説明

シールドケース

【課題】内部に半田ペーストが侵入することを防止しつつ基板に対して強固に半田接続可能なシールドケースを提供すること。
【解決手段】コネクタを嵌合するための嵌合部を覆う上ケースと下ケースの2つのシールド部材からなり、前記嵌合部の側面部分において前記上ケースと下ケースを接合し、その接合部分が基板への固定時に半田付けされる部分となるシールドケースにおいて、前記シールド部材の下ケースは、前記嵌合部に面した内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に半田付けして用いられるレセプタクルを構成するシールドケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
HDMI規格に準拠した端子等のようにコネクタとレセプタクルの嵌合によって電気的接続が行われる場合、レセプタクル側は基板等に固定される必要がある。このとき、基板に固定する方法として半田付けが利用されることがある。半田付けは基板上に形成されたパターンとレセプタクル内の導電端子とを電気的に接続する目的で行われるが、同時にレセプタクルを構成するシールドケースの一部を基板に対して半田付けすることでレセプタクルを基板に固定するという技術が従来から採用されてきた。
【0003】
図1に示すのは、シールドケース10の構成要素である上ケース11及び下ケース12と、接続される基板13を表した斜視図である。この図1の例は、2ピースからなるシールドケース10の例を示している。11は、上ケースであり、コネクタを嵌合するための嵌合部を形成する上側半分の嵌合凹部14を板材を折り曲げて形成し、また、両方の側面部分に水平に迫り出した側板部15を形成してある。この側板部15には差込溝18が形成してあり、また、側板部15の端部はさらに下方へ折り曲げられてその先端には基板13へ差し込まれる脚部16が形成してある。また上ケース11の後端側にも基板13へ差し込まれる脚部17が形成してある。12は、下ケースであり、コネクタを嵌合するための嵌合部を形成する下側半分の嵌合凹部19を板材を折り曲げて形成し、また、両方の側面部分に水平に迫り出した側板部20を形成してある。この側板部20には、一部を切り起こした差込片21が形成してある。また、嵌合部の破断面に面した部分が折返し部22となっている。
【0004】
前記上ケース11と下ケース12を接合する際には、それぞれの側板部15及び側板部20を重ね合わせて接合を行う。この際、前記差込溝18に差込片21を差し込んで側板部15からはみ出した部分を潰し加工(プレス)によって潰して固着させる。また、図1上では折返し部22が既に折返した状態で記載してあるが、実際には上ケース11と下ケース12を合わせた状態において折返しを行って接合を強固にする。このような接合によりシールドケース10が形成される。なお、詳細は省略するが、当然ながらシールドケース10の内部にはレセプタクルとして機能するためのコンタクト部等が形成される。完成したシールドケース10は、シールドケース10の脚部16、17をそれぞれ挿入溝23、24に差し込んで半田付けを行うことで固定される。基板13には、予めリフロー半田付け工程用の半田ペースト25が塗付してある。半田ペースト25は、挿入溝23、24の部分、及び、コンタクト部と基板の電気的接続箇所のみならず、基板13への接続強度を上げるために側板部20の下面が基板13に接する箇所にも塗付する。
【0005】
このようなシールドケースに関する発明として、例えば、特許文献1、2が既に提案されている。特許文献1に記載のシェル付コネクタは、絶縁性のハウジングと、該ハウジングに取り付けられたコンタクトと、前記ハウジングの外面を覆うように前記ハウジングに取り付けられた金属製のシェルとを具備し、該シェルが回路基板に半田接続される基板接続部を有するシェル付コネクタであって、前記シェルの外面には良半田付け性層が形成され、前記シェルの内面には黒色のめっき層が形成されていることを特徴としており、これにより、シェルの内面には黒色のめっき層が形成されているので、製品全体に黒色が施されている場合に色が一致し、外観上好適で顧客の要求する外観を満足させることを可能にしている。
特許文献2に記載のコネクタは、コネクタのシールド機能は維持しながら、そのシールドにかかるコストを削減することを目的としたものであり、第1シールドフレームと第2シールドフレームとの間で、施すメッキを異ならせ、シールドフレームのメッキ加工費の低減化を図る例が提案されている。
【特許文献1】特開2010−92786号公報
【特許文献2】特開2008−41419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1に示したシールドケース10はあくまで一例であるが、基板にシールドケース10を落とし込むスペースを作って周辺部で固定するミッドマウントタイプの固定方法を採用する場合には、両側面部分にシールドケース10の接合部を設けて、その接合部を基板に半田付けするという手法が一般的である。図5に示すのは、基板13に対して半田付けを行った後のシールドケース10を表した斜視図である。基板13に予め塗付してあった半田ペースト25は、基板13上の回路パターンとコンタクトとの電気的接続の役割の他に、リフロー加熱工程時に溶けて基板13とシールドケース10を固定する役割を果たすことになる。ここで、シールドケース10を構成する上ケース11及び下ケース12は、半田に濡れやすい素材、例えば錫などで表面全てにメッキが施されている。これにより、基板13と接する側板部20、基板13に差し込まれた脚部16、17に対して、加熱により溶けた半田ペースト25が滑らかに馴染み、さらに、側板部15や折返し部22の上部にも溶けた半田ペースト25が上っていって付着するため、基板13とシールドケース10の固定がより強固になるという効果がある。なお、半田に濡れやすい素材としては、例えば、錫、金、銀、銅などが挙げられる。
【0007】
ここで、上ケース11の側板部15と下ケース12の側板部20を合わせて接合しているため、図3に示すように、2つの部材の合わせ面が外部に露出する部分が生じることがある。この合わせ面の部分についても半田に濡れやすい素材でメッキが施されているため、溶けた半田ペースト25が合わせ面部分からシールドケース10の内部に侵入してしまうという問題が生じる。これは、図6に示すように、板材を折り曲げて形成した上ケース11の側板部15と下ケース12の側板部20の合わせ面においては、その隙間が徐々に細くなっているため、半田に濡れやすい素材であることに加えて毛細管現象も相まって溶けた半田ペースト25が合わせ面の端部(破断面)から奥まで流れてしまうことによって生じる。
【0008】
シールドケース10の内部に侵入した半田ペースト25が微量であるならば相手側のコネクタ26の挿入に支障が生じることはないが、シールドケース10の内部に侵入した半田ペースト25が多いと、図6に示すように、コネクタ26の挿入幅よりも半田ペースト25がはみ出すことがある。この状態でコネクタ26を挿入しようとすると、強嵌合となって挿抜しづらくなったり、或いは、挿入不可となってしまったりするという問題があった。
【0009】
この問題を解消するために、基板に塗付する半田ペースト25の量を少なくしてしまうと基板13への固定強度が低下してしまい、コネクタ26の挿抜時のこじり動作によって損傷して固定が剥がれてしまうという別の問題が生じる。また、半田に濡れにくい素材でシールドケース10を形成すれば嵌合部内部への半田ペースト25の侵入は低減可能であると思われるが、半田ペースト25の付着が悪くなるため基板13に対するシールドケース10の固定強度も低下するという問題があり、こちらもこじり動作による損傷という問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、内部に半田ペーストが侵入することを防止しつつ基板に対して強固に半田接続可能なシールドケースを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるシールドケースは、コネクタを嵌合するための嵌合部を覆うシールド部材からなり、このシールド部材の接合部分が基板への固定時に半田付けされる部分となるシールドケースにおいて、前記シールド部材は、前記嵌合部に面した内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
前記シールド部材は、半田に濡れにくい金属素材の板材の外側面に半田に濡れやすい金属素材をメッキ処理で付着させることによって、内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるようにするか、若しくは、半田に濡れやすい金属素材の板材の内側面に半田に濡れやすい金属素材をメッキ処理で付着させることによって、内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるようにすることで、接合部分の合わせ面において半田に濡れやすい素材と半田に濡れにくい素材が相対している状態を実現する。さらに、シールド部材の破断面も半田に濡れにくい素材となるようにすることが好ましい。
【0013】
また、本発明によるシールドケースは、コネクタを嵌合するための嵌合部を覆う上ケースと下ケースの2つのシールド部材からなり、前記嵌合部の側面部分において前記上ケースと下ケースを接合し、その接合部分が基板への固定時に半田付けされる部分となるシールドケースにおいて、前記シールド部材の下ケースは、前記嵌合部に面した内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるようにしたことを特徴とするものである。
【0014】
前記シールド部材を構成する上ケースと下ケースのうち一方は、半田に濡れにくい金属素材の板材の外側面に半田に濡れやすい金属素材をメッキ処理で付着させることによって、内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるようにするか、若しくは、半田に濡れやすい金属素材の板材の内側面に半田に濡れやすい金属素材をメッキ処理で付着させることによって、内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるようにする。さらに、前記シールド部材を構成する上ケースと下ケースのうち一方は、板材の破断面も半田に濡れにくい素材となるようにすることが好ましい。
【0015】
さらに、前記シールド部材を構成する上ケースと下ケースのうち他方は、全面が半田に濡れやすい素材となるようにし、基板に差し込むための脚部を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のシールドケースによれば、シールド部材を前記嵌合部に面した内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるようにすることで、接合部分の合わせ面において半田に濡れやすい素材と半田に濡れにくい素材が相対している状態を実現し、これにより、溶けた半田がシールドケース内部に入り込むことを防止している。
【0017】
また、シールド部材の破断面も半田に濡れにくい素材となるようにすることで、溶けた半田がシールドケース内部に上がることを防止する効果が高まる。
【0018】
また、本発明のシールドケースによれば、コネクタを嵌合するための嵌合部を覆う上ケースと下ケースの2つのシールド部材からなり、前記嵌合部の側面部分において前記上ケースと下ケースを接合し、その接合部分が基板への固定時に半田付けされる部分となるシールドケースにおいて、前記シールド部材の下ケースは、前記嵌合部に面した内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるようにしたので、上ケースと下ケースの接合部分の合わせ面において半田に濡れやすい素材と半田に濡れにくい素材が相対している状態を実現し、これにより、溶けた半田がシールドケース内部に入り込むことを防止している。
【0019】
また、破断面も半田に濡れにくい素材となるようにすることで、溶けた半田がシールドケース内部に上がることを防止する効果が高まる。
【0020】
さらに、前記シールド部材を構成する上ケースと下ケースのうち他方は、全面が半田に濡れやすい素材となるようにし、基板に差し込むための脚部を形成するようにしたので、基板へ接続するための脚部を有した他方側のシールド部材は半田に濡れやすい素材にすることで基板への接続を強固なものとでき、しかし、一方のシールド部材との接合部分の合わせ面において半田に濡れやすい素材と半田に濡れにくい素材が相対している状態を実現し、これにより、溶けた半田がシールドケース内部に入り込むことを防止している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】シールドケース10の構成要素である上ケース11及び下ケース12と、接続される基板13を表した斜視図である。
【図2】半田に濡れにくいニッケル板材の一方の面にだけ錫メッキを施す処理を行った後で、折り曲げ加工により形成した下ケース12の正面図である。
【図3】組み立て後のシールドケース10において、上ケース11と下ケース12の2つの部材の合わせ面が外部に露出する部分を表した斜視図である。
【図4】従来品と本発明品において半田上がり試験を行った際の結果を示した図である。
【図5】基板13に対して半田付けを行った後のシールドケース10を表した斜視図である。
【図6】溶けた半田ペースト25が合わせ面部分からシールドケース10の内部に侵入してしまった状態を表した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明によるシールドケースは、コネクタを嵌合するための嵌合部を覆う上ケースと下ケースの2つのシールド部材からなり、前記嵌合部の側面部分において前記上ケースと下ケースを接合し、その接合部分が基板への固定時に半田付けされる部分となるシールドケースにおいて、前記シールド部材の下ケースは、半田に濡れにくい金属素材の板材の外側面に半田に濡れやすい金属素材をメッキ処理で付着させることによって、内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるようにし、さらに、前記シールド部材の上ケースは、全面が半田に濡れやすい素材となるようにし、基板に差し込むための脚部を形成するようにしたことを特徴とするものである。以下、詳細に説明を行う。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すのは、シールドケース10の構成要素である上ケース11及び下ケース12と、接続される基板13を表した斜視図である。この図1の例は、2ピースからなるシールドケース10の例を示している。11は、上ケースであり、コネクタを嵌合するための嵌合部を形成する上側半分の嵌合凹部14を板材を折り曲げて形成し、また、両方の側面部分に水平に迫り出した側板部15を形成してある。この側板部15には差込溝18が形成してあり、また、側板部15の端部はさらに下方へ折り曲げられてその先端には基板13へ差し込まれる脚部16が形成してある。また上ケース11の後端側にも基板13へ差し込まれる脚部17が形成してある。12は、下ケースであり、コネクタを嵌合するための嵌合部を形成する下側半分の嵌合凹部19を板材を折り曲げて形成し、また、両方の側面部分に水平に迫り出した側板部20を形成してある。この側板部20には、一部を切り起こした差込片21が形成してある。また、嵌合部の破断面に面した部分が折返し部22となっている。
【0024】
前記上ケース11は、半田に濡れやすい素材が表面に現れるように、例えば、ニッケルの板材を折り曲げ加工して形成した後で、全体に錫メッキを施す処理を行う。他方、前記下ケース12は、前記嵌合部に面した内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるように、例えば、半田に濡れにくいニッケル板材の一方の面にだけ錫メッキを施す処理を行った後で、折り曲げ加工により下ケース12の形状に加工する。ここで、半田に濡れにくい素材とは、例えば、ニッケル、亜鉛、クロム、ステンレスなどが挙げられる。
【0025】
図2に示すのは、半田に濡れにくいニッケル板材の一方の面にだけ錫メッキを施す処理を行った後で、折り曲げ加工により形成した下ケース12の正面図である。この図2に示すように、折り曲げ加工後の下ケース12は、嵌合部に面した内側面が半田に濡れにくいニッケル素材が現れ、外側面に半田に濡れやすい錫メッキ層が現れるようになっている。また、板材の段階で一方の面にのみ錫メッキ処理を行ってから型抜きされるため、破断面の部分も半田に濡れにくいニッケル板材が現れている。
【0026】
以上のような上ケース11と下ケース12を接合する際には、それぞれの側板部15及び側板部20を重ね合わせて接合を行う。この際、前記差込溝18に差込片21を差し込んで側板部15からはみ出した部分を潰し加工(プレス)によって潰して固着させる。また、図1及び図2においては折返し部22が既に折返した状態で記載してあるが、実際には上ケース11と下ケース12を合わせた状態において折返しを行って接合を強固にする。このような接合によりシールドケース10が形成される。なお、詳細は省略するが、当然ながらシールドケース10の内部にはレセプタクルとして機能するためのコンタクト部等が形成される。
【0027】
以上のようにして形成されたシールドケース10は、外側面は半田に濡れやすい錫メッキが表面に現れているが、下ケース12の内側面及び破断面のみが半田に濡れにくいニッケル素材が表面に現れた状態となっている。このような構成とすることにより、図3に示す上ケース11と下ケース12の隙間が徐々に細くなっている合わせ面部分において、半田に濡れやすい錫メッキと半田に濡れにくいニッケル素材が相対している状態となっており、この点が本発明の特徴である。
【0028】
完成したシールドケース10は、シールドケース10の脚部16、17をそれぞれ基板13の挿入溝23、24に差し込んで半田付けを行うことで固定される。基板13には、予めリフロー半田付け工程用の半田ペースト25が塗付してある。半田ペースト25は、挿入溝23、24の部分、及び、コンタクト部と基板の電気的接続箇所のみならず、基板13への接続強度を上げるために側板部20の下面が基板13に接する箇所にも塗付する。
【0029】
以上の状態でリフロー加熱工程を行うと、基板13に予め塗付してあった半田ペースト25が溶けて、基板13上の回路パターンとコンタクトとの電気的接続の役割を果たし、さらに、シールドケース10を固定する役割を果たすことになる。ここで、基板13と接する側板部20の下面、基板13に差し込まれた脚部16、17には半田に濡れやすい錫メッキが施されているため、加熱により溶けた半田ペースト25が滑らかに馴染み、さらに、側板部15や折返し部22の外側面にも溶けた半田ペースト25が上がっていって付着し、基板13とシールドケース10の固定がより強固になる。
【0030】
ここで、従来は、上ケース11の側板部15と下ケース12の側板部20の合わせ面から溶けた半田ペースト25がシールドケース10の内部に侵入してしまうという問題が生じていたが、本発明では、この合わせ面部分において半田に濡れやすい錫メッキと半田に濡れにくいニッケル素材が相対している状態とすることによって、この問題を解消している。
【0031】
先ず、下ケース12の破断面は半田に濡れにくいニッケル素材が現れた状態であるため、この部分には溶けた半田ペースト25が馴染まないため、下ケース12側から合わせ面に対して半田ペースト25が流れる量が減少する。
他方、上ケース11の側板部15は破断面も含めて半田に濡れやすい錫メッキが施されているため、側板部15の上部から合わせ面に流れる半田ペースト25は従来どおり存在する。しかし、合わせ面部分において半田に濡れやすい錫メッキと半田に濡れにくいニッケル素材が相対している状態とすることによって、毛細管現象による吸い上げ効果が極端に弱くなるため、溶けた半田ペースト25がシールドケース10の内部に流れ込むことを防止することができる。
【0032】
図4に示すのは、半田上がり試験の結果を示した図である。この図4は、基板13に塗付する半田ペースト25のマスク厚とシールドケース10内部への半田上がり(入り込み)との関係を表したものである。試験を実施したマスク厚について、基板へ部品を実装するために一般的に用いられるマスク厚である100μmに加えて、意図的に半田量過多の状態とするために、500μm、600μm、800μmのマスク厚のものを用いた。この図4に示すように、上ケース11も下ケース12も共に全面に錫メッキを施した従来品においては、マスク厚が100μmの時点で半田の入り込みが発生している。そして、マスク厚が600μm以上になると入り込んだ半田の量が多くなり過ぎてコネクタの嵌合に影響が生じている。
これに対して、本発明のように合わせ面部分において半田に濡れやすい錫メッキと半田に濡れにくいニッケル素材が相対している状態とすると、マスク厚を800μmとしても半田の入り込みがなく、発明の効果が大きいことが確認できる。
【0033】
前記実施例においては、上ケース11は全面に錫メッキを施し、下ケース12を片面だけ錫メッキを施すようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。図1の例では、上ケース11側に基板13に差し込む脚部16、17を設けていること、及び、上ケース11の上面中央にコネクタ26側と接触するコンタクトを設けてコネクタ26のアースをとる構成としているため、上ケース11は全面に錫メッキを施すこととしていた。しかし、基板13に差し込む脚部16、17を設けたりアースをとるためのコンタクトを下ケース12側に形成したりする場合には、下ケース12の全面を錫メッキとし、上ケース11を片面のみ錫メッキとするような実施例も当然に考えられる。
【0034】
前記実施例においては、半田に濡れにくい素材であるニッケル板材の一方の面に半田に濡れやすい錫メッキを施すことで、合わせ面部分において半田に濡れやすい錫メッキと半田に濡れにくいニッケル素材が相対している状態を実現している。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、半田に濡れやすい素材の一方の面に半田に濡れにくい素材でメッキ処理を施すことで、合わせ面部分において半田に濡れやすい素材と半田に濡れにくい素材が相対している状態を実現するようにしてもよい。この場合に、破断面が半田に濡れやすい素材となったとしても本発明の効果はあるし、破断面に対しても半田に濡れにくい素材でメッキ処理を施すことが出来ればなお効果は高い。
【0035】
前記実施例においては、上ケース11と下ケース12の2部材でシールドケース10を構成し、基板13にシールドケース10を落とし込むスペースを作って周辺部で固定するミッドマウントタイプの固定方法を採用する場合を例にして説明を行った。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、接合部を半田付けする状況にあるものであれば、基板13にシールドケース全体を載せるマウントタイプであっても適用できる。また、2部材で形成する場合のみならず、1部材からなるシールドケースであっても、その接合部に隙間が存在し、その部分を半田付けするような場合には本発明の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0036】
10…シールドケース、11…上ケース、12…下ケース、13…基板、14…嵌合凹部、15…側板部、16…脚部、17…脚部、18…差込溝、19…嵌合凹部、20…側板部、21…差込片、22…折返し部、23…挿入溝、24…挿入溝、25…半田ペースト、26…コネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタを嵌合するための嵌合部を覆うシールド部材からなり、このシールド部材の接合部分が基板への固定時に半田付けされる部分となるシールドケースにおいて、前記シールド部材は、前記嵌合部に面した内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるようにしたことを特徴とするシールドケース。
【請求項2】
前記シールド部材は、半田に濡れにくい金属素材の板材の外側面に半田に濡れやすい金属素材をメッキ処理で付着させることによって、内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるようにしたことを特徴とする請求項1記載のシールドケース。
【請求項3】
前記シールド部材は、半田に濡れやすい金属素材の板材の内側面に半田に濡れやすい金属素材をメッキ処理で付着させることによって、内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるようにしたことを特徴とする請求項1記載のシールドケース。
【請求項4】
前記シールド部材は、板材の破断面も半田に濡れにくい素材となるように前記メッキ処理を行うようにしたことを特徴とする請求項2又は3記載のシールドケース。
【請求項5】
コネクタを嵌合するための嵌合部を覆う上ケースと下ケースの2つのシールド部材からなり、前記嵌合部の側面部分において前記上ケースと下ケースを接合し、その接合部分が基板への固定時に半田付けされる部分となるシールドケースにおいて、前記シールド部材の下ケースは、前記嵌合部に面した内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるようにしたことを特徴とするシールドケース。
【請求項6】
前記シールド部材を構成する上ケースと下ケースのうち一方は、半田に濡れにくい金属素材の板材の外側面に半田に濡れやすい金属素材をメッキ処理で付着させることによって、内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるようにしたことを特徴とする請求項5記載のシールドケース。
【請求項7】
前記シールド部材を構成する上ケースと下ケースのうち一方は、半田に濡れやすい金属素材の板材の内側面に半田に濡れやすい金属素材をメッキ処理で付着させることによって、内側面が半田に濡れにくい素材で外側面が半田に濡れやすい素材となるようにしたことを特徴とする請求項5記載のシールドケース。
【請求項8】
前記シールド部材を構成する上ケースと下ケースのうち一方は、板材の破断面も半田に濡れにくい素材となるように前記メッキ処理を行うようにしたことを特徴とする請求項6又は7記載のシールドケース。
【請求項9】
前記シールド部材を構成する上ケースと下ケースのうち他方は、全面が半田に濡れやすい素材となるようにし、さらに、基板に差し込むための脚部を形成してなることを特徴とする請求項5乃至8記載のシールドケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115058(P2013−115058A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256773(P2011−256773)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】