説明

シーリング材組成物

【課題】環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保しつつ必要十分な硬化速度を有し、耐候性が良好で、実用可能なモジュラスを示すシーリング材組成物を提供する。
【解決手段】1)分子内に下記一般式(1)で表されるジアルコキシシリル基加を有する硬化性樹脂(A)を100質量部に対して、
2)分子内に下記一般式(2)で表されるジアルコキシシリル基を有する硬化性樹脂(B)を40〜400質量部、
3)塩基性化合物(C)を0.1〜70質量部、
4)老化防止剤(D)を0.1〜70質量部、
を含有させてなるシーリング材組成物。
−W−CH−SiR(OR ・・・式(1)
(但し、Wは−O−CO−NH−、−N(R)−CO−NH−、−S−CO−NH−から選択される基を表し、R、Rは炭素数1〜20個のアルキル基を、Rは水素、ハロゲン置換されていてもよい環状、線状又は分枝鎖状の炭素数1〜18のアルキルもしくはアルケニル基又は炭素数6〜18個のアリール基をそれぞれ示す。)
−X−SiR(OR ・・・式(2)
(但し、Xは炭素数2以上の炭化水素を、R、Rは炭素数1〜20個のアルキル基を、それぞれ示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温大気下で硬化可能である、加水分解性ケイ素基を含有するシーリング材組成物に関し、より詳しくは、環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保しつつ必要十分な硬化速度を有し、耐候性が良好で、実用可能なモジュラスを示すシーリング材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
分子内に加水分解性ケイ素基を有する硬化性樹脂は、シーラント、接着剤、粘着剤、塗料等のベースポリマーとして広く用いられている。この硬化性樹脂は加水分解性ケイ素基が大気中の水分で加水分解し架橋することによって硬化するため、湿気硬化型ポリマーとも呼ばれている。特に加水分解性ケイ素基がアルコキシシランである硬化性樹脂は、安全性や臭気が少ないことなどから幅広く用いられている。(特許文献1や特許文献2)
しかし、アルコキシシリル基だけでは室温で十分な硬化速度を得られないため、これらの硬化性樹脂は十分な硬化速度を得るために、通常は硬化触媒を配合して使用される。硬化触媒としては有機スズ化合物が広く使用されている。
【0003】
一方で、アミン化合物やカルボン酸化合物、又はビスマス系化合物やチタン系化合物(特許文献3や特許文献4)を硬化触媒として使用することが提案されている。しかし、これらの触媒系では硬化速度が実用的に満足できるものではなかった。
また、無触媒でも十分な硬化性を有するアルコキシシリル基として、加水分解性ケイ素原子に結合した炭素原子に、非共有電子対を有する酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子が結合した結合基をもつ(以下「α−シラン構造」と表記する)化合物が提案されている(特許文献5)。
【0004】
【特許文献1】特開昭52−73998号公報
【特許文献2】特開昭63−112642号公報
【特許文献3】特許第3793074号公報
【特許文献4】特許第3768072号公報
【特許文献5】特表2005−514504号公報
【0005】
近年、建築物の外壁としてサイディングボードを用いる外壁が戸建、集合住宅、中低層建築物に広く採用されおり、サイディングボードの目地にシーリング材を充填することで目地部の水密性・気密性を維持している。サイディングボードは外部環境条件(特に夏冬、昼夜の温度変化)による伸縮や、経年変化により収縮する傾向があり、充填するシーリング材にはその目地の動きに追従することが強く求められており、低モジュラスなシーリング材が採用されている。(高モジュラスなシーリング材で目地を充填した場合、サイディングボードの伸縮に伴い大きな荷重が目地にかかるため、シーリング材部分の割れ、剥がれ等が起こり、水密性・気密性の維持が困難になることが懸念される。)
サイディングボード以外でもシーリング材は目地(隙間)に充填し、水密性・気密性を維持することが期待される用途に使われることが多く、目地の動きに追従し、余計な負荷をかけない低モジュラスなシーリング材が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機スズ化合物については、近年その毒性が問題となっているものがあり、その使用量については組成物に対し1000ppm以下に抑えることが望まれている。特に有機スズ化合物の中でも、毒性の比較的高いトリブチルスズ誘導体が含まれているものは、その使
用について特に注意が必要となる。
また、トリブチルスズ誘導体に限らず、スズを含む重金属を中心とする触媒は毒性、環境への負荷が懸念されるため、使用に際してはその取り扱いや使用量に十分な注意が必要であるのは言うまでもない。
【0007】
また、有機スズ化合物は加水分解性ケイ素基を有する硬化性樹脂の硬化触媒としても作用するが、エステル結合を加水分解する触媒としても作用する。そのため、一般的に使用されている老化防止剤の分子中に含まれるエステル結合が加水分解されてしまい、老化防止剤としての効果が長続きしなくなるため、一般的に有機スズ触媒を使用することで耐候性が低下してしまう傾向がある。
一方で、有機スズ触媒を使用しなくても、塩基性化合物のみで十分な硬化性を示すα−シラン構造を持つ硬化性樹脂(A)は、耐候性は良好であるが、硬化物のモジュラスが高くシーリング材として使用した場合に、硬すぎる傾向がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者等は、鋭意研究の結果、有機スズ触媒を使用しなくても塩基性化合物のみで十分な硬化性を示すが、モジュラスが高く単独では使用が困難であったα−シラン構造を持つ硬化性樹脂(A)と、モジュラス調整剤として硬化性樹脂(B)と、塩基性化合物(C)と、老化防止剤(D)を用いることで、実用可能なモジュラスを示し、耐候性が良好であり、環境負荷の低減が可能であり、しかも、必要十分な硬化速度が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、第1の発明は、1)分子内に下記一般式(1)で表されるジアルコキシシリル基を有する硬化性樹脂(A)を100質量部に対して、
2)分子内に下記一般式(2)で表されるジアルコキシシリル基を有する硬化性樹脂(B)を40〜400質量部、
3)塩基性化合物(C)を0.1〜70質量部、
4)老化防止剤(D)を0.1〜70質量部、
を含有させてなるシーリング材組成物、
−W−CH−SiR(OR ・・・式(1)
(但し、Wは−O−CO−NH−、−N(R)−CO−NH−、−S−CO−NH−から選択される基を表し、R、Rは炭素数1〜20個のアルキル基を、Rは水素、ハロゲン置換されていてもよい環状、線状又は分枝鎖状の炭素数1〜18のアルキルもしくはアルケニル基又は炭素数6〜18個のアリール基をそれぞれ示す。)
−X−SiR(OR ・・・式(2)
(但し、Xは炭素数2以上の炭化水素を、R、Rは炭素数1〜20個のアルキル基を、それぞれ示す。)
第2の発明は、硬化性樹脂(A)の主鎖が本質的にポリオキシアルキレン及び/又はポリ(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする、第1の発明に記載のシーリング材組成物、
第3の発明は、硬化性樹脂(B)の主鎖が本質的にポリオキシアルキレン及び/又はポリ(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする、第1、2の発明に記載のシーリング材組成物、
第4の発明は、塩基性化合物(C)がアミン化合物であることを特徴とする第1〜3の発明のいずれか一項に記載のシーリング材組成物。
第5の発明は、塩基性化合物(C)がその分子内にアミノ基と下記一般式(3)で表される加水分解性シリル基を有する化合物であることを特徴とする第1〜4の発明のいずれか一項に記載のシーリング材組成物、
−SiR3−n ・・・式(3)
(但し、Yはヒドロキシル基又はアルコキシル基等の加水分解性基を、Rは炭素数1〜
20個のアルキル基を、nは0、1又は2を、それぞれ示す。)
第6の発明は、有機スズ系触媒が実質的に含まれない、または1000ppm未満であることを特徴とする第1〜5の発明に記載のシーリング材組成物、
第7の発明は、さらに、充填剤、可塑剤を含有することを特徴とする第1〜6の発明に記載のシーリング材組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るシーリング材組成物は、環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保しつつ必要十分な硬化速度を有し、耐候性が良好で、実用可能なモジュラスを示すという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0012】
[硬化性樹脂(A)について]
本発明における硬化性樹脂(A)は、分子内に式(1)で表される加水分解性珪素基を有する硬化性樹脂である。
−W−CH−SiR(OR ・・・式(1)
(但し、Wは−O−CO−NH−、−N(R)−CO−NH−、−S−CO−NH−から選択される基を表し、R、Rは炭素数1〜20個のアルキル基を、Rは水素、ハロゲン置換されていてもよい環状、線状又は分枝鎖状の炭素数1〜18のアルキルもしくはアルケニル基又は炭素数6〜18個のアリール基をそれぞれ示す。)
式(1)で示したように上記加水分解性ケイ素基は、ケイ素原子にメチレン基を介して非共有電子対を有するヘテロ原子を含む結合基が結合しているものである。さらに当該加水分解性ケイ素基は、この結合基を介して主鎖骨格に結合している。
【0013】
また、当該ケイ素原子についてはメチレン基との結合手以外に加水分解性基としてアルコキシル基(OR)が2個結合すると共に、残りの結合手として炭化水素基(R)が1個結合しているものである。
ここで、R及びRはそれぞれ炭素数1〜20個のアルキル基である。アルコキシル基(OR)としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であるのが好ましく、さらに好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。珪素原子の残りの結合手に結合している炭化水素基(R)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であるのが好ましく、さらに好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0014】
上記加水分解性ケイ素基がトリアルコキシシリル基である場合、硬化物のモジュラスが高く、目地への追従性に劣る傾向があるため好ましくない。また、上記加水分解性ケイ素基がモノアルコキシシリル基である場合も、反応性が低く硬化速度が非常に遅くなってしまい、さらに、架橋による三次元ネットワークを形成できないため硬化物物性に劣る傾向があるため好ましくない。そのため、上記硬化性樹脂(A)の反応性ケイ素基はジアルコキシシリル基であることが、反応性及び硬化物の物性等から好ましい。
本願では、このような化学構造を「α−シラン構造」と表記する。α−シラン構造を選択することにより通常の加水分解性珪素基よりも極めて高い湿分反応性を示すため、スズ触媒を使用しない、或いは通常よりもはるかに少量の使用量でも充分な硬化速度を得ることができる。
【0015】
硬化性樹脂(A)の主鎖骨格としては、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチル
シロキサン等のシリコーン樹脂及び変成シリコーン樹脂に一般的に用いられているものが採用されるが、特にポリオキシアルキレン及び/又はポリ(メタ)アクリル酸エステルであることが、入手の容易さ硬化物の皮膜物性等の点から好ましい。
硬化性樹脂(A)を得るためには、従来公知の方法で合成を行えばよい。例えばポリオール化合物及び/又はアクリルポリオール化合物にイソシアネートメチルアルコキシシラン化合物を反応させる方法等が知られている。より具体的には、特表2004−518801、特表2004−536957、特表2005−501146等に記載の方法で容易に合成できる。
【0016】
硬化性樹脂(A)の市販品としては、Wacker Chemie AG製のGENIOSIL STP−E10(メトキシ基等量から換算した分子量約10000、粘度約10000mPa・s/25℃(カタログ値))、GENIOSIL STP−E30(メトキシ基等量から換算した分子量約16000、粘度約30000mPa・s/25℃(カタログ値))等が挙げられる。これらの構造は、上記一般式(1)のWが−O−CO−NH−、RがCH、RがCHであり、下記一般式(4)で示される。
−O−CO−NH−CH−SiCH(OCH ・・・式(4)
【0017】
[硬化性樹脂(B)について]
本発明における硬化性樹脂(B)は、硬化性樹脂(A)のモジュラス調整剤(モジュラス低下剤)として添加され、分子内に下記一般式(2)で表される加水分解性珪素基を有する硬化性樹脂である。
−X−SiR(OR ・・・式(2)
(但し、Xは炭素数2以上の炭化水素を、R、Rは炭素数1〜20個のアルキル基を、それぞれ示す。)
【0018】
上記加水分解性ケイ素基は、ケイ素原子に炭素数2以上の炭化水素基Xが結合して
おり、これが主鎖骨格に結合している。また、当該ケイ素原子については炭化水素基Xとの結合手以外に加水分解性基としてアルコキシル基(OR)が2個結合すると共に、残りの結合手として炭化水素基(R)が1個結合しているものである。
ここで、R及びRはそれぞれ炭素数1〜20個のアルキル基である。アルコキシル基(OR)としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であるのが好ましく、さらに好ましくはメトキシ基又はエトキシ基である。ケイ素原子の残りの結合手に結合している炭化水素基(R)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であるのが好ましく、さらに好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0019】
上記加水分解性ケイ素基がトリアルコキシシリル基のみである場合、硬化物のモジュラスが高くなる傾向があり、モジュラス調整剤(モジュラス低下剤)としての効果が発揮されないことがある。また、上記加水分解性ケイ素基がモノアルコキシシリル基のみである場合も、反応性が低く硬化速度が非常に遅くなる傾向があり、さらに、架橋による三次元ネットワークを形成できないため硬化物物性に劣ることがある。そのため、上記硬化性樹脂(B)の反応性ケイ素基はジアルコキシシリル基であることが、反応性及び硬化物の物性等から好ましい。
【0020】
硬化性樹脂(B)の主鎖骨格としては、ポリオキシアルキレン、ビニル重合体、飽和炭化水素重合体、不飽和炭化水素重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂及び変成シリコーン樹脂に一般的に用いられているものが採用されるが、特にポリオキシアルキレン及び/又はポリ(メタ)アクリル酸エステルであることが、入手の容易さ硬化物の皮膜物性等の点から好ましい。なお、本願においては、アクリル酸とメタクリル酸とを総称して「(メタ)アクリル酸」と表記する。
【0021】
硬化性樹脂(B)の市販品としては、シリコーン樹脂又は変成シリコーン樹脂として多数販売されている。例えば、株式会社カネカ製のサイリルシリーズ、MSポリマーシリーズ、MAシリーズ、SAシリーズ、ORシリーズ、エピオンシリーズ;旭硝子株式会社製のESシリーズ、ESGXシリーズ;エボニックデグサ社製のシラン変性ポリアルファオレフィン、信越化学工業株式会社製のKCシリーズ、KRシリーズ、X−40シリーズ;東亞合成株式会社製のXPRシリーズ、ARUFON USシリーズ;綜研化学株式会社製のアクトフローシリーズ等が挙げられる。
【0022】
また、硬化性樹脂(B)として、分子内にウレタン結合、尿素結合等の極性基を含有する硬化性シリコーン系樹脂を用いることもできる。分子内に極性基を含有する硬化性樹脂(B)は、従来公知の方法で合成すればよい。例えば、イソシアネート基末端ポリマーにアミノ基含有アルコキシシラン化合物(或いはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物)を反応させる方法や、水酸基末端ポリオールにイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物を反応させる方法等が知られている。より具体的には、特許第3030020号公報、特許第3343604号公報、特開2005−54174公報等に記載の方法で容易に合成することができる。
上記塩基性化合物(B)は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
硬化性樹脂(B)の配合量は、硬化性樹脂(A)100質量部に対して、40〜400質量部、好ましくは100〜300質量部、特に好ましくは200〜250質量部である。硬化性樹脂(B)の配合量が40質量部よりも少なくなると、モジュラス調整剤としての効果が少なくなり硬化物が硬くなってしまう。硬化性樹脂(B)の配合量が400質量部よりも多くなると、相対的に硬化性樹脂(A)の割合が少なくなることで硬化性が十分発揮されない。
硬化性樹脂(A)と硬化性樹脂(B)とは、各々の主鎖骨格は同じであっても異なっていてもよい。また、硬化性樹脂(A)と硬化性樹脂(B)が相溶しているほうがより本発明の効果が得られやすいため好ましい。
【0024】
硬化性樹脂(A)と硬化性樹脂(B)の相溶性を向上させるために従来公知の技術を用いることができる。例えば一般的に相溶化剤として知られている化合物を添加することができる。また、硬化性樹脂(A)と硬化性樹脂(B)の主鎖骨格を相溶性が良好である組み合わせを選ぶことによって両者の相溶性を向上させることもできる。具体的には主鎖骨格の極性が比較的近いものを用いることで相溶性を向上することができる。例えば、双方ともに同じ主鎖骨格を選ぶと相溶性が非常に良好である。また同じではなくても、ポリオレフィン骨格同士、ポリエーテル骨格同士といった比較的構造が似通った骨格を選択することも好ましい。さらに、ポリオキシアルキレン骨格と特定構造のポリ(メタ)アクリレート骨格なども相溶性が良好であることが知られている。上記のように相溶性が良好である組み合わせを例示したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
硬化性樹脂(A)のモジュラス調整剤として、可塑剤の添加がこれまで一般的に行われてきた。しかし、可塑剤を多量に添加することで、可塑剤成分が硬化物表面にブリードアウトしたり、塗料の密着性が低下したり、耐候性が低下したりする可能性があるため、可塑剤の添加量には限度があった。
一方、本発明では硬化性樹脂(A)のモジュラス調整剤としてジアルコキシシリル基を有する硬化性樹脂(B)を用いることで、モジュラス調整のために多量に配合しても、硬化の過程で硬化性樹脂(B)中のジアルコキシシリル基が硬化に取り込まれるために、可塑剤を多量に使用した場合のような不具合が起き難いため、好ましい。
【0026】
[塩基性化合物(C)について]
本発明における塩基性化合物は、硬化性樹脂(A)及び硬化性樹脂(B)、特に硬化性
樹脂(A)の硬化触媒として作用する化合物であり、塩基性を示す化合物であれば特に限定されず、カルボン酸等の酸との塩であっても塩基性である限り使用可能である。例えば、第1〜3級アミン化合物及びその塩、4級アンモニウム塩、有機金属塩等が好適に使用できる。アミン化合物とエポキシ化合物との反応物であっても良い。
【0027】
塩基性化合物(C)の具体例として、例えば、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン等の第1級アミノ基を有する化合物;N−メチル−3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ペンタエチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,9−ジアミノノナン、ATU(3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)、CTUグアナミン、ドデカン酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジアニシジン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、トリジンベース、m−トルイレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、メラミン、1,3−ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、サンテクノケミカル社製ジェファーミン(商品名)等の複数の第1級アミノ基を有する化合物;ピペラジン、シス−2,6−ジメチルピペラジン、シス−2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、1,3−ジ−(4−ピペリジル)−プロパン、4−アミノプロピルアニリン、ホモピペラジン、N,N’−ジフェニルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N−メチル−1,3−プロパンジアミン等の複数の第二級アミノ基を有する化合物;メチルアミノプロピルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノエチルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、3−アミノピロリジン、1−o−トリルビグアニド、2−アミノメチルピペラジン、N−アミノプロピルアニリン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、式:H N(C NH) H(n≒ 5)で表わされる化合物(商品名:ポリエイト、東ソー社製)等の第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有する化合物;テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩類;三共エアプロダクツ社製のDABCO(登録商標)シリーズ、DABCOBLシリーズ、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の複数の窒素を含む直鎖或いは環状の第三級アミン及び第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0028】
塩基性化合物(C)がアミン化合物であることが、入手の容易さや、コストの面から好ましい。また、塩基性化合物(C)がその分子内にアミノ基と下記一般式(3)で表される加水分解性シリル基を有する化合物である場合は、硬化触媒としての効果がより顕著に発揮されると共に、各種被着体(特に金属)への接着性付与もできるため好ましい。
−SiR3−n ・・・式(3)
(但し、Yはヒドロキシル基又はアルコキシル基等の加水分解性基を、Rは炭素数1〜20個のアルキル基を、nは0、1又は2を、それぞれ示す。)
【0029】
具体的には、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノ
プロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−3−[アミノ(ジプロピレンオキシ)]アミノプロピルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物も挙げられる。
【0030】
上記化合物は市販品でも使用することができる。市販品として、信越化学工業社製、商品名,KBM−602,KBM−603,KBE−603,KBM−903,KBE−903,KBM−902,KBE−902,KBE−9103,KBM−573,KBM−575,KBM−576,KBM−6123,KBE−585,X−12−806,X−12−666,X−12−896,X−12−5263,X−12−580,X−12−575,X−12−577,X−12−563B,X−12−565,X−12−562,X−12−817H,KBM−6063、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名:TSL8331,TSL8340,TSL8345,TSL8802、チッソ社製、商品名:S360,S320,S310,S311,S321,S330、エボニックデグサ社製、商品名:ダイナシラン(DYNASYLAN)1189等が挙げられる。
上記塩基性化合物(C)は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0031】
塩基性化合物(C)の配合量は、硬化性樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜70質量部、好ましくは1〜60質量部、特に好ましくは2〜50質量部である。塩基性化合物(C)の配合量が0.1質量部よりも少ないと、硬化触媒としての効果が弱く硬化が非常に遅くなってしまう。一方、塩基性化合物(C)の配合量が70質量部よりも多くなると、貯蔵安定性が悪く経時で増粘したり、シーリング材組成物が黄色く変色したり、硬化物の色が経時で(特に熱暴露や紫外線照射によって)黄色く変化したりするため好ましくない。
【0032】
[老化防止剤(D)について]
本発明における老化防止剤(D)は、光(主に紫外線)や熱等によってシーリング材組成物が劣化するのを抑制するものである。
一般的に、硬化性樹脂(A)及び/又は硬化性樹脂(B)は光(主に紫外線)や熱等によって発生したラジカルが原因で劣化が進行する。そのため、老化防止剤(D)はそのラジカルをキャッチし劣化の進行を抑制するか、または劣化の過程で生成する過酸化物をキャッチし劣化の進行を抑制する。
【0033】
例えば、老化防止剤(D)は、ラジカル連鎖開始阻止剤として金属不活性化剤(ヒドラジド系、アミド系等)、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系等)、クエンチャー(有機ニッケル系等)、ラジカル捕捉剤としてHALS(ヒンダードアミン系等)、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、セミヒンダードフェノール系等)、過酸化物分解剤としてリン系酸化防止剤(ホスファイト系、ホスホナイト系等)、イオウ系酸化防止剤(チオエーテル系等)等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0034】
上記老化防止剤(D)の具体例としては旭電化工業社製のアデカスタブシリーズ;クラリアントジャパン社製のホスタノックスシリーズ、ホスタビンシリーズ、サンデュボアシリーズ、ホスタスタットシリーズ;三共ライフテック社製のサノールシリーズ;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のチヌビンシリーズ、イルガフォスシリーズ、イルガノックスシリーズ、キマソーブシリーズ等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない

【0035】
老化防止剤(D)の配合量は、上記硬化性樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜70質量部、好ましくは1〜60質量部、特に好ましくは2〜50質量部である。老化防止剤(D)の配合量が0.1質量部よりも少ないと、老化防止の効果が弱くシーリング材組成物の劣化を十分に抑制することが困難であり、70質量部より多くなると、貯蔵安定性が悪く経時で増粘したり、接着性が低下したり、シーリング材組成物が黄色く変色したり、硬化物の色が経時で(特に熱暴露や紫外線照射によって)黄色く変化したり、経済性に劣る等の不具合があるため好ましくない
【0036】
加水分解性ケイ素基含有硬化性樹脂の硬化触媒として最も一般的に使用されている有機スズ化合物は加水分解性ケイ素基を有する硬化性樹脂の硬化触媒としても作用するが、エステル結合を加水分解する触媒としても作用する。そのため、老化防止剤として一般的に使われているラジカル捕捉剤であるHALS(ヒンダードアミン系等)や、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、セミヒンダードフェノール系等)分子中に含まれるエステル結合が加水分解されてしまい、ラジカル捕捉剤としての効果が長続きしなくなるため、一般的に有機スズ触媒を使用することで耐候性が低下してしまう傾向がある。そのため、有機スズ系触媒の添加量はシーリング材組成物に対して、好ましくは1000ppm未満であり、さらに好ましくは500ppm以下であり、特に好ましくは200ppm以下である。有機スズ系触媒の添加量が1000ppm以上であると、硬化物が紫外線暴露されることで著しく劣化してしまうことが懸念される。
【0037】
本発明に係るシーリング材組成物中には、充填剤、可塑剤等を配合することができる。本発明に係るシーリング材組成物に配合できる上記充填剤としては、炭酸カルシウム系、各種処理炭酸カルシウム系、炭酸マグネシウム系、有機高分子系、クレー系、タルク系、シリカ系、フュームドシリカ系、ガラスバルーン系、プラスチックバルーン系、水酸化アルミニウム系、水酸化マグネシウム系等の充填剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
上記充填剤はシーリング材組成物のたれ防止、作業性向上の目的のみならず、耐候性の向上の目的で添加される。充填剤が添加されていないシーリング材組成物の場合、その内部にまで容易に光(特に紫外線)が入ってくるため、露光された場合に硬化物の表面のみならず、内部でも劣化が進行してしまう。しかし、充填剤を添加したシーリング材組成物の場合、充填剤を添加したことによる遮蔽効果によって、硬化物内部にまで光が入らず内部の劣化を抑えることができる。
【0039】
本発明に係るシーリング材組成物に配合できる上記可塑剤としては、特に限定はされないが、たとえば、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシル等の非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル等の脂肪族エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油;プロセスオイル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールとこれらポリエーテルポリオールの水酸基を
エステル基、エーテル基等に変換した誘導体等のポリエーテル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等の2塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤類;アクリル系可塑剤を始めとするビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体類等が挙げられる。
好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールとこれらポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基等に変換した誘導体等のポリエーテル類等のポリオキシアルキレン系重合体、フタル酸エステル類である。
【0040】
上記可塑剤は、シーリング材組成物の粘度を下げ作業性を向上させたり、硬化物のモジュラスを下げ、伸びを大きくできたり、多量の充填剤を配合できたりするため非常に有用である。
しかし、可塑剤添加によるモジュラス低下には限度があり、可塑剤を入れすぎることにより硬化スピードの低下や、ブリードアウトによる硬化物表面や被着体の汚染、硬化物物性の低下等の不具合が発生する。そのため、本発明で示したように、反応性基を持ち、なお且つその反応性基がジアルコキシシリル基であるような硬化性樹脂(B)をモジュラス調整剤として添加することで、上記不具合が発生し難くなるため好ましい。
【0041】
本発明に係るシーリング材組成物中には、充填剤、可塑剤以外に従来公知の任意の化合物乃至物質を配合することができる。たとえば、従来公知の硬化触媒、ビニルトリメトキシシラン,ビニルトリエトキシシラン,β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン等のシランカップリング剤、フェノール樹脂,石油樹脂,テルペン樹脂等の粘着付与剤、無水シリカ、アマイドワックス等の揺変剤、酸化カルシウム等の脱水剤、イソパラフィン等の希釈剤、水酸化アルミニウム,ハロゲン系難燃剤,リン系難燃剤,シリコーン系難燃剤等の難燃剤、シリコーンアルコキシオリゴマー,アクリルオリゴマー等の機能性オリゴマー、顔料、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケート等のシリケート化合物及びそのオリゴマー、チタネートカップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、アルミニウムカップリング剤、乾性油等を適宜配合することができる。
【0042】
本発明に係るシーリング材組成物は、水分の存在下で、加水分解性シリル基同士が縮重合することによって硬化するものである。したがって、1液型として使用される場合は、保管乃至搬送中は、空気(空気中の水分)と接触しないよう、気密に密封した状態で取り扱われる。そして、使用時には開封して任意の箇所に適用すれば、空気中の水分と接触して湿気硬化性シーリング材組成物が硬化するのである。あるいは、本発明に係るシーリング材組成物は、2液型としても使用することができる。この場合には、本発明に係る硬化性樹脂(A)は反応性(硬化性)が高いため保管乃至搬送中に硬化しないような工夫が必要である。そして使用時に、硬化性樹脂(A)等を含む主剤に、塩基性化合物(C)や他の触媒等を含む硬化剤を混合し任意の箇所に適用すれば、空気中の水分やシーリング材系内に含まれる水分と反応して湿気硬化性シーリング材組成物が硬化するのである。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(硬化性樹脂B−1の調整)
反応容器内で、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラ
ン(206.4g、1.0mol)を窒素雰囲気下50℃で撹拌しながら、アクリル酸メチル(172.2g、2.0mol)を1時間かけて滴下し、さらに、室温で5時間反応させた後、50℃で7日間反応させることで、分子内にメチルジメトキシシリル基及び第2級アミノ基を有する反応物SB−1を得た。
別の反応容器内に、旭硝子ウレタン社製のPMLS4012(ポリオキシプロピレンポリオール、数平均分子量10,000)を500g、旭硝子ウレタン社製のPMLS1005(ポリオキシプロピレンモノオール、数平均分子量5,500)を500g、イソホロンジイソシアネートを47.4g、及びジオクチルスズジバーサテートを0.10g仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で3時間反応させて、分子内にイソシアネート基を有するポリオキシアルキレン樹脂PB−1を得た。
その後、これに上記反応物SB−1を100.1g添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で1時間反応させることで、主鎖がポリオキシアルキレンであり分子内にメチルジメトキシシリル基を有する硬化性樹脂B−1を得た。得られた硬化性樹脂B−1をFT−IRで分析することにより、NCO基が消失していることを確認した。
【0044】
(硬化性樹脂Z−1の調整)
反応容器内で、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(222.4g、1.0mol)を窒素雰囲気下50℃で撹拌しながら、アクリル酸メチル(172.2g、2.0mol)を1時間かけて滴下し、さらに、室温で5時間反応させた後、50℃で7日間反応させることで、分子内にトリメトキシシリル基及び第2級アミノ基を有する反応物SZ−2を得た。
別の反応容器内に、旭硝子ウレタン社製のPMLS4012(ポリオキシプロピレンポリオール、数平均分子量10,000)を1000g、イソホロンジイソシアネートを47.2g、及びジオクチルスズジバーサテートを0.10g仕込み、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で3時間反応させて、分子内にイソシアネート基を有するポリオキシアルキレン樹脂PZ−2を得た。
その後、これに上記反応物SZ−2を102.1g添加し、窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、80℃で1時間反応させることで、主鎖がポリオキシアルキレンであり分子内にトリメトキシシリル基を有する硬化性樹脂Z−1を得た。得られた硬化性樹脂Z−1をFT−IRで分析することにより、NCO基が消失していることを確認した。
【0045】
(実施例1)
硬化性樹脂(A)として主鎖がポリオキシプロピレンであり、末端にメチルジメトキシシリル基型のα−シラン構造を有する「GENIOSIL STP−E30」(Wacker Chemie AG.製、メトキシ基等量から換算した分子量約16000、粘度約30000mPa・s/25℃(カタログ値))50質量部、硬化性樹脂(B)として末端のメチルジメトキシシリル基が−(CH−を介して主鎖のポリオキシプロピレンに結合した変成シリコーン樹脂「EXCESTER S2410」(旭硝子株式会社製)50質量部、アクトコールP−21(三井武田ケミカル社製、平均分子量2,000のポリプロピレングリコール)を50質量部、ディスパロン#6500(楠本化成社製、タレ防止剤)2.5質量部、サノールLS770(三共ライフテック社製、ヒンダードアミン系老化防止剤)1.0質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、ベンゾトリアゾール系老化防止剤)1.0質量部、コートサイド水和剤(日本エンバイロケミカルズ社製、防カビ剤)0.5質量部、白艶華CCR−B(白石工業社製、表面処理炭酸カルシウム)110質量部、NS400(日東粉化工業社製、重質炭酸カルシウム)62.5質量部をプラネタリーミキサーに投入し、減圧下にて100℃で2時間加熱脱水しながら混練し、室温まで冷却した後これに、シェルゾールTK(シェルケミカルズジャパン社製、イソパラフィン系希釈剤)5.0質量部、KBM1003(信越化学工業社製、ビニルトリメトキシシラン)3.0質量部、KBM602(信越化学工業社製、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン)3.0質量部、
KBM403(信越化学工業社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)1.0質量部を添加し、減圧下にて15分間混練して、シーリング材組成物を得た。シーリング材組成物は、速やかに密栓容器に充填し、その後タックフリータイムの測定、接着性試験(H型試験)、耐候性試験を行った。(詳しい試験内容に関しては後述してある。)
【0046】
(実施例2)
上記実施例1において、「GENIOSIL STP−E30」を30質量部、「EXCESTER S2410」を70質量部にした以外は同様にしてシーリング材組成物を配合し、該試験を行った。
【0047】
(実施例3)
上記実施例2において、「EXCESTER S2410」の代わりに硬化性樹脂B−1を使用した以外は同様にしてシーリング材組成物を配合し、該試験を行った。
【0048】
(実施例4)
上記実施例2において、KBM602の代わりに、KBM603(信越化学工業社製、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を使用した以外は同様にしてシーリング材組成物を配合し、該試験を行った。
【0049】
(実施例5)
上記実施例3において、KBM602の代わりに、KBM903(信越化学工業社製、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)を使用した以外は同様にしてシーリング材組成物を配合し、該試験を行った。
【0050】
(実施例6)
上記実施例2において、「GENIOSIL STP−E30」の代わりに、「GENIOSIL STP−E10」(Wacker Chemie AG.製、メトキシ基等量から換算した分子量約10000、粘度約10000mPa・s/25℃(カタログ値))を、KBM602の代わりにKBM903を使用した以外は同様にしてシーリング材組成物を配合し、該試験を行った。
【0051】
(実施例7)
上記実施例3において、KBM602の代わりに、オクチルアミンを使用した以外は同様にしてシーリング材組成物を配合し、該試験を行った。
【0052】
(実施例8)
上記実施例2において、KBM602の代わりに、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)を使用した以外は同様にしてシーリング材組成物を配合し、該試験を行った。
【0053】
(実施例9)
上記実施例2において、アクトコールP−21の代わりに、ジイソノニルフタレート(DINP)を使用した以外は同様にしてシーリング材組成物を配合し、該試験を行った。
【0054】
(比較例1)
上記実施例1において、「GENIOSIL STP−E30」を使用せず、「EXCESTER S2410」を50質量部から100質量部にした以外は同様にしてシーリング材組成物を配合し、該試験を行った。
【0055】
(比較例2)
上記比較例1において、加熱脱水し室温まで冷却した後に、他の添加剤と一緒に、SCAT−32A(三共有機合成社製、ブチルスズ系触媒)1.5質量部、STANNBL(三共有機合成社製、ブチルスズ系触媒)1.5質量部を添加した以外は同様にしてシーリング材組成物を配合し、該試験を行った。
【0056】
(比較例3)
上記比較例1において、「EXCESTER S2410」の代わりに、「GENIOSIL STP−E30」を使用した以外は同様にしてシーリング材組成物を配合し、該試験を行った。
【0057】
(比較例4)
上記比較例3において、KBM602の代わりにKBM603を使用した以外は同様にしてシーリング材組成物を配合し、該試験を行った。
【0058】
(比較例5)
上記実施例4において、「EXCESTER S2410」の代わりに、末端にトリメトキシシリル基を有する変成シリコーン樹脂「ES−G3440−ST」(旭硝子株式会社製)を使用した以外は同様にしてシーリング材組成物を配合し、該試験を行った。
【0059】
(比較例6)
上記比較例5において、「ES−G3440−ST」の代わりに、硬化性樹脂Z−1を使用した以外は同様にしてシーリング材組成物を配合し、該試験を行った。
【0060】
(比較例7)
上記比較例4において、「GENIOSIL STP−E30」の代わりに、「GENIOSIL STP−E10」を使用した以外は同様にしてシーリング材組成物を配合し、該試験を行った。
【0061】
(比較例8)
上記比較例7において、KBM603の代わりに、KBM602を使用した以外は同様にしてシーリング材組成物を配合し、該試験を行った。
【0062】
[タックフリータイムの測定]
23℃に調温したシーリング材組成物を約3mmの厚みに薄くのばし、23℃50%RH条件下で、表面を指触したときに、指が汚れなくなるまでの時間(タックフリータイム)を測定した。タックフリータイムが短い方が、硬化性が高いことを表す。
【0063】
[接着性試験]
JIS A 1439に準じてアルミニウム板を被着体に用いてH型試験体を作成し、養生後の引張り接着性試験を行い、50%モジュラス(伸び率が50%時の荷重)の測定を行った。
【0064】
[耐候性試験]
シーリング材組成物を、アルミニウム板(50×50×3mm)の表面に厚さ約5mmのシートを作成し、23℃50%RHにて7日間、その後40℃にて7日間養生した。その後メタルウェザーメーター試験機(ダイプラ・ウインテス社製、型番:KU−R5CI−A)で200時間の照射を行った。(メタルウェザーメーター試験機で100時間の照射は、サンシャインウェザーメーターで500〜1000時間照射に相当する。)
照射後、表面についてクラック発生の有無等の劣化状況を目視で観察して、耐候性試験を行った。
耐候性試験の評価基準
○:表面にクラック等の劣化が全く確認されない場合
△:表面に微細なクラック等の劣化が若干確認できる場合
×:表面にクラックが発生し、明らかな劣化が確認される場合
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
実施例1〜9と比較例1〜8の結果から、
1)分子内に上記一般式(1)で表されるジアルコキシシリル基を有する硬化性樹脂(A)と、
2)分子内に上記一般式(2)で表されるジアルコキシシリル基を有する硬化性樹脂(B)と、
3)塩基性化合物(C)と、
4)老化防止剤(D)を含有させてなるシーリング材組成物である実施例1〜9は、環境への負荷が懸念される重金属(スズ)を含む触媒を使用することなく、必要十分な硬化速度を有し、耐候性が良好で、実用可能なモジュラスを示すシーリング材組成物であることが分かる。
【0068】
具体的には、実施例と比較例1の結果より、本発明に係るシーリング材組成物は環境への負荷が懸念されるスズ触媒を使用することなく、必要十分な硬化速度を得ることができる。
実施例と比較例2の結果より、本発明に係るシーリング材組成物はスズ触媒を使用することなく、十分な硬化速度を維持しつつ、しかも、耐候性が良好である。
実施例と比較例3、4、7、8、の結果より、硬化性樹脂(A)にモジュラス調整剤として硬化性樹脂(B)を添加することにより、50%モジュラスが低く軟らかいシーリング材に適した硬化物を得ることができる。
実施例と比較例5、6の結果より、トリメトキシシリル基を持つ硬化性樹脂を添加しても、モジュラスを下げることはできないが、ジメトキシシリル基を持つ硬化性樹脂(B)を添加することでモジュラスを下げ、シーリング材に好適な物性を得ることができる。
以上のとおり、本願発明のシーリング材組成物は、タックフリータイムの測定、接着性試験、耐候性試験の結果、優れた性能を有することが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
環境負荷の低減が可能であるとともに、安全性を確保しつつ必要十分な硬化速度を有し、耐候性が良好で、実用可能なモジュラスを示すシーリング材組成物として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)分子内に下記一般式(1)で表されるジアルコキシシリル基を有する硬化性樹脂(A)を100質量部に対して、
2)分子内に下記一般式(2)で表されるジアルコキシシリル基を有する硬化性樹脂(B)を40〜400質量部、
3)塩基性化合物(C)を0.1〜70質量部、
4)老化防止剤(D)を0.1〜70質量部、
を含有させてなるシーリング材組成物。
−W−CH−SiR(OR ・・・式(1)
(但し、Wは−O−CO−NH−、−N(R)−CO−NH−、−S−CO−NH−から選択される基を表し、R、Rは炭素数1〜20個のアルキル基を、Rは水素、ハロゲン置換されていてもよい環状、線状又は分枝鎖状の炭素数1〜18のアルキルもしくはアルケニル基又は炭素数6〜18個のアリール基をそれぞれ示す。)
−X−SiR(OR ・・・式(2)
(但し、Xは炭素数2以上の炭化水素を、R、Rは炭素数1〜20個のアルキル基を、それぞれ示す。)
【請求項2】
硬化性樹脂(A)の主鎖が本質的にポリオキシアルキレン及び/又はポリ(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする、請求項1に記載のシーリング材組成物。
【請求項3】
硬化性樹脂(B)の主鎖が本質的にポリオキシアルキレン及び/又はポリ(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする、請求項1、2に記載のシーリング材組成物。
【請求項4】
塩基性化合物(C)がアミン化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシーリング材組成物。
【請求項5】
塩基性化合物(C)がその分子内にアミノ基と下記一般式(3)で表される加水分解性シリル基を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のシーリング材組成物。
−SiR3−n ・・・式(3)
(但し、Yはヒドロキシル基又はアルコキシル基等の加水分解性基を、Rは炭素数1〜20個のアルキル基を、nは0、1又は2を、それぞれ示す。)
【請求項6】
有機スズ系触媒が実質的に含まれない、または1000ppm未満であることを特徴とする請求項1〜5に記載のシーリング材組成物。
【請求項7】
さらに、充填剤、可塑剤を含有することを特徴とする請求項1〜6に記載のシーリング材組成物。

【公開番号】特開2010−100737(P2010−100737A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273688(P2008−273688)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】