説明

シールド付き電気絶縁ケーブル

【課題】絶縁層と金属編組との密着を防止し、金属編組の折り返し作業が容易で、かつ高い耐熱性を有するシールド付き電気絶縁ケーブルを提供する。
【解決手段】金属編組15に接する外層絶縁層14を有するシールド付き電気絶縁ケーブル10において、外層絶縁層14が、シリコーンゴム以外のノンハロゲンゴム100質量部に対し、ヒンダードフェノール化合物とチオエーテル化合物とからなる添加物を1〜20質量部含むノンハロゲン架橋ゴムからなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属編組に接する絶縁層を有するシールド付き電気絶縁ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のシールド付き電気絶縁ケーブルを示す断面図である。
【0003】
図4に示すように、シールド付き電気絶縁ケーブル40は、導体41上に、内層セパレータ42、絶縁層43、中間セパレータ44、金属編組45、外層セパレータ46、シース47が順次形成されてなる。
【0004】
従来、絶縁層43に適用するゴム材料としては、クロロプレンゴムやフッ素ゴムをはじめとするハロゲンゴム、またはエチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、ニトリルゴムやシリコーンゴムなどのノンハロゲンゴムが用いられている。
【0005】
このようなシールド付き電気絶縁ケーブル40は、製造時に高温高圧下で架橋処理が施されるため、導体41や金属編組45に対する絶縁層43やシース47の密着を防止する必要があり、この密着を防止するために複数のセパレータを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−128509号公報
【特許文献2】特開2008−84833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述したようなシールド付き電気絶縁ケーブルは、セパレータを複数有することにより可撓性が低下したり、端末加工時にセパレータの一部が残留し、端末加工性が低下するといった問題があった。
【0008】
この問題を防ぐためにセパレータを省略すると、導体や金属編組に絶縁層やシースが密着し、端末加工性が低下する。特に、絶縁層は金属編組の織目間に食い込み、金属編組の折り返し作業が困難となる。
【0009】
金属との剥離性が良い材料としてフッ素ゴムが挙げられるが、フッ素ゴムを含むハロゲンゴムは燃焼などの廃棄時において、有害ガスを発生することがある。
【0010】
一方、ノンハロゲンゴムは難燃性を付与するために水酸化マグネシウムなどをはじめとするノンハロゲン難燃剤を大量に添加する必要があり、機械的特性や耐熱性の低下を招くことがある。
【0011】
また、ノンハロゲンゴムには耐熱性の良好なシリコーンゴムがあるが耐摩耗性が低いことに加え、高温下に曝されると低分子シロキサンが揮発し電気接点部に付着して接点不良の原因になることがある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、絶縁層と金属編組との密着を防止し、金属編組の折り返し作業が容易で、かつ高い耐熱性を有するシールド付き電気絶縁ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために創案された本発明は、金属編組に接する絶縁層を有するシールド付き電気絶縁ケーブルにおいて、前記絶縁層が、シリコーンゴム以外のノンハロゲンゴム100質量部に対し、ヒンダードフェノール化合物とチオエーテル化合物とからなる添加物を1〜20質量部含むノンハロゲン架橋ゴムからなるシールド付き電気絶縁ケーブルである。
【0014】
前記絶縁層の200℃における酸化誘導期が10分以上であると良い。
【0015】
前記絶縁層は0.1mm以上の厚みを有すると良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、絶縁層と金属編組との密着を防止し、金属編組の折り返し作業が容易で、かつ高い耐熱性を有するシールド付き電気絶縁ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るシールド付き電気絶縁ケーブルを示す断面図である。
【図2】剥離強度とレオメータトルクの関係を示す図である。
【図3】耐熱性の評価と酸化誘導期の関係を示す図である。
【図4】従来のシールド付き電気絶縁ケーブルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0019】
図1は、本発明の好適な実施の形態に係るシールド付き電気絶縁ケーブルを示す断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態に係るシールド付き電気絶縁ケーブル10は、導体11上に、内層セパレータ12、内層絶縁層13、外層絶縁層14、金属編組15、外層セパレータ16、シース17が順次形成されたものであり、金属編組15に接する絶縁層(即ち、外層絶縁層14)を有する。
【0021】
導体11及び金属編組15の表面には、錫めっき、ニッケルめっき、銀めっき、金めっきなどが施されることが好ましい。これにより、耐熱性をより向上させることができる。
【0022】
内層セパレータ12、外層セパレータ16の材料としては、ナイロンやポリエステルなどの樹脂、または紙や布などが挙げられる。
【0023】
内層絶縁層13の材料については特に限定しないが、後述する外層絶縁層14と同様の材料で形成することにより、耐熱性を向上させることができる。
【0024】
さて、本実施の形態に係るシールド付き電気絶縁ケーブル10は、外層絶縁層14が、シリコーンゴム以外のノンハロゲンゴム100質量部に対し、ヒンダードフェノール化合物とチオエーテル化合物とからなる添加物を1〜20質量部含むノンハロゲン架橋ゴムからなることを特徴とする。
【0025】
以下、外層絶縁層14に好適なノンハロゲン架橋ゴムについて述べる。
【0026】
ケーブルシース架橋処理時に高温高圧環境下となるため、金属編組15に接触した架橋後の絶縁層(即ち、外層絶縁層14)の粘度が低いと、絶縁層は金属編組15の織目間に食い込み、金属編組15の折り返し作業が困難となる。ここで、架橋後の粘度の指標としてレオメータトルクを適用することが可能である。
【0027】
外層絶縁層14の材料において、レオメータトルクが10dN・m未満だと金属編組の折り返し作業が困難となるため、外層絶縁層14の材料のレオメータトルクとしては10dN・m以上が好ましく、この特性はノンハロゲンゴムをベースとすることで達成可能である。
【0028】
レオメータトルクを10dN・m以上得るノンハロゲンゴムは示差走査熱量計を用いて、結晶が融解する吸熱ピークが観測されない弾性体のことである。
【0029】
これらの条件を満たすノンハロゲンゴムとしては、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素添加NBR(HNBR)、アクリルゴム、エチレン−アクリル酸エステル共重合体ゴム、エチレンオクテン共重合体ゴム(EOR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム、エチレン−ブテン−1共重合体ゴム(EBR)、ブタジエン−スチレン共重合体ゴム(SBR)、イソブチレン−イソプレン共重合体ゴム(IIR)、ポリスチレンブロックを有するブロック共重合体ゴム、ウレタンゴム、ホスファゼンゴムなどが挙げられ、これらを単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0030】
なお、結晶が融解する吸熱ピークが観測されるポリオレフィンなどは、一般的にノンハロゲンゴムより分子量が小さいためレオメータトルクが低く、10dN・m以上にすることが難しいため、本発明には不適である。
【0031】
ノンハロゲンゴムに添加するヒンダードフェノール化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ,C7−C9側鎖アルキルエステル、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、ヒンダードフェノール、ヒンダードビスフェノールなどが挙げられる。
【0032】
また、ノンハロゲンゴムに添加するチオエーテル化合物としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル3,3’−チオジプロピオネート、含硫黄エステル系化合物、1,1’−チオビス(2−ナフトール)などがある。
【0033】
これらヒンダードフェノール化合物とチオエーテル化合物とからなる添加物をノンハロゲンゴム100質量部に対して1〜20質量部添加するのは、120℃定格の耐熱性を付与するためである。つまり、ヒンダードフェノール化合物とチオエーテル系化合物の総量を1質量部以上用いないと良好な耐熱性を得ることができず、20質量部より多いと難燃性が低下するためである。
【0034】
特に、ヒンダードフェノール化合物の添加量は、0.1〜19.9質量部、チオエーテル化合物の添加量は0.1〜19.9質量部であることが好ましい。ヒンダードフェノール化合物はポリマラジカルの捕捉効果があり、チオエーテル系化合物はポリマ過酸化物の分解効果がある。120℃定格の耐熱性を付与するためにはこれらの相乗効果が必要となる。耐熱性を付与させるためにイミダゾール系化合物やリン系化合物が挙げられるが、これらは架橋阻害を引き起こす要因となる。
【0035】
このような理由から、外層絶縁層14の材料として、シリコーンゴム以外のレオメータトルクが10dN・m以上のノンハロゲンゴム100質量部に対し、ヒンダードフェノール化合物とチオエーテル化合物とからなる添加物を1〜20質量部含むノンハロゲン架橋ゴムを用いることが最も好適である。
【0036】
また、架橋剤については特に規定はないが、例えば、有機過酸化物の場合、ノンハロゲンゴム100質量部に対し、1〜5質量部が好ましく、十分に架橋が進行するのに必要な量であれば良い。
【0037】
更に、外層絶縁層14の難燃性を高めるために、難燃剤を添加することができる。難燃剤は水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物系難燃剤、メラミンシアヌレートなどのチッ素系難燃剤、赤リンやリン酸エステルなどのリン系難燃剤、ヒドロキシスズ酸亜鉛やホウ酸亜鉛などの亜鉛系難燃剤などが挙げられ、これらを単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。難燃剤は分散性などを考慮し、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ステアリン酸などの脂肪酸などによって表面処理を施すことができる。
【0038】
これらの材料で構成された外層絶縁層14には必要に応じて架橋剤、架橋助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、滑剤、着色剤、補強剤、界面活性剤、無機充てん剤、カップリング剤、可塑剤、金属キレート剤、発泡剤、相溶化剤、加工助剤、安定剤などを添加することができる。
【0039】
また、外層絶縁層14の200℃における酸化誘導期が10分以上であることが好ましく、外層絶縁層14は0.1mm以上の厚みを有することが好ましい。これは、外層絶縁層14の200℃における酸化誘導期が10分未満では十分な耐熱性を得ることができず、また、外層絶縁層14が0.1mm未満だと耐熱性を確保できないためである。
【0040】
この外層絶縁層14の架橋処理は常法に従い有機過酸化物、硫黄化合物、アミン化合物、シラングラフト水架橋などの化学架橋や電子線照射架橋などが適用可能である。
【0041】
以上説明した本発明によれば、中間セパレータを省略しても、絶縁層と金属編組との密着を防止し、金属編組の折り返し作業が容易で、かつ高い耐熱性を有するシールド付き電気絶縁ケーブルを提供することができる。
【0042】
なお、本実施の形態においては、絶縁層を内層絶縁層13と外層絶縁層14からなる2層構造とし、このうち外層絶縁層14の材料を規定することで本発明の目的を達成するものとしたが、絶縁層を1層構造とし、その材料に本発明で規定した条件を満たすノンハロゲン架橋ゴムを用いることも可能である。
【実施例】
【0043】
図1に示した構造のシールド付き電気絶縁ケーブルを作製し、レオメータトルク、密着性、耐熱性、酸化誘導期、難燃性について評価した。
【0044】
(シールド付き電気絶縁ケーブルの作製)
導体には錫めっき銅素線を用いた。導体サイズは35SQであり、導体構成は親撚り本数/子撚り本数/素線径(mm)=19/35/0.26とした。
【0045】
導体の上に厚さ38μm、幅25mmのポリエチレンテレフタレートテープを内層セパレータとして1/4ラップで巻いた。
【0046】
内層絶縁層および外層絶縁層は、表1,2に示す配合を適用した。内層絶縁層および外層絶縁層は4.5インチ連続蒸気架橋押出機で2層押出を行い、2層の合計肉厚が1mmになるように被覆した。架橋は1.8MPaの高圧蒸気を用いて5分間行った。
【0047】
金属編組は素線径0.12mmの錫めっき銅素線を用い、絶縁層上に編組密度90%以上となるように成形した。
【0048】
外層セパレータとして厚さ38μm、幅25mmのポリエチレンテレフタレートテープを1/4ラップで巻いた。
【0049】
シースは、表1,2に示す配合を絶縁層同様に4.5インチ連続蒸気架橋押出機で被覆した。架橋は1.8MPaの高圧蒸気を用いて5分間実施し、シールド付き電気絶縁ケーブルを作製した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
(特性評価)
レオメータトルクの評価は、JIS K6300に準拠して試験温度192℃、10分間の最大トルク値を測定して行った。
【0053】
外層絶縁層と金属編組との密着性の評価は、外層絶縁層と金属編組を接触させたまま12.5mm幅に切り出し、引張速度50mm/minのT字剥離試験で剥離強度を測定した。剥離強度0.5N/mm以下の場合、金属編組の折り返し作業が容易であるため、剥離強度0.5N/mm以下を合格(○)、0.5N/mmを超える場合を不合格(×)とした。
【0054】
耐熱性の評価は、シールド付き電気絶縁ケーブルを450mmに切断し、120℃で10000時間熱処理後、φ45mmマンドレルに1ターン巻きつけ、シース、外層セパレータ、金属編組を取除き、外層絶縁層を観察することにより行った。外層絶縁層が割れた場合を×、割れなかったものを○とした。割れなかった場合、さらにφ9mmマンドレルに1ターン巻きなおし、割れなかった場合を◎とした。◎と○を合格とし、×を不合格とした。
【0055】
酸化誘導期の評価はシース、外層セパレータ、金属編組を取除き、外層絶縁層を5mg採取し、示差走査熱量計を用いて200℃環境下で発熱開始するまでの時間を測定して行った。10分以上経過してから発熱反応を開始したものを合格とし、それより早く反応を開始したものを不合格とした。
【0056】
難燃性の評価は、ISO6722に準拠し、70秒以内に自己消火するものは○とし、70秒を超えて燃焼し続けるものは×とした。
【0057】
総合評価としては、耐熱性の評価で◎、かつ他の評価で合格のものを◎、耐熱性の評価で○、かつ他の評価で合格のものを○、いずれかが不合格となったものを×とした。
【0058】
また、実施例および比較例で示した剥離強度とレオメータトルクの関係を図2に示し、耐熱性の評価と酸化誘導期の関係を図3に示した。これらの図からレオメータトルク、および酸化誘導期の値を規定範囲とすることで、課題を解決できることがわかる。以下、実施例について詳述する。
【0059】
(実施例1〜4)
内層絶縁層、外層絶縁層、シースにおいて、EPDMとしてEPT1045(三井化学製)、難燃剤として水酸化マグネシウム(キスマ5L、協和化学工業製)、有機過酸化物として1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(化薬アクゾ製、パーカドックス14)、架橋助剤として亜鉛華3号(堺化学工業製)、ヒンダードフェノール化合物としてペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・ジャパン製、イルガノックス1010)、チオエーテル化合物としてペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)(シプロ化成製、シーノックス412S)、滑剤としてオレイン酸アマイドを表1に示した配合で、55Lニーダを用いて、コンパウンドを作製した。得られたコンパウンドを図1に示したシールド付き電気絶縁ケーブル形状に押出成形した。
【0060】
その結果を表1に示す。どの評価においても良好な結果が得られたため総合評価で◎または○とした。
【0061】
(実施例5,6)
内層絶縁層およびシースは実施例1〜4と同様にコンパウンドを作製した。外層絶縁層において、HNBRとしてゼットポール2010L(日本ゼオン製)、難燃剤として水酸化マグネシウム(キスマ5L、協和化学工業製)、有機過酸化物として1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(化薬アクゾ製、パーカドックス14)、架橋助剤として亜鉛華3号(堺化学工業製)、ヒンダードフェノール化合物としてペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・ジャパン製、イルガノックス1010)、チオエーテル化合物としてペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)(シプロ化成製シーノックス412S)、滑剤としてオレイン酸アマイドを表1に示した配合で、55Lニーダを用いて、コンパウンドを作製した。得られたコンパウンドを図1に示したシールド付き電気絶縁ケーブル形状に押出成形した。
【0062】
その結果を表1に示す。どの評価においても良好な結果が得られたため総合評価で◎または○とした。
【0063】
(比較例1)
内層絶縁層およびシースにおいて、EPDM100質量部、水酸化マグネシウム100質量部、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン2質量部、亜鉛華3号2質量部、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.5質量部、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)0.5質量部、オレイン酸アマイド1質量部をコンパウンドに作製した。外層絶縁層において、エチレン−エチルアクリレート共重合体(MFR:0.4g/10min、エチルアクリレート含有量:10mass%)100質量部、水酸化マグネシウム100質量部、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン2質量部、亜鉛華3号2質量部、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.5質量部、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)0.5質量部、オレイン酸アマイド1質量部をコンパウンドに作製した。得られたコンパウンドを図1に示したシールド付き電気絶縁ケーブル形状に押出成形した。
【0064】
その結果を表2に示す。耐熱性、難燃性については良好であったが、レオメータトルクが4.1dN・mであった。金属編組に外層絶縁層が食い込み、剥離強度が0.5N/mm以上であり金属編組の折り返し作業が困難であると判断し、総合評価で×とした。
【0065】
(比較例2)
内層絶縁層およびシースにおいて、比較例1と同様にコンパウンドを作製した。外層絶縁層において、ポリエチレン(密度:924kg/m3、MFR:0.2g/10min)100質量部、水酸化マグネシウム100質量部、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン2質量部、亜鉛華3号2質量部、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.5質量部、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)0.5質量部、オレイン酸アマイド1質量部をコンパウンドに作製した。得られたコンパウンドを図1に示したシールド付き電気絶縁ケーブル形状に押出成形した。
【0066】
その結果を表2に示す。耐熱性、難燃性については良好であったが、レオメータトルクが3.3dN・mであった。金属編組に外層絶縁層が食い込み、剥離強度が0.5N/mm以上であり金属編組の折り返し作業が困難であると判断し、総合評価で×とした。
【0067】
(比較例3)
内層絶縁層およびシースにおいて、比較例1と同様にコンパウンドを作製した。外層絶縁層において、EPDM100質量部、水酸化マグネシウム100質量部、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン2質量部、亜鉛華3号2質量部、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.4質量部、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)0.5質量部、オレイン酸アマイド1質量部をコンパウンドに作製した。得られたコンパウンドを図1に示したシールド付き電気絶縁ケーブル形状に押出成形した。
【0068】
その結果を表2に示す。密着性および難燃性については良好であったが、酸化誘導期は9分で耐熱性試験においてクラックが発生したため、総合評価で×とした。
【0069】
(比較例4)
内層絶縁層およびシースにおいて、比較例1と同様にコンパウンドを作製した。外層絶縁層において、EPDM100質量部、水酸化マグネシウム100質量部、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン2質量部、亜鉛華3号2質量部、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を11質量部、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)10質量部、オレイン酸アマイド1質量部をコンパウンドに作製した。得られたコンパウンドを図1に示したシールド付き電気絶縁ケーブル形状に押出成形した。
【0070】
その結果を表2に示す。密着性および耐熱性については良好であったが、難燃性試験において70秒よりも長く燃焼し続けたため、総合評価で×とした。
【0071】
以上より、本発明によれば、絶縁層と金属編組との密着を防止し、金属編組の折り返し作業が容易で、かつ高い耐熱性を有するシールド付き電気絶縁ケーブルを得られることが分かる。
【符号の説明】
【0072】
10 シールド付き電気絶縁ケーブル
11 導体
12 内層セパレータ
13 内層絶縁層
14 外層絶縁層
15 金属編組
16 外層セパレータ
17 シース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属編組に接する絶縁層を有するシールド付き電気絶縁ケーブルにおいて、
前記絶縁層が、シリコーンゴム以外のノンハロゲンゴム100質量部に対し、ヒンダードフェノール化合物とチオエーテル化合物とからなる添加物を1〜20質量部含むノンハロゲン架橋ゴムからなることを特徴とするシールド付き電気絶縁ケーブル。
【請求項2】
前記絶縁層の200℃における酸化誘導期が10分以上である請求項1に記載のシールド付き電気絶縁ケーブル。
【請求項3】
前記絶縁層は0.1mm以上の厚みを有する請求項1又は2に記載のシールド付き電気絶縁ケーブル。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−174645(P2012−174645A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38431(P2011−38431)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】