説明

シールドマシンの解体方法、及び、リングガータ

【課題】シールドジャッキ及びリングガータを有するシールドマシンにおいて、その解体を容易に行えるようにする。
【解決手段】
スキンプレート21の底部に位置する底部ブロック22gについて隣接ブロック22f、22hとの連結状態を解き、底部ブロック22gを取り外す底部ブロック取り外し工程と、残りのブロック22a〜22fをスキンプレート21の内面に沿って周方向に移動させ、端部に位置する端部ブロック22fをスキンプレート21の底部に位置付けるブロック移動工程と、端部ブロック22fの隣接ブロック22eとの連結状態を解き、端部ブロック22fを取り外す端部ブロック取り外し工程とを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドジャッキ及びリングガータの解体を容易に行えるようにしたシールドマシンの解体方法、及び、この解体方法に適した構造のリングガータに関する。
【背景技術】
【0002】
シールドマシンはシールドトンネルを構築するための掘削機である。シールドトンネルの構築が完了すると、シールドマシンは坑内で解体されて搬出される。この解体には、ガス切断機を用いることが一般的である。このため、シールドジャッキを撤去する際には、シールドジャッキを固定しているリングガータの鋼材部分をガス切断機で切断することが行われている。例えば、シールドジャッキに吊り環を複数個溶接し、チェーンブロック等によって落下防止対策を施した後、ガス切断機で切断することが行われている。そして、切断部分については吊り降ろし、台車等に積載して搬出している。
【0003】
このような解体作業は、吊り代の全くない状態での吊り切り作業であり、荷振れ落下が生じないように、作業には細心の注意が必要になる。また、作業足場が設置し難い環境であるため、作業の効率化が難しいなどの問題がある。さらに、再利用可能なシールドジャッキを損傷させてしまう可能性がある。
【0004】
ここで、特許文献1には、リング状のシールドシェル(リングガータに相当する)を複数のブロックに分割し、ブロックごとに搬出するようにしたトンネル掘削機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−144479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置は、シールドシェルが複数のブロックに分割されているので、坑内での切断作業が不要となり、解体作業が容易になると考えられる。しかし、分割されているとはいえ、ブロックそれ自体も重量物である。このため、ブロックの運搬について改善する余地があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、シールドジャッキ及びリングガータを有するシールドマシンにおいて、その解体を容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、円筒状外殻部の内面に沿って設けられ、複数のブロックに分割されると共に、隣接するブロック同士が連結部材によってリング状に連結されたリングガータと、一端が前記リングガータに固定された状態で前記ブロックのそれぞれに収容され、かつ、既設のセグメントから反力を得て推進力とするシールドジャッキとを有するシールドマシンの解体方法であって、前記外殻部の底部に位置する底部ブロックについて隣接ブロックとの連結状態を解き、前記底部ブロックを取り外す底部ブロック取り外し工程と、残りのブロックを前記外殻部の内面に沿って周方向に移動させ、端部に位置する端部ブロックを前記外殻部の底部に位置付けるブロック移動工程と、前記端部ブロックについて隣接ブロックとの連結状態を解き、前記端部ブロックを取り外す端部ブロック取り外し工程とを行うことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、リングガータを複数のブロックで構成し、外殻部の内面に沿って周方向に移動させることで、取り外し対象となる端部ブロックを、取り外し作業が容易な外殻部の底部に位置付けることができる。そして、端部ブロックの取り外しが完了したならば、残りのブロック群をさらに移動させることで、新たな端部ブロックを外殻部の底部に位置付けることができる。これにより、端部ブロックの取り外しが容易になり、ひいてはシールドジャッキやリングガータの解体作業を容易に行うことができる。
【0010】
前述したシールドマシンの解体方法において、前記ブロック移動工程では、前記外殻部の頂部に位置する隣接ブロック同士の連結状態を解き、一方の片側半部に位置するブロックを固定した状態で、他方の片側半部に位置するブロックを前記外殻部の内面に沿って周方向に移動させることが好ましい。この方法を採ることで、ブロック群の移動時にその自重を利用することができ、移動作業の容易化が図れる。
【0011】
前述したシールドマシンの解体方法において、前記リングガータを内周面側にガイド溝が形成された複数のブロックに分割し、円弧状のガイドレールを前記ガイド溝に嵌合させた状態で取り付けるガイドレール取り付け工程を、前記ブロック移動工程よりも前に行うことが好ましい。この方法を採ることで、ブロック群を外殻部とガイドレールによって案内でき、ブロック群の移動方向を定めることができる。
【0012】
前述したシールドマシンの解体方法において、前記リングガータの各ブロックを外周側に位置する外周側ブロックと内周側に位置する内周側ブロックとに分割し、外周側ブロックと内周側ブロックとを連結部材によって連結し、かつ、隣接する各ブロックの内周側ブロック同士を連結部材によって連結し、前記ブロック移動工程では、外周側ブロック群と内周側ブロック群の連結状態を解き、前記外殻部と前記内周側ブロック群とによって前記外周側ブロック群をガイドしつつ前記外周側ブロック群を移動させることが好ましい。この方法を採ることで、外周側ブロック群を外殻部と内周側ブロック群によって案内でき、外周側ブロック群の移動方向を定めることができる。
【0013】
また、本発明は、シールドマシンが備える円筒状外殻部の内面に沿って設けられるリングガータであって、複数のブロックに分割されると共に隣接するブロック同士が連結部材によって連結されることで全体がリング状とされ、前記外殻部の底部に位置する底部ブロックが、マシン中心側に取り外し可能に構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明のリングガータでは、底部ブロックがマシン中心側に取り外し可能とされているので、底部ブロックを容易に取り外すことができる。そして、残りのブロック群を移動させて順次取り外す解体作業に、速やかに移行できる。
【0015】
前述したリングガータにおいて、前記複数のブロックの内周面に、円弧状のガイドレールが嵌合されるガイド溝が形成されている場合には、ブロック群を外殻部とガイドレールによって案内でき、ブロック群の移動方向を定めることができる。
【0016】
前述したリングガータにおいて、前記複数のブロックが外周側に位置する外周側ブロックと内周側に位置する内周側ブロックとに分割され、外周側ブロックと内周側ブロックが連結部材によって連結され、かつ、隣接する各ブロックの内周側ブロック同士が連結部材によって連結されている場合には、外周側ブロック群を外殻部と内周側ブロック群によって案内でき、外周側ブロック群の移動方向を定めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シールドジャッキ及びリングガータを有するシールドマシンにおいて、その解体を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】シールドマシンの断面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】(a)はリングガータを後方側から見た図である。(b)は(a)のB矢視図である。
【図4】(a)及び(b)は、底部ブロックを取り外した状態を説明する図である。
【図5】端部ブロックを取り外した状態を説明する図である。
【図6】残りのブロック群を移動させた状態を説明する図である。
【図7】新たな端部ブロックを取り外した状態を説明する図である。
【図8】残りのブロック群を移動させた状態を説明する図である。
【図9】新たな端部ブロックを取り外した状態を説明する図である。
【図10】第2実施形態を説明する図である。
【図11】底部ブロックを取り外した状態を説明する図である。
【図12】外周側ブロック群を移動させ、外周側ブロック群の端部ブロックを取り外した状態を説明する図である。
【図13】外周側ブロック群を移動させ、外周側ブロック群の新たな端部ブロックを取り外した状態を説明する図である。
【図14】外周側ブロック群を移動させ、外周側ブロック群の新たな端部ブロックを取り外した状態を説明する図である。
【図15】(a)〜(c)は、リングガータの変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、シールドマシンの構成について説明する。図1に示すシールドマシンは、前胴部10と、後胴部20と、後方台車30と、グリッパーユニット40とを有している。なお、以下の説明では、シールドマシンの掘進方向を前方と、掘進方向とは反対の発進立坑側を後方ともいう。
【0020】
前胴部10はシールドマシンの前側に位置する部分であり、後胴部20はシールドマシンの後側に位置する部分である。後胴部20の前端部分は前胴部10の後端部分の内側に嵌めあわされており、前胴部10と後胴部20とが屈曲可能な状態で取り付けられる。
【0021】
前胴部10の外周部分には外殻部としての円筒状スキンプレート11が設けられ、前胴部10の前端部分には、地盤を掘削するためのカッター部12が設けられている。このカッター部12は、多数のカッタービットが設けられた円盤状部材12aと、この円盤状部材12aを支持するアーム部材12bとを有している。
【0022】
スキンプレート11の内面に沿って前胴中殻部13が周方向に取り付けられている。前胴中殻部13は、鋼製のリング状部材であり、スキンプレート11の全周に亘って設けられている。この前胴中殻部13には複数の中折れジャッキ14が後方側に向けて取り付けられている。
【0023】
前胴中殻部13の内周側空間には、カッター部12を回転駆動させるカッター駆動部15が設けられている。このカッター駆動部15はカッター駆動モータ15aを有しており、アーム部材12bを介して回転力を伝達し、円盤状部材12aを回転駆動させる。
【0024】
後胴部20の外周部分には外殻部としての円筒状スキンプレート21が設けられ、後胴部20の前端部分にはリングガータ(後胴中殻部)22がスキンプレート21の内面に沿って設けられている。図2に示すように、リングガータ22は、鋼製のリング状部材であり、スキンプレート21の全周に亘って設けられている。なお、リングガータ22については後で詳しく説明する。そして、リングガータ22には複数の小室が設けられ、各小室にはシールドジャッキ23が収容されている。これらのシールドジャッキ23は、既設のセグメントT(図1を参照)から反力を得て、収縮状態から伸長することでシールドマシンを推進させる。
【0025】
図1に示すように、リングガータ22の内周側空間には、エレクター24が設けられている。このエレクター24は、設置前のセグメントを把持し、所定の角度位置まで移送するための機構である。エレクター24には様々な種類があるが、例示したエレクター24は、図2に示すように、リング状の支持フレーム24aと、回転フレーム24bと、駆動モータ24cと、把持機構24dと、スライドジャッキ24eとを有している。
【0026】
図1に示すように、中折れジャッキ14の後端部は支持フレーム24aに取り付けられている。すなわち、カッター駆動部15とエレクター24とは、複数の中折れジャッキ14によって取り付けられている。そして、各中折れジャッキ14の伸縮量を調整することにより、カッター駆動部15とエレクター24との間の屈曲状態を調整することができる。
【0027】
エレクター24から後方側に向けて連結フレーム25が設けられている。この連結フレーム25は、後方台車30と連結するための部分である。本実施形態では、連結フレーム25の後端部と後方台車30のそれぞれにピン結合部PJを設け、互いに回転可能な状態で取り付けている。これにより、エレクター24と後方台車30とが左右に首振り可能な状態で連結される。
【0028】
また、カッター駆動部15の下端から後方側の斜め上方に向けてスクリューコンベアSCが配置されている。このスクリューコンベアSCは、掘削された土砂を後方に向けて搬出するための装置である。
【0029】
後方台車30は、後胴部20によって牽引される台車であり、操作盤などの必要な設備が搭載される。この後方台車30の底部には、既設のセグメントTにおける内面に接する搬送用ローラ31が設けられている。
【0030】
後方台車30の前端部にはピン結合部PJが設けられており、連結フレーム25とピン結合されている。一方、後方台車30の後端部にはスライド支持部32が後方へ向けて突設されている。このスライド支持部32は、グリッパーユニット40を前後方向に移動可能な状態で支持する部材であり、例えば矩形枠状に組み立てた鋼製フレームによって構成される。
【0031】
グリッパーユニット40は、摺動フレーム41と、グリッパー固定フレーム42と、グリッパー43とを有している。摺動フレーム41は、スライド支持部32に対して摺動する部分であり、角筒部材によって作製されている。グリッパー固定フレーム42は、グリッパー43と摺動フレーム41との間に設けられる筒状部材である。このグリッパー固定フレーム42は、連結部材を介して摺動フレーム41に取り付けられる。
【0032】
グリッパー43は、グリッパージャッキ43aとグリッパーシュー43bとを備えている。グリッパージャッキ43aは、伸縮によってグリッパーシュー43bを進退方向に移動させる部分である。そして、グリッパージャッキ43aの伸長によって、グリッパーシュー43bが既設のセグメントTにおける内面に押圧されると、グリッパー43が固定される。
【0033】
スライド支持部32の内側には、牽引ジャッキ44が設けられている。この牽引ジャッキ44は、グリッパーユニット40をスライド支持部32上で移動させるためのものである。牽引ジャッキ44とグリッパー43とを連動させることで、シールドトンネルの構築後に、シールドマシンの内殻部(カッター駆動部15やスクリューコンベアSC等)を発進立坑側へと引き戻すことができる。
【0034】
次に、リングガータ22について説明する。図3(a)に示すように、リングガータ22は、複数のブロック22a〜22mに分割されており、隣接するブロック同士を連結部材26によって連結することで、円形リング状となる。また、リングガータ22が有する各ブロック22a〜22mは、スキンプレート21に対し、ボルト止め等の着脱可能な固定具(図示せず)によって固定されている。
【0035】
スキンプレート21(外殻部)の底部に位置する底部ブロック22gに関し、その両端面が鉛直方向に設けられている。これは、底部ブロック22gをシールドマシンの中心側に引き上げることで、底部ブロック22gを他のブロック22a〜22f,22h〜22mから取り外せるようにするためである。また、スキンプレート21の頂部で隣接する2つの扇状ブロック22a,22mは、連結面が鉛直方向となる状態で取り付けられている。このため、底部ブロック22g以外の各ブロック22a〜22f,22h〜22mは、頂部のブロック22a,22m同士の連結状態を解くことで、シールドマシンの中心を境に左右に分割される。すなわち、図中左側に位置する左側ブロック群22L(22h〜22m)と、図中右側に位置する右側ブロック群22R(22a〜22f)とに分割される。
【0036】
図3(b)に示すように、各ブロック22a〜22mの内周面側にはガイド溝GCが形成されている。このガイド溝GCはガイドレールGRが嵌合される部分である。ガイドレールGRは、リングガータ22の解体時において、解体対象となるブロック群22L,22Rをスキンプレート21の内面に沿って周方向に移動させるための案内部材である。すなわち、ブロック群22L,22Rは、スキンプレート21の内面とガイドレールGRとによって、その移動方向がスキンプレート21の周方向に制限される。
【0037】
ガイドレールGRは、角型鋼材を円弧状に湾曲させたレール部材によって構成され、底部ブロック22gの位置には設けられていない。これは、リングガータ22の分解時に各ブロックを底部ブロック22gの位置で取り外すからである。なお、リングガータ22の分解時における作業については後述する。このガイドレールGRは、例えばステー(図示せず)を介してスキンプレート21に固定される。また、左側ブロック群22Lと右側ブロック群22Rとに分けてリングガータ22を分解する場合、ガイドレールGRを後に分解されるブロック群(例えば左側ブロック群22L)に固定することで、先に分解されるブロック群(例えば右側ブロック群22R)を案内させるようにしてもよい。
【0038】
連結部材26は、ブロック同士を連結できるものであれば形式は問わないが、着脱が容易なもの、例えばボルトとナットの組が好適に用いられる。この場合、ボルトとナットを取り外すことで、各ブロックにおける連結状態を容易に解除できる。
【0039】
なお、図3(a)の例では、リングガータ22を1つの底部ブロック22gと12個の扇形ブロック22a〜22f,22h〜22mとに分割している。そして、底部ブロック22gは、4つの小室が設けられており、4本のシールドジャッキ23が収容されている。また、扇形ブロックには、3つの小室が設けられたものと、2つの小室が設けられたものとがあり、それぞれ3本と2本のシールドジャッキ23が収容されている。なお、ブロックの分割数は、この例の数に限定されない。スキンプレート21の底部から引き上げられる大きさ及び重さであれば、分割数は適宜定めることができる。
【0040】
次に、以上の構成を有するシールドマシンによる作業について説明する。このシールドマシンは、シールドトンネルの構築を完了した後のリングガータ22の解体作業に特徴を有している。このため、リングガータ22の解体作業について説明する。
【0041】
最後のセグメントを組み付けたならば、図3(b)に示すように、ガイドレールGRを各ブロック22a〜22f,22h〜22mのガイド溝GCに嵌めあわせた状態で取り付ける(ガイドレール取り付け工程)。例示した解体作業では、右側ブロック群22Rを先に解体するため、ガイドレールGRを左側ブロック群22Lに取り付けている。なお、ステーを介してスキンプレート21(外殻部)に直接取り付けてもよい。
【0042】
ガイドレールGRを取り付けたならば、底部ブロック22gと隣接ブロック22f,22hとを連結している連結部材26を取り外し、底部ブロック22gと隣接ブロック22f,22hとの間の連結状態を解く。これにより、底部ブロック22gが各ブロック群22L,22Rから取り外し可能な状態になる。そして、図4に示すように、揚重装置(図示せず)によって底部ブロック22gを上方に吊り上げ、底部ブロック22gを他のブロック22a〜22f,22h〜22mから取り外す(取り外し工程)。なお、取り外された底部ブロック22gは搬出装置に載せられ、立坑へと搬出される。
【0043】
底部ブロック22gを取り外した後、右側ブロック群22Rを移動可能な状態にする。ここでは、右側ブロック群22Rに属する各ブロック22a〜22fを、スキンプレート21に対して移動可能な状態にするとともに、右側ブロック群22Rと左側ブロック群22Lとの連結状態を解く。具体的には、右側ブロック群22Rに属する各ブロック22a〜22fについて、スキンプレート21に対して固定するためのボルトを取り外す。また、右側ブロック群22Rと左側ブロック群22Lとを連結している頂部の連結部材26を取り外す。このとき、左側ブロック群22Lは、スキンプレート21に対してボルト固定されている。なお、右側ブロック群22Rが自重で下方向へ移動しないよう、底部ブロック22gが取り外された空間に支持ジャッキJKを配置して支えておくことが好ましい。
【0044】
右側ブロック群22Rを移動可能な状態にしたならば、この右側ブロック群22Rをスキンプレート21の内面に沿って周方向下側(図では時計回り)に移動させる(ブロック移動工程)。この場合、例えば支持ジャッキJKを収縮させて右側ブロック群22Rの自重で移動させることができる。また、自重では移動しない場合、別に用意したジャッキ(図示せず)によって右側ブロック群22Rを押し下げて移動させればよい。
【0045】
そして、図5に示すように、右側ブロック群22Rの下端部に位置する扇形ブロックを、スキンプレート21の底部に位置する取り外し位置(底部ブロック22gが配置されていた空間)まで移動させたならば連結部材26を外し、下端部に位置する端部ブロック22fと隣接するブロック22eとの連結状態を解く。さらに、端部ブロック22fを揚重装置で吊り上げ、右側ブロック群22Rから取り外す(端部ブロック取り外し工程)。
【0046】
他のブロックも同様の手順で取り外す。すなわち、図6に示すように、右側ブロック群22Rをスキンプレート21の内面に沿って周方向に移動させ、取り外し対象となる端部ブロック22eを取り外し位置に位置付ける。その後、図7に示すように、端部ブロック22eと隣接ブロック22dの連結状態を解き、端部ブロック22eを揚重装置で吊り上げる。同様に、図8に示すように、右側ブロック群22Rをスキンプレート21の内面に沿って周方向へ移動させ、図9に示すように、新たな端部ブロック22dを揚重装置で吊り上げる。
【0047】
最後のブロック22aまで吊り上げたならば、右側ブロック群22Rの解体を終了し、左側ブロック群22Lの解体を行う。この場合、それまで右側ブロック群22Rがあった位置にステーを設置する等してガイドレールGRをスキンプレート21に取り付ける。その後、ガイドレールGRと左側ブロック群22Lとの接続状態を解くとともに、左側ブロック群22Lとスキンプレート21との接続状態を解く。これにより、左側ブロック群22Lがスキンプレート21の内面に沿って周方向下側(図4(a)では反時計回り)に移動可能な状態になる。その後の処理は、右側ブロック群22Rの解体処理と同じであるので、説明は省略する。
【0048】
このように、本実施形態では、リングガータ22を複数のブロック22a〜22mで構成し、円筒状のスキンプレート(外殻部)21の内面に沿って周方向下側に移動させることで、取り外し対象となる端部ブロックを、取り外し作業が容易な底部に位置付けている。そして、端部ブロックの取り外しが完了したならば、残りのブロック群をさらに移動させることで、新たな端部ブロックを底部に位置付けることができる。これにより、端部ブロックの取り外しが容易になり、ひいてはシールドジャッキ23やリングガータ22の解体作業を容易に行うことができる。
【0049】
また、ブロック移動工程において、スキンプレート21の頂部に位置する隣接ブロック22a,22m同士の連結状態を解き、左側半部に位置する左側ブロック群22Lを固定した状態で、右側半部に位置する右側ブロック群22Rをスキンプレート21の内面に沿って周方向下側に移動させているので、右側ブロック群22Rの移動時にその自重を利用することができ、移動作業の容易化が図れる。なお、左側ブロック群22Lの取り外しにおいても、その自重を利用することができるので、同様の作用効果を奏する。
【0050】
また、ブロック移動工程よりも前にガイドレール取り付け工程を行い、円弧状のガイドレールGRを取り付けているので、各ブロック群をスキンプレート21とガイドレールGRによって案内でき、各ブロック群22R,22Lの移動方向を定めることができる。
【0051】
なお、本実施形態において、ブロック群の分割位置は、底部を除いた任意の位置に定めることができる。例えば、時計の針で1時の位置で分割してもよいし、11時の位置で分割してもよい。また、8時の位置で分割し、大半のブロックを時計回りにスライドさせて、底部で取り外してもよい。
【0052】
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。
【0053】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図10に示すように、この第2実施形態では、リングガータ50を構成する複数のブロック51〜61に関し、各ブロック51〜61をさらに外周側に位置する外周側ブロック51a〜61aと内周側に位置する内周側ブロック51b〜61bとに分割し、これらの外周側ブロック51a〜61aと内周側ブロック51b〜61bとを連結部材26で連結している。さらに、隣接する各ブロックの内周側ブロック同士を連結部材26によって連結している。なお、連結部材26に関しては、第1実施形態の連結部材26と同様、ボルトとナットの組のように着脱可能な部材が好適に用いられる。
【0054】
この第2実施形態では、ブロック移動工程において、外周側ブロック群(外周側ブロック51a〜61a)と内周側ブロック群(内周側ブロック51b〜61b)の連結状態を解き、スキンプレート21と内周側ブロック群とによって外周側ブロック群をガイドしつつ、この外周側ブロック群を移動させている。以下、リングガータ22の分解作業について簡単に説明する。
【0055】
この場合、図11に示すように、まず底部ブロック56を取り外す。底部ブロック56の取り外しまでの手順は、ガイドレールGRの有無に差はあるものの第1実施形態と概ね同じである。すなわち、底部ブロック56と隣接ブロック55,57とについて連結部材26による連結状態を解き、揚重装置で底部ブロック56を吊り上げる。
【0056】
底部ブロック56を吊り上げて搬出したならば、シールドマシンの右側半部に位置する右外周側ブロック群50ROについて、スキンプレート21の内面に沿って移動可能な状態にする。すなわち、右外周側ブロック群50ROに属する外周側ブロック同士については連結部材26で連結されたままとする一方、右内周側ブロック50RIと右外周側ブロック50ROとの間、及び、右外周側ブロック50ROとスキンプレート21との間については連結状態を解く。さらに、頂部において、右外周側ブロック50ROと左外周側ブロック50LOとの連結状態を解く。
【0057】
右外周側ブロック群50ROを移動可能な状態にしたならば、この右外周側ブロック群50ROをスキンプレート21の内面に沿って下方向(時計回り)に移動させる。この場合も右外周側ブロック群50ROの自重で移動させる。もし、自重で移動できなければ、ジャッキを用いて右外周側ブロック群50ROを下方向に移動させる。
【0058】
図12に示すように、右外周側ブロック群50ROの下端部に位置するブロック55aを、スキンプレート21の底部に位置する取り外し位置まで移動させたならば、この端部ブロック55aと隣接するブロック54aとの連結状態を解き、端部ブロック55aを揚重装置で吊り上げて右外周側ブロック群50ROから取り外す。そして、残りの右外周側ブロック群50ROも同様の手順で取り外す。例えば、図13に示すように、残りの右外周側ブロック群50ROをスキンプレート21の内面に沿って周方向下側へ移動させ、取り外し対象となる端部ブロック54aを取り外し位置に位置付けた後、隣接ブロック53aとの連結状態を解いて揚重装置で吊り上げる。また、図14に示すように、残りの右外周側ブロック群50ROもスキンプレート21の内面に沿って周方向下側へ移動させ、新たな端部ブロック53aを取り外し位置に位置付けた後、隣接ブロック52aとの連結状態を解いて揚重装置で吊り上げる。
【0059】
右外周側ブロック群50ROについて解体が終了したならば、右内周側群ブロック50RIについて解体を行う。この場合、厚みが半分になって1つのブロックの重量が軽くなっていることから、下側の右内周側群ブロック50RIに属する内周側ブロックを下側から順に揚重装置で吊り、搬出装置の上に載置する。
【0060】
以上は、右側半部に位置するブロック群50RO,50RIに対する解体作業について説明したが、左側半部に位置するブロック群(左外周側ブロック50LO,左内周側ブロック50LI)に対する解体作業も同様の手順で行うことができる。そして、このような解体方法を行うことで、外周側ブロック群を外殻部と内周側ブロック群によって案内でき、外周側ブロック群の移動方向を定めることができる。その結果、作業効率が向上し、解体作業の工期を短縮できる。
【0061】
図15は、第2実施形態のリングガータ50に関する変形例を説明する図である。変形例のリングガータでは、第2実施形態のリングガータ50と同様に、扇形ブロック71が外周側ブロック71aと内周側ブロック71bとに分割されている。なお、一部のブロックしか図示しないが、他のブロックについても同様である。さらに、この変形例では、外周側ブロック71aと内周側ブロック71bのそれぞれに、シールドジャッキ23が取り付けられるように構成されている。具体的には、図15(a)に示すように、外周側ブロック71aと内周側ブロック71bとの間でシールドジャッキ23を移動可能に保持するための長穴部71cを、各小室に設けている。
【0062】
変形例のリングガータでは、外周側ブロック71aに位置するシールドジャッキ23を、図15(b)に示すように、内周側ブロック71bへ移動させて固定する。そして、図15(c)に示すように、内周側ブロック71bと外周側ブロック71aとを分離し、内周側ブロック71bをシールドジャッキ23と共に移動させる。
【0063】
このように構成することで、シールドジャッキ23が取り付けられた内周側ブロック71bを、小径のシールドマシンに対して簡単に転用できる。すなわち、使用済みシールドマシンの他のシールドマシンへの効率的な部品転用が実現できる。
【0064】
なお、第2実施形態及びその変形例において、第1実施形態と同様にガイドレールを設置し、各内周側ブロック71bをスライドさせて取り外すように構成してもよい。また、リングガータ50における半径方向の分割数は2つに限られない、3以上に分割してもよい。
【0065】
また、各実施形態における底部ブロック22g,56に関し、隣接ブロック側の端面が鉛直方向に形成されたものを例示したが、シールドマシンの中心側に取り外し可能に構成されていれば、この形状に限定されない。例えば、外周側に向けて先細りした楔状ブロック(図示せず)を別に用意して、底部ブロック56と隣接ブロックとの間に配置し、この楔状ブロックを介して底部ブロック56と隣接ブロックとを連結するようにしてもよい。
【0066】
また、各実施形態において、スキンプレート11の内表面に沿ってガイドレールを取り付けてもよいし、ガイドレールと同等の機能を発揮するガイド溝を設けてもよい。ガイド溝を設けた場合には、ガイドレールをなくすことができる。
【0067】
さらに、各実施形態に記載された技術事項を組み合わせてもよい。例えば、第2実施形態及びその変形例において、内周側に設置したガイドレールGRを用い、先に内周側ブロック群を周方向にスライドさせて分解し、後に外周側ブロック群を周方向にスライドさせて分解してもよい。
【符号の説明】
【0068】
10…前胴部,11…スキンプレート,12…カッター部,12a…円盤状部材,12b…アーム部材,13…前胴中殻部,14…中折れジャッキ,15…カッター駆動部,15a…カッター駆動モータ,20…後胴部,21…スキンプレート,22…リングガータ,22a〜22m…ブロック(22g…底部ブロック),22R(22a〜22f)…右側ブロック群,22L(22h〜22m)…左側ブロック群,23…シールドジャッキ,24…エレクター,24a…支持フレーム,24b…回転フレーム,24c…駆動モータ,24d…把持機構,24e…スライドジャッキ,25…連結フレーム,26…連結部材,30…後方台車,31…搬送用ローラ,32…スライド支持部,40…グリッパーユニット,41…摺動フレーム,42…グリッパー固定フレーム,43…グリッパー,43a…グリッパージャッキ,43b…グリッパーシュー,44…牽引ジャッキ,50…リングガータ,50RO…右外周側ブロック群,50RI…右内周側ブロック,50LO…左外周側ブロック,50LI…左内周側ブロック,51〜61…ブロック,51a〜61a…外周側ブロック,51b〜61b…内周側ブロック,56…底部ブロック,71…扇形ブロック,71a…外周側ブロック,71b…内周側ブロック,T…既設のセグメント,PJ…ピン結合部,SC…スクリューコンベア,GC…ガイド溝,GR…ガイドレール,JK…支持ジャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状外殻部の内面に沿って設けられ、複数のブロックに分割されると共に、隣接するブロック同士が連結部材によってリング状に連結されたリングガータと、
一端が前記リングガータに固定された状態で前記ブロックのそれぞれに収容され、かつ、既設のセグメントから反力を得て推進力とするシールドジャッキとを有するシールドマシンの解体方法であって、
前記外殻部の底部に位置する底部ブロックについて隣接ブロックとの連結状態を解き、前記底部ブロックを取り外す底部ブロック取り外し工程と、
残りのブロックを前記外殻部の内面に沿って周方向に移動させ、端部に位置する端部ブロックを前記外殻部の底部に位置付けるブロック移動工程と、
前記端部ブロックについて隣接ブロックとの連結状態を解き、前記端部ブロックを取り外す端部ブロック取り外し工程と
を行うことを特徴とするシールドマシンの解体方法。
【請求項2】
前記ブロック移動工程では、前記外殻部の頂部に位置する隣接ブロック同士の連結状態を解き、一方の片側半部に位置するブロックを固定した状態で、他方の片側半部に位置するブロックを前記外殻部の内面に沿って周方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載のシールドマシンの解体方法。
【請求項3】
前記リングガータは、内周面側にガイド溝が形成された複数のブロックに分割され、
円弧状のガイドレールを前記ガイド溝に嵌合させた状態で取り付けるガイドレール取り付け工程を、前記ブロック移動工程よりも前に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のシールドマシンの解体方法。
【請求項4】
前記リングガータは、各ブロックが外周側に位置する外周側ブロックと内周側に位置する内周側ブロックとに分割され、外周側ブロックと内周側ブロックが連結部材によって連結され、かつ、隣接する各ブロックの内周側ブロック同士が連結部材によって連結され、
前記ブロック移動工程では、外周側ブロック群と内周側ブロック群の連結状態を解き、前記外殻部と前記内周側ブロック群とによって前記外周側ブロック群をガイドしつつ前記外周側ブロック群を移動させることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のシールドマシンの解体方法。
【請求項5】
シールドマシンが備える円筒状外殻部の内面に沿って設けられるリングガータであって、
複数のブロックに分割されると共に隣接するブロック同士が連結部材によって連結されることで全体がリング状とされ、
前記外殻部の底部に位置する底部ブロックが、マシン中心側に取り外し可能に構成されていることを特徴とするリングガータ。
【請求項6】
前記複数のブロックの内周面に、円弧状のガイドレールが嵌合されるガイド溝が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のリングガータ。
【請求項7】
前記複数のブロックは、外周側に位置する外周側ブロックと内周側に位置する内周側ブロックとに分割され、外周側ブロックと内周側ブロックが連結部材によって連結され、かつ、隣接する各ブロックの内周側ブロック同士が連結部材によって連結されていることを特徴とする請求項5に記載のリングガータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−241420(P2012−241420A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112783(P2011−112783)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】