説明

シームレスベルト

【目的】 電子写真式複写機、レーザープリンター等に使用されるシームレスベルトにおいて、体積固有抵抗値の電圧依存性が少ないベルトを提供すること。
【構成】 1.メルトフローレートが12g/10分未満のETFE共重合体100重量部とPC2〜20重量部及び導電性カーボンブラック3〜25重量部2.メルトフローレートが12g/10分未満のETFE共重合体100重量部とPAT2〜20重量部及び導電性カーボンブラック3〜25重量部3.PC100重量部に対し、PAT5〜100重量部を溶融混練した混合物2〜50重量部とメルトフローレート12g/10分未満のETFE共重合体100重量部及び導電性カーボンブラック3〜25重量部のいずれかの組成を有し、それぞれ表面抵抗値が1×100 〜1×1013Ω/□体積抵抗値が1×101 〜1×1013Ω・cmで且つ、印加電圧10Vにおける体積抵抗値R1と、1000Vにおける体積抵抗値R2の比R1/R2が800以下である事を特徴とするシームレスベルトが得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真式複写機、レーザープリンター等において、感光体基体用を始め、中間転写、搬送、定着、現像等に使用されるシームレスベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から電子写真式複写機等の、中間転写装置、転写分離装置、帯電装置等においては、エンドレスベルト、特にシームレスベルトが多用されている。図1は中間転写方式の複写機の要部側面図である。図中、1は感光ドラム、6は導電性シームレスベルトである。感光ドラム1の周囲には、帯電器2、半導体レーザー等を光源とする露光光学系3、トナーが収納されている現像器4及び残留トナーを除去するためのクリーナー5よりなる電子写真プロセスユニットが配置されている。導電性シームレスベルト6は、搬送ローラ7,8,9に掛け渡されて、矢印Aの方向に回転する感光ドラムと同調して矢印B方向に移動するよう構成されている。
【0003】次に、動作について説明する。まず矢印A方向に回転する感光ドラム1の表面を帯電器2により一様に帯電する。次に、光学系3により図示しない画像読み取り装置等で得られた画像に対応する静電潜像を感光ドラム1上に形成する。静電潜像は現像器4でトナー像に現像される。このトナー像を、静電転写器10により導電性シームレスベルト6へ静電転写し、搬送ローラ9と押圧ローラ12の間で記録紙11に転写する。
【0004】導電性シームレスベルトとしては例えばポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂に導電性のカーボンブラックを配合し、円筒ダイを用いて筒状フィルムに押出成形し、この筒状フィルムを水平方向に輪切りしたものが知られている(特開平2−233765号公報、特開平3−89357号公報および特開昭64−26439号公報等に開示)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】電子写真式複写機に用いるシームレスベルトには、高耐久性が要求される。しかし、ポリカーボネート系シームレスベルトでは短時間で端面にクラックが入り、時間の経過と共に進展して破断に至る。また、中間転写用、転写分離用等の場合には、記録紙に転写されなかったトナー(残留トナー)を繰り返し除去するため、トナーの除去特性も要求される。しかし、残留トナーはベルトの使用経過と共にベルト表面にフィルム状に付着し、容易に除去できなくなる(フィルミング現象)。フィルミング現象の原因は不明だが、表面の相溶性が影響するのではないかと考えられている。トナーと相溶性のない樹脂としてはポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂があるが、対衝撃性および耐久性の点で実用化に至っていない。
【0006】またコロナ放電による電気力を用いて感光体上のトナーを中間転写ベルトに移行させているため、中間転写ベルトには1000V程度の高電圧が印加される。トナーの移行は繰り返し行われるため、中間転写ベルトには低電圧(10V付近)から高電圧(1000V付近)に至るまでほぼ一定の体積固有抵抗値を有し、かつ抵抗値の変化がないことが望まれている。しかしながら、従来の中間転写ベルトでは一旦高電圧を印加すると抵抗値が低下し、その後低電圧を印加しても抵抗値が元にもどらなかった。抵抗値が低下すると、転写ベルト上へのトナー移行量が低下し、画質の劣化、画像ムラ等の問題が生じる。
【0007】すなわち、従来、前述のフィルミング現象を改良するために、マトリックスのベースポリマーにフッ素樹脂であるエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)共重合体を用い、カーボンブラックで導電性を付与する2元系中間転写ベルトが提案されている。この2元系の場合、体積固有抵抗値を中間転写ベルトに適した値に制御するには、カーボンブラックを高濃度添加し、かつこのカーボンブラック粒子がかなり隣接して分散する必要がある。しかしこのようなカーボンブラックの分散状態で高電圧(例えば1000V)を印加すると、カーボンブラック粒子はイオン伝導の働きで互いにひきつけ合い、導電性の回路を形成するため中間転写ベルトの体積固有抵抗が低下する。さらにこの導電性回路は一度形成されると元の状態に戻らないため、抵抗値も低下したまま一定の値となってしまう。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、体積固有抵抗の電圧依存性が小さい中間転写ベルトを提供することにある。本発明者は上記目的を達成するため検討した結果、導電性カーボンブラックをベースポリマーであるフッ素系樹脂ではなく、第2ポリマーである熱可塑性芳香族ポリカーボネート(PC)又は、熱可塑性ポリアルキレンテレフタレート(PAT)又は、PCとPATを特定の比率で溶融混練した混合物の中へ選択分散させる事により、高電圧印加時の導電性回路形成を抑制し、抵抗値の電圧依存性を制御しうる事を見い出し、本発明に到達した。
【0009】すなわち、本発明によれば、1.メルトフローレートが12g/10分未満のETFE共重合体100重量部とPC2〜20重量部及び導電性カーボンブラック3〜25重量部2.メルトフローレートが12g/10分未満のETFE共重合体100重量部とPAT2〜20重量部及び導電性カーボンブラック3〜25重量部3.PC100重量部に対し、PAT5〜100重量部を溶融混練した混合物2〜50重量部とメルトフローレート12g/10分未満のETFE共重合体100重量部及び導電性カーボンブラック3〜25重量部からなり、それぞれ表面抵抗値が1×100 〜1×1013Ω/□体積抵抗値が1×101 〜1×1013Ω・cmで且つ、印加電圧10Vにおける体積抵抗値R1と、1000Vにおける体積抵抗値R2の比R1/R2が800以下である事を特徴とするシームレスベルトが得られる。
【0010】以下、本発明を具体的に説明する。
(1)エチレンテトラフルオロエチレン共重合体本発明で使用するエチレンテトラフルオロエチレン共重合体のメルト・フロー・レート(MFR)は12g/10min未満が好ましく、8g/10min未満が更に好ましい。
【0011】(2)熱可塑性芳香族ポリカーボネート本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂としては、炭酸エステルを構成すべきジヒドロキシ化合物の大部分が少なくとも二個のフェノール性水酸基を有する多価のフェノール類と、カーボネートプリカーサーであるホスゲン、ビスクロロホーメート又は炭酸ジエステル等とを反応させることにより製造されたものが挙げられる。多価の、特に二価のフェノール類としては、ビスフェノール類、特にビスフェノールAが好適である。
【0012】このような芳香族ポリカーボネート樹脂は分子量が22,000〜33,000、好ましくは24,000〜31,000のものを、また、JIS−K7210−1975に準拠し、280℃、2.16kg荷重によって測定したMFRが0.1〜20g/10分、好ましくは1〜10g/10分のものが好適である。本発明に適した芳香族ポリカーボネート樹脂成分は、一般に市販されているものから選択して使用することができる。
【0013】(3)熱可塑性ポリアルキレンテレフタレート本発明で使用する熱可塑性樹脂であるポリアルキレンテレフタレート(PAT)は、アルキレン成分を構成すべきグリコール成分がエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4−テトラメチレングリコール、等の脂肪族のジオキシ化合物は、エチレングリコール及びブチレングリコールであるが、その40モル%までを他のジオキシ化合物を用いた混合物も好ましいものである。
【0014】一方、このPATのテレフタル酸成分はテレフタル酸のみからなるものが最も好ましいが、特に芳香族ジカルボン酸、例えばイソフタル酸で置き換えても良い。本発明で好ましいPATは、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)であるが、特に好ましいのは、PBTである。また、PBTの中でもメルト・フロー・レートが30g/10min未満のものが好ましく、特に好ましいのは、10g/10min未満のものである。PET、PBTを含めて各種のPATが市場で入手できる。
【0015】(4)カーボンブラック本発明で使用されるカーボンブラックとして好ましいのは、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラックがある。
【0016】(5)配合量配合成分とその配合量は次の3通りが考えられる。
(配合例1) ETFE共重合体100重量部とPC2〜20重量部、好ましくは2〜10重量部、更に好ましくは2〜6重量部及び導電性カーボンブラック3〜25重量部、好ましくは3〜20重量部。PCが2重量部未満では、カーボンブラックの分散制御ができない為、抵抗値の電圧依存性が大きくなる。一方、20重量部を超えると製品の外観が悪くなり、画像に悪影響を及ぼす。カーボンブラックが3重量部未満では導電性に乏しく、25重量部を超えると製品の外観が悪化し、強度低下の問題が生じる。
【0017】本配合による樹脂組成物において、カーボンブラックはPC中に選択分散し、この導電性PCがETFE共重体中にミクロ分散した構成を有する。よって、この分散ドメインの粒子間距離を制御すれば半導電性の抵抗値が発現できる。分散ドメインを形成する導電性PCは、カーボンブラック単体に比べて極めて導電性が悪いため、高電圧(例えば1000V)を印加しても、隣近した分散ドメインは互いに移動せず、低電圧を印加した場合と同じ抵抗値が得られる。
【0018】(配合例2) ETFE共重合体100重量部とPAT2〜20重量部、好ましくは2〜10重量部、更に好ましくは2〜6重量部及び導電性カーボンブラック3〜25重量部、好ましくは3〜20重量部。PATが2重量部未満では、カーボンブラックの分散制御ができないため、抵抗値の電圧依存性が大きくなる。一方、20重量部を超えると製品の外観が悪くなり、画像に悪影響を及ぼす。カーボンブラックが3重量部未満では導電性に乏しく、25重量部を超えると製品の外観が悪化し、強度低下の問題が生じる。
【0019】本配合による樹脂組成物において、カーボンブラックは、PAT中に選択分散し、この導電性PATがETFE共重合体中に部分的な連続回路を形成する構造で分散する。従って、第1の配合に比べて少ないカーボンブラックで同等の導電性を得ることができる。カーボン添加量が少ないため、部分的な連続回路を形成していても、高電圧の印加による抵抗値の低下は認められず、低電圧を印加した場合と同じ抵抗値が得られる。
【0020】(配合例3) PC100重量部に対しPAT5〜100重量部、好ましくは5〜60重量部、更に好ましくは5〜40重量部を溶融混練した混合物2〜50重量部、好ましくは2〜30重量部、更に好ましくは2〜15重量部と、メルトフローレート8g/10分未満のETFE共重合体100重量部及び導電性カーボンブラック3〜25重量部、好ましくは3〜20重量部。PCとPATとの溶融混合物が2重量部未満では、カーボンブラックの分散制御ができないため、抵抗値の電圧依存性が大きくなる。一方、50重量部を超えると製品の外観が悪くなり画像に悪影響を及ぼす。カーボンブラックが3重量部未満では導電性に乏しく、25重量部を超えると製品の外観が悪化し、強度低下の問題が生じる。
【0021】本配合による樹脂組成物において、PCとPATとの溶融混合物中、PATはPC中で連続層を形成し、カーボンブラックはPAT中に選択分散する。カーボンブラックの分散構造はPCとPATの配合比率によって異なり、ベースポリマーであるETFE共重体中への分散状態も大きく変化する。要求される抵抗特性に応じてPCとPATの配合比率を変化させ、導電性ポリマーの分散ドメインを設計すれば、抵抗値の電圧依存性を小さくすることができる。
【0022】得られたシームレスベルトの表面抵抗値は、100 〜1013Ω/□の範囲が好ましい。感光体基体用として使用する場合には、100 〜105 Ω/□が好ましく、100 〜103 Ω/□が特に好ましい。中間転写用、搬送用、定着用および現像用等に使用する場合には105 〜1013Ω/□が好ましく、107 〜1012Ω/□が特に好ましい。また、体積方向の抵抗値は、101 〜1013Ω・cmの範囲が好ましい。感光体基体用として使用する場合には、101 〜105 Ω・cmが好ましく、101 〜103 Ω・cmが特に好ましい。中間転写用、搬送用、定着用および現像用等に使用する場合には105 〜1013Ω・cmが好ましく、107 〜1012Ω・cmが特に好ましい。体積抵抗値が107 〜1012Ω・cmの範囲は半導電性領域となり、1000V程度の高電圧を印加した場合、一般には10Vにおける抵抗値と比較して体積抵抗値が800分の1以下に低下し、画像ムラを生ずる。
【0023】さらに本発明では、発明の効果を著しく損なわない範囲でこれらの成分の他に付加的成分を配合することが出来る。付加成分、熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度、中密度、低密度、直鎖状低密度)、プロピレンエチレンブロックまたはランダム共重合体、ゴムまたはラテックス成分、例えばエチレン・プロピレン共重合体ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体または、その水素添加誘導体、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリビスアミドトリアゾール、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、アクリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、アクリル、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリエステルエステル共重合体、ポリエーテルエステル共重合体、ポリエーテルアミド共重合体、ポリウレタン共重合体等の1種またはこれらの混合物からなるものが使用される。熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂の1種またはこれらの混合物からなるものが使用される。
【0024】また、各種フィラー、例えば、炭酸カルシウム(重質、軽質、膠質)タルク、マイカ、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、ゼオライト、ウオラストナイト、けいそう土、ガラス繊維、ガラスビーズ、ベントナイト、モンモリロナイト、アスベスト、中空ガラス玉、黒鉛、二酸化モリブデン、酸化チタン、炭素繊維、アルミニウム繊維、ステンレススチール繊維、黄銅繊維、アルミニウム粉末、木粉、もみ殻、グラファイト、金属粉、導電性金属酸化物、有機金属化合物、有機金属塩、等のフィラーの他、添加剤として:酸化防止剤(フェノール系、硫黄系等)、滑剤、有機・無機系の各種顔料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、銅害防止剤、難燃剤、架橋剤、流れ性改良剤等を挙げることが出来る。
【0025】上記組成物は、所望により付加的成分を一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、プラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機を用いて製造することができる。通常は押出機等で各成分を各々に混練してペレット状のコンパウンドにした後で加工するが、特殊な場合は各成分を直接成形機に供給し、成形機で本組成物を混練しながら成形することもできる。
【0026】シームレスベルトの製造方法は、連続溶融押出成形法、射出成形法あるいはブロー成形法、インフレーションフィルム成形法等公知の方法を採用することが出来る。望ましい製造方法は連続溶融押出成形法で、特に押し出したチューブの内径を高精度で制御可能な下方押し出し方式の内部冷却マンドレル方式あるいはバキュームサイジング方式が好ましく、内部冷却マンドレル方式が最も好ましい。
【0027】押し出されたシームレスベルトは未延伸状態で必要な導電性、厚みの均一性、機械的強度を有していなければならない。これは、延伸操作により、機械的強度の向上は期待できるが、導電性の均一性が損なわれること、延伸方向に裂け易くなるため耐久性も損なわれてしまう等の問題が生じるからである。さらに、カーボンブラックとプラスチックの界面に剥離が生じカーボンが脱落して転写むら等の原因となる問題もある。
【0028】シームレスベルトの厚みは、50μm以上1000μm以下が好ましく、100μm以上700μm以下がさらに好ましい。50μm未満になるとシームレスベルトが伸び易くなる為、画像の色むら等の問題が生じる。また、耐電圧が不足し、転写に必要な電荷を付与するのに十分な電圧を印加する事が出来なくなる。また、1000μmを越えると柔軟な変形が困難になるため、小径ロールによる均一な速度の駆動ができず、画像の転写ずれが生じる。さらに、静電容量が小さくなるため、高電圧を印加しないと転写に必要な電荷を付与することができず、電源装置の高コスト化、大型化のみならず、周辺機器部品間での放電等の問題が生ずる。
【0029】シームレスベルトはそのままベルトとして使用しても良いし、ドラムあるいはロール等に巻き付けて使用しても良い。更に、図2に示すように、蛇行防止や端面補強等の目的のために、所定の寸法のシームレスベルトの内側面端部を耐熱テープ13或いは、シリコンゴム14等で処理しても良い。
【0030】
【実施例】次に、本発明を実施例を用いて説明する。実施例及び比較例においての使用材料は、下記の通りである。
A エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(旭硝子社製、商品名「アフロンCOP:C55AP」)MFR:2g/10分B 熱可塑性芳香族ポリカーボネート(三菱ガス化学社製、商品名「ユーピロンE2000F MFR:1.2g/10分)
C 熱可塑性ポリアルキレンテレフタレート(三菱化成社製、商品名「ノバドール5020 MFR:1.1g/10分)
D 上述のB(PC)100重量部とC(PAT)20重量部とを溶融混練した混合物E 導電性カーボンブラック(電気化学工業社製、商品名「デンカブラック」)
F 導電性カーボンブラック(ケッチエンブラックインターナショナル社製、商品名「ケッチエンブラックEC」)
実施例及び比較例においての実験、評価方法は、下記の通りである。
【0031】1.メルト・フロー・レートJIS K7210に準拠し、エチレンテトラフレオロエチレン共重合体 温度300℃、荷重2.16kg熱可塑性芳香族ポリカーボネート 温度280℃、荷重2.16kg熱可塑性ポリアルキレンテレフタレート 温度280℃、荷重2.16kgでそれぞれ測定した。
【0032】2.導電性JIS K6911に準拠。デジタル超高抵抗/微少電流計(アドバンテスト社製:R8340A)を用い測定電圧 10V〜1000V測定時間 20秒で測定した。
【0033】3.トナー固着性試験シームレスベルトの外側面を上にしてトナーをベタ現像したサンプル上にJIS Z1522に準拠したセロハン粘着テープを十分圧着し、表面と約45度に保ち手前に一気に引き剥し、トナーの残り具合を面積比で表す。
【0034】4.ヒンジ特性JIS P8115に準拠して、厚さ150μmのシームレスベルトを幅10mm、長さ80mmの大きさに切断し、ヒンジ試験機で、速度180回/分、回転角度90°左右、引張り荷重0.5kgの条件で破壊回数を測定した。
【0035】5.耐久性200mm幅のシームレスベルトを、両ロール径25φmm、ロール速度100mm/sec、ベルト張力8kg/ベルト全巾、25℃、湿度55%の条件で図2の装置にセットし、ベルトの割れ状態を目視にて観察した。
【0036】以下、具体的実施例により本発明を更に説明する。
(実施例1〜3)配合例1の実施例である。表1にて示した配合にて、環状ダイ付き40φの押出機を用い、環状ダイより下方に溶融チューブの状態で押出す。押出した溶融チューブを、環状ダイと同一軸線上に支持棒を介して装着した、冷却マンドレル外表面に接しめて冷却固化させてシームレスチューブとした。次に、シームレスチューブの中に設置されている中子と、外側に設置されているロールにより、シームレスチューブ(所定の長さに切断したものがシームレスベルト)を円筒形を保持した状態で引き取った。得られたベルトの導電性、トナーの固着性、ヒンジ特性、耐久性の評価結果を表1に示す。
【0037】(実施例4〜6)配合例2の実施例である。配合以外は実施例1〜3と同様にして得られたベルトの導電性、トナーの固着性、ヒンジ特性、耐久性の評価結果を表1に示す。
【0038】(実施例7〜11)配合例3の実施例である。配合以外は実施例1〜3と同様にして得られたベルトの導電性、トナーの固着性、ヒンジ特性、耐久性の評価結果を表1に示す。
【0039】(比較例1〜3)配合以外は実施例1〜3と同様にシームレスベルトを得た。得られたベルトの導電性、トナーの固着性、ヒンジ特性、耐久性の評価を表1に示す。
【0040】
【表1】


【0041】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、体積固有抵抗値の電圧依存性が少ないシームレスベルトが得られ、画像ムラ、画像ずれが防止できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】中間転写方式の複写機における要部側面図である。
【図2】端面を補強したシームレスベルトの斜視図である。
【符号の説明】
1 感光ドラム
2 帯電器
3 露光用光学系
4 現像器
5 クリーナー
6 導電性シームレスベルト
6a 内側面
6b 外側面
7 搬送ローラ
8 搬送ローラ
9 搬送ローラ
10 静電転写器
11 記録紙
12 押圧ローラ
13 補強用テープ
14 ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 メルトフローレートが12g/10分未満のエチレンテトラフルオロエチレン共重合体100重量部、熱可塑性芳香族ポリカーボネート2〜20重量部、導電性カーボンブラック3〜25重量部とからなり、表面抵抗値が1×100 〜1×1013Ω/□、体積抵抗値が1×101 〜1×1013Ω・cmで且つ、印加電圧10Vにおける体積抵抗値R1と、1000Vにおける体積抵抗値R2の比R1/R2が800以下である事を特徴とするシームレスベルト。
【請求項2】 メルトフローレートが12g/10分未満のエチレンテトラフルオロエチレン共重合体100重量部、熱可塑性ポリアルキレンテレフタレート2〜20重量部、導電性カーボンブラック3〜25重量部からなり、表面抵抗値が1×100 〜1×1013Ω/□、体積抵抗値が1×101 〜1×1013Ω・cmで且つ、印加電圧10Vにおける体積抵抗値R1と、1000Vにおける体積抵抗値R2の比R1/R2が800以下である事を特徴とするシームレスベルト。
【請求項3】 熱可塑性芳香族ポリカーボネート100重量部に対して熱可塑性ポリアルキレンテレフタレート5〜100重量部を溶融混練した混合物2〜50重量部と、メルトフローレート12g/10分未満のエチレンテトラフルオロエチレン共重合体100重量部と、導電性カーボンブラック3〜25重量部からなり、表面抵抗値が1×100 〜1×1013Ω/□、体積抵抗値が1×101 〜1×1013Ω・cmで且つ、印加電圧10Vにおける体積抵抗値R1と、1000Vにおける体積抵抗値R2の比R1/R2が800以下である事を特徴とするシームレスベルト。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平6−149079
【公開日】平成6年(1994)5月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−303495
【出願日】平成4年(1992)11月13日
【出願人】(000006057)三菱油化株式会社 (9)