説明

シールドトンネル覆工方法

【課題】施工コストを低減させたシールドトンネル覆工方法を提供する。
【解決手段】地盤を掘削してシールドトンネルを形成するシールドマシン13内で複数の覆工セグメントから覆工セグメント組付体14p−14uを作製し、シールドマシン13内で覆工セグメント組付体14p−14uに補強シート15を貼り付け、シールドマシン13からシールドトンネルの急曲線部へ補強シート15が貼り付けられた覆工セグメント組付体14p−14uを排出してシールドトンネルを覆工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルの覆工セグメントを補強するシールドトンネル覆工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法とは、シールドマシンを用いて地上から開削せずに、地下を掘り進む工法である。シールドマシンは、シールドマシン筒体と、シールドマシン筒体の前端に取り付けられたカッターヘッドと、シールドマシン筒体に内部に配置された油圧ジャッキを有する。そして、カッターヘッドを作動させて前面の地盤を掘削する。シールドマシン筒体の内周に沿って複数の覆工セグメントから覆工セグメント組付体を作製する。油圧ジャッキを作動させて覆工セグメント組立体をシールドマシン筒体から後方へ押すとともに反作用でシールドマシンを前進させる。覆工セグメント組付体は、シールドマシン筒体から排出されてシールドトンネルを覆工する。
【0003】
ところで、急曲線状のシールドトンネルの建設時において、油圧ジャッキの片押しやシールドマシンのテール部の競りは、覆工セグメントを破損させることがある。
【0004】
これに対して、覆工セグメントに局所的な荷重が作用しても、ひび割れ、欠けなどの欠陥を防止するため、覆工セグメント自体の端面に繊維補強セメント系混合材料を充填することで、合理的に補強される(特許文献1参照)。
【0005】
また、同不具合を防止するために、覆工セグメントを強制的に鋼材で拘束する方法も提案されている(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2004−000867号公報
【特許文献2】特願2004−276893号公報
【特許文献3】特願平04−040397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前者は、製作段階において、繊維補強セメント系混合材料を充填するため、コスト高になる。また、後者は、施工時のシールドマシン内の作業空間が狭くなり他のセグメント組立等の作業自体が困難になる。
【0008】
そこで、本発明の第1の目的は、施工コストを低減させたシールドトンネル覆工方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の第2の目的は、作業性を改善したシールドトンネル覆工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、符号を付して本発明の特徴を説明する。なお、符号は参照のためであり、本発明を実施形態に限定するものでない。
【0011】
本発明の第1の特徴に係わるシールドトンネル覆工方法は、地盤(G)を掘削してシールドトンネル(12)を形成するシールドマシン(13)内で複数の覆工セグメントから覆工セグメント組付体(14p−14u)を作製し、シールドマシン(13)内で覆工セグメント組付体(14p−14u)に補強シート(15)を貼り付け、シールドマシン(13)からシールドトンネル(12)の急曲線部(12a)へ補強シート(15)が貼り付けられた覆工セグメント組付体(14p−14u)を排出してシールドトンネル(12)を覆工する。
【0012】
以上の第1の特徴において、隣り合う覆工セグメント組付体(14p−14u)に補強シート(15)を連続的に貼り付ける。
【0013】
補強シート(15)として繊維シートを用い、覆工セグメント組付体(14p−14u)に前記繊維シートを接着する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の特徴によれば、補強シートは覆工セグメント組付体を補強するので、覆工セグメン組付体の損傷を防止することができる。
【0015】
補強シートによる施工は、シールドマシン内の作業空間を狭めないので、作業性を確保することができる。
【0016】
補強シートによる施工は、必要箇所を補強するので、施工コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】シールドトンネルの掘削方法を示す概要側面図である。
【図2】シールドトンネルの急曲線部の掘削方法を示す概要平面図である。
【図3】図2に示すシールドトンネルの急曲線部の掘削方法を示す拡大断面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
図1に示すように、シールドトンネル掘削システム10は、地上から地盤Gを縦に延びる発進立坑11と、発進立坑11から横方向にシールドトンネル12を掘削するシールドマシン13と、シールドトンネル12を覆う覆工セグメント構造14を有する。
【0020】
ここで、発進立坑11は、シールドマシン13の部品、覆工セグメント構造14の各覆工セグメント、必要な材料を搬入し、また、掘削した土砂を運び出すために用いられる。
【0021】
シールドマシン13は、中空のシールドマシン筒体13aと、シールドマシン筒体13aの前端に取り付けたカッターヘッド13bと、シールドマシン筒体13aの内周に配置された推進ジャッキ13c、13dを有する。
【0022】
覆工セグメント構造14は、シールドトンネル12の延伸方向に直列に連続的に配置された複数の覆工セグメント組付体14a、14b、14c・・・14d、14e、14fからなる。各覆工セグメント組付体14a−14fは、シールドトンネル12の周方向に環状に配置された複数の覆工セグメントを有する。覆工セグメント同士は互いに結合される。各覆工セグメントは、鉄筋コンクリート、鋼、又は鋳鉄から作製される。
【0023】
図2に示すように、覆工セグメント構造14Aはシールドトンネル12の急曲線部12aにも配置される。図3に示すように、覆工セグメント構造14Aは連続する覆工セグメント組付体14p−14uを有する。覆工セグメント構造14Aの内面に補強シート15が貼り付けられる。補強シート15は、覆工セグメント組付体14p−14uの内面にそれぞれ配置された連続する補強シート部15a−15fを有する。補強シート15は、例えば、繊維シート、樹脂シートである。繊維シートは、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維、炭素繊維からなる。繊維シート、樹脂シートは覆工セグメント構造14Aの内面に接着される。なお、補強シート15は覆工セグメント構造14Aの隅角部を包み込むようにセグメント全面に貼り付けてもよい。
【0024】
次に、シールドトンネルの施工方法について説明する。
【0025】
図1において、クレーンによって発進立坑11から覆工セグメントを搬入する。覆工セグメントはシールドマシン13内に運ばれる。
【0026】
シールドマシン13のカッターヘッド13bを作動させて、カッターヘッド13bの前方の地盤Gを掘削する。シールドマシン筒体13a内でシールドマシン筒体13aの内周に沿って複数の覆工セグメントから環状の覆工セグメント組付体を作製する。シールドマシン筒体13a内で推進ジャッキ13c、13dを作動させて覆工セグメント組付体を後方へ押し出す。この反作用で、シールドマシン13は前進する。シールドマシン筒体13aから覆工セグメント組付体を排出してシールドトンネル12を覆工する。
【0027】
以下、カッターヘッド13bの作動、推進ジャッキ13c、13dの作動を繰り返して、シールドトンネル12を掘削し、覆工セグメント組付体14a―14fによりシールドトンネル12の内面を覆工する。
【0028】
次に、図2に示すシールドトンネル12の急曲線部12aの覆工方法を説明する。
【0029】
図3において、シールドマシン筒体13a内で複数の覆工セグメントから覆工セグメント組付体14pを作製する。覆工セグメント組付体14pの内面に補強シート15の補強シート部15aを貼り付ける。カッターヘッド13bの作動により地盤を掘削し、推進ジャッキ13cを作動させて覆工セグメント組付体14pをトンネル12内へ排出する。続いて、シールドマシン筒体13a内で複数の覆工セグメントから覆工セグメント組付体14qを、覆工セグメント組付体14pに連続するように、作製する。覆工セグメント組付体14qの内面に補強シート部15aに連続する補強シート部15bを貼り付ける。カッターヘッド13bの作動により地盤を掘削し、推進ジャッキ13c、13dを作動させて覆工セグメント組付体14qをトンネル12内へ排出する。以下、補強シート15の連続する補強シート部15c−15fをそれぞれ貼り付けた覆工セグメント組付体14r−14uを、推進ジャッキ13cによって、順に、シールドマシン筒体13aからトンネル12へ排出する。なお、覆工セグメント組付体14p−14uの外面に補強シート部15a−15fを貼り付けてもよい。
【0030】
ここで、補強シート15を用いた施工はシールドマシン筒体13a内の作業空間を狭めずに、作業性を確保する。補強シート15による施工は、必要箇所を補強するので、施工コストを低減する。
【0031】
また、シールドマシン13の外側の推進ジャッキ13cが補強シート部15fが貼り付けられた覆工セグメント組付体14uをシールドマシン筒体13aの後方へ押すとき、急曲線部12aの外側に対応する覆工セグメント14p−14uの部位に過大な軸力が作用する。また、シールドマシン13のテール部13eが覆工セグメント組付体14sと競り、覆工セグメント組付体14sに局所的な荷重が作用する。ここで、補強シート部15a−15fは覆工セグメント組付体14p−14uを補強するので、覆工セグメント組付体14p−14uのひび割れ、欠けを抑制する。
【0032】
以上の実施形態によれば、補強シート15による施工は、シールドマシン13内の作業空間を狭めないので、作業性を確保することができる。
【0033】
補強シート15による施工は、必要箇所を補強するので、施工コストを低減することができる。
【0034】
補強シート15は覆工セグメント組付体14p−14uを補強するので、覆工セグメン構造14の損傷を防止する。
【0035】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、また、各実施形態は発明の趣旨を変更しない範囲で変更、修正可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 シールドトンネル掘削システム
11 発進立坑
12 シールドトンネル
13 シールドマシン
14 覆工セグメント構造
15 補強シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削してシールドトンネルを形成するシールドマシン内で複数の覆工セグメントから覆工セグメント組付体を作製し、
シールドマシン内で覆工セグメント組付体に補強シートを貼り付け、
前記シールドマシンからシールドトンネルの急曲線部へ前記補強シートが貼り付けられた覆工セグメント組付体を排出して前記シールドトンネルを覆工する、
シールドトンネル覆工方法。
【請求項2】
隣り合う覆工セグメント組付体に前記補強シートを連続的に貼り付ける、
請求項1に記載のシールドトンネル覆工方法。
【請求項3】
補強シートとして繊維シートを用い、
前記覆工セグメント組付体に前記繊維シートを接着する、
請求項1に記載のシールドトンネル覆工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−57399(P2012−57399A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203204(P2010−203204)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】