説明

シールドトンネルの拡幅部形成工法および拡幅部構造

【課題】本設構造体の一部として利用可能な十分な剛性を有して拡幅部の周囲を覆う防護工として機能し、開削の際に支保工の設置を不要となし得る鋼製曲管を備えたシールドトンネルの拡幅部形成工法および拡幅部構造を提供する。
【解決手段】拡幅部8の形成部位上下縁に配置された鋼製セグメント41a間に、側方に一定曲率の円弧状に突出する鋼製曲管16を推進管掘削機によりトンネル長手方向に沿って所定ピッチで渡設する。内部には補強鋼材を挿通して両端を鋼製セグメントの主桁に接合プレートを介して固設すると共に固化材を充填して補剛する。固化後に、拡幅部形成部位のセグメント41cを撤去して側方土砂を掘削し、鋼製曲管内側面を露出させて露出面を覆って覆工体を形成する。鋼製曲管は断面の縦横比を2:1あるいは3:1の矩形状とし、先頭部に正方形断面で掘進する掘削機を2連或いは3連で設けて該推進管掘削機を構成する。鋼製曲管は鋼製セグメントのリブを避けてスキンプレートを貫通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルの側部を開削して形成する拡幅部の形成方法、及びシールドトンネルの拡幅部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法は、例えば都市土木等において、地下水の存在する地盤や軟弱な地盤等に対するトンネルの構築工法として一般に採用されているものである。このシールド工法においては、シールド掘進機が通過した後の掘削坑内周部には、逐次セグメントを継ぎ足して連結し、筒状の覆工体を形成するのが一般的である。また、当該セグメントには、円筒形状に組み上げるために、展開形状が矩形の版状で円弧状に湾曲されたものを使用するのが主流であり、これらセグメントは相互にボルト等の接合手段によって接合されている。そして、シールド掘進機はその後方にてリング状に逐次組み立て形成された覆工体から推進反力を得ながら前進して掘進作業を行っていくようになっている。
【0003】
ところで、この様なシールド工法を用いて地下構築物を構築にするにあたっては、例えば地下道路の非常駐車帯や分岐・合流路等を設置するために、そのシールドトンネルの側部を所定長に亘って開削してトンネル拡幅部を形成することが行われている。ここで、この様な拡幅部を開削形成するに際しては、拡幅部形成部位に設置されている覆工体のセグメントを部分的に撤去してその側方を掘削することになるが、当該セグメントの撤去に先立って、トンネルの安全性を確保するために防護工を予め設置し、拡幅部位が土圧に耐えられるように補剛しておく必要がある。
【0004】
そして、この様な防護工を設置してシールドトンネルの拡幅部を形成する技術として、従来、特開平4−281990号公報にて開示された拡幅工法が知られている。即ち、この拡幅工法は、一定曲率の円弧状をなす鋼製曲管で形成される推進管の先端に掘削機を取り付けて構成した推進管掘削機を用いて防護工を形成する技術であり、当該推進管掘削機をシールドトンネル内部から側方に向けて発進させて上記一定曲率で推進掘削しながら再び当該シールドトンネルに到達させることで、拡幅部分の周縁部を囲むようにして推進管を埋設するようにしている。また、この埋設した推進管内には地盤改良用注入管を挿入し、この注入管に凍結剤やセメントミルク等の改良剤を供給して拡幅部分の周囲の地盤を固結改良してから、拡幅部分を開削する拡幅工事が行われる。
【0005】
ここで、上記推進管掘削機を用いた拡幅工法では、推進管をなす鋼製曲管は専ら仮設材として設置されるものであって、その内側に本設の構造物が構築されることになるが、当該本設構造物を構築するにあたっては、防護工として更に支保工を設置して地山の土圧に抵抗させなければならい。しかし、当該支保工は本設構造物の構築に際して邪魔になり、作業性を阻害する一要因になっていた。このため、当該推進管掘削機を用いて設置する鋼製曲管を本設構造物の構造体として利用するようにした技術が、特開2005−30148号公報にて提案されている。
【0006】
当該提案は上記推進管掘削機を用いた拡幅工法において、その鋼製曲管を口径が800mm以上にして、作業員が内部入り込めるサイズとなして作業性を高めるとともに、当該内部にH型鋼等の鉄骨材とコンクリートまたはモルタルを充填して1次構造材とし形成し、拡幅部の開削後に当該1次構造体の内側に、S構造,RC構造,SC構造またはSRC構造からなる2次構造体を一体化させて形成するようにしたものである。ここで、当該公報には、鋼製曲管を矩形(正方形)断面にすることも示されている。
【0007】
また、矩形断面の鋼製曲管を推進管として使用するために、その先端部に取り付けられて矩形断面の削孔を掘削形成する小型掘削機としては、特開2004−60266号公報に示されているものが知られている。即ち、当該小型掘削機は、回転盤にその回転軸を公転軸として公転しつつ自転する自転盤を取り付け、この自転盤にはその自転軸からオフセットさせてカッタービットを設けて構成したものである。つまり、当該カッタービットは自転盤の自転軸廻りに自転し、かつ同時に回転盤の回転軸廻りにも公転して、遊星運動軌跡を描きながら土砂を矩形状に掘削し得る様になっている。
【0008】
また、シールド工法を用いて、例えば地下鉄道の駅構内や地下道路の分岐・合流部の構築を行うにあたっては、シールドトンネルを複数近接させて並設し、爾後、そのシールドトンネルの側部同士を相互に連通させて繋ぎ合わせ、その断面をメガネ状等の複合形態のトンネルに一体化させて形成することが行われている。ここで、この様な断面形態のトンネルでは形状的にその連通結合部位の剛性が弱くなるので、例えば特許第2619937号公報等に示されるように、当該連通結合部位には多数の支柱等の補剛部材を設けてその剛性を補うようにしている。
【0009】
しかし、上記のように支柱を設けてシールドトンネルの連通結合部位の強度を確保するようにすると、例えば道路の分岐・合流部等では当該支柱が邪魔になって相互のトンネル内への車両の円滑な往来が行えなくなる。特に、高速道路では安全かつ円滑な分岐・合流を行わせるためには、所定長に亘って無柱の区間が必要となる。
【0010】
そこで、このような並設トンネルにおいてそれらの側部を開削し、両シールドトンネル間を連通させて拡幅部を形成する様な場合にも、両シールドトンネル間に上下一対で上述の鋼製曲管を掛け渡して設けてその拡幅部を構築することが検討されている。
【特許文献1】特開平4−281990号公報
【特許文献2】特開2005−30148号公報
【特許文献3】特開2004−60266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、シールドトンネルの開削する拡幅部形成部位のセグメントには、一般的に鋼板製のものが使用されている。この鋼板製のセグメントは、スキンプレートの四周に沿って裏面に主桁が立設されて箱体状に形成されるとともに、当該主桁に両端が接合されて中央部分に補強リブが縦横に走らされて設けられている。また、セグメントはその幅寸法(トンネル長方向寸法)が概ね1200mm程度に形成されておりも主桁と補強リブとの間隔は400mm前後になっている。
【0012】
ここで、推進管掘削機をシールドトンネル内部から発進させた後、再び当該シールドトンネル内部に到達させるためには、鋼板製セグメントに発進口と到達口とを開口形成しなければならない。しかしながら、上記した特開2005−30148号公報にて開示された拡幅部の形成技術であると、推進管をなす鋼製曲管の口径を800mm以上とするため、鋼製セグメントにその口径に相応した大きさの開口を形成しようとすると、必然的に補強リブの切断を余儀なくされてしまう。これ故、その剛性を確保するためには、形成した開口の周囲等に新たに補強リブを設けて補剛しなければならず、予め標準品として設定されている鋼製セグメントを流用することが困難で、発進・到達口付の鋼製セグメントを別途に専用のものとして用意する必要が生じてしまう。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的とするところは、推進管掘削機を用いてシールドトンネルの側部に拡幅部を開削形成するにあたって、鋼板製セグメントの補強リブを切除することなく当該セグメントに推進管掘削機の発進・到達口を簡易に設けることができるとともに、推進管掘削機によって設置する鋼製曲管に、覆工体と一体となって本設構造体の一部として利用可能な十分な剛性を付与して拡幅部の周囲を覆う防護工として機能させ得るシールドトンネルの拡幅部形成工法および拡幅部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、シールドトンネルのセグメントの一部を撤去して、その側方を掘削することによって拡幅部を形成するシールドトンネルの拡幅部形成工法であって、開削時に撤去される拡幅部形成部位のセグメントの周方向両側に近接配置された鋼製セグメントから側方に円弧状に一定の曲率で湾曲して突出する鋼製曲管を、推進管掘削機を用いてトンネル長手方向に沿って所定のピッチで設置して、開削部位の周囲を該鋼製曲管で囲繞する鋼製曲管設置工程と、該鋼製曲管の内部に補強鋼材を挿通して、該補強鋼材の両端を鋼製セグメントに固設するとともに、該鋼製曲管内に固化材を充填して補剛する補剛工程と、該固化材の固化後に、拡幅部形成部位のセグメントを撤去し、その側方の土砂を掘削して、鋼製曲管の内側面を露出させる開削工程と、該鋼製曲管の露出面を覆って覆工体を形成する覆工体形成工程と、を備え、該鋼製曲管は、その断面の縦横比が2:1あるいは3:1の矩形状をなし、その先頭部には正方形断面で掘進する掘削機が2連あるいは3連で設けられて該推進管掘削機が構成されるとともに、該鋼製セグメントのリブを避けてそのスキンプレートを貫通して配置される、ことを特徴とする。
【0015】
ここで、請求項2に示すように、前記シールドトンネルが単独で設けられ、前記鋼製曲管は、前記開削時に撤去される拡幅部形成部位のセグメントの上下両側に近接配置された鋼製セグメント間に掛け渡されて開削部位の周囲を囲繞する構成となし得る。
【0016】
あるいは、請求項3に示すように、前記シールドトンネルが隣接されて複数並設されており、前記鋼製曲管は、その隣接して並設された2つのシールドトンネル間で、その開削時にそれぞれ撤去される拡幅部形成部位のセグメントの上下両側に近接配置された鋼製セグメント同士間に掛け渡されて上下一対で配設されて、開削部位の周囲を囲繞する構成となし得る。
【0017】
また、請求項4に示すように、前記推進管掘削機内には、その鉛直面内の傾斜角度を検出する角度検出器を設け、該傾斜角度の増加率と該推進管掘削機の推進長の増加率とを一定に保って掘削するようにするのが望ましい。
【0018】
また、請求項5にかかる発明は、単独設置されたシールドトンネルのセグメントを部分的に撤去して、その側方を掘削することによって形成されるシールドトンネルの拡幅部構造であって、該シールドトンネルの拡幅部開口の上下縁に近接配置された鋼製セグメントに両端部が固定されて設けられ、側方に一定の曲率で円弧状に湾曲して突出する鋼製曲管と、該鋼製曲管内に挿通配置され、両端部が該鋼製曲管から突出して該鋼製セグメントに固定された補強鋼材と、該鋼製曲管内に充填された固化材と、該鋼製曲管を覆って設けられ、該拡幅部の内壁面を形成する覆工体と、を備え、該鋼製曲管は、その断面の縦横比が2:1あるいは3:1の矩形状をなして、該鋼製セグメントのリブを避けてスキンプレートを貫通して配置されていることを特徴とする。
【0019】
また、請求項6にかかる発明は、隣接して並設されたシールドトンネルの対面部位のセグメント同士を撤去し、その側方を掘削して両シールドトンネルを連通させて形成するシールドトンネルの拡幅部構造であって、両シールドトンネルの拡幅部開口の上下縁に近接して配置された鋼製セグメントに両端部が固定されて設けられ、それぞれ上側方と下側方とに一定の曲率で円弧状に湾曲して突出する上下一対の鋼製曲管と、該鋼製曲管内に挿通配置されて両端部が該鋼製曲管から突出して該鋼製セグメントに固定された補強鋼材と、該鋼製曲管内に充填された固化材と、該鋼製曲管を覆って設けられ、該拡幅部の内壁面を形成する覆工体と、を備え、該鋼製曲管はその断面の縦横比が2:1あるいは3:1の矩形状をなして、該鋼製セグメントのリブを避けてスキンプレートを貫通して配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
上記構成にかかる本発明によれば、推進管掘削機によって設置する鋼製曲管の横断面の縦横比(トンネル鉛直断面方向の寸法を縦寸法とし、トンネル長方向の寸法を横寸法とする。)を2:1あるいは3:1の矩形形状にして、土圧の作用方向に長辺が沿ったものとするので、同一面積の正方形断面を有した鋼製曲管に比して断面係数が高くなり、鋼製曲管で高剛性の防護工を形成することができる。また、内部へのH型鋼等の補強鋼材の挿入が容易になる。
【0021】
また、鋼製曲管で高剛性の防護工を形成できるため、拡幅部の開削時に別途に支保工を設けなくとも十分な土圧抵抗力を確保することができ、覆工体の構築作業性を格段に向上させることができるとともに、鋼製曲管による防護工の設置本数自体を少なくすることができる。
【0022】
さらに、鋼製曲管の横幅を鋼製セグメントの主桁と補強リブとの間の寸法よりも小さくすることができるので、当該鋼製セグメントに形成する発進・到達口を主桁と補強リブとの間のスキンプレート部に開口形成し得、標準仕様の鋼製セグメントの補強リブを切除することなく、そのまま流用して発進・到達口付の鋼製セグメントを形成することができる。
【0023】
一方、推進管掘削機内にその鉛直面内の傾斜角度を検出する角度検出器を設けて、その傾斜角度の増加率と推進管掘削機の推進長の増加率とを一定に保って掘削することで、削孔精度(鋼製曲管の押出精度)の向上を図ることができるとともに、施工の効率化が図れるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
《第1実施形態》
以下に、本発明の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1〜図9は本発明に係るシールドトンネルの拡幅部形成工法およびその拡幅部構造の第1の実施形態を示すものである。ここで、当該第1実施形態では、単独で設けられたシールドトンネルの側部を開削して側方部に拡幅部を構築する場合を示しており、図1は当該シールドトンネルの拡幅部構造を概略的に示す平面図である。また、図2と図3は拡幅部の形成工程を順次に示したものであって、図2は図1中のII−II線部の矢視断面図、図3は図1中のIII−III線部の矢視断面図、図4はシールドトンネルの側部に防護工として鋼製曲管が取り付けられた状態を示す概略斜視図、図5は湾曲した鋼製セグメントを平坦に展開した状態で示した図である。
【0025】
図1に示すように、シールドトンネル2は、シールド掘進機の通過によってその後方に掘削形成されていく本坑の内周部に沿って、逐次にセグメント4を円筒状に組み付けて覆工体6を形成しつつ構築していく。ここで、当該セグメント4には、シールドトンネル2の通常部分の形成部位においては円弧状に湾曲された直方体を呈するコンクリート製のものを使用するが、拡幅部8の形成部位にあっては、後に当該拡幅部8の形成部位を開削して拡幅工事を行うことから、上記コンクリート製のものに代えて鋼製セグメント41を採用している。
【0026】
この鋼製セグメント41は、図5に示すように、スキンプレート10の四周の4辺に沿って内面側に主桁12が立設固定されて箱体状に形成されるが、セグメント4はその隣接する1リング毎に交互にその周方向の接合位置がセグメント4の半サイズ分ずつずらされて組み立てられるので(図4参照)、拡幅部8の形成部位に配設される鋼製セグメント41には、その開削時の開口部上縁と下縁とがフラットになるように、図5(a),(b)に示すように大小2つのサイズのものが用意されている。ここで、スキンプレート10はその中央部に主桁12を相互に繋ぐ補強リブ14が立設固定されて補強されるが、フルサイズの鋼製セグメント41aでは縦横に十字状に補強リブ14が設けられ、ハーフサイズの鋼製セグメント41bでは縦方向のみに補強リブ14が設けられている。また、開削時に開口部上縁と下縁とを画成することになる鋼製セグメント41a,41bには、後述する推進管掘削機の発進口あるいは到達口となる開口43が形成される。一方、開削時に撤去される鋼製セグメント41cには開口は形成されない。なお、トンネル長手方向に隣接するセグメント相互間の周方向のラップ長は、シールドトンネルの径の大きさに応じて、セグメント全長の1/2あるいは1/3等に適宜設定変更されるものであり、そのラップ長に合わせて上記ハーフサイズのセグメントに限らず、1/3サイズのセグメント等が各種適宜に用意される。
【0027】
ところで、シールドトンネル2の側部を開削して拡幅部8を形成するにあたっては、以下の工程順で構築する。即ち、先ず最初に、鋼製曲管設置工程が行われる。この鋼製曲管配設工程では、図2(b)、図3(b)及び図4に示すように、シールドトンネル2における拡幅部8の形成部位の側方に、円弧状に一定の曲率で湾曲して突出する鋼製曲管16が設置される。この鋼製曲管16は、開削時に撤去される鋼製セグメント41cを挟んでその上下に隣接配置された鋼製セグメント41a,41a間(又は41b,41b間)に掛け渡されて、推進管掘削機を用いて埋設配置される。
【0028】
図6に示すように、上記推進管掘削機18は、推進管となる上記鋼製曲管16の先端に小型掘削機20を取り付けてなるものであり、シールドトンネル2内に設けた推進ジャッキ22によって鋼製曲管16を同一の湾曲形状を有したガイド24に沿わせて押し出して一定曲率の円弧状に推進させるようになっている。また、その推進と同時に鋼製曲管16の先端に取り付けた小型掘削機20で地山の土砂を掘削し、その掘削土砂を鋼製曲管16内を通じてシールドトンネル2内に排土して掘進していくようになっている。図示する実施形態では、当該推進管掘削機18はシールドトンネル2の下部に設けられている鋼製セグメント41a又は41bに形成された発進口を通じてシールドトンネル2の内部から側方の地山E中に向けて発進されると、上方に向けて一定曲率の円弧状に掘進して行きながら当該シールドトンネル2の上部に設けられている鋼製セグメント41a又は41bに形成された到達口をなす開口に帰着到達するようになっている。また、鋼製曲管16はその掘進に伴って逐次に継ぎ足されていき、これにより発進口と到達口との間を円弧状に結んで、シールドトンネル2の側方の地山E中に、その形成予定の拡幅部8の外側を囲繞するようにして埋設される。また、この鋼製曲管16は拡幅部8の形成予定部位に、そのトンネル長手方向に沿って所定のピッチで複数が設置される。
【0029】
ここで、本発明にあっては、鋼製曲管16にはその断面の縦横比が2:1あるいは3:1の矩形状をなすものが採用される。即ち、トンネル径方向を縦とし、トンネル長手方向を横とした縦長矩形断面の鋼製曲管16が使用され、その口径は鋼製セグメント41aの補強リブと主桁12との間に収まる大きさに設定される(図5参照)。つまり、この鋼製曲管16は鋼製セグメント41a,41bの補強リブ14を避けてそのスキンプレート10を貫通して配置され、予めスキンプレート10には当該貫通部位に同口径の発進口及び到達口をなす開口43が形成されている。そして、その発進口から発進される鋼製曲管16の先頭部には、正方形断面で掘進する小型掘削機20がその縦横比に相応して、2連あるいは3連で設けられて推進管掘削機18が構成される。図示する本実施の形態では図5,図7に示す様に、上記縦横比は2:1とされ、小型掘削機20は同一のものが2連で設けられている。
【0030】
図7に示すように、各小型掘削機20は、中心部の中空回転軸201廻りに回転する大径の回転盤202と、この回転盤202に120度間隔で取り付けられる3つの自転盤203とを有し、自転盤203は回転盤202の回転中芯を公転軸として公転しつつ自転する様になっている。そして、この自転盤203には、その自転軸204からオフセットされて多数のカッタービット205が設けられている。つまり、当該カッタービット205は自転盤203の自転軸204廻りに自転し、かつ同時に回転盤202の中空回転軸201廻りに公転して、遊星運動軌跡を描きながら土砂を矩形状に掘削し得る様になっており、掘削した土砂は中空回転軸201の孔部201aを通じてシールドトンネル2内へと排土されるようになっている。
【0031】
また、この推進管掘削機18にあっては、鋼製曲管16の先頭に小型掘削機20が2連で取り付けられて構成されているので、円弧状に掘進していく際に、その掘進孔の中心の内側と外側とに並設配置された小型掘削機20,20の掘削量のバランスを調整することで推進管掘削機18の掘進方向の微調節を行うことができ、円弧状の掘進孔の掘削形成精度を高水準に保つことができる。
【0032】
さらに、前記推進管掘削機18内には、その鉛直面内の傾斜角度を検出する図8に示すような角度検出器300を設けて、この角度検出器300が検出する傾斜角度の増加率と推進管掘削機18の推進長の増加率とを一定に保って掘削することで、掘進孔を一定曲率の円弧状に高精度に保ちながら掘進して鋼製曲管16を設置して行くことができる。ここで、図8に示す角度検出器300は重錘式のものになっている。この重錘式角度検出器300は推進管掘削機18内のフレーム206に取り付けられる支持ブラケット301と、この支持ブラケット301にベアリング302を介して回転自在に軸支された支持軸303と、この支持軸303に固設された重錘304と、支持軸303の軸端に一体的に固設された駆動側歯車305と、支持ブラケット301に取り付けられたエンコーダ306と、このエンコーダ306の入力軸307に固設されて上記駆動側歯車305に噛合する被動側歯車308とからなる。この重錘式角度検出器300は推進管掘削機18が円弧状に推進移動されて行くことによって、その指向する姿勢角度が鉛直面内で変化しても、重錘304は絶えず重力によって鉛直下方に垂下した状態に保たれるので、その姿勢角度の変化分が駆動側と被動側の2つの歯車305,308とを介してエンコーダ306に入力されて、その鉛直面内での姿勢変化の角度が検出出来る様になっている。
【0033】
また上述のようにして鋼製曲管16が設置されると、次に図2(c)及び図3(c)に示すように、当該鋼製曲管16の周囲の地山Eを地盤改良する地盤改良工程と補剛工程とが行なわれる。地盤改良工程では、鋼製曲管16内に地盤改良用注入管(図示省略)を挿入し、この注入管に凍結剤やセメントミルク等の改良剤を供給して、鋼製曲管16に形成してある吐出孔16aを介してその拡幅部分の周囲の地山E中に吐出させて、鋼製曲管16に沿った部分を固結改良して改良地盤E1とする。
【0034】
次に、補剛工程が行われる。この補剛工程では、図9と図10とに示すように、鋼製曲管16の内部に補強鋼材26を挿通し、当該補強鋼材26の両端は鋼製セグメント41bまたは41aの主桁12に接合プレート28を介して固設する。爾後、鋼製曲管16内と鋼製セグメント41b(または41a)内とに更に固化材30を充填して補剛する。ここで、当該補強鋼材26にはH型鋼やI型鋼あるいは鋼管等を採用し得る。また、固化材30にはモルタルやコンクリートを採用し得る。なお、補強鋼材26の両端は鋼製セグメント41bまたは41aに剛接合すれば良く、その接合構造は特に限定されるものではない。
【0035】
そして、固化材30の固化後に、図2(d),図3(d)とに示すように、開削工程を行う。この開削工程では、先ず拡幅部8の形成部位の鋼製セグメント41cを撤去してから、その側方の土砂を掘削して鋼製曲管16の内側面を露出させる。
【0036】
爾後、図2(e),図3(e)とに示すように、鋼製曲管16の露出面を覆ってこれらの鋼製曲管16を本設構造体の一部として利用しつつ、鉄筋コンクリート造の覆工体32を形成する覆工体形成工程を行い、当該覆工体32の形成後にシールドトンネル2の内部に本線道路や道路拡幅部等を構築する。
【0037】
よって、上述したようにして構築されたシールドトンネル2の拡幅部8は、その開口上下縁にそれぞれ配置された鋼製セグメント41a若しくは41bに両端部が固定されて配設されて側方に一定の曲率で円弧状に湾曲して突出する鋼製曲管16と、この鋼製曲管16内に挿通配置されて両端部が突出するH形鋼等からなる補強鋼材26と、当該鋼製曲管16内に充填された固化材30と、鋼製曲管16の内側を覆って設けられて拡幅部8の内壁面を形成する覆工体32とを備えて構築され、かつ鋼製曲管16はその断面の縦横比が2:1あるいは3:1の矩形状をなして鋼製セグメント41a,41bの主桁12と補強リブ14とを避けてそれらの間に位置してスキンプレート10を貫通して配置され、当該補強鋼材26の両端はそれぞれ鋼製セグメント41a,41bの主桁12に接合プレート28を介して固設されている構造を有したものとなる。
【0038】
《第2実施形態》
図11〜図19は、本発明の第2の実施形態を示すものである。この第2実施形態は、本発明を、並設された2つのシールドトンネルを開削連通させて拡幅部を形成する場合に適用する例を示しており、具体的には、両トンネルを連通させて地下高速道路の分岐・合流部を構築する例を示している。ここで、図11〜図19はその拡幅部の形成方法の各施工工程を順次に示す概略図である。
【0039】
図11に示すように、本線道路を設けるための大きい円形断面の第1シールドトンネル502と、この本線道路用の第1シールドトンネル502の側方に近接して、分岐・合流部用の道路を設けるための小さい円形断面の第2シールドトンネル504とが並設されている。各シールドトンネル502,504はトンネル軸が相互に平行になるように隣接配置される。このように近接して並設された2つの円形断面のシールドトンネル502,504の対向した側部同士が開削されて相互に連通結合されることで、2連状態のめがね型の道路トンネルが形成される。なお、シールドトンネル502,504の円形断面は図示する真円状のものに限定されるものではなく、楕円状のものであっても良い。
【0040】
図12は鋼製曲管設置工程を示している。図示するように、この鋼製曲管設置工程では、両シールドトンネル502,504間の連通結合予定部位(拡幅部508)の上側と下側との両側の地山E中に、シールドトンネル502,504の一方から他方に向けて、推進管掘削機を用いて円弧状の鋼製曲管506が上下一対で掛け渡されて設置される。ここでは、第1シールドトンネル502側を発進部とし、第2シールドトンネル504側を到達部として鋼製曲管506が推進工法により順次地山中に押し込まれて渡設される。そして、これらの鋼製曲管506はトンネル長手方向に沿って所定のピッチで所定数ずつ設置される。
【0041】
この第2実施形態では具体的には、図20に示すように、セグメント1リング毎に3つの鋼製曲管506が設けられる。即ち、各シールドトンネル502,504の覆工体510を形成するセグメント512は、8個で1周分を形成している。それぞれのシールドトンネル502,504において鋼製曲管506が掛け渡される部位のセグメント512には鋼製曲管506の受け口部が予め着脱可能な蓋体で閉塞されて設けられていて、当該受け口部が開放されて鋼製曲管506が設置される。セグメント512は幅は1.2mの鋼板または鋼板コンクリート製であり40cm間隔で補強リブ514が立設されており、当該補強リブ514間に位置されて鋼製曲管506は40cmピッチで設けられている。
【0042】
また、この第2実施形態では、上記鋼製曲管506は専ら剛性保持用として設けられ、当該鋼製曲管506の外側には地盤改良用の薬液を周囲の地山E中に注入するための鋼製曲管16が推進工法により同様にして設けられている。この薬液注入用鋼製曲管516は、その管面に多数の薬液柱入口(図示せず)を有し、トンネル長手方向に並設されている剛性保持用の鋼製曲管506,506のほぼ中間部に位置されて、これらと相互のピッチがずらされて配置されており、これより地山E中に注入する薬液が上下の剛性保持用鋼製曲管506で挟まれている内方部分の地山中まで伝わり易くされている。また、薬液注入用鋼製曲管516の径は剛性保持用鋼製曲管506よりも細く10〜15cmとされている。
【0043】
図13はその地盤改良工程を示し、上記薬液注入用鋼製曲管516を通じて周囲の地山E中の地盤改良領域518に薬液が注入されて地盤改良が行われる。なお、剛性保持用鋼製曲管506に薬液注入機能も併せ持たせて当該薬液注入用鋼製曲管516は省略する様にしても良い。さらには、当該薬液の注入は剛性保持用鋼製曲管506を通じて行わずに、覆工体510のセグメントに予め形成してある薬液注入口より行って、地盤改良するようにしても良い。
【0044】
地盤改良作業が済むと、次ぎに、鋼製曲管506の内部に補強鋼材507を挿通して、補強鋼材507の両端を鋼製セグメント512に固設するとともに、鋼製曲管506内に固化材524を充填して補剛する補剛工程を行う。この補強鋼材507には、図21に示すようにH形鋼507a若しくはI形鋼を採用し得る。あるいは、図22(a),(b)に示すように、補強鋼材507には鋼管507bを採用して2重管構造となしても良い。そして、図21および図22に示すように、鋼製曲管506内の空隙には、両端を閉塞板(図示せず)で閉止してコンクリート等の固化材524を充填する。ここで、補強鋼材507に鋼管507bを採用して鋼製曲管506を二重管構成となした場合には、図22(a)に示すように、固化材524は補強用の鋼管507aの内外両側の空隙内に充填しても良いし、同図(b)に示すように、当該固化材524は内管506bの外側の環状の空隙のみに充填するようにしても良い。またさらには、図21及び図22(a)に示すように、剛性保持用鋼製曲管506内には、当該剛性保持用鋼製曲管506にプレストレスを導入するために、その図心の近傍に沿わせてその全長に亘って、シース管526を介して鋼線528を配設し、当該鋼線528の両端を張力を付与した状態で閉塞板(図示せず)に固定係止させる様にしても良い。
【0045】
上記補剛工程の次には、図14に示すように支保工設置工程を行う。この支保工設置工程では、連通結合部(拡幅部508)のセグメントを切り広げたときに、両シールドトンネル502,504に変形が生じることを防止するための内部支保工520が両シールドトンネル502,504内に、例えば横断面矩形状等に組立設置される。
【0046】
図15及び図16はシールドトンネル502,504を連通形成する開削工程を示す。即ち、地盤改良領域518に注入した薬液が固化して改良地盤E1が形成されると、両シールドトンネル502,504の連通結合部に位置した、拡幅部508形成部位の鋼製セグメントを撤去して、その側方の土砂を掘削して鋼製曲管506の内側面を露出させる。 爾後、図17〜図19に示すように、鋼製曲管506の露出面を覆ってこれらの鋼製曲管506を本設構造体の一部として利用しつつ、拡幅部508に鉄筋コンクリート造の覆工体521を形成する覆工体形成工程を行う。この覆工体形成工程では、先ず、両シールドトンネル502,504において、そのセグメントリング(覆工体510)が切り開かれた開口部の上側部の端縁同士と下側部の端縁同士とに掛け渡して連結セグメント522が設置される。この連結セグメント522は鋼板製でなる。そして、連結セグメント522が設置されると、図18のコンクリート充填工程に示すように、上下の各連結セグメント522と鋼製曲管506との間の空隙に、鉄筋を配してコンクリート524が充填される。そして、当該コンクリート524が硬化すると、図19の支保工撤去工程に示すように、内部支保工520が撤去されて無支柱の2連状態の道路トンネルが形成されることになる。
【0047】
ここで、この第2実施形態にあっても、前述の第1実施形態の場合と同様に、鋼製曲管506にはその断面の縦横比が2:1あるいは3:1の矩形状をなすものが採用される。即ち、トンネル周方向を縦とし、トンネル長方向を横とした縦長矩形断面の鋼製曲管506が使用され、その口径は鋼製セグメント512の補強リブ514と主桁512aとの間に収まる大きさに設定される(図20参照)。つまり、この鋼製曲管506は鋼製セグメント512の補強リブ514を避けてそのスキンプレート512bを貫通して配置され、予めスキンプレート512bには当該貫通部位に同口径の発進口及び到達口をなす開口が形成されている。そして、その発進口から発進される鋼製曲管506の先頭部には、図7で示したように、正方形断面で掘進する小型掘削機20がその縦横比に相応して、2連あるいは3連で設けられて推進管掘削機18が構成される。即ち、当該第2の実施形態にあっても、前述の第1実施形態と同様に、図7にて説明した推進管掘削機18が使用され、この推進管掘削機18にも、図8に示すような角度検出器30が設けられて、この角度検出器300が検出する傾斜角度の増加率と推進管掘削機18の推進長の増加率とが一定に保たれて掘削が行われる。これにより、掘進孔を一定曲率の円弧状に高精度に保ちながら掘進して鋼製曲管506を設置して行くことができる。
【0048】
なお、前記鋼製曲管設置工程と内部支保工設置工程との間に、周囲の地山E中に薬液を注入して地盤改良を行う地盤改良工程を備えた構成となしているが、不必要であれば当該地盤改良工程は省略するようにしても良い。
【0049】
よって、上述したようにして構築されたシールドトンネル502,504の拡幅部508は、両シールドトンネル502,504における拡幅部508の開口の上下縁に近接して配置された鋼製セグメントに両端部が固定配設されて、それぞれ上側方と下側方とに一定の曲率で円弧状に湾曲して突出する上下一対の鋼製曲管506と、この鋼製曲管506内に挿通配置されて両端部が当該鋼製曲管506から突出して鋼製セグメントに固定された補強鋼材 と、鋼製曲管506内に充填された固化材 と、鋼製曲管506を覆って設けられて拡幅部508の内壁面を形成する覆工体521とを備え、鋼製曲管506は、その断面の縦横比が2:1あるいは3:1の矩形状をなして、鋼製セグメント512のリブ514を避けてスキンプレート512bを貫通して配置され、補強鋼材507の両端はそれぞれ鋼製セグメント512の主桁512aに固設されている構造を有したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態に係るシールドトンネルの拡幅部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】拡幅部の形成工程を順次に示したものであって、図1中のII−II線部部位の矢視断面図である。
【図3】拡幅部の形成工程を順次に示したものであって、図1中のIII−III線部の矢視断面図である。
【図4】シールドトンネルの側部に防護工として鋼製曲管が取り付けられた状態を示す概略斜視図である。
【図5】湾曲した鋼製セグメントを平坦に展開した状態で示した図である。
【図6】鋼製曲管の設置工程である。
【図7】本発明に使用する推進管掘削機の先端面を示す図である。
【図8】推進管掘削機の内部に設けられる角度検出器を示すもので、(a)は鉛直状態時の正面図、(b)はその側面図、(c)は最大角度まで傾斜した状態の側面図である。
【図9】鋼製曲管と鋼製セグメントとの接続部の構造を示す部分断面図である。
【図10】図9中のX−X線矢視断面図である。
【図11】本発明に係る並設シールドトンネルの連通部形成方法の第2実施形態における、シールドトンネル設置工程を示す概略図である。
【図12】第2実施形態における、鋼製曲管設置工程を示す概略図である。
【図13】第2実施形態における、地盤改良工程を示す概略図である。
【図14】第2実施形態における、内部支保工設置工程を示す概略図である。
【図15】第2実施形態における、シールドトンネル連通工程のセグメントを切り開き段階を示す概略図である。
【図16】第2実施形態における、シールドトンネル連通工程の地山掘削段階を示す概略図である。
【図17】第2実施形態における、連結セグメント設置工程を示す概略図である。
【図18】第2実施形態における、コンクリート充填工程を示す概略図である。
【図19】第2実施形態における、支保工撤去工程を示す概略図である。
【図20】図12中のA部を内側から示す展開図である。
【図21】鋼製曲管内に補強鋼材としてH形鋼を挿通配置した場合の断面図である。
【図22】鋼製曲管内に補強鋼材として鋼管挿通配置して二重管構成にした場合の各種変形例の断面図であり、(a)はコンクリートを内管の内外両側の空隙内にコンクリートを充填したもの、(b)は内管の外側空隙内のみにコンクリートを充填したものを示す。
【符号の説明】
【0051】
2 シールドトンネル
4 セグメント
41a,41b,41c 鋼製セグメント
6 覆工体(セグメント)
8 拡幅部
10 スキンプレート
12 主桁
14 補強リブ
16 鋼製曲管
18 推進管掘削機
20 小型掘削機
26 補強鋼材
28 接合プレート
30 固化材
32 拡幅部の覆工体
300 角度検出器
502 第1シールドトンネル
504 第2シールドトンネル
506 鋼製曲管
507 補強鋼材
507a H型鋼
507b 鋼管
508 拡幅部
510 覆工体
512 セグメント
514 補強リブ
516 薬液注入用の鋼製曲管
518 地盤改良領域
520 内部支保工
522 連結セグメント
524 固化材
526 シース管
528 鋼線
E1 改良地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドトンネルのセグメントの一部を撤去して、その側方を掘削することによって拡幅部を形成するシールドトンネルの拡幅部形成工法であって、
開削時に撤去される拡幅部形成部位のセグメントの周方向両側に近接配置された鋼製セグメントから側方に円弧状に一定の曲率で湾曲して突出する鋼製曲管を、推進管掘削機を用いてトンネル長手方向に沿って所定のピッチで設置して、開削部位の周囲を該鋼製曲管で囲繞する鋼製曲管設置工程と、
該鋼製曲管の内部に補強鋼材を挿通して、該補強鋼材の両端を鋼製セグメントに固設するとともに、該鋼製曲管内に固化材を充填して補剛する補剛工程と、
該固化材の固化後に、拡幅部形成部位のセグメントを撤去し、その側方の土砂を掘削して、鋼製曲管の内側面を露出させる開削工程と、
該鋼製曲管の露出面を覆って覆工体を形成する覆工体形成工程と、
を備え、
該鋼製曲管は、その断面の縦横比が2:1あるいは3:1の矩形状をなし、その先頭部には正方形断面で掘進する掘削機が2連あるいは3連で設けられて該推進管掘削機が構成されるとともに、該鋼製セグメントのリブを避けてそのスキンプレートを貫通して配置される、
ことを特徴とするシールドトンネルの拡幅部形成工法。
【請求項2】
前記シールドトンネルが単独で設けられ、
前記鋼製曲管は、前記開削時に撤去される拡幅部形成部位のセグメントの上下両側に近接配置された鋼製セグメント間に掛け渡されて開削部位の周囲を囲繞する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシールドトンネルの拡幅部形成工法。
【請求項3】
前記シールドトンネルが隣接されて複数並設されており、
前記鋼製曲管は、その隣接して並設された2つのシールドトンネル間で、その開削時にそれぞれ撤去される拡幅部形成部位のセグメントの上下両側に近接配置された鋼製セグメント同士間に掛け渡されて上下一対で配設されて、開削部位の周囲を囲繞する、
ことを特徴とする請求項1に記載のシールドトンネルの拡幅部形成工法。
【請求項4】
前記推進管掘削機内にその鉛直面内の傾斜角度を検出する角度検出器を設けて、該傾斜角度の増加率と該推進管掘削機の推進長の増加率とを一定に保って掘削することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシールドトンネルの拡幅部形成工法。
【請求項5】
単独設置されたシールドトンネルのセグメントを部分的に撤去して、その側方を掘削することによって形成されるシールドトンネルの拡幅部構造であって、
該シールドトンネルの拡幅部開口の上下縁に近接配置された鋼製セグメントに両端部が固定されて設けられ、側方に一定の曲率で円弧状に湾曲して突出する鋼製曲管と、
該鋼製曲管内に挿通配置され、両端部が該鋼製曲管から突出して該鋼製セグメントに固定された補強鋼材と、
該鋼製曲管内に充填された固化材と、
該鋼製曲管を覆って設けられ、該拡幅部の内壁面を形成する覆工体と、
を備え、
該鋼製曲管は、その断面の縦横比が2:1あるいは3:1の矩形状をなして、該鋼製セグメントのリブを避けてスキンプレートを貫通して配置されている、
ことを特徴とするシールドトンネルの拡幅部構造。
【請求項6】
隣接して並設されたシールドトンネルの対面部位のセグメント同士を撤去し、その側方を掘削して両シールドトンネルを連通させて形成するシールドトンネルの拡幅部構造であって、
両シールドトンネルの拡幅部開口の上下縁に近接して配置された鋼製セグメントに両端部が固定されて設けられ、それぞれ上側方と下側方とに一定の曲率で円弧状に湾曲して突出する上下一対の鋼製曲管と、
該鋼製曲管内に挿通配置されて両端部が該鋼製曲管から突出して該鋼製セグメントに固定された補強鋼材と、
該鋼製曲管内に充填された固化材と、
該鋼製曲管を覆って設けられ、該拡幅部の内壁面を形成する覆工体と、
を備え、
該鋼製曲管はその断面の縦横比が2:1あるいは3:1の矩形状をなして、該鋼製セグメントのリブを避けてスキンプレートを貫通して配置されている、
ことを特徴とするシールドトンネルの拡幅部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−50779(P2008−50779A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225821(P2006−225821)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】