説明

シーリング制御装置

【課題】シール剤の状態に影響されず、作業速度を低下させることなく、良好なシールビードを形成することのできるシーリング制御装置を提供する。
【解決手段】ワーク3に対して相対移動されるモータ駆動のシールガン6によりシール剤をワークへ供給して塗布するシーリング作業のための制御装置は、ワークまたはシールガンのノズル7の移動速度に応じてシールガン6のシール剤吐出流量を設定する。装置はさらに、モータ5の駆動電流u1と速度u2ならびにシールガンの内圧pdと温度tdを検出し、これらの状態変数に基づいてシールガン吐出流量ydを直接に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール形成(以下、シーリング)装置を、例えば多関節ロボットなどの手段によりワークに対して相対移動させて行うシーリング作業のための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットを用いるシーリング作業は、一般に、シール剤を塗布するためのシールガンをロボットのアーム先端に装着し、予め教示した経路に沿ってロボットアームを移動させながら、シールガンからのシール剤吐出を制御することにより、所定のシーリング作業を行うものである。このシーリング作業においては、シール剤の塗布は、一定幅で均一なビードを形成することが要求される。
しかしながら、ロボットの動作は始点や終点、またはコーナー部において加減速処理を行うため、シール剤の吐出量を一定に設定すると、ロボットの動作速度が変わる個所では、シール剤が多く或いは少なく塗布されて一定幅とはならない。
【0003】
そこで、ロボットの加減速処理後の速度指令に比例ゲインを乗じてシール剤供給ポンプのモータの速度指令を補正し、この補正指令によりモータを駆動して、シール剤の流量を制御することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この方法はシール剤流量とシール剤供給ポンプの速度が比例していることが前提となるが、実際のシール剤流量は、シール剤の粘度特性などの影響により、シール剤供給ポンプの速度に対して応答遅れが発生して、比例関係とならないことがある。この場合、ロボットの動作とシール剤の流量が同期せず、シーリングの品質が悪化する。
【特許文献1】特開平06−210210号公報
【0004】
かかる問題を解決するため、ロボットの移動速度を落としてシールガンの応答遅れの影響を小さくすることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、ロボットの移動速度を落とすことは、サイクルタイムを低下させることになり、作業効率を下げると云う別の問題を生ずる。
【特許文献2】特開平05−168998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術の問題点に鑑みて、シール剤の粘度特性などの影響を受けることなく、また作業速度を落とすこともなく、シール剤を一定幅で均一なビードに塗布できるシーリング制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者たちは、上記目的を達成するには、従来技術のようにシール剤供給ポンプの駆動速度をシールガンのノズルまたはワークの移動速度のみに基づいて決定するだけでは不十分で、シールガンの流量を直接に制御することが必要であると解析した。
そこで、本発明による、ワークに対して相対移動されるモータ駆動のシールガンによりシール剤をワークへ供給して塗布するシーリング作業のための制御装置は、前記ワークまたはシールガンのノズルの移動速度に応じてシールガンのシール剤吐出流量を設定してモータを駆動することに加えて、モータの駆動電流と速度ならびにシールガンの内圧と温度を検出し、これらの状態変数に基づいて前記シールガン吐出流量を調整するものである。
【0007】
上記設定した吐出流量の調整は、モータの駆動電流と速度ならびにシールガンの内圧と温度に基づいて、該シールガンの実際の吐出流量を推定し、この推定吐出流量と設定した吐出流量を比較して行うことが好適である。
【0008】
この制御装置は、ワークまたはシールガンのノズルの移動速度からシール剤の吐出流量指令を生成する吐出流量指令生成部と、前記推定吐出流量を算出するオブザーバと、前記設定した吐出流量からオブザーバによる推定吐出流量を減算する機構と、この減算の結果からシールガンへの電流指令を生成する電流指令生成部とを有することが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モータの駆動速度や、シールガンのシール剤圧力および温度などの状態変数に応じて、設定吐出流量を直接制御する。そのため、実際にシールガンから吐出されるシール剤の状態を加味して、十分な吐出流量を確保することができ、ワークまたはシールガンのノズルの移動速度を低下させることなく、一定幅で均一なシールビードを形成することが可能である。
このようなシーリング制御装置をロボットシステムに組み合わせることにより、良好な品質のシール形成を高速度で行うことができ、シーリング作業の質向上とコスト低減に大きく寄与する効果がある。
【実施例】
【0010】
続いて、添付図面に示す実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例によるシーリング制御装置を採用した、シーリング作業を行うためのシステム構成を示している。このシステムは、1台の多関節ロボット1と、1台の定置式シール剤供給装置8と、電子制御装置9とを含む。
なお、図示のシステムは多関節ロボットとシール剤供給装置とを1台ずつ含むものであるが、複数の多関節ロボットとシール剤供給装置を設けることもできる。
【0011】
多関節ロボット1には、ワーク掴みハンド2が設けられている。ロボット1は、このハンド2によりワーク3をつかんで動かすようになっている。
一方、シール剤供給装置8は、サーボモータ5駆動のシール剤供給ポンプ4と、このポンプにつながったシールガン6とを有する。装置8は、サーボモータ5の駆動により、ポンプ4がシール剤をシールガン6へ供給し、シールガン6のノズル7からシール剤を塗布する。
電子制御装置9は、これら多関節ロボット1とシール剤供給装置8の作動を制御する。本実施例のシーリング制御装置は、制御装置9に組み込まれている。
【0012】
このシステムの運転を説明すると、ロボット1に対して、シール剤をワーク3に塗布するための経路が予め教示されており、運転開始命令があると、制御装置9が教示されたプログラムを再生して、ロボットが教示された経路に沿って動作することになる。
同時に、教示プログラムに従ってシーリング開始指令が読込まれると、シール剤供給ポンプを動作させ、シール剤の吐出が行われる。シーリング終了指令が読込まれると、シール剤供給ポンプの動作を停止させる。
【0013】
図2は、電子制御装置9の構成を詳細に示している。装置9は、ロボット制御部10と、本実施例のシーリング制御装置を成すシール剤供給ポンプ制御部11とを含み、これら制御部はそれぞれ別のCPU12,18により動作する。
各制御部10又は11には、ROM13又は19、RAM14又は20、軸制御回路15又は21、そしてI/Oインターフェース16又は22を設けている。ロボット制御部10とシール剤供給ポンプ制御部11は、共有メモリ17を介して接続されている。
【0014】
ロボット本体1はロボット制御部10の軸制御回路15に接続され、シール剤供給ポンプ4はシール剤供給ポンプ制御部11の軸制御回路21に接続される。
また、シールガン6には、電磁弁により制御されるシール剤吐出口がある。この電磁弁は、ロボット制御部10がI/Oインターフェース16を介して制御するようになっている。これに代えて、シールガン6の電磁弁は、シール剤供給ポンプ制御部11によってI/Oインターフェース22を介して制御してもよい。
【0015】
前述のシーリング開始指令があると、装置9は、ポンプ4の作動に先立って、ロボット制御部10を介して電磁弁を作動させ、シールガン6のシール剤吐出口を開く。次いで、シーリング作業が終了し、シーリング終了指令が読込まれると、電磁弁を戻して、シールガン6のシール剤吐出口を閉じ、シール剤供給ポンプ4の作動を停止させる。
【0016】
図3は、本システムにおけるシーリング剤供給の制御ブロックである。制御装置9は、シーリング開始指令が読込まれてから、シーリング終了指令が読込まれるまで、この制御ブロックによりシール剤供給ポンプ4を駆動する。
図3の制御ブロックでは、まず、ロボット制御部30がロボットの動作指令を生成する際に、塗布速度vを算出する。この塗布速度は、ノズル7に対するワーク3の移動速度である。塗布速度vは、図2の共有メモリ17を介して、シール剤供給ポンプ制御部11に入力される。
【0017】
シール剤供給ポンプ制御部11では、吐出流量指令生成部30が塗布速度vと、予め指定されたビード幅wもしくはビード面積とに基づいて、吐出流量指令ydを生成する。次に、電流指令生成部31が吐出流量指令ydを受けて、その吐出流量に相当する電流指令をシール剤供給ポンプ4へ出力する。
シール剤供給ポンプ4は、この電流指令に基づいて駆動され、シール剤を吐出する。
【0018】
同時に、ポンプ駆動モータ5の速度u2と、ポンプ内のシール剤圧力pdおよび温度tdが、モータとポンプに設けたセンサによって検出される。これら検出値は、吐出流量指令yd(電流指令)と共に、オブザーバ32へ入力される。
オブザーバ32は、駆動モータ5とポンプ4における状態変数に対応する、ポンプ4の実際の吐出流量y′を推定して出力する。
【0019】
比較機構33が、この推定吐出流量y′と、吐出流量指令生成部30からの吐出流量指令ydとを比較して、その差分yd−y′を算出する。電流指令生成部31がこの差分を受けて、シール剤供給ポンプに対する電流指令u1を出力し、シール剤供給ポンプ4を駆動する。この結果、シール剤が、所定のビード形成に必要な吐出流量yでワーク3に塗布される。
【0020】
なお、図3の制御ブロックにおける吐出流量指令生成部30、電流指令生成部31、オブザーバ32ならびに比較機構33は、図2のシール剤供給ポンプ制御部11のCPU18、ROM19およびRAM20で構成される演算部での処理として構成されるものである。
【0021】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明はこの特定な形態のみに限定されず、添付の特許請求の範囲による定義内で、説明した形態を様々に変更することができ、或いは本発明は別の形態をとり得るものである。
例えば、図示例は、シール剤供給装置を定置し、ワークを動かす構成であるが、逆に、ワークを定置し、シール剤供給装置をロボットに搭載して動かしてもよい。また、上述した例では、シーリング制御装置がロボット制御部と一体構成であるが、別個に設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例によるシーリング制御装置を採用した、シーリング作業用のシステムを示す概略図である。
【図2】本発明の実施例を含む、図1のシステムの制御装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例による、シール剤供給ポンプの制御ブロック図である。
【符号の説明】
【0023】
1 多関節ロボット
3 ワーク
4 シール剤供給ポンプ
5 サーボモータ
9 電子制御装置
10 ロボット制御部
11 シール剤供給ポンプ制御部
30 吐出流量指令生成部
31 電流指令生成部
32 オブザーバ
33 比較機構
pd ポンプ内圧力
td ポンプ内温度
u1 電流指令
u2 モータ速度
yd 吐出流量指令
y′ 推定吐出流量
y 吐出流量


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して相対移動され、モータ駆動のシールガンによりワークへシール剤を供給して塗布するシーリング作業のための制御装置であって、前記ワークまたはシールガンのノズルの移動速度に応じてシールガンのシール剤吐出流量を設定してモータを駆動するシーリング制御装置において、
モータの駆動電流と速度ならびにシールガンの内圧と温度を検出し、これらの状態変数に基づいて前記シールガン吐出流量を調整することを特徴とするシーリング制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、前記モータの駆動電流と速度ならびにシールガンの内圧と温度に基づいて該シールガンの実際の吐出流量を推定し、この推定吐出流量と前記設定した吐出流量を比較して、該設定した吐出流量を調整するシーリング制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、前記ワークまたはシールガンのノズルの移動速度からシール剤の吐出流量指令を生成する吐出流量指令生成部と、前記推定吐出流量を算出するオブザーバと、前記設定した吐出流量から前記オブザーバによる推定吐出流量を減算する機構と、この減算の結果から前記シールガンへの電流指令を生成する電流指令生成部とを有するシーリング制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−81954(P2006−81954A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266273(P2004−266273)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】