説明

シーリング・システム

【課題】シールガンの設置形態にかかわらず、一定幅で均一なビードを得ることのできるシーリング・システムを提供する。
【解決手段】このシーリング・システムは、ロボット1がワーク3を、シール剤を供給する定置のシールガン5に対して移動させて、ワーク3上の所定個所にシール剤を塗布する。制御装置8が、ワーク3とシールガン5の相対速度を算出し、この相対速度に基づいて、ワーク3へのシール剤塗布量が一定となるように、シールガン5からの吐出量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークにシール形成(以下、シーリング)を行うシーリング・システムに係り、特に、多関節ロボットなどを用いてワークおよびシールガンのうちの一方を他方に対して移動させるシーリング・システムに於けるシール剤の吐出量制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットを用いるシーリング作業は、一般に、シール剤を塗布するためのシールガンをロボットのアーム先端に装着し、予め教示した経路に沿ってロボットアームを移動させながら、シールガンからのシール剤吐出を制御することにより、ワークに対して所定のシーリング作業を行うものである。
このシーリング作業においては、シール剤の塗布は、一定幅で均一なビードを形成することが要求される。
【0003】
そこで、加減速制御されたロボット各軸の単位時間当たりの移動量に基づいてロボットアーム先端のシールガンのノズル実速度を求め、その速度に応じたアナログ出力信号を出力し、このアナログ出力信号に応じて吐出量を制御して塗布量を一定にするシール剤制御装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
しかし、係る制御方法は、シールガンを定置して、ロボットなどによりワークをシールガンに対して移動させてシール剤を塗布するシーリング・システムでは支障がある。
【特許文献1】特開昭62−213868号公報
【0004】
すなわち、シールガン定置式のシーリング・システムでは、図5に示すように、ワークWを位置P1から位置P2に回転させながら、ワーク上の点Aから点B間の直線上にシール剤を塗布する場合など、ロボットアームの軌跡とシールガンの塗布軌跡が一致しない時には、ロボットの速度と塗布速度が異なる。そのため、ロボットへの指令速度に基づいてシール剤の供給ポンプを制御しても一定幅で均一なビードが得られないという問題が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、係る従来技術の問題に鑑みて、シールガンの設置形態の影響を受けることなく、一定幅で均一なビードを得ることのできるシーリング・システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の通り、本発明者は、この種のシーリング・システムにおけるシール剤塗布量の制御が、ロボットなどの移動手段の速度指令だけに基づいて行うのでは不十分であることを見出していて、本発明では、シールガンとワークとの相対的な速度をシール剤塗布量の制御に採用する。
本発明による、シール剤を供給するシールガンを、シールを形成すべきワーク上の部分に沿って移動させるように、シールガンとワークのうちの少なくとも一方を他方に対して動かしてワークにシール剤を塗布するシーリング・システムは、このシステムの制御装置が、ワークとシールガンの相対速度を算出し、この相対速度に基づいて、ワークの単位塗布経路当たりのシール剤塗布量が一定となるようにシールガンからの吐出量を制御することを特徴とする。
【0007】
上記システムは、ワークおよびシールガンのうちの一方を把持して動かす多関節ロボットを含んでいてもよい。
この場合、制御装置が、このロボットの予め教示された経路と、該経路に対するワークおよびシールガンのうちの他方の定置座標とから相対速度を算出することが好適である。
また、制御装置は、ロボットの動作を制御するロボット電子制御部と、シールガンの動作を制御するシール剤電子制御部とを含むことが好ましい。ロボット電子制御部は、算出したワークとシールガンの相対速度を共有メモリを介してシール剤電子制御部へ供給するように、或いはアナログ信号の形にしてシール剤電子制御部へ供給するように構成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シール剤を供給するシールガンとシール剤を塗布するワークとの相対的な速度を制御に用いることにより、前述のようにシール剤の塗布経路がワークの移動軌跡と異なる場合であっても、一定幅で均一なシールビードを形成するに必要なシール剤塗布量を正しく確保することができる。
その為、シールガンの設置状況に影響を受けること無く、シール剤を所定のビードで塗布することが可能であり、ロボットなどを用いる自動シーリング・システムの汎用性や信頼性を高める効果がある。
【実施例】
【0009】
続いて、図面に示す実施例に基づいて本発明を説明する。
図1は、本発明の実施例によるシーリング・システムの構成を概略的に示している。このシステムは、1台の多関節ロボット1と、1台の定置式シール剤供給装置7と、電子制御装置8とを含む。
多関節ロボット1には、ワーク掴みハンド2が設けられている。ロボット1は、このハンド2によりワーク3をつかんで動かすようになっている。一方、シール剤供給装置7は、シール剤供給ポンプ4と、このポンプにつながったシールガン5とを有する。装置7は、ポンプ4がシール剤をシールガン5へ供給し、シールガン5のノズル6からシール剤を塗布する。
電子制御装置8は、これら多関節ロボット1とシール剤供給装置7の作動を制御する。
【0010】
このシステムの運転を説明すると、ロボット1に対して、シール剤をワーク3に塗布するための経路が予め教示されており、運転開始命令があると、制御装置8が教示されたプログラムを再生して、ロボットが教示された経路に沿って動作することになる。
同時に、教示プログラムに従ってシーリング開始指令が読込まれると、シール剤供給ポンプ4を動作させ、シール剤の吐出が行われる。シーリング終了指令が読込まれると、シール剤供給ポンプ4の動作を停止させる。
【0011】
図2は、電子制御装置8の構成を詳細に示している。装置8は、ロボット制御部81と、シール剤制御部82とを含み、これら制御部はそれぞれ別個のCPUにより動作するが、共有メモリを介して接続されている。
各制御部81、82には、ROM、RAM、軸制御回路、そしてI/Oインターフェースを設けている。ロボット本体1がロボット制御部81の軸制御回路に接続され、シール剤供給ポンプ4がシール剤制御部82の軸制御回路に接続される。
【0012】
また、シールガン5には、電磁弁により制御されるシール剤吐出口がある。この電磁弁は、ロボット制御部81がI/Oインターフェースを介して制御するようになっている。
前述のシーリング開始指令があると、制御装置8は、シール剤供給ポンプ4の作動に先立って、ロボット制御部81を介して電磁弁を作動させ、シールガン5のシール剤吐出口を開く。次いで、シーリング作業が終了し、シーリング終了指令が読込まれると、電磁弁を戻して、シールガン5のシール剤吐出口を閉じ、シール剤供給ポンプ4の作動を停止させる。
【0013】
シーリング作業時、ロボット制御部81では、指令位置計算部が予め教示されたポイントの間を一定周期毎に補間してロボット1の指令位置を求め、軸制御部にその位置を指令している。この指令位置はまた、塗布速度計算部に入力される。塗布速度計算部は、この指令位置と、ロボット制御部81に予め入力されたシールガン・ノズル6の定置座標とに基づいてワーク3およびノズル6の相対速度を算出し、これを塗布速度とする。
なお、これら指令位置計算部、軸制御部、そして塗布速度計算部は、ロボット制御部81のCPUやROM、RAMによる演算部の処理として構成されるものである。
【0014】
上述した塗布速度計算部に於ける処理フローを、図3に示す。
処理を開始すると、先ずステップ1で、シールガン5が定置式か否かの判断を行う。この判断は、定置式か否かに応じた設定値を予めロボット制御部81に入力しておき、この設定値に基づいて行う。
次いで、ステップ2にて、シールガン5が定置式ならば、シールガン・ノズル6の定置がロボットアーム先端座標系上のどの位置かを計算して求める。一方、シールガンが定置式でなければ、ロボットに取付けられたシールガン・ノズルが地面基準の座標系上のどの位置にあるかを算出する。
【0015】
ステップ2で求まった現在の位置と前回の処理周期にて求めた位置との距離を、ステップ3で算出する。ステップ4では、ステップ3で算出した距離を指令値計算周期で除算することによって、ワーク3とシールガン・ノズル1の相対速度、すなわち塗布速度を求める。
最後のステップ5では、ステップ4で求めた塗布速度を、ロボット制御部81とシール剤制御部82のどちらからでも参照できる共有メモリに保管する。
なお、上述のステップ1と2は、制御装置8をシールガン定置式あるいは非定置式のシステムいずれにも対応可能な構成とするための処理である。
【0016】
シール剤制御部82は、こうして共有メモリ上に保管された塗布速度を一定周期で読み込み、この塗布速度に基づいて、ワーク上の単位塗布経路当たりのシール剤塗布量を一定とするように、シール剤供給ポンプ4からのシール剤の吐出量を制御する。
塗布速度の読み込み周期は、ロボット制御部81が共有メモリ上の塗布速度を更新する周期と同じであることが好ましい。
【0017】
図4は、制御装置8の変更例を示している。この変更例の制御装置18は、図2の装置と同様に、ロボット制御部181とシール剤制御部182から成るが、これら制御部を接続する共有メモリを設けていない点が、図2の装置と異なっている。
各制御部181、182は、共有メモリに代えて、それぞれアナログI/Oインターフェースを備え、これらのアナログI/Oインターフェース同士を電気接続している。また、ロボット制御部181は、算出した塗布速度に比例するアナログ信号を生成し、アナログI/Oインターフェースを通して出力する。シール剤制御部182は、このアナログ信号を一定周期毎に取り込んで、シール供給ポンプ4の吐出流量を制御する。
【0018】
制御装置18のその外の構成部品や制御機能は、装置8と同様であり、説明を省略する。
この変更例の構成は、ロボット制御部181とシール剤制御部182を別々に設けるのに好適である。これは、例えば、既存のロボット制御装置とシール剤制御装置を改修して本発明に適用する場合などに有用である。
【0019】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明はこの特定な形態のみに限定されず、添付の特許請求の範囲による定義内で、説明した形態を様々に変更することができ、或いは本発明は別の形態をとり得るものである。
例えば、図示例は、多関節ロボット1を用いているが、ワーク3の移動には別の機構を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例によるシーリング・システム全体を示す概略図。
【図2】図1システムの制御装置の構成を示すブロック図。
【図3】図2の制御装置における塗布速度計算部の処理を示すフローチャート。
【図4】図2の制御装置の変更例を示すブロック図。
【図5】シールガンを定置したロボット式シーリング・システムにおけるロボット軌跡と塗布軌跡の違いを示す説明図。
【符号の説明】
【0021】
1 多関節ロボット
3 ワーク
5 シールガン
6 ノズル
8、18 制御装置
81、181 ロボット制御部
82、182 シール剤制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール剤を供給するシールガンを、シールを形成すべきワーク上の部分に沿って移動させるように、シールガンとワークのうちの少なくとも一方を他方に対して動かしてワークにシール剤を塗布するシーリング・システムにおいて、
このシステムの制御装置が、前記ワークとシールガンの相対速度を算出し、この相対速度に基づいて、ワークの単位塗布経路当たりのシール剤塗布量が一定となるように前記シールガンからの吐出量を制御する、シーリング・システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記ワークおよびシールガンのうちの一方を担持して動かす多関節ロボットを含み、前記制御装置は、このロボットの予め教示された経路と、該経路に対する前記ワークおよびシールガンのうちの他方の定置座標とから前記相対速度を算出する、シーリング・システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記制御装置は、ロボットの動作を制御するロボット電子制御部と、共有メモリを介してこのロボット電子制御部に接続された、前記シールガンの動作を制御するシール剤電子制御部とを含み、前記ロボット電子制御部が前記相対速度を算出し、前記共有メモリを通してこの相対速度を前記シール剤電子制御部へ供給する、シーリング・システム。
【請求項4】
請求項2に記載のシステムであって、前記制御装置は、ロボットの動作を制御するロボット電子制御部と、このロボット電子制御部とは別個に設けた、前記シールガンの動作を制御するシール剤電子制御部とを含み、前記ロボット電子制御部が前記相対速度を算出し、この相対速度に比例したアナログ信号を前記シール剤電子制御部へ供給する、シーリング・システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−81955(P2006−81955A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266274(P2004−266274)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】