説明

シールドケーブル

【課題】柔軟性を確保しつつ低コストで製造可能なシールドケーブルを実現する。
【解決手段】シールドケーブル10は、第1及び第2のケーブル20、30からなるツイストペアケーブル15と、ツイストペアケーブル15の外周を覆う複層FPCシールド40とを備えている。複層FPCシールド40は、第1及び第2のFPCシールド50、60の2層で構成されている。第1及び第2のFPCシールド50、60では、誘電体層52、62の表面に編組に対応する導体パターン54、64がパターン化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドケーブルに係り、特に高速伝送に好適なシールドケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高速伝送では、シールドケーブルが用いられる。また、特に、車両に用いられる高速伝送用のシールドケーブルでは、車両内の配索の観点から柔軟性が兼ね備えられていることが求められている。
【0003】
例えば、屈曲耐久性とシールド特性に特徴を有する導電性を有する素線を螺旋状に交差せるように2層に巻いた構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、図5(a)に示すように、ケーブル101は、絶縁電線110と、導電性を有する素線を絶縁電線110の外周にらせん状に巻き付けて形成される横巻き層120と、横巻き層120の巻き付け方向に対して交差する方向に、導電性を有する素線をらせん状に巻いて形成される反転横巻き層140と、横巻き層120と反転横巻き層140との間に設けられる緩衝層130と、反転横巻き層140の外周に設けられるシース150とを備える。そして、横巻き層120を形成する素線の巻き付け角度θ1と、反転横巻き層140を形成する素線の巻き付け角度θ2とはそれぞれ鋭角であり、巻き付け角度θ1と巻き付け角度θ2との差の絶対値が20°以下となっている。
【0004】
また、別の技術として、ケーブル外径を小さくすると共に可撓性や屈曲性を向上し、かつ、減衰量を良好とすべく提案された技術もある(例えば、特許文献2参照)。この技術では、図5(b)に示すように、2芯平行ケーブル201が、中心導体203の外周を絶縁層205で被覆してなる絶縁線207と、平行に並べた2本の絶縁線207の外周に素線209を1重に横巻きした1重横巻シールド211と、この1重横巻シールド211の外周にスパイラル状に巻き付けた銅を表面に蒸着したポリエステルテープからなる金属テープ体213と、この金属テープ体213の外周を被覆したフッ素樹脂もしくはポリエステルテープからなる外被215と、で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−225571号公報
【特許文献2】特開2009−164039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両用に用いられるシールドケーブルでは、上述の通り柔軟性が求められているが、同時に、低コストの要請が非常に厳しいという状況にある。そして、一般的な、金属素線の編組のシールドケーブルの製造コストにあっては、特に、素線を束にして構成する編組(編祖)の工程が大きな比重を占めている。特許文献1や2に記載の技術でも同様の課題がある。また、金属泊を巻き付けてシールドする技術があるが、ケーブルの柔軟性低下、それに伴う金属箔の破断という課題があり別の技術が求められていた。また、編組のシールドケーブルでは、端末加工時に生じる素線片の処理に注意が必要となり、やはり工数の観点から対策が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシールドケーブルケーブルは、前記ケーブルの外周に備わる、フィルム状の誘電層に導体をパターン化したシールド層と、を備える。
また、前記シールド層は、フレキシブル基板に前記導体がパターン化されてもよい。
また、前記シールド層には、スリットが形成されてもよい。
また、前記シールド層は、前記導体を向かい合わせに積層した構造を有してもよい。
また、前記導体のパターンは、螺旋状に形成されており、前記導体を向かい合わせに積層したときに、前記導体同士が交差するように形成されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、柔軟性を確保しつつ低コストで製造可能なシールドケーブルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る、シールドケーブルの外観を示す図である。
【図2】実施形態に係る、シールドケーブルの断面図である。
【図3】実施形態に係る、第1のFPCシールドを示す図である。
【図4】実施形態の変形例に係る、FPCシールドを示す図である。
【図5】従来技術に係る、シールドケーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の主要な特徴的な構成は、シールドとして、従来の編組をパターン化・スリットを設けたFPC(Flexible Printed Circuits)を用いた点にある。以下、このシールド部分を中心に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るシールドケーブル10の外観および断面を示した図である。図1(b)は、図1(a)の内部構造の一部(導体パターン54、64)を波線で示したものである。また、図2にシールドケーブル10の断面形状の詳細を示す。図2(b)は図2(a)の領域A1を拡大したものであり、図2(c)は図2(b)の領域A2をさらに拡大したものである。
【0013】
図示のように、本実施形態のシールドケーブル10は、第1及び第2のケーブル20、30からなるツイストペアケーブル15と、ツイストペアケーブル15の外周を覆う複層FPCシールド40とを備えている。
【0014】
第1のケーブル20は、中心の導体(導体線)22と、それを被覆する誘電体24とから構成されている。第2のケーブル30についても同様の構成である。導体22は、1本または複数の銅合金等の金属素線からなる。誘電体24は、絶縁性の樹脂材、例えば、ポリエチレン(架橋発泡PE)やフッ素樹脂等で形成されている。
【0015】
図示のシールドケーブル10では、導体22の外径0.38mm、誘電体24の外径1.0mmの第1のケーブル20及び同構造の第2のケーブル30とを撚ったツイスト線(撚り合わせ外径2.05mm)に、二重構造の複層FPCシールド40を巻き付けた構造が例示されている。
【0016】
図3に、被覆前の複層FPCシールド40を示す。図3(a)は平面図であり、図3(b)は図3(a)のX−X断面図である。以下、図2及び図3を参照して説明する。
【0017】
複層FPCシールド40は、従来の金属素線の編組によるシールド構造に替わるものであって、ここでは、複数層、より具体的には、第1及び第2のFPCシールド50、60の2層で構成されている。
【0018】
本実施形態では、第1及び第2のFPCシールド50、60には、被覆される前にあっては、同じパターンが施されたFPC基板が用いられている。具体的には、図4に示すように、誘電体層52の表面に編組に対応する導体パターン54がパターン化されている。誘電体層52は、例えば、0.1mm厚さのテフロン(登録商標)である。なお、導体パターン54の形成は、一般的なFPC回路のパターンニング処理と同様の工程で実現できる。
【0019】
導体パターン54は、導体厚さ25μmであり、45度間隔で形成されている。また、導体幅は±11.25度、巻き付け状態でのピッチは10mmで2.5回転となっている。さらに、第1のFPCシールド50では、編組の導体パターン54間にスリット56を設けて、巻き付け状態での柔軟性を確保している。柔軟性が確保できればスリット56は不要である。なお、第2のFPCシールド60も、第1のFPCシールド50と同様の、誘電体層62、導体パターン64、スリット66を備えて形成されている。
【0020】
そして、導体パターン54、64同士を対向させて重ね合わせて第1のFPCシールド50と第2のFPCシールド60とを積層させることで、被覆前の複層FPCシールド40となる。複層FPCシールド40をツイストペアケーブル15に被覆した状態では、中心側(ツイストペアケーブル15側)から順に、第1のFPCシールド50の誘電体層52、導体パターン54、第2のFPCシールド60の導体パターン54、誘電体層52と積層されている。
【0021】
以上、本実施形態によると、複層FPCシールド40(第1及び第2のFPCシールド50、60)を用いてシールドケーブル10を形成したことで、金属素線の編祖によりシールを代替することができる。その結果、編組工程を省くことができ、製造コストの低減を実現できるとともに、シールドケーブル10の柔軟性の確保ができる。また、複層FPCシールド40の厚さを、金属素線の編組の場合と比べて、大幅に薄くすることができ、設計の自由度が向上する。例えば、第1のケーブル20等の導体22の直径を太くすることできる。また、デジタル伝送用のケーブルとして利用される場合、所定の周波数帯域に関してシールド性能が選択的に確保できればよいことがあり、その帯域に最適なパターンをデザインすることが容易となる。また、設計変更等への対応が容易となる。
【0022】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、上述の実施形態では、2層の複層FPCシールド40であったが、1層のFPCシールドとしてもよい。つまり、第1のFPCシールド50を省いた第2のFPCシールド60だけの構成であっても、所望の性能が実現できるように、導体パターン64等の設計値を変更すればよく、上述のように設計変更が容易に可能となっている。また、複層FPCシールド40をさらに複数設けられてもよい。
【0023】
また、導体パターン54の形状は、上記の形状に限る趣旨ではない。例えば、図4に示す変形例のFPCシールド50aのように、円形状の導体パターン54aで形成されてもよい。さらに、第1のFPCシールド50導体パターン54と第2のFPCシールド60の導体パターン64とを別形状としてもよい。例えば、一方を図3で示した導体パターン54とし、他方を図4で示した導体パターン54aとしてもよい。つまり、所望のシールド特性やインピーダンス特性が得られるようにパターン(形状)が設計されればよい。
【符号の説明】
【0024】
10 シールドケーブル
15 ツイストペアケーブル
20 第1のケーブル
30 第2のケーブル
40 複層FPCシールド
50 第1のFPCシールド
50a FPCシールド
52、62 誘電体層
54、54a、64 導体パターン
56、66 スリット
60 第2のFPCシールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルと、
前記ケーブルの外周に備わる、フィルム状の誘電層に導体をパターン化したシールド層と、
を備えることを特徴とするシールドケーブル。
【請求項2】
前記シールド層は、フレキシブル基板に前記導体がパターン化されていることを特徴とする請求項1に記載のシールドケーブル。
【請求項3】
前記シールド層には、スリットが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシールドケーブル。
【請求項4】
前記シールド層は、前記導体を向かい合わせに積層した構造を有することを特徴とすることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシールドケーブル。
【請求項5】
前記導体のパターンは、螺旋状に形成されており、前記導体を向かい合わせに積層したときに、前記導体同士が交差するように形成されていることを特徴とする請求項4に記載のシールドケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−62051(P2013−62051A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198128(P2011−198128)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】