説明

シールド型トンネル掘削機

【課題】ベルトコンベアからスクリューコンベアに換装する場合に、換装を短時間で行え、緊急に出水した場合でも、速やかに止水することができるシールド型トンネル掘削機を提供する。
【解決手段】カッターヘッド12と、このカッターヘッド12を支持、駆動する駆動部14と、駆動部14に対する掘削反力を確保する掘削反力支持部16と、駆動部14に対して推進力を付与する推進部18と、カッターヘッド12の後方で駆動部14、掘削反力支持部16及び推進部18を覆う少なくとも前胴部32及び後胴部36を含む胴部20とを有するシールド型トンネル掘進機10において、カッターヘッド12のチャンバー26側と胴部20との間に位置する隔壁48に形成した開口部58に、止水可能なゲートプレート60を取り付け、ゲートプレート位置に掘削土砂搬送用のベルトコンベア46のチャンバー内への挿入またはスクリューコンベアの装着を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド型トンネル掘削機及びトンネル掘削方法に関し、特に、ベルトコンベアからスクリューコンベアへの換装が容易かつ短時間で行え、硬軟輻輳した地盤でも容易に対応可能なシールド型トンネル掘削機及びトンネル掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に山岳トンネルにはTBMと称されるトンネル掘削機が用いられる。
【0003】
現在のTBMの型式は、オープン型TBMと、シールド型TBMに大別される。
【0004】
また、オープン型TBMの中には、オープン型TBMと、改良オープン型TBMがある。
【0005】
オープン型TBMは、メインビーム式であり、推進はスラストジャッキとメイングリッパーで行われる。
【0006】
ルーフサポートやハーフシールドが装備している場合もあるが、本体全体の外殻は存在しない。
【0007】
シールド型TBMは外殻が本体機長全長で、複数の胴部から構成される。
【0008】
メイングリッパーは本体に内蔵され、スラストジャッキとメイングリッパーによる推進に加え、機体後方部にライナー、セグメント等を組み立てるためのエレクター、テール部を装備している場合が多く、ライナー、セグメントによるシールドジャッキでの推進も可能である。
【0009】
そして、この機能により、TBM適用地質の拡大が図られた。
【0010】
また、改良オープン型TBMは、オープン型TBMとシールド型TBM両型式の利点を取り入れたもので、オープン型TBMを基本とし、機体前部には外殻があり、その後方で全周にライナーが組み立てられ、このライナーから掘進反力を確保する補助推進ジャッキが装備されている場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−314939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
オープン型TBMは、ルーフ等があるが基本的に外殻が非常に短いため、地盤状況が切羽に近い位置で把握でき、地山の補強が必要なときは、早期に比較的切羽に近い位置で支保工の設置や地盤補強等の施工が可能であるという利点を有する反面、セグメントやライナーが設置できないため、作業員の避難する場所を確保することが困難であるため、落石、落盤に対する事故防止が困難で、また、補助推進ジャッキの装備がないため、多亀裂や軟弱地盤層ではグリッパ面の地山を補強する以外には推進ができないという欠点があった。
【0013】
また、改良オープン型TBMは、シールド型TBMの前胴部の長さ程度までに切羽に近い位置で、地山状況の把握、支保工の設置や地盤補強等の対応を図ることができ、グリッパ反力が取れなくなった脆弱地盤でもグリッパ前方切羽側で全周ライナーやセグメントを組み立て、その端面を反力として推進できるという利点を有する反面、ライナーやセグメントを設置しない限り、作業員の避難する場所を確保することが困難であるため、落石、落盤に対する事故防止が困難で、また、ライナーやセグメントはテール部がないため、シールド型TBMより組み立てが困難であるという欠点があった。
【0014】
シールド型TBMは、外殻が機長全長となっているため、作業員が機内に避難することができ、落石、落盤での事故防止ができ、グリッパ反力が取れなくなった脆弱地盤でも、後方でライナーやセグメントを組み立て、その端面を反力として推進することができるという利点がある。
【0015】
これに対し、地下水が存在する土砂を多く含む脆弱な掘削地盤はカッタ回転に伴い泥濘化する場合が多く、掘削した土砂を搬送するためのベルトコンベアでは、土砂を搬送できず掘進不能になるため、スクリューコンベア等の泥濘化した土砂でも搬送できる搬送機と交換する必要がある。
【0016】
このため、従来は、ベルトコンベア取り付け箇所の隔壁を大きく切り開いているだけであり、これにスクリューコンベアを取り付ける場合は、新たに治具を取り付ける必要があった。
【0017】
そのため、止水効果も不安定で、緊急に出水した場合は、速やかに止水することもできず、TBMの各機器が水没することもある。
【0018】
また、TBMのチャンバー内の機構は、掘削土砂をベルトコンベアに供給するためのバケットがあり、このバケットは泥濘化された土砂ではチャンバー内閉塞の原因になり、掘進不能となるため、撤去する必要があった、
さらには、一般的にTBMのカッター面板では、掘削土砂がチャンバー内に入るためのスリットが小さく、泥濘化した掘削土砂はこのスリットで目詰まりを起こし、掘進が不能になる場合があり、スリットをTBM掘進時よりは開口率として大きくする必要があった。
【0019】
このように、脆弱地盤の土砂部掘削のためのマシン換装に多大な時間がかかり、硬軟輻輳した地盤ではそのたびたびの交互の換装は工期に大きな影響を与えることとなる。
【0020】
また、換装を施しても、従来の山岳トンネルで用いる坑壁に反力をとり伸縮機構を装備したTBMは止水機構がないため、地下水の存在する土砂地盤に対応できないものでもあった。
【0021】
本発明の目的は、シールド型TBMの利点を生かしながら、ベルトコンベアからスクリューコンベアに換装する場合に、その換装を容易に行うことができ、換装を短時間で行え、硬軟輻輳した地盤でも換装が工期に大きな影響を与えることがなく、しかも、止水効果も安定で、緊急に出水した場合でも、速やかに止水することができ、TBMの各機器が水没することもないシールド型トンネル掘削機及びトンネル掘削方法を提供することにある。
【0022】
本発明の他の目的は、坑壁に反力をとり伸縮機構を装備したTBMであっても、セグメントの端面に推進反力をとる場合でも、地下水の存在する土砂を多く含んだ脆弱地盤に対応できるシールド型トンネル掘削機を提供することにある。
【0023】
本発明のさらに他の目的は、土砂搬送用のコンベア換装にあわせて、バケットの換装も容易かつ短時間で行うことができるシールド型トンネル掘削機を提供することにある。
【0024】
本発明のさらに他の目的は、地下水の存在する土砂を多く含んだ脆弱地盤に対応して、カッター面板の開口率を容易かつ短時間で大きくすることができるシールド型トンネル掘削機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
(1)前記目的を達成するため、本発明のシールド型トンネル掘削機は、カッターヘッドと、このカッターヘッドを支持、駆動する駆動部と、前記駆動部に対する掘削反力を確保する掘削反力支持部と、前記駆動部に対して推進力を付与する推進部と、前記カッターヘッドの後方で前記駆動部、掘削反力支持部及び推進部を覆う少なくとも前胴部及び後胴部を含む胴部とを有するシールド型トンネル掘進機において、
前記カッターヘッドのチャンバー側と前記胴部との間に位置する隔壁に形成した開口部に、止水可能なゲートを取り付け、前記ゲート位置に掘削土砂搬送用のベルトコンベアの前記チャンバー内への挿入またはスクリューコンベアの装着を可能にしたことを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、隔壁に形成した開口部に、止水可能なゲートを取り付け、ゲート位置に掘削土砂搬送用のベルトコンベアの前記チャンバー内への挿入またはスクリューコンベアの装着を可能にすることで、ベルトコンベアからスクリューコンベアに換装する場合に、新たな治具を取り付けることなく、その換装を容易に行うことができ、換装を短時間で行え、硬軟輻輳した地盤でも換装が工期に大きな影響を与えることがなく、しかも、止水効果も安定で、緊急に出水した場合でも、ゲートを閉じることで、速やかに止水することができ、TBMの各機器が水没することもない。
【0027】
(2)本発明においては、(1)において、
前記止水可能なゲートは、前記隔壁に設けたベルトコンベアまたはスクリューコンベア挿入用の開口部に、ゲートプレートをスライド可能に取り付けたものとすることができる。
【0028】
このような構成とすることにより、開口部にゲートプレートを取り付けるという簡単な構成で、換装を容易に行うことができ、換装を短時間で行え、硬軟輻輳した地盤でも換装が工期に大きな影響を与えることがなく、しかも、止水効果も安定で、緊急に出水した場合でも、ゲートプレートを閉じることで、速やかに止水することができ、TBMの各機器が水没することもない。
【0029】
(3)本発明においては、(1)において、
前記止水可能なゲートは、前記隔壁に設けたベルトコンベアまたはスクリューコンベア挿入用の開口部に、止水用筒体を前後方向にスライド可能に取り付け、この止水用筒体を前記カッターヘッドに押し付けて止水可能とすることができる。
【0030】
このような構成とすることにより、隔壁に形成した開口部に、止水用筒体を前後方向にスライド可能に取り付け、この止水用筒体をカッターヘッドに押し付けて止水可能とすることで、(2)の効果に加え、(2)の場合よりも緊急な出水にさらに速やかに対応することができる。
【0031】
たとえば、緊急な出水時には、ベルトコンベアを動かす前に止水用筒体をカッターヘッドに押し付けて止水を行い、その後スクリューコンベアと換装し、最後に止水用筒体を引き戻すことで、止水状態のまま換装を行うことができる。
【0032】
(4)本発明においては、(1)〜(3)のいずれかにおいて、
前記掘削反力支持部は、前記後胴部に設けたメイングリッパーを有し、前記前胴部には胴部伸縮支持用のフロントグリッパーを有し、前記胴部の各伸縮部と、前記前胴部とフロントグリッパーとの間と、前記後胴部とメイングリッパーとの間とにシール材を設けるようにすることができる。
【0033】
このような構成とすることにより、坑壁に反力をとり伸縮機構を装備したTBMであっても、地下水の存在する土砂地盤に対応できる。
【0034】
(5)本発明においては、(1)〜(4)のいずれかにおいて、
前記チャンバー内の掘削土砂を前記チャンバー内に挿入されたベルトコンベアに対して受け渡すバケットが前記チャンバー内に突出して設けられ、
前記バケットは、前記スクリューコンベアを用いる土砂掘削時に隔壁側に折りたたみ可能にすることができる。
【0035】
このような構成とすることにより、本来バケットはチャンバー内の土砂をベルトコンベア上に移すためのもので、スクリューコンベアを要した土砂掘削になった場合、逆に土砂移動の阻害となるため、撤去する必要があるが、スクリューコンベアを用いる土砂掘削時に隔壁側に折りたたみ可能にすることで、換装時間を大幅に削減することができる。
【0036】
(6)本発明においては、(1)〜(5)のいずれかにおいて、
前記カッターヘッドの面板は、スクリューコンベアを用いる土砂掘削時に取り外して面板開口率を上げるための脱着部を有すると共に、
前記面板には、加泥材注入用のロータリージョイントが設けられるようにすることができる。
【0037】
このような構成とすることにより、通常の仕様ではカッターヘッドの面板の開口率が非常に狭く、掘削土砂をスムーズに取り込むことができず、面板側の土砂の流動性がよくないが、脱着部を取り外して面板の開口率を上げることで、掘削土砂をスムーズに取り込むことができ、しかも、面板に加泥材注入用のロータリージョイントを設けることで、土砂の流動性を促進することができる。
【0038】
(7)本発明のトンネル掘削方法は、(1)のシールド型トンネル掘削機を用いたトンネル掘削方法であって、
掘削反力支持部により掘削反力を確保した状態でカッターヘッドにより切羽を掘削しつつ推進部により推進力を付与して掘進する工程と、
掘進に伴い発生した掘削土砂をカッターヘッド内のチャンバーに取り込み、取り込んだ掘削土砂をチャンバー内に設けたバケットを介して隔壁よりチャンバー内に先端が挿入されたベルトコンベアに供給して胴部内に取り入れ搬出する工程と、
前記ベルトコンベアによる掘削土砂の取入れからスクリューコンベアによる掘削土砂の取り入れに換装する工程とを含み、
前記換装工程では、
前記ベルトコンベアの先端側を持ち上げてベルトコンベアを後方に引き下げ、隔壁の開口部より引き抜く工程と、
前記引き抜いたベルトコンベアの先端側を隔壁の開口部よりも下方に下げる工程と、
前記先端が開口部より下方に位置するベルトコンベアを搬送手段として前記スクリューコンベアを前記開口部まで搬送する工程と、
前記開口部位置でスクリューコンベアの先端を前記開口部内に差し込んで装着する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0039】
本発明によれば、隔壁に形成した開口部に、止水可能なゲートを取り付け、ゲート位置に掘削土砂搬送用のベルトコンベアの前記チャンバー内への挿入またはスクリューコンベアの装着を可能にすることで、ベルトコンベアからスクリューコンベアに換装する場合に、新たな治具を取り付けることなく、その換装を容易に行うことができ、換装を短時間で行え、硬軟輻輳した地盤でも換装が工期に大きな影響を与えることがなく、しかも、止水効果も安定で、緊急に出水した場合でも、ゲートを閉じることで、速やかに止水することができ、TBMの各機器が水没することもない。
【0040】
また、ベルトコンベアを開口部から引き抜き、開口部下方に吊り下した状態で、ベルトコンベアを利用してスクリューコンベアを搬送することで、効率よく換装作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるシールド型トンネル掘削機の概略縦断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う拡大断面図である。
【図3】図1のベルトコンベア使用時における拡大断面図である。
【図4】スクリューコンベア使用時における図3の相当の拡大断面図である。
【図5】ゲートの変形例を示すもので、止水時の断面図である。
【図6】図5の開放時の断面図である。
【図7】バケットの使用状態を示すチャンバー部分の拡大斜視図である。
【図8】バケットの折り畳み状態を示す図7同様の斜視図である。
【図9】ベルトコンベア使用時におけるカッターヘッドの正面図である。
【図10】スクリューコンベア使用時におけるカッターヘッドの正面図である。
【図11】換装時におけるベルトコンベアの吊り上げ状態を示す縦断面図である。
【図12】図11の状態からベルトコンベアを引き抜く状態を示す縦断面図である。
【図13】図12の状態からベルトコンベアを吊り下す状態を示す縦断面図である。
【図14】図13の状態からスクリューコンベアを搬送する状態を示す縦断面図である。
【図15】図14の状態からスクリューコンベアを隔壁の開口部に装着する状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0043】
図1〜図15は、本発明の一実施の形態にかかるシールド型トンネル掘削機を示す図である。
【0044】
図1は、本発明の一実施の形態にかかるシールド型トンネル掘削機の概略縦断面図で、
このシールド型トンネル掘削機10は、カッターヘッド12と、駆動部14と、掘削反力支持部16と、推進部18と、胴部20(前胴部32、中胴部34及び後胴部36)とを有している。
【0045】
カッターヘッド12は、岩を圧砕する複数のディスクカッター22を搭載し、回転することによって切羽24を圧砕し、掘削土砂(ズリ)をチャンバー26内に取り込むようになっている。
【0046】
駆動部14は、カッターヘッド12を支持、駆動するもので、胴部20(前胴部32)との間に設けられたカッターヘッド支持ベアリング28と、胴部20(前胴部32)内に設けられたカッターヘッド駆動装置30とを有している。
【0047】
掘削反力支持部16は、坑壁に押し付けて駆動部14に対する掘削反力を確保するもので、メイングリッパー40を有している。
【0048】
また、メイングリッパー40にて掘削反力を得、スラストジャッキ42にて推進力を付与して掘進した後、胴部20の伸縮部を元に戻すための伸縮反力支持部として前胴部32にフロントグリッパー38が設けられている。
【0049】
推進部18は、駆動部14に対して推進力を付与する後胴部36と前胴部32とを連結するスラストジャッキ42を有している。
【0050】
胴部20は、前述のように、前胴部32、中胴部34及び後胴部36を含む複数のものからなり、掘削反力支持部16及び推進部18を覆うようになっている。
【0051】
前胴部32の前端面には隔壁48が設けられ、この隔壁48には、バケット44がチャンバー26内に突出して設けられ、チャンバー26内に取り込まれた掘削土砂(ズリ)がカッターヘッド12の回転によって上方に持ち上げられてバケット44内に投入され、バケット44内に投入された掘削土砂(ズリ)は、バケット44を介してチャンバー26内に挿入されたベルトコンベア46上に供給され、ベルトコンベア46からズリトロ運搬車で坑外に搬出されるようになっている。
【0052】
後胴部36内には、エレクター50が設けられ、後胴部36の後方にセグメント52が組み立てられるようになっている。
【0053】
また、後胴部36内には、補助推進用のシールドジャッキ54が設けられ、前記組み立てられたセグメント52の端面を反力として推進力が得られるようになっている。
【0054】
なお、後胴部36の後部にはテールシール56が設けられている。
【0055】
本実施の形態においては、隔壁48に形成した開口部58に、止水可能なゲートとして図2〜図4にも示すようなゲートプレート60をスライド可能に取り付け、このゲートプレート60位置、すなわち開口部58に掘削土砂搬送用のベルトコンベア46をチャンバー26内に挿入または図4に示すスクリューコンベア62の装着を可能にしている。
【0056】
開口部58には、ゲートプレート60をスライド可能に保持し、かつ止水可能なフレームが設けられ、このフレームに沿ってスライド可能にされている。
【0057】
ゲートプレート60は、ゲートプレート開閉ジャッキ64によって開閉可能にされている。
【0058】
このように、隔壁48に形成した開口部58に、止水可能なゲートプレート60を取り付け、開口部58位置に掘削土砂搬送用のベルトコンベア46をチャンバー26内に挿入またはスクリューコンベア62の装着を可能にすることで、ベルトコンベア46からスクリューコンベア62に換装する場合に、新たな治具を取り付けることなく、その換装を容易に行うことができ、換装を短時間で行え、硬軟輻輳した地盤でも換装が工期に大きな影響を与えることがなく、しかも、止水効果も安定で、緊急に出水した場合でも、ゲートプレート60を閉じることで、速やかに止水することができ、TBMの各機器が水没することもない。
【0059】
図5及び図6には、止水可能なゲートの変形例を示しており、この止水可能なゲートは、隔壁48に設けたベルトコンベア46またはスクリューコンベア62挿入用の開口部58に、隔壁48に設けた筒状のパッキングケース66に沿って止水用筒体68を前後方向にスライド可能に取り付け、この止水用筒体68をカッターヘッド12の背面側に設けたパッキング70に押し付けて止水可能としている。
【0060】
この止水用筒体68のスライド移動はスライドジャッキ72によって行われるようになっている。
【0061】
そして、この止水用筒体68内にベルトコンベア46またはスクリューコンベア62を挿入、装着可能としている。
【0062】
このように、隔壁48に形成した開口部58に、止水用筒体68を前後方向にスライド可能に取り付け、この止水用筒体68をカッターヘッド12のパッキング70に押し付けて止水可能とすることで、より緊急な出水にさらに速やかに対応することができる。
【0063】
たとえば、緊急な出水時には、ベルトコンベア46を動かす前に止水用筒体68をカッターヘッド12のパッキング70に押し付けて止水を行い、その後スクリューコンベア62と換装し、最後に止水用筒体68を引き戻すことで、止水状態のまま換装を行うことができる。
【0064】
また、本実施の形態では、胴部20の各伸縮部20A、20Bと、前胴部32とフロントグリッパー38との間38Aと、後胴部36とメイングリッパー40との間40Aと、カッターヘッド支持ベアリング28の周囲28Aとにそれぞれシール材21、39、41、29を設けるとともに、後胴部36のテール部にテールシール56を設けるようにすることで、坑壁に反力をとり伸縮機構を装備したTBMであっても、地下水の存在する土砂地盤に対応できるようにしている。
【0065】
このシール材21、39、41、29、テールシール56としては、シールド掘進機等において、一般に使用されるものを採用することができ、ここでは詳細は省略する。
【0066】
また、本実施の形態では、チャンバー26内の掘削土砂をチャンバー26内に挿入されたベルトコンベア46に対して受け渡すバケット44を、図4、図8、図12〜図15に示すように、スクリューコンベア62を用いる土砂掘削時に隔壁48側に折りたたみ可能にすることで、本来バケット44はチャンバー26内の土砂をベルトコンベア46上に移すためのもので、スクリューコンベア62を要した土砂掘削になった場合、逆に土砂移動の阻害となるため、撤去する必要があり、これをスクリューコンベアを用いる土砂掘削時に隔壁48側に折りたたみ可能にすることで、換装時間を削減することができるようにしている。
【0067】
さらに、本実施の形態においては、図9及び図10に示すように、カッターヘッド12の面板74に、スクリューコンベア62を用いる土砂掘削時に取り外して面板開口率を上げるための複数の脱着部76を設け、通常の仕様ではカッターヘッド12の面板74の開口率が非常に狭く、掘削土砂をスムーズに取り込むことができず、脱着部76を取り外して面板74の開口率を上げることで、掘削土砂をスムーズに取り込むことができるようにすると共に、図1、図3〜図6、図11〜図15に示すように、面板74に加泥材注入用のロータリージョイント78を設けるようにすることで、土砂の流動性を促進することができるようにしている。
【0068】
次に、本実施の形態におけるシールド型トンネル掘削機10を用いたトンネル掘削方法について、図11〜図15を参照して説明する。
【0069】
まず、掘削反力支持部16であるメイングリッパー40により坑壁に押し付けて掘削反力を確保した状態で、駆動部14によりカッターヘッド12を回転駆動させ、カッターヘッド12により切羽24を掘削しつつ推進部18のスラストジャッキ42により推進力を付与して掘進を行う。
【0070】
掘進に伴い発生した掘削土砂はカッターヘッド12内のチャンバー26に取り込み、取り込んだ掘削土砂をチャンバー26内に設けたバケット44を介して隔壁48よりチャンバー26内に先端が挿入されたベルトコンベア46に供給され、胴部20内に取り入れベルトコンベア46からズリトロ運搬車で坑外に搬出される。
【0071】
掘削途中に土質が変化して、土砂化された地盤あるいは破砕体などの脆弱地盤が出現した時で、スクリューコンベア62による掘削土砂の取入れが必要になった場合には、ベルトコンベア46による掘削土砂の取入れからスクリューコンベア62による掘削土砂の取り入れに換装する。
【0072】
このコンベアの換装は、以下の工程で行われる。
【0073】
まず、図11に示すように、バケット44を折り畳んで隔壁48側に収納しておく。
【0074】
ベルトコンベア46は、先端側が長さ調整可能なベルトコンベアサポート80によって支持されており、このベルトコンベアサポート80の長さを調節してベルトコンベア46の先端を持ち上げる。
【0075】
次に、図12に示すように、ベルトコンベア46を持ち上げ支持した状態で、ベルトコンベア46の後方に配置したベルトコンベアスライド機構82により、ベルトコンベア46を後方に引き下げ、隔壁48の開口部58より引き抜く。
【0076】
次いで、図13に示すように、ベルトコンベアサポート80を調節して、引き抜いたベルトコンベア46の先端側を隔壁48の開口部58よりも下方に下げる。
【0077】
この場合、スクリューコンベア46の先端側の高さは、スクリューコンベア46の中心軸が開口部58の中心と一致する高さにしておくとよい。
【0078】
次に、図14に示すように、先端が開口部58より下方に位置するベルトコンベア46を搬送手段としてスクリューコンベア62を開口部58まで搬送する。
【0079】
そして、図15に示すように、開口部58位置でスクリューコンベア62の先端を開口部58内に差し込んで装着し、スクリューコンベア62を隔壁48に固定すればよい。
【0080】
このように、隔壁48に形成した開口部58に、止水可能なゲートプレート60を取り付け、開口部58位置に掘削土砂搬送用のベルトコンベア46をチャンバー26内に挿入またはスクリューコンベア62の装着を可能にすることで、ベルトコンベア46からスクリューコンベア62に換装する場合に、新たな治具を取り付けることなく、その換装を容易に行うことができ、換装を短時間で行え、硬軟輻輳した地盤でも換装が工期に大きな影響を与えることがない。
しかも、ベルトコンベア46を開口部58から引き抜き、開口部58下方に吊り下した状態で、ベルトコンベア46を利用してスクリューコンベア62を搬送することで、効率よく換装作業を行うことができる。
【0081】
また、切羽24からの出水時には、ベルトコンベア46を開口部58より引き抜いた後、ゲートプレート60を閉めて止水し、出水防止処理を行った後、ゲートプレート60を開いてスクリューコンベア62の装着作業を行うようにすることで、出水に対し安全な状態で換装作業を行うことができ、しかも、止水効果も安定で、緊急に出水した場合でも、ゲートプレートを閉じることで、速やかに止水することができ、TBMの各機器が水没することもない。
【0082】
図5及び図6に示す止水可能なゲートの変形例の場合には、隔壁48に設けたベルトコンベア46またはスクリューコンベア62挿入用の開口部58に、止水用筒体68を前後方向にスライド可能に取り付け、この止水用筒体68をカッターヘッド12に設けたパッキング70に押し付けて止水可能とされているため、出水状態での換装時には、止水用筒体68をカッターヘッド12のパッキング70に押し付けて止水した状態で作業を行い、 換装作業終了後、止水用筒体68を後方に移動させることで、掘削土砂をスクリューコンベア62で取り込み可能にすることができ、ベルトコンベア46を動かす前に止水用筒体68をカッターヘッド12のパッキング70に押し付けて止水を行い、その後スクリューコンベア62と換装し、最後に止水用筒体68を引き戻すことで、止水状態のまま換装を行うことができる。
【0083】
特に、緊急な出水には、ベルトコンベア46やスクリューコンベア62を装着したまま、止水用筒体68をスライドさせるだけで止水ができ、さらに速やかに対応することができる。
【0084】
また、スクリューコンベア62を用いる土砂掘削時にはバケット44を隔壁48側に折り畳むことで、スクリューコンベア62を要した土砂掘削で、土砂移動の阻害となるバケット44を撤去する必要がなく、換装時間を削減することができる。
【0085】
さらに、スクリューコンベア62を用いる土砂掘削時にはカッターヘッド12の面板74に設けた脱着部76を取り外すと共に、ロータリージョイント78を用いて面板74側に加泥材を注入するようにすることで、脱着部76を取り外して面板74の開口率を上げて掘削土砂をスムーズに取り込むことができ、しかも、面板74にロータリージョイントを用いて加泥材を注入することで、土砂の流動性を促進することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変形可能である。
【0087】
たとえば、前記実施の形態では、ベルトコンベアの持ち上げに長さ調整可能なベルトコンベアサポートを用いているが、この例に限らず、ジャッキあるいはワイヤ、チェーン等を使用した巻き上げ機等を用いることも可能である。
【0088】
また、チャンバー内に設けられる掘削土砂取り込み用のバケットは、ヒンジ構造あるいはボルト締結方式等により、手動あるいは自動で隔壁側に折り畳み可能にすることができる。
【0089】
さらに、カッター面版の開口率を上げるための脱着部は、ボルト・ナット方式あるいは油圧方式等で脱着可能にすることができる。
【符号の説明】
【0090】
10 シールド型トンネル掘削機
12 カッターヘッド
14 駆動部
16 掘削反力支持部
18 推進部
20 胴部
24 切羽
32 前胴部
34 中胴部
36 後胴部
48 隔壁
58 開口部
60 ゲートプレート
62 スクリューコンベア
68 止水用筒体
74 面板
76 脱着部
78 ロータリージョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッターヘッドと、このカッターヘッドを支持、駆動する駆動部と、前記駆動部に対する掘削反力を確保する掘削反力支持部と、前記駆動部に対して推進力を付与する推進部と、前記カッターヘッドの後方で前記駆動部、掘削反力支持部及び推進部を覆う少なくとも前胴部及び後胴部を含む胴部とを有するシールド型トンネル掘進機において、
前記カッターヘッドのチャンバー側と前記胴部との間に位置する隔壁に形成した開口部に、止水可能なゲートを取り付け、前記ゲート位置に掘削土砂搬送用のベルトコンベアの前記チャンバー内への挿入またはスクリューコンベアの装着を可能にしたことを特徴とするシールド型トンネル掘削機。
【請求項2】
請求項1において、
前記止水可能なゲートは、前記隔壁に設けたベルトコンベアまたはスクリューコンベア挿入用の開口部に、ゲートプレートをスライド可能に取り付けてなることを特徴とするシールド型トンネル掘削機。
【請求項3】
請求項1において、
前記止水可能なゲートは、前記隔壁に設けたベルトコンベアまたはスクリューコンベア挿入用の開口部に、止水用筒体を前後方向にスライド可能に取り付け、この止水用筒体を前記カッターヘッドに押し付けて止水可能としたことを特徴とするシールド型トンネル掘削機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記掘削反力支持部は、前記後胴部に設けたメイングリッパーを有し、前記前胴部には胴部伸縮支持用のフロントグリッパーを有し、前記胴部の各伸縮部と、前記前胴部とフロントグリッパーとの間と、前記後胴部とメイングリッパーとの間とにシール材を設けたことを特徴とするシールド型トンネル掘削機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記チャンバー内の掘削土砂を前記チャンバー内に挿入されたベルトコンベアに対して受け渡すバケットが前記チャンバー内に突出して設けられ、
前記バケットは、前記スクリューコンベアを用いる土砂掘削時に隔壁側に折りたたみ可能にされていることを特徴とするシールド型トンネル掘削機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記カッターヘッドの面板は、スクリューコンベアを用いる土砂掘削時に取り外して面板開口率を上げるための脱着部を有すると共に、
前記面板には、加泥材注入用のロータリージョイントが設けられていることを特徴とするシールド型トンネル掘削機。
【請求項7】
請求項1記載のシールド型トンネル掘削機を用いたトンネル掘削方法であって、
掘削反力支持部により掘削反力を確保した状態でカッターヘッドにより切羽を掘削しつつ推進部により推進力を付与して掘進する工程と、
掘進に伴い発生した掘削土砂をカッターヘッド内のチャンバーに取り込み、取り込んだ掘削土砂をチャンバー内に設けたバケットを介して隔壁よりチャンバー内に先端が挿入されたベルトコンベアに供給して胴部内に取り入れ搬出する工程と、
前記ベルトコンベアによる掘削土砂の取入れからスクリューコンベアによる掘削土砂の取り入れに換装する工程とを含み、
前記換装工程では、
前記ベルトコンベアの先端側を持ち上げてベルトコンベアを後方に引き下げ、隔壁の開口部より引き抜く工程と、
前記引き抜いたベルトコンベアの先端側を隔壁の開口部よりも下方に下げる工程と、
前記先端が開口部より下方に位置するベルトコンベアを搬送手段として前記スクリューコンベアを前記開口部まで搬送する工程と、
前記開口部位置でスクリューコンベアの先端を前記開口部内に差し込んで装着する工程と、
を含むことを特徴とするトンネルの掘削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−28952(P2013−28952A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165474(P2011−165474)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【特許番号】特許第4955828号(P4955828)
【特許公報発行日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(509250375)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】