説明

シールドトンネル接続構造

【課題】立坑とシールドトンネル端部との間に介在させる弾性部材の許容変位量を増加させる。
【解決手段】立坑とシールドトンネル(3)端部とを弾性部材9を介在させて接続する構造であって、弾性部材9を複数に分断する仕切部材8を備える。具体的には、仕切部材8を複数備える。さらに、弾性部材9の両端部に接合されて立坑とシールドトンネル(3)端部とに夫々固定する一対の固定部材7と、その一対の固定部材7及びその間の仕切部材8を遊合して貫通するボルト14と、そのボルト14に結合するナット15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立坑とシールドトンネル端部との接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
立坑と、その立坑から延びるトンネルとでは、それぞれ地震応答特性が異なる。
このため、地震が発生すると、立坑とトンネルがそれぞれ異なる挙動をし、立坑とトンネルの接続部が破損してしまうことがあった。
そこで、立坑とシールドトンネル端部の間に弾性部材を介在させることにより、立坑とシールドトンネルのそれぞれ異なる挙動を吸収させている。
【0003】
本出願人は、特許文献1において、立坑とシールドトンネル端部を接続させるにあたり、高いシール性能と容易な施工を両立させることを課題として、立坑とシールドトンネル端部とを弾性部材を介在させて接続する構造及び方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−222921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の弾性部材は、その形状を50×50mm までしか形成できず、このため、許容変位量が25mm(引張、圧縮、せん断方向)と制限された形にしか対応できない。
また、弾性部材の形状が大きくなった場合には、弾性部材が土水圧を受けることになり、構造上問題が生じる。
【0006】
本発明の課題は、立坑とシールドトンネル端部との間に介在させる弾性部材の許容変位量を増加させることである。
さらに、本発明は、弾性部材の耐荷重性能を向上させることも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、立坑とシールドトンネル端部とを弾性部材を介在させて接続する構造であって、前記弾性部材を複数に分断する仕切部材を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシールドトンネル接続構造であって、前記仕切部材を複数備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のシールドトンネル接続構造であって、前記弾性部材の両端部に接合されて前記立坑とシールドトンネル端部とに夫々固定する一対の固定部材と、前記一対の固定部材及びその間の前記仕切部材を遊合して貫通するボルトと、前記ボルトに結合するナットと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、立坑とシールドトンネル端部との間に介在させる弾性部材の許容変位量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用したシールドトンネル接続構造の一実施形態の構成を示すもので、シールドトンネル端部の周囲構造部を含む中央縦断面図(a)と、そのフレックスリングの固定部材の正面図(b)である。
【図2】図1(b)の矢印A部の拡大詳細図である。
【図3】図1のフレックスリングの固定部材及び仕切部材の一部を拡大した正面図(a)及び断面図(b)である。
【図4】図2のフレックスリングの引張変形時を示した図である。
【図5】図2のフレックスリングの圧縮変形時を示した図である。
【図6】図2のフレックスリングのせん断変形時を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(実施形態)
図1は本発明を適用したシールドトンネル接続構造の一実施形態の構成を示すもので、 1は土留め壁、2はコンクリート、3はシールドトンネル、4はセグメント、5は裏込め注入材、6はフレックスリングである。
【0013】
図示のように、図示しないシールドマシンの発進立坑の土留め壁1には、シールドマシンの発進後において、その掘削穴の内周にコンクリート2が打設して覆工されて、シールドトンネル3のセグメント4の端部外周には裏込め注入材5が注入される。
そして、セグメント4の端部とコンクリート2とはフレックスリング6を介在させて接続される。
【0014】
図2は図1の矢印A部を拡大して詳細に示したもので、フレックスリング6は、一対の固定部材7と、その間の複数の仕切部材8と、これら固定部材7及び仕切部材8間の弾性部材9と、固定部材7をセグメント4端面に固定するボルト11及びナット12と、固定部材7をコンクリート2端面に固定するセラミックインサート13と、固定部材7及び仕切部材8を貫通して結合する長ボルト14及びナット15と、固定部材7及び仕切部材8間に介設するスプリング16とから構成される。
【0015】
図示のように、フレックスリング6は、一対のステンレス鋼板による固定部材7の間に、複数(図示例では二枚)のステンレス鋼板による仕切部材8と、シリコンやポリウレタン等を主成分とするペースト状のシーリング材を硬化させて優れた変形性、対水圧性、耐久性、施工性を具備する複数(図示例では三個)の弾性部材9とをシール性接着剤の接着により交互に積層してなる。
こうして図示例において、弾性部材9は二枚の仕切部材8により三個に分断されている。
【0016】
そして、図示左側の固定部材7は、弾性部材9より外周側において、セグメント4の端部の側面板に対しシール材によるゴム板を介装して、セラミック製のボルト11及びナット12で固定される。
また、図示右側の固定部材7は、弾性部材9より外周側において、コンクリート2の端面から予め鉄筋に接合して突出したセラミックインサート13で固定される。
【0017】
さらに、固定部材7及び仕切部材8は、弾性部材9より内周側において、長ボルト14を挿通して遊合されるとともに、長ボルト14の先端にナット15を結合される。
また、固定部材7と仕切部材8とナット15との間には、圧縮型のコイルスプリング16がそれぞれ介設される。
なお、長ボルト14の先端側及びナット15の部分は、図示のように、コンクリート2の端面に形成された凹部2aに臨んでいる。
【0018】
以上のフレックスリング6はセグメント4の端面に対応した扇状で、シールドトンネル3を形成するセグメントリングに対応して全体としてリング状に構成される。
【0019】
そして、リング状のフレックスリング6の弾性部材9より外周側には、コンクリート2と裏込め注入材5との間において、発泡スチロールによるバックアップ材17が充填されている。
また、リング状のフレックスリング6の固定部材7及び仕切部材8より内周側は、コンクリート2端面の凹部2aからセグメント4の端面板の内周において、耐火ブランケット18で塞がれている。
【0020】
図3はフレックスリング6の固定部材7及び仕切部材8の一部を拡大して示したもので、図示のように、固定部材7の内周側に、長ボルト14を遊合する長穴7aが形成されて、仕切部材8の内周側にも、長ボルト14を遊合する長穴8aが形成されている。
【0021】
なお、固定部材7の外周側には、図1(b)に示すように、ボルト11またはセラミックインサート13を通す丸穴7bが形成されている。
【0022】
以上において、セグメント4端部及びコンクリート2間のフレックスリング6は、弾性部材9が具備する弾性力と、固定部材7、仕切部材8及びナット15の間に夫々介設した圧縮型のコイルスプリング16の付勢力とによって、通常時は図2に示すような位置関係に保持されている。
【0023】
図4はフレックスリング6の引張変形時を示したもので、地震によりセグメント4の端部とコンクリート2と間隔が拡がる時は、図示のように、水平状態の長ボルト14に沿って固定部材7及び仕切部材8が夫々移動するとともに、その間の弾性部材9が夫々引っ張られた状態に変形する。
【0024】
図5はフレックスリング6の圧縮変形時を示したもので、地震によりセグメント4の端部とコンクリート2と間隔が狭まる時は、図示のように、水平状態の長ボルト14に沿って固定部材7及び仕切部材8が夫々移動するとともに、その間の弾性部材9が夫々圧縮された状態に変形する。
【0025】
図6はフレックスリング6のせん断変形時を示したもので、地震によりセグメント4の端部とコンクリート2にせん断力が作用する拡がる時は、図示のように、長ボルト14に沿って固定部材7及び仕切部材8がその長穴7a・8aによりせん断方向に夫々移動するとともに、その間の弾性部材9が夫々せん断方向に変形する。
【0026】
このように、フレックスリング6は、地震の荷重作用方向のみ変位を許容しながら拘束することで、フレキシビリティを確保している。
【0027】
以上のとおり、実施形態のフレックスリング6によれば、立坑の土留め壁1内周のコンクリート2とシールドトンネル3端部とに夫々固定する一対の固定部材7の間において、二枚の仕切部材8により三個の弾性部材9に分断したので、許容変位量を増加させることができる。
【0028】
そして、一対の固定部材7及びその間の仕切部材8の長穴7a・8aに夫々遊合させて挿通した長ボルト14にナット15を結合したので、弾性部材9の耐荷重性能を向上させることもできる。
【0029】
(変形例)
以上の実施形態においては、発進立坑とシールドトンネルの接続構造としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、中間立坑や到達立坑との接続部に適用してもよい。
また、マンホールと下水道管の接続に用いてもよい。
【0030】
さらに、実施形態では、固定部材及び仕切部材のボルト通し穴を長穴としたが、ボルトより大径の丸穴であってもよい。
また、トンネルの断面形状、鋼材の固定方法、セグメントの種類(鉄筋コンクリート製、鋼製等)、各部材の材質等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1 土留め壁
2 コンクリート
2a 凹部
3 シールドトンネル
4 セグメント
5 裏込め注入材
6 フレックスリング
7 固定部材
7a 長穴
7b 丸穴
8 仕切部材
8a 長穴
9 弾性部材
11 ボルト
12 ナット
13 セラミックインサート
14 ボルト
15 ナット
16 コイルスプリング
17 バックアップ材
18 耐火ブランケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立坑とシールドトンネル端部とを弾性部材を介在させて接続する構造であって、
前記弾性部材を複数に分断する仕切部材を備えることを特徴とするシールドトンネル接続構造。
【請求項2】
前記仕切部材を複数備えることを特徴とする請求項1に記載のシールドトンネル接続構造。
【請求項3】
前記弾性部材の両端部に接合されて前記立坑とシールドトンネル端部とに夫々固定する一対の固定部材と、
前記一対の固定部材及びその間の前記仕切部材を遊合して貫通するボルトと、
前記ボルトに結合するナットと、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のシールドトンネル接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−193552(P2012−193552A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58716(P2011−58716)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】