説明

シールドカバー

【課題】共振を低減することを可能とするシールドカバーを提供することである。
【解決手段】シールドカバー70は、平面部72aを有し、筐体11aに取り付けられるカバー本体部72と、筐体14aに締結される締結端部74aからカバー本体部72の外形に沿って延びた先に設けられる平面部固定端部74cを有する腕部74と、を備え、平面部固定端部74cは、平面部72aの面に対向して接合固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドカバーに係り、特に、シールド線部の先端側に設けられるシールドカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車や電気自動車には、電動機、発電機として機能する回転電機が設けられている。そして、電動機、発電機に接続される電力線とインバータに接続される電力線を接続する場合において、電動機、発電機を収納する筐体の上に接続部(端子台)を設けて、当該接続部において上記接続を行っている。また、インバータに接続される電力線には、インバータノイズが伝わることがある。そして、当該ノイズを筐体側に逃がすために、接続部側においてシールドシェルが設けられている。さらに、当該ノイズを遮蔽するために、シールドカバーが接続部を覆うように筐体上に設けられている。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、金属製のケースに収容された機器側の端子に接続される機器用コネクタが開示されている。ここでは、機器側の端子にボルト締めにより接続可能な第1端子を保持する第1ハウジングと、電線の端末部に固着された第2端子を保持するとともに第1ハウジングに嵌合可能とされた第2ハウジングとを備えることが開示されている。そして、第1ハウジングは、第2ハウジングとの嵌合部をケースの外側に突出させた姿勢でケースに取り付け可能とされ、第1端子と第2端子とのうち互いの接続部は両ハウジングの嵌合方向に延出する形態をなし、第1ハウジングと第2ハウジングとが嵌合したときには、その嵌合部内において両端子の接続部は重なって配されるとともに、両端子の接続部には同両接続部を互いに固定するためのボルトが挿通されるボルト挿通孔がそれぞれ形成されていることが開示されている。さらに、両ハウジングの嵌合部には、両接続部のボルト締め作業のための作業孔が開口されていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−032500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動機、発電機等の作動に伴って振動が生じることがある。このような電動機、発電機等から伝わる振動に上記シールドカバーが共振すると、騒音等が生じる可能性があるため、共振を低減することが求められる。
【0006】
本発明の目的は、共振を低減することを可能とするシールドカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシールドカバーは、平面部を有し、取り付け対象部に取り付けられるカバー本体部と、前記取り付け対象部に締結される締結端部から前記カバー本体部の外形に沿って延びた先に設けられる平面部固定端部を有する腕部と、を備え、前記平面部固定端部は、前記平面部の面に対向して接合固定されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るシールドカバーにおいて、前記カバー本体部は、前記腕部よりも剛性が低いことが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るシールドカバーにおいて、前記腕部は、リブを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、一方側の締結端部が取り付け対象部に締結されることで他方側の平面部固定端部がカバー本体部の平面部を押圧する。これにより、カバー本体部の固有振動数を変えることができるため、シールドカバーのカバー本体部が共振してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施の形態において、ハイブリッド車の概略構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、接続部の周辺の拡大模式図である。
【図3】図2に示されるシールドカバーを底面側から見た様子を示す図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、接続部を覆うようにシールドカバーを取り付けた様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。また、以下では、全ての図面において、同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。また、以下では、車両はハイブリッド車であるとして説明するが、電気自動車であってもよい。
【0013】
図1は、ハイブリッド車10の概略構成を示す図である。ハイブリッド車10は、電動機11と、エンジン12と、バッテリ13と、発電機14と、インバータ15と、駆動輪16と、駆動軸17と、動力分配機構18と、減速機19とを備える。
【0014】
電動機11は、バッテリ13に蓄えられた電力及び発電機14が発電した電力の少なくともいずれか一方によって駆動される。電動機11の駆動力は、減速機19を介して駆動軸17に伝達される。これにより、電動機11は、エンジン12をアシストしてハイブリッド車10を走行させたり、自己の駆動力のみによってハイブリッド車10を走行させたりする。また、ハイブリッド車10の回生制動時において、電動機11は、駆動輪16の回転力によって駆動されることにより、発電機としても動作する。このとき、電動機11によって発電された回生電力は、インバータ15を介してバッテリ13に充電される。
【0015】
エンジン12は、ハイブリッド車10を駆動させる内燃機関である。また、エンジン12は、発電機14を駆動させる機能も有する。エンジン12は、燃料の燃焼エネルギによって運動エネルギを出力するように構成される。
【0016】
バッテリ13は、インバータ15を介して電動機11及び発電機14に接続される蓄電装置である。バッテリ13は、例えば、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、及びリチウムイオン電池等の二次電池が使用される。バッテリ13には、効率的な使用、劣化防止等の観点から、所定の充電率を上下限値とするSOC(State Of Charge:充電率)管理幅が設定されている。なお、バッテリ13のSOC制御は、図示しない制御装置によって、バッテリ13の過充電或いは過放電が発生しないように、電動機11、発電機14等の動作を調整することにより行われる。
【0017】
発電機14は、エンジン始動要求時において、エンジン12を始動するための始動機として用いられる。このとき、発電機14は、インバータ15を介してバッテリ13からの電力供給を受けて電動機として駆動し、エンジン12をクランキングして始動する。さらに、エンジン12の始動後において、発電機14は、動力分配機構18を介して伝達されたエンジン出力によって回転されて発電する。
【0018】
インバータ15は、バッテリ13と電動機11及び発電機14との間で双方向の電力変換を行うインバータ装置である。例えば、インバータ15は、バッテリ13に充電された直流電力を交流電力に変換して電動機11又は発電機14に充電することができる。また、インバータ15は、電動機11又は発電機14によって回生発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ13に充電することもできる。
【0019】
駆動輪16は、ハイブリッド車10が走行する際に回転する車輪である。駆動軸17は、駆動輪16と減速機19に接続された車軸である。動力分配機構18は、電動機11と、エンジン12と、発電機14とに結合されて、これらの間で動力を分配する機構であり、例えば、エンジン12が発生する駆動力を駆動輪16の駆動分と発電機14の発電分とに分配する機能を有する。また、減速機19は、動力分配機構18によって分配された動力を減速し、駆動軸17を介して駆動輪16に伝達する。
【0020】
ここで、インバータ15と電動機11及び発電機14とは、電力線によって接続されている。電動機11は、筐体11aの内部に収納されている。また、発電機14は、筐体14aの内部に収納されている。このように、電動機11と発電機14とはそれぞれ別の筐体11a,14aに収納されて、その後に筐体11aと筐体14aとを隣接させ、位置合わせを行って一体化させている。
【0021】
そして、インバータ15と電動機11とを接続するために、筐体11aの上に設けられる接続部50において、インバータ15に接続されるシールド線部30と、電動機11に接続される電力線21とを接続している。また、インバータ15と発電機14とを接続するために、筐体14aの上に設けられる接続部51において、インバータ15に接続されるシールド線部31と、発電機14に接続される電力線24とを接続している。なお、接続部51におけるシールド線部31と電力線24と接続は、接続部50におけるシールド線部30と電力線21との接続と同様の接続構造であるため、以下では、接続部50におけるシールド線部30と電力線21との接続について説明し、接続部51におけるシールド線部31と電力線24との接続についての説明は省略する。
【0022】
図2は、接続部50の周辺の拡大模式図であり、説明を分かりやすくするために、接続部50と、シールドカバー70とが分離された様子が示されている。図3は、図2に示されるシールドカバー70を底面側から見た様子を示す模式図である。図4は、接続部50を覆うようにシールドカバー70を取り付けた様子を示す模式図である。ここで、ハイブリッド車10において、広い車内空間を確保するために筐体11a等の配置等のスペースが狭くなっている。このため、例えば、シールドカバー70が筐体11a,14aに跨って設けられ、筐体14a側のみで締結固定されて組み付けられる等といった対応が施されている。図2に示されるように、筐体11aの上では、接続部50において、インバータ15に接続されるシールド線部30と、電動機11に接続される電力線21とが接続されている。ここで、シールド線部30は、電動機11のU相、V相、W相に対応するそれぞれの電力線を網目状のシールド部材によって包んだ電力線部であり、その先端側には、シールドシェル60が配置されている。ここで、シールド線部30の先端側とは、インバータ15側を基端側としてシールド線部30を延伸させた先端部分の側(接続部50側)を示している。そして、シールド線部30のうちシールドシェル60よりもさらに先端側には接続部50が設けられている。
【0023】
シールドシェル60は、本体部62と、腕部64とを含む。本体部62は、シールド線部30の外形に沿った湾曲形状を有し、シールド線部30に跨るように設けられる部分である。腕部64は、本体部62から接続部50とは反対側に向かって延伸し、筐体11aに対し、締結部材66によって締結される部分である。これにより、インバータ15の動作時に発生したノイズがシールド線部30に伝わった場合であってもシールドシェル60を介して当該ノイズが筐体11aに対して逃がされ、電動機11等をノイズから保護することができる。
【0024】
接続部50は、本体部52と、筒部54とを含む。本体部52は、筐体11aの平面に沿った板形状を有し、さらに中央部に貫通孔を有する部分であり、締結部材55によって筐体11aに締結される。筒部54は、本体部52の中央部の貫通孔54aから突出するように配置される部分であり、筒部54の貫通孔54aからは、インバータ15に接続されるシールド線部30と、電動機11に接続される電力線21との接続箇所を視認することができる。
【0025】
シールドカバー70は、接続部50の筒部54を覆うように配置され、シールドシェル60を圧接固定する部材である。シールドカバー70は、カバー本体部72と、腕部74とを含む。
【0026】
カバー本体部72は、接続部50の筒部54の外形に沿った凹形状を有する部材である。カバー本体部72は、平面部72aと、側面部72b,72c,72dと、締結部72eとを備える。カバー本体部72は、適当な強度を有する金属を用いて構成される。例えば、薄い鉄板をプレス加工して成形される。
【0027】
平面部72aは、筒部54の孔面積よりも十分大きい面積を有する平板部である。また、側面部72b〜72dは、平面部72aの各端部に立設される部分である。シールドカバー70は、底面側が開口しており、底面側から見た側面部72b〜72dを見た場合には略コの字形状に側面部72b〜72dが立設されている。そして、平面部72aの各端部のうち側面部72b〜72dが立設していない側には開口72gが形成される。また、平面部72aと側面部72b〜72dによって形成され、凹形状からなる内部空間72hは、シールドカバー70が組み付けられる際に、筒部54の全体を覆うような広い空間である。また、締結部72eは、側面部72bの下部から突出して設けられる部分であり、図示しない締結部材を通すための締結用孔72fが形成されている。そして、当該締結部材が締結用孔72fを通って締結固定されることでカバー本体部72が筐体11aに取り付けられる。
【0028】
腕部74は、締結端部74aと、本体部74bと、平面部固定端部74cと、リブ部74dを有する。腕部74は、カバー本体部72よりも剛性の高い金属を用いて構成される。例えば、カバー本体部72を形成される際に用いられる鉄板よりも厚い鉄板をプレス加工して成形される。
【0029】
締結端部74aは、図示しない締結部材を通すための締結用孔74eが設けられる部分である。そして、当該締結部材が締結用孔74eを通って締結固定されることで、腕部74が筐体14aに取り付けられる。また、本体部74bは、締結端部74aから側面部72bの下部の中心部に向かって延びた後で側面部72bに沿って上部に向かってさらに延びている部分である。平面部固定端部74cは、本体部74bから平面部72aに沿って平面部72aの中心部に向かって延びている部分であり、その形状は先太りである。また、平面部固定端部74cは平面部72aと対向する平面部74fを有しており、平面部74fは、腕部74が取り付けられた際に平面部72aと接合する。リブ部74dは、締結端部74a、本体部74b及び平面部固定端部74cの各両端部を折り曲げて形成されるリブである。
【0030】
上記構成のシールドカバー70の作用について説明する。
【0031】
上述したように、シールドカバー70では、腕部74が締結部材によって固定されたときに、平面部固定端部74cの押圧力によってカバー本体部72の平面部72aが押さえられる。これにより、カバー本体部72の固有振動数を変化させることができ、カバー本体部72が電動機11の作動によって発生した振動と共振してしまうことを低減することができる。
【0032】
また、シールドカバー70では、腕部74の剛性は、カバー本体部72の剛性よりも低い。このため、腕部74が固定され平面部固定端部74cが平面部72aを押し付ける際にカバー本体部72が変形する。当該変形により、締結部72eのみによってカバー本体部72を固定した際に、カバー本体部72と筐体11aとの間で生じる組み付け公差を柔軟に吸収することができる。
【0033】
また、腕部74は、リブ部74dを設けることで剛性を高めている。このため、リブ部74dの大きさ等を調整して剛性を変えることで、カバー本体部72の固有振動数を調整することができる。これにより、カバー本体部72が、電動機11の作動によって発生した振動と共振することを低減することができる。また、腕部74の剛性を高めることで、腕部74の平面部72aをより好適に押し付けることが可能であり、これにより、上記組み付け公差をより好適に吸収することができる。
【符号の説明】
【0034】
10 ハイブリッド車、11 電動機、11a,14a 筐体、12 エンジン、13バッテリ、14 発電機、14a 筐体、15 インバータ、16 駆動輪、17 駆動軸、18 動力分配機構、19 減速機、21,24 電力線、30,31 シールド線部、50,51 接続部、52 本体部、54 筒部、54a 貫通孔、55 締結部材、60 シールドシェル、62 本体部、64 腕部、66 締結部材、70 シールドカバー、72 カバー本体部、72a 平面部、72b,72c,72d 側面部、72e 締結部、72f 締結用孔、72g 開口、72h 内部空間、74 腕部、74a 締結端部、74b 本体部、74c 平面部固定端部、74d リブ部、74e 締結用孔、74f 平面部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面部を有し、取り付け対象部に取り付けられるカバー本体部と、
前記取り付け対象部に締結される締結端部から前記カバー本体部の外形に沿って延びた先に設けられる平面部固定端部を有する腕部と、
を備え、
前記平面部固定端部は、前記平面部の面に対向して接合固定されることを特徴とするシールドカバー。
【請求項2】
請求項1に記載のシールドカバーにおいて、
前記カバー本体部は、前記腕部よりも剛性が低いことを特徴とするシールドカバー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシールドカバーにおいて、
前記腕部は、リブを有することを特徴とするシールドカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−69828(P2013−69828A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206867(P2011−206867)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】