説明

シームレス印刷用凸版材の製造方法及びシームレス印刷用凸版材の製造装置

ワーク70を保持回転手段にセット後、液状感光性樹脂10を樹脂塗布平滑化ユニット150に供給し、ワーク70を回転させながら樹脂塗布平滑化ユニット150にてワーク70の外周面に液状感光性樹脂10を塗布しながら均一な厚みに成型する。更に、ワーク70を回転させながら高強度な紫外線30で露光し、これによって光硬化した感光性樹脂層表面を整形した後、不要な樹脂層を除去する。そして、赤外線レーザービーム40によるレーザー彫刻を行って後処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー彫刻によるフレキソ印刷版用レリーフ画像の形成、エンボス加工などの表面加工用パターンの形成、タイルなどの印刷用レリーフ画像形成に適したシームレス(継ぎ目なし)印刷用原版に、ディジタル画像データを元に赤外線レーザービームの選択照射を行い、当該原版に直接画像パターンを形成する印刷版の製造において、液状感光性樹脂を使用したシームレス印刷用凸版材の製造方法及びシームレス印刷用凸版材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
段ボール、紙器、紙袋、軟包装用フィルムなどの包装材、壁紙、化粧板などの建築内装材、ラベルなどの印刷用として用いられるフレキソ印刷は、各種の印刷方式の中でも、近年特にその比率を高めている。
このフレキソ印刷に用いられる印刷版は、一般的に感光性樹脂が用いられることが多く、液状の樹脂、或いはシート状に成型された固体樹脂版があり、液状或いは固体版専用の製版装置を使用し、ネガフィルムを介してレリーフ画像が形成された感光性樹脂凸版印刷版が得られ、印刷機の版胴に直接貼り込むか、或いは一旦キャリアシートや印刷用スリーブに貼り込み、そのキャリアシートや印刷用スリーブを版胴に装着して印刷する。
【0003】
また、感光性樹脂固体版には、近年のディジタル画像技術の進展に対応して、ネガフィルムを用いる代わりに、感光性樹脂表面に赤外線レーザーで融除可能な薄い赤外感光層(ブラックレイヤー)を設け、レーザー描画によりマスク画像を作成した後に、このマスクを介して露光を行う構成体(フレキソCTP版と呼ぶ)(特許文献1)や、ディジタル画像情報に基づきフレキソCTP版の赤外感光層を赤外線レーザーにて選択的に融除してマスクを形成する外面ドラム型描画装置(特許文献2)が提示されている。
【0004】
フレキソCTP版では、上記の赤外感光層マスクを介してレリーフ露光を行い、露光された感光性樹脂が光硬化する。この後に、未露光樹脂を塩素系溶剤であるパークロロエチレン(1,1,1−トリクロロエチレン)単独又はn−ブタノールのようなアルコールとの組み合わせ、或いは非塩素系の代替溶剤であるソルビット(商標名、マクダミッド製)のような炭化水素系溶剤現像液で洗い落とすことによりレリーフ画像を形成し、乾燥工程や仕上げ工程(光化学処理や化学処理)を経て、フレキソ印刷版を得るが、このようなフレキソCTP版でも版胴に巻き付けた状態では、やはり通常版と同様に先端と終端との間には、多少なりとも隙間が残るので、シームレス印刷には不適当である。
【0005】
このため、従来の継ぎ目なし(シームレス)エンドレス模様の印刷は、グラビア版による印刷か、又は、加硫されたゴムロールに手彫りで画像を与えた凸版による印刷の何れかの方式に頼ってきた。
グラビア版の製版は、銅シリンダへの感光液の塗布・露光・現像・エッチング・剥膜・クロムメッキなどの一連の複雑な工程を長時間かけて行うため、製版コストが非常に高く、更にセル深度の調整のためにエッチング条件では、非常に微妙なコントロールが要求されるため熟練者の勘に頼る操作に加え、製版工程ではエッチングやメッキなどの操作もあり、廃液公害の発生源となる恐れがある。
【0006】
また、上述した手彫りによるゴムロール凸版は、その作製技術に高い熟練度が要求されることと、手彫りのために細かい図柄が作製不可能であること、更に網点を再現することが出来ないという致命的な欠陥を有する。
しかし、加硫されたゴムは浸蝕性が強い溶剤とともに使用でき、更に良好なインキ転写性、高い弾力性、高い圧縮性を併せ持つとされ、最近ではディジタル画像処理技術やレーザー彫刻技術の進歩により、手彫りに代わり、ディジタル画像信号に基づいて赤外線レーザーで直接ゴムロールを彫刻して凸版印刷版を得ることが可能となっている。
【0007】
商業的に使用されているゴムには、天然物或いは合成物がある。合成ゴムの例として、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーエラストマー(EPDM)があり、これを用いてレーザー彫刻可能なフレキソ印刷版材を提供することができる。天然ゴム又は合成ゴムから製造されるフレキソ印刷版材は、化学的な架橋を行うために硫黄、硫黄含有化合物又は過酸化物による加硫を必要とする。更に、このように加硫された後、印刷に適する均一な厚さと平滑な表面とを得るための研磨を必要とする。これは著しく時間を要し、また作業性が悪くもある。
【0008】
このため、上記のような不具合を解消するために、凸版印刷分野で広く使用されている製法上有利な感光性重合体(液状或いはシート状の固体樹脂版)を応用した数多くのシームレス印刷用凸版材の製造方法及び装置の提案は、枚挙にいとまがない。
スリーブ上に印刷版を設ける方法として、溶剤で希釈した液状感光材樹脂を用いた継ぎ目なし(シームレス)の連続印刷パターンが印刷可能な版材を製造する方法が知られている(特許文献3)。この特許文献3では、エンドレス状の素材を回転させ、当該回転表面に液状感光性樹脂を供給し、ドクターで平滑化する製造方法を提示している。
【0009】
また、特許文献4では、塗布方式として、噴霧、浸漬、塗布ローラ、或いは押し出し機方式を提示している。
また、液状感光性樹脂の代わりに、感光性樹脂固体版を応用した数多くのシームレス印刷用凸版の製造方法及び装置も数多く提案されている。
例えば、特許文献5では、複数枚の熱可塑性感光性フィルムをシリンダに重ね合わせて巻き付け、加圧・加熱にて得られた一体化した感光性フィルムを正確な寸法にした後、機械的な圧縮、研削或いは研磨による整形処理を施し、カレンダー仕上げする製造方法を提示している。
【0010】
また、特許文献6では、マンドレルで支持されたスリーブ外周面に、熱可塑性の感光性樹脂を加熱して溶融状態にしておき、カレンダーロール方式による圧延艶出しにてシームレススリーブを製造する方法及び装置を提示している。
また、液状感光性樹脂を用いた継ぎ目なし(シームレス)の連続印刷パターンが印刷可能な版材を製造する方法も、本出願人による出願により知られている(特許文献7)。
【0011】
この特許文献7では、シリンダを回転させながらシリンダ外周面に液状感光性樹脂を供給する塗布工程、当該塗布された液状樹脂層に活性光線を照射して樹脂硬化層を形成させる露光工程によりシームレス印刷用原版を製造する。この後に、ディジタル記録信号を元にレーザー彫刻にてシームレス印刷用原版の樹脂硬化層にレリーフ画像を形成させる製造方法及び装置を提示している。
【0012】
一方、特許文献8には、オフセット印刷用のブランケットに係わるものであり、本発明と異なる技術分野ではあるが、ベーススリーブを回転させながら且つ線形移動させることにより、固定位置に設置してある個々の機構を使用して該当する工程を行うことが可能な構成及び構造が開示されている。
即ち、先ず液体アプリケータにて放射性硬化性ポリマーを塗布し、任意の表面仕上げ器で樹脂液表面を平滑化した後に、放射線(好ましくは紫外線)露光によりポリマー硬化層を形成させ、望むならばスクレパー、平削り装置及び研磨装置の何れかを使用してポリマー硬化層を平滑化した後に、所望長にてベーススリーブを切断する製造装置及び方法を提示している。
【0013】
液体アプリケータとしては、流体塗布方式として一般的に使用されている公知技術である(ブレード、ローラ、ノズル、スプレー、アニロックスロール)を挙げており、また、表面仕上げ器も一般的な公知技術である(ドクターブレード、スクレパー、平削り装置、研磨装置)を挙げているだけなので、この特許文献8の発明が先行発明や従来の公知の技術と比較して新規性のあると思われる箇所は下記(1)及び(2)の2点に絞られる。
【0014】
(1)処理機構を固定位置において、ベーススリーブを回転と線形移動させることで連続処理を行う。
(2)所望長にてベーススリーブを切断する機構を備えている。
この特許文献8の実施例では、ベーススリーブを回転と線形移動させ、スプレー機構によりスパイラル態様で放射性硬化性ポリマーを塗布し、次に第一段の丸形平滑化ステーションで平滑化した後に、紫外線光源による露光にてポリマー硬化層を形成させ、また、第一段と同様な第二段の丸型平滑化ステーションにてポリマー硬化層を平滑化した後に、更に当該ポリマー硬化層上に第二のスプレー機構にて第二ポリマー層を積層させる工程が図示してある。
【0015】
当該第二ポリマー層のそれ以降の工程は、該当する機構が図示されていないため詳細は不明だが、この実施例の文脈から判断する限り、第一ポリマー層と同様に第一段の平滑化工程、紫外線露光工程、第2段の平滑化工程が続くものと推定される方法及び装置を例示している。
【特許文献1】特開平11−153865号公報
【特許文献2】特開平8−300600号公報
【特許文献3】特開昭52−62503号公報
【特許文献4】西独国特許出願公開第2640105号明細書
【特許文献5】特開昭63−202751号公報
【特許文献6】特許第3209928号公報
【特許文献7】特開2002−079645号公報
【特許文献8】特開2003−39848号公報 しかし、上述した従来のシームレス印刷用凸版材の製造方法及びシームレス印刷用凸版材の製造装置においては、次のような問題がある。
【0016】
感光性樹脂固体版から継ぎ目なしの凸版印刷版材を得ようとした場合、一般的に、上記特許文献5及び6のようにシリンダ表面に感光性樹脂固体版を巻き付け、端縁部の突き合わせ接合箇所をカレンダーロール等により加圧・加熱して融着させた後に、前述のゴムの場合と同様に版厚均一化と表面平滑化のための研削や研磨工程が行われる。更に、ネガフィルムの代替として、例えば、上記特許文献1のように表層部にピンホールのない均一なカーボンブラックレイヤーを形成し、上記特許文献2のようなディジタル制御されたレーザー描画装置により選択的にカーボンブラックレイヤーを融蝕除去してマスクを制作し、公知の露光、溶剤現像、乾燥、後露光などの工程を経ることによって、継ぎ目のない凸版印刷版が得られる。
【0017】
しかし、上述でも指摘したように完全に継ぎ目がないとは言い難く、しばしば継ぎ目における印刷物の非連続性が問題となる。
上記特許文献3及び4においては、何れも塗布前に感光性樹脂を溶剤で希釈し、塗布後に溶剤を蒸散させて感光性樹脂層を硬化させているため臭気や公害の問題、或いは真空吸引を使わずネガフィルムを単に圧接させただけで露光しているため、ネガフィルムと感光性樹脂層との密着不良による画像の太りによる再現性の問題、或いは液状樹脂の宿命である気泡の巻き込み、シームレス印刷版としてのトータル精度が実用域に収まらないなど液状樹脂成型上の問題から実用化までには至っていない。
【0018】
上記特許文献7においては、樹脂供給機構(バケット)を閉め液状感光性樹脂のシリンダへの供給を停止した際に、バケット先端ドクターブレードとシリンダ外周面に塗布された樹脂が分離する瞬間にて、液状樹脂の粘着性のため、既に塗布厚みが均一化された液状樹脂層の一部にドクターブレード側で保持している液状樹脂が転移して塗布厚みムラや凸部の欠陥となり、平滑性が損なわれるため印刷版の精度が印刷適用範囲外となって印刷不良を引き起こす。また、バケットの開閉時やドクターブレードによる平滑化工程で気泡を巻き込み樹脂層表面近傍で欠損部が発生する問題や、バケット構造のために樹脂塗布幅が固定され、シリンダ幅のサイズ変更に容易に対応出来ないなど実用化するためには幾つかの問題を抱えている。
【0019】
上記特許文献8においては、回転している円筒状物に均一な厚みで液体を塗布する場合、ある程度の高粘性を有する液体でなければ、重力や回転遠心力により容易に液体が流動してしまい形状を保持しにくく、凸版印刷版の樹脂層の厚みは一般的には0.5mm〜7.5mm(レーザー彫刻用途としては1.14mm〜2.84mm)と厚いため、均一な厚みに塗布できないばかりか、液体が円筒状物から分離して滴り落ちる危険性すらある。この滴り落ちる危険性は、特に塗布された液体が最下限位置に到達したときに最も発生しやすい。
【0020】
また、上記のフレキソ印刷凸版製版システムの平面露光方式で使用されている液状感光性樹脂を、そのままレーザー彫刻用途として流用した場合には、レーザー彫刻される樹脂硬化層に大量の滓(粘凋液体を含む)が発生するため、無機多孔質体を添加して滓の発生を抑制しているが、当該添加により液状感光性樹脂の粘度が飛躍的に増大しているのが現状である。
【0021】
このように、レーザー彫刻適性の高い凸版印刷用の液状感光性樹脂は、一般的な液状感光性樹脂と比べて非常に高粘度であり、この高粘度な液状樹脂をスプレー機構によりスパイラル態様で塗布する場合には、前回転で塗布された樹脂と新規塗布樹脂との境界で気泡が発生する問題がある。これに加え、如何なる手段でこのような高粘度の液状感光性樹脂をスプレー塗布可能とするのか具体的な実施例が記載されていない。
【0022】
また、第一段の平滑化ステーションでは、塗布された液状樹脂が当該ステーションの狭領域を通過するときの流動抵抗により、余剰の液状樹脂が当該ステーション接触面両端から周囲へと拡散していくため、わざわざ前回転で平滑化された液状樹脂層に悪影響を与え、平滑化というより、むしろ塗布された液状樹脂層の厚みを悪化させる原因となる。
この他にも、塗布された液状樹脂の先端が上記ステーションと接触する時に気泡を巻き込むなどの問題を抱えており、実用化に至らないと推定できる。また、露光に関しても、高強度紫外線により光硬化された樹脂層が凸版印刷用として印刷適正の向上に寄与しているという具体的な記載はない。これらのように、レーザー彫刻用シームレス印刷原版とオフセット印刷用ブランケットとの用途違いにより使用する液状感光性樹脂が異なるため、製造方法及び装置が異なることは明白である。
【0023】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、高精度な厚みと印刷に好適な表面平滑性による印刷適正が高く且つ完全に継ぎ目のないシームレス印刷用凸版材を製造することができ、従来のネガフィルム作製工程や溶液現像液工程を不要とすることによる作業性の向上、省資源化及び環境保全を図ることができるシームレス印刷用凸版材の製造方法及びシームレス印刷用凸版材の製造装置を提供することを目的としている。
【発明の開示】
【0024】
本発明による請求の範囲第1項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法は、液状感光性樹脂を用いたシームレス印刷用凸版材の製造方法であって、印刷用シリンダ及び金属心棒に一体に支持された印刷用スリーブの何れか一方を用いたワークを、当該ワークを保持して回転させる保持回転手段に装着する装着工程と、所定の傾斜角度を有し、且つ先端がドクターブレード形状の樹脂受けプレートに、重力及び回転による遠心力に影響されず塗布形状を保持可能な粘度の液状感光性樹脂を、樹脂供給手段で、所望塗布幅で線形態様にて供給する供給工程と、前記ワークを回転させながら前記樹脂受けプレートに供給された前記液状感光性樹脂を、前記ワークの外周面に所望塗布幅で塗布しながら前記樹脂受けプレートの先端刃先で所定の塗布厚みに成型する成型工程と、前記ワークを回転させながら前記ワークの外周面に塗布された前記液状感光性樹脂に、高強度の紫外線を照射することにより当該液状感光性樹脂を、赤外線レーザーにて彫刻可能なように光硬化させて感光性樹脂硬化層を形成する露光工程とを含むことを特徴としている。
【0025】
これによって、重力及び回転による遠心力に影響されず塗布形状を保持可能な粘度の液状感光性樹脂を、樹脂供給手段で、樹脂受けプレートに所望塗布幅で線形態様にて供給し、ワークを回転させながら当該樹脂受けプレートにて液状感光性樹脂をワークの外周面に塗布しながら先端刃先で塗布厚みを成型するので、塗布厚みを均一及び平滑にすることができる。また、高強度の紫外線露光によって感光性樹脂硬化層の印刷適正の改善を図ることができる。
【0026】
また、本発明の請求の範囲第2項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法は、請求の範囲第1項において、樹脂受けプレートは少なくとも一端が前記ワークの軸心方向に線形移動可能な樹脂流動防止可動堰を有することを特徴としている。
これによって、可動堰を適宜移動させることにより任意の塗布幅に設定することができる。
【0027】
また、本発明の請求の範囲第3項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法は、請求の範囲第1項において、前記感光性樹脂硬化層の表面を整形する整形工程を更に含むことを特徴とする。
これによって、感光性樹脂硬化層の表面を整形するので、高精度な厚みと、印刷に好適な表面平滑性を有するシームレス印刷用凸版材(シームレス印刷用原版ともいう)が容易に製造可能となる。
【0028】
また、本発明の請求の範囲第4項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法は、請求の範囲第1項において、前記供給工程において供給される液状感光性樹脂の粘度は、20℃において6Pa・s以上で50kPa・s以下であり、前記露光工程の紫外線は、波長域200〜400nmで且つ紫外線強度が10mW/cm以上であることを特徴としている。
【0029】
これによって、液状感光性樹脂の粘度を、20℃において6Pa・s以上で50kPa・s以下としたので、重力や回転による遠心力などに影響されず、塗布形状を保持することができる。また、液状感光性樹脂露光用の紫外線に、波長域200〜400nmで且つ紫外線強度が10mW/cm以上のものを用いることによって、印刷適正を向上させた感光性樹脂硬化層を形成することができ、当該感光性樹脂硬化層が波長域0.7〜15マイクロメーターの赤外線レーザーにて彫刻可能となる。このように、高強度な紫外線を照射することによって感光性樹脂硬化層の印刷適正を向上させると、低強度の蛍光灯型紫外線光源と比較して耐ノッチ性が約2倍向上して欠けにくくなると共に、ショアAで約5度硬度が低下してベタのインクの載りが改良される。
【0030】
また、本発明の請求の範囲第5項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法は、請求の範囲第1項または第4項において、前記供給工程において、前記樹脂供給手段を前記ワークの軸心方向へ線形移動させることによって、樹脂容器に収容した前記液状感光性樹脂を線形態様にて前記樹脂受けプレートに供給する第1の供給、及び前記所望塗布幅に設けられた前記樹脂供給手段の少なくとも1個以上の樹脂供給ノズルから線形態様にて液状感光性樹脂を前記樹脂受けプレートに供給する第2の供給の何れか一方を行うことを特徴としている。
【0031】
これによって、液状感光性樹脂を樹脂受けプレートに安定的に供給することができる。
また、本発明の請求の範囲第6項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法は、請求の範囲第1項から第5項の何れか1項において、前記成型工程において、前記樹脂受けプレートを前記ワークの軸心に対して鉛直方向に移動させ、当該樹脂受けプレートの先端刃先と前記ワークの外周面との隙間を徐々に広げながら前記ワークの外周面に所望厚みの液状感光性樹脂を塗布することを特徴としている。
【0032】
これによって、樹脂塗布開始点で巻き込まれる気泡を、塗布樹脂層の最下部に閉じ込めることができるので、当該樹脂層表面における気泡による欠損を発生させないようにすることができる。
また、本発明の請求の範囲第7項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法は、請求の範囲第1項から第6項の何れか1項において、前記供給工程の処理を、複数回行うことを特徴としている。
【0033】
これによって、液状感光性樹脂の塗布厚みの精度を高め、気泡の巻き込みを防止することができる。
また、本発明の請求の範囲第8項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法は、請求の範囲第1項から第7項の何れか1項において、前記整形工程と並行及び前記整形工程の後の何れかにおいて、前記露光工程にて所望幅を越えて光硬化された余分な感光性樹脂硬化層を、所望の厚みまで除去する第1の除去工程を更に含むことを特徴としている。
【0034】
これによって、単一の液状感光性樹脂を使用した均一な厚みで所望幅の感光性樹脂硬化層をワークの外周面に成型することができ、レーザー彫刻用のシームレス印刷原版が得られる。
また、本発明の請求の範囲第9項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法は、請求の範囲第1項から第8項の何れか1項において、前記整形工程及び前記第1の除去工程の何れか一方の後に、ディジタル画像記録信号による制御に基づき、前記ワークの外周面の感光性樹脂硬化層に彫刻を行うためのレーザー彫刻手段を、前記ワークの軸心方向に線形移動させながら前記ワークを回転させ、当該レーザー彫刻手段から照射される少なくとも1ビーム以上の赤外線レーザービームを、前記感光性樹脂硬化層で合焦させて当該感光性樹脂硬化層を融除する彫刻工程を更に含むことを特徴としている。
【0035】
これによって、ディジタル画像記録信号による制御に基づくレーザー彫刻手段から照射される赤外線レーザービームにより感光性樹脂硬化層を融除することで、当該感光性樹脂硬化層の表面にレリーフ画像を形成することができるので、容易にレリーフ画像を形成することができる。
また、本発明の請求の範囲第10項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法は、請求の範囲第9項において、前記整形工程と並行及び前記整形工程の後の何れかにおいて、前記彫刻工程における前記レリーフ画像の形成が不要な領域の感光性樹脂硬化層を、所望の厚みまで除去する第2の除去工程を更に含むことを特徴としている。
【0036】
また、本発明の請求の範囲第11項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法は、請求項10において、前記第2の除去工程において、前記レリーフ画像の形成が不要な領域の感光性樹脂硬化層が所望厚み迄除去されている場合、前記彫刻工程では、当該画像不要領域において前記レーザー彫刻手段を高速移動させる飛び越し走査を行い、レリーフ画像形成領域のみをレーザー彫刻することを特徴としている。
【0037】
これによって、レーザー彫刻不要領域においては、レーザー彫刻手段の移動速度がレーザー彫刻形成領域での速度より高速にした飛び越し走査が行われ、レーザー彫刻形成領域のみがレーザー彫刻されることになるので、大幅な工程時間の短縮が可能となる。
また、本発明の請求の範囲第12項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法は、請求の範囲第7項から第9項の何れか1項において、前記彫刻工程及び前記除去行程及び前記整形行程の何れかの後に、圧力が0.2MPa以上30MPa以下、且つ温度が40℃以上140℃以下の洗浄液を吹き付ける洗浄手段により、前記感光性樹脂硬化層を洗浄する清浄工程を更に含むことを特徴としている。
【0038】
これによって、圧力が0.2MPa以上30MPa以下、且つ温度が40℃以上140℃以下の洗浄液を感光性樹脂硬化層に吹き付けることにより、彫刻工程で感光性樹脂硬化層に発生した粉末状或いは液状の滓を、除去することが可能となる。特に、粘凋性のある液状滓は、温水或いはスチームにより樹脂硬化層表面から浮き上がらせることが可能なので効果的である。温水或いはスチームの圧力が0.2MPa以上あれば、粉末状滓の除去が十分であり、30MPa以下であれば微細な画像パターンを破壊することなく滓を除去することが可能となる。また、洗浄液の温度が40℃以上であれば、粘凋性のある液状滓を十分に感光性樹脂硬化層表面から浮き上がらせることが可能となり、版表面のタックを低減させることも可能となる。また、140℃以下であれば感光性樹脂硬化層への熱的ダメージを抑えることが可能となる。
【0039】
また、本発明の請求の範囲第13項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法は、請求の範囲第9項から第12項の何れか1項において、前記彫刻工程及び前記清浄工程の何れかの後に、前記ワークを回転させながら当該ワークの外周面のレリーフ画像層に紫外線を照射する後露光工程を更に含むことを特徴としている。
これによって、ワークのレリーフ画像層の凸版印刷版としての物性向上及び表面粘着性除去を行うことができる。
【0040】
また、本発明の請求の範囲第14項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法は、請求の範囲第13項において、前記後露光工程の後に、前記ワークを回転させながら当該ワークのレリーフ画像層の表面を改質する表面改質剤を、前記レリーフ画像層に塗布して乾燥させる表面改質処理工程を更に含むことを特徴としている。
これによって、後露光工程でワークのレリーフ画像層の凸版印刷版としての十分な物性向上及び表面粘着性除去効果が得られなかった場合に、それらの物性向上及び表面粘着性除去を行うことができる。
【0041】
また、本発明の請求の範囲第15項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法は、請求の範囲第12項において、前記表面改質処理工程において、前記レリーフ画像層に前記表面改質剤を塗布しながら強制加熱乾燥を行うことを特徴としている。
これによって、表面改質処理工程の時間短縮を図ることができる。
また、本発明の請求の範囲第16項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置は、液状感光性樹脂を用いてシームレス印刷用凸版材を製造するシームレス印刷用凸版材の製造装置であって、前記液状感光性樹脂を外周面に塗布するためのワークを、一体に連結して回転できる構造となっているワーク連結回転駆動機構と、前記液状感光性樹脂を収容する容器と一体になった樹脂供給ノズルを有して前記ワークの軸心方向への線形移動が可能な第1の樹脂供給機構、及び前記液状感光性樹脂を収容する容器と配管連結された樹脂供給ヘッダに所望塗布幅に応じて少なくとも1個以上の樹脂供給ノズルを備えた第2の樹脂供給機構の何れか一方による樹脂供給機構と、前記ワークと対向した位置に、先端がドクターブレード形状の樹脂受けプレートを有し、当該樹脂受けプレートは、前記ワークの軸心に対して鉛直方向に線形移動と傾斜角度調整が可能な構造である樹脂塗布平滑化機構と、前記ワークの外周面に塗布されて平滑化された液状感光性樹脂に、高強度な紫外線を照射し、この照射手段を当該ワークの軸心に対して鉛直方向に線形移動が可能な露光機構とを備えたことを特徴としている。
【0042】
これによって、液状感光性樹脂を、樹脂受けプレートに所望塗布幅で線形態様にて供給し、ワークを回転させながら当該樹脂受けプレートにて液状感光性樹脂をワークの外周面に塗布しながら塗布厚みを成型することにより、塗布厚みを均一及び平滑にすることができる。また、高強度の紫外線露光によって感光性樹脂硬化層の印刷適正の改善を図ることができ、高精度な厚みと、印刷に好適な表面平滑性を有するシームレス印刷用凸版材が容易に製造可能となる。
【0043】
また、本発明の請求の範囲第17項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置は、請求の範囲第16項において、樹脂受けプレートは、少なくとも片端にワークの軸心方向への線形移動が可能な樹脂流動防止可動堰を有することを特徴とする。
これによって、所望に応じて塗布幅を簡単に変えることができる。
また、本発明の請求の範囲第18項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置は、請求の範囲第16項において、加工用工具の保持台を前記ワークの軸心方向へ線形移動可能な加工用工具保持台機構を更に備え、前記保持台で固定された前記加工用工具を、前記ワークの軸心に対して鉛直方向に線形移動可能な切削加工機構、研削加工機構及び研磨機構の少なくとも1つを更に備えたことを特徴としている。
【0044】
これによって、更に、感光性樹脂硬化層の表面を整形することができるので、より高精度の表面厚みと表面平滑性とを得ることができる。
また、本発明の請求の範囲第19項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置は、請求の範囲第16項において、前記樹脂供給機構と、前記樹脂塗布平滑化機構と、前記露光機構と、前記加工用工具保持台機構と、前記切削加工機構、研削加工機構及び研磨機構の少なくとも1つの機構とに、前記線形移動の際の移動位置検知が可能な移動位置検知機構を備えたことを特徴としている。
【0045】
これによって、線形移動の際の移動位置検知が可能となるので、各移動対象物の位置合わせなどを正確に行うことができる。
また、本発明の請求の範囲第20項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置は、請求の範囲第16項から第19項の何れか1項において、前記ワークの回転角度を検出することにより当該ワークの回転位置や回転周速度を制御する回転駆動制御機構を更に備えたことを特徴としている。
【0046】
これによって、ワークの回転位置や回転周速度を正確に制御することができるので、シームレス印刷用凸版材の製造に係る処理を適正に行うことができる。
また、本発明の請求の範囲第21項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置は、請求の範囲第16項から第20項の何れか1項において、前記第1の樹脂供給機構は、単位時間当たりの定量供給性を有するディスペンサー方式及びシリンジ方式の何れか一方の樹脂供給機構であり、前記液状感光性樹脂を収容する容器は、蛇腹式カートリッジ容器及び裏蓋押し込み式カートリッジ容器の何れか一方であることを特徴としている。
【0047】
これによって、液状感光性樹脂をワークに適正量供給することができる。
また、本発明の請求の範囲第22項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置は、請求の範囲第16項から第21項の何れか1項において、前記第2の樹脂供給機構は、前記液状感光性樹脂を移送する樹脂移送手段を有した収容容器及び貯蔵装置の何れか一方と連結された少なくとも1個以上の樹脂供給遮断制御機構を有する樹脂供給ノズルであり、前記樹脂供給手段は、単位時間当たりの定量供給性を有する定量圧送ポンプであり、前記収容容器及び前記貯蔵装置の何れか一方と前記樹脂供給ノズルとの間に、前記液状感光性樹脂の内部の気泡を除去するための機構を備えたことを特徴としている。
【0048】
これによって、液状感光性樹脂をワークに適正量供給し、この供給時に液状感光性樹脂内部に気泡が混入しないようにすることができる。
また、本発明の請求の範囲第23項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置は、請求の範囲第16項から第22項の何れか1項において、ディジタル画像記録信号を受信して記憶し、この記憶された信号を赤外線レーザービームの光変調制御信号に変換する信号変換機構と、1以上の赤外線レーザービームを発生させるレーザー発生機構と、前記赤外線レーザービーム毎に、赤外線強度と照射時間とを独立して設定する制御機構と、前記保持台で固定されて前記赤外線レーザービームを、前記ワークの外周面において液状感光性樹脂を硬化させた感光性樹脂硬化層の表面で合焦させる光学系手段を有するレーザー彫刻ヘッド機構とを更に備えたことを特徴としている。
【0049】
これによって、ディジタル画像記録信号による制御に基づくレーザー彫刻手段から照射される赤外線レーザービームにより感光性樹脂硬化層を融除することで、当該感光性樹脂硬化層の表面にレリーフ画像を形成することができるので、容易にレリーフ画像を形成することができる。
また、本発明の請求の範囲第24項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置は、請求の範囲第16項から第23項の何れか1項において、前記赤外線レーザービームによって前記感光性樹脂硬化層にレーザー彫刻されたレリーフ画像を清浄化するためのウオータージェット洗浄装置及び温水高圧洗浄装置の何れか一方を更に備えたことを特徴としている。
【0050】
これによって、レーザー彫刻で感光性樹脂硬化層に発生した粉末状或いは液状の滓を、除去することが可能となる。
また、本発明の請求の範囲第25項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置は、請求の範囲第23項または第24項において、レーザー彫刻されたレリーフ画像に、当該レリーフ画像の表面を改質する表面改質剤の噴霧及び塗布の何れか一方を行う表面改質処理機構を更に備えたことを特徴としている。
【0051】
これによって、レリーフ画像の凸版印刷版としての十分な物性向上及び表面粘着性除去効果を得ることができる。
また、本発明の請求の範囲第26項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置は、請求の範囲第25項において、前記表面改質処理機構により前記レリーフ画像に塗布された前記表面改質剤を強制加熱乾燥を行う加熱機構を更に備えたことを特徴としている。
【0052】
これによって、表面改質処理工程の時間短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係るシームレス印刷用凸版材の製造装置の概略構成を説明するための側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るシームレス印刷用凸版材の製造装置の概略構成を説明するための正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るシームレス印刷用凸版材の製造装置の概略構成を示す側面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るシームレス印刷用凸版材の製造装置の概略構成を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るシームレス印刷用凸版材の製造装置の概略構成を示す正面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るシームレス印刷用凸版材の製造装置のレーザー彫刻機構の概略構成を示す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るシームレス印刷用凸版材の製造装置の温水高圧或いはスチーム洗浄装置の概略構成を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るシームレス印刷用凸版材の製造装置の定位置ノズル式液状感光性樹脂供給ユニットの説明図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るシームレス印刷用凸版材の製造装置の蛇腹タイプ・カートリッジ容器の説明図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るシームレス印刷用凸版材の製造装置の裏蓋押込タイプ・カートリッジ容器の説明図である。
【図11】本発明の実施の形態に係るシームレス印刷用凸版材の製造装置の電子制御機構の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態に係るシームレス印刷用凸版材の製造方法の主動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態に係るシームレス印刷用凸版材の製造装置の温水高圧(或いはスチーム)洗浄ユニットと後露光ユニットとが一体となった後処理装置の概略構成を示す側面図である。
【図14】本発明の実施の形態に係るシームレス印刷用凸版材の製造装置の温水高圧(或いはスチーム)洗浄ユニットと後露光ユニットとが一体となった後処理装置の概略構成を示す正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において参照する各図では、他の図と同等部分は同一符号によって示されている。
但し、本発明のシームレス印刷用凸版材の製造方法が容易に実施可能な製造装置を、図面に基づいて言及しながら、本発明のシームレス印刷用凸版材の製造装置の一実施の形態を説明する。
【0055】
但し、本発明は、以下の説明及び図1〜図14により理解されるものであるが、本発明の実施の形態が、それらに限定されるものではない。
図1及び図2には、本発明の一実施の形態に係り、印刷用シリンダ及び、マンドレル(金属心棒)に一体に支持された印刷用スリーブの何れか一方を用いたワークの外周面に、均一な厚みで、且つ気泡などの欠陥が生じないように液状感光性樹脂を塗布し、高強度の紫外線露光により樹脂を光硬化させて樹脂硬化層の印刷適正を向上させ、切削及び研削又は研磨加工処理した後に、樹脂硬化層をレーザー彫刻してレリーフ画像を形成させ、後処理することにより、シームレス印刷用凸版材を製造するための本製造装置の説明図である。なお、図1は側面図、図2は正面図である。
【0056】
図3〜図5には、本製造装置の概略構成を示している。なお、図3は側面図、図4は平面図、図5は正面図である。
図6は、レーザー彫刻工程に関連した機構のみをピックアップした概略構成を示した説明図であり、本実施の形態ではレーザー彫刻機構を本製造装置に搭載しているが、既に市販されているレーザー彫刻専用機(例えばZED−Miniシリーズ)などを使用することも可能である。
【0057】
図7は、本実施の形態で使用する温水高圧洗浄装置の概略構成を示した説明図であり、既に市販されている専用装置(例えばKarcher製・温水高圧洗浄機)などで代替させることも可能である。
図8は、液状感光性樹脂供給ノズルが定位置方式の一例であり、図1及び図3で示した可動ノズル方式の樹脂供給ユニットとは異なる構成となる樹脂供給ユニットの概略構成を示した説明図である。
【0058】
図9及び図10は、図1及び図3で示したディスペンサー方式樹脂供給ユニットにおける異なる2種類のカートリッジ容器の説明図である。
図11は、本製造装置の電子制御機構の概略構成を示したコンピュータ構成図である。
図12は本製造方法の動作を説明するためのフローチャートである。
図13及び図14は、整形機構を備えた温水高圧洗浄ユニットと後露光ユニットが一体となった後処理装置の一例であり、図7とは異なる構成となる後処理装置の概略構成を示した説明図である。なお、図13は側面図、図14は正面図である。
【0059】
本製造装置は、図3及び図4に示すように、ワーク70を容易に回転連結機構100・110・120に装着するためのワークセット台90を備えており、ワークセット台90はスライド可能な構造となっており、手動操作でワーク70の装着位置まで押し込むことが出来る。図1〜図6では、既にワーク70が旋盤装置と同様な回転連結機構である主軸台100と心押し台110で連結され、エンコーダ130を備えた回転駆動及び回転制御機構120と一体になっている状態を示している。
【0060】
液状感光性樹脂10の供給手段としては、液状感光性樹脂10を収容するカートリッジ容器と一体になった樹脂供給ノズルを備え、この樹脂供給ノズルがワーク軸心方向へ線形移動しながら樹脂受けプレート151に、液状感光性樹脂10を線形態様で供給する液状感光性樹脂供給ユニット140を例に説明する。
但し、図8に示すように液状感光性樹脂収容タンク610と、液状感光性樹脂10を定量移送する定量圧送ポンプ620と、液状感光性樹脂10に含まれている気泡の泡抜きを行う脱泡機構630と、樹脂供給ヘッダ640と、液状感光性樹脂10の供給及び停止を制御する開閉電磁弁650とを備え、上記の樹脂供給ノズルが可動しないタイプの液状感光性樹脂供給ユニット600で代用することも可能である。また、上記のタンク610には、レベルセンサにより収容している液状感光性樹脂10の容量計測が可能であり、当該タンク610から樹脂供給ノズルまでの液状感光性樹脂10の供給経路には、液状感光性樹脂10の温度を安定(最終目的は粘度の安定)させるための温度制御機構が装備してあることが好ましい。
【0061】
液状感光性樹脂供給ユニット140は、サーボモータとサーボモータの回転運動を線形運動に変換する機構(ボールネジ及びリニア走行ガイド)を組み合わせて、ワーク軸心方向への移動が可能で且つ移動位置が検知可能な液状感光性樹脂供給ユニット用線形移動及び移動位置検知機構141と、当該樹脂供給ユニット140を昇降させる昇降機構142とを備えている。
【0062】
また、当該樹脂供給ユニット140のディスペンサー部には、図9及び図10に示すように、カートリッジ組み込みシリンダ710と、液状感光性樹脂樹脂10の粘度を安定させるための温度制御機構720と、押し込みピストン730と、上蓋740と、カートリッジ容器(700又は800)の重量を計測する図示せぬロードセルとを備えている。液状感光性樹脂10を収容するカートリッジ容器(700又は800)としては、蛇腹タイプ700と裏蓋押し込みタイプ800の2種類が装填可能な構造となっている。裏蓋押し込みタイプの場合は、内部にアルミ箔とポリエチレンがライニングしてある紙製容器や金属製容器のものが使用できる。
【0063】
樹脂塗布平滑化ユニット150は、先端が高精度なドクターブレード形状に加工してあり好ましくは傾斜角度の調整機能を備えた樹脂受けプレート151と、サーボモータとサーボモータの回転運動を線形運動に変換する機構(ボールネジ及びリニア走行ガイド)を組み合わせてワーク70鉛直方向への移動が可能で、且つ移動位置が検知可能な樹脂塗布平滑化ユニット用線形移動及び移動位置検知機構152と、樹脂供給ユニット140から供給される液状感光性樹脂10が所望塗布幅を越えて流動しないように、サーボモータとサーボモータの回転運動を線形運動に変換する機構(ボールネジ及びリニア走行ガイド)を組み合わせてワーク軸心方向への移動が可能で且つ移動位置が検知可能な樹脂流動防止可動堰用線形移動及び移動位置検知機構154を備えた少なくとも片端が可動の樹脂流動防止堰153と、樹脂受けプレート151の裏側に装備された温度制御機構160とを備えて構成されている。
【0064】
また、エアー駆動によるスイング機構を備え、使用する液状感光性樹脂10の粘度特性などに応じて先端にゴム、フッ素系樹脂及び耐溶剤性のブレードの何れかを有する樹脂の掻き取りブレードユニット220を備え、樹脂受けプレート151先端のドクターブレードと、掻き取りブレード220とを接触させることにより、そのドクターブレードに付着している液状感光性樹脂10を拭き取る構造となっている。
【0065】
高強度な紫外線を発生する露光ユニット170は、図3に示すように、サーボモータとサーボモータの回転運動を線形運動に変換する機構(ボールネジ及びリニア走行ガイド)を組み合わせてワーク70鉛直方向への移動が可能で且つ移動位置が検知可能な露光ユニット用線形移動及び移動位置検知機構173と、メタルハライドランプ172を内蔵しているランプ照射器171と、紫外線経路には紫外線積算光量計又は紫外線強度計174と、露光用の紫外線の波長域選択を行うために、スイング方式により開閉可能な機構を備えたバンドパスフィルタユニット(UV−A透過型)175と、バンドパスフィルタユニット(UV−C透過型)176とを備えて構成されている。
【0066】
高強度な紫外線を発生させ、且つワーク70の幅に対応したロングアーク光源として、本実施の形態では、紫外線波長域200〜400nm(ナノメートル)を主体に発光するメタルハライドランプ172を例示しているが、感光性樹脂液10に添加されている光増感剤の吸収スペクトルに応じて、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、マイクロウエーブ式無電極型紫外線ランプ、及びその他の高強度な紫外線ランプなどの、効率的な波長域で発光するものを選択することが好ましい。
【0067】
ランプ照射器171は、ランプ172とミラー支持部を反転させて遮光するメカニカルシャッター機構と、熱線の透過を抑制するための熱線カットフィルタと、熱線のみを背後に透過させるコールドミラーと、ランプ空冷機構とを備えており、更に熱線を抑制したければ、ブルーフィルタジャケット管を有する水冷ランプ冷却方式を使用することも可能である。
【0068】
また、樹脂供給ユニット140や樹脂受けプレート151など液状感光性樹脂10を保有している領域を、紫外光30の暴露から守る開閉式の紫外光遮蔽シャッターユニット177を備えている。
加工工具保持台180は、サーボモータとサーボモータの回転運動を線形運動に変換する機構(ボールネジ及びリニア走行ガイド)を組み合わせてワーク軸心方向への線形移動が可能で且つ移動位置が検知可能な加工工具保持台用線形移動及び移動位置検知機構181を備えていることが好ましい。
【0069】
この加工工具保持台180は、当該保持台180で、切削加工ユニット190と、研削(或いは研磨)加工ユニット200と、ワーク外周長計測ユニット210と、レーザー彫刻ヘッド300とが固定されているため、切削加工ユニット190と、研削(或いは研磨)加工ユニット200と、ワーク外周長計測ユニット210と、レーザー彫刻ヘッド300のワーク70軸心方向への移動及び移動位置検知は該保持台180の駆動により制御される構成となっている。加工工具保持台用線形移動及び移動位置検知機構181は、電子制御機構900から送信される制御信号を受信して該各ユニット(190・200・210・300)の移動と移動位置検知の制御を行い、ワーク70軸心方向と平行な状態にて設置されている。
【0070】
切削加工ユニット190と、研削(或いは研磨)加工ユニット200と、ワーク外周長計測ユニット210は、それぞれサーボモータとサーボモータの回転運動を線形運動に変換する機構(ボールネジ及びリニア走行ガイド)を組み合わせて、ワーク70鉛直方向への線形移動が可能で且つ移動位置が検知可能な切削加工ユニット用線形移動及び移動位置検知機構191と、研削加工ユニット用線形移動及び移動位置検知機構201と、ワーク外周長計測ユニット用線形移動及び移動位置検知機構211とを備えている。
【0071】
また、上記の機構201は、研削加工ユニット用回転駆動機構202にて砥石(或いはラッピング機構/バフ研磨機構)が回転可能な構造となっており、その他の付帯設備として、切削加工ユニット用真空吸引機構192や研削加工ユニット用真空吸引機構203を備えることによって、切削屑や研削屑を集塵する構造となっている。更に、当該機構201は、樹脂硬化層20表面の要求される平滑度に応じて、切削加工ユニット用切削油注入機構193や研削(或いは研磨)加工ユニット用研磨液注入機構204や、冷風にて加工表面や加工工具を冷却する機構(図示せず)を備えることが好ましい。
【0072】
ワーク外周長計測ユニット210は、更にエアー駆動による昇降機能(図示せず)を有してワーク70外周長を計測するエンコーダ組み込み車輪212と、ワーク70外表面のエッジを検知するエッジ検知センサ213と、ワーク70表面温度を計測する表面温度センサ214とを備えている。
図6に示すように、レーザー彫刻ヘッド300は、赤外線レーザービーム40を反射するミラー310と、レンズ支持機構330と、赤外線レーザービーム40を樹脂硬化層20上で合焦させるレンズ320と、電子制御機構900から送信される制御信号を受信して、レンズ支持機構330をワーク70軸心に対して鉛直に移動させる駆動手段を備えた赤外線レーザービーム焦点補正機構340と、樹脂硬化層20が赤外線レーザービーム40で融除される時に発生するデブリーを外部へと排出するために、フィルタを介して真空ポンプと接続した配管で連結される真空吸引機構350とを備えて構成されている。
【0073】
赤外線レーザービーム40の発生手段としては、赤外線エネルギー量の調節機能を有するCOガスレーザー、Nd:YAGレーザー、ファイバーレーザー、及び半導体レーザーなどがあるが、ここでは、Nd:YAGレーザーであるとする。このNd:YAGレーザーは、赤外線レーザー発生装置360と、電子制御機構900から送信される画像制御信号を受信して赤外線レーザービーム40を光変調させる音響光学変調器370と、ミラーセット380と、ビームエキスパンダ390とを備えて構成されている。
【0074】
また、レーザー彫刻ヘッド300には、所望の解像度に従い自動的に光学倍率が変更できるズーム機構や、赤外線レーザー発生装置360から照射される赤外線レーザービーム40の一部を赤外線強度センサへと導き、適宜に赤外線強度をサンプリングして電子制御機構900へと送信し、電子制御機構900からレーザー出力制御信号を赤外線レーザー発生装置360にフィードバックさせ、赤外線レーザー出力を一定に制御する機構を備えていることが好ましい。
【0075】
図1に示すように、表面改質処理ユニット230は、表面改質剤60をレーザー彫刻工程終了後、或いは後露光工程終了後のレリーフ画像が形成された樹脂硬化層20表面に薄く塗布する機構であり、本実施の形態ではロール塗布方式の一例として表面改質剤収容タンク231と、表面改質剤60を供給する浸漬ロール232と、浸漬ロール232から転移された表面改質剤60をレリーフ画像表面に塗布する塗布ロール233とを備えて構成されており、塗布位置にて塗布ロール233がレリーフ画像表面と接触し、塗布操作が終了したら下方の待機位置へと降下する圧気駆動による昇降手段を備えている。また、レリーフ画像表面に塗布された表面処理剤60を強制乾燥させるために、遠赤外線ヒーター242を収納するヒーター収納ボックス241を有する加熱ユニット240を備えていることが好ましい。
【0076】
図7に示すように、温水高圧(スチーム)洗浄装置400は、本製造装置の外部装置であり、レーザー彫刻工程終了後に、本製造装置から一旦ワーク70を取り外さなければならない。
この温水高圧洗浄装置400は、ワーク70を保持して回転可能なモータを備えたワーク保持・回転機構450と、開閉扉420と、温水高圧の洗浄液50噴射とその後の圧気水切り処理を連続して行う処理槽410と、洗浄液50を収容し加熱するヒーター440を備えた洗浄液タンク430と、洗浄液50の高圧化を行う高圧プランジャーポンプ460と、その高圧化された洗浄液50を更に加熱する高圧水加熱ヒーター510とを備えて構成されている。
【0077】
更に、温水高圧洗浄装置400には、レリーフ画像が形成された樹脂硬化層20に対して高圧の洗浄液(或いはスチーム)50を吹き付ける噴射ノズル480が、ワーク70の軸心方向に沿って所定の速度で往復動する手段を備えたノズルヘッダ470上に、等間隔で少なくとも1個以上でワーク70の外周幅を全面処理可能なように配列されている。
そのノズルヘッダ470の入力側は、耐温性や耐圧性に優れた高温・高圧専用配管500や高圧水加熱ヒーター510を介して高圧プランジャーポンプ460と接続され、この高圧プランジャーポンプ460の入力側には、供給配管490を介して洗浄液タンク430が接続されている。
【0078】
また、処理槽410内においては、洗浄液50噴射によるレリーフ画像層の清浄化工程処理後に、樹脂硬化層20表面に残存する洗浄液50を圧気で吹き飛ばす水切りノズル520が、圧気配管530と電磁弁540とを介してコンプレッサ(図示せず)と接続されている。
洗浄液タンク430には、洗浄液を所定の温度まで加熱、或いは所定の温度で保温する加熱ヒーター440が設けられており、更に洗浄液タンク430内に収容されている洗浄液50の表層には、洗浄液50内に混入したレーザー彫刻にて発生した溶融樹脂滓を濾過するために、溶融樹脂滓の濾過特性に応じて不織布フィルタ、ペーパーフィルタ、金網ストレナー、濾過マットの何れか、或いはそれらを組み合わせた複合フィルタが設置されることが好ましい。ここでは一例として不織布フィルタ560が設けられている。そして、不織布ロール巻き原反供給機構550と不織布巻き取り機構570、及びロール群を備えることにより所定数のワーク70を清浄化処理した後に、濾過面積に応じて不織布フィルタ560を所定長さ巻き取る構造となっている。
【0079】
この他、本製造装置には、液状感光性樹脂10を収容したカートリッジ容器を複数個待機させておく図4及び図5に示す貯蔵部(温度制御機構付き)250と、容器貯蔵部開閉扉251と、透明内部覗き窓260を有する安全カバーと、CPUを有する電子制御機構900と、RIP(Raster Image Processor)処理を専門に行うネットワークに接続されたコンピュータによる図1及び図6に示すRIPサーバ1000とにより構成されている。
【0080】
図11に示すように、電子制御機構900は、情報取得部902及び電子制御部903を有するCPU901を備え、このCPU901に、メモリ905と、タッチパネルモニタ906と、押釦904とが付設されており、タッチパネルモニタ906及び押釦904類で操作盤を構成している。
CPU901では、情報取得部902において外部センサ等からの情報を取得可能であり、この取得情報に従って、電子制御部903において公知のインターフェース機能を介して外部機器を制御する。本構成については公知である。また、入力及び出力制御信号は代表的な数種類のみを例示している。
【0081】
図13及び図14に示すように、本件発明においては、本製造装置にも使用できる整形機構2070を内部に備えた温水高圧(スチーム)洗浄ユニット2000と後露光ユニット2200が一体となった本製造装置の外部装置である後処理装置を用いることもできる。露光行程終了後或いは整形行程終了後或いはレーザー彫刻工程終了後に、本製造装置から一旦ワーク70を取り外さなければならない。
この後処理装置には、本製造装置と同様にワーク70を容易に回転連結機構2030・2040・2050に装着するためのワークセット台2020を備えており、ワークセット台2020は心押し台2040がスライド可能な構造となっており、手動操作でワーク70の装着位置まで押し込むことが出来る。図13及び図14では、既にワーク70が旋盤装置と同様な回転連結機構である主軸台2030と心押し台2040で連結され、エンコーダを備えた回転駆動及び回転制御機構2050と一体になっている状態を示している。
【0082】
ワークセット台2020は、図13の矢印で示されるようにワークセット台搬送機構2060にて温水高圧(スチーム)洗浄ユニット2000から後露光ユニット2200の任意の位置までワーク70を搬送可能な構造となっている。
また、温水高圧(スチーム)洗浄ユニット2000は、開閉扉2010と、温水高圧(スチーム)発生器2080から生成される温水高圧(スチーム)を噴射する温水高圧(スチーム)ノズル2090と圧気を噴射する圧気水切りノズル2100を備えており、噴射された温水はフィルター2120を介して樹脂滓が除去されて回収水タンク2130に収容され、温水蒸気やミストは排気ダクト2140を介して装置外に排出される構造となっている。また、温水高圧(スチーム)ノズル2090及び圧気水切りノズル2100及び整形機構2070は、図14の矢印で示されるようにノズル及び整形ユニット搬送機構2110に連結されてワーク70の軸心方向へ移動可能な構造となっている。
【0083】
整形機構2070は、本製造装置に搭載されている整形機構(切削/研削/研磨)と同様な機構であり、本製造装置の整形行程をスキップさせ、この整形機構2070にて整形行程を行えば、切削滓や研削滓や研磨滓が本製造装置で発生しなくなるため、樹脂供給行程や成型行程や露光行程での液状感光性樹脂への異物の混入が防止できる。
高強度な紫外線を発生する後露光ユニット2200は、図13に示すように、メタルハライドランプ2220を内蔵しているランプ照射器2210と、開閉可能な遮蔽シャッター2230とを備えて構成されている。
【0084】
高強度な紫外線を発生させ、且つワーク70の幅に対応したロングアーク光源として、本実施の形態では、紫外線波長域200〜400nm(ナノメートル)を主体に発光するメタルハライドランプ2220を例示しているが、感光性樹脂液10に添加されている光増感剤の吸収スペクトルに応じて、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、マイクロウエーブ式無電極型紫外線ランプ、及びその他の高強度な紫外線ランプなどの、効率的な波長域で発光するものを選択することが好ましい。
【0085】
ランプ照射器2210は、ランプ2220とミラー支持部を反転させて遮光するメカニカルシャッター機構と、ランプ空冷機構とを備えている。
このような構成の本製造装置を用いたシームレス印刷用凸版材の製造方法を、図12に示す主要製造工程に対応するフローチャートを参照して説明する。
図12に示すように、ステップS1において、電子制御機構900によるパラメータ設定が行われた後、ステップS2において、ワーク70装着が行われ、ステップS3において、RIPサーバ1000による画像データ処理の準備工程が完了する。ここで、製造開始スタート釦(押釦904)を押すと本製造装置による製造が自動的に開始される。
【0086】
この自動化工程は、ステップS4〜S12までの工程であり、まず、ステップS4において、ワーク70外表面のエッジ検出が行われ、ステップS5において、ワーク70外周長及び表面温度の計測が行われ、ステップS6において、液状感光性樹脂供給ユニット140に装填されているカートリッジ樹脂容器の重量計測が行われる。更に、ステップS7において、液状感光性樹脂供給ユニット140による液状感光性樹脂10の樹脂受けプレート151への供給が行われ、ステップS8において、ワーク70外周面への液状感光性樹脂10の塗布及び平滑化が行われ、ステップS9において、ワーク70外周面に塗布された液状感光性樹脂10の露光が行われ、ステップS10において、ワーク70外周長及び表面温度の計測が行われ、ステップS11において、感光性樹脂硬化層20の整形が行われ、ステップS12において、ワーク70外周長及び表面温度の計測が行われる。
【0087】
この後、手動操作によるステップS13の樹脂硬化層の表面欠陥検査を経て、ステップS14において、自動化による樹脂硬化層の除去が行われ、ステップS15において、手動操作による樹脂硬化層表面の清拭きが行われ、ステップS16において、自動化によるレーザー彫刻が行われる。
更に、ステップS17のワーク70の取出を経て、ステップS18において、レリーフ画像の温水高圧清浄化が終了後、ステップS19において、再度ワーク70を本製造装置に装着するワーク70再装着を経て、ステップS20において、レリーフ画像への後露光が行われ、ステップS21において、レリーフ画像の表面改質処理及び乾燥迄が自動化されており、ステップS22において、ワーク取出が行われ、本シームレス印刷用凸版材の製造が終了する。
【0088】
次に、各ステップS1〜S22における工程の詳細処理を説明する。
ステップS1のパラメータ設定の工程においては、ワーク70の大凡の幅や外径と、液状感光性樹脂10の有効塗布幅や塗布厚みと、液状感光性樹脂10の制御温度、露光量及び後露光量などの情報を、電子制御機構900においてタッチパネルモニタ906から操作入力する。
【0089】
ステップS2のワーク装着の工程においては、ワーク70を構成するマンドレル(金属心棒)と一体となった印刷用スリーブは、FRP(Fiber Reinforced Plastic)製であり、本製造装置においては、ワーク幅300〜1200mm、外径100〜500mmまで対応可能となっている。
図3に示すように、製造開始前にワーク70をワークセット台90に載置しておき、ワークセット台90をスライドさせて装着位置まで移動させる。
【0090】
図2で示すように、ワーク70を構成するマンドレル(図示せず)の両端は、シャフトが突き出た構造となっており、一方のシャフトを主軸台100の三爪或いは四爪チャックで挟持してサーボモータを備えた回転駆動及び回転制御機構120と一体に連結し、ワーク70の幅サイズに合わせて、心押し台110を移動させ、もう一方のシャフトを保持した回転待機状態にしておく。
【0091】
また、回転軸心上には、ワーク70の回転角度を計測するロータリーエンコーダ130を備えており、ワーク70の回転に応じて回転角度を計測し、ワーク70外周長の計測を行う工程のステップS5、S10、S12と、液状感光性樹脂10の塗布及び平滑化を行う工程のステップS8と、液状感光性樹脂10の露光ステップS9と、感光性樹脂硬化層20の整形を行う工程のステップS11と、感光性樹脂硬化層20の除去を行う工程のステップS14と、レーザー彫刻を行う工程のステップS16と、レリーフ画像の後露光を行う工程のステップS20と、レリーフ画像の表面改質処理及び乾燥を行う工程のステップS21との各ステップでのワーク70の処理開始角度や、終了角度などの制御用に利用している。
【0092】
ワーク70の外周面には、例えば、液状感光性樹脂10の光硬化過程で接着力が増強されるような表面処理加工や、柔弾性を有するクッションテープの貼り込み、或いは当該テープ最外周面に前記の表面処理加工が施されていることが好ましい。
次に、ステップS3のRIPサーバ1000による画像データ処理の工程について説明する。
【0093】
予め他のコンピュータで面付け編集されているディジタル画像データが、ネットワークなどを介してRIPサーバ1000へ転送されると、このRIPサーバ1000にてビットマップ演算処理を行い、この処理で生成されたビットマップデータを基にレーザー彫刻不要領域と要領域にグルーピングする。ここでいうレーザー彫刻不要領域とは、1ライン(ワーク円周方向)を構成する全画像ドットが全てレーザー彫刻され、当該ラインが少なくとも連続して所定(例えば100)ライン総数を越える集合体であり、それ以外をレーザー彫刻要領域と定義する。上記のグルーピングデータとビットマップデータとが電子制御機構900に送信されることにより製造待機の状態となる。
【0094】
製造開始の押釦904をオンすると、自動化工程における最初のステップであるステップS4のワークエッジ検出が開始される。ワーク外周長計測ユニット210は、加工工具保持台180の移動機構にて主軸台100側のワーク70外表面エッジから所定距離のエッジ検出位置に移動する。次に、ワーク70の大凡の外径設定値(タッチパネルモニタ906から入力されてメモリ905に記憶されている値)に従って、ワーク外周長計測ユニット用線形移動及び移動位置検知機構211にてワーク70軸心と鉛直方向に移動し、ワーク70外表面と接触直前の所定検出位置で停止する。
【0095】
この後、エッジ検知センサ213からのエッジ検出情報910を電子制御機構900に取り込み、加工工具保持台180の移動機構にて反復動作させながらワーク70外表面エッジの正確な位置を検出する。次に、ワーク70の大凡の幅設定値(タッチパネルモニタ906から入力されてメモリ905に記憶されている値)に従って、加工工具保持台180の移動機構にて心押し台110側のワーク70外表面エッジから所定距離のエッジ検出位置に移動して前エッジ検出操作を繰り返し、もう一方のエッジの正確な位置を検出することにより、両端エッジのワーク70軸心方向に対する正確な絶対位置と、正確なワーク70幅が算出される。
【0096】
この後、ステップS5のワーク70の外周長及び表面温度計測の工程が開始される。ワーク外周長計測ユニット210は、加工工具保持台180の移動機構にてワーク70エッジから所定距離の計測位置に移動し、電子制御機構900からエアー駆動出力信号920がエンコーダ組み込み車輪212のエアーシリンダへ出力されると、エンコーダ組み込み車輪212がワーク70外表面と接触した状態にてワーク70が1回転して計測が完了する。これによって、エンコーダ計測信号が電子制御機構900に取り込まれ、ワーク70の正確な外周長が算出される。エンコーダ組み込み車輪212は計測後に待機位置に復帰する。
【0097】
本計測作業は3回(ワーク70の両端エッジ近傍と中心位置)行われ、1回、2回の計測完了後には、電子制御機構900からの外周長計測ユニット作動制御信号921に応じて、ワーク外周長計測ユニット210が加工工具保持台180にて次の計測位置に移動される。
また、外周長の測定と同時に表面温度センサ214にてワーク70外表面の温度を計測して、表面温度センサ214からの表面温度測定情報(温度測定値)913を電子制御機構900に取り込み、その温度測定値に基づいて演算処理する。この演算処理手段によって、ステップS8の樹脂塗布及び平滑化の工程における樹脂受けプレート151のワーク70外表面からの相対移動距離を温度補正制御することが好ましい。
【0098】
全ての計測が終了すると、ワーク外周長計測ユニット210を固定している加工工具保持台180(ワーク70軸心方向への移動)及びワーク外周長計測ユニット210(ワーク70鉛直方向への移動)が待機位置へと復帰し、ステップS5の一連のワーク70の外周長及び表面温度計測が完了する。
次に、本実施の形態の工程は、ステップS6の液状感光性樹脂10を収容しているカートリッジ容器(700又は800)の重量計測の工程に進む。
【0099】
本実施の形態で使用される液状感光性樹脂10は、円筒状のワーク70を回転させながら塗布厚みが0.5〜3mmと厚く塗布されるため、重力や回転による遠心力などに影響されず、塗布形状を保持するためには高粘度が必要であることから、6Pa・s以上で50kPa・s以下(20℃)、より好ましくは100Pa・s以上20kPa・s以下、更に好ましくは200Pa・s以上10kPa・s以下の粘度を有する液体感光性樹脂が好ましい。
【0100】
本実施の形態で使用した液状感光性樹脂は、プレポリマー:67重量部、モノマー:33重量部、フィラー:5.14重量部、添加剤:2.8重量部、光重合開始剤:1〜2重量部を組成とし、粘度は340Pa・s(20℃)である。
プレポリマー:ポリカーボネート系ポリウレタン末端メタクリレート。
モノマー:ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールモノメタクリレート。
【0101】
フィラー:珪酸系無機質充填材(球状、多孔質)。
添加剤:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン。
光重合開始剤:ベンゾフェノン。
図9及び図10に示すように、液状感光性樹脂10はカートリッジ容器700(蛇腹タイプ)又は800(裏蓋押し込みタイプ)の何れかに収容されて温度制御機構720を備えたカートリッジ組み込みシリンダ710に装填された待機状態にある。
【0102】
カートリッジ組み込みシリンダ710にはロードセル(図示せず)を備えている。電子制御機構900は、そのロードセルから送信されるカートリッジ容器700又は800のロードセル測定情報(重量計測データ)912により、カートリッジ容器700又は800に収容されている液状感光性樹脂10の重量を算出する。この算出値に基づいて樹脂重量計測制御を行い、次のステップS7の工程の液状感光性樹脂10の供給工程で、樹脂供給量が不足している場合には、カートリッジ容器700又は800を取り替えるための警報や表示制御の他に一時中断用の制御を行う。
【0103】
また、ステップS8の液状感光性樹脂10の塗布及び平滑化の工程において、液状感光性樹脂10を補給するために樹脂供給ステップS7を繰り返す場合、上記の樹脂重量計測制御をリアルタイムに繰り返し、カートリッジ容器700又は800内の液状感光性樹脂量が所定量より少なくなった場合に上記と同様な制御を行うことが好ましい。
次に、ステップS7の液状感光性樹脂供給の工程に進む。
【0104】
上記ステップS4及びS5にて計測され、電子制御機構900のメモリ905に記憶されているワーク70の両端エッジ位置や外周長、及び液状感光性樹脂10の所望塗布幅をもとに、電子制御機構900から樹脂供給作動制御信号924が、樹脂塗布平滑化ユニット用線形移動及び移動位置検知機構152、樹脂流動防止可動堰用線形移動及び移動位置検知機構154、及び液状感光性樹脂供給ユニット用昇降機構142の各々へ出力される。
【0105】
これによって、待機位置にある樹脂受けプレート151が所定の厚み制御開始位置に移動し、待機位置にある液状感光性樹脂供給ユニット140が所定供給位置に降下し、更に1対の樹脂流動防止可動堰153が所望塗布幅に応じて、或いは少なくともレーザー彫刻ステップ16におけるレリーフ画像領域全てが含まれるように所定塗布幅位置に移動する。
【0106】
次に、液状感光性樹脂供給ユニット140は、液状感光性樹脂供給ユニット用線形移動及び移動位置検知機構141によって所定の樹脂供給開始位置に移動したのち、所定の樹脂供給停止位置まで一定速度で移動しながら、液状感光性樹脂10を収納したカートリッジ容器700又は800を、モータ駆動機構と連結された押し込みピストン730を樹脂塗布厚みに応じて所定速度で押し込む。これによって、所望塗布幅で所定量の液状感光性樹脂10が線形態様にて樹脂受けプレート151に供給される。ここで、線形態様とは、樹脂受けプレートになるべく均等に樹脂が供給できるようにするための手段であって、ある一定幅の樹脂が紐状に細長く1直線に供給される状態をいう。これは、滴下、噴霧などによる非連続の態様も含み、また、ダイスからの押出しなどある程度幅を有するスリットから供給される場合も含む。樹脂供給終了後に、液状感光性樹脂供給ユニット140は待機位置に上昇する。
【0107】
樹脂供給ユニット140のディスペンサー供給ノズル先端と樹脂受けプレート151との距離は、用いる樹脂の粘度と供給量とから適宜設定すればよいが、可能な限り近く(好ましくは、50mm以下、さらに好ましくは20mm以下)、且つ当該ノズル先端は、プレート151先端ドクターから少し離れた位置に設置することが、気泡の巻き込みがなく好ましい。但し、プレート151先端ドクターから少し離れた位置の設置する理由は、プレート151に供給された液状感光性樹脂10が、重力により緩やかにプレート151先端ドクター方向へと流動するため、供給された液状感光性樹脂10が直にワーク外周面と触れないようにするためである。ここで、樹脂受プレートの傾斜角度は、用いる樹脂の粘度との関係で適宜設定すればよいが、好ましくは、15°〜75°である。
【0108】
また、樹脂供給ユニット140の移動速度は、使用される液状感光性樹脂10の粘度及び供給樹脂量により速度が異なるが、数mm〜数十mm/秒の移動速度が好ましい。また、樹脂供給量は塗布厚に応じて適宜調整されることが好ましい。
次に、ステップS8の液状感光性樹脂10の塗布及び平滑化の工程に進む。
電子制御機構900からワーク回転制御信号922が、回転駆動及び回転制御機構120へ出力されると、当該機構120は、ワーク70を図1の矢印A方向へと回転(回転速度は使用される液状感光性樹脂の粘度やチキソトロピー性、及び塗布厚みに応じて異なるが、標準回転周速度は数mm〜数十mm/秒である)させながら、樹脂受けプレート151を徐々に(0.005mm〜0.5mm/ワーク1回転)ワーク70の鉛直方向に後退させてワーク70外周面と樹脂受けプレート151との隙間を広げ、所定塗布厚(所望塗布厚でないのは、次の整形ステップ11における切削及び研削或いは研磨加工での加工代を見込んで所望塗布厚より少し厚く塗布しているため)に到達した時点で、樹脂受けプレート151の後退移動を停止させ、ワーク70が所定回数分回転した時点で停止させる。
【0109】
次に、樹脂受けプレート151をワーク70外周面から一気に離し塗布及び平滑化工程が終了する厚み制御を行っているが、この制御操作にてワーク70外周面の厚みが均一化された液状樹脂層に、液状樹脂10の粘着性により数十mmの幅に渡り数mmの凸形状が発生する(以後、局部的な厚み異常と呼ぶ)。
ワーク70の回転開始前の樹脂受けプレート151とワーク70の隙間は、可能な限り狭い(好ましくは0.1mm以下)方が好ましい。この理由は、液状樹脂10がワーク70外周面と初めて接触する直前に巻き込まれる気泡(以後、接触開始点気泡と呼ぶ)が少なく、且つ当該気泡が塗布樹脂層の最下部に閉じこめられて、樹脂硬化層表面では欠損を発生させないため好ましいからである。
【0110】
また、ワーク70外周面に塗布された液状樹脂10先端が1周して樹脂受けプレート151と再接触する際に発生する気泡(以後継ぎ目気泡と呼ぶ)を抑制するために、再接触前にワーク70の回転速度を標準より1/2〜1/10程度に遅くすることが好ましい。
また、樹脂受けプレート151で保持する液状感光性樹脂10は、必要最小量が継ぎ目気泡に対して有効であるため、当該工程中においては所定塗布厚みに応じて、ステップS7の液状感光性樹脂10の供給を、少なくとも1回以上繰り返すことが好ましい。また、温度制御機構160により塗布される液状感光性樹脂10の温度(粘度)が安定していることが、塗布厚み精度を良好にするため好ましい。
【0111】
このように、ステップS7の液状感光性樹脂10の供給及び、ステップS8の液状感光性樹脂10の塗布・平滑化では、塗布される液状感光性樹脂10内部への気泡の混入を防止するために、液状感光性樹脂10の定量安定供給は勿論のこと、ワーク70の回転制御、樹脂受けプレート151先端部の形状や後退速度、カートリッジ組み込みシリンダ710の先端ノズル形状や供給停止弁(図示せず)の構造、当該ノズル先端と樹脂受けプレート151との距離、液状感光性樹脂供給ユニット140の移動速度などが精密に計算されていることが肝要である。
【0112】
次に、ステップS9の液状感光性樹脂層の露光の工程に進む。
電子制御機構900から、ワーク回転制御信号922が回転駆動及び回転制御機構120へ出力されることによって当該機構120によって、ワーク70が一定速度(ステップS8の塗布及び平滑工程での標準回転周速度と同じ速度)で回転を開始する。且つ露光開始制御信号(図示せず)が露光ユニット用線形移動及び移動位置検知機構173へ出力されることによって、待機位置へと復帰した液状感光性樹脂供給ユニット140及び樹脂塗布平滑化ユニット150を紫外線の暴露から守るために、紫外光遮蔽シャッターユニット177が閉まる。
【0113】
ランプ照射器171は、ワーク70の外周長に応じて移動機構173により待機位置から所定露光位置まで降下し、メタルハライドランプ172の紫外線出力を待機状態から露光状態へと約2〜4倍増加させ、メカニカルシャッターが開の状態に移行して露光がスタートする。
露光量は、紫外線積算光量計174又は、紫外線強度計174と露光時間で制御されることが好ましい。また、波長域200〜400nmの紫外線で、且つ紫外線強度が10mW/cm以上、より好ましくは50mW/cm以上、更に好ましくは100mW/cm以上である高強度な紫外線を照射することによって印刷適正を向上させた感光性樹脂硬化層20を形成し、当該感光性樹脂硬化層20が波長域0.7〜15マイクロメーターの赤外線レーザーにて彫刻可能となることが好ましい。上記のように、高強度な紫外線を照射することによって感光性樹脂硬化層20の印刷適正を向上させると、低強度の蛍光灯型紫外線光源と比較して耐ノッチ性が約2倍向上して欠けにくくなると共に、ショアAで約5度硬度が低下してベタのインクの載りが改良される。
【0114】
また、バンドパスフィルタユニット(UV−A透過型)175の開閉、及びバンドパスフィルタユニット(UV−C透過型)176の開閉動作により、波長域選択後露光を行ってUV−A波長域及びUV−C波長域の各露光量を独立して制御することが好ましい。所定露光量に到達するとメタルハライドランプ172は露光状態から待機状態へと減光され、メカニカルシャッターが閉の状態に移行する。ワーク70は回転を停止して、ランプ照射器171が待機位置へと上昇したら紫外光遮蔽シャッターユニット177が開く。
【0115】
次に、ステップS10のワーク外周長及び表面温度計測の工程に進む。
この工程は、上記ステップS5と同じであるため説明は省略するが、当該計測外周値と当該計測表面温度に基づいて演算処理し、次のステップS11の感光性樹脂硬化層20の整形の工程で、切削量及び研削量或いは研磨量を制御することが好ましい。
次に、ステップS11の感光性樹脂硬化層20の整形の工程に進む。
【0116】
この工程では、ワーク70の回転を高速側に切り替え、所定回転速度(標準的なプラスチック切削と殆ど同じ条件:ワーク外径が250mmφの場合で600〜1300rpm)で回転させ、上記ステップS4のエッジ検出工程にて計測され、メモリ905に記憶されているワーク70両端エッジ位置や所望塗布幅と、上記ステップS5及びS10のワーク外周長及び表面温度の計測工程で計測された樹脂塗布前のワーク外周長と、露光完了後のワーク外周長と、所望塗布厚みとをもとに、電子制御機構900から整形開始制御信号(図示せず)が加工工具保持台用線形移動及び移動位置検知機構181へ出力される。
【0117】
これによって、待機位置にある切削加工ユニット190が、主軸台100側のワーク70エッジから所定距離にある切削開始位置に移動して切削加工を開始する。この切削加工は、荒切削と仕上げ切削に分かれており、上記ステップS9の露光工程で発生した局部的な厚み異常の箇所を削り落とす加工が荒切削にあたり、表面平滑精度を良好に維持しながら切削する加工が仕上げ切削である。
【0118】
切削加工ユニット190は、切削加工ユニット用線形移動及び移動位置検知機構191によりワーク70軸心と鉛直方向に1回目の所定切削位置(ワーク70外周長に応じて、荒切削での切削量は大凡0.3〜1mm、仕上げ切削での切削量は大凡0.05〜0.2mm)まで上昇して旋盤切削と似たような切削加工が開始される。
また、切削加工ユニット190は、ワーク軸心方向にワーク1回転当たりの所定送り速度がワーク70外周長に応じて、荒切削での送り速度が大凡0.5〜2.5mm/r、仕上げ切削での送り速度が大凡0.1〜0.5mm/rで移動しながら、切削加工ユニット用真空吸引機構192及び切削加工ユニット用切削油注入機構193が作動することが好ましい。
【0119】
切削加工ユニット190が、切削完了位置まで到達したら1回目の切削加工が完了、切削加工ユニット190を樹脂硬化層20から少し離した位置まで降下させ、切削開始位置に後退させることにより1回目の切削操作が完了する。この切削操作を、荒切削と仕上げ切削用に複数回繰り返すことにより樹脂硬化層20が所定厚みまで削り落とされる。また、切削用バイトの刃先先端形状は、鋭い方が平均表面粗さ(今後Raと呼ぶ)が小さくなり、例えば0.1mmR程度のバイトで有れば、切削完了後の樹脂硬化層20表面のRaは10μm前後と良好であり、次研削工程での負荷が軽くなる。
【0120】
次に、上記切削加工操作と同様な操作で研削加工が行われる。大きな違いは研削加工中に、砥石を研削加工ユニット用回転駆動機構202にて回転させることである。研削も、荒研削と仕上げ研削に分かれており、ワーク70や砥石の標準回転数は、どちらもワーク外周長に応じて600〜1300rpm前後であり、所定送り速度はワーク70外周長に応じて、荒研削での送り速度は大凡1.5〜5m/分、仕上げ研削での送り速度は大凡0.1〜0.5m/分で、研削量は荒研削では5μm前後、仕上げ研削では1μm前後に設定している。
【0121】
研削完了後の樹脂硬化層20表面のRaは、1μm前後と紙印刷などには殆ど影響を与えない表面平滑度を得るが、フィルム印刷のように更に良好なRaが必要で有れば研磨加工することが好ましい。その研磨加工では、一例として、フィルムを基材として微小砥粒〜#50000を塗布した研磨材を使用したラッピング加工すればRaは0.1μm前後まで平滑度が向上する。
【0122】
また、所望のRaに応じて研削加工ユニット用研磨液注入機構204にて研磨液を砥石に供給することが好ましい。また、砥石と樹脂硬化層20加工表面に冷風を高速で吹き付けることにより、加工面の冷却効果に加え、研磨屑の樹脂硬化層20への再溶着を防止することが好ましい。
次に、ステップS12のワーク外周長及び表面温度計測の工程に進む。
【0123】
この工程は、上記ステップS5の計測工程と同じであるため説明は省略するが、当該計測外周値と当該計測表面温度に基づいて演算処理し、ワーク外周長が所望外周長より大きい場合には、再び上記ステップS11の感光性樹脂硬化層20の整形工程、小さい場合には、再び上記ステップS7の液状感光性樹脂10の供給工程から上記ステップS11の感光性樹脂硬化層20の整形工程を繰り返すことが好ましい。
【0124】
次に、ステップS13の樹脂硬化層の表面検査の工程に進む。
透明内部覗き窓260にてワーク70の回転が完全に停止していることを確認したら、安全カバー(図示せず)を開き、手動操作にてワーク70を間欠回転させながら整形加工された樹脂硬化層20を目視にて欠陥がないか十分にチェックする。これによって、仮に感光性樹脂硬化層20の表面に気泡などの欠陥を発見したら、目盛り(図示せず)にて、その欠陥位置をタッチパネルモニタ906にて入力する。この後、欠陥修復ステップとして次のステップS14の感光性樹脂硬化層20の除去工程にて、欠陥を有する樹脂硬化層20を除去した後に、再度、上記ステップS7の液状感光性樹脂10の供給工程から上記ステップS11の感光性樹脂硬化層20の整形工程を繰り返すことが好ましい。
【0125】
次に、ステップS14の感光性樹脂硬化層20の除去の工程に進む。
ワーク70を所定回転速度(ワーク外径が250mmφの場合で600〜1300rpm)で回転させ、上記ステップS3のRIP画像データ処理工程にて算出されたレーザー彫刻不要領域データや、上記ステップS4のエッジ検出工程にて計測され、メモリ905に記憶されているワーク70両端エッジ位置や、上記ステップS12のワーク外周長及び表面温度の計測工程で計測された整形完了後のワーク外周長と、所望塗布幅を基に、電子制御機構900から除去開始制御信号(図示せず)が、加工工具保持台用線形移動及び移動位置検知機構181へと出力される。
【0126】
これによって、待機位置にある切削加工ユニット190が主軸台100側のワーク70エッジから所定距離にある除去開始位置に移動して、次に切削加工ユニット用線形移動及び移動位置検知機構191によりワーク70軸心と鉛直方向に1回目の所定切削位置まで上昇して、上記ステップS11の整形工程の荒切削加工と同様な切削加工が開始される。また、切削加工中は、切削加工ユニット用真空吸引機構192及び切削加工ユニット用切削油注入機構193が作動することが好ましい。
【0127】
所望塗布幅を越えて光硬化された余分な樹脂硬化層20や、レリーフ画像不要領域の樹脂硬化層を所定厚み除去する切削加工が完了したら、ワーク70は回転を停止しつつ、切削加工ユニット190はワーク70から離れ、切削加工ユニット用真空吸引機構192及び切削加工ユニット用切削油注入機構193は停止して切削加工ユニット190は待機状態へと復帰する。
【0128】
かくして単一の液状感光性樹脂を使用した均一な厚みの樹脂硬化層20がワーク70の外周面に成型でき、レーザー彫刻用のシームレス印刷原版が得られる。
更に、少なくとも1種類以上の異なる液状感光性樹脂10を使用して、相当する液状感光性樹脂供給ユニット140を装備して、上記ステップS7の液状感光性樹脂10の供給工程から上記ステップS8の液状感光性樹脂10の塗布及び平滑化工程まで、或いは上記ステップS8の液状感光性樹脂10の露光工程まで、或いは上記ステップS11の感光性樹脂硬化層20の整形工程までを複数回繰り返し、複数の感光性樹脂硬化層20を積層させることが好ましい。
【0129】
一例として2種類の異なった液状感光性樹脂10を使用して、光硬化後の硬度が異なる2層の感光性樹脂硬化層20を形成させて印刷品質の改善を図ることが可能となる。その2層の感光性樹脂硬化層20は、感光性樹脂硬化層20の厚みが3mmの場合には、上層は高硬度で厚みが約0.5mm、下層は低硬度で約2.5mmを形成させるのが良い。
また、上記ステップS7の樹脂供給工程の前、及び上記ステップS8の樹脂塗布及び平滑化工程の終了後の少なくとも一方において、樹脂受けプレート151の先端刃先に付着している液状感光性樹脂10を樹脂掻き取りブレードユニット220にて拭き取ることが好ましい。
【0130】
次に、ステップS15の清拭きの工程に進む。
この工程は、感光性樹脂硬化層20の表面が汚れている場合のみに追加される工程であり、手動操作でワーク70を間欠回転させながら、洗浄液又は溶剤(エタノールもしくはアセトンなど)を含ませた不織布、ウエス、スポンジなどの保水(溶剤)性のある材料で、感光性樹脂硬化層20の表面を手作業で拭くことが好ましい。
【0131】
また、硬化樹脂の表面粘着性が強く、手作業では十分に滓を除去出来ない場合には、この行程をスキップし、ステップ17ワーク取出を経て、ステップS18の温水高圧清浄化の行程へと進むが、この行程終了後も表面粘着性が残る場合には、ステップS20レリーフ画像後露光(中間露光と呼ぶ)を行うことが好ましい。
次に、ステップS16のレーザー彫刻の工程に進む。
【0132】
電子制御機構900からレーザー彫刻ヘッド300を移動させる加工工具保持台作動制御信号923と、ワー70を回転させるワーク回転制御信号922とが、加工工具保持台用線形移動及び移動位置検知機構181と、ワーク回転駆動及び回転制御機構120へ出力される。
レーザー彫刻ヘッド300は、ワーク70の1回転毎における感光性樹脂硬化層20の融除幅と同じ距離だけ一定速度でワーク70軸心方向に沿って移動することにより、感光性樹脂硬化層20には螺旋的態様でレリーフ画像が形成されることになる。
【0133】
かかるレーザー彫刻操作において、電子制御機構900は、ロータリーエンコーダ130から送信されるワーク70の回転角度計測用のロータリーエンコーダパルス情報911と、RIPサーバ1000から送信されてメモリ905に記憶されているビットマップ画像データとのAND演算(論理積演算)を行い、この演算結果をレリーフ画像制御信号(図示せず)として音響光学変調器370へ送信することにより、赤外線レーザー発生装置360から照射された赤外線レーザービーム40が光変調される。
【0134】
当該光変調された赤外線レーザービーム40は、2組のミラー380にて光路が変更されビームエキスパンダ390へと導かれる。ビームエキスパンダ390を通過してビーム径が拡大された赤外線レーザービーム40は、レーザー彫刻ヘッド300のミラー310にて光路が変更されレンズ320を経て感光性樹脂硬化層20上に到達する。
かくして樹脂硬化層20の全面にレリーフ画像が形成されると、レーザー彫刻ヘッド300は待機位置に復帰する。上記のレーザー彫刻操作中には真空ポンプ(図示せず)を作動させて、真空経路にフィルタを有する真空吸引機構350から融除ガス(デブリー)が外部へ排出されていることが好ましい。
【0135】
また、真空吸引機構350の対面側付近にエアーブラスト機構(図示せず)を設け、レーザー彫刻操作中にエアーを樹脂硬化層20に向けて噴射させ樹脂硬化層20から発生してくるデブリーを吹き飛ばして真空吸引機能をアシストすることが好ましい。
また、上記のレーザー彫刻の走査方式の説明では、レーザー彫刻ヘッド300がワーク1回転毎に、感光性樹脂硬化層20の融除幅と同じ距離だけ一定速度でワーク70の軸心方向に移動しながら螺旋態様でレリーフ画像を形成させる定速度線形移動走査方式を例示しているが、これと異なる方式として、融除幅と同じ距離だけ該彫刻ヘッド300をワーク70軸心方向へ移動させた後に停止させ、停止した状態にてレーザー彫刻を行うことにより輪切り態様でレリーフ画像を形成させるステップを反復させる間欠移動走査方式を使用することも可能である。
【0136】
また、RIPサーバ1000による上記ステップS3の画像データ処理工程と、ステップS14の樹脂硬化層の除去工程とにより、レーザー彫刻不要領域の感光性樹脂硬化層20が既に除去されている場合には、電子制御機構900から送信される加工工具保持台用線形移動及び移動位置検知機構181への制御信号923に応じて、レーザー彫刻不要領域においては、レーザー彫刻ヘッド300の移動速度がレーザー彫刻要領域での速度より少なくとも10倍以上高速にした飛び越し走査を行い、レーザー彫刻要領域のみをレーザー彫刻する。これによって、大幅な工程時間の短縮が可能となる。
【0137】
また、本実施の形態においては、例えば以下に述べる製造装置及び製造方法により、レリーフ深度、ショルダー角度等のレリーフ形状を規定するパラメータの少なくとも一つを制御することができる。
先ず、樹脂硬化層20に投下される赤外線レーザービーム40のエネルギー量を調整する方法がある。例えばエネルギー量を増やす場合にはワーク70の回転速度を落とす、反対にエネルギー量を減らす場合には回転速度を上げるなどワーク70の回転速度を制御して行う方法が一般的であるが、赤外線レーザー発生装置360のレーザー駆動電源を直接に制御して照射される赤外線レーザービーム40の強度を制御することも可能である。
【0138】
また、数mmを越えるような深いレリーフ深度を要求される場合には、1回のレーザー彫刻サイクルだけで要求を満たすことは困難な場合があるため、複数回に渡りレーザー彫刻サイクルを繰り返す必要がある。
例えば、複数回サイクルの場合は、1回目のレーザー彫刻サイクル終了後に、待機位置へと復帰したレーザー彫刻ヘッド300上の焦点補正機構340にて、所定距離だけレンズ支持機構330がワーク70外周面に向かって前進移動し、レンズ320がワーク70外周面へと近づくことにより赤外線レーザービーム40の焦点位置が樹脂硬化層20の内部に移動することになる。この後に、1回目と同様なレーザー彫刻サイクルが繰り返されることにより、1回目に重ねて2回目のレリーフ画像が形成されるためレリーフ深度を深くすることが可能となる。
【0139】
次に、ステップS17のワーク取出の工程に進む。
ワーク70の取出は、装着と逆の操作であり、ワークセット台90をスライドさせてワーク70の装着位置まで押し込んでおき、心押し台110を移動させてワーク70のシャフトの一方を解放する。次に主軸台100のチャックを解除してワーク70は回転駆動及び回転制御機構120から外されてワークセット台90に載置された状態になり、当該セット台90を引き出すことにより工程が完了する。
【0140】
次に、ステップS18の温水高圧(スチーム)清浄化の工程に進む。
本製造装置から取り外されたワーク70は、温水高圧洗浄装置400のワーク保持・回転機構450に装着され、図7に示す矢印A方向へ回転を開始すると、高圧プランジャーポンプ460が運転を開始する。洗浄液タンク430内で所定の温度まで加熱された洗浄液50は、高圧プランジャーポンプ460で吸引されて高圧力が加えられた状態で高圧水加熱ヒーター510を通過しながら、必要に応じて100℃を越える温度まで加温されてノズルヘッダ470へと供給される。
【0141】
ノズルヘッダ470に供給された洗浄液50は、ノズル480の噴射口から微粒化或いは均等化された状態で、ワーク70のレーザー彫刻されたレリーフ画像層に噴射される。噴射ノズル480から吹き出された洗浄液50は、ワーク70のレリーフ画像層に当たった後、不織布フィルタ−560を介して、上記ステップS16のレーザー彫刻工程にてレリーフ画像層に発生した樹脂滓が取り除かれて、洗浄液タンク430内に再び帰還してくる。
【0142】
そして、洗浄液タンク430に接続された供給配管490を介してまた高圧プランジャーポンプ460内へと吸引されて循環使用される。引き続いて、圧気電磁弁540を開きコンプレッサから供給される圧縮空気を、水切りノズル520より樹脂硬化層20に吹き付けて、残存する洗浄液50を吹き飛ばした後に、開閉扉420を開けてワーク保持・回転機構450からワーク70を取り外し、処理槽410から取り出す。
【0143】
運転条件としては、圧力が0.2MPa以上30MPa以下、且つ、温度が40℃以上140℃以下の洗浄液50を、ウオータージェット態様或いはスチーム態様で感光性樹脂硬化層20に吹き付けることにより、上記ステップS16のレーザー彫刻工程で樹脂硬化層20に発生した粉末状或いは液状の滓を、除去することが可能である。
特に、粘凋性のある液状滓は、温水或いはスチームにより樹脂硬化層20表面から浮き上がらせることが可能なので効果的である。温水或いはスチームの圧力が0.2MPa以上あれば、粉末状滓の除去が十分であり、30MPa以下であれば微細な画像パターンを破壊することなく滓を除去することが可能である。
【0144】
また、洗浄液50の温度が40℃以上であれば、粘凋性のある液状滓を十分に樹脂硬化層20表面から浮き上がらせることが可能であり、版表面のタックを低減させることも可能である。また、140℃以下であれば樹脂硬化層20への熱的ダメージを抑えることが可能である。
また、洗浄効率を上げるために洗浄液50に気体、或いは研磨剤が混入されていることが好ましい。
【0145】
次に、ステップS19のワーク再装着の工程に進むが、上記ステップS2のワーク装着工程と同じことを繰り返すので、説明を省略する。
次に、ステップS20のレリーフ画像の後露光の工程に進む。
後露光工程は、ワーク70のレリーフ画像層の凸版印刷版としての物性向上及び表面粘着性除去のために行われるもので、この後露光工程は上記ステップS9の露光工程と同様に、露光ユニット170を用いた同じ方法にて処理される。しかし、十分な表面粘着性除去効果を得るための適正後露光量は、感光性樹脂組成、感光性水素引抜剤の種類、樹脂組成に対する感光性水素引抜剤の含有量により異なるので、少なくとも500mJ/cm以上を必要とし、通常1000〜10000mJ/cmの範囲で後露光することが好ましい。10000mJ/cm以上の過剰な後露光量では、版表面に微妙なクラックが生じるので好ましくない。
【0146】
印刷版表面の粘着性評価は、例えば、直径13mmのアルミニウムワイヤーからなる直径50mmの輪の円周部表面にポリエチレンフィルムを巻き付けたものを、印刷版のレリーフ表面に静置させた状態で、このアルミニウム輪に500gの荷重を載せそのまま4秒間放置した後、毎分30mmの速度でアルミニウム輪を引き上げ、アルミニウム輪がレリーフ表面から離れるときの粘着力をプッシュブルゲージで読み取る方式のタックテスター(東洋精機社製)により行うことができる。
【0147】
タックテスターの値(以後タック値と記載)は、小さい方が表面粘着性の少ない印刷版といえる。タック値がおよそ50gを越えるものは、印刷版表面に異物が付着して印刷版に不良をきたす。また100gを越えるものは、印刷版を重ね置きしたときに版どうしが密着する状態が生じたりし、被印刷物が紙である場合には、印刷版面と紙との粘着により紙ムケの現象が起きやすい。タック値30g以下であれば、実用上粘着性に起因する問題は起こり得ないと考えられている。印刷版の中でも特に粘着性が大きいとされている液状感光性樹脂凸版では、表面粘着性除去のための何らの処置も施していない場合、タック値が100gを越えるものが一般的である。
【0148】
次に、ステップS21のレリーフ画像の表面改質処理及び乾燥の工程に進む。
この工程は、上記ステップS20の後露光工程で十分な物性向上及び表面粘着性除去効果が得られなかった場合のオプション工程であり、感光性樹脂組成、感光性水素引抜剤の種類、樹脂組成に対する感光性水素引抜剤の含有量などを最適に設計すれば省略される工程である。
【0149】
表面改質処理及び乾燥工程の動作としては、表面改質処理ユニット230が待機状態から圧気駆動による昇降手段(図示せず)にて上昇し、ワーク70のレリーフ画像層と接触する状態に保持される。この後、ワーク70を回転させながら、表面改質剤収容タンク231に収容された表面改質剤60を、浸漬ロール232の回転により、当該ロール232を介して塗布ロール233に転移させる。これによって、表面改質剤60は、感光性樹脂硬化層20の全表面に塗布される。
【0150】
この塗布が完了すると、表面改質処理ユニット230は昇降手段にて降下する。また、表面改質剤を塗布しつつ、加熱ヒーター242をONさせて感光性樹脂硬化層20に塗布された表面改質剤60を強制乾燥させて工程の時間短縮を図ることが好ましい。
次に、ステップS22のワーク取出の工程に進むが、上記ステップS17のワーク取出工程と同じことを繰り返すので、説明を省略する。
【0151】
また、液状感光性樹脂10は、光硬化後の赤外線レーザーによる直接彫刻性に秀でた樹脂が用いられているので、本発明の一実施の形態により製造されたシームレス印刷用原版は、乾式手法であるレーザー直接彫刻によるレリーフ画像形成が簡便に可能である。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本シームレス印刷用凸版材の製造方法及びシームレス印刷用凸版材の製造装置の採用によって、重力及び回転による遠心力に影響されず塗布形状を保持可能な粘度の液状感光性樹脂を、樹脂供給手段で、樹脂受けプレートに所望塗布幅で線形態様にて供給し、ワークを回転させながら当該樹脂受けプレートにて液状感光性樹脂をワークの外周面に塗布しながら先端刃先で塗布厚みを成型できるようにしたので、塗布厚みを均一及び平滑にすることができる。
【0153】
また、高強度の紫外線露光によって感光性樹脂硬化層の印刷適正の改善を図ることができる。更に、感光性樹脂硬化層の表面を整形するので、高精度な厚みと、印刷に好適な表面平滑性を有するシームレス印刷用凸版材(シームレス印刷用原版ともいう)が容易に製造可能となる。
従って、高精度な厚みと印刷に好適な表面平滑性による印刷適正が高く且つ完全に継ぎ目のないシームレス印刷用凸版材を製造することができ、従来のネガフィルム作製工程や溶液現像液工程を不要とすることによる作業性の向上、省資源化及び環境保全を図ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状感光性樹脂を用いたシームレス印刷用凸版材の製造方法において、
印刷用シリンダ及び、金属心棒に一体に支持された印刷用スリーブの何れか一方を用いたワークを、当該ワークを保持して回転させる保持回転手段に装着する装着工程と、
所定の傾斜角度を有し、且つ先端がドクターブレード形状の樹脂受けプレートに、重力及び回転による遠心力に影響されず塗布形状を保持可能な粘度の液状感光性樹脂を、樹脂供給手段で、所望塗布幅で線形態様にて供給する供給工程と、
前記ワークを回転させながら前記樹脂受けプレートに供給された前記液状感光性樹脂を、前記ワークの外周面に所望塗布幅で塗布しながら前記樹脂受けプレートの先端刃先で所定の塗布厚みに成型する成型工程と、
前記ワークを回転させながら前記ワークの外周面に塗布された前記液状感光性樹脂に、高強度の紫外線を照射することにより当該液状感光性樹脂を、赤外線レーザーにて彫刻可能なように光硬化させて感光性樹脂硬化層を形成する露光工程と
を含むことを特徴とするシームレス印刷用凸版材の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂受けプレートは、少なくとも一端が前記ワークの軸心方向に線形移動可能な樹脂流動防止可動堰を有する
ことを特徴とする請求の範囲第1項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法。
【請求項3】
前記感光性樹脂硬化層の表面を整形する整形工程
を更に含むことを特徴とする請求の範囲第1項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法。
【請求項4】
前記供給工程において供給される液状感光性樹脂の粘度は、20℃において6Pa・s以上で50kPa・s以下であり、
前記露光工程の紫外線は、波長域200〜400nmで且つ紫外線強度が10mW/cm以上である
ことを特徴とする請求の範囲第1項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法。
【請求項5】
前記供給工程において、前記樹脂供給手段を前記ワークの軸心方向へ線形移動させることによって、樹脂容器に収容した前記液状感光性樹脂を線形態様にて前記樹脂受けプレートに供給する第1の供給、及び前記所望塗布幅に設けられた前記樹脂供給手段の少なくとも1個以上の樹脂供給ノズルから線形態様にて液状感光性樹脂を前記樹脂受けプレートに供給する第2の供給の何れか一方を行う
ことを特徴とする請求の範囲第1項から第4項の何れか1項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法。
【請求項6】
前記成型工程において、前記樹脂受けプレートを前記ワークの軸心に対して鉛直方向に移動させ、当該樹脂受けプレートの先端刃先と前記ワークの外周面との隙間を徐々に広げながら前記ワークの外周面に所望厚みの液状感光性樹脂を塗布する
ことを特徴とする請求の範囲第1項から第5項の何れか1項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法。
【請求項7】
前記供給工程の処理を、複数回行う
ことを特徴とする請求の範囲第1項から第6項の何れか1項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法。
【請求項8】
前記整形工程と並行及び前記整形工程の後の何れかにおいて、前記露光工程にて所望幅を越えて光硬化された余分な感光性樹脂硬化層を、所望の厚みまで除去する
第1の除去工程
を更に含むことを特徴とする請求の範囲第1項から第7項の何れか1項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法。
【請求項9】
前記整形工程及び前記第1の除去工程の何れか一方の後に、ディジタル画像記録信号による制御に基づき、前記ワークの外周面の感光性樹脂硬化層に彫刻を行うためのレーザー彫刻手段を、前記ワークの軸心方向に線形移動させながら前記ワークを回転させ、当該レーザー彫刻手段から照射される少なくとも1ビーム以上の赤外線レーザービームを、前記感光性樹脂硬化層で合焦させて当該感光性樹脂硬化層を融除する彫刻工程を
を更に含むことを特徴とする請求の範囲第1項から第8項の何れか1項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法。
【請求項10】
前記整形工程と並行及び前記整形工程の後の何れかにおいて、前記彫刻工程における前記レリーフ画像の形成が不要な領域の感光性樹脂硬化層を、所望の厚みまで除去する第2の除去工程
を更に含むことを特徴とする請求の範囲第9項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法。
【請求項11】
前記第2の除去工程において、前記レリーフ画像の形成が不要な領域の感光性樹脂硬化層が所望厚み迄除去されている場合、前記彫刻工程では、当該画像不要領域において前記レーザー彫刻手段を高速移動させる飛び越し走査を行い、レリーフ画像形成領域のみをレーザー彫刻する
ことを特徴とする請求の範囲第10項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法。
【請求項12】
前記彫刻工程及び前記除去行程及び前記整形行程の何れかの後に、圧力が0.2MPa以上30MPa以下、且つ温度が40℃以上140℃以下の洗浄液を吹き付ける洗浄手段により、前記感光性樹脂硬化層を洗浄する清浄工程
を更に含むことを特徴とする請求の範囲第9項から第11項の何れか1項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法。
【請求項13】
前記彫刻工程及び前記清浄工程の何れかの後に、前記ワークを回転させながら当該ワークの外周面のレリーフ画像層に紫外線を照射する後露光工程
を更に含むことを特徴とする請求の範囲第9項から第12項の何れか1項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法。
【請求項14】
前記後露光工程の後に、前記ワークを回転させながら当該ワークのレリーフ画像層の表面を改質する表面改質剤を、前記レリーフ画像層に塗布して乾燥させる表面改質処理工程
を更に含むことを特徴とする請求の範囲第13項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法。
【請求項15】
前記表面改質処理工程において、前記レリーフ画像層に前記表面改質剤を塗布しながら強制加熱乾燥を行う
ことを特徴とする請求の範囲第14項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造方法。
【請求項16】
液状感光性樹脂を用いてシームレス印刷用凸版材を製造するシームレス印刷用凸版材の製造装置において、
前記液状感光性樹脂を外周面に塗布するためのワークを、一体に連結して回転できる構造となっているワーク連結回転駆動機構と、
前記液状感光性樹脂を収容する容器と一体になった樹脂供給ノズルを有して前記ワークの軸心方向への線形移動が可能な第1の樹脂供給機構、及び前記液状感光性樹脂を収容する容器と配管連結された樹脂供給ヘッダに所望塗布幅に応じて少なくとも1個以上の樹脂供給ノズルを備えた第2の樹脂供給機構の何れか一方による樹脂供給機構と、
前記ワークと対向した位置に、先端がドクターブレード形状の樹脂受けプレートを有し、当該樹脂受けプレートは、前記ワークの軸心に対して鉛直方向に線形移動と傾斜角度調整が可能な構造である樹脂塗布平滑化機構と、
前記ワークの外周面に塗布されて平滑化された液状感光性樹脂に、高強度な紫外線を照射し、この照射手段を当該ワークの軸心に対して鉛直方向に線形移動が可能な露光機構と
を備えたことを特徴とするシームレス印刷用凸版材の製造装置。
【請求項17】
前記樹脂受けプレートは、少なくとも片端にワークの軸心方向への線形移動が可能な樹脂流動防止可動堰を有する
ことを特徴とする請求の範囲第16項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置。
【請求項18】
加工用工具の保持台を前記ワークの軸心方向へ線形移動可能な加工用工具保持台機構を更に備え、
前記保持台で固定された前記加工用工具を、前記ワークの軸心に対して鉛直方向に線形移動可能な切削加工機構、研削加工機構及び研磨機構の少なくとも1つを更に備えたことを特徴とする請求の範囲第16項または第17項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置。
【請求項19】
前記樹脂供給機構と、前記樹脂塗布平滑化機構と、前記露光機構と、前記加工用工具保持台機構と、前記切削加工機構、研削加工機構及び研磨機構の少なくとも1つの機構とに、前記線形移動の際の移動位置検知が可能な移動位置検知機構
を更に備えたことを特徴とする請求の範囲第16項または第18項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置。
【請求項20】
前記ワークの回転角度を検出することにより当該ワークの回転位置や回転周速度を制御する回転駆動制御機構
を更に備えたことを特徴とする請求の範囲第16項から第19項の何れか1項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置。
【請求項21】
前記第1の樹脂供給機構は、単位時間当たりの定量供給性を有するディスペンサー方式及びシリンジ方式の何れか一方の樹脂供給機構であり、前記液状感光性樹脂を収容する容器は、蛇腹式カートリッジ容器及び裏蓋押し込み式カートリッジ容器の何れか一方である
ことを特徴とする請求の範囲第16項から第20項の何れか1項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置。
【請求項22】
前記第2の樹脂供給機構は、前記液状感光性樹脂を移送する樹脂移送手段を有した収容容器及び貯蔵装置の何れか一方と連結された少なくとも1個以上の樹脂供給遮断制御機構を有する樹脂供給ノズルであり、
前記樹脂供給手段は、単位時間当たりの定量供給性を有する定量圧送ポンプであり、
前記収容容器及び前記貯蔵装置の何れか一方と前記樹脂供給ノズルとの間に、前記液状感光性樹脂の内部の気泡を除去するための機構
を更に備えたことを特徴とする請求の範囲第16項から第21項の何れか1項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置。
【請求項23】
ディジタル画像記録信号を受信して記憶し、この記憶された信号を赤外線レーザービームの光変調制御信号に変換する信号変換機構と、
1以上の赤外線レーザービームを発生させるレーザー発生機構と、
前記赤外線レーザービーム毎に、赤外線強度と照射時間とを独立して設定する制御機構と、
前記保持台で固定されて前記赤外線レーザービームを、前記ワークの外周面において液状感光性樹脂を硬化させた感光性樹脂硬化層の表面で合焦させる光学系手段を有するレーザー彫刻ヘッド機構と
を更に備えたことを特徴とする請求の範囲第16項から第22項の何れか1項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置。
【請求項24】
前記赤外線レーザービームによって前記感光性樹脂硬化層にレーザー彫刻されたレリーフ画像を清浄化するためのウオータージェット洗浄装置及び温水高圧洗浄装置の何れか一方
を更に備えたことを特徴とする請求の範囲第16項から第23項の何れか1項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置。
【請求項25】
レーザー彫刻されたレリーフ画像に、当該レリーフ画像の表面を改質する表面改質剤の噴霧及び塗布の何れか一方を行う表面改質処理機構
を更に備えたことを特徴とする請求の範囲第23項または第24項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置。
【請求項26】
前記表面改質処理機構により前記レリーフ画像に塗布された前記表面改質剤を強制加熱乾燥を行う加熱機構
を更に備えたことを特徴とする請求の範囲第25項に記載のシームレス印刷用凸版材の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【国際公開番号】WO2005/005147
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【発行日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511460(P2005−511460)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005839
【国際出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】