説明

シーリング材

【課題】樹脂成分との親和性が低く比重の大きな無機バルーンを使用することなく、発泡型シーリング材の発泡後の塗膜と同程度の比重のシーリング材を提供する。
【解決手段】粒径80μm以下の樹脂製中空バルーンを粘度60Pa・s以上のPVCゾル塗料、またはアクリルゾル塗料中に20重量%以下で混入したシーリング材であり、5MPa以上の圧力で塗布し、樹脂製中空バルーンを圧縮して破壊させて塗膜内に空洞(気泡)を形成することによって、シーリング材の軽量化を達成する。塗布時に形成された焼付け前の空洞及び焼付け中に形成された空洞を破壊させないため、また、焼付け中に空洞(気泡)が塗膜の表面に出てこないようにするため、シーリング材の粘度は60Pa・s以上としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材に関し、特に、自動車用の鋼板の合わせ目に充填してシーリングするのに使用するシーリング材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の鋼板の合わせ目には水の浸入を阻止する目的で塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)系樹脂、アクリル系樹脂などのゾル塗料からなるシーリング材が塗布されている。シーリング材は、一般に電着塗装が終了した鋼板の合わせ目にシーラーガンで塗布され、次にシーラー炉を通過させるか、または、通過させた後に中塗り塗料・上塗り塗料を塗装し、加熱乾燥炉を通過する際にシーリング材を膨張硬化させて合わせ目をシーリングしている。
【0003】
しかし、従来のシーリング材は、比重が比較的大きく、軽量化が重要課題である自動車にとって好ましいものではなく、軽量化するために種々の方法が試みられている。
特許文献1(特開平3−212481号公報)には、熱膨張性マイクロバルーンを含む発泡型シーリング材が開示されている。また、特許文献2(特開平4−108570号公報)には、樹脂製中空バルーンを配合することが開示されている。更に、特許文献3(特開平2−238082号公報)及び特許文献4(特開平3−20384号公報)には、シラスバルーンやガラスバルーンの無機バルーンを配合することが開示されている。
【0004】
熱膨張性マイクロバルーンを添加した発泡型シーリング材は、焼付け後の体積増加を予測して塗布しなければならないが、膨張量の予測が難しく、適切な塗布量を定めることが困難であった。また、シーリングが完全に行われるようにするため、安全を見込んで最低必要量に余裕をもたせて多目に塗布する傾向があるため、シーリング材の使用量を削減するというメリットも損なわれる。更に、発泡時の体積増加によって表面の平滑性が失われ、中塗り・上塗りの外観を綺麗に仕上げることが困難であった。
【0005】
樹脂製中空バルーンを添加したシーリング材は、軽量化効果が大きいが、樹脂製中空バルーンの耐圧性が低いため塗布圧を高圧とすると、樹脂製中空バルーンが破壊されてしまい、塗布後の塗膜の比重が大きくなり、軽量化が達成できない。また、樹脂製中空バルーンの粒径が大きいと、シーリング材表面の平滑性が失われ、中塗り・上塗りの外観を綺麗に仕上げることが困難である。
【0006】
無機バルーンを添加したシーリング材は、シーリング材の軽量化のために添加するバルーン素材の比重が熱膨張性マイクロバルーンや樹脂製中空バルーンに比較して大きく、軽量化に限界があった。
【0007】
更に樹脂中のガラスバルーンの表面状態は、通常のガラスと同様に平滑で樹脂との付着力が弱く、シーリング材に引張応力が作用すると、ガラスバルーン表面と樹脂との界面において剥離が生じ、シーリング材の強度が低下して亀裂が生じるなどシーリングされた箇所の防錆・防水能力を低下させ、塗膜欠陥や塗膜外観の劣化を招来することがある。
特許文献5(特開平11−092747号公報)には、シーリング材の強度の低下を防止するため、シランカップリング剤で表面処理したガラスバルーンを使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−212481号公報
【特許文献2】特開平4−108570号公報
【特許文献3】特開平2−238082号公報
【特許文献4】特開平3−20384号公報
【特許文献5】特開平11−092747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
自動車の軽量化のために、樹脂成分との親和性が低く真比重の大きな無機バルーンを使用することなく、また、熱膨張性マイクロバルーン等の発泡型シーリング材のように塗布量の安全を見込む必要がなく、熱膨張性マイクロバルーン等の発泡型シーリング材の発泡後の塗膜や樹脂製中空バルーンを添加したシーリング材の塗膜と同程度の比重が得られ、塗膜の外観を綺麗に仕上げることができ、塗布圧によって樹脂製中空バルーンが破壊されても塗布後の塗膜の比重が大きくならないシーリング材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、またはポリ塩化ビニリデン樹脂のいずれかの樹脂製中空バルーンを粘度60Pa・s以上のPVCゾル塗料、またはアクリルゾル塗料中に20重量%以下で混入したシーリング材とすることによって前記の課題を解決したものである。
更に、アクリロニトリル樹脂、またはポリ塩化ビニリデン樹脂のいずれかの樹脂製中空バルーンの粒径を80μm以下とすることによって、塗膜が綺麗に仕上がるようにしたものである。
【0011】
本発明のシーリング材をエアレスポンプ、ギアポンプ、ブースターポンプ等の塗装機を用いて中圧若しくは高圧で吐出することにより樹脂製中空バルーンを圧縮して破壊させる。その結果、樹脂製中空バルーンが圧縮により破壊された部分が塗膜中に空洞を形成し、焼付前の段階において樹脂製中空バルーンと同等の比重となり、塗膜の軽量化を達成することができる。
【0012】
シーリング材の焼付け前、及び、焼付け中に、塗膜中に生成された空洞(気泡)を破壊させないため、また、焼付け中に空洞(気泡)が塗膜の表面に出てこないようにするため、シーリング材の粘度は60Pa・s以上とする必要がある。また、粒径80μmを超える樹脂製中空バルーンを使用した場合、塗膜に形成された空洞が塗膜表面に現れた時に塗膜仕上がり面が平滑でなくなるため、好ましくない。
【0013】
本発明のシーリング材に配合することができる配合物に関しては、特に制限はなく、従来公知のシーリング材における配合が使用できる。すなわち、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン系樹脂、アクリル樹脂と、ジオクチルフタレ−ト等の可塑剤、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、マイカ等の他の充填材、酸化チタン・カーボンブラック等の着色剤、分散剤・劣化防止剤・紫外線吸収剤等の各種添加剤などである。当該シーリング剤の一例は、ポリ塩化ビニル30〜35%(重量基準、以下同じ)、炭酸カルシウム20〜25%、可塑剤30〜35%、接着付与剤1〜2%により構成される。
【0014】
本発明のシーリング材の製造は、従来公知の製造方法が適用できる。公知のプラネタリーミキサー、ボールミル、ロールミル、グレンミル、アトライター等の分散・混合機により、可塑剤によってゾル化された樹脂中に樹脂製中空バルーン等の配合物を混合分散し、任意の粘度、好ましくは60Pa・s以上に調整する。
【0015】
本発明のシーリング材は、従来公知の方法にて自動車のあらゆるシーリングを必要とする箇所に塗装できる。専用のシーラーガンにより必要量塗装された後、加熱によりシーリングされる。
【0016】
本発明のシーリング材は、従来のシーリング材が使用されていた自動車のあらゆる箇所にそのまま使用が可能である。一例としては、ドアオープニング部、ルーフドリップ部、フロントピラーアッパーとロアー部との合わせ目、センターピラーとサイドシルとの合わせ目、リアフェンダーとリアコーナーフェンダーとの合わせ目などである。
【発明の効果】
【0017】
焼付前にシーリング材が空洞(気泡)を含有していることから、熱膨張性マイクロバルーンと比較して焼付時の体積変化は極く僅かであり、膨張量の予測の範囲内に抑制することが可能であり、塗膜表面を綺麗に仕上げることができる。
また、粒径80μm以下の中程度の粒径の樹脂製中空バルーンを使用することで気泡サイズを制御し、あわせてシーリング材の粘度を60Pa・s以上として気泡が表面に浮き上がることを抑制しているので塗膜の外観を綺麗に仕上げることが容易である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施例と比較例を以下に示す。
実施例及び比較例
アクリロニトリル系樹脂製中空バルーンの粒径、添加量、粘度を変えてアクリルゾル塗料と混合してシーリング材を調製した。このシーリング材を圧力5MPaで塗布し、シーリング材の比重、塗膜比重を測定し、塗装外観を観察した結果を表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
表1に示す結果から、樹脂製中空バルーンの粒径は80μm以下とするのが軽量化及び塗膜外観状態の観察結果からは好ましく、配合割合は、塗料に対して20重量%以下とするのが好ましい。また、シーリング材の粘度が60Pa・sより低いと、仕上がりが綺麗にできない。
塗布圧力が低い場合は、塗装時において樹脂製中空バルーンの圧縮による破壊の確率が低下して塗膜内に形成される空洞の量が少なく、軽量化が達成できなかった。特に塗布圧力が5MPaより低いと樹脂製中空バルーンの破壊される割合が低下する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度60Pa・s以上のPVCゾル、アクリルゾル塗料中にアクリル樹脂、アクリルニトリル樹脂、若しくはポリ塩化ビニリデン樹脂のいずれかの樹脂製中空バルーンを20重量%以下で配合したシーリング材。
【請求項2】
請求項1において、樹脂製中空バルーンの粒径が80μm以下であるシーリング材。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかのシーリング材の樹脂製中空バルーンを塗布時に圧縮して破壊させ、塗膜内に空洞を形成するシーリング材の塗布方法。

【公開番号】特開2010−280789(P2010−280789A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134242(P2009−134242)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000232542)日本特殊塗料株式会社 (35)
【Fターム(参考)】