6に示す画像形成装置において、ユニットBKにおいては、感光体ドラム201BKを回転駆動させる。これと連動してコロトロン帯電器202BKが駆動し、感光体ドラム201BKの表面を所定の極性・電位に一様に帯電させる。表面が一様に帯電された感光体ドラム201BKは、次に、露光器203BKによって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される。
【0071】
続いて、該静電潜像は、ブラック現像装置204BKによって現像される。すると、感光体ドラム201BKの表面にトナー画像が形成される。なお、このときのトナーは一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよい。
【0072】
このトナー画像は、感光体ドラム201BKと転写搬送ベルト206との転写領域(ニップ部)を通過すると同時に、用紙216が静電的に転写搬送ベルト206に吸着して転写領域(ニップ部)まで搬送され、転写ロール207BKから印加される転写バイアスにより形成される電界により、用紙216の外周面に順次、転写される。
【0073】
この後、感光体ドラム201BK上に残存するトナーは、感光体ドラムクリーナー205BKによって清掃・除去される。そして、感光体ドラム201BKは、次の転写サイクルに供される。
【0074】
以上の転写サイクルは、ユニットC、M及びYでも同様に行われる。
【0075】
転写ロール207BK、207C、207M及び207Yによってトナー画像を転写された用紙216は、更に定着装置209に搬送され、定着が行われる。
以上のようにして記録紙上に所望の画像が形成される。
【0076】
次に、本発明の画像形成装置における他の一例を示す。
図7は、中間転写ベルト86を用いたタンデム式の画像形成装置の要部部分を説明する模試図である。具体的には、図7において感光体79表面を均一に帯電する帯電ローラ83(帯電装置)、感光体79表面を露光し静電潜像を形成するレーザー発生装置78(露光装置)、感光体79表面に形成された潜像を、現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する現像器85(現像装置)、現像したトナー像を中間転写ベルト86に転写する転写ロール80、感光体に付着したトナーやゴミ等を除去する感光体クリ−ナー84 (クリーニング装置)、被転写材上のトナー像を定着する定着する定着ローラ72等必要に応じて公知の方法で任意に備えることができる。感光体79と転写ロール80は、図7のように感光体直下からずれた位置に配置していても、感光体直下に配置(図示せず)していてもよい。そして、この中間転写ベルト86として本発明のシームレスベルトを備えることで、上述の構成のようなタンデム式の画像形成装置においても、高品質の転写画質を安定して得ることができる。
【0077】
更に、図7に示す画像形成装置の構成について詳細に説明する。図7に示す画像形成装置は、4つのトナーカートリッジ71、1対の定着ロール72、バックアップロール73、テンションロール74、2次転写ロール75、用紙経路76、用紙トレイ77、レーザー発生装置78、4つの感光体79、4つの1次転写ロール80、駆動ロール81、転写クリーナー82、4つの帯電ロール83、感光体クリーナー84、現像器85、中間転写ベルト86等を主用な構成部材として含んでなる。
【0078】
まず、感光体79の周囲には、反時計回りに帯電ロール83、現像器85、中間転写ベルト86を介して配置された1次転写ロール80、感光体クリーナー84が配置され、これら1組の部材が、1つの色に対応した現像ユニットを形成している。また、この現像ユニット毎に、現像器85に現像剤を補充するトナーカートリッジ71がそれぞれ設けられており、各現像ユニットの感光体79に対して、帯電ロール83と現像器85との間の感光体79表面に画像情報に応じたレーザー光を照射することができるレーザー発生装置78が設けられている。
【0079】
4つの色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)に対応した4つの現像ユニットは、画像形成装置内においてほぼ水平方向に直列に配置されており、4つの現像ユニットの感光体79と1次転写ロール80とのニップ部を挿通するように中間転写ベルト86が設けられている。中間転写ベルト86は、その内周側に以下の順序で反時計回りに設けられた、バックアップロール73、テンションロール74、及び駆動ロール81により張架されている。なお、4つの1次転写ロールはバックアップロール73とテンションロール74との間に位置する。また、中間転写ベルト86を介して駆動ロール81の反対側には中間転写ベルト86の外周面をクリーニングする転写クリーナー82が駆動ロール81に対して圧接するように設けられている。
【0080】
また、中間転写ベルト86を介してバックアップロール73の反対側には用紙トレイ77から用紙経路76を経由して搬送される記録用紙の表面に、中間転写ベルト86の外周面に形成されたトナー像を転写するための2次転写ロール75が、バックアップロール73に対して圧接するように設けられている。
【0081】
また、画像形成装置の底部には記録用紙をストックする用紙トレイ77が設けられ、用紙トレイ77から用紙経路76を経由して2次転写部を構成するバックアップロール73と2次転写ロール75との圧接部を通過するように供給することができる。この圧接部を通過した記録用紙は更に1対の定着ロール72の圧接部を挿通するように不図示の搬送手段により搬送可能であり、最終的に画像形成装置外へと排出することができる。
【0082】
次に、図7の画像形成装置を用いた画像形成方法について説明する。トナー像の形成は各現像ユニット毎に行なわれ、帯電ロール83により反時計方向に回転する感光体79表面を一様に帯電した後に、レーザー発生装置78(露光装置)により帯電された感光体79表面に潜像を形成し、次に、この潜像を現像器85から供給される現像剤により現像してトナー像を形成し、1次転写ロール80と感光体79との圧接部に運ばれたトナー像を矢印A方向に回転する中間転写ベルト86の外周面に転写する。なお、トナー像を転写した後の感光体79は、その表面に付着したトナーやゴミ等が感光体クリーナー84によりクリーニングされ、次のトナー像の形成に備える。
【0083】
各色の現像ユニット毎に現像されたトナー像は、画像情報に対応するように中間転写体86の外周面上に順次重ね合わされた状態で、2次転写部に運ばれ2次転写ロール75により、用紙トレイ77から用紙経路76を経由して搬送されてきた記録用紙表面に転写される。トナー像が転写された記録用紙は、更に定着部を構成する1対の定着ロール72の圧接部を通過する際に加圧加熱されることにより定着され、記録媒体表面に画像が形成された後、画像形成装置外へと排出される。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を、実施例を挙げて更に具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0085】
(シームレスベルトAの作製)
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとを用い、N−メチル−2−ピロリドン中で合成した18質量%濃度のポリイミド前駆体溶液を用意し、その中にカーボンブラック(SPECIAL BLACK 4(Degussa社製)を樹脂成分に対し16.5質量部を入れ、サンドミルを用いて室温で6時間分散させ、カーボンブラックが分散しているポリイミド前駆体溶液を調製した。該ポリイミド前駆体溶液の粘度は、室温で28Pa・sであった。
【0086】
次に、外径302mm、長さ370mm、のステンレス製円筒成形管1を用意し、外表面(粗さRa:0.3μm)にシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布して、380℃で1時間、焼き付け処理をした。
回転塗布工程として、図4に示すように、円筒成形管41の軸方向を水平にして、30rpmで回転させた。ブレード48は、幅20mm、厚さ1mmのポリエチレンからなり、弾力性を有している。これを円筒成形管41に押し付け、ポリイミド前駆体溶液は、容器44から口径3mmのノズル45を通して、22ml/分の流量で押し出した。ポリイミド前駆体溶液がブレード48を通過する際、ブレード48が押し上げられ、ブレード48と円筒成形管41の間には隙間ができた。次いで、ノズル45とブレード48を60mm/分の速度で、矢印Dの方向に移動させて塗布した。この条件で、円筒成形管41の1回転あたり、ノズル45とブレード48は2.0mmずつ移動する。なお、塗布の際には、円筒成形管41の両端に10mmずつの不塗布部分を設けた。
【0087】
次に、円筒成形管41を水平に6rpmで回転させながら、170℃で60分間加熱乾燥させた。その後、1℃/分の昇温速度で加熱し、330℃に達したところで更に30分間加熱して、カーボンブラック分散ポリイミド樹脂皮膜を形成した後、5℃/分の冷却速度で230℃まで冷却し、その後、約10℃/分の速度で50℃以下まで冷却させた。
円筒成形管41が50℃以下になったところで、ポリイミド樹脂皮膜と円筒成形管との隙間に強制的に空気を吹き込むことによって、ポリイミド樹脂皮膜を脱型した。脱型後のカーボンブラック分散ポリイミド樹脂皮膜の幅を330mmに切り揃え、周長949mmのシームレスベルトを得た。このシームレスベルトは、図7に示されるタンデム方式の画像形成装置用の中間転写ベルトとして用いることができる。
【0088】
(シームレスベルトBの作製)
シームレスベルトAの作製時において、18質量%濃度のポリイミド前駆体溶液の代わりに、18質量%濃度のポリアミドイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液を準備し、実施例1と同様にカーボンブラックを分散させた。該カーボンブラック分散ポリアミドイミド溶液の粘度は、室温で25Pa・sであった。
次に、外径280mm、長さ370mmのステンレス製円筒成形管を用意し、シームレスベルトAの作製時と同様に離型剤処理を行った後、準備したカーボンブラック分散ポリアミドイミド溶液を実施例1と同様に塗布した。
【0089】
次に、シームレスベルトAの作製時と同様に、6rpmで回転させながら、170℃で60分間加熱乾燥させた。その後、1℃/分の昇温速度で加熱し、260℃に達したところで更に30分間加熱して、カーボンブラック分散ポリアミドイミド樹脂皮膜を形成した後、5℃/分の冷却速度で180℃まで冷却し、その後、約10℃/分の速度で50℃以下まで冷却させた。
その後、実施例1と同様に脱型し、ベルト幅が330mmになるように端部カットを行い、周長879mmのシームレスベルトを得た。このシームレスベルトは、図6に示されるタンデム方式の画像形成装置用の転写搬送ベルトとして用いることができる。
【0090】
(シームレスベルトCの作製)
シームレスベルトAの作製時において、ここではイミド化のための加熱温度(最高到達温度)を280℃、加熱時間を20分とした他は同様の方法を用いて、シームレスベルトCを作製した。
【0091】
(シームレスベルトDの作製)
ポリカーボネート樹脂(三菱瓦斯化学(株)製ユーピロンE−2000)80質量部、ポリブチレンテレフタレート樹脂(三菱化成(株)製ノバドール5020)15質量部、及びカーボンブラック(SPECIAL BLACK 4(Degussa社製)15質量部をベント付二軸押出機を用いて280℃の温度にて溶融混練し、造粒させた。得られたペレットを、280℃の温度で、310mmφの環状ダイより下方に溶融チューブ状態にて押し出し、押し出した溶融チューブを、環状ダイの同一軸線上に支持棒を介して装着された302mmφの冷却マンドレルの外表面に接触せしめて、100℃にて冷却し固化させてシームレスチューブとした。その後、該シームレスチューブの中に設置されている中子と外側に設置されているロールとによって、肉厚150μmのシームレスチューブ(所定の長さにしたものがシームレスベルトとなる。)を円筒状に保持した状態にて引き取り、これをシームレスベルトDとした。
【0092】
〔実施例1〕
上記のようにして得られたシームレスベルトA及びシームレスベルトBを、それぞれ、2つずつ用意した。一方を、図8に示す転写ユニットに装着し、39.2Nの張力を加えたまま、28℃85%RHの環境下で48時間保管した。また、他方を、図8に示す転写ユニットに装着し、39.2Nの張力を加えたまま、10℃、15%RHの環境下で48時間保管した。
なお、図8に示される転写ユニットは、装着されるシームレスベルト100に内接するように、4つの1次転写ロール102、バックアップロール104、ドライブロール106、テンションロール108、アイドリングロール109、110を備え、テンションロール108を矢印の方向に移動させることで、シームレスベルトに39.2Nの張力を付与することができる。
保管後、シームレスベルトに張力を加えたまま、22℃、55%RHの環境下へ移動させた。その状態で、3時間の乾燥を行った後、本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置の第1の例にて周方向の平面度を測定した。
【0093】
すなわち、まず、図1に示されるように、平行な第1のロール3と第2のロール5とにシームレスベルトを39.2Nの張力で張架した。シームレスベルトが静止した状態で、レーザー変位計9(キーエンス社製LK−030)を用いて、シームレスベルトの周方向に走査し、その表面の変位量の最大値と最小値の差分を求めた。
第1のロール3及び第2のロール5としては、ステンレス製のφ28mmのものを用い、シームレスベルトAにおいては、第1のロール3の軸と第2のロール5の軸との距離は430.5mmであった。レーザー変位計9の走査距離(測定距離)は350mmであった。また、シームレスベルトBにおいては、第1のロール3の軸と第2のロール5の軸との距離は395.5mmであった。レーザー変位計9の走査距離(測定距離)は350mmであった。
また、測定箇所は、シームレスベルトA、シームレスベルトBともに、軸方向における中心線、及中心から左右端部にそれぞれ80mm移動した箇所の3箇所とした。
【0094】
上記のようにして、3箇所の平面度の測定を行った後、シームレスベルトを3分の1回転させて同じように3箇所測定し、更にベルトを3分の1回転させて、全周を測定した。
軸方向3箇所の最大変位と最小変位の差分を各周における周平面度とし、3つの周平面度のうち最大値を、ベルトの周平面度として表1に記載した。
【0095】
[画像評価]
得られたシームレスベルトAを図7に示されるタンデム方式の画像形成装置と同構成の実機(DocuCentreColor a450(富士ゼロックス株式会社製))の中間転写ベルトとして取り付け、グリーン色(2次色)のハーフトーンの出力画像を目視により評価した。評価結果を表1に併記する。
得られたシームレスベルトBを図6に示されるタンデム方式の画像形成装置と同構成のテストマシンの転写搬送ベルトとして取り付け、グリーン色(2次色)のハーフトーンの出力画像を目視により評価した。評価結果を表1に併記する。
【0096】
【表1】

【0097】
〔実施例2〕
上記のようにして得られたシームレスベルトA及びシームレスベルトBを、それぞれ、2つずつ用意した。一方を、図8に示す転写ユニットに装着し、39.2Nの張力を加えたまま、28℃85%RHの環境下で48時間保管した。また、他方を、図8に示す転写ユニットに装着し、39.2Nの張力を加えたまま、10℃、15%RHの環境下で48時間保管した。
保管後、シームレスベルトに張力を加えたまま、22℃、55%RHの環境下へ移動させた。その状態で、3時間の乾燥を行った後、本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置の第2の例にて周方向の平面度を測定した。
【0098】
すなわち、まず、図2に示されるように、平行な第1のロール3と第2のロール5と第3のロール11にシームレスベルトを39.2Nの張力で張架した。シームレスベルトが静止した状態で、レーザー変位計9(キーエンス社製LK−030)を用いて、シームレスベルトの第1のロール3と第2のロール5とで張架された部分の表面に対して周方向に走査し、その表面の変位量の最大値と最小値の差分を求めた。
第1乃至第4のロール3、5、11、及び13としては、ステンレス製のφ28mmのものを用いた。第1のロール3の軸と第2のロール5の軸との距離は250mmであり、また、レーザー変位計9の走査距離(測定距離)は250mmであった。
また、測定箇所は、シームレスベルトA、シームレスベルトBともに、軸方向における中心線、及び中心から左右端部にそれぞれ80mm移動した箇所の3箇所とした。
【0099】
上記のようにして、3箇所の平面度の測定を行った後、シームレスベルトを200mmずつ回転させて同じように3箇所測定し、これを全周の測定が終了するまで繰り返した。
軸方向3箇所の最大変位と最小変位の差分を各周における周平面度とし、3つの周平面度のうち最大値を、ベルトの周平面度として表1に併記した。
【0100】
〔実施例3〕
上記のようにして得られたシームレスベルトA及びシームレスベルトBを、それぞれ、2つずつ用意した。一方を、図8に示す転写ユニットに装着し、39.2Nの張力を加えたまま、28℃85%RHの環境下で48時間保管した。また、他方を、図8に示す転写ユニットに装着し、39.2Nの張力を加えたまま、10℃、15%RHの環境下で48時間保管した。
保管後、シームレスベルトに張力を加えたまま、22℃、55%RHの環境下へ移動させた。その状態で、3時間の乾燥を行った後、本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置の第3の例にて周方向の平面度を測定した。
【0101】
すなわち、まず、図3に示されるように、平行な第1のロール3と第2のロール5と第3のロール11にシームレスベルトを39.2Nの張力で張架した。シームレスベルトが静止した状態で、レーザー変位計9(キーエンス社製LK−030)を用いて、シームレスベルトの第1のロール3と第2のロール5とで張架された部分の表面に対して周方向に走査し、その表面の変位量の最大値と最小値の差分を求めた。次いで、レーザー変位計15(キーエンス社製LK−030)を用いて、シームレスベルトの第1のロール3と第2のロール5とで張架された部分の表面に対して軸方向に走査し、その表面の変位量の最大値と最小値の差分を求めた。
第1乃至第4のロール3、5、11、及び13としては、ステンレス製のφ28mmのものを用いた。第1のロール3の軸と第2のロール5の軸との距離は250mmであり、また、レーザー変位計9の走査距離(測定距離)は250mmであった。
また、周方向の測定箇所は、シームレスベルトA、シームレスベルトBともに、軸方向における中心線、及び中心から左右端部にそれぞれ80mm移動した箇所の3箇所とした。
更に、軸方向の測定箇所は、第1のロール3の軸と第2のロール5の軸との中心線とした。
【0102】
上記のようにして、3箇所の周方向の平面度と1箇所の軸方向の平面度の測定を行った後、シームレスベルトを200mmずつ回転させて同じように周方向3箇所および軸方向1箇所の測定を行い、これを全周の測定が終了するまで繰り返した。
3箇所の周方向平面度について、ベルト全周に亘る最大変位と最小変位の差分を各周における周平面度とし、3つの周平面度のうち最大値を、ベルトの周平面度として表1に併記した。また、5箇所の軸方向平面度について、各軸の最大変位と最小変位の差分を各軸における軸平面度とし、5つの軸平面度のうち最大値を、ベルトの軸平面度として表1に併記した。
【0103】
〔参考例1〕
上記の方法で得られたシームレスベルトCを、実施例1と同様にして、本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置の第1の例にて周方向の平面度を測定した。また、実施例1と同様に、画像形成装置(図7に示されるタンデム方式の画像形成装置と同構成の実機(DocuCentreColor a450(富士ゼロックス株式会社製))に実装し、その画質の評価も行った。結果を表1に併記する。
【0104】
〔参考例2〕
上記の方法で得られたシームレスベルトDを、実施例1と同様にして、本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置の第1の例にて周方向の平面度を測定した。また、実施例1と同様に、画像形成装置(図7に示されるタンデム方式の画像形成装置と同構成の実機(DocuCentreColor a450(富士ゼロックス株式会社製))に実装し、その画質の評価も行った。結果を表1に併記する。
【0105】
表1によれば、本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置により、シームレスベルトA及びシームレスベルトBは平面度が全周に亘り5mm以下であり、本発明のシームレスベルトであることが明らかとなった。
また、この本発明のシームレスベルト(シームレスベルトA及びシームレスベルトB)を備えた画像形成装置では、転写画像に優れることが分かる。
一方、参考例1及び参考例2に示されるように、シームレスベルトC及びシームレスベルトDの周方向の平面度は、本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置で測定したところ5mmより大きく、このシームレスベルトを画像形成装置に実装したところ、転写画像の画質に問題が生じていた。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置の第1の例を説明するための概略断面図である。
【図2】本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置の第2の例を説明するための概略断面図である。
【図3】本発明の平面度測定方法及び平面度測定装置の第3の例を説明するための概略断面図である。
【図4】円筒成形管の内周面にポリイミド前駆体溶液を塗布する際に用いられる塗布装置の主要部を示す概略斜視図である。
【図5】円筒成形管の外周面にポリイミド前駆体溶液を塗布する際に用いられる塗布装置の主要部を示す概略斜視図である。
【図6】本発明の画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略断面図である。
【図8】シームレスベルトを保管する際に用いられる転写ユニットの構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0107】
1 シームレスベルト
3 第1のロール
5 第2のロール
7 レール
9 レーザー変位計(平面度測定装置)
11 第3のロール
13 第4のロール
15 レーザー変位計(平面度測定装置)
21 円筒成形管
24 容器
25 ノズル
26 ポリイミド前駆体溶液
27 加圧装置
28 ヘラ
41 円筒成形管
44 容器
45 ノズル
46 ポリイミド前駆体溶液
47 加圧装置
48 ヘラ
86 中間転写ベルト
100 シームレスベルト
206 転写搬送ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本のロールを用いて所定の張力で張架され、かつ、回転させない状態でのシームレスベルトの表面に対し、平面度測定装置を該シームレスベルトの周方向に走査することを特徴とするシームレスベルトの平面度測定方法。
【請求項2】
シームレスベルトを張架する少なくとも2本のロールと、
該少なくとも2本のロールを用いて所定の張力で張架され、かつ、回転させない状態での該シームレスベルトの表面に対し、周方向に走査する平面度測定装置と、
を備えることを特徴とするシームレスベルトの平面度測定装置。
【請求項3】
39.2Nの力で張架しつつ、28℃、85%RHの環境下で48時間保管したシームレスベルトであって、
少なくとも一部を、250mm以上離間した2本のロールにより39.2Nの張力で張架させ、該張架部分の表面に対し、回転させない状態で、平面度測定装置を前記シームレスベルトの周方向に走査することで得られる平面度が、全周に亘り5mm以下であることを特徴とするシームレスベルト。
【請求項4】
39.2Nの力で張架しつつ、10℃、15%RHの環境下で48時間保管したシームレスベルトであって、
少なくとも一部を、250mm以上離間した2本のロールにより39.2Nの張力で張架させ、回転させない状態での該張架部分の表面に対し、平面度測定装置を前記シームレスベルトの周方向に走査することで得られる平面度が、全周に亘り5mm以下であることを特徴とするシームレスベルト。
【請求項5】
39.2Nの力で張架しつつ、28℃、85%RHの環境下で48時間保管したシームレスベルトの判別方法であって、
該シームレスベルトの少なくとも一部を、250mm以上離間した2本のロールにより39.2Nの張力で張架させ、該張架部分の表面に対し、回転させない状態で、平面度測定装置を前記シームレスベルトの周方向に走査することで得られる平面度が、全周に亘り5mm以下であるか、否かを判定することを特徴とするシームレスベルトの判定方法。
【請求項6】
39.2Nの力で張架しつつ、10℃、15%RHの環境下で48時間保管したシームレスベルトであって、
該シームレスベルトの少なくとも一部を、250mm以上離間した2本のロールにより39.2Nの張力で張架させ、該張架部分の表面に対し、回転させない状態で、平面度測定装置を前記シームレスベルトの周方向に走査することで得られる平面度が、全周に亘り5mm以下であるか、否かを判定することを特徴とするシームレスベルトの判定方法。
【請求項7】
請求項3又は請求項4に記載のシームレスベルトを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−58059(P2007−58059A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246072(P2005−246072)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】