説明

シーリング材への光触媒塗装方法及び外装材

【課題】シーリング材を用いていたとしても、長期間の屋外暴露に耐えて、セルフクリーン効果を長期間維持することができる光触媒の塗装方法及び外装材を提供すること。
【解決手段】本発明は、建材1と建材1の周辺に設けられたシーリング材2とを具備する外装材への光触媒の塗装方法であって、シーリング材2の表面に、シーリング材2に含まれる成分の溶出を抑制するための溶出抑制材を塗布して、中間層3を形成する工程と、建材1及び中間層3の両方の表面に、塗装によって光触媒層である第一層4及び第二層5を形成する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材の周囲に設けられたシーリング材周辺の汚れを防止するための方法に関し、より特定的には、光触媒を用いて、シーリング材周辺の汚れを防止するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の外壁等の外装材に、光触媒をコーティングすることによって、建物に付着する汚れを防止するという技術に注目が集まっている。
【0003】
一般的に、バインダーを用いることによって、酸化チタン等の粉末状の光触媒を外装材に担持させる方法が用いられている。これにより、光触媒の酸化分解力及び超親水性を発揮させ、セルフクリーン効果によって、外装材への汚れの付着を防止することができる。
【0004】
通常、外装材には、建材の防水性や気密性を確保するために、建材と建材との間にシーリング材が打設される。当該シーリング材から溶出する成分によって、ブリード汚染が進むことが問題視されている。このようなブリード汚染によって、窓ガラスの表面などに光触媒がコーティングされていたとしても、所望のセルフクリーン効果が得られないという問題がある。たとえば、特許文献1及び特許文献2において、このような問題が指摘されている。
【0005】
特許文献1では、ガラス板の隙間に用いられるシリコーン系シーリング材から溶出するシリコーン樹脂成分による汚れの付着の問題について指摘されている。特許文献1では、表面に光触媒層が形成されたガラス板を用い、シリコーン系シーリング材でシーリングされている部分においてコーキング部の外表面にシリコーン樹脂成分の溶出を防止する溶出防止層を設ける発明が記載されている。特許文献1では、溶出防止層によってシリコーン樹脂成分の溶出を防止し、光触媒層が形成されたガラス板への筋状の汚れをつきにくくすることができるとしている。
【0006】
特許文献2では、シリコーン系シーリング材の表面に溶出防止層を形成し、シリコーン系シーリング材以外の建材の表面に光触媒層を形成する発明が開示されている。特許文献2では、当該光触媒層において、溶出防止層の近傍における光触媒層のTiピーク値は、近傍以外の部分に比べて2倍以上であるとしている。これによって、光触媒層が形成された建材への汚れを付着しにくくし、付着したとしても、降雨や水洗いによって容易に除去可能な外装材が提供されるとしている。
【特許文献1】特開2003−268350号公報 図1 段落0017
【特許文献2】特開2004−300863号公報 図1 段落0040
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、光触媒層がガラス板に形成されているので、予め光触媒層がコーティングされているガラス板を入手した後、シリコーン系シーリング材を塗り、当該シーリング材の上に溶出防止層を形成する。したがって、特許文献1においては、溶出防止層の表面には、光触媒層が形成されていない。しかし、溶出防止層は、一般に、長期間の屋外暴露によって、劣化する。劣化した溶出防止層は、シリコーン樹脂成分の溶出を防止することができず、その結果、光触媒層に付着する汚れが増大し、光触媒層によるセルフクリーン効果以上の汚れが付着することなる。ゆえに、特許文献1に記載の発明では、長期間の屋外暴露に耐え得る外装材を提供することができない。
【0008】
同様に、特許文献2においても、溶出防止層の劣化によって、所望のセルフクリーン効果を得ることができず、長期間の屋外暴露に耐え得る外装材を提供することができない。
【0009】
また、特許文献1及び2においては、溶出防止層の表面に付着する汚れを防止することはできない。
【0010】
それゆえ、本発明の目的は、シーリング材を用いていたとしても、長期間の屋外暴露に耐えて、セルフクリーン効果を長期間維持することができる光触媒の塗装方法及び外装材を提供することである。また、本発明の目的は、シーリング材の上に付着する汚れを防止し、外装材全体を綺麗に保つことができる光触媒の塗装方法及び外装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような特徴を有する。本発明は、建材と建材の周辺に設けられたシーリング材とを具備する外装材への光触媒の塗装方法であって、シーリング材の表面に、シーリング材に含まれる成分の溶出を抑制するための溶出抑制材を塗布して、中間層を形成する工程と、建材及び中間層の両方の表面に、塗装によって光触媒層を形成する工程とを含む。
【0012】
好ましくは、光触媒層を塗装によって形成する工程では、建材及び中間層の両方の表面に、光触媒によって分解されない結着剤を塗布して、第一層を形成し、第一層の上に、光触媒とアモルファス型過酸化チタンゾルとの混合物を塗布して、第二層を形成するとよい。
【0013】
好ましい実施形態において、シーリング材は、シリコーン系シーリング材であり、溶出抑制材は、シリコーンレジン溶液を含む。
【0014】
好ましい実施形態において、シーリング材は、変形シリコーン系シーリング材であり、溶出抑制材は、ウレタン樹脂を含む。
【0015】
好ましい実施形態において、シーリング材は、ポリサルファイド系シーリング材であり、溶出抑制材は、ウレタン樹脂を含む。
【0016】
好ましい実施形態において、シーリング材は、ポリウレタン系シーリング材であり、溶出抑制材は、ウレタン樹脂を含む。
【0017】
好ましい実施形態において、シーリング材は、ポリイソブチレン系シーリング材であり、溶出抑制材は、ウレタン樹脂を含む。
【0018】
また、本発明は、建材と建材の周辺に設けられたシーリング材とを具備する外装材であって、シーリング材の表面に形成されており、シーリング材に含まれる成分の溶出を抑制する溶出抑制材を含む中間層と、建材及び中間層の両方の表面に形成された光触媒層とを備える。
【0019】
好ましくは、光触媒層は、建材及び中間層の両方の表面に形成されており、光触媒によって分解されない結着剤を有する第一層と、第一層の上に形成されており、光触媒とアモルファス型過酸化チタンゾルとの混合物を用いて調製した第二層とを含むとよい。
【0020】
好ましい実施形態において、シーリング材は、シリコーン系シーリング材であり、溶出抑制材は、シリコーンレジン溶液を含む。
【0021】
好ましい実施形態において、シーリング材は、変形シリコーン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、又はポリイソブチレン系シーリング材であり、溶出抑制材は、ウレタン樹脂を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明において、中間層は、シーリング材の成分の溶出を抑制する。したがって、シーリング剤の成分が微細孔を有する光触媒層に浸透し、光触媒による酸化分解力以上の汚れが光触媒層に付着することを防止することができる。また、中間層の表面に光触媒層を形成することによって、中間層及びシーリング材がコーティングされ、中間層及びシーリング材の劣化を防止することができる。それゆえ、長期間の屋外暴露に耐えて、セルフクリーン効果を長期間維持することができる外装材が提供されることとなる。さらに、中間層の上に光触媒層が形成されているので、シーリング材の上に汚れが付着することを防止することができる。その結果、外装材全体を長期間綺麗に保つことが可能となる。
【0023】
光触媒層を、光触媒によって分解されない結着剤を含む第一層、及び光触媒とアモルファス型過酸化チタンゾルとの混合物を塗布して形成された第二層によって形成することにより、光触媒粒子をその光触媒機能を損なわせることなく、強固に、かつ長期間にわたって担持させることができる。加えて、中間層と第一層との相乗効果によって、シーリング材の劣化防止・溶出抑制が期待以上に働く。さらに、第一層が存在することによって、第二層に含まれる光触媒粒子による酸化分解反応が中間層に働きかけることを防止することができる。そのため、中間層が分解されてチョーキングが発生することを防止することができる。すなわち、シーリング材の溶出が防止されると共に、光触媒粒子による酸化分解反応が外装材の表面にのみ働くこととなるので、長期間、外装材の劣化を防止し、表面を綺麗に保つことが可能となる。
【0024】
第一層及び第二層からなる光触媒層を用いる場合、シーリング材の種類に応じて、最適な溶出抑制材が存在することが分かった。シリコーン系シーリング材には、シリコーンレジン溶液を含む溶出抑制材が最適である。変形シリコーン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、又はポリイソブチレン系シーリング材には、ウレタン樹脂を含む溶出抑制剤が最適である。これらの組み合わせによって、中間層を形成することなくシーリング材の表面に光触媒層のみを形成した場合や、溶出防止層のみを形成した場合に比べ、格段、劣化防止・セルフクリーン効果の維持が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る外装材の平面図である。図2は、図1における外装材のA−A断面の概略図である。本実施形態に係る外装材は、建材1と、建材1の周辺に設けられたシーリング材2とを備える。シーリング材2の表面には、シーリング材2に含まれる成分の溶出を抑制するための中間層3が形成されている。建材1及び中間層3の両方の表面には、光触媒層として、第一層4及び第二層5が形成されている。
【0026】
建材1は、ガラスやプラスチック、金属、外壁材料、コンクリート、軽量気泡コンクリート(ALC:Autoclaved Light weight Concrete)などの一般的な外装材料からなる。建材1の周辺には、防水性や気密性を確保するために、シーリング材2が打設されている。
【0027】
シーリング材2は、建材1の種類に応じて、選択される。たとえば、建材1がガラスやプラスチック、金属などからなる場合、シーリング材2として、シリコーン系シーリング材が用いられる。また、建材1がガラス以外からなる場合、変形シリコーン系シーリング材が用いられる。その他、建材1がガラス以外からなる場合、ポリサルファイド系シーリング材が用いられる場合もある。建材1がコンクリートやALCからなる場合、ポリウレタン系シーリング材が用いられる。その他、ガラスの有無に関わらず、外壁全般の建材1に、ポリイソブチレン系シーリング材が用いられる場合もある。
【0028】
シリコーン系シーリング材として、1成分形の「ペンギンシール2505」(サンスター技研株式会社製)等がある。変形シリコーン系シーリング材として、2成分形の「ペンギンシール2500」(サンスター技研株式会社製)等がある。ポリサルファイド系シーリング材として、2成分形の「ペンギンシール169N」(サンスター技研株式会社製)等がある。ポリウレタン系シーリング材として、2成分形の「ペンギンシール980」や「ペンギンシール9000」(サンスター技研株式会社製)等がある。ポリイソブチレン系シーリング材として、2成分形の「ペンギンシール7000」(サンスター技研株式会社製)等がある。
【0029】
中間層3は、シーリング材2に含まれる成分の溶出を抑制するための溶出抑制材を塗布することによって、形成されている。本実施形態において、シーリング材2の組成分に応じて、最適な溶出抑制材が選択される。
【0030】
具体的には、シリコーン系シーリング材には、溶出抑制材として、シリコーンレジン溶液が最適である。シリコーンレジン溶液には、たとえば、溶剤としてトルエンが用いられ、シリコーンレジンとしてメチルトリシラン(メチルエチルケトオキシム)が用いられるとよい。シリコーンレジン溶液からなる溶出抑制材としては、「DOW CORNING TORAY SR 2405 RESIN」(東レ・ダウンコーニング株式会社製)等がある。
【0031】
また、変形シリコーン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、又はポリイソブチレン系シーリング材に対しては、溶出抑制材として、ウレタン樹脂が含まれるプライマーが最適である。たとえば、ウレタン樹脂が含まれるプライマーには、ウレタン樹脂の溶剤として、トルエン・酢酸ブチル・メチルエチルケトンが用いられるとよい。ウレタン樹脂が含まれるプライマーとしては、「ペンギンバリアプライマー」(サンスター技研株式会社製)がある。
【0032】
第一層4は、光触媒によって分解されない結着剤を塗布することによって形成される。結着剤としては、好ましくは、アモルファス型過酸化チタンゾルを用いるとよい。アモルファス型過酸化チタンゾルとしては、たとえば、市販の「ティオスカイコート−C」(株式会社ティオテクノ製)を用いることができる。
【0033】
第二層5は、光触媒とアモルファス型過酸化チタンゾルとの混合物を塗布することによって形成される。ここで、好ましくは、光触媒として、酸化チタンゾルを用いるとよい。その他、光触媒としては、TiO2、ZnO、SrTiO3、CdS、CdO、CaP、InP、In2O3、CaAs、BaTiO3、K2NbO3、Fe2O3、Ta2O5、WO3、SaO2、Bi2O3、NiO、Cu2O、SiC、SiO2、MoS2、MoS3、InPb、RuO2、CeO2などを用いることができる。酸化チタンゾルとアモルファス型過酸化チタンゾルとの混合物として、たとえば、市販の「ティオスカイコート−A」(株式会社ティオテクノ製)を用いることができる。なお、第一層4及び第二層5の形成方法、並びにアモルファス型過酸化チタンゾル及び酸化チタンゾルの製造方法については、特許第3690864号公報等に詳しく記載されおり、周知事項であるので、これ以上の詳しい説明を省略する。
【0034】
なお、光触媒層は、第一層4及び第二層5のように、二層構造になっている場合には限られず、一層構造であってもよい。
【0035】
なお、シーリング材からの成分の溶出を抑制することができるのであれば、溶出防止材は、本実施形態に示したものに限定されるものではない。
【0036】
次に、本実施形態に係る外装材を得るための塗装方法について説明する。まず、建材1にある隙間等にシーリング材2を打設し、一定期間養生する。シーリング材の養生後、シーリング材2の上に、溶出防止材を塗布し、乾燥させ、中間層3を形成する。この際、シーリング材2の組成分に応じて、最適な溶出防止材が塗布される。中間層3の形成後、光触媒によって分解されない結着剤を建材1及び中間層3の両方の表面に塗布し、乾燥させ、第一層4を形成する。第一層4の形成後、光触媒とアモルファス型過酸化チタンゾルとの混合物を、第一層4の表面に塗布して乾燥させ、第二層5を形成する。これによって、本実施形態に係る外装材が得られる。
【実施例】
【0037】
図3は、比較例1〜4及び実施例1〜4で用いた屋外暴露用の試験体の平面図である。図4は、比較例1〜4及び実施例1〜4で用いた屋外暴露用の試験体のB−B断面図である。
【0038】
図3及び図4に示すように、アルミ板11の表面にボンドブレーカー12を貼り付け、ボンドブレーカー12の上に、二つのアルミLチャン14をリベット13によって取り付け、二つのアルミLチャン14の間に、シーリング材を打設することによって、試験体を製作した。シーリング材の養生条件は、23℃で7日間、及び50℃で7日間とした。
【0039】
比較例1及び実施例1では、2成分形シリコーン系シーリング材を打設した。比較例2及び実施例2では、イソシアネート硬化型2成分形ポリサルファイド系シーリング材を打設した。比較例3及び実施例3では、2成分形ポリウレタン系シーリング材を打設した。比較例4及び実施例4では、2成分形変形ポリウレタン系シーリング材を打設した。なお、ポリウレタン系シーリング材及び変形ポリウレタン系シーリング材のことを総称して、ポリウレタン系シーリング材と呼ぶ。
【0040】
比較例1〜4は、シーリング材を打設した状態の未処理品とした。一方、実施例1〜4は、シーリング材の上に、ウレタン樹脂を含むプライマーとして、「ペンギンバリアプライマー」(サンスター技研株式会社製)を塗布料0.3kg/mで2回塗装し、6時間乾燥させて中間層を形成した後、中間層及び建材であるアルミLチャンの表面に「ティオスカイコート−C」(株式会社ティオテクノ製)を塗布量0.03kg/mで2回塗装し、6時間乾燥させて第一層を形成した後、第一層の表面に「ティオスカイコート−A」(株式会社ティオテクノ製)を塗布量0.03kg/mで2回塗装して乾燥させた。
【0041】
図3及び4に示す屋外暴露用の試験体に加え、促進暴露用の試験体を比較例1及び2並びに実施例1及び2について製作した。促進暴露用の試験体は、ストレート面を刷毛によって清掃後、シーリング材を10mmの厚みで打設し、23℃で3日間養生した。屋外暴露用の試験体と同様の条件で、実施例1及び2については、中間層、第一層、及び第二層を塗布形成し、23℃で7日間放置して、試験体とした。一方、比較例1及び2は、シーリング材を打設した状態の未処理品とした。
【0042】
図5は、比較例5及び実施例5で用いた屋外暴露用の試験体の正面図である。図6は、比較例5及び実施例5で用いた屋外暴露用の試験体の右側面図である。比較例5及び実施例5では、金属塗装パネルの表面にシーリング材をV字状に二カ所打設した。ここで用いたシーリング材は、1成分形シリコーン系シーリング材である。シーリング材は、23℃で7日間、50℃で7日間養生した。シーリング材20の表面には、シリコーンレジン溶液からなる溶出抑制材として、「DOW CORNING TORAY SR 2405 RESIN」(東レ・ダウンコーニング株式会社製)を塗布量0.3kg/mで2回塗装し、6時間乾燥させて、中間層を形成した。中間層及びシーリング材20の近傍に、「ティオスカイコート−C」(株式会社ティオテクノ製)を塗布量0.03kg/mで2回塗装し、6時間乾燥させて第一層を形成した後、第一層の表面に「ティオスカイコート−A」(株式会社ティオテクノ製)を塗布量0.03kg/mで2回塗装して乾燥させた。シーリング材20近傍を実施例5とした。一方、シーリング材21は、シーリング材を打設したままの状態にしておき、比較例5とした。
【0043】
比較例6及び実施例6として、促進暴露用の試験体を製作した。促進暴露用の試験体は、ストレート面を刷毛によって清掃後、シーリング材を10mmの厚みで打設し、23℃で3日間養生した。ここで用いたシーリング材は、2成分形ポリイソブチレン系である。比較例6は、シーリング材を打設した状態のままの未処理品とした。一方、実施例6では、シーリング材の上に、ウレタン樹脂を含むプライマーとして、「ペンギンバリアプライマー」(サンスター技研株式会社製)を塗布料0.3kg/mで2回塗装し、6時間乾燥させて中間層を形成した後、中間層及び建材であるアルミLチャンの表面に「ティオスカイコート−C」(株式会社ティオテクノ製)を塗布量0.03kg/mで2回塗装し、6時間乾燥させて第一層を形成した後、第一層の表面に「ティオスカイコート−A」(株式会社ティオテクノ製)を塗布量0.03kg/mで2回塗装して乾燥させた。その後、23℃で7日間放置して、試験体とした。
【0044】
比較例7として、中間層を設けずに、シーリング材の表面に光触媒層を直接形成する試験体を製作した。比較例7の試験体は、ストレート面をハケにて洗浄後、イソシアネート硬化型2成分形ポリサルファイド系シーリング材である「ペンギンシール169N」(サンスター技研株式会社製)を10mm厚みで打設し、23℃で3日間養生後、当該シーリング材の表面に「ティオスカイコート−C」(株式会社ティオテクノ製)を塗布量0.03kg/mで1回塗装し、6時間乾燥させて第一層を形成した後、第一層の表面に「ティオスカイコート−A」(株式会社ティオテクノ製)を塗布量0.03kg/mで1回塗装して、製作した。
【0045】
比較例1〜4及び実施例1〜4について、屋外暴露試験を行い、6ヶ月後、12ヶ月後の状態を目視観察した。また、比較例1及び2並びに実施例1及び2については、促進暴露試験を行い、1000時間後、2000時間後、3000時間後の状態を目視観察した。
【0046】
比較例5及び実施例5について、屋外暴露試験を行い、6ヶ月後の状態を目視観察した。
【0047】
比較例6及び実施例6について、促進暴露試験を行い、1000時間後、2000時間後、3000時間後の状態を目視観察した。
【0048】
比較例7について、促進暴露試験を行い、1000時間後、2000時間後の状態を目視観察した。
【0049】
なお、促進暴露試験は、スガ試験機株式会社製「サンシャインスーパーロングライフウエザーメーター」を用いた。
【0050】
表1は、比較例1〜6の試験結果を示す。
【表1】

【0051】
比較例1では、屋外暴露6ヶ月経過時には、汚れが目立ちだした。また、実施例1では、促進暴露3000時間後に、亀裂・チョーキング・変色が認められるようになった。比較例2では、促進暴露2000時間後に、亀裂・チョーキング・変色が認められるようになった。比較例3及び4では、屋外暴露6ヶ月後には、すでに、亀裂・チョーキング・汚れがひどく認められた。比較例5では、6月後、図5に示すD地点において、ひどい汚れが認められた。また、図5に示すB及びC地点においても、僅かな汚れが認められた。比較例6では、促進暴露3000時間後に、亀裂・チョーキング・変色が認められるようになった。
【0052】
表2は、実施例1〜6の試験結果を示す。
【表2】

【0053】
実施例1では、比較例1と異なり、6ヶ月・12ヶ月の屋外暴露試験によっても、汚れを確認することはできなかった。また、促進暴露3000時間後においても、亀裂・チョーキング・変色を確認することはできなかった。これは、変形シリコーン系シーリング材に対して、ウレタン樹脂を含む溶出抑制材を塗布し中間層を形成し、光触媒によって分解されない第一層を形成することによって、シーリング材の劣化が防止され、シーリング材の成分が光触媒層に進入するのを阻止した結果、シーリング材の成分が溶出することによるブリード汚染を防止することができることを意味している。さらに、第一層及び第二層を形成することによって、光触媒の酸化反応によって、中間層が分解されないという効果が得られていることも示している。その上で、最上位の第二層による光触媒のセルフクリーン効果によって、外装材の表面が汚れずに保たれたことが分かる。
【0054】
実施例2では、比較例2と異なり、促進暴露2000時間及び3000時間の結果が良好なものとなった。これは、ポリサルファイド系シーリング材に対して、ウレタン樹脂を含む溶出抑制材を塗布し中間層を形成し、光触媒によって分解されない第一層を形成することによって、シーリング材の劣化が防止されたことを意味している。また、ブリード汚染が防止され、中間層の分解が防止され、結果、セルフクリーン効果が良好に機能したことが分かる。
【0055】
実施例3及び4では、比較例3及び4と異なり、屋外暴露6ヶ月・12ヶ月の結果が、明らかに、良好なものとなった。これは、ポリウレタン系シーリング材に対して、ウレタン樹脂を含む溶出抑制材を塗布し中間層を形成して、光触媒によって分解されない第一層を形成することによって、シーリング材の劣化及び第二層の光触媒によって中間層が分解されずに、チョーキングが生じなかったことを意味している。その結果、ブリード汚染が防止され、セルフクリーン効果が良好に機能したことが分かる。
【0056】
実施例5において、図5に示すA地点では、汚れは観測されなかった。すなわち、比較例5と異なり、シリコーン系シーリング材に対して、シリコーンレジン溶液を溶出抑制材として塗布して中間層を形成し、光触媒によって分解されない第一層を形成することによって、ブリード汚染が防止されたことを意味している。ブリード汚染が防止されることによって、セルフクリーン効果が十分に発揮され、実施例5の試験結果となったと考えられる。
【0057】
実施例6では、比較例6と異なり、促進暴露3000時間の結果が良好なものとなった。これは、ポリイソブチレン系シーリング材に対して、ウレタン樹脂を含む溶出抑制材を塗布し中間層を形成し、光触媒によって分解されない第一層を形成することによって、シーリング材の劣化が防止されたことを意味している。また、ブリード汚染が防止され、中間層の分解が防止され、結果、セルフクリーン効果が良好に機能したことが分かる。
【0058】
表3は、比較例7の試験結果を示す。
【表3】

比較例7と実施例2とを比較すると分かるように、中間層を設けずに、光触媒層を設けただけでは、劣化や汚れを防止することができないことが分かる。これは、光触媒層の表面にシーリング材の成分が染み出ることによって、光触媒層の表面に光触媒による酸化分解能力以上の汚れが付着し、所望のセルフクリーン効果が得られないのであると考えられる。また、光触媒層だけでは、シーリング材の劣化防止材としては機能しないことも分かる。すなわち、中間層と光触媒層(特に、第一層)との相乗効果によって、シーリング材の劣化防止・溶出抑制が働き、加えて、光触媒層(第一層及び第二層)の働きによって、中間層が分解されてチョーキングが発生するのを防止し、その上で、最上位の第二層によるセルフクリーン効果を十分に発揮させることが可能となっていると考えられる。
【0059】
実施例1、2及び6から分かるように、促進暴露3000時間による劣化防止が確認されたので、本発明によって、シーリング材を用いていたとしても長期間の屋外暴露に耐えて、セルフクリーン効果を長期間維持することができる光触媒の塗装方法及び外装材が提供されることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、建築物等の長期劣化防止に寄与することができ、建築等の幅広い産業分野において、有益に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係る外装材の平面図
【図2】図1における外装材のA−A断面の概略図
【図3】比較例1〜4及び実施例1〜4で用いた屋外暴露用の試験体の平面図
【図4】比較例1〜4及び実施例1〜4で用いた屋外暴露用の試験体のB−B断面図
【図5】比較例5及び実施例5で用いた屋外暴露用の試験体の正面図
【図6】比較例5及び実施例5で用いた屋外暴露用の試験体の右側面図
【符号の説明】
【0062】
1 建材
2 シーリング材
3 中間層
4 第一層
5 第二層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建材と前記建材の周辺に設けられたシーリング材とを具備する外装材への光触媒の塗装方法であって、
前記シーリング材の表面に、前記シーリング材に含まれる成分の溶出を抑制するための溶出抑制材を塗布して、中間層を形成する工程と、
前記建材及び前記中間層の両方の表面に、塗装によって光触媒層を形成する工程とを含む、光触媒の塗装方法。
【請求項2】
前記光触媒層を塗装によって形成する工程では、
前記建材及び前記中間層の両方の表面に、光触媒によって分解されない結着剤を塗布して、第一層を形成し、
前記第一層の上に、光触媒とアモルファス型過酸化チタンゾルとの混合物を塗布して、第二層を形成することを特徴とする、請求項1に記載の光触媒の塗装方法。
【請求項3】
前記シーリング材は、シリコーン系シーリング材であり、
前記溶出抑制材は、シリコーンレジン溶液を含むことを特徴とする、請求項2に記載の光触媒の塗装方法。
【請求項4】
前記シーリング材は、変形シリコーン系シーリング材であり、
前記溶出抑制材は、ウレタン樹脂を含むことを特徴とする、請求項2に記載の光触媒の塗装方法。
【請求項5】
前記シーリング材は、ポリサルファイド系シーリング材であり、
前記溶出抑制材は、ウレタン樹脂を含むことを特徴とする、請求項2に記載の光触媒の塗装方法。
【請求項6】
前記シーリング材は、ポリウレタン系シーリング材であり、
前記溶出抑制材は、ウレタン樹脂を含むことを特徴とする、請求項2に記載の光触媒の塗装方法。
【請求項7】
前記シーリング材は、ポリイソブチレン系シーリング材であり、
前記溶出抑制材は、ウレタン樹脂を含むことを特徴とする、請求項2に記載の光触媒の塗装方法。
【請求項8】
建材と前記建材の周辺に設けられたシーリング材とを具備する外装材であって、
前記シーリング材の表面に形成されており、前記シーリング材に含まれる成分の溶出を抑制する溶出抑制材を含む中間層と、
前記建材及び前記中間層の両方の表面に形成された光触媒層とを備える、外装材。
【請求項9】
前記光触媒層は、
前記建材及び前記中間層の両方の表面に形成されており、光触媒によって分解されない結着剤を有する第一層と、
前記第一層の上に形成されており、光触媒とアモルファス型過酸化チタンゾルとの混合物を用いて調製した第二層とを含むことを特徴とする、請求項8に記載の外装材。
【請求項10】
前記シーリング材は、シリコーン系シーリング材であり、
前記溶出抑制材は、シリコーンレジン溶液を含むことを特徴とする、請求項9に記載の外装材。
【請求項11】
前記シーリング材は、変形シリコーン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、又はポリイソブチレン系シーリング材であり、
前記溶出抑制材は、ウレタン樹脂を含むことを特徴とする、請求項9に記載の外装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−144430(P2008−144430A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331395(P2006−331395)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(506409088)株式会社森屋グランドコート (1)
【出願人】(506410187)株式会社ピー・エフ・シー (1)
【Fターム(参考)】