説明

シーリング材のサンプリング器具

【課題】目地又は隙間に設けられたシーリング材の厚みを測定するために、その一部をサンプリングした後に新たなシーリング材を埋め直した際に、新たなシーリング材で埋められない切口が残ることが無く、また、シーリング材のサンプリング作業が容易なサンプリング器具を提供する。
【解決手段】目地又は隙間に設けられたシーリング材の厚みを測定するために、その一部をサンプリングする際に用いるシーリング材のサンプリング器具であって、前記シーリング材の表裏を貫通切断する切断部15と、前記切断部15により切断したシーリング材を収納する収納室14と、該収納室14内に収納したシーリング材をサンプリング器具外に取り出す取出し手段25とを有し、前記切断部15の横断面形状を無端形状としたサンプリング器具10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシーリング材のサンプリング器具に関するもので、より詳しくはコンクリート外壁部材等の部材間の目地等に設けられたシーリング材の厚みを測定するために、該シーリング材をサンプリングする際に用いるシーリング材のサンプリング器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図8に示すように、例えばコンクリート外壁部材等の部材101,101間の目地等102に設けられたシーリング材103の内外方向の厚みを測定する方法として、カッターにより前記シーリング材103の両端部を縦方向に、その内外方向を貫通する切り込み104,104を入れた後に、該切込み104,104を入れた部分の上部と下部に、夫々の両端部間に亘り、その内外方向を貫通する横方向の切り込み105,105を入れて、シーリング材103を直方体で切り出し(サンプリングし)、その切り出したシーリング材の厚みを測定することにより行っていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来のシーリング材のサンプリング方法では、図8に示すように、縦方向の切り込み104,104は、横方向の切り込み105,105位置よりも上下に突出するように行うため、サンプリングした穴の部分を新たなシーリング材107で埋め直した後も、図9に示すように、その新たなシーリング材107の上端部と下端部の夫々の両側には、カッターによる切口108が、新たなシーリング材107で埋められることなく残ってしまう。そのため、この切口108から雨水等の侵入などの欠陥を誘発する虞がある。
【0004】
また、シーリング材をサンプリングするためには、カッターにより4回切り込みを入れる必要があり、サンプリング作業に手間がかかるという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決するシーリング材のサンプリング器具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、目地又は隙間に設けられたシーリング材の厚みを測定するために、その一部をサンプリングする際に用いるシーリング材のサンプリング器具であって、
前記シーリング材の表裏を貫通切断する切断部と、前記切断部により切断したシーリング材を収納する収納室と、該収納室内に収納したシーリング材をサンプリング器具外に取り出す取出し手段とを有し、
前記切断部の横断面形状を無端形状としたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記切断部の横断面形状が円形であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記サンプリング器具は持手部を有し、該持手部の先部に前記収納室を有する収納部を設け、前記収納部の先端部に前記切断部を設け、前記持手部内に前記取出し手段を設け、該取出し手段を前記切断部側とは反対側方向に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のサンプリング器具は、切断部の横断面形状を無端状に閉塞した形状としたことにより、サンプリングした部分を新たなシーリング材で埋め直した後は、従来のカッターによるサンプリング方法のような、シーリング材に切口が残ることが無く、この切口から雨水等の侵入などを防止することができる。
【0010】
また、切断部を測定するシーリング材の部分に押し付けることにより、シーリング材を切断し、この切断されたシーリング材を収納室に収納し、かつ、この収納したシーリング材を取出し手段により、器外に取り出すことができるため、従来のカッターによるサンプリングと比較して、サンプリング操作の工程を簡略化することができる。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、更に、切断部の横断面形状を円形としたことにより、軟らかいシーリング材3に対しても、切断部を回転させながら容易に切断することができ、シーリング材を容易にサンプリングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明におけるサンプリング器具の斜視図。
【図2】図1の平面図。
【図3】図1の先端側から見た拡大図。
【図4】図1の縦断面図。
【図5】図1のサンプリング器具を用いたシーリング材のサンプリング方法を説明するための側面図。
【図6】サンプリングしたシーリング材の取り出し方法を説明するための図。
【図7】シーリング材をサンプリングした後の状態を示す目地部の正面図。
【図8】従来のシーリング材をサンプリングする方法を説明するための正面図。
【図9】図8の状態からシーリング材を埋め直した状態の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を図1乃至図7に示す実施例に基づいて説明する。
本発明のサンプリング器具10は、図7に示すように、例えば、コンクリート外壁部材等の部材1,1間の目地又は隙間又は継ぎ目(以下、目地等という)2に設けられたシーリング材(コーキング材)3の厚みL1の測定方法として、前記シーリング材3の一部を切り取ってサンプリングし、図6に示すように、そのサンプリングしたシーリング材4の厚みL2を測定することにより、目地等2に設けられたシーリング材の厚みL1を測定(検査)するのに用いられるサンプリング器具である。なお、前記目地等2には、図5に示すように、シーリング材3の奥部にバックアップ材30が設けられる場合もある。
【0014】
図1は、本発明のサンプリング器具10の斜視図、図2はサンプリング器具10の平面図である。以下において、図2の右側を先端側A、左側を後端側Bとして説明する。
【0015】
前記サンプリング器具10は、図2に示すように、略後半分の外径が同径に形成され、略前半分の外径が先端Aに至るほど先細状となるように形成された持手部11を有している。該持手部11の横断面形状は、図3に示すように、円形に形成されている。該持手部11は、図4に示すように、その軸方向に貫通する貫通穴12が形成され、その両端は開口している。したがって、持手部11は全体として円筒状に形成されている。前記貫通穴12は、後端側Bから中央にかけて略同径に形成された大径穴12aと、該大径穴12aの先部から持手部11の先端11aにかけて前記大径穴12aの径より小径で、かつ、全長が略同径の小径穴12bで形成されている。前記大径穴12aの両端と、小径穴12bの両端は開口し、前記大径穴12aと小径穴12bは連通している。大径穴12aと小径穴12bとの間には段部12cが形成されている。
【0016】
前記持手部11の後部には、持手部11の内外を貫通する調節穴16が形成されている。前記調節穴16は、長穴状に形成され、その長手方向が、持手部11の軸方向となるように設定されている。
【0017】
前記持手部11の小径穴12bの先部には、円筒状の収納部13が、その基端側を小径穴12bに嵌合固定し、その先部が持手部11より先端方向に突出するように固定されている。該収納部13内には横断面形状が円形の収納室14が形成されている。該収納室14の内径は軸方向に亘って略同径に形成され、その両端は開口している。前記収納部13の先端部には前記シーリング材3を切断可能な切断部15である刃15aが形成されている。該刃15aは、収納部13の周方向全体に環状に形成されている。
【0018】
前記持手部11の先端11aより先部に突出している収納部13の軸方向長さL3は、測定するシーリング材3の厚みL1よりも長く設定され、収納部13の外径L4は、測定するシーリング材3の横幅L5(図7参照)より短く設定されている。
【0019】
前記刃15aは、ステンレスや鋼、アルミ、硬質プラスチック等で形成され、本実施例においてはステンレスを使用した。なお、該刃15aは収納部13と一体に形成してもよいし、別体で形成してもよいが、本実施例においては刃15aと収納部13は一体に形成した。
【0020】
前記持手部11の貫通穴12内には、棒状の押出し部材17が、軸方向に移動可能に設けられている。該押出し部材17の外径は、図4に示すように、その軸方向全体に亘って略同径に形成され、かつ、前記貫通孔12の小径穴12bの内径よりも小さく設定されている。該押出し部材17の後退状態でのその先端17aの位置は、図5に示すように、シーリング材3をサンプリングする際に、収納室14内にシーリング材3を収納した状態において、押出し部材17の先端17aがシーリング材3と接触しないように設定されている。すなわち、図4に示すように、押出し部材17の先端17aが、刃15aの先端より、サンプリングするシーリング材の厚みL4よりも大きなL6分後退している。
【0021】
前記押出し部材17の後部には、図4に示すように、円筒状の止め部材18が固設され、該止め部材18は、その外径が前記押出し部材17より大径で、かつ、貫通穴12の大径穴12aの内径と略同径に形成され、前記止め部材18は大径穴12a内において軸方向に摺動可能に嵌合している。
【0022】
前記止め部材18と貫通穴12の前記段部12cとの間には付勢手段20が配設され、該付勢手段20により前記止め部材18が後端B側、すなわち、切断部15と反対側方向に付勢されている。前記付勢手段20として、バネ部材や弾性材等任意のものを使用することができるが、本実施例においてはコイルスプリング20Aを使用した。該コイルスプリング20Aの外径は、前記大径穴12aの内径より若干小さく、かつ、小径穴12bの内径よりも大きく設定され、該コイルスプリング20Aの前後端が、前記段部12cと止め部材18に係合している。
【0023】
前記止め部材18の後部には押し部材21が固設されている。押し部材21は、図4に示すように、円筒部21aと操作部21bで構成され、前記円筒部21aの外径は、貫通穴12の大径穴12aの内径よりも小さく設定されている。前記操作部21bの外径は、大径穴12aの内径よりも大きく、かつ、前記持手部11の後端の外径と略同径に設定されている。
【0024】
前記円筒部21aにおける前記調節穴16の位置に相当する部分には雌ネジ21cが刻設されおり、ストッパーを構成するボルト23が、調節穴16を遊嵌状に挿通し、前記雌ネジ21cに螺合している。該ボルト23の頭部23aは、調節穴16の外側に位置し、頭部23aの外径は、調節穴16の幅よりも大きく設定されている。
【0025】
前記操作部21bを押してボルト23が調節穴の前端に当接した状態において、図6に示すように、押出し部材17の先端17aが刃15aの先端と同じ位置か、刃15aよりも先方に突出するように、該調節穴16の軸方向の長さは設定されている。
【0026】
前記調節穴16、ボルト23、付勢手段20、押出し部材17、止め部材18、押し部材21により取出し手段25を構成している。
【0027】
次に、サンプリング器具10を用いたシーリング材3のサンプリング方法について説明する。
【0028】
サンプリング器具10において押し部材21を押していない非操作状態においては、付勢手段20により止め部材18が後端側B方向に付勢されているので、ボルト23が調節穴の後端に当接し、押出し部材17の先端17aは、図4に示すように、収納部13の後部に位置し、刃15aの先端から長さL6分後退し、図5に示すように、サンプリングするシーリング材3と干渉しないようになっている。
【0029】
この状態において、サンプリング器具10を、その軸芯がサンプリングしようとするシーリング材3の表面に対して垂直となるようにして、刃15aをシーリング材3の表面に当接させる。
【0030】
次に、図5に示すように、サンプリング器具10を、その軸を中心として回転させながらシーリング材3へ押圧して、刃15aをシーリング材3の奥端まで圧入する。これにより、シーリング材3は、その表面から裏面にかけて円筒状に切断されるとともに、この切断されたシーリング材(サンプリング材)4が収納室14内に収納される。
【0031】
次に、サンプリング器具10をシーリング材3から引き抜く。これにより、切断されたシーリング材3の一部4は、収納室14内に収納された状態で引き抜かれる。
【0032】
次に、図6に示すように、操作部21bを押して押し部材21を先端A方向に押し込み、押出し部材17を先端A方向に移動させる。これにより、押出し部材17の先端17aによって収納室14内のサンプリングしたシーリング材4はサンプリング器具10の器外に押し出される。
【0033】
これにより、シーリング材3の一部をサンプリングすることができ、このサンプリングしたシーリング材4の厚みを測定することにより、シーリング材3の厚みを測定(検査)することができる。
【0034】
なお、サンプリングにより、図7に示すように形成された穴3aは、新たなシーリング材で埋める。
【0035】
なお、シーリング材3が、両側面及びバックアップ材30等の三面に接着している場合には、切断されたシーリング材4は、サンプリング器具10とともに引き抜くことができないが、この場合は、シーリング材3が三面接着していることがわかる。また、この際に、シーリング材3に差し込んだ収納部13の長さから、シーリング材3の厚みを推測することができる。
【0036】
本発明のサンプリング器具10は、上記のような構造を有することにより、次のような作用、効果を奏する。
【0037】
サンプリング器具10は、切断部15である刃15aが無端の環状に形成されていることにより、シーリング材3からその一部4をサンプリングした後における穴3aを、図7に示すように、新たなシーリング材で埋め直せば、従来のカッターによるサンプリングのような切口108が残ることが無い。そのため、前記従来の方法のようなこの切口108からの雨水等の侵入などを防止することができる。
【0038】
また、上記のように、サンプリング器具10をシーリング材3に対する押し付ける操作と、引き抜き操作により簡単にシーリング材3の一部をサンプリングでき、かつ、このサンプリングしたシーリング材4を、取出し手段25によりサンプリング器具10より容易に取り出すことができるため、従来のカッターによるサンプリングと比較して、サンプリング操作の工程を簡略化することができる。
【0039】
なお、前記収納部13及び刃15aの横断面形状は無端状の円形に限ることなく、横断面形状が無端形状、例えば、四角形状や六角形状としてもよい。しかし、シーリング材3が軟らかい場合には、刃15aをシーリング材3の表面に対して直角に位置させてサンプリング器具10を単に押しただけでは、シーリング材3を切断し難いため、収納部13及び刃15aを円形に形成することにより、シーリング材3を切断(サンプリング)する際にサンプリング器具10を回転させながら切断を行うことができ、シーリング材3を容易に切断してサンプリングすることができる。
【0040】
また、持手部11と収納部13を一体に形成してもよい。
【符号の説明】
【0041】
3 シーリング材
10 サンプリング器具
11 持手部
13 収納部
14 収納室
15 切断部
20 付勢手段
25 取出し手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地又は隙間に設けられたシーリング材の厚みを測定するために、その一部をサンプリングする際に用いるシーリング材のサンプリング器具であって、
前記シーリング材の表裏を貫通切断する切断部と、前記切断部により切断したシーリング材を収納する収納室と、該収納室内に収納したシーリング材をサンプリング器具外に取り出す取出し手段とを有し、
前記切断部の横断面形状を無端形状としたことを特徴とするシーリング材のサンプリング器具。
【請求項2】
前記切断部の横断面形状が円形であることを特徴とする請求項1記載のシーリング材のサンプリング器具。
【請求項3】
前記サンプリング器具は持手部を有し、該持手部の先部に前記収納室を有する収納部を設け、前記収納部の先端部に前記切断部を設け、前記持手部内に前記取出し手段を設け、該取出し手段を前記切断部側とは反対側方向に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のシーリング材のサンプリング器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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