説明

シールドトンネルのセグメント積み替え搬送装置および搬送方法

【課題】 簡素な装置を用いて、多くのセグメントを一度で搬送することができるようにし、セグメントの搬送時間の短縮を図ったセグメントの積み替え搬送装置を提供する。
【解決手段】 シールドトンネルT内には、シールド掘進機1におけるホイスト3が設けられている位置まで、4台のセグメント搭載台車11〜14のそれぞれにセグメントを搭載して搬送するセグメント搬送装置2が設けられている。シールドトンネルT内におけるセグメント搬送装置2の搬送路の途中位置には、セッタ6が設けられている。セグメント搬送装置2は、先に第一,第二セグメント搭載台車11,12に搭載されたセグメントをホイスト3で降ろした後、一旦セッタ6の位置に引き返す。セッタ6で、第三,第四セグメント搭載台車13,14に搭載されたセグメントS1〜S6第一,第二セグメント搭載台車11,12に積み替えて、ホイスト3の位置に搬送し、ホイスト3で降ろす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルに取り付けられるセグメントの搬送方法に係り、特に、搬送の途中でセグメントを積み替えるシールドトンネルの積み替え搬送装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルを施工する際には、シールドトンネルの壁面を構成するセグメントを切羽方向に搬送する。このようなセグメントの搬送は、たとえばセグメントを積んだ台車を用いることによって行われる。セグメントを搬送する装置としては、たとえば特開平6−88493号公報に開示されたセグメント供給装置がある。このセグメント供給装置は、シールド掘進機におけるエレクタの後方に設けられたコンベアと、セグメントを搭載する後続台車との間に設けられたホイストビームを備えるホイストを有している。このホイストを用いることにより、後続台車に搭載されたセグメントをシールド掘進機におけるエレクタに円滑に供給することができるようにしている。
【0003】
また、他のセグメント供給装置として、特開平10−205294号公報に開示されたものがある。このセグメント供給装置は、ベース台に載置した複数のセグメントを昇降装置によってベース台からロッドに受け取って載せる。その後、移動装置によってロッドを前後方向に移動させることによってセグメントを移動させるものである。
【特許文献1】特開平6−88493号公報
【特許文献2】特開平10−205294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載されたセグメント供給装置では、コンベアと後続台車との間にホイストビームが配置されている。ここで、後続台車に積載されるセグメントを搭載する後続台車に載置することができるセグメントの数は限られてしまうので、多数のセグメントを搬送しようとすると、台車の数を増やすことが必要となる。このように、台車の数を増やすと、後方の台車からセグメントを移送するためには、ホイストビームを長くする必要がある。
【0005】
ところが、ホイストビームを長くすると、シールドトンネルの曲率が大きい部分では、ホイストビームを設けることができなくなる。したがって、結局は、台車を多数並べることができず、多くのセグメントを運ぶことができないため、セグメントの搬送に時間を要することになるという問題があった。
【0006】
一方、特許文献2に開示されたセグメント供給装置を用いると、多数のセグメントを一気に搬送することができるので、セグメントの搬送に掛かる時間の短縮を図ることができる。ところが、特許文献2に開示されたセグメント供給装置では、装置の大型化が避けられないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、簡素な装置を用いて、多くのセグメントを一度で搬送することができるようにし、もってセグメントの搬送時間の短縮を図ることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明に係るセグメントの積み替え搬送装置は、セグメントを搭載する複数のセグメント搭載台車が、施工中のシールドトンネルの掘進方向に並べられ、シールドトンネルにおけるセグメント搬入口と切羽との間を移動するセグメント搬送手段と、セグメント搬入口と切羽との間に配置され、セグメント搭載台車に搭載されたセグメントを持ち上げ可能なセグメント積み替え手段と、を備え、セグメント搬送手段における前方のセグメント搭載台車に搭載されたセグメントを切羽側セグメント準備位置に降ろした後、セグメント搬送手段をセグメント積み替え手段位置まで後退させ、セグメント搬送手段の後部に配置されたセグメント搭載台車に搭載されたセグメントを、セグメント積み替え手段によって持ち上げ、セグメント搬送手段を後退させ、セグメント積み替え手段に持ち上げられたセグメントを、セグメント搬送手段の前部に配置されたセグメント搭載台車に積み替えるものである。
【0009】
本発明に係るセグメントの積み替え搬送装置においては、複数のセグメント搭載台車が、並設されたセグメント搬送手段と、セグメント搭載台車に搭載されたセグメントを持ち上げ可能なセグメント積み替え手段とを有している。そして、前方のセグメント搭載台車に搭載されたセグメントを切羽側セグメント準備位置に降ろした後、セグメント搬送手段をセグメント積み替え手段の位置まで後退させ、後方のセグメント搭載台車に搭載されたセグメントを前方のセグメント搭載台車に積み替える。このため、切羽側セグメント準備位置では、常に前方のセグメント搭載台車からセグメントを積み降ろすことができる。したがって、切羽側セグメント準備位置にたとえばホイストビームを設ける場合に、ホイストビームを短くすることができるので、曲率の大きいトンネルであっても、多くの台車でセグメントを搬送することができる。その結果、多くのセグメントを1度で搬送することができ、もってセグメントの搬送時間を短縮することができる。
【0010】
また、上記特許文献1に開示されたセグメント供給装置と比較して、セグメント積み替え手段を設けるのみでよい。このため、上記特許文献2に開示されたような大型の装置を要することがないので、装置が大型化しないようにすることができる。
【0011】
ここで、セグメント積み替え手段は、セグメント搬送手段の通路の上方に配置された基台と、基台に取り付けられた上下動可能であるとともに、セグメントを把持可能である把持部材と、を備える態様とすることができる。
【0012】
このような基台と把持部材を用いることにより、好適なセグメント積み替え手段とすることができる。セグメント搬送手段の通路の上方に配置された基台としては、セグメント搬送手段の通路を跨ぐ門型の基台を用いることができる。また、セグメント搬送手段の通路の上方に配置されたビームを一方の片側から支持し、他方の片側に脚部を設けたL字を寝かせた形状の基台を用いることもできる。
【0013】
また、把持部材の下降距離を制限する下降距離制限手段が設けられている態様とすることができる。
【0014】
このような下降距離制限手段が設けられていることにより、把持部材が下降した際に、地面にぶつかってしまったり、セグメントをうまく把持できなかったりするといった事態を防止することができる。
【0015】
さらに、セグメント積み替え手段が、シールドトンネルの掘進方向に移動可能である態様とすることもできる。
【0016】
このように、セグメント積み替え手段が移動可能とされていることにより、シールドトンネルの掘進に合わせて、セグメント積み替え手段も前進させることができる。したがって、シールド掘進機とセグメント積み替え手段との間の距離を短く保つことができるので、セグメントの積み替えを短時間で行うことができる。
【0017】
また、上記課題を解決した本発明に係るシールドトンネルにおけるセグメントの積み替え搬送方法は、セグメントを搭載するセグメント搭載台車が、施工中のシールドトンネルの掘進方向に並設され、シールドトンネルにおけるセグメント搬入口と切羽との間を移動するセグメント搬送手段によってセグメントを搬送するにあたり、セグメント搬送手段における前方のセグメント搭載台車に搭載されたセグメントを切羽側セグメント準備位置に降ろした後、セグメント搬送手段をセグメント積み替え手段位置まで後退させ、セグメント搬入口と切羽との間に配置され、セグメント搭載台車に搭載されたセグメントを持ち上げ可能なセグメント積み替え手段によって、セグメント搬送手段の後部に配置されたセグメント搭載台車に搭載されたセグメントを持ち上げ、セグメント搬送手段を後退させ、セグメント積み替え手段に持ち上げられたセグメントを、セグメント搬送手段の前部に配置されたセグメント搭載台車に積み替えることを特徴とする。
【0018】
また、シールドトンネルの掘進に合わせて、積み替え手段を切羽方向に移動させる態様とすることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るシールドトンネルのセグメントの積み替え搬送装置によれば、簡素な装置を用いて、多くのセグメントを一度で搬送することができるようにし、もってセグメントの搬送時間の短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るセグメントの積み替え搬送装置を備えるシールドトンネルの側断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係るシールドトンネルTは、シールド掘進機1による掘進により施工される。シールドトンネルTの壁面には、多数のセグメントSが取り付けられており、これらのセグメントSは、シールド掘進機1に設けられたエレクタによって取り付けられる。
【0022】
シールド掘進機1によって掘り進められたシールドトンネルTの内部には、セグメント搬送手段であるセグメント搬送装置2が設けられている。セグメント搬送装置2は、セグメントを搭載する複数、本実施形態では4台のセグメント搭載台車11〜14を備えている。本実施形態では、前方の2台の第一,第二セグメント搭載台車11,12が前方のセグメント搭載台車となり、後方の2台の第三,第四セグメント搭載台車13,14が後方のセグメント搭載台車となる。
【0023】
また、シールド掘進機1の後部には、切羽側セグメント準備位置が形成されており、シールド掘進機1とセグメント準備位置との間には、セグメント準備位置に載置されたセグメントをシールド掘進機1のエレクタに受け渡す図示しないセグメント受け渡し装置が設けられている。
【0024】
さらに、もっとも切羽側まで移動した最前方に位置する第一セグメント搭載台車11とセグメント受け渡し装置との間には、ホイスト3が設けられている。ホイスト3は、シールドトンネルTの掘進方向に延在するビーム4と、このビーム4に沿って移動するセグメント移動装置5とを備えている。セグメント移動装置5によって、第一,第二セグメント搭載台車11,12に搭載されたセグメントSが順次移動させられ、セグメント準備位置に載置される
セグメント搬送装置2におけるセグメント搭載台車11〜14は、シールドトンネルTの掘進方向に並べられており、相互に連結されている。このうちの最後方に位置する第四セグメント搭載台車14には、バッテリーを備える機関車15が連結されている。また、機関車15の後方には、作業員が乗車するための乗員用台車16が連結されている。さらに、乗員用台車16の後方には、配管、レールなどの資材を搬送する図示しない資材用台車が適宜連結される。
【0025】
シールドトンネルTにおける図示しないセグメント搬入口となる立坑と、シールド掘進機1が位置する切羽との間には、セグメント搭載台車11〜14および機関車15が走行するレール17が敷設されている。このレール17上を走行することにより、機関車15によって、セグメント搭載台車11〜14および乗員用台車16が、図示しないセグメント搬入口となる立坑とシールド掘進機1が位置する切羽との間を移動する。
【0026】
また、シールドトンネルTにおけるセグメント搬入口と切羽との間に敷設されたレール17の途中位置には、セグメント積み替え手段となるセッタ6が設けられている。セッタ6は、図2〜図4に示すように、本発明の門型基台である基台フレーム21を備えている。基台フレーム21は、門型をなしており、その脚部がレール17の両側に立設されており、レール17を含むセグメント搬送装置2を跨ぐようにして配置されている。なお、図2および図3には、セグメントを搭載しない台車が停車した状態が描かれており、図4では、セグメントSを搭載した台車が描かれている。
【0027】
基台フレーム21には、本発明の把持部材である可動装置22が設けられている。可動装置22は、リフトサドル23を備えている。リフトサドル23の両端部には、それぞれリフトシリンダ24が取り付けらており、リフトシリンダ24を稼動することにより、リフトサドル23が上下動する。
【0028】
また、リフトサドル23には、左吊アーム25および右吊アーム26取り付けられている。左吊アーム25および右吊アーム26は、いずれもシールドトンネルTの掘進方向に離間する2本のアーム部材を備えており、各アーム部材の下端部にそれぞれ左吊フック27および右吊フック28が取り付けられている。
【0029】
さらに、リフトサドル23には、図示しないスライドシリンダが設けられている。このスライドシリンダを伸縮させることにより、左吊アーム25と右吊アーム26とが互いに近接し、あるいは逆に離間する。これらの左右吊アーム25,26は、レール17上を走行するセグメント搭載台車11〜14の幅方向中央の線を中心として、左右対称に移動する。
【0030】
また、図5に示すように、リフトシリンダ24には、本発明の下降距離制限手段であるリミットスイッチSWが取り付けられている。リミットスイッチSWは、リフトシリンダ24の上部に取り付けられた上部近接スイッチSW1とリフトシリンダ24の下部に取り付けられた下部近接スイッチSW2とを備えている。また、リミットスイッチSWは、リフトシリンダ24のシリンダロッドの下端部に取り付けられた検出子SW3を備えている。これらの近接スイッチSW1,SW2間のみをリフトシリンダ24のシリンダロッドが上下動することにより、吊アーム25,26の下降を抑制して、吊フック27,28が地面の衝突しないように制御している。
【0031】
さらに、右吊アーム26の内側には、セグメント用リミットスイッチが取り付けられており、左吊アーム25におけるセグメント用リミットスイッチに対向する位置には、反射用のミラーが取り付けられている。セグメント用リミットスイッチは、受発光センサからなり、ミラーに向けて光を照射している。ミラーから反射光を検出して、出射してから反射光を受光することにより、左右吊アーム25,26間の幅がセグメントS1〜S5の幅程度となっていることを判断している。
【0032】
また、基台フレーム21の下フレームには、車輪29が取り付けられており、車輪29の下方位置には、車輪29の走行を案内する外側レール30が設けられている。外側レール30は、シールドトンネルTの掘進方向に延在して配置されており、車輪29が外側レール30上を走行することにより、基台フレーム21がシールドトンネルTの掘進方向に移動可能となるようにされている。また、セッタ6には、車輪29を駆動するモータ31が設けられている。
【0033】
さらに、外側レール30は、地面に対して容易に取り外すことができる複数のレールブロックからなり、シールド掘進機1の前進に伴い、順次後端のレールブロックを取り外して前端のレールブロックに継ぎ足している。こうして、車輪29が走行可能となる位置を、シールド掘進機1の掘進に伴って、順次前進させている。
【0034】
以上の構成を有する本実施形態に係るシールドトンネルのセグメント積み替え搬送方法について説明する。
【0035】
本実施形態に係る積み替え搬送方法では、まず、立坑の近傍における地中の資材置き場に載置されたセグメントSをセグメント搭載装置によってセグメント搭載台車11〜14に搭載する。なお、セグメントSは、地中の資材置き場に載置されておらず、立坑の上側からクレーンで直接搭載する態様とすることもできる。このうち、第一,第三セグメント搭載台車11,13には、第一三セグメントS1〜第三セグメントS3が搭載され、第二,第四セグメント搭載台車12,14には、第四セグメントS4〜第六セグメントS6が搭載される。
【0036】
このうち、第一セグメントS1〜第五セグメントS5は、同じ大きさのセグメントであり、第六セグメントS6は、他のセグメントよりも小さいセグメントである。これらの第一セグメントS1〜第六セグメントS6により、シールドトンネルTに取り付けられた際の1リングが構成される。
【0037】
こうして、セグメント搭載台車11〜14にそれぞれセグメントS1〜S6を搭載したら、機関車15を駆動し、セグメント搭載台車11〜14を切羽の手前位置まで搬送する。このとき、必要に応じて乗員用台車に乗員が乗車する。
【0038】
セグメントS1〜S6を切羽まで搬送したら、セグメント移動装置5によって、第一,第二セグメント搭載台車11,12に搭載されたセグメントS1〜S6をセグメント準備位置に移動して積み降ろす。このとき、第三,第四セグメント搭載台車13,14に搭載されたセグメントS1〜S6は、第三,第四セグメント搭載台車13,14に搭載したままとしておく。
【0039】
第一,第二セグメント搭載台車11,12に搭載されたセグメントS1〜S6を積み降ろした後も、第三,第四セグメント搭載台車13,14にはセグメントS1〜S6を搭載したままとしておく。次に、機関車15を駆動して、セグメント搭載台車11〜14を切羽方向に移動させ、セッタ6の位置で停止させる。セッタ6は、移動可能とされており、シールド掘進機1による掘進に合わせて前進し、シールド掘進機1の近傍に位置させておく。具体的には、シールド掘進機1から100〜150m程立坑側に移動した位置に位置させておく。
【0040】
セッタ6では、セグメントの積み替えが行われる。以下、図面を参照して、セグメントの積み替えの手順について説明する。機関車15によって搬送されるセグメント搭載台車11〜14は、
、図6(a)に示すように、機関車15第三セグメント搭載台車13がセッタ6の位置に配置される位置で機関車15を停車させる。このとき、第三セグメント搭載台車13の停車位置は、セッタ6における左右吊アーム25,26のそれぞれにおける前後のアームのほぼ中心位置に、第三セグメント搭載台車13に搭載されたセグメントS1〜S3の長手方向中心位置がくる位置とする。
【0041】
第三セグメント搭載台車13がセッタ6の位置に停止したら、第三セグメント搭載台車13に搭載されたセグメントS1〜S3を第一セグメント搭載台車11に積み替える。この積み替えを行う際には、まず、図6(b)に示すように、第三セグメント搭載台車13に搭載されたセグメントS1〜S3をセッタ6によって把持して持ち上げる。セグメントS1〜S3の持ち上げは、次のようにして行われる。
【0042】
まず、図7(a)に示すように、リフトシリンダ24を伸長させて、リフトサドル23が上昇した状態とする。このとき、左右吊アーム25,26は、それぞれ開いた状態とされている。この状態で、セッタ6と第三セグメント搭載台車13との間の位置決めをする。セッタ6と第三セグメント搭載台車13との間の位置決めは作業員の目視によって行われている。
【0043】
いま、第三セグメント搭載台車13には、図示しない立坑近傍におけるセグメント搬入口において、セグメントS1〜S3が正確に位置決めされた状態で搭載されている。このため、セッタ6と第三セグメント搭載台車13との間の位置決めを行うことにより、セッタ6とセグメントS1〜S3との間の位置決めが完了する。セッタ6とセグメントS1〜S3との間では、セグメントS1の長手方向中心位置が、左右吊アーム25,26のそれぞれにおける前後のアームのちょうど中心の位置となるように位置決めがなされる。
【0044】
セッタ6とセグメントS1〜S3との間の位置決めが済んだら、図7(b)に示すように、リフトシリンダ24を収縮させて、リフトサドル23を下降させる。リフトサドル23を下降させる際、リミットスイッチSWによって、左右吊アーム25,26の下降位置を調整し、吊フック27,28が第一セグメントS1のわずかに下側に位置するようにする。
【0045】
それから、図8(a)に示すように、図示しないスライドシリンダを駆動して、左右吊アーム25,26をそれぞれ内側に移動させ、吊フック27,28が第一セグメントS1の下側に配置されるようにする。左右吊アーム25,26をスライドさせるにあたり、図示しないセグメント用リミットスイッチによって、左右吊アーム25,26の間の距離が、セグメントS1〜S3の幅とほぼ同じとなるように調整する。
【0046】
こうして、適切な幅となるように左右吊アーム25,26をスライドさせたら、図8(b)に示すように、リフトシリンダ24を伸長させ、リフトサドル23を上昇させる。リフトサドル23の上昇に伴い、吊フック27,28に把持されたセグメントS1〜S3を上方に持ち上げる。
【0047】
セグメントS1〜S3を持ち上げたら、図9(a)に示すように、第三セグメント搭載台車13に搭載されていたセグメントS1〜S3がなくなり、第三セグメント搭載台車13は空の状態となる。第三セグメント搭載台車13が空の状態になったら、機関車15を立坑方向に後退させ、第一セグメント搭載台車11をセッタ6の位置に停止させる。
【0048】
第一セグメント搭載台車11がセッタ6の位置に停止させたら、図9(b)に示すように、第三セグメント搭載台車13とセッタ6とを位置決めしたときと同様の手順で、第一セグメント搭載台車11とセッタ6とを位置決めする。その後、セッタ6におけるリフトシリンダ24を収縮させ、リフトサドル23を下降させる。
【0049】
このリフトサドル23の下降に伴い、左右吊アーム25,26が下降し、セグメントS1〜S3が第一セグメント搭載台車11に搭載される。セグメントS1〜S3が第一セグメント搭載台車11に搭載されたら、スライドシリンダによって、左右吊アーム25,26をそれぞれ外側に移動させ、セグメントS1〜S3を吊フック27,28による把持状態から解放する。その後、リフトシリンダ24を伸長させて、リフトサドル23を一旦上昇させておく。
【0050】
続いて、図9(c)に示すように、機関車15によってセグメント搭載台車11〜14を切羽方向に前進させ、第四セグメント搭載台車14をセッタ6の位置に停止させる。この第四セグメント搭載台車14には、セグメントS4〜S6が搭載されている。このセグメントS4〜S6を、第二セグメント搭載台車12に積み替える。
【0051】
第四セグメント搭載台車14に搭載されたセグメントS4〜S6を第二セグメント搭載台車12に積み替える手順は、第三セグメント搭載台車13に搭載されたセグメントS1〜S3を第一セグメント搭載台車11に積み替える手順と同様である。したがって、リフトシリンダ24を収縮させることによりリフトサドル23を下降させ、続いて図示しないスライドシリンダを駆動して、左右吊アーム25,26を互いに近接する方向に移動させ、吊フック27,28で第四セグメントS4を把持する。
【0052】
この状態で、セッタ6におけるリフトシリンダ24を伸長させて、リフトサドル23を上昇させる。リフトサドル23を上昇させると、図10(a)に示すように、第四セグメント搭載台車14に搭載されたセグメントS4〜S6が上昇し、第四セグメント搭載台車14は空の状態となる。第四セグメント搭載台車14が空となったら、機関車15を立坑方向に後退させ、セグメント搭載台車11〜14を移動させる。
【0053】
それから、図10(b)に示すように、セッタ6の位置に第二セグメント搭載台車12を位置させて両者の位置決めを行う。その後は、第一セグメント搭載台車11にセグメントS1〜S3を搭載した場合と同様、セッタ6におけるリフトシリンダ24を収縮させ、リフトサドル23を下降させる。リフトサドル23を下降させることにより、セグメントS4〜S6が下降し、図10(c)に示すように、第二セグメント搭載台車12に搭載される。その後、セグメントS4〜S6を吊フック27,28による把持状態から解放して、セグメントS4〜S6の積み替え作業が終了する。
【0054】
このようにして、セグメントS1〜S3を第三セグメント搭載台車13から第一セグメント搭載台車11に積み替え、セグメントS4〜S6を第四セグメント搭載台車14から第二セグメント搭載台車12に積み替えたら、機関車15により、セグメント搭載台車11〜14を、切羽方向に前進させる。その後、第一セグメント搭載台車11が切羽手前位置に到達したらセグメント移動装置5によって、第一,第二セグメント搭載台車11,12に搭載されたセグメントS1〜S6をセグメント準備位置に移動して積み降ろす。
【0055】
そして、最終的に、セグメント搭載台車11〜14に搭載された2リング分のセグメントS1〜S6の切羽近傍におけるセグメント準備位置への搬送が完了し、セグメント搭載台車11〜14を、機関車15によって立坑近傍の資材置き場まで搬送する。また、シールド掘進機1によるシールドトンネルTの掘進の進行に伴い、シールド掘進機1は前進するが、シールド掘進機1の前進に合わせて、セッタ6を前進させることにより、セグメント搭載台車11〜14の移動量を少なくすることができる。
【0056】
このように、本実施形態に係るセグメントの積み替え搬送装置では、ホイスト3によるセグメントS1〜S6の積み降ろしを行う際には、セグメントS1〜S6は、常に前方に位置する第一セグメント搭載台車11および第二セグメント搭載台車12に搭載された状態にある。このため、4台という複数の台車を連結して多数のセグメントを搬送した場合でも、ホイスト3におけるビーム4を短いもので済ませることができる。したがって、曲率の大きいシールドトンネルの施工の際にも、多数のセグメントを一度で搬送でき、セグメントの搬送時間の短縮を図ることができる。
【0057】
また、セグメントS1〜S4の積み替えを行う際には、シールド掘進機1よりも立坑側に配置したセッタ6を用いている。このため、単にこのセッタ6を設ければよいので、簡素な装置で済ませることができる。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、4台のセグメント搭載台車を連結した構成としているが、2台、3台、または5台以上のセグメント搭載台車を連結した態様とすることができる。また、上記実施形態では、1台のセグメント搭載台車に搭載されたセグメントの積み替えのみを行うことができるセッタを用いているが、2台以上の複数台のセグメント搭載台車に搭載されたセグメントを一気に積み替えることができるセッタを用いることもできる。
【0059】
また、上記実施形態では、1リングで6枚のセグメントとしているが、1リングを形成するセグメントの数は、この数に限定されるものではない。さらに、セグメント搭載台車に搭載するセグメントの数も上記実施形態のように3枚に限定されるものではなく、適宜の数に設定することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、セグメント搭載台車には1列でセグメントを搭載しているが、セグメントとセグメント搭載台車との相対的な幅の関係によっては、セグメント搭載台車に2列以上のセグメントを搭載する態様とすることもできる。2列以上のセグメントを搭載する場合には、セッタでセグメントを直接持ち上げるのは困難となるが、2列以上のセグメントを1枚のパレットに載置した状態でセグメント搭載台車に搭載することにより、セッタでパレットを持ち上げることにより、セグメントを容易に持ち上げることができる。
【0061】
他方、セッタにおいてセグメントを積み替える際、上記実施形態ではセグメント搭載台車を移動させているが、セッタを前後進させる態様とすることもできる。さらに、本実施形態に係るセグメント積み替え搬送装置は、曲率の大きいシールドトンネルを施工する場合に好適となるが、たとえば直線状のシールドトンネルを施工する場合であっても、たとえばセグメント搭載台車を10台程度の多数連結する場合には、ホイストビームの長さを短いままとすることができる。したがって、直線状のシールドトンネルを施工する場合でも、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態に係るセグメントの積み替え搬送装置を備えるシールドトンネルの側断面図である。
【図2】セッタの正面図である。
【図3】セッタの平面図である。
【図4】セッタの側面図である。
【図5】リフトシリンダの拡大側面図である。
【図6】セグメントの積み替え搬送装置の手順を示す工程図である。
【図7】セグメントの積み替え手順を示す工程図である。
【図8】図7に続く工程を示す工程図である。
【図9】図6に続く工程を示す工程図である。
【図10】図9に続く工程を示す工程図である。
【符号の説明】
【0063】
1…シールド掘進機
2…セグメント搬送装置
3…ホイスト
4…ビーム
5…セグメント移動装置
6…セッタ
11〜14…第一セグメント搭載台車
15…機関車
16…乗員用台車
17…レール
21…基台フレーム
22…可動装置
23…リフトサドル
24…リフトシリンダ
25…左吊アーム
26…右吊アーム
27…左吊フック
28…右吊フック
29…車輪
30…外側レール
31…モータ
S,S1〜S6…セグメント
T…シールドトンネル
SW…リミットスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメントを搭載する複数のセグメント搭載台車が、施工中のシールドトンネルの掘進方向に並べられ、前記シールドトンネルにおけるセグメント搬入口と切羽との間を移動するセグメント搬送手段と、
前記セグメント搬入口と前記切羽との間に配置され、前記セグメント搭載台車に搭載されたセグメントを持ち上げ可能なセグメント積み替え手段と、
を備え、
前記セグメント搬送手段における前方のセグメント搭載台車に搭載されたセグメントを切羽側セグメント準備位置に降ろした後、前記セグメント搬送手段を前記セグメント積み替え手段位置まで後退させ、前記セグメント搬送手段の後部に配置されたセグメント搭載台車に搭載されたセグメントを、前記セグメント積み替え手段によって持ち上げ、前記セグメント搬送手段を後退させ、前記セグメント積み替え手段に持ち上げられたセグメントを、前記セグメント搬送手段の前部に配置されたセグメント搭載台車に積み替えることを特徴とするシールドトンネルにおけるセグメントの積み替え搬送装置。
【請求項2】
前記セグメント積み替え手段は、前記セグメント搬送手段の通路の上方に配置された基台と、
前記基台に取り付けられた上下動可能であるとともに、前記セグメントを把持可能である把持部材と、
を備える請求項1に記載のシールドトンネルにおけるセグメントの積み替え搬送装置。
【請求項3】
前記把持部材の下降距離を制限する下降距離制限手段が設けられている請求項2に記載のシールドトンネルにおけるセグメントの積み替え搬送装置。
【請求項4】
前記セグメント積み替え手段が、前記シールドトンネルの掘進方向に移動可能である請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載のシールドトンネルにおけるセグメントの積み替え搬送装置。
【請求項5】
セグメントを搭載するセグメント搭載台車が、施工中のシールドトンネルの掘進方向に並設され、前記シールドトンネルにおけるセグメント搬入口と切羽との間を移動するセグメント搬送手段によってセグメントを搬送するにあたり、
前記セグメント搬送手段における前方のセグメント搭載台車に搭載されたセグメントを切羽側セグメント準備位置に降ろした後、前記セグメント搬送手段を前記セグメント積み替え手段位置まで後退させ、
前記セグメント搬入口と前記切羽との間に配置され、前記セグメント搭載台車に搭載されたセグメントを持ち上げ可能なセグメント積み替え手段によって、前記セグメント搬送手段の後部に配置されたセグメント搭載台車に搭載されたセグメントを持ち上げ、
前記セグメント搬送手段を後退させ、前記セグメント積み替え手段に持ち上げられたセグメントを、前記セグメント搬送手段の前部に配置されたセグメント搭載台車に積み替えることを特徴とするシールドトンネルにおけるセグメントの積み替え搬送方法。
【請求項6】
前記シールドトンネルの掘進に合わせて、前記積み替え手段を前記切羽方向に移動させる請求項1に記載のシールドトンネルのセグメント積み替え搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−2409(P2006−2409A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178870(P2004−178870)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】